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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1329799
審判番号 不服2016-11300  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-07-27 
確定日 2017-07-15 
事件の表示 特願2014-521761「販売促進システム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月 2日国際公開、WO2015/097817、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年12月26日を国際出願日とする出願であって、平成27年9月30日付けで拒絶理由通知がなされ、同年12月2日付けで手続補正がなされたが、平成28年5月27日付けで拒絶査定(原査定)がなされ、これに対し、同年7月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成28年5月27日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

請求項1?14に係る発明は、引用文献1、5に記載された発明及び引用文献2?4に示される周知技術に基づいて、当業者であれば容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2001-344513号公報
2.特開2009-104607号公報
3.特開2001-357319号公報
4.特開2013-33320号公報
5.特開2002-297865号公報

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1?8に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願の請求項1?8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明8」という。)は、平成28年7月27日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

<本願発明1>
「機能商品を販売するサプライヤーが所有・管理するホストコンピューター(HC)と、サプライヤーを代理する特定の代理店が所有・管理する端末装置(TA)と、特定多数の顧客が所有・管理する端末装置(TC)と、サプライヤーが所有・管理する端末装置(TS)とがインターネット又はイントラネットを介して接続されたシステムであって、
ホストコンピューター(HC)が、顧客が所有・管理する端末装置(TC)との間でインターネットを介して送受信できる送受信部(1)と、特定の代理店が所有・管理する端末装置(TA)との間でインターネットを介して送受信できる送受信部(2)と、サプライヤーが所有・管理する端末装置(TS)との間でインターネット又はイントラネットを介して送受信できる送受信部(3)と、特定多数の顧客に関する情報データ、特定の代理店に関する情報データ、特定の顧客と特定の代理店とを関連付けた顧客・代理店データ及び送受信日時データを格納できるデータ格納部(4)とを備え;

ホストコンピューター(HC)が送受信部(1)を介して送受信する手段であって、
顧客が所有・管理する端末装置(TC)に対して、機能商品に関する情報を送信する送信手段(a)と、
機能商品に関する追加情報を要求する要求情報を顧客が所有・管理する端末装置(TC)から受信する受信手段(b)と、
顧客が所有・管理する端末装置(TC)に対して、機能商品に関する追加情報を送信する送信手段(c)とを備え;

ホストコンピューター(HC)が送受信部(1)、送受信部(2)及び送受信部(3)を介して送受信する手段であって、
機能商品に関する追加情報、機能商品の試供品又は機能商品に関する質問に対する回答のいずれかを要求する要求情報を顧客が所有・管理する端末装置(TC)から受信する受信手段(d)と、
サプライヤーが所有・管理する端末装置(TS)に対して、受信手段(d)により受信した要求情報及び受信日時を送信する送信手段(e)と、
データ格納部(4)に格納された「特定の顧客と特定の代理店とを関連付けた顧客・代理店データ」に基づいて、特定の顧客に関連付けられた特定の代理店が所有・管理する端末装置(TA)に対して、受信手段(d)により受信した要求情報及び受信日時を送信する送信手段(f)とを備え;

送信手段(a)により送信した機能商品に関する情報及び送信日時、受信手段(b)により受信した要求情報及び受信日時、送信手段(c)により送信した機能商品に関する追加情報及び送信日時、受信手段(d)により受信した要求情報及び受信日時、送信手段(e)により送信した送信情報及び送信日時、並びに送信手段(f)により送信した送信情報及び送信日時をデータ格納部(4)に格納する格納手段(s)を備え;
機能商品が実際に試してみなければ本当に購入すべき商品であるかどうか判断できない工業化学薬剤であることを特徴とする販売促進システム。」

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2001-344513号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審において付与した。)。

ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、消費者(顧客)個々にとって適切な配合成分からなる化粧品及び香粧品の情報を提示するシステム、及び、当該システムを用いて、化粧品及び香粧品の購買を促す方法に関する。」

イ.「【0023】選択可能化粧品情報提示システム1は、後述する製品情報DB・2aと顧客情報DB・2bと配合成分DB・2cと症例基礎情報DB・2dと配合成分名称テーブル2eを記憶する記憶部2と、受信部3aと情報提示部3bと日時検出部3cと更新検出部3dとからなる処理部3とから構成される。情報提示部3bは、さらに照合部3b-1と提示情報生成部3b-2と送信部3b-3とから構成される。」

