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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1329817
審判番号 不服2015-9377  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-05-20 
確定日 2017-06-28 
事件の表示 特願2013-181328「パッド構造」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月21日出願公開,特開2014- 72519〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2013年(平成25年)9月2日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2012年9月28日,米国)の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成25年 9月 2日 審査請求
平成26年 8月27日 拒絶理由通知
平成26年12月 1日 期間延長請求
平成26年12月22日 意見書・手続補正書
平成27年 1月15日 拒絶査定
平成27年 5月20日 審判請求・手続補正書
平成28年 2月16日 拒絶理由通知
平成28年 5月23日 意見書・手続補正書
平成28年 8月 4日 拒絶理由通知(最後)
平成28年11月 7日 期間延長請求
平成28年12月 9日 意見書・手続補正書


第2 当審による拒絶理由通知の概要
審判合議体が平成28年8月4日付けで通知した拒絶理由通知(以下「当審拒絶理由通知」という。)の概要は次のとおりである。
[理由1]
本願の特許請求の範囲の請求項1における「前記金属間領域は,前記第一および第二領域間の誘電体-誘電体インターフェースを形成する前記第一領域の誘電体材料,および,前記第二領域の金属を含」むこと,及び請求項7における「前記第二領域および前記第三領域の金属,前記第一および第二領域間の第一誘電体-誘電体インターフェース,および,前記第一および第三領域間の第二誘電体-誘電体インターフェースを含むこと」は,いずれも,本願明細書の発明の詳細な説明に記載されているとは認められないから,本願の特許請求の範囲の記載は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
[理由2]
本願の特許請求の範囲の請求項1における「前記金属間領域は,前記第一および第二領域間の誘電体-誘電体インターフェースを形成する前記第一領域の誘電体材料,および,前記第二領域の金属を含み」との記載,及び請求項7における「前記第二領域および前記第三領域の金属,前記第一および第二領域間の第一誘電体-誘電体インターフェース,および,前記第一および第三領域間の第二誘電体-誘電体インターフェースを含むこと」との記載では,上記各請求項に係る発明の構成が明確に記載されているとは認められないから,本願の特許請求の範囲の記載は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
[理由3]
平成28年5月23日付け手続補正書において,本願の特許請求の範囲の請求項1に「前記金属間領域は,前記第一および第二領域間の誘電体-誘電体インターフェースを形成する前記第一領域の誘電体材料,および,前記第二領域の金属を含み」との記載を付加する補正,及び請求項7に「前記第二領域および前記第三領域の金属,前記第一および第二領域間の第一誘電体-誘電体インターフェース,および,前記第一および第三領域間の第二誘電体-誘電体インターフェースを含むこと」との記載を付加する補正は,いずれも,本願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下「本願の当初明細書等」という。)に記載された事項の範囲内においてしたものとはいえないから,上記手続補正による補正は,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
[理由4]
本願請求項1における「前記金属間領域は,前記第一および第二領域間の誘電体-誘電体インターフェースを形成する前記第一領域の誘電体材料,および,前記第二領域の金属を含み,」との記載を,「前記第一領域の全体にわたり,前記層間領域との間に誘電体-誘電体インターフェースを形成する前記第一領域の誘電体材料,および,前記第二領域の金属を含み,」と解したとしても,本願請求項1に係る発明は,特開2002-222811号公報(以下「引用文献1」という。)に記載された発明であり,また,当該請求項を引用する本願請求項2に係る発明も,引用文献1に記載された発明である。
そして,本願請求項7における「前記層間領域下の金属間領域であって,この金属間領域は,前記第一領域の誘電体材料,前記第二領域および前記第三領域の金属,前記第一および第二領域間の第一誘電体-誘電体インターフェース,および,前記第一および第三領域間の第二誘電体-誘電体インターフェースを含む」との記載を,「前記層間領域下の金属間領域であって,この金属間領域は,前記第一領域の全体にわたり,前記層間領域との間,及び後述する頂部金属領域との間に,それぞれ,第一誘電体-誘電体インターフェース,及び第二誘電体-誘電体インターフェースを形成する,前記第一領域の誘電体材料,並びに前記第二領域および前記第三領域の金属を含む」と解したとしても,本願請求項7に係る発明は,引用文献1に記載された発明である。
以上から,本願の請求項1,2及び7の各請求項に係る発明は,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。
[理由5]
本願請求項1における「前記金属間領域は,前記第一および第二領域間の誘電体-誘電体インターフェースを形成する前記第一領域の誘電体材料,および,前記第二領域の金属を含み,」との記載を,上記理由4のように解したとしても,本願請求項1に係る発明は,引用文献1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に想到し得たものであり,また,当該請求項を引用する本願請求項2ないし6の各請求項に係る発明も,引用文献1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。
そして,本願請求項7における「前記層間領域下の金属間領域であって,この金属間領域は,前記第一領域の誘電体材料,前記第二領域および前記第三領域の金属,前記第一および第二領域間の第一誘電体-誘電体インターフェース,および,前記第一および第三領域間の第二誘電体-誘電体インターフェースを含む」との記載を,上記理由4のように解したとしても,本願請求項7に係る発明は,引用文献1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。
以上から,本願の請求項1ないし7に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第3 補正の適法性について
1 本件補正の内容
平成28年12月9日付け手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)は,特許請求の範囲,及び本願明細書を補正するものであって,特許請求の範囲については,本件補正の前後で以下のとおりである。
・補正前
「【請求項1】
接着領域と,
前記接着領域下のパッドと,
前記パッド下の層間領域と,
前記層間領域下の金属間領域と,
前記金属間領域下の頂部金属領域と,
前記頂部金属領域下のパッシベーション酸化物領域と,
パッシベーション酸化物領域下のウェハと,
を含むパッド構造において,
第一領域は,前記層間領域,前記金属間領域,前記頂部金属領域,前記パッシベーション酸化物領域,および,前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記接着領域および前記パッド下に設置され,
第二領域は,前記層間領域,前記金属間領域,前記頂部金属領域,前記パッシベーション酸化物領域,および,前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記パッド下に前記第一領域に隣接して設置され,
前記層間領域は,前記第一領域の誘電体材料と前記第二領域の金属を有する第一パッド接続を含み,
前記金属間領域は,前記第一および第二領域間の誘電体-誘電体インターフェースを形成する前記第一領域の誘電体材料,および,前記第二領域の金属を含み,
前記頂部金属領域は,前記第一領域の誘電体材料,および,前記第二領域の金属を含む,
ことを特徴とするパッド構造。
【請求項2】
第三領域は,前記層間領域,前記金属間領域,前記頂部金属領域,前記パッシベーション酸化物領域,および,前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記第一領域に隣接して前記パッド下に,前記第二および第三領域が前記第一領域を挟むように設置され,
第四領域は,前記層間領域,前記金属間領域,前記頂部金属領域,前記パッシベーション酸化物領域,および,前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記第二領域に隣接して前記パッドの少なくとも一部の下に,前記第一および第四領域が前記第二領域を挟むように設置され,
第五領域は,前記層間領域,前記金属間領域,前記頂部金属領域,前記パッシベーション酸化物領域,および,前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記第三領域に隣接してパッドの少なくとも一部の下に,前記第一および第五領域が前記第三領域を挟むように設置され,
前記層間領域はさらに,前記第三領域の金属,および,前記第四領域および前記第五領域の誘電体材料を有する第二パッド接続を含み,
前記層間領域下の前記金属間領域はさらに,前記第三領域の金属,および,前記第四領域および前記第五領域の誘電体材料を含む,
ことを特徴とする請求項1に記載のパッド構造。
【請求項3】
前記金属間領域と前記パッシベーション酸化物領域間に一つ以上の追加金属間領域を含み,前記一つ以上の追加金属間領域の追加の金属間領域は,前記第一領域の誘電体材料,および,前記第二領域の金属を含むことを特徴とする請求項2に記載のパッド構造。
【請求項4】
前記第二領域において,前記追加金属間領域は,金属領域の上に位置する第一ビアを含むことを特徴とする請求項3に記載のパッド構造。
【請求項5】
前記追加金属間領域は,前記第三領域の金属を含むことを特徴とする請求項3に記載のパッド構造。
【請求項6】
前記追加金属間領域は,前記第四領域および前記第五領域の誘電体材料を含むことを特徴とする請求項3に記載のパッド構造。
【請求項7】
第一領域の上に位置する接着領域と,
前記接着領域下のパッドであって,前記第一領域,第二領域,および,第三領域の上に位置するパッドと,
前記パッド下の層間領域であって,前記第一領域の誘電体材料,前記第二領域の第一パッド接続,および,前記第三領域の第二パッド接続を含む層間領域と,
前記層間領域下の金属間領域であって,この金属間領域は,前記第一領域の誘電体材料,前記第二領域および前記第三領域の金属,前記第一および第二領域間の第一誘電体-誘電体インターフェース,および,前記第一および第三領域間の第二誘電体-誘電体インターフェースを含むことと,
金属間領域下の頂部金属領域であって,この頂部金属領域は,前記第一領域の誘電体材料,および,前記第二領域および前記第三領域の金属を含むことと,前記頂部金属領域下のパッシベーション酸化物領域と,
パッシベーション酸化物領域下のウェハと,
を含むパッド構造において,
前記第一領域は,前記層間領域,前記金属間領域,前記頂部金属領域,前記パッシベーション酸化物領域,および,前記ウェハを通して延在する領域として規定され,
前記第二領域は,前記層間領域,前記金属間領域,前記頂部金属領域,前記パッシベーション酸化物領域,および,前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記第一領域に隣接して設置され,
前記第三領域は,前記層間領域,前記金属間領域,前記頂部金属領域,前記パッシベーション酸化物領域,および,前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記第一領域に隣接して,前記第二および第三領域が前記第一領域を挟むように設置される,
ことを特徴とするパッド構造。」
・補正後
「【請求項1】
接着領域と,
前記接着領域下のパッドと,
前記パッド下の層間領域と,
前記層間領域下の金属間領域と,
前記金属間領域下の頂部金属領域と,
前記頂部金属領域下のパッシベーション酸化物領域と,
パッシベーション酸化物領域下のウェハと,
を含むパッド構造において,
第一領域は,前記層間領域,前記金属間領域,前記頂部金属領域,前記パッシベーション酸化物領域および前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記接着領域および前記パッド下に設置され,
第二領域は,前記層間領域,前記金属間領域,前記頂部金属領域,前記パッシベーション酸化物領域および前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記パッド下に前記第一領域に隣接して設置され,
第三領域は,前記層間領域,前記金属間領域,前記頂部金属領域,前記パッシベーション酸化物領域および前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記パッド下に前記第一領域に隣接して前記第二領域との間で前記第一領域を挟むように設置され,
第四領域は,前記層間領域,前記金属間領域,前記頂部金属領域,前記パッシベーション酸化物領域および前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記パッドの少なくとも一部の下に前記第二領域に隣接して前記第一領域との間で前記第二領域を挟むように設置され,
第五領域は,前記層間領域,前記金属間領域,前記頂部金属領域,前記パッシベーション酸化物領域および前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記パッドの少なくとも一部の下に前記第三領域に隣接して前記第一領域との間で前記第三領域を挟むように設置され,
前記層間領域は,前記第一領域の誘電体材料と前記第二領域の金属を有する第一パッド接続を含み,
前記金属間領域は,前記第一領域の誘電体材料および前記第二領域の金属を含み,前記第一領域における前記金属間領域と前記層間領域との間に誘電体-誘電体インターフェースを形成し,
前記頂部金属領域は,前記第一領域の誘電体材料および前記第二領域の金属を含み,
前記層間領域は,さらに,前記第三領域に位置する金属を有する第二パッド接続,および前記第四領域と前記第五領域とにおける誘電体材料を含み,
前記層間領域下の前記金属間領域は,さらに,前記第三領域の金属,および前記第四領域と前記第五領域とにおける誘電体材料を含むこと
を特徴とするパッド構造。
【請求項2】
前記金属間領域と前記パッシベーション酸化物領域との間に一つ以上の追加金属間領域を含み,前記一つ以上の追加金属間領域の追加の金属間領域は,前記第一領域の誘電体材料および前記第二領域の金属を含むこと
を特徴とする請求項1に記載のパッド構造。
【請求項3】
前記第二領域において,前記追加金属間領域は,金属領域上に位置する第一ビアを含むことを特徴とする請求項2に記載のパッド構造。
【請求項4】
前記追加金属間領域は,前記第三領域の金属を含むことを特徴とする請求項2に記載のパッド構造。
【請求項5】
前記追加金属間領域は,前記第四領域および前記第五領域の誘電体材料を含むことを特徴とする請求項2に記載のパッド構造。」

