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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B60R
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 B60R
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60R
管理番号 1329975
審判番号 不服2016-8489  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-08 
確定日 2017-07-25 
事件の表示 特願2013-209672号「駐車支援装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月20日出願公開、特開2015- 74255号、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
この出願(以下「本願」という。)は、平成25年10月4日の出願であって、平成27年8月24日付けで拒絶理由が通知され、同年10月28日に意見書及び手続補正書が提出され、平成28年2月16日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされた。これに対し、同年6月8日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに同日付けで手続補正書が提出され、平成29年2月14日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年4月20日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
本願請求項1ないし4に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された以下の引用文献Aに記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
引用文献A: 国際公開第2007/122864号

第3 当審拒絶理由の概要
本願請求項1ないし2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、本願請求項1ないし3に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された以下の引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
さらに、本願請求項4に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された以下の引用文献1及び2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
引用文献1: 特開2011-39600号公報
引用文献2: 国際公開第2007/122864号

第4 本願発明
本願の特許を受けようとする発明は、平成29年4月20日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ(以下「本願発明1?4」という。)、本願発明1は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
車両の周囲の情景を撮影した撮像画像を取得する撮像画像取得部と、
前記撮像画像取得部により取得された撮像画像における車両の側方の側に予め設定された所定の検出領域について画像認識を行い、当該検出領域内の駐車区画を規定する地物を検出する地物検出部と、
前記地物検出部により検出された前記地物に基づいて、前記検出領域内に存在する前記車両が駐車可能な互いに隣接する複数の駐車区画を算定する駐車区画算定部と、
前記駐車区画算定部により算定された前記互いに隣接する複数の前記駐車区画のうち、前記車両の運転席から見て前記車両の幅方向にある前記駐車区画を目標駐車区画として設定する目標駐車区画設定部と、
を備え、
前記車両の進行方向に沿って前記互いに隣接する複数の駐車区画が算定された場合であって、且つ、前記互いに隣接する複数の駐車区画のうち少なくとも2つの前記駐車区画が前記車両の運転席から見て前記車両の幅方向に沿った位置に存在する場合には、前記目標駐車区画設定部は、前記進行方向における後ろ側に位置する前記駐車区画を前記目標駐車区画として設定する駐車支援装置。」

