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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61K
管理番号 1330061
異議申立番号 異議2016-700068  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-08-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-01-28 
確定日 2017-05-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5754777号発明「ソフトカプセル及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5754777号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-10〕、〔11、12〕について訂正することを認める。 特許第5754777号の請求項11ないし12に係る特許を取り消す。 特許第5754777号の請求項1?10に係る特許についての申立てを却下する。  
理由 第1 手続の経緯
特許第5754777号の請求項1?12に係る特許についての出願は、平成22年6月16日(優先権主張 平成21年6月19日、平成22年2月5日)を国際出願日とする特許出願(特願2010-546567号)の一部を平成23年9月2日に新たな特許出願としたものであって、平成27年6月5日にその特許権の設定登録がされ、その特許に対し、特許異議申立人 尾田久敏により請求項1?12に対して特許異議の申立てがなされた。

その後の手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年 3月25日付け 取消理由通知
同年 5月30日 意見書・訂正請求書(特許権者)
同年 7月21日 意見書(特許異議申立人)
同年 8月30日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年11月 4日 意見書・訂正請求書(特許権者)
同年12月 8日付け 訂正拒絶理由通知
平成29年 1月11日 意見書・訂正請求書に係る手続補正書(特許権者)

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
特許権者は、平成29年1月11日付け手続補正書により補正された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1-12について訂正することを求め(以下、「本件訂正請求」という。)、その訂正の内容は、 次に示すとおりである。

(1)請求項1ないし10からなる一群の請求項に係る訂正
ア 訂正事項1
請求項1を削除する。

イ 訂正事項2
請求項2を削除する。

ウ 訂正事項3
請求項3を削除する。

エ 訂正事項4
請求項4を削除する。

オ 訂正事項5
請求項5を削除する。

カ 訂正事項6
請求項6を削除する。

キ 訂正事項7
請求項7を削除する。

ク 訂正事項8
請求項8を削除する。

ケ 訂正事項9
請求項9を削除する。

コ 訂正事項10
請求項10を削除する。

(2)請求項11ないし12からなる一群の請求項に係る訂正
サ 訂正事項11
請求項11に「シームレスソフトカプセルの皮膜を調製する方法において、カプセル皮膜の組成物となるカラギナンを酸性pH調整剤によって分解する工程と、その分解を中和剤によって停止する工程と」とあるのを、「前記製造方法における、前記シームレスソフトカプセル皮膜の調製方法が、前記シームレスソフトカプセル皮膜の組成物となるカラギナンを酸性pH調整剤によって分解する工程と、その分解を中和剤によって停止する工程と」に訂正し、この訂正に伴って、請求項11に「滴下法によって製造する」とあるのを、「カプセル内容物がシームレスソフトカプセル皮膜内に充填されたシームレスソフトカプセルの、滴下法による製造方法であって」に訂正し、請求項11に「分解停止後の、カラギナンを少なくとも有する前記シームレスソフトカプセル皮膜の組成物を、前記カプセル内容物と共に、前記滴下法に供する工程と」との記載を追加する訂正を行う。
さらに、請求項11、12における「カプセル」や「ソフトカプセル」を「シームレスソフトカプセル」に訂正する。

シ 訂正事項12
請求項11に「前記滴下法に供する前記シームレスソフトカプセル皮膜の組成物の75℃における粘度が、前記分解する工程及び前記停止する工程により、30?150mPa・sに調整されており」との記載を追加する。