2 補正事項の整理
本件補正による特許請求の範囲,及び本願明細書特許請求の範囲についての補正を整理すると次のとおりとなる。(下線は補正箇所を示し,当審で付加したもの。)
[補正事項1]
補正前の請求項1を削除する補正。
[補正事項2]
補正前の請求項1の削除に伴い,補正前の請求項2の項番を繰り上げて請求項1とし,補正前の請求項1の記載を引用する記載を当該請求項の記載を引用しないものとしたうえで,以下の補正をすること。
・補正事項2A
引用していた補正前の請求項1の「第一領域は,前記層間領域,前記金属間領域,前記頂部金属領域,前記パッシベーション酸化物領域,および,前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記接着領域および前記パッド下に設置され,第二領域は,前記層間領域,前記金属間領域,前記頂部金属領域,前記パッシベーション酸化物領域,および,前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記パッド下に前記第一領域に隣接して設置され,」を,「第一領域は,前記層間領域,前記金属間領域,前記頂部金属領域,前記パッシベーション酸化物領域および前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記接着領域および前記パッド下に設置され,第二領域は,前記層間領域,前記金属間領域,前記頂部金属領域,前記パッシベーション酸化物領域および前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記パッド下に前記第一領域に隣接して設置され,」とする補正。
・補正事項2B
引用していた補正前の請求項1の「前記金属間領域は,前記第一および第二領域間の誘電体-誘電体インターフェースを形成する前記第一領域の誘電体材料,および,前記第二領域の金属を含み,」を,「前記金属間領域は,前記第一領域の誘電体材料および前記第二領域の金属を含み,前記第一領域における前記金属間領域と前記層間領域との間に誘電体-誘電体インターフェースを形成し,」とする補正。
・補正事項2C
引用していた補正前の請求項1の「前記頂部金属領域は,前記第一領域の誘電体材料,および,前記第二領域の金属を含む,」を,「前記頂部金属領域は,前記第一領域の誘電体材料および前記第二領域の金属を含み,」とする補正。
[補正事項3]
補正前の請求項3の項番を繰り上げて請求項2とし,引用する請求項の項番を繰り上げたうえで,補正前の請求項3の「前記金属間領域と前記パッシベーション酸化物領域間に一つ以上の追加金属間領域を含み,前記一つ以上の追加金属間領域の追加の金属間領域は,前記第一領域の誘電体材料,および,前記第二領域の金属を含むこと」を,「前記金属間領域と前記パッシベーション酸化物領域との間に一つ以上の追加金属間領域を含み,前記一つ以上の追加金属間領域の追加の金属間領域は,前記第一領域の誘電体材料および前記第二領域の金属を含むこと」とする補正。
[補正事項4]
補正前の請求項4の項番を繰り上げて請求項3とし,引用する請求項の項番を繰り上げたうえで,補正前の請求項4の「前記第二領域において,前記追加金属間領域は,金属領域の上に位置する第一ビアを含むこと」を,「前記第二領域において,前記追加金属間領域は,金属領域上に位置する第一ビアを含むこと」とする補正。
[補正事項5]
補正前の請求項5の項番を繰り上げて請求項4とし,引用する請求項の項番を繰り上げる補正。
[補正事項6]
補正前の請求項6の項番を繰り上げて請求項5とし,引用する請求項の項番を繰り上げる補正。
[補正事項7]
補正前の請求項7を削除する補正。
[補正事項8]
本願明細書の段落【0004】における「この発明の一態様によれば,接着領域と,接着領域下のパッドと,パッド下の層間領域と,層間領域下の金属間領域と,金属間領域下の頂部金属領域と,頂部金属領域下のパッシベーション酸化物領域と,パッシベーション酸化物領域下のウェハとを含むパッド構造において,第一領域は,層間領域,金属間領域,頂部金属領域,パッシベーション酸化物領域,および,ウェハを通して延在する領域として規定され,接着領域およびパッド下に設置され,第二領域は,層間領域,金属間領域,頂部金属領域,パッシベーション酸化物領域,および,ウェハを通して延在する領域として規定され,パッド下に第一領域に隣接して設置され,層間領域は,第一領域の誘電体材料と第二領域の金属を有する第一パッド接続を含み,金属間領域は,第一および第二領域間の誘電体-誘電体インターフェースを形成する第一領域の誘電体材料および第二領域の金属を含み,頂部金属領域は,第一領域の誘電体材料と第二領域の金属を含むパッド構造を提供する。
この発明の別の態様によれば,第一領域の上に位置する接着領域と,接着領域下のパッドであって,第一領域,第二領域,および,第三領域の上に位置するパッドと,パッド下の層間領域であって,第一領域の誘電体材料,第二領域の第一パッド接続,および,第三領域の第二パッド接続を含む層間領域と,層間領域下の金属間領域であって,この金属間領域は,第一領域の誘電体材料,第二領域および第三領域の金属,第一および第二領域間の第一誘電体-誘電体インターフェース,および,第一および第三領域間の第二誘電体-誘電体インターフェースを含むことと,金属間領域下の頂部金属領域であって,この頂部金属領域は,第一領域の誘電体材料と,第二領域および第三領域の金属を含むことと,頂部金属領域下のパッシベーション酸化物領域と,パッシベーション酸化物領域下のウェハと,を含むパッド構造において,第一領域は,層間領域,金属間領域,頂部金属領域,パッシベーション酸化物領域,および,ウェハを通して延在する領域として規定され,第二領域は,層間領域,金属間領域,頂部金属領域,パッシベーション酸化物領域,および,ウェハを通して延在する領域として規定され,第一領域に隣接して設置され,第三領域は,層間領域,金属間領域,頂部金属領域,パッシベーション酸化物領域,および,ウェハを通して延在する領域として規定され,第一領域に隣接して,第二および第三領域が第一領域を挟むように設置されることを特徴とするパッド構造を提供する。」を,以下のとおり補正すること。
「この発明の一態様によれば,第一領域は,層間領域,金属間領域,頂部金属領域,パッシベーション酸化物領域およびウェハを通して延在する領域として規定され,接着領域およびパッド下に設置され,第二領域は,層間領域,金属間領域,頂部金属領域,パッシベーション酸化物領域およびウェハを通して延在する領域として規定され,パッド下に第一領域に隣接して設置され,第三領域は,層間領域,金属間領域,頂部金属領域,パッシベーション酸化物領域およびウェハを通して延在する領域として規定され,パッド下に第一領域に隣接して第二領域との間で第一領域を挟むように設置され,第四領域は,層間領域,金属間領域,頂部金属領域,パッシベーション酸化物領域およびウェハを通して延在する領域として規定され,パッドの少なくとも一部の下に第二領域に隣接して第一領域との間で第二領域を挟むように設置され,第五領域は,層間領域,金属間領域,頂部金属領域,パッシベーション酸化物領域およびウェハを通して延在する領域として規定され,パッドの少なくとも一部の下に第三領域に隣接して第一領域との間で第三領域を挟むように設置され,層間領域は,第一領域の誘電体材料と第二領域の金属を有する第一パッド接続を含み,金属間領域は,第一領域の誘電体材料および第二領域の金属を含み,第一領域における金属間領域と層間領域との間に誘電体-誘電体インターフェースを形成し,頂部金属領域は,第一領域の誘電体材料および第二領域の金属を含み,層間領域は,さらに,第三領域に位置する金属を有する第二パッド接続,および第四領域と第五領域とにおける誘電体材料を含み,層間領域下の金属間領域は,さらに,第三領域の金属,および第四領域と第五領域とにおける誘電体材料を含むことを特徴とするパッド構造を提供する。」