なお、本願発明2ないし4は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものである。

第5 引用文献
1 引用文献1について
(1) 引用文献1の記載事項
引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。下線は当審で付与した。以下同様。
(1a) 「【0001】
本発明は、自車周囲の領域から自車を駐車させる目標駐車位置を検出し、当該目標駐車位置を示す枠画像を自車周囲の画像上に描画して重畳表示することで、自車のドライバに目標駐車位置を認識させるようにした駐車支援装置及び駐車支援方法に関する。」
(1b) 「【0012】
フロントカメラ1、リアカメラ2、右サイドカメラ3、左サイドカメラ4の4つの車載カメラは、例えば、180度程度の画角を有する広角のCCDカメラ或いはCMOSカメラよりなり、これら4つの車載カメラ1?4で自車周囲を囲む全ての領域の映像を撮影できるように、自車周囲の適所に取り付けられている。具体的には、フロントカメラ1は、例えば図2に示すように、自車のフロントグリルなどに設置され、自車前方の領域A1の画像を地面に対して斜めに見下ろす方向で撮影する。また、リアカメラ2は、自車のルーフスポイラなどに設置され、自車後方の領域A2の画像を地面に対して斜めに見下ろす方向で撮影する。また、右サイドカメラ3は、自車の右サイドミラーなどに設置され、自車右側方の領域A3の画像を地面に対して斜めに見下ろす方向で撮影する。さらに、左サイドカメラ4は、自車の左サイドミラーなどに設置され、自車左側方の領域A4の画像を地面に対して斜めに見下ろす方向で撮影する。これら4つの車載カメラ1?4で撮影された画像の信号は、コントロールユニット10へと随時送られる。
・・・
【0016】
画像入力部11は、フロントカメラ1、リアカメラ2、右サイドカメラ3、左サイドカメラ4の4つの車載カメラで撮影された画像をそれぞれ入力する。
【0017】
俯瞰画像生成部12は、画像入力部11により入力された各車載カメラ1?4の撮影画像を用いて、自車周囲を自車上方の仮想視点から見下ろした俯瞰画像を生成する。図4は、この俯瞰画像を生成する処理の概要を説明する図であり、図4中の画像100が俯瞰画像生成部12により生成される俯瞰画像、画像101がフロントカメラ1の撮影画像、画像102がリアカメラ2の撮影画像、画像103が右サイドカメラ3の撮影画像、画像104が左サイドカメラ4の撮影画像である。なお、この図4の例では、俯瞰画像生成の様子を分かり易く図示するために、各車載カメラ1?4が自車周囲の地面に引かれた目安となるラインを含む画像を撮影するようにしている。
【0018】
俯瞰画像生成部12は、フロントカメラ1の撮影画像101に対して既知の視点変換アルゴリズムに従った座標変換処理を行って、自車前方の領域(図2中の領域A1)を自車上方の仮想視点から見下ろした画像100aを生成する。また、俯瞰画像生成部12は、リアカメラ2の撮影画像102に対しても同様の座標変換処理を行って、自車後方の領域(図2中の領域A2)を自車上方の仮想視点から見下ろした画像100bを生成する。さらに、俯瞰画像生成部12は、右サイドカメラ3の撮影画像103や左サイドカメラ4の撮影画像104に対しても同様の座標変換処理を行って、自車右側方の領域(図2中の領域A3)を自車上方の仮想視点から見下ろした画像100cや、自車左側方の領域(図2中の領域A4)を自車上方の仮想視点から見下ろした画像100dを生成する。そして、俯瞰画像生成部12は、これらの画像100a?100dを繋ぎ合わせて、自車周囲を自車上方の仮想視点から見下ろした俯瞰画像100を生成する。なお、この俯瞰画像100の中央は自車の現在位置であり、ここには自車を表す車両オブジェクト105が配置される。」
(1c) 「【0019】
目標駐車位置検出部13は、俯瞰画像生成部12により生成された俯瞰画像に対して直線検出処理等の画像処理を行って、自車が駐車可能である目標駐車位置を検出する。検出対象としては、スーパーマーケットや集合住宅駐車場に見られるアスファルト路面やコンクリート路面にペイントで描かれた駐車枠線とする。なお、目標駐車位置を検出するために画像処理を行う画像としては、俯瞰画像生成部12により生成された俯瞰画像だけでなく、車載カメラ1?4で撮像された画像を用いることも可能である。また、自車に例えば超音波ソナーやレーザレーダ装置、ミリ波レーダ装置などの自車周囲の障害物を検出するセンサが取り付けられている場合には、この障害物検出センサからのセンサ情報を用いて目標駐車位置を検出するようにしてもよい。
【0020】
検出結果判定部14は、目標駐車位置検出部13による目標駐車位置検出の結果、つまり、自車周囲に自車が駐車可能である目標駐車位置が検出できたかどうかの判定を行う。
【0021】
描画部15は、俯瞰画像生成部12により生成された俯瞰画像上に目標駐車位置を示す枠画像を描画する。特に、この描画部15では、検出結果判定部14による判定結果に応じて目標駐車位置を示す枠画像の描画方法を変更するようにしており、例えば、目標駐車位置が検出された場合は当該目標駐車位置の検出過程を示すイメージ画像を描画してから目標駐車位置を示す枠画像を描画し、目標駐車位置が検出できなかった場合は、自車位置に対して予め定められたデフォルトの位置にデフォルト枠画像を描画するとともに、俯瞰画像上でのデフォルト枠画像の位置調整をドライバに促すアイコンなどを描画する。なお、検出結果判定部14による判定結果に応じた枠画像の描画方法の具体例については、詳細を後述する。
【0022】
画像出力部16は、描画部15によって枠画像等の描画が施された俯瞰画像の画像信号を、随時更新しながらディスプレイ5に対して出力する。これにより、ディスプレイ5には、図4に示したような俯瞰画像上に、目標駐車位置の検出過程を示すイメージ画像や、目標駐車位置を示す枠画像、或いは、デフォルト枠画像や、デフォルト枠画像の位置調整を促すアイコンなどが重畳された画像が表示されることになる。」
(1d) 「【0040】
<複数の目標駐車位置が検出された場合の枠画像描画方法>
図8は、複数の目標駐車位置が検出された場合の枠画像描画方法の一例を説明する図でである。なお、図8(a)が、複数の目標駐車位置が検出されたときに最初にディスプレイ5に表示される画像例であり、図8(b)は、図8(a)の画像が表示された後にディスプレイ5に表示される画像例である。この場合も、ディスプレイ5に表示される画像は俯瞰画像100をベースとしており、その中央部には自車を表す車両オブジェクト105が表示され、左側方には駐車枠線106が表示されている。
【0041】
複数の目標駐車位置が検出された場合、コントロールユニット10は、まず図8(a)に示すように、目標駐車位置の検出過程を示すイメージ画像として、例えば図6(a)の例と同様、画像処理によって検出された駐車枠線候補107や駐車枠の端点候補108、駐車枠の中心線候補109などのイメージ画像を俯瞰画像100上に描画して、このイメージ画像が重畳された俯瞰画像100をディスプレイ5に数秒間表示させる。
【0042】
その後、コントロールユニット10は、図8(b)に示すように、検出によって得られた複数の目標駐車位置のうちで、推奨する目標駐車位置を示す枠画像110と、他の検出された目標位置を示す枠画像112,113とを、俯瞰画像100上の各位置に描画する。このとき、枠画像112,113については、現在推奨している目標駐車位置ではないため、推奨する目標駐車位置を示す枠画像110とは異なる描画色で描画し、且つ、破線などで囲われた枠として描画しておくことが望ましい。また、例えば矢印のような目標駐車位置の選択を促すアイコン114,115を、枠画像112,113の描画色と同じ色で対応付けて描画する。そして、これら枠画像110及び枠画像112,113や、矢印などのアイコン114,115などが重畳された俯瞰画像100をディスプレイ5に表示させる。また、このとき、例えば「駐車枠を検出しました」といったメッセージ111や、「駐車枠を選択してください」といったメッセージを併せてディスプレイ5に表示させるようにしてもよい。
【0043】
以上のように、複数の目標駐車位置が検出された場合は、目標駐車位置の検出過程を示すイメージ画像を俯瞰画像100上に描画してディスプレイ5に表示した後に、推奨する目標駐車位置を示す枠画像110及び他の検出された目標駐車位置を示す枠画像112,113や、目標駐車位置の選択を促すアイコン114,115などを俯瞰画像100上に描画してディスプレイ5に表示することによって、駐車支援装置によって複数の目標駐車位置が検出されており、ディスプレイ5に表示されている枠画像110の位置が駐車支援装置で推奨している目標駐車位置であること、さらには、枠画像112,113の位置に目標駐車位置を設定することも可能であることをドライバに的確に認識させることができる。」
(1e)以下の図3及び図8が示されている。