ス 訂正事項13
請求項11に「前記シームレスソフトカプセル皮膜の組成物におけるカラギナンの含有率を50%以上とし」との記載を追加する。

セ 訂正事項14
請求項11に「前記カラギナンが少なくともκカラギナンを含み」との記載を追加する。

ソ 訂正事項15
請求項11に「製造されるシームレスソフトカプセルの皮膜率を7?15%に調整し」との記載を追加する。

タ 訂正事項16
請求項11に「前記シームレスソフトカプセル皮膜の硬度を5?40Nに調整する」との記載を追加する。

チ 訂正事項17
請求項12に「ゲル化助剤水溶液に、エタノールを含有させて用いる」とあるのを「シームレスソフトカプセル皮膜の組成物がさらにアルギン酸塩類を含み、かつ、シームレスソフトカプセル皮膜の調製方法が、シームレスソフトカプセル皮膜に含まれるアルギン酸塩類を、カルシウムイオン及びエタノールを含むゲル化助剤水溶液中でゲル化処理する工程をさらに備えることを特徴とする」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1?10について
訂正事項1?10は、請求項1?10を削除するものであるから、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項11?17について
ア 訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲によれば、訂正事項11?16は、請求項11について、訂正前の
「シームレスソフトカプセルの皮膜を調製する方法において、カプセル皮膜の組成物となるカラギナンを酸性pH調整剤によって分解する工程と、その分解を中和剤によって停止する工程とを備え、滴下法によって製造することを特徴とするソフトカプセルの製造方法。」
を、
「カプセル内容物がシームレスソフトカプセル皮膜内に充填されたシームレスソフトカプセルの、滴下法による製造方法であって、
前記製造方法における、前記シームレスソフトカプセル皮膜の調製方法が、前記シームレスソフトカプセル皮膜の組成物となるカラギナンを酸性pH調整剤によって分解する工程と、その分解を中和剤によって停止する工程と、分解停止後の、カラギナンを少なくとも有する前記シームレスソフトカプセル皮膜の組成物を、前記カプセル内容物と共に、滴下法に供する工程とを備え、
前記滴下法に供する前記シームレスソフトカプセル皮膜の組成物の75℃における粘度が、前記分解する工程及び前記停止する工程により、30?150mPa・sに調整されており、
前記シームレスソフトカプセル皮膜の組成物におけるカラギナンの含有率を50%以上とし、
前記カラギナンが少なくともκカラギナンを含み、
製造されるシームレスソフトカプセルの皮膜率を7?15%に調整し、
前記シームレスソフトカプセル皮膜の硬度を5?40Nに調整することを特徴とするシームレスソフトカプセルの製造方法。」
と訂正するものである。(下線部は訂正箇所。以下同様。)
そして、訂正事項11は明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、訂正事項12?14は滴下法に供するシームレスソフトカプセル皮膜の組成物についての粘度、カラギナンの含有率、カラギナンの種類、訂正事項15はシームレスソフトカプセルの皮膜率、訂正事項16はシームレスソフトカプセル皮膜の硬度をそれぞれ特定するものであって特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特定される事項は本件明細書【0021】、【0012】、【0026】、【0013】、【0015】の記載に基づいているので新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

イ 訂正事項17は、請求項12について、訂正前の
「ゲル化助剤水溶液に、エタノールを含有させて用いる請求項11に記載のソフトカプセルの製造方法。」
を、
「シームレスソフトカプセル皮膜の組成物がさらにアルギン酸塩類を含み、かつ、シームレスソフトカプセル皮膜の調製方法が、シームレスソフトカプセル皮膜に含まれるアルギン酸塩類を、カルシウムイオン及びエタノールを含むゲル化助剤水溶液中でゲル化処理する工程をさらに備えることを特徴とする請求項11に記載のシームレスソフトカプセルの製造方法。」
と訂正するものであり、明瞭でない記載の釈明、又は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特定される事項は本件明細書【0022】、【0023】の記載に基づいているので新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)なお、訂正前の請求項1?10は、請求項2?10が請求項1の記載を引用する関係にあり、また、訂正前の請求項11、12は、請求項12が請求項11の記載を引用する関係にあるから、訂正前において、請求項[1?10]、[11、12]は、それぞれ一群の請求項に該当し、上記訂正請求は、一群の請求項ごとにされたものである。

3 小括
したがって、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項[1?10]、[11、12]について訂正を認める。

第3 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項11、12に係る発明(以下、「本件発明11」、「本件発明12」といい、それらをまとめて「本件発明」という。)は、以下のとおりである。

【請求項1】(削除)
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
【請求項6】(削除)
【請求項7】(削除)
【請求項8】(削除)
【請求項9】(削除)
【請求項10】(削除)
【請求項11】
カプセル内容物がシームレスソフトカプセル皮膜内に充填されたシームレスソフトカプセルの、滴下法による製造方法であって、
前記製造方法における、前記シームレスソフトカプセル皮膜の調製方法が、前記シームレスソフトカプセル皮膜の組成物となるカラギナンを酸性pH調整剤によって分解する工程と、その分解を中和剤によって停止する工程と、分解停止後の、カラギナンを少なくとも有する前記シームレスソフトカプセル皮膜の組成物を、前記カプセル内容物と共に、滴下法に供する工程とを備え、
前記滴下法に供する前記シームレスソフトカプセル皮膜の組成物の75℃における粘度が、前記分解する工程及び前記停止する工程により、30?150mPa・sに調整されており、
前記シームレスソフトカプセル皮膜の組成物におけるカラギナンの含有率を50%以上とし、
前記カラギナンが少なくともκカラギナンを含み、
製造されるシームレスソフトカプセルの皮膜率を7?15%に調整し、
前記シームレスソフトカプセル皮膜の硬度を5?40Nに調整することを特徴とするシームレスソフトカプセルの製造方法。シームレスソフトカプセルの皮膜を調製する方法において、カプセル皮膜の組成物となるカラギナンを酸性pH調整剤によって分解する工程と、その分解を中和剤によって停止する工程とを備え、滴下法によって製造することを特徴とするソフトカプセルの製造方法。
【請求項12】
シームレスソフトカプセル皮膜の組成物がさらにアルギン酸塩類を含み、かつ、シームレスソフトカプセル皮膜の調製方法が、シームレスソフトカプセル皮膜に含まれるアルギン酸塩類を、カルシウムイオン及びエタノールを含むゲル化助剤水溶液中でゲル化処理する工程をさらに備えることを特徴とする請求項11に記載のシームレスソフトカプセルの製造方法。