3 補正目的の適否,及び新規事項の追加の有無について
(1)補正事項1について
補正事項1が,特許法第17条の2第3項の規定に適合することは明らかであり,また,補正事項1は,同法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当する。

(2)補正事項2について
ア 補正事項2A及び2Cについて
補正事項2A及び2Cは,いずれも,補正前の請求項2について,補正前の請求項1の削除に伴い項番を繰り上げ,補正前の請求項1の記載を引用しないものとしたうえで,補正前の請求項1における句読点を削除する補正であって,特許法第17条の2第3項の規定に適合することは明らかであり,また,同法第17条の2第5項第3号に掲げる誤記の訂正を目的とするものに該当する。
イ 補正事項2Bについて
補正事項2Bは,補正前の請求項2について,補正前の請求項1の削除に伴い項番を繰り上げ,補正前の請求項1の記載を引用しないものとしたうえで,当審拒絶理由通知に係る拒絶の理由1ないし3に示す事項についてした補正である。
そして,補正事項2Bは,本願の当初明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものと認められるから,特許法第17条の2第3項の規定に適合し,また,同法第17条の2第5項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
ウ 小括
上記ア及びイより,補正事項2は,特許法第17条の2第3項の規定に適合し,また,同法第17条の2第5項第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものに該当する。

(3)補正事項3について
補正事項3は,補正前の請求項3について,補正前の請求項1の削除に伴い項番,及び引用する請求項の項番を繰り上げたうえで,補正前の請求項3における誤記を訂正し,句読点を削除する補正であって,特許法第17条の2第3項の規定に適合することは明らかであり,また,同法第17条の2第5項第3号に掲げる誤記の訂正を目的とするものに該当する。

(4)補正事項4について
補正事項4は,補正前の請求項4について,補正前の請求項1の削除に伴い項番,及び引用する請求項の項番を繰り上げたうえで,補正前の請求項4における誤記を訂正する補正であって,特許法第17条の2第3項の規定に適合することは明らかであり,また,同法第17条の2第5項第3号に掲げる誤記の訂正を目的とするものに該当する。

