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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60N
管理番号 1330025
審判番号 不服2016-6682  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-06 
確定日 2017-07-04 
事件の表示 特願2013-529289「車両用のエネルギ吸収シート」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 3月22日国際公開、WO2012/037222、平成26年 1月16日国内公表、特表2014-500818〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件出願は、2011年9月14日(パリ条約による優先権主張 2010年9月14日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成26年9月16日付け、及び平成27年10月21日付けで手続補正書が提出され、同年12月25日付けで拒絶の査定がなされ(同査定の謄本の送達(発送)日 平成28年1月5日)、これに対して、平成28年5月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に誤訳訂正書が提出されて、明細書、及び、特許請求の範囲を補正する手続補正がされたものである。

第2.平成28年5月6日付けの誤訳訂正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.本件補正後の本願の発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
車両の乗員を支持するためのシートであって、前記シートは、
前記乗員を支持するための面を提供するためのシートフレーム部材と、
該シートフレーム部材から延びたバックフレーム部材であって、第1の縦材と、該第1の縦材から間隔を置かれた第2の縦材とを有し、前記縦材のそれぞれは、前記シートフレーム部材に結合するための近位端部と、該近位端部から間隔を置かれた遠位端部とを有する、バックフレーム部材と、
第1の取り付け位置において前記第1の縦材に結合する第1の端部と、第2の取り付け位置において前記第2の縦材に結合する第2の端部との間に水平方向に延びた第1の横材であって、該第1の横材は、前記縦材の前記近位端部から間隔を置かれている、第1の横材と、
第3の取り付け位置において前記第1の縦材に結合する第1の端部と、第4の取り付け位置において前記第2の縦材に結合する第2の端部との間に水平方向に延びた第2の横材であって、該第2の横材は、前記第1の横材と、前記縦材の前記遠位端部との間に、前記第1の横材及び前記縦材の前記遠位端部から鉛直方向に間隔を置かれている、第2の横材と、を備えており、
前記第1の横材及び前記第2の横材は、前記縦材の前記近位端部と前記遠位端部との間の中間点の下側において鉛直方向に間隔を置かれて配置されており、
前記第1の横材及び前記第2の横材のそれぞれは、熱可塑性材料を含み、
前記第1の横材及び前記第2の横材は、両側にU字形の構成を示す曲げ部が設けられた中央領域を有し、前記第1の横材及び前記第2の横材は、前記曲げ部において折り返されており、前記曲げ部の前記U字形の構成が、前記中央領域及び前記取り付け位置の両方から離れる方向に延びていることにより、前記曲げ部が前記乗員に向かって延びるように構成されており、
所定値よりも大きな力が前記第1の横材及び前記第2の横材に加えられた時に前記曲げ部はまっすぐに延び、前記曲げ部がまっすぐに延びると前記中央領域は塑性変形し、これにより、前記所定値よりも大きな力によって生ぜしめられる、前記シートから前記シートに座っている前記乗員へ伝達される衝撃力を減じることを特徴とする、車両の乗員を支持するためのシート。」 と補正された。
上記の補正は、補正前の「熱可塑性材料から成り」という記載を、誤訳をを訂正するとして、「熱可塑性材料を含み」と補正し、また請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である、第1の横材及び第2の横材の配置に関して、「前記第1の横材及び前記第2の横材は、前記縦材の前記近位端部と前記遠位端部との間の中間点の下側において鉛直方向に間隔を置かれて配置されており、」との限定事項を付加するものであって、特許法第17条の2第5項第2号に規定される「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、前記に記載された事項により特定されるところ、本願補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用例