第4 取消理由通知の概要
当審が平成28年8月30日付け取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
[取消理由1] 特許法第36条第6項第2号について
請求項1に係る本件発明1は明確でない。請求項1を直接または間接的に引用して記載される請求項2ないし10に係る本件発明2ないし10についても、本件発明1と同様に明確であるとはいえない。
したがって、本件発明1ないし10に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

[取消理由2] 特許法第36条第4項第1号について
2ア 本件発明1は「カプセル皮膜の組成物となるカラギナンを酸性pH調整剤によって分解し、その分解を中和剤によって停止し、滴下法によって製造されるシームレスソフトカプセル」であるから、カラギナンを酸性pH調整剤で分解し、その分解を中和剤によって停止することにより、滴下法によるシームレスソフトカプセルの製造に適した所望の粘度に調整することができることが必要であるといえる。

2イ これに対し、本件明細書には、【0030】、【0031】に酸性pH調整剤と中和剤の薬剤の例示はあるものの、酸性pH調整剤によるカラギナンの分解工程と、中和剤によるその停止工程を行ったことについての実施例はなく、酸性pH調整剤や中和剤の濃度、処理温度、分解時間、中和剤で分解を停止するタイミング等の具体的処理条件については一切記載されていない。また、所望の粘度についても【0021】に好ましい粘度の数値範囲は示されているが、この範囲の粘度とするための処理条件も不明である。そして、実施例1は製造されたシームレスソフトカプセルのカプセル皮膜の組成(酸性pH調整剤や中和剤の種類と製造後のカプセル皮膜における濃度)を示すのみで、具体的な分解処理条件や分解工程の前後での具体的な粘度は不明である。実施例2?4についても、実施例1のカプセル形成後の追加の処理が、湿度に対するカプセルの耐久性に及ぼす影響を調べるものであって、実施例1のカプセルの製造における分解処理条件等を説明または補足するものではない。

2ウ 更に、酸性pH調整剤による分解工程から始まる具体的な実施例がないため、分解工程と、中和剤によって停止する工程とを行ってから、どのように滴下法によるシームレスソフトカプセル製造工程に移行するのか(中和剤を加えた液体系をそのまま滴下法の工程に移すのか、あるいは、分解後のカラギナンを分離し、分離されたカラギナンを用いて滴下法を行うのか)も不明である。

2エ そうすると、本件明細書の記載からは、滴下法でシームレスソフトカプセルを製造するためにカラギナンをどの程度分解すればよいか不明であると言わざるを得ず、本件明細書の記載は、当業者が本件発明1(同様に、本件発明2ないし本件発明12)を実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。
したがって、本件発明1ないし12に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

第5 取消理由についての当審の判断
当審は、本件発明11、12に係る特許は、取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由2によって取り消すべきものと判断する。
なお、取消理由1は、請求項1ないし10に係る特許に対して通知されたものであるが、上記第2で検討したとおりの本件訂正請求により、請求項1ないし10は削除されたので、対象となる請求項が存在しない。

1 [取消理由2]について
(1)本件明細書の記載
本件明細書【0020】に記載のとおり、本件発明は、「その皮膜の調製方法において、カプセル皮膜の組成物となるカラギナンを酸性pH調整剤によって分解する工程と、その分解を中和剤によって停止する工程とを備えることを特徴とする」ものであるから、その点に関して、本件明細書の記載をみてみると、「カラギナンを酸性pH調整剤によって分解する工程と、その分解を中和剤によって停止する工程」に関連する記載として以下の箇所が挙げられる。