ウ.「【0025】製品情報DB・2aには、製品(化粧品および香粧品)毎に、製品名、メーカー名、メーカーのURL(Universal Resource Locater)、配合成分、当該製品を紹介するコメント、当該製品の画像データ(画像データそのものあるいは画像データのリンク先アドレス)の各項目を含むデータが格納される(図2参照)。
【0026】顧客情報DB・2bには、顧客毎に、顧客毎に割り当てる個人コードと、顧客の氏名・性別・住所・メールアドレスと、製品の検索対象(カテゴリー別)と、顧客が製品に対し希望する希望性状1(pH:弱酸性、弱アルカリ性、中性、なし)・希望性状2(香調:無香料、フローラル系、…)と、忌避成分1?n(nは別途設定される正の整数)の各項目を含むデータが格納される(図3参照)。」

エ.「【0027】配合成分DB・2cには、製品毎に、製品名と、当該製品に含まれる配合成分1?nの各項目を含むデータが格納される(図4参照)。」

オ.「【0030】受信部3aは、インターネット等のネットワークを介して、顧客が使用する端末装置等から送られる登録情報を受信する。・・・(中略)・・・そして、忌避成分の名称を統一名称とした登録情報の基づく顧客情報を顧客情報DB・2bに格納する。」

カ.「【0031】提示情報生成部3b-2は、顧客情報に基づき、当該顧客が希望する性状をもち、配合成分として忌避成分の含有がより少ない(全く含まないものが望ましい)、顧客にとってより適切な製品を製品情報DB・2aから抽出する。そして、抽出した製品情報からなる提示情報を生成する。」

キ.「【0033】送信部3b-3は、生成された提示情報を、ネットワークを介して顧客が使用する端末装置宛送信する。」

ク.「【0035】なお、記憶部2は、ハードディスク、光磁気ディスク等の不揮発性の記録装置により構成されている。また、この処理部3はメモリおよびCPU(中央演算装置)等により構成され、処理部3の各機能を実現するためのプログラム(図示せず)をメモリにロードして実行することによりその機能が実現されるものとする。また、選択可能化粧品情報提示システム1は、インターネット等のネットワークに接続可能なインターフェース(図示せず)をもち、さらに、周辺機器として入力装置、表示装置等(いずれも図示せず)が接続されるものとする。」

ケ.「【0053】以上のデータ入力から選択可能化粧品情報提示システム1への登録情報の送信が、顧客によりなされると、前述したように選択可能化粧品情報提示システム1は、顧客側端末装置へ提示情報送信する。この提示情報の表示例を図13に示す。この例では、符号131部分に、検索結果として製品のリストを表示している。そして顧客が所望の製品名を選択すると、当該製品の画像が符号132部分に表示される。」

コ.「【0054】さらに顧客がこの製品の詳細な情報を必要とする場合、符号133部分の「詳細表示」ボタンがクリックされることで、図14に一例示す詳細情報の表示画面が表示される。ここでは、製品名、メーカー名、メーカーのURL等の他、その製品の情報を紹介するコメント(符号141部分)を表示している。
【0055】さらに顧客がこの製品を購入したい場合、符号142部分の「取扱店」ボタンをクリックすることで、当該製品を扱う取扱店の情報が選択可能化粧品情報提示システム1から送られ端末装置に表示される(図示せず)。この例では、記憶部2にさらに、取扱店の名称、住所等のデータを含む情報が記憶される配荷データベース(図示せず)をもち、処理部3が当該顧客の顧客情報に含まれる住所に基づき最寄りの取扱店を検索・抽出し、当該製品を購入可能な取扱店情報を端末装置宛送信する。」