原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の優先日前である平成7年3月14日に頒布された刊行物である特開平7-69110号公報(以下「引用例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア.「【請求項1】 人を輸送する車両内の連続した座席のための乗客用シートであって、座部分とこれに固定的に又は旋回可能に結合された背部分とから形成されており、この背部分が、フレームと、フレームによって取囲まれてフレーム内に接合された背もたれとから構成されている形式のものにおいて、座部分(4)から背部分(3)への移行部で背もたれの切欠き内に、ベルト(5,6,7)が接合されており、このベルト(5,6,7)がフレーム(2)を張設しており、かつ接合状態では剛性でありながら狭い範囲内で伸長可能であることを特徴とする乗客用シート。」
イ.「【0005】
【発明の効果】本発明の構成によれば、乗客用シートに座っている乗客の膝は、その乗客の前方にあるシートの背面カバーにやはり衝突するが、このカバーを突破して、狭い範囲内で伸長可能なベルトへ当接し、前方のシートの座部分上へ前進する。従って、乗客の上体がさらに前方へ運動することはなくなり、その運動によって乗客が上方へ向かって運動することも、阻止される;言い換えれば、乗客の上体は座ったままの高さに維持されるので、身体の全表面で背カバーに衝突するのである。その結果、乗客は極めて小さな比圧で背もたれの背面カバーに衝突し、けがを負わずにこのカバーによって抑え込まれる。さらに、狭い範囲内で伸長可能なベルトが、膝の衝突エネルギを既に変換させているので、このベルトにおいては、前方のシートに衝突した身体の衝突エネルギの一部が、既に吸収されている。」
ウ.「【0006】上記の、“狭い範囲内で伸長可能なベルト”は、種々異なる材料から製作することができる。しかし、乗客用シートの外側形状を維持するために、このベルトは通常は剛性でなければならない。つまり、通常の負荷によっては変形不可能でなければならない。また、本発明によれば、ベルトの前方に成形部材が配置されており、この成形部材は、背部分の背面を規定できる程剛性でありながら可撓性を有していてもよい。このような“剛性でありながら可撓性を有している成形部材”は、例えば熱可塑性樹脂から製作することができる。熱可塑性樹脂とは、通常の負荷を受けても湾曲しないが、前方へ向かって投げ出された身体の膝によって衝突されると変形して、上記の、“狭い範囲内で伸長可能なベルト”への経路を開放する。さらに、本発明によれば、やはり狭い範囲内でのみ非可逆的に伸長可能な公知の安全ベルトのように、上記ベルトは織成ベルトとして形成されていてもよい。」
エ.「【0008】
【実施例】次に図示の実施例につき本発明を説明する。
【0009】乗客用シートの背部分1は、フレーム2と、フレーム2によって取囲まれてフレーム2内に接合された背もたれ3とから構成されている。また、この背部分1の前方に配置された座部分4の高さが、図面では破線によって示されている。さらに、上記フレーム2を成す2つのフレーム部材の間には、座部分4から背部分1への移行範囲から始まる、狭い範囲内で伸長可能なベルト5,6,7が接合されている。この場合、ベルト5,6,7が乗客から見えないように通常の背カバーより後方に取付けられているので、背部分1の背面側の形状はそのままに維持される。また、上記ベルトは、可撓性を備えて非可逆的に変形可能な材料、例えばプラスチックから製作されていてもよい。このようなベルト5は、図2に示されている。さらに、上記ベルトとして金属製のベルトが使用される場合には、この金属製のベルト5は、図3及び図4に示されたように波形湾曲部8又は凸部9を備えていてもよい。波形湾曲部8及び凸部9は、適当な負荷によって引き伸ばされるので、波形湾曲部8及び凸部9を備えた金属製のベルト5は、必要に応じて狭い範囲内で伸長できる。」
オ.図1から、3つのベルト5,6,7は、下から順に、フレーム2を成す2つのフレーム部材の間にそれぞれ水平状態で接合されており、そのうちの2つのベルト5、6は、各フレーム部材の上端と下端との間の中間点の下側において鉛直方向に配置されていることが看取できる。
また、図3から、「波形湾曲部8」は、ベルト5の両端側において、2つのフレーム部材へのそれぞれの接合部の近傍に設けられており、それぞれの波形湾曲部8は、曲げ部がシートに座った乗客に向かって延びるように構成された二つのU字形が連続して構成される形状であることが看取できる。

上記の記載事項を総合すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「人を輸送する車両内の連続した座席のための乗客用シートであって、
乗客用シートは座部分とこれに固定的に又は旋回可能に結合された背部分とから形成されて、この背部分が、フレームと、フレームによって取囲まれてフレーム内に接合された背もたれとから構成されている形式のものにおいて、座部分4から背部分3への移行部で背もたれの切欠き内に、ベルト5,6,7が下から順に、上記フレーム2を成す2つのフレーム部材の間にそれぞれ水平状態で接合されて、そのうちの2つのベルト5、6は、各フレーム部材の上端と下端との間の中間点の下側において鉛直方向に配置されており、このベルト5,6,7がフレーム2を張設しており、かつ接合状態では通常の負荷によっては変形不可能な剛性でありながら狭い範囲内で伸長可能であって、