(2) 引用文献1に記載された発明
ア 引用文献1には、
(ア) 駐車支援装置に関し(摘示(1a)【0001】)、
(イ) 画像入力部11は、フロントカメラ1、リアカメラ2、右サイドカメラ3、左サイドカメラ4の4つの車載カメラで撮影された画像を入力すること(摘示(1b)【0016】)、
(ウ)
a 目標駐車位置検出部13は、俯瞰画像に対して画像処理を行って、路面にペイントで描かれた駐車枠線を検出対象とすること(摘示(1c)【0019】)、
b 画像処理を行う画像としては、車載カメラ1?4で撮像された画像を用いることも可能であること(摘示(1c)【0019】)、
(エ)
a 検出結果判定部14は、目標駐車位置検出部13により自車周囲に自車が駐車可能である目標駐車位置が検出できたかどうかの判定を行うこと(摘示(1c)【0020】)、
b 検出結果判定部14による判定結果が、目標駐車位置が検出された場合は目標駐車位置を示す枠画像を描画すること(摘示(1c)【0021】)、
(オ) 検出によって得られた複数の目標駐車位置のうちで、推奨する目標駐車位置を示す枠画像110と、他の検出された目標位置を示す枠画像112,113とを描画すること(摘示(1d)【0042】)、
(カ) 俯瞰画像100の中央は自車の現在位置であり、ここには自車を表す車両オブジェクト105が配置されること(摘示(1b)【0018】)、
が記載されている。また、引用文献1において、
(キ) 上記「(オ)」で枠画像を描画するのは、上記「(エ)」より、検出結果判定部14が目標駐車位置が検出されたと判定した場合であること、(ク) 摘示(1e)の図8より、枠画像110、112及び113は、互いに隣接すること、
(ケ) 摘示(1e)の図8及び上記「(カ)」より、推奨する目標駐車位置を示す枠画像110は、自車の側方にあること、
が明らかである。