前記ア.?コ.によれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

<引用発明>
「顧客個々にとって適切な配合成分からなる化粧品の情報を提示し、化粧品の購買を促すシステムであって(【0001】)、
選択可能化粧品情報提示システム1と、顧客が使用する端末装置とを備え(【0023】【0033】)、
選択可能化粧品情報提示システム1は、
インターネットに接続可能なインターフェースをもち(【0035】)、
製品情報DB・2aと、顧客情報DB・2bと、配合成分DB・2cとを記憶する記憶部2と、受信部3aと情報提示部3bとからなる処理部3とから構成され、情報提示部3bはさらに提示情報生成部3b-2と送信部3b-3とで構成され(【0023】)、
処理部3は、メモリおよびCPUにより構成され、処理部3の各機能を実現するためのプログラムをメモリにロードして実行することによりその機能が実現され(【0035】)、
製品情報DB・2aは、製品(化粧品)ごとに製品名、配合成分、製品を紹介するコメント、製品の画像データを含むデータを格納し(【0025】)、
顧客情報DB・2bは、顧客ごとに氏名、住所、製品に対して希望する希望性状、忌避成分を含むデータを格納し(【0026】)、
配合成分DB・2cは、製品ごとに配合成分のデータを格納し(【0027】)、
受信部3aは、インターネット等のネットワークを介して顧客が使用する端末装置から送られる登録情報を受信し,登録情報に基づく顧客情報を顧客情報DBに格納し(【0030】)、
提示情報生成部3b-2は、顧客情報に基づき、当該顧客が希望する性状をもち、配合成分として忌避成分の含有がより少ない、顧客にとってより適切な製品を製品情報DB・2aから抽出し、抽出した製品情報からなる提示情報を生成し(【0031】)、
送信部3b-3は、生成された提示情報を、ネットワークを介して顧客が使用する端末装置に送信し(【0033】)、
選択可能化粧品情報提示システム1への登録情報の送信が、顧客によりなされると、選択可能化粧品情報提示システム1は、顧客が使用する端末装置へ提示情報を送信し、この提示情報は、例えば、検索結果として製品のリストを表示し、顧客が所望の製品名を選択すると、当該製品の画像が表示され(【0053】)、
さらに顧客がこの製品の詳細な情報を必要とする場合、「詳細表示」ボタンがクリックされることで詳細情報の表示画面が表示され、例えば、製品を紹介するコメントが表示され(【0054】)、
さらに顧客がこの製品を購入したい場合、「取扱店」ボタンをクリックすることで、当該製品を扱う取扱店の情報が選択可能化粧品情報提示システム1から送られ端末装置に表示され、この例では、記憶部2にさらに、取扱店の名称、住所等のデータを含む情報が記憶される配荷データベースをもち、処理部3が当該顧客の顧客情報に含まれる住所に基づき最寄りの取扱店を検索・抽出し、当該製品を購入可能な取扱店情報を端末装置に送信する(【0055】)、システム。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2009-104607号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審において付与した。)。

「【0026】
一方,使用者が検索語を入力した後の当該使用者のブラウジング行動が分析される。即ち,使用者が或る検索語を入力した後,他の検索語を入力するときまで,この検索語の入力がどのカテゴリに属するコンテンツに対する情報の要請なのかが分析される。このために,該当するオンラインショッピングモールで検索結果ページが表示されると,該当ページ上のどの商品をクリックするかだけでなく,クリックの後に商品の詳細情報ページが表示され,商品の詳細情報ページで決済を行う場合は,その決済数もカウントできる(S140)。このようなブラウジング行動の分析で,検索語,特に,人気検索語毎にその入力後の商品クリックによる該当カテゴリを判断して,該当カテゴリに属する商品の照会数が集計され,決済による該当商品が属するカテゴリの売り上げが集計できる(S150)。このように,商品のクリックをカウントして商品の照会数を集計すると共に決済数をカウントして,売り上げを集計する過程は,他の検索語が入力されるときまで反復的に行われる。」

上記記載によれば、引用文献2には次の事項が記載されている。

<引用文献2の記載事項>
「オンラインショッピングモールに表示される検索結果ページにおいて,商品をクリックすると、クリックの後に商品の詳細情報ページが表示されること。」

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2001-357319号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審において付与した。)。

ア.「【0010】
【発明の実施の形態】本発明の実施形態を添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。図1は、本発明に係るオンラインショッピングシステムの概念を示すブロック図である。生活者(顧客)は、ネット端末(クライアント端末)1からインターネットを通じて、インターネットスーパーのホームページにアクセスする。後述するように、特定の販促商品について、生活者は、スーパーのホームページ上で個人情報(消費者情報)を提供する代わりに、その試供品や特典の提供を受けることができる。」