(5)補正事項5及び6について
補正事項5及び6は,それぞれ,補正前の請求項5及び6について,補正前の請求項1の削除に伴い項番,及び引用する請求項の項番を繰り上げる補正であるから,いずれも適法な補正である。

(6)補正事項7について
補正事項7が,特許法第17条の2第3項の規定に適合することは明らかであり,また,補正事項7は,同法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当する。

(7)補正事項8について
補正事項8は,補正事項1及び7による補正前の請求項1及び7の削除と,補正事項2による補正前の請求項2の補正に伴い,対応する本願明細書の記載を補正したものである。
そして,補正事項8は,本願の当初明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものと認められるから,特許法第17条の2第3項の規定に適合する。

(8)まとめ
以上のとおりであるから,本件補正による特許請求の範囲,及び本願明細書についての補正は,特許法第17条の2第3項の規定に適合し,また,本件補正における特許請求の範囲についてする補正は,同法第17条の2第5項第1号,第3号又は第4号のいずれかに掲げる事項を目的とするものに該当する。
そして,本件補正における特許請求の範囲についてする補正は,同法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものに該当しないから,同法第17条の2第6項の規定(独立特許要件)は適用されない。

4 むすび
したがって,本件補正は,適法なものである。


第4 本願発明の容易想到性について
1 本願発明
本願の請求項1に係る発明(本願発明)は,本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(再掲)
「【請求項1】
接着領域と,
前記接着領域下のパッドと,
前記パッド下の層間領域と,
前記層間領域下の金属間領域と,
前記金属間領域下の頂部金属領域と,
前記頂部金属領域下のパッシベーション酸化物領域と,
パッシベーション酸化物領域下のウェハと,
を含むパッド構造において,
第一領域は,前記層間領域,前記金属間領域,前記頂部金属領域,前記パッシベーション酸化物領域および前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記接着領域および前記パッド下に設置され,
第二領域は,前記層間領域,前記金属間領域,前記頂部金属領域,前記パッシベーション酸化物領域および前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記パッド下に前記第一領域に隣接して設置され,
第三領域は,前記層間領域,前記金属間領域,前記頂部金属領域,前記パッシベーション酸化物領域および前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記パッド下に前記第一領域に隣接して前記第二領域との間で前記第一領域を挟むように設置され,
第四領域は,前記層間領域,前記金属間領域,前記頂部金属領域,前記パッシベーション酸化物領域および前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記パッドの少なくとも一部の下に前記第二領域に隣接して前記第一領域との間で前記第二領域を挟むように設置され,
第五領域は,前記層間領域,前記金属間領域,前記頂部金属領域,前記パッシベーション酸化物領域および前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記パッドの少なくとも一部の下に前記第三領域に隣接して前記第一領域との間で前記第三領域を挟むように設置され,
前記層間領域は,前記第一領域の誘電体材料と前記第二領域の金属を有する第一パッド接続を含み,
前記金属間領域は,前記第一領域の誘電体材料および前記第二領域の金属を含み,前記第一領域における前記金属間領域と前記層間領域との間に誘電体-誘電体インターフェースを形成し,
前記頂部金属領域は,前記第一領域の誘電体材料および前記第二領域の金属を含み,
前記層間領域は,さらに,前記第三領域に位置する金属を有する第二パッド接続,および前記第四領域と前記第五領域とにおける誘電体材料を含み,
前記層間領域下の前記金属間領域は,さらに,前記第三領域の金属,および前記第四領域と前記第五領域とにおける誘電体材料を含むこと
を特徴とするパッド構造。」