イ これらのことから、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「フロントカメラ1、リアカメラ2、右サイドカメラ3、左サイドカメラ4の4つの車載カメラで撮影された画像を入力する画像入力部11と、
車載カメラ1?4で撮像された画像に対して画像処理を行い、路面にペイントで描かれた駐車枠線を検出対象とする目標駐車位置検出部13と、
目標駐車位置検出部13により自車周囲に自車が駐車可能である目標駐車位置が検出できたかどうかの判定を行う検出結果判定部14と、
を備え、
検出結果判定部14が目標駐車位置が検出されたと判定した場合に、検出によって得られた複数の目標駐車位置のうちで、推奨する目標駐車位置を示す枠画像110と、他の検出された目標駐車位置を示す枠画像112、113とを描画し、
枠画像110、112及び113は、互いに隣接し、
推奨する目標駐車位置を示す枠画像110は、自車の側方にある、
駐車支援装置。」

2 引用文献2について
(1) 引用文献2の記載事項
引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
(2a)「 請求の範囲
[1] 駐車を支援する駐車支援装置において、
車両周辺の障害物を検出する障害物検出手段と、
前記障害物検出手段により検出した障害物に隣接する駐車空間を運転者に報知する情報出力手段とを備えることを特徴とする、駐車支援装置。
・・・
[5] 情報出力手段は、駐車空間の位置を示す表示を表示画面上に出力し、該表示は、新たな駐車空間が検出された際に更新される、請求項1?4の何れか1項に記載の駐車支援装置。」
(2b)「[0074]このように本実施例によれば、車両の進行に伴って新たな駐車空間が検出される毎に、報知(「ポン」の出力)及び操舵指示表示への画面切替を行うので、運転者は、車両の進行に伴って次々に検出される駐車空間に対しても、今回検出された駐車空間の位置や操舵開始タイミングを容易に把握することができる。また、車両の偏向角を考慮しつつ、駐車空間の案内報知を行うので、図10に示すような車両両側に駐車空間が存在しうる状況下においても、運転者が意図する側の駐車空間を的確に報知することができる。尚、本実施例において、左右何れの駐車空間に対しても操舵支援可能な車両位置では、左右双方の駐車空間の位置を示す案内表示ないし操舵指示表示がなされてもよい。」
(2c)以下の図10が示されている。