イ.「【0012】本発明による試供品または特典の入手手順を図2のフローチャートを参照して説明する。なお、フローチャートには示していないが、生活者がクライアント端末を通してスーパー側サーバ2内の仮想店舗にアクセスすると、最初に表示されるトップページ等において会員か否かの確認が行なわれる。生活者が既に会員登録をしている場合にはID番号およびパスワードを入力し、そうでない場合には不図示の会員登録画面において会員登録をすることで、オンラインショッピングを行なうことができる。図3は、仮想店舗の商品選択画面の一例を示す説明図である。
【0013】商品選択画面10において、スーパーまたはメーカーが販売に力を入れている販促商品については、当該商品の近傍にプロモーション表示ボタン11が併せて表示されている。生活者がプロモーション表示ボタン11をクリックすると、代行者側サーバ3がプロモーション画面に関するプロモーション情報をクライアント端末1に送信する。」

ウ.「【0014】プロモーション画面20には、「特典」ボタン21、「試供品」ボタン22、および「戻り」ボタン23が表示されている。」

エ.「【0016】図4のプロモーション画面20において、生活者が「試供品」ボタン22をクリックすると、クライアント端末1からの要求に応じて代行者側サーバ3が試供品申込画面50に関する情報を送信し、クライアント端末1のブラウザ画面上に図7の試供品申込画面50が表示され(♯30→31)。生活者は、この画面に示されたアンケートに答えるとともに、自己の氏名、年齢その他の個人情報を入力することで、試供品の提供を受けることができる。」

前記ア.?エ.によれば、引用文献3には次の事項が記載されている。

<引用文献3の記載事項>
「生活者(顧客)が個人情報を提供する代わりに、試供品の提供を受けることができるオンラインショッピングシステムにおいて(【0010】)、
生活者がクライアント端末1を通してスーパー側サーバ2内の仮想店舗にアクセスすると(【0012】)、仮想店舗の商品選択画面10において、販促商品の近傍にプロモーション表示ボタン11が併せて表示され(【0013】)、
生活者がプロモーション表示ボタン11をクリックすると、代行者側サーバ3がプロモーション画面20に関するプロモーション情報をクライアント端末に送信し(【0013】)、
プロモーション画面20には「試供品」ボタン22が表示され(【0014】)、生活者が「試供品」ボタン22をクリックすると、代行者側サーバ3が試供品申込画面50に関する情報を送信し、クライアント端末1に試供品申込画面50が表示され、生活者は、この画面に示されたアンケートに答えるとともに、自己の氏名、年齢その他の個人情報を入力することで、試供品の提供を受けることができる(【0016】)、オンラインショッピングシステム。」

4.引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開2013-33320号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審において付与した。)。

ア.「【0040】
そして、図1(b)に示すように、本発明のインターネット電子商取引ミドルウエアサービスシステム1は、インターネットを介して、世界各国の販売参加者の端末及びユーザの端末2と結ばれており、電子商取引のポータルサイトを提供するサーバ3を備えている。
【0041】
インターネット電子商取引ミドルウエアサービスシステム1のサーバは、このシステムを管理運営する運営組織のコールセンター4に接続されており、このコールセンター4に、インターネット電子商取引ミドルウエアサービスシステム1で得られた情報を、随時送信し、提供するように構成されている。」

イ.「【0060】
(4)アクセス者確認手段
当該相手国のユーザが、電子商取引ポータルサイトにアクセスすると、そのアクセスしたユーザ(アクセス者)のIPアドレスを確認し、アクセス者のHTTPプロトコルを確認し、アクセス者の嗜好を判断し、その国の言語に翻訳されページレイアウトに自動構成された情報を表示し、当該アクセス者の閲覧に供する(図3(オ)、(カ)参照)。なお、アクセス者確認手段は、アクセス判断オントロジーモジュールに属し、その詳細について、後記する。
【0061】
(5)質問処理手段
閲覧したアクセス者が、表示された情報を閲覧して、商品について質問等が特になく閲覧を終了した場合は、質問がない旨の情報が電子商取引ポータルサイトの情報通知手段に自動的に送信し、コールセンターのオペレータに通知する(図3(キ)参照)。
【0062】
商品について質問等があり(図3(キ)参照)、例えば、表示画面の質問ボタンを押すと、そのアクセスしたアクセス者の相手国の言語に対応できる、連携して設けたコールセンター4内の担当者(現地言語を話す専用をオペレータ)を自動的に割り出して、そのオペレータを指定する(呼び出す)(図3(ク)参照)。
【0063】
このような質問処理手段を設け、その処理結果によって指定されたオペレータは、チャット、Eメール、Web電話等でさらに当該アクセス者とやりとり、回答、質疑応答を可能とする(図3(ケ)、(コ)参照)。このような質疑応答は、回答が全て行われるまで、繰り返される(図3(サ)参照)」