2 引用文献の記載と引用発明
(1)引用文献1の記載
当審拒絶理由通知で引用された,本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である引用文献1(特開2002-222811号公報)には,図面とともに,次の記載がある。(当審注.下線は当審において付加した。以下同じ。)
ア「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,ボンディングパッド領域を有する半導体装置およびその製造方法に関する。
【0002】
【背景技術】現在,半導体装置の微細化の進展に伴い,半導体装置において配線層が多層にわたって形成されている。半導体装置は,一般に,配線層の最上層に達するパッド開口部が設けられ,そのパッド開口部において,外部と配線層の最上層の電気的接続が果たされる。
【0003】図9に,半導体装置のパッド形成領域を模式的に示す断面図を示す。一般に,パッド開口部が達している配線層340より下のレベルの配線層332,330は,パッド開口部360の下方の領域においも形成されている。しかし,パッド開口部360の下方の領域において,配線層332,330を形成すると,図10に示すように,パッド開口部360においてワイヤボンディングを行う際に,層間絶縁層322,324においてクラック310が生じる場合がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は,パッド開口部が達している配線層の下方の層間絶縁層においてクラックが生じるのが抑えられた半導体装置およびその製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】(半導体装置)
・・・
【0007】本発明においては,パッド開口部が達している配線層より下のレベルにある配線層は,平面的にみてパッド開口部の領域外において形成されている。すなわち,パッド開口部が達している配線層より下のレベルにある配線層は,パッド開口部の下方の領域には形成されていない。このため,ワイヤボンディングの際に,パッド開口部が達している配線層に衝撃が加わっても,その衝撃を層間絶縁層で受けることができる。その結果,パッド開口部が達している配線層の下方の層間絶縁層においてクラックが生じるのを抑えることができる。」
イ「【0014】
【発明の実施の形態】以下,本発明の好適な実施の形態について,図面を参照しながら説明する。
【0015】[半導体装置]図1は,半導体装置を模式的に示す平面図である。図2(a)は,図1の領域A10を拡大した図である。図2(b)は,図2(a)におけるA-A線に沿った断面を模式的に示す断面図である。
【0016】まず,半導体装置1000の平面構造を説明する。半導体装置1000は,図1に示すように,能動部100と,パッド領域200とを有する。パッド領域200は,能動部100の周辺に形成されている。
【0017】次に,半導体装置1000の断面構造を説明する。能動部における半導体基板10の表面上には,半導体素子(図示せず)が形成されている。半導体素子は,たとえばMISトランジスタ,メモリトランジスタである。半導体基板10の上には,第1の層間絶縁層20が形成されている。第1の層間絶縁層20の上には,第1の配線層30が形成されている。第1の層間絶縁層20および第1の配線層30の上には,第2の層間絶縁層22が形成されている。具体的には,上方に後述の保護絶縁層50が形成されている第1の層間絶縁層20の上面を第1の領域とすると,第1の配線層30は,第1の領域の上に形成されている。また,上方に後述のパッド開口部60が形成されている第1の層間絶縁層20の上面を第2の領域とすると,第2の領域の上には,第2の層間絶縁層22が形成されている。第2の層間絶縁層22において,第1の配線層30と第2の配線層32とを電気的に接続するための第1のプラグ70が形成されている。
【0018】第2の層間絶縁層22および第1のプラグ70の上には,第2の配線層32が形成されている。第2の層間絶縁層22および第2の配線層32の上には,第3の層間絶縁層24が形成されている。具体的には,上方に後述の保護絶縁層50が形成されている第2の層間絶縁層22の上面を第3の領域とすると,第2の配線層32は,第3の領域の上に形成されている。また,上方に後述のパッド開口部60が形成されている第2の層間絶縁層22の上面を第4の領域とすると,第4の領域の上には,第3の層間絶縁層24が形成されている。
【0019】第3の層間絶縁層24の上には,第3の配線層40が形成されている。第3の配線層40の厚さは,第1および第2の配線層30,32より厚いことが好ましい。第3の層間絶縁層24において,第3の配線層40と第2の配線層32とを電気的に接続するための第2のプラグ72が形成されている。
【0020】第3の層間絶縁層24およびプラグ配線層40の上において,保護絶縁層50が形成されている。保護絶縁層50において,パッド開口部60が形成されている。パッド開口部60は,第3の配線層40の上面に達している。パッド開口部60の幅は,たとえば30?150μmである。パッド開口部60の平面の面積は,たとえば30×30?150×150μm^(2)である。このパッド開口部60において,外部と第3の配線層40とを電気的に接続するために,たとえばワイヤボンディングがなされる。
【0021】次に,本実施の形態における特徴点を説明する。第3の配線層40の下のレベルにおいて形成された,第1および第2の配線層30,32は,平面的にみてパッド開口部60の領域外において形成されている。つまり,パッド開口部60の下方の領域において,第1および第2の配線層30,32が形成されていない。このため,たとえばワイヤボンディングの際に,第3の配線層40に衝撃が加わっても,その衝撃を層間絶縁層20,22,24のみで受けることができる。その結果,第3の配線層40の下の層間絶縁層20,22,24においてクラックが生じるのを抑えることができる。また,配線層と層間絶縁層との界面において,膜はがれが生じるのを抑えることができる。」
ウ「【0022】[半導体装置の製造方法]以下,図2を参照して,実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明する。
【0023】まず,半導体基板10の上に,半導体素子(たとえばMISトランジスタ,メモリトランジスタ)を形成する。次に,公知の方法により,酸化シリコンからなる第1の層間絶縁層20を形成する。第1の層間絶縁層20は,必要に応じて,化学的機械的研磨法(CMP法)により,平坦化される。
【0024】次に,第1の層間絶縁層20の上に,第1の配線層30を形成する。第1の配線層30は,公知の方法により導電層(たとえばアルミニウム層,アルミニウムと銅との合金層)を形成し,その導電層をパターニングすることにより形成される。第1の配線層30は,パッド開口部60が形成される領域以外の領域に形成されるようにする。
【0025】次に,第1の配線層30および第1の層間絶縁層20の上において,公知の方法により,酸化シリコンからなる第2の層間絶縁層22を形成する。第2の層間絶縁層22は,必要に応じて,CMP法により平坦化される。次に,第2の層間絶縁層22において,第1の配線層30に達するスルーホール22aを形成する。スルーホール22aの幅は,たとえば0.2?0.5μmである。スルーホール22aの平面の面積は,たとえば0.2×0.2?0.5×0.5μm^(2)である。次に,スルーホール22a内に,第1のプラグ70を形成する。第1のプラグ70は,タングステン層を全面に形成し,そのタングステン層をエッチバックすることにより形成される。
【0026】次に,第1のプラグ70および第2の層間絶縁層22の上に,第2の配線層32を形成する。第2の配線層32は,公知の方法により導電層(たとえばアルミニウム層,アルミニウムと銅との合金層)を形成し,その導電層をパターニングすることにより形成される。第2の配線層32は,パッド開口部60が形成される領域以外の領域に形成されるようにする。
【0027】次に,第2の層間絶縁層22および第2の配線層32の上に,公知の方法により,酸化シリコンからなる第3の層間絶縁層24を形成する。第3の層間絶縁層24は,必要に応じて,CMP法により平坦化される。次に,第3の層間絶縁層24において,第2の配線層32に達するスルーホール24aを形成する。スルーホール24aの幅は,たとえば0.2?0.5μmである。スルーホール24aの平面の面積は,たとえば0.2×0.2?0.5×0.5μm^(2)である。次に,スルーホール24a内に,第2のプラグ72を形成する。第2のプラグ72は,タングステン層を全面に形成し,そのタングステン層をエッチバックすることにより形成される。
【0028】次に,第3の層間絶縁層24および第2のプラグ72の上に,第3の配線層40を形成する。第3の配線層40は,公知の方法により導電層(たとえばアルミニウム層,アルミニウムと銅との合金層)を形成し,その導電層をパターニングすることにより形成される。
【0029】次に,第3の配線層40の上に,公知の方法により,保護絶縁層(たとえば酸化シリコン層)50を形成する。次に,リソグラフィ技術を利用して,保護絶縁層40を選択的にエッチングすることにより,第3の配線層40に達するパッド開口部60を形成する。パッド開口部60は,第1および第2の配線層30,32が平面的にみてパッド開口部60の領域外において配置されるように,形成される。」
エ「【0030】(作用効果)本実施の形態に係る半導体装置の製造方法の作用効果を説明する。
【0031】本実施の形態においては,第1および第2の配線層30,32をパッド開口部60の領域外において形成されるようにしている。このため,パッド開口部60の下方の領域において,第1および第2の配線層30,32が形成されていない。その結果,ボンディングの際にかかる応力は,第1?第3の層間絶縁層20,22,24のみで受けることができる。このため,第1?第3の層間絶縁層20,22,24においてクラックが生じるのを抑えることができる。また,層間絶縁層と配線層との界面において,膜はがれが生じるのを抑えることができる。」
オ「【0032】[変形例]本実施の形態は,次の変形が可能である。
・・・
【0040】(6)上記実施の形態においては,第3の配線層40の下の配線層は,第1の配線層および第2の配線層であり,2層であった。しかし,第3の配線層40の下の配線層は,1層であってもよく,または,3層以上であってもよい。」
カ 図1,並びに図2(a)及び(b)より,半導体装置1000のパッド領域200(当審注.図2(a)及び(b)における番号「100」は「200」の誤記と認める。)について,以下の事項が看取できる。
(ア)半導体装置1000のパッド領域200が,以下の領域を備える点。
・第3の層間絶縁層24,第2の層間絶縁層22,第1の層間絶縁層20,及び半導体基板10を通して延在する領域として規定され,パッド開口部60及び第3の配線層40下に設置される領域(下図(図2(b)に補助線及び文字を書き加えた図)においてAで示された領域。以下「領域A」という。)。
・第3の層間絶縁層24,第2の層間絶縁層22,第1の層間絶縁層20,及び半導体基板10を通して延在する領域として規定され,第3の配線層40下に領域Aに隣接して設置される領域(下図においてBで示された領域。以下「領域B」という。)。
・第3の層間絶縁層24,第2の層間絶縁層22,第1の層間絶縁層20,及び半導体基板10を通して延在する領域として規定され,第3の配線層40下に領域Aに隣接して領域Bとの間で領域Aを挟むように設置される領域(下図においてCで示された領域。以下「領域C」という。)。
・第3の層間絶縁層24,第2の層間絶縁層22,第1の層間絶縁層20,及び半導体基板10を通して延在する領域として規定され,領域Bに隣接して領域Aとの間で領域Bを挟むように設置される領域(下図においてDで示された領域。以下「領域D」という。)。
・第3の層間絶縁層24,第2の層間絶縁層22,第1の層間絶縁層20,及び半導体基板10を通して延在する領域として規定され,領域Cに隣接して領域Aとの間で領域Cを挟むように設置される領域(下図においてEで示された領域。以下「領域E」という。)。
(イ)半導体装置1000のパッド領域200が,以下の構成を備える点。
・第3の層間絶縁層24は,領域Aの酸化シリコン,領域Bの第2の配線層32及び第2のプラグ72,領域Cの第2の配線層32及び第2のプラグ72,並びに領域D及びEの酸化シリコンを含む点。
・第2の層間絶縁層22は,領域Aの酸化シリコン,領域Bの第1の配線層30及び第1のプラグ70,領域Cの第1の配線層30及び第1のプラグ70,並びに領域D及びEの酸化シリコンを含む点。