ベルトは、可撓性を備えて非可逆的に変形可能な材料であるプラスチック製や、金属製のものであり、金属製のベルトが使用される場合には、ベルト5の両端側において、2つのフレーム部材へのそれぞれの接合部の近傍に波形湾曲部8が設けられ、それぞれの波形湾曲部8は、曲げ部がシートに座った乗客に向かって延びるように構成された二つのU字形が連続して構成される形状であり、
乗客用シートに座っている乗客の膝が、その乗客の前方にあるシートの背面カバーに衝突しても、狭い範囲内で伸長可能なベルトが、膝の衝突エネルギを既に変換させているので、このベルトにおいては、前方のシートに衝突した身体の衝突エネルギの一部が、既に吸収されている乗客用シート。」

3.対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
後者の「人を輸送する車両内の(連続した座席のための)乗客用シート」は、その構造及び機能等からみて、前者の「車両の乗員を支持するためのシート」に相当するものであり、以下同様に、「(背部分を構成する)フレーム2」は「バックフレーム部材」に、「フレーム2を成す2つのフレーム部材」は「第1の縦材と、該第1の縦材から間隔を置かれた第2の縦材」に、それぞれ相当する。また、後者の乗客用シートは、「座部分4とこれに固定的に又は旋回可能に結合された背部分1とから形成」されているから、前者と同様に、「座部分4」内にシートフレーム部材に相当する部材を備えていることは明らかであり、「フレーム2を成す2つのフレーム部材」のそれぞれは、シートフレーム部材に相当する部材に結合するための「近位端部」と、該近位端部から間隔を置かれた「遠位端部」とを有するものといえる。
そして、後者では「座部分4から背部分3への移行部で背もたれの切欠き内に、ベルト5,6,7が下から順に、上記フレーム2を成す2つのフレーム部材の間にそれぞれ水平状態で接合されて、そのうちの2つのベルト5、6は、各フレーム部材の上端と下端との間の中間点の下側において鉛直方向に配置されて」いるが、各ベルトの2つのフレーム部材に対する接合は、各ベルトの両端部が、各フレーム部材の近位端部と遠位端部との間のそれぞれの取り付け位置に結合されることによって行われるといえる。
してみると、ベルト5、6の上下関係からみて、後者の「ベルト5」は、前者の「第1の取り付け位置において前記第1の縦材に結合する第1の端部と、第2の取り付け位置において前記第2の縦材に結合する第2の端部との間に水平方向に延びた第1の横材であって、該第1の横材は、前記縦材の前記近位端部から間隔を置かれている、第1の横材」に相当し、同じく、「ベルト6」は、「第3の取り付け位置において前記第1の縦材に結合する第1の端部と、第4の取り付け位置において前記第2の縦材に結合する第2の端部との間に水平方向に延びた第2の横材であって、該第2の横材は、前記第1の横材と、前記縦材の前記遠位端部との間に、前記縦材の前記遠位端部から鉛直方向に間隔を置かれている、第2の横材」に相当して、ベルト5、6は、前者の第1及び第2の横材と同様に、「各フレーム部材(縦材)の近位端部と遠位端部との間の中間点の下側において配置されて」いるといえる。
また、後者において、「金属製のベルトが使用される場合」のベルトの形状は、「ベルトの両端側において、2つのフレーム部材へのそれぞれの接合部の近傍に波形湾曲部8が設けられ、それぞれの波形湾曲部8は、曲げ部がシートに座った乗客に向かって延びるように構成された二つのU字形が連続して構成される形状」とされているが、これは前者において、「両側にU字形の構成を示す曲げ部が設けられた中央領域を有し、前記第1の横材及び前記第2の横材は、前記曲げ部において折り返されており、前記曲げ部の前記U字形の構成が、前記中央領域及び前記取り付け位置の両方から離れる方向に延びていることにより、前記曲げ部が前記乗員に向かって延びるように構成されており」としていることに相当する。
更に、後者においては、「乗客用シートに座っている乗客の膝が、その乗客の前方にあるシートの背面カバーに衝突しても、狭い範囲内で伸長可能なベルトが、膝の衝突エネルギを既に変換させているので、このベルトにおいては、前方のシートに衝突した身体の衝突エネルギの一部が、既に吸収されている」としているが、これは、車両に対して、前方から後方に向かう方向の力が作用する場合を想定したものであるが、前者の「第1の横材、及び第2の横材」と後者の「金属製のベルト」とは、上記のとおり、その構造に差異はないから、後者においても、車両に対して、車両後方から前方に向かう方向の力が作用する場合は、前者において、「所定値よりも大きな力が前記第1の横材及び前記第2の横材に加えられた時に前記曲げ部はまっすぐに延び、前記曲げ部がまっすぐに延びると前記中央領域は塑性変形し、これにより、前記所定値よりも大きな力によって生ぜしめられる、前記シートから前記シートに座っている前記乗員へ伝達される衝撃力を減じる」としているのと同様の現象が生じるといえる。