前記ア.イ.によれば、引用文献4には、次の事項が記載されている。

<引用文献4の記載事項>
「インターネットを介して、世界各国の販売参加者の端末及びユーザの端末2と結ばれ、電子商取引のポータルサイトを提供するサーバ3を備えたインターネット電子商取引ミドルウエアサービスシステム1において(【0040】)、
サーバ3は、コールセンター4に接続され(【0041】)、
電子商取引ポータルサイトにアクセスしたユーザが、表示された情報を閲覧し、商品について質問等があり、例えば、表示画面の質問ボタンを押すと、アクセス者の相手国の言語に対応できる、コールセンター4内の担当者を自動的に割り出して、そのオペレータを指定し(【0060】?【0062】)、
指定されたオペレータは、チャット、Eメール、Web電話等でさらに当該アクセス者とやりとりして、回答、質疑応答を可能とする(【0063】)、インターネット電子商取引ミドルウエアサービスシステム。」

5.引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5(特開2002-297865号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審において付与した。)。

ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、インターネットなどのネットワークを介して試供品に対するアンケートを行うアンケート方法および管理センタに関するものである。」

イ.「【0035】〔使用後アンケート回答が送られてこない場合〕管理センタ1は、アンケート回収データベースD4を毎日決まった時間にチェックし、送付の受付期間が過ぎている試供品について、使用後アンケート回答が送られてきているか否かを確認する(図9に示すステップ901)。使用後アンケート回答がまだ送られてきていない場合(ステップ901のNO)、回収期限内であるか否かをチェックする(ステップ902、ステップS25)。
【0036】回収期限内で、回収期限までにまだ余裕があればよいが(ステップ903のNO)、回収期限の2日前であった場合には(ステップ903のYES)、回答を送ってこないユーザにアンケート回収データベースD4をもとにメッセージ(催促メッセージ:例えば、□□試供品に対するアンケートの回収期限が○○月××日に迫っていますので、至急アンケートに回答下さい)を作成して送り、ユーザ側端末2の画面上に表示する(ステップ904、ステップS26)。」

前記ア.イ.によれば、引用文献5には、次の発明が記載されている。

<引用文献5に記載された発明>
「インターネットなどのネットワークを介して試供品に対するアンケートを行う管理センタにおいて(【0001】)、
試供品の使用後アンケート回答が送られてきているか否かを確認し(ステップ901)、使用後アンケート回答がまだ送られてきていない場合(ステップ901のNO)、回収期限内であるか否かをチェックし(ステップ902、ステップS25)(【0035】)、
回収期限の2日前であった場合には(ステップ903のYES)、回答を送ってこないユーザに、例えば「□□試供品に対するアンケートの回収期限が○○月××日に迫っていますので、至急アンケートに回答下さい」のような催促メッセージを作成して送り、ユーザ側端末2の画面上に表示させる(ステップ904、ステップS26)(【0036】)、管理センタ。」

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

・引用発明の「選択可能化粧品情報提示システム1」は、プログラムをメモリにロードして実行する処理部3を有し、また、端末装置に対して顧客に適切な製品情報を抽出して提供するサービスを行うことからホストコンピュータといえる。
よって、引用発明の「選択可能化粧品情報提示システム1」と本願発明1の「機能商品を販売するサプライヤーが所有・管理するホストコンピューター(HC)」は、「ホストコンピュータ」の点で共通する。