(2)引用発明
引用文献1の記載より,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「半導体装置1000のパッド領域200におけるパッド開口部60と,
上記パッド開口部60下の第3の配線層40と,
上記第3の配線層24下の酸化シリコンからなる層間絶縁層であって,アルミニウム層又はアルミニウムと銅の合金層である第2の配線層32を被覆し,上記第3の配線層40下から上記第2の配線層32に達するスルーホール24a内に形成されたタングステン層からなる第2のプラグ72を有する,第3の層間絶縁層24と,
上記層間絶縁層24下の酸化シリコンからなる層間絶縁膜層であって,アルミニウム層又はアルミニウムと銅の合金層である第1の配線層30を被覆し,上記第2の配線層32下から上記第1の配線層30に達するスルーホール22a内に形成されたタングステン層からなる第1のプラグ70を有する,第2の層間絶縁層22と,
上記第2の層間絶縁層22下の酸化シリコンからなる第1の層間絶縁層20と,
第1の層間絶縁層20下の半導体基板10と,
を含む半導体装置1000のパッド領域200において,
上記第3の層間絶縁層24,上記第2の層間絶縁層22,上記第1の層間絶縁層20,及び上記半導体基板10を通して延在する領域として規定され,上記パッド開口部60及び上記第3の配線層40下に設置される領域Aと,
上記第3の層間絶縁層24,上記第2の層間絶縁層22,上記第1の層間絶縁層20,及び上記半導体基板10を通して延在する領域として規定され,上記第3の配線層40下に上記領域Aに隣接して設置される領域Bと,
上記第3の層間絶縁層24,上記第2の層間絶縁層22,上記第1の層間絶縁層20,及び上記半導体基板10を通して延在する領域として規定され,上記第3の配線層40下に上記領域Aに隣接して上記領域Bとの間で上記領域Aを挟むように設置される領域Cと,
上記第3の層間絶縁層24,上記第2の層間絶縁層22,上記第1の層間絶縁層20,及び上記半導体基板10を通して延在する領域として規定され,上記領域Bに隣接して上記領域Aとの間で上記領域Bを挟むように設置される領域Dと,
上記第3の層間絶縁層24,上記第2の層間絶縁層22,上記第1の層間絶縁層20,及び上記半導体基板10を通して延在する領域として規定され,上記領域Cに隣接して上記領域Aとの間で上記領域Cを挟むように設置される領域Eとを備え,
上記第3の層間絶縁層24は,上記領域Aの酸化シリコン,上記領域Bの上記第2の配線層32及び上記第2のプラグ72,上記領域Cの上記第2の配線層32及び上記第2のプラグ72,並びに上記領域D及びEの酸化シリコンを含み,
上記第2の層間絶縁層22は,上記領域Aの酸化シリコン,上記領域Bの上記第1の配線層30及び上記第1のプラグ70,上記領域Cの上記第1の配線層30及び上記第1のプラグ70,並びに上記領域D及びEの酸化シリコンを含み,
上記パッド開口部60の下方の領域において,上記第1及び第2の配線層30,32が形成されていない,
半導体装置1000のパッド領域200。」