・【0012】
カプセル皮膜の組成物におけるカラギナンの含有率は、50%以上、好ましくは70%以上としてもよい。なお、この含有率は、水分を除いての値である。
・【0013】
皮膜率は、5?20%、好ましくは7?15%としてもよい。なお、この皮膜率は、カプセル全体に占めるカプセル皮膜の質量の割合である。
・【0015】
カプセル皮膜の硬度は、5?40Nとするのが好ましい。5Nより小さいと、製造工程中に不都合が生じやすく、40Nを超えると、指でつぶす場合に困難性が高まるからである。より好ましくは10?20Nとしてもよい。……
・【0020】
本発明のソフトカプセルの製造方法は、その皮膜の調製方法において、カプセル皮膜の組成物となるカラギナンを酸性pH調整剤によって分解する工程と、その分解を中和剤によって停止する工程とを備えることを特徴とする。すなわち、酸による分解で、分子量と粘度を低減させ、アルカリによる中和で分解を停止させて、所望の粘度に設定させられる。
・【0021】
ここで、カラギナンを分解する程度を、カプセルの内容物に応じ、好ましい粘度までに調整してもよい。この場合の好ましい粘度とは、30?150mPa・s、より好ましくは50?100mPa・sである。なお、粘度測定は、「(株)トキメック製、C型粘度計・CVR-20」で液温75℃にて、100mPa・s以下の場合はロータNo.0を使用し、100mPa・sを超えるときはロータNo.1を使用して測定できる。
・【0026】
本発明によるソフトカプセルは、カプセル皮膜の組成物に、カラギナンと、酸性pH調整剤、中和剤とを少なくとも有する。
主成分のカラギナンは、κ,ι,λ等のタイプや原料などによって細分類され得るが、基本的にはこれらの内、κタイプが必須であり、ι,λはいずれも適宜利用可能である。
……
・【0029】
ソフトカプセルの製造には、カプセル皮膜の組成物となるカラギナンを酸性pH調整剤によって分解する工程と、その分解を中和剤によって停止する工程とを含む。すなわち、酸による分解で、分子量と粘度を低減させ、アルカリによる中和で分解を停止させて、所望の粘度に設定する。
カラギナンを分解する程度は、カプセルの内容物との兼ね合いなどによって、好ましい粘度までに調整する。
・【0030】
酸性pH調整剤としては、クエン酸や、リンゴ酸、酢酸、ギ酸、シュウ酸、乳酸、フィチン酸、塩酸など、弱酸・強酸、有機酸・無機酸は勿論、リン酸水素一カリウムなど、中性域の液を酸性域に変えられるものであれば何でも使用可能である。
・【0031】
中和剤としては、使用する酸性pH調整剤に対応させたアルカリが使用でき、例えば、リン酸水素2カリウムや、クエン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなど、酸性域の液を中和できるものであれば何でも使用可能である。
・【0063】
(実施例1)
表1は、本発明による実施例のカプセル皮膜の組成を示す表である。
・【0064】
【表1】

・【0065】
カプセル内容物としてl-メントール30%MCT溶液を、皮膜率8.0%、皮膜厚25.0μm、直径4mmのカプセルに充填してシームレスカプセルを製造した。ただし、本実施例では、カルシウム処理によりアルギン酸ナトリウムをアルギン酸カルシウムに置換する処理を行っていない。
乾燥後の硬度を測定すると、15N((株)藤原製作所製 木屋式デジタル硬度計KHT-20N型、サンプル数20)であった。
得られたソフトカプセルを、乾燥後にタバコフィルターに埋設したところ、手指で容易にパチンと音を立てて割れ、カプセルが割れる音と感触を楽しめた。またメントールの爽快な香りも楽しめた。

(2)上記(1)の記載の検討
ア 上記(1)の記載のうち、【0013】、【0015】は、カプセル製造後のカプセルの性状についての説明であり、カラギナンの分解・停止とは直接関係しない。

イ 【0026】、【0030】、【0031】ではカプセル皮膜の調製にあたってカプセル皮膜の組成物の原料(成分)について説明されているが、本件発明が、酸性pH調整剤による分解、及び、分解停止後のカプセル皮膜の組成物を、カプセル内容物と共に、滴下法に供する工程とを備えるものであることから、カプセル皮膜の組成物は液体の状態である(すなわち、カプセル皮膜の組成物の成分として水が含まれている)ことは明らかであるところ、カラギナンの分解前のカプセル皮膜の組成物の原料におけるカラギナンの濃度(すなわち、水分の存在を加味しての分解前の液体状態におけるカラギナンの濃度)は記載されておらず、本件明細書の記載からは分解前の液体状態におけるカラギナンの濃度は不明である。そして、【0012】の「カプセル皮膜の組成物におけるカラギナンの含有率」についても「水分を除いての値」であるから、水分の存在を加味しての分解前の液体状態におけるカラギナンの濃度が不明であることは同様である。その他、カラギナンの分解前のカプセル皮膜の組成物の性状(粘度等)についての説明は見当たらない。

ウ 【0020】、【0029】はカラギナンの分解・停止で粘度を所望の値とするという一般的な記載にとどまる。【0021】に唯一、分解停止の目安としての粘度の数値範囲の具体的記載が認められる。

エ 実施例1(【0063】?【0065】)の【表1】(【0064】)に示されるカプセル皮膜の組成は、中和剤であるリン酸水素2カリウムが含まれることから、カラギナンの分解