・引用発明の「顧客」は、顧客情報DBに格納された顧客ごとの氏名、住所等のデータに基づいて特定されることから、本願発明1の「特定多数の顧客」に相当する。

・引用発明の「システム」は、選択可能化粧品情報提示システム1と、顧客が使用する端末装置とが、インターネットを介して送受信することから、これらがインターネットを介して接続されたシステムといえる。
したがって、引用発明の「システム」と、本願発明1の「機能商品を販売するサプライヤーが所有・管理するホストコンピューター(HC)と、サプライヤーを代理する特定の代理店が所有・管理する端末装置(TA)と、特定多数の顧客が所有・管理する端末装置(TC)と、サプライヤーが所有・管理する端末装置(TS)とがインターネット又はイントラネットを介して接続されたシステム」は、「ホストコンピューターと、特定多数の顧客が所有・管理する端末装置とがインターネットを介して接続されたシステム」の点で共通する。

・引用発明の「インターネットに接続可能なインターフェース」は、本願発明1の「ホストコンピューター(HC)が、顧客が所有・管理する端末装置(TC)との間でインターネットを介して送受信できる送受信部(1)」に相当する。

・引用発明の「記憶部2」は、顧客情報DBを記憶し、また、「取扱店の名称、住所等のデータを含む情報が記憶される配荷データベース」を持つから、当該「記憶部」と本願発明1の「特定多数の顧客に関する情報データ、特定の代理店に関する情報データ、特定の顧客と特定の代理店とを関連付けた顧客・代理店データ及び送受信日時データを格納できるデータ格納部(4)」は、「特定多数の顧客に関する情報データ、特定の店に関する情報データを格納できるデータ格納部」の点で共通する。

・引用発明の「送信部3b-3」は、化粧品に関する「提示情報を、ネットワークを介して顧客が使用する端末装置に送信」することから、当該「送信部3b-3」と、本願発明1の「ホストコンピューター(HC)が送受信部(1)を介して送受信する手段であって、顧客が所有・管理する端末装置(TC)に対して、機能商品に関する情報を送信する送信手段(a)」は、「ホストコンピューターが送受信部を介して送信する手段であって、顧客が所有・管理する端末装置に対して、機能商品に関する情報を送信する送信手段」の点で共通する。

・引用発明の「化粧品」と、本願発明1の「機能商品が実際に試してみなければ本当に購入すべき商品であるかどうか判断できない工業化学薬剤である」は、「機能商品が化学薬剤である」の点で共通する。

・引用発明の「顧客個々にとって適切な配合成分からなる化粧品の情報を提示し、化粧品の購買を促すシステム」は、本願発明1の「販売促進システム」の点で共通する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点があるといえる。

<一致点>
「ホストコンピューターと、特定多数の顧客が所有・管理する端末装置とがインターネットを介して接続されたシステムであって、
ホストコンピューターが、顧客が所有・管理する端末装置との間でインターネットを介して送受信できる送受信部と、特定多数の顧客に関する情報データ、特定の店に関する情報データを格納できるデータ格納部を備え、
ホストコンピューターが送受信部を介して送信する手段であって、
顧客が所有・管理する端末装置に対して、機能商品に関する情報を送信する送信手段を備え;
機能商品が化学薬剤である販売促進システム。」

また、本願発明1と引用発明との間には、次の相違点があるといえる。

(システム構成に関する相違点)
<相違点1>
ホストコンピューターが、本願発明1では、「機能商品を販売するサプライヤーが所有・管理する」ものであるのに対し、引用発明では、「機能商品を販売するサプライヤーが所有・管理する」ものではない点。

<相違点2>
本願発明1は「サプライヤーを代理する特定の代理店が所有・管理する端末装置(TA)」を有するのに対し、引用発明は当該端末装置を有しない点。

<相違点3>
本願発明1は「サプライヤーが所有・管理する端末装置(TS)」を有するのに対し、引用発明は当該端末装置を有しない点。

(送受信部に関する相違点)
<相違点4>
ホストコンピュータが、本願発明1では「特定の代理店が所有・管理する端末装置(TA)との間でインターネットを介して送受信できる送受信部(2)」を備えるのに対し、引用発明では、当該送受信部を備えていない点。

<相違点5>
ホストコンピュータが、本願発明1では「サプライヤーが所有・管理する端末装置(TS)との間でインターネット又はイントラネットを介して送受信できる送受信部(3)」を備えるのに対し、引用発明では、当該送受信部を備えていない点。

(データ格納部に関する相違点)
<相違点6>
特定の店に関する情報データが、本願発明1では「代理店」のデータであるのに対し、引用発明では「取扱店」のデータである点。