3 本願発明と引用発明との対比
(1)対比
ア 引用発明における「半導体装置1000のパッド領域200」は,本願発明の「パッド構造」に相当するといえる。
そして,引用発明における「パッド開口部60」は,上記2(1)イ(【0020】)よりワイヤボンディングされることが予定されている領域と認められるから,本願発明の「接着領域」に相当するといえる。
また,引用発明における「第3の配線層40」は,「パッド領域200」を構成し,ワイヤボンディングされるものであるから,本願発明の「パッド」に相当するといえる。
さらに,引用発明における「第3の層間絶縁層24」及び「第2の層間絶縁層22」は,それぞれ,本願発明の「層間領域」及び「金属間領域」に相当するということができ,また,引用発明における「酸化シリコンからなる第1の層間絶縁層20」及び「半導体基板10」は,後述する相違点1に係る構成(本願発明の「頂部金属領域」の有無。)を除き,それぞれ,本願発明の「パッシベーション酸化物領域」及び「ウェハ」に相当するといえる。
そうすると,本願発明と引用発明とは,「接着領域と,前記接着領域下のパッドと,前記パッド下の層間領域と,前記層間領域下の金属間領域と,前記頂部金属領域下のパッシベーション酸化物領域と,パッシベーション酸化物領域下のウェハと,を含むパッド構造」である点で共通するということができる。
イ 本願発明の「前記層間領域,前記金属間領域,前記頂部金属領域,前記パッシベーション酸化物領域および前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記接着領域および前記パッド下に設置され」る「第一領域」と,引用発明における「上記第3の層間絶縁層24,上記第2の層間絶縁層22,上記第1の層間絶縁層20,及び上記半導体基板10を通して延在する領域として規定され,上記パッド開口部60及び上記第3の配線層40下に設置される領域A」とは,「前記層間領域,前記金属間領域,前記パッシベーション酸化物領域および前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記接着領域および前記パッド下に設置され」る領域(以下「領域1」という。)である点で共通するということができる。
ウ 本願発明の「前記層間領域,前記金属間領域,前記頂部金属領域,前記パッシベーション酸化物領域および前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記パッド下に前記第一領域に隣接して設置され」る「第二領域」と,引用発明における「上記第3の層間絶縁層24,上記第2の層間絶縁層22,上記第1の層間絶縁層20,及び上記半導体基板10を通して延在する領域として規定され,上記第3の配線層40下に上記領域Aに隣接して設置される領域B」とは,「前記層間領域,前記金属間領域,前記パッシベーション酸化物領域および前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記パッド下に前記領域1に隣接して設置される領域」(以下「領域2」という。)である点で共通するということができる。
エ 本願発明の「前記層間領域,前記金属間領域,前記頂部金属領域,前記パッシベーション酸化物領域および前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記パッド下に前記第一領域に隣接して前記第二領域との間で前記第一領域を挟むように設置され」る「第三領域」と,引用発明における「上記第3の層間絶縁層24,上記第2の層間絶縁層22,上記第1の層間絶縁層20,及び上記半導体基板10を通して延在する領域として規定され,上記第3の配線層40下に上記領域Aに隣接して上記領域Bとの間で上記領域Aを挟むように設置される領域C」とは,「前記層間領域,前記金属間領域,前記パッシベーション酸化物領域および前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記パッド下に前記領域1に隣接して前記領域2との間で前記領域1を挟むように設置される領域」(以下「領域3」という。)である点で共通するということができる。
オ 本願発明の「前記層間領域,前記金属間領域,前記頂部金属領域,前記パッシベーション酸化物領域および前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記パッドの少なくとも一部の下に前記第二領域に隣接して前記第一領域との間で前記第二領域を挟むように設置され」る「第四領域」と,引用発明における「上記第3の層間絶縁層24,上記第2の層間絶縁層22,上記第1の層間絶縁層20,及び上記半導体基板10を通して延在する領域として規定され,上記第3の配線層40下に上記領域Bに隣接して上記領域Aとの間で上記領域Bを挟むように設置される領域D」とは,「前記層間領域,前記金属間領域,前記パッシベーション酸化物領域および前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記領域2に隣接して前記領域1との間で前記領域2を挟むように設置される領域」(以下「領域4」という。)である点で共通するということができる。
カ 本願発明の「前記層間領域,前記金属間領域,前記頂部金属領域,前記パッシベーション酸化物領域および前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記パッドの少なくとも一部の下に前記第三領域に隣接して前記第一領域との間で前記第三領域を挟むように設置され」る「第五領域」と,引用発明における「上記第3の層間絶縁層24,上記第2の層間絶縁層22,上記第1の層間絶縁層20,及び上記半導体基板10を通して延在する領域として規定され,上記第3の配線層40下に上記領域Cに隣接して上記領域Aとの間で上記領域Cを挟むように設置される領域E」とは,「前記層間領域,前記金属間領域,前記パッシベーション酸化物領域および前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記領域3に隣接して前記領域1との間で前記領域3を挟むように設置される領域」(以下「領域5」という。)である点で共通するということができる。
キ 上記イ及びウより,本願発明の「前記層間領域は,前記第一領域の誘電体材料」を含むとの構成と,引用発明における「上記第3の層間絶縁層24は,上記領域Aの酸化シリコン」を含むとの構成は,「前記層間領域は」,領域1の「誘電体材料」を含む点で共通するといえる。
また,引用発明における「第2の配線層32」は「アルミニウム層又はアルミニウムと銅の合金層」であり,「第2のプラグ72」は「上記第3の配線層40下から上記第2の配線層32に達するスルーホール24a内に形成されたタングステン層」であるから,「第2の配線層32」及び「第2のプラグ72」は,金属を有し,引用発明の「第3の配線層40」(本願発明の「パッド」に相当。)に接続するための構成といえる。
してみれば,上記イ及びウより,本願発明の「前記層間領域は」,「前記第二領域の金属を有する第一パッド接続」を含むとの構成と,引用発明における「上記第3の層間絶縁層24は」,「上記領域Bの上記第2の配線層32及び上記第2のプラグ72」を含むとの構成は,「前記層間領域は」,領域2の「金属を有する第一パッド接続」を含む点で共通するといえる。
そうすると,本願発明と引用発明とは,「前記層間領域は,前記領域1の誘電体材料と前記領域2の金属を有する第一パッド接続を含」む構成を備える点で共通するということができる。
ク 上記イ及びウより,本願発明の「前記金属間領域は,前記第一領域の誘電体材料」を含むとの構成と,引用発明における「上記第2の層間絶縁層22は,上記領域Aの酸化シリコン」を含むとの構成は,「前記金属間領域は」,領域1の「誘電体材料」を含む点で共通するといえる。
また,引用発明における「第1の配線層30」は「アルミニウム層又はアルミニウムと銅の合金層」であり,「第1のプラグ70」は「上記第2の配線層32下から上記第1の配線層30に達するスルーホール22a内に形成されたタングステン層」であるから,「第1の配線層30」及び「第1のプラグ70」は金属である。
してみれば,上記イ及びウより,本願発明の「前記金属間領域は」,「前記第二領域の金属」を含むとの構成と,引用発明における「上記第2の層間絶縁層22は」,「上記領域Bの上記第1の配線層30及び上記第1のプラグ70」を含むとの構成は,「前記金属間領域は」,領域2の「金属」を含む点で共通するといえる。
そして,引用発明における「第3の層間絶縁層24」及び「第2の層間絶縁層22」それぞれの「領域A」には「酸化シリコン」が含まれること,及び上記2(2)のとおり,引用発明は「上記パッド開口部60の下方の領域において,上記第1及び第2の配線層30,32が形成されていない」との構成を備えることに鑑みれば,引用発明は,「領域A」における「第2の層間絶縁層22」と「第3の層間絶縁層24」との間に,誘電体材料である「酸化シリコン」によるインターフェース,すなわち,本願発明の「誘電体-誘電体インターフェース」が形成されると認められる。
そうすると,本願発明と引用発明とは,「前記金属間領域は,前記領域1の誘電体材料および前記領域2の金属を含み,前記領域1における前記金属間領域と前記層間領域との間に誘電体-誘電体インターフェースを形成」するとの構成を備える点で共通するということができる。
ケ 上記キのとおり,引用発明における「第2の配線層32」及び「第2のプラグ72」は,金属を有し,引用発明の「第3の配線層40」(本願発明の「パッド」に相当。)に接続するための構成といえる。
そして,上記イ及びエより,本願発明の「前記層間領域は」,「前記第三領域の金属を有する第二パッド接続」を含むとの構成と,引用発明における「上記第3の層間絶縁層24は」,「上記領域Cの上記第2の配線層32及び上記第2のプラグ72」を含むとの構成は,「前記層間領域は」,領域3の「金属を有する第二パッド接続」を含む点で共通するといえる。
また,上記イ,オ及びカより,本願発明の「前記層間領域は」,「前記第四領域と前記第五領域とにおける誘電体材料」を含むとの構成と,引用発明における「上記第3の層間絶縁層24は」,「上記領域D及びEの酸化シリコン」を含むとの構成は,「前記層間領域は」,領域4と領域5とにおける「誘電体材料」を含む点で共通するといえる。
そうすると,本願発明と引用発明とは,「前記層間領域は,さらに,前記領域3に位置する金属を有する第二パッド接続,および前記領域4と前記領域5とにおける誘電体材料を含」む構成を備える点で共通するということができる。
コ 上記クのとおり,引用発明における「第1の配線層30」及び「第1のプラグ70」は金属である。
そして,上記イ及びエより,本願発明の「前記層間領域下の前記金属間領域は」,「前記第三領域の金属」を含むとの構成と,引用発明における「上記第2の層間絶縁層22は」,「上記領域Cの上記第1の配線層30及び上記第1のプラグ70」を含むとの構成は,「前記金属間領域は」,領域3の「金属」を含む点で共通するといえる。
また,上記イ,オ及びカより,本願発明の「前記層間領域下の前記金属間領域は」,「前記第四領域と前記第五領域とにおける誘電体材料」を含むとの構成と,引用発明における「上記第2の層間絶縁層22は」,「上記領域D及びEの酸化シリコン」を含むとの構成は,「前記層間領域下の前記金属間領域は」,領域4と領域5とにおける「誘電体材料」を含む点で共通するといえる。
そうすると,本願発明と引用発明とは,「前記層間領域下の前記金属間領域は,さらに,前記領域3の金属,および前記領域4と前記領域5とにおける誘電体材料を含む」構成を備える点で共通するということができる。