したがって、両者は、
「車両の乗員を支持するためのシートであって、前記シートは、
前記乗員を支持するための面を提供するためのシートフレーム部材と、
該シートフレーム部材から延びたバックフレーム部材であって、第1の縦材と、該第1の縦材から間隔を置かれた第2の縦材とを有し、前記縦材のそれぞれは、前記シートフレーム部材に結合するための近位端部と、該近位端部から間隔を置かれた遠位端部とを有する、バックフレーム部材と、
第1の取り付け位置において前記第1の縦材に結合する第1の端部と、第2の取り付け位置において前記第2の縦材に結合する第2の端部との間に水平方向に延びた第1の横材であって、該第1の横材は、前記縦材の前記近位端部から間隔を置かれている、第1の横材と、
第3の取り付け位置において前記第1の縦材に結合する第1の端部と、第4の取り付け位置において前記第2の縦材に結合する第2の端部との間に水平方向に延びた第2の横材であって、該第2の横材は、前記第1の横材と、前記縦材の前記遠位端部との間に、前記縦材の前記遠位端部から鉛直方向に間隔を置かれている、第2の横材と、を備えており、
前記第1の横材及び前記第2の横材は、前記縦材の前記近位端部と前記遠位端部との間の中間点の下側において配置されており、
前記第1の横材及び前記第2の横材は、両側にU字形の構成を示す曲げ部が設けられた中央領域を有し、前記第1の横材及び前記第2の横材は、前記曲げ部において折り返されており、前記曲げ部の前記U字形の構成が、前記中央領域及び前記取り付け位置の両方から離れる方向に延びていることにより、前記曲げ部が前記乗員に向かって延びるように構成されており、
所定値よりも大きな力が前記第1の横材及び前記第2の横材に加えられた時に前記曲げ部はまっすぐに延び、前記曲げ部がまっすぐに延びると前記中央領域は塑性変形し、これにより、前記所定値よりも大きな力によって生ぜしめられる、前記シートから前記シートに座っている前記乗員へ伝達される衝撃力を減じる、車両の乗員を支持するためのシート。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
本願補正発明では、第1の横材及び第2の横材は「鉛直方向に間隔を置かれて」配置されるのに対し、引用発明では、ベルト5及び6(第1の横材及び第2の横材)が鉛直方向に間隔を置かれて配置されるか否かが不明である点。
[相違点2]
本願補正発明では、第1の横材及び第2の横材のそれぞれは「熱可塑性材料を含み」とされるのに対し、引用発明では、ベルト5及び6(第1の横材及び第2の横材)は「金属製」とされている点。

4.判断
(1)上記の相違点1について検討する。
引用発明において、ベルト5及び6(第1の横材及び第2の横材)を2つのフレーム部材(第1の縦材、第2の縦材)間に配置する場合、ベルト5及び6は、鉛直方向に間隔を置いて配置する、鉛直方向に間隔を置かずに配置する、または重ねて配置するかのいずれかであり、また本願明細書をみても相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項に格別の技術的意義は記載されていないから、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が所望により適宜なし得る設計的事項である。
したがって、引用発明において、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得る程度の事項といえる。
(2)上記の相違点2について検討する。
引用発明では、ベルトの材質に関して「通常の負荷によっては変形不可能な剛性でありながら狭い範囲内で伸長可能」であることを必須の要件とする一方、当該要件を満たすものとしては、「可撓性を備えて非可逆的に変形可能な材料であるプラスチック」であってもよいとされている。また、引用例には、「(ベルトの近傍に配置される成形部材のための)剛性でありながら可撓性を有している」素材として、「熱可塑性樹脂」を例示する記載(上記「2.ウ」参照。)があり、引用発明に係るベルトを熱可塑性樹脂で形成すること、即ち、熱可塑性材料を含むものとすることは、引用発明において示唆されているといえる。
更に、引用発明は、「金属製のベルトが使用される場合」に、「ベルトの両端側において、2つのフレーム部材へのそれぞれの接合部の近傍に波形湾曲部8」を設けるとするものであるが、当該波形湾曲部は、ベルトに異常な負荷がかかった場合のベルトの変形を容易にするためのものであると解される。そして、このように波形湾曲部を設けて、異常な負荷がかかった場合のベルトの変形を容易にすることは、ベルトを熱可塑性樹脂で形成する場合であっても、金属製とする場合と同様に有利なことは明らかである。