<相違点7>
データ格納部が、本願発明1では「特定の顧客と特定の代理店とを関連付けた顧客・代理店データ及び送受信日時データ」を格納できるのに対し、引用発明では当該データを格納しない点。

(送信手段、受信手段に関する相違点)
<相違点8>
本願発明1では、「機能商品に関する追加情報を要求する要求情報を顧客が所有・管理する端末装置(TC)から受信する受信手段(b)」及び「顧客が所有・管理する端末装置(TC)に対して、機能商品に関する追加情報を送信する送信手段(c)」を備えるのに対し、引用発明では、顧客が端末装置において「詳細表示」ボタンをクリックすると、化粧品の詳細情報が表示されるものの、選択可能化粧品情報提示システムが、前記受信手段と送信手段とを備えているかどうか不明な点。

<相違点9>
本願発明1は、「機能商品に関する追加情報、機能商品の試供品又は機能商品に関する質問に対する回答のいずれかを要求する要求情報を顧客が所有・管理する端末装置(TC)から受信する受信手段(d)」を備えるのに対し、引用発明では当該受信手段を備えていない点。

<相違点10>
本願発明1は、「サプライヤーが所有・管理する端末装置(TS)に対して、受信手段(d)により受信した要求情報及び受信日時を送信する送信手段(e)」を備えるのに対し、引用発明では当該送信手段を備えていない点。

<相違点11>
本願発明1は、「データ格納部(4)に格納された『特定の顧客と特定の代理店とを関連付けた顧客・代理店データ』に基づいて、特定の顧客に関連付けられた特定の代理店が所有・管理する端末装置(TA)に対して、受信手段(d)により受信した要求情報及び受信日時を送信する送信手段(f)」を備えるのに対し、引用発明では、当該送信手段を備えていない点。

(格納手段に関する相違点)
<相違点12>
本願発明1は、「送信手段(a)により送信した機能商品に関する情報及び送信日時、受信手段(b)により受信した要求情報及び受信日時、送信手段(c)により送信した機能商品に関する追加情報及び送信日時、受信手段(d)により受信した要求情報及び受信日時、送信手段(e)により送信した送信情報及び送信日時、並びに送信手段(f)により送信した送信情報及び送信日時をデータ格納部(4)に格納する格納手段(s)」を備えるのに対し、引用発明は当該格納手段を備えていない点。

(機能商品に関する相違点)
<相違点13>
機能商品が、本願発明1では「実際に試してみなければ本当に購入すべき商品であるかどうか判断できない工業化学薬剤」であるのに対し、引用発明では化粧品である点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点11について先に検討すると、相違点11に係る本願発明1の「データ格納部(4)に格納された『特定の顧客と特定の代理店とを関連付けた顧客・代理店データ』に基づいて、特定の顧客に関連付けられた特定の代理店が所有・管理する端末装置(TA)に対して、受信手段(d)により受信した要求情報及び受信日時を送信する送信手段(f)」という構成は、上記引用文献1?5には記載されておらず、本願出願前において周知技術であるともいえない。
したがって、本願発明1は、他の相違点を検討するまでもなく、当業者であっても引用発明、引用文献2?4に記載された事項、及び、引用文献5に記載された発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2?8について
本願発明2?8も、本願発明1の「データ格納部(4)に格納された『特定の顧客と特定の代理店とを関連付けた顧客・代理店データ』に基づいて、特定の顧客に関連付けられた特定の代理店が所有・管理する端末装置(TA)に対して、受信手段(d)により受信した要求情報及び受信日時を送信する送信手段(f)」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2?4に記載された事項、及び、引用文献5に記載された発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第7 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1?8は「データ格納部(4)に格納された『特定の顧客と特定の代理店とを関連付けた顧客・代理店データ』に基づいて、特定の顧客に関連付けられた特定の代理店が所有・管理する端末装置(TA)に対して、受信手段(d)により受信した要求情報及び受信日時を送信する送信手段(f)」という事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1?5に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-06-26 
出願番号 特願2014-521761(P2014-521761)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 貝塚 涼田付 徳雄  
特許庁審判長 佐藤 智康
特許庁審判官 石川 正二
金子 幸一
発明の名称 販売促進システム  
代理人 櫻井 健一  

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