(2)本願発明と引用発明との一致点及び相違点
上記(1)より,本願発明と引用発明との一致点及び相違点は,以下のとおりであると認められる。
ア 一致点
「接着領域と,
前記接着領域下のパッドと,
前記パッド下の層間領域と,
前記層間領域下の金属間領域と,
前記頂部金属領域下のパッシベーション酸化物領域と,
パッシベーション酸化物領域下のウェハと,
を含むパッド構造において,
領域1は,前記層間領域,前記金属間領域,前記パッシベーション酸化物領域および前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記接着領域および前記パッド下に設置され,
領域2は,前記層間領域,前記金属間領域,前記パッシベーション酸化物領域および前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記パッド下に前記領域1に隣接して設置される領域され,
領域3は,前記層間領域,前記金属間領域,前記パッシベーション酸化物領域および前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記パッド下に前記領域1に隣接して前記領域2との間で前記領域1を挟むように設置され,
領域4は,前記層間領域,前記金属間領域,前記パッシベーション酸化物領域および前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記領域2に隣接して前記領域1との間で前記領域2を挟むように設置され,
領域5は,前記層間領域,前記金属間領域,前記パッシベーション酸化物領域および前記ウェハを通して延在する領域として規定され,前記領域3に隣接して前記領域1との間で前記領域3を挟むように設置され,
前記層間領域は,前記領域1の誘電体材料と前記領域2の金属を有する第一パッド接続を含み,
前記金属間領域は,前記領域1の誘電体材料および前記領域2の金属を含み,前記領域1における前記金属間領域と前記層間領域との間に誘電体-誘電体インターフェースを形成し,
前記層間領域は,さらに,前記領域3に位置する金属を有する第二パッド接続,および前記領域4と前記領域5とにおける誘電体材料を含み,
前記層間領域下の前記金属間領域は,さらに,前記領域3の金属,および前記領域4と前記領域5とにおける誘電体材料を含む,
パッド構造。」
イ 相違点
・相違点1
本願発明は,「前記金属間領域下の頂部金属領域」を備え,「前記頂部金属領域は,前記第一領域の誘電体材料および前記第二領域の金属を含」むとともに,「パッシベーション酸化物領域」は「頂部金属領域」下に設けられ,また,「第一領域」ないし「第五領域」は,いずれも「頂部金属領域」を通して延在する領域として規定されているのに対し,引用発明は,本願発明の「頂部金属領域」に相当する構成を備えていない点。
・相違点2
本願発明では,「第四領域」は「前記パッドの少なくとも一部の下に前記第二領域に隣接して前記第一領域との間で前記第二領域を挟むように設置され」ているのに対し,引用発明では,「領域D」が「上記領域Bに隣接して上記領域Aとの間で上記領域Bを挟むように設置され」ているものの,「第3の配線層40」(本願発明の「パッド」に相当。)の少なくとも一部の下に設置されることは明示されていない点。
・相違点3
本願発明は,「第五領域」は「前記パッドの少なくとも一部の下に前記第三領域に隣接して前記第一領域との間で前記第三領域を挟むように設置され」ているのに対し,引用発明では,「領域E」が「上記領域Cに隣接して上記領域Aとの間で上記領域Cを挟むように設置され」ているものの,「第3の配線層40」(本願発明の「パッド」に相当。)の少なくとも一部の下に設置されることは明示されていない点。

4 相違点についての検討
(1)相違点1について
半導体装置において,基板上に誘電体材料からなる絶縁層を積層し,各絶縁層上に形成された電極又は配線を,各絶縁層中に形成した導電材料を介して接続する多層配線構造は,当該技術分野では周知の技術であり,また,上記2(1)オによれば,引用文献1には,「上記実施の形態においては,第3の配線層40の下の配線層は,第1の配線層および第2の配線層であり,2層であった。しかし,第3の配線層40の下の配線層は,1層であってもよく,または,3層以上であってもよい。」(【0040】)との記載もあるから,引用発明において,「第2の層間絶縁層22」と「第1の層間絶縁層20」との間に,酸化シリコンからなる新たな層間絶縁層を形成し,「第3の配線層40」の下の配線層を増やすことは,当業者が普通に行い得るものである。
そして,引用発明において,上記の新たな層間絶縁層を形成することにより,「領域A」ないし「領域E」のそれぞれが,上記の新たな層間絶縁層をも通して延在する領域として規定されることは当然である。
さらに,上記2(1)ア及びエより,引用発明は,パッド開口部が達している配線層の下方の層間絶縁層においてクラックが生じるのが抑えられた半導体装置を提供することを目的とし(【0004】),「パッド開口部60」の下方の領域において,「第1及び第2の配線層30,32」が形成されていない構成とすることで,上記目的を達成する(【0007】,【0031】)と認められるから,引用発明において,上記の新たな層間絶縁層を形成する際に,「第2の層間絶縁層22」と同様,「領域A」の酸化シリコン,及び「領域B」の「第1の配線層30」及び「第1のプラグ70」を含む構成とすることは,引用発明の目的を達成するために,当業者が当然に行い得るものといえる。
そうすると,引用発明において,相違点1に係る構成とすることは,引用文献1の記載に接した当業者が,適宜なし得たものと認める。

(2)相違点2及び3について
相違点2及び3について,まとめて検討する。
本願明細書の記載より,本願発明は,剥離を軽減するパッド構造を提供することを目的とし(【0003】),第一領域が,誘電体-金属インターフェースを含まないように,一つ以上の誘電体-誘電体インターフェースが第一領域内に形成することで上記の目的を達成したもの(【0013】,【0020】)と認められる。
他方,上記2(1)ア及びエより,引用発明は,パッド開口部が達している配線層の下方の層間絶縁層においてクラックが生じるのが抑えられた半導体装置を提供することを目的とし(【0004】),「パッド開口部60」の下方の領域において,「第1及び第2の配線層30,32」が形成されていない構成とすることで,上記目的を達成する(【0007】,【0031】)と認められる。
してみれば,相違点2及び3に係る構成により,本願発明と引用発明との間に,作用効果上,格別の相違が生じるとは認められない。
そして,引用発明において,「第3の配線層40」(本願発明の「パッド」に相当。)の端部を,「第1及び第2の配線層30,32」及び「第1及び第2のプラグ70,72」が形成されていない,「第2の層間絶縁層22」及び「第3の層間絶縁層24」それぞれの「領域D」上,及び「領域E」上まで延在させること,すなわち,「領域D」及び「領域E」が,「第3の配線層40」の少なくとも一部の下に設置される構成とすることは,必要に応じて,当業者が適宜行い得るものと認められる。
また,引用発明における上記目的とその達成手段である上記構成との関係からみて,引用発明において,「領域D」及び「領域E」が,「第3の配線層40」の少なくとも一部の下に設置される構成とすることで,引用発明における上記目的の達成が妨げられるとは認められない。
そうすると,相違点2及び3に係る構成により,本願発明と引用発明との間に,作用効果上,格別の相違が生じるとは認められず,また,引用発明において,相違点2及び3に係る構成とすることに阻害要因があるとも認められないから,引用発明において,相違点2及び3に係る構成とすることは,当業者が適宜なし得たものと認める。

5 本願発明の作用効果について
上記4(1)のとおり,引用発明において,相違点1に係る構成とすることは,当業者が適宜なし得たものであって,その効果は,当業者が容易に予測し得たものと認められ,そして,上記4(2)のとおり,相違点2及び3に係る構成により,本願発明と引用発明との間に,作用効果上,格別の相違が生じるとは認められず,さらに,これらを総合しても,本願発明が奏する作用効果は,引用発明の作用効果から,当業者が容易に予測し得る範囲を超えるとは認められない。
そうすると,本願発明が奏する作用効果は,格別のものとはいえない。

6 小括
したがって,本願の請求項1に係る発明(本願発明)は,引用文献1記載の発明(引用発明)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものである。


第4 結言

以上検討したとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,その余の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-01-30 
結審通知日 2017-01-31 
審決日 2017-02-13 
出願番号 特願2013-181328(P2013-181328)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 堀江 義隆井出 和水  
特許庁審判長 深沢 正志
特許庁審判官 河口 雅英
加藤 浩一
発明の名称 パッド構造  
代理人 田澤 英昭  
代理人 濱田 初音  

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