したがって、これらの事項を踏まえて、引用発明において、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得る程度の事項といえる。
(3)そして、本願補正発明の発明特定事項の全体によって奏される効果をみても、引用発明から、当業者が予測し得る範囲内のものである。

よって、本願補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといえるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反しており、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する、同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本件出願の発明について
1.本件出願の発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成27年10月21日付けの手続補正書により補正された、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】
車両の乗員を支持するためのシートであって、前記シートは、
前記乗員を支持するための面を提供するためのシートフレーム部材と、
該シートフレーム部材から延びたバックフレーム部材であって、第1の縦材と、該第1の縦材から間隔を置かれた第2の縦材とを有し、前記縦材のそれぞれは、前記シートフレーム部材に結合するための近位端部と、該近位端部から間隔を置かれた遠位端部とを有する、バックフレーム部材と、
第1の取り付け位置において前記第1の縦材に結合する第1の端部と、第2の取り付け位置において前記第2の縦材に結合する第2の端部との間に水平方向に延びた第1の横材であって、該第1の横材は、前記縦材の前記近位端部から間隔を置かれている、第1の横材と、
第3の取り付け位置において前記第1の縦材に結合する第1の端部と、第4の取り付け位置において前記第2の縦材に結合する第2の端部との間に水平方向に延びた第2の横材であって、該第2の横材は、前記第1の横材と、前記縦材の前記遠位端部との間に、前記第1の横材及び前記縦材の前記遠位端部から鉛直方向に間隔を置かれている、第2の横材と、を備え、
前記第1の横材及び前記第2の横材のそれぞれは、熱可塑性材料から成り、
前記第1の横材及び前記第2の横材は、両側にU字形の構成を示す曲げ部が設けられた中央領域を有し、前記第1の横材及び前記第2の横材は、前記曲げ部において折り返されており、前記曲げ部の前記U字形の構成が、前記中央領域及び前記取り付け位置の両方から離れる方向に延びていることにより、前記曲げ部が前記乗員に向かって延びるように構成されており、
所定値よりも大きな力が前記第1の横材及び前記第2の横材に加えられた時に前記曲げ部はまっすぐに延び、前記曲げ部がまっすぐに延びると前記中央領域は塑性変形し、これにより、前記所定値よりも大きな力によって生ぜしめられる、前記シートから前記シートに座っている前記乗員へ伝達される衝撃力を減じることを特徴とする、車両の乗員を支持するためのシート。」
2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載内容、並びに引用発明は、上記「第2.2.引用例」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記「第2.1.本件補正後の本願の発明」で検討した、本願補正発明に対し、第1の横材及び第2の横材の配置に関して、「前記第1の横材及び前記第2の横材は、前記縦材の前記近位端部と前記遠位端部との間の中間点の下側において鉛直方向に間隔を置かれて配置されており、」との限定事項を省いたものであり、また、本願発明に係る「(第1及び第2の横材が)熱可塑性材料から成」ることは、本願補正発明に係る「(第1及び第2の横材が)熱可塑性材料を含」むことに包含される。つまり、本願発明を特定する事項の全てが、本願補正発明に含まれているといえる。

そうすると、本願発明を特定する事項の全てを含む本願補正発明が、上記の「第2.3.対比」及び「第2.4.判断」に記載したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-02-01 
結審通知日 2017-02-06 
審決日 2017-02-17 
出願番号 特願2013-529289(P2013-529289)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小島 哲次  
特許庁審判長 森次 顕
特許庁審判官 黒瀬 雅一
藤本 義仁
発明の名称 車両用のエネルギ吸収シート  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 二宮 浩康  
代理人 前川 純一  
代理人 上島 類  
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