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

a 引用発明の「駐車支援装置」は本願発明1の「駐車支援装置」に相当し、以下同様に、「撮影された画像」は「撮像画像」に、「路面にペイントで描かれた駐車枠線」は「地物」に、「目標駐車位置」は「駐車区画」に、「自車」は「車両」に相当するといえる。
b
(a) 引用発明の「推奨する目標駐車位置」は、目標駐車位置の選択を促す矢印などのアイコン114、115及び「駐車枠を選択してください」等のメッセージがディスプレイ5に表示されるものであって、運転者の選択によってその場所に駐車することを決定するものである(摘示(1d)【0042】?【0043】)。
(b) 一方、本願発明1の「目標駐車区画」は、本願明細書において「目標駐車区画PPを設定した後、運転者が前方の駐車区画Rに目標駐車区画PPを設定したい場合でも、車両1を前進走行させることにより…正しい位置に目標駐車区画PPを設定し直すことができる」(【0041】)、「目標駐車区画PPを自動的に設定し直さないように構成することも可能である。係る場合、目標駐車区画設定部14は、例えば運転者の指示に応じて、目標駐車区画PPを設定する構成とすると好適である」(【0052】)と記載されていることを鑑みれば、最終的には運転者が選択してその場所に駐車することを決定する態様を含み得るものということができる。
(c) そうすると、引用発明の「推奨する目標駐車位置」は、本願発明1の「目標駐車区画」に相当するといえる。
c 引用発明の「枠画像110」及び「枠画像112、113」は、それぞれ「推奨する目標駐車位置」及び「他の検出された目標駐車位置」を「示す」ように描画されたものであるから、上記「a」、「b」より、引用発明の「枠画像110」は本願発明1の「駐車区画」及び「目標駐車区画」に相当し、引用発明の「枠画像112、113」は、本願発明1の「駐車区画」に相当するといえる。
イ 上記アの相当関係より、
a 引用発明の「画像入力部11」が「フロントカメラ1、リアカメラ2、右サイドカメラ3、左サイドカメラ4の4つの車載カメラで撮影された画像を入力する」ことは、本願発明1の「車両の周囲の情景を撮影した撮像画像を取得する撮像画像取得部」「を備える」ことに相当するといえる。
b
(a) 引用発明において、「右サイドカメラ3、左サイドカメラ4」は、技術常識に照らして少なくとも「自車の側方」を撮影するものであるから、引用発明の「車載カメラ1?4で撮像された画像に対して画像処理を行」うことは、本願発明1の「撮像画像取得部により取得された撮像画像における車両の側方の側に予め設定された所定の検出領域について画像認識を行」うことに相当するといえる。
(b) 引用発明の「路面にペイントで描かれた駐車枠線を検出対象とする」ことは、本願発明1の「検出領域内の駐車区画を規定する地物を検出する」ことに相当するといえる。
(c) 上記「(a)」、「(b)」より、引用発明の「目標駐車位置検出部13」が「車載カメラ1?4で撮像された画像に対して画像処理を行い、路面にペイントで描かれた駐車枠線を検出対象とする」ことは、本願発明1の「撮像画像取得部により取得された撮像画像における車両の側方の側に予め設定された所定の検出領域について画像認識を行い、当該検出領域内の駐車区画を規定する地物を検出する地物検出部」「を備える」ことに相当するといえる。
c
(a) 引用発明の「目標駐車位置検出部13により自車周囲に自車が駐車可能である目標駐車位置が検出できたかどうかの判定を行う検出結果判定部14」が「検出結果判定部14が目標駐車位置が検出されたと判定した場合」は、本願発明1の「地物検出部により検出された前記地物に基づいて、前記検出領域内に存在する前記車両が駐車可能な」「駐車区画を算定する」ことに相当するといえる。
(b) 引用発明の「枠画像110、112及び113は、互いに隣接する」ものであるから、「推奨する目標駐車位置を示す枠画像110と、他の検出された目標位置を示す枠画像112、113」は、本願発明1の「互いに隣接する複数の駐車区画」に相当するといえる。
(c) よって、引用発明の「目標駐車位置検出部13により自車周囲に自車が駐車可能である目標駐車位置が検出できたかどうかの判定を行う検出結果判定部14と、を備え、検出結果判定部14が目標駐車位置が検出されたと判定した場合に、検出によって得られた複数の目標駐車位置のうちで、推奨する目標駐車位置を示す枠画像110と、他の検出された目標位置を示す枠画像112、113とを描画し、枠画像110、112及び113は、互いに隣接」することは、本願発明1の「地物検出部により検出された前記地物に基づいて、前記検出領域内に存在する前記車両が駐車可能な互いに隣接する複数の駐車区画を算定する駐車区画算定部」「を備える」ことに相当するといえる。
d
(a) 引用発明において、「枠画像110、112及び113は、互いに隣接」するものであり、また、「推奨する目標駐車位置を示す枠画像110」は「自車の側方にある」から、引用発明の「検出結果判定部14が目標駐車位置が検出されたと判定した場合に、検出によって得られた複数の目標駐車位置のうちで、推奨する目標駐車位置を示す枠画像110を描画」することは、本願発明1の「駐車区画算定部により算定された前記互いに隣接する複数の前記駐車区画のうち、前記車両の運転席から見て前記車両の幅方向にある前記駐車区画を目標駐車区画として設定する目標駐車区画設定部」「を備える」ことと、「駐車区画算定部により算定された前記互いに隣接する複数の前記駐車区画のうち、前記車両の側方にある前記駐車区画を目標駐車区画として設定する目標駐車区画設定部」「を備える」限度で一致するといえる。
(b) なお、上記「(a)」に関し、本願明細書の【0005】には、特許文献1(引用文献1と同じ文献)に記載された駐車支援装置に関し、「一方、特許文献1に記載の駐車支援装置は、複数の目標駐車位置が検出された場合、ユーザに選択を促すようにアイコンやメッセージを表示する。係る場合、ユーザは所望する目標駐車位置に対応する枠画像の位置を押下する等の操作が必要になる。このため、ユーザに煩わしさを与えることになる。」と記載されているが、上記「(ア)b(b)」で述べたのと同様に、本願発明1において「目標駐車区画として設定」した後にも、運転者が何らかの決定のための操作等を要するものといえるから、引用発明において「推奨する目標駐車位置を示す枠画像110を描画」した後に枠画像の位置を押下する等の操作が必要であるとしても、そのことをもって引用発明の「推奨する目標駐車位置を示す枠画像110を描画」することが、本願発明1の「目標駐車区画として設定」することに相当しない、ということはできない。

以上より、本願発明1と引用発明は、
「車両の周囲の情景を撮影した撮像画像を取得する撮像画像取得部と、
前記撮像画像取得部により取得された撮像画像における車両の側方の側に予め設定された所定の検出領域について画像認識を行い、当該検出領域内の駐車区画を規定する地物を検出する地物検出部と、
前記地物検出部により検出された前記地物に基づいて、前記検出領域内に存在する前記車両が駐車可能な互いに隣接する複数の駐車区画を算定する駐車区画算定部と、
前記駐車区画算定部により算定された前記互いに隣接する複数の前記駐車区画のうち、前記車両の側方にある前記駐車区画を目標駐車区画として設定する目標駐車区画設定部
を備える駐車支援装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
「駐車区画算定部により算定された前記互いに隣接する複数の前記駐車区画のうち、前記車両の側方にある前記駐車区画を目標駐車区画として設定する目標駐車区画設定部」に関し、本願発明1では「車両の運転席から見て前記車両の幅方向にある前記駐車区画を目標駐車区画として設定する」のに対し、引用発明ではそのように特定されていない点。
[相違点2]
本願発明1は、「前記車両の進行方向に沿って前記互いに隣接する複数の駐車区画が算定された場合であって、且つ、前記互いに隣接する複数の駐車区画のうち少なくとも2つの前記駐車区画が前記車両の運転席から見て前記車両の幅方向に沿った位置に存在する場合には、前記目標駐車区画設定部は、前記進行方向における後ろ側に位置する前記駐車区画を前記目標駐車区画として設定する」構成を備えているのに対して、引用発明はそのような構成を備えていない点。

(2)判断
事案に鑑みて、上記相違点2について検討する。
上記相違点2に係る本願発明1の構成は、引用文献1には記載も示唆もされていない。
そして、このような構成を備えることにより、本願発明1は、車両の進行方向に沿って互いに隣接する複数の駐車区画が算定された場合であって、且つ、互いに隣接する複数の駐車区画のうち少なくとも2つの駐車区画が車両の運転席から見て車両の幅方向に沿った位置に存在する場合においても、自動的に目標駐車区画を設定することができ、運転者の操作も要しないので、運転者は車両の運転に注力することができるという、引用発明及び引用文献1に記載された事項から予測できない効果を奏するものといえる。
以上より、本願発明1は、引用発明及び引用文献1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

2 本願発明2ないし4について
本願発明2ないし4は本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに、他の発明特定事項を付加するものであるから、本願発明2ないし3については、本願発明1と同じ理由により、引用発明及び引用文献1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできず、本願発明4についても、本願発明4のさらに付加された発明特定事項に対して引用した上記引用文献2にも上記相違点2に係る本願発明1の構成は記載も示唆もされていないから、本願発明1と同じ理由により、引用発明、刊行物1に記載された事項及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

第7 原査定についての判断
原査定の拒絶理由で引用した引用文献Aは当審拒絶理由で引用した引用文献2と同じであり、上記「第6 2」で述べたように、引用文献2には、上記相違点2に係る本願発明1の構成は記載も示唆もされていないから、本願発明1ないし4は、引用文献Aに記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をするものができたものとすることはできない。
なお、原査定において、技術常識を示す文献として、特開2012-17021号公報、特開2010-15331号公報、特開2009-196408号公報、及び国際公開第2012/043092号が提示されているが、いずれの文献にも、上記相違点2に係る本願発明1の構成は記載も示唆もされていない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審の拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-07-10 
出願番号 特願2013-209672(P2013-209672)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B60R)
P 1 8・ 113- WY (B60R)
P 1 8・ 537- WY (B60R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 永冨 宏之粟倉 裕二  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 平田 信勝
和田 雄二
発明の名称 駐車支援装置  
代理人 特許業務法人R&C  
代理人 特許業務法人R&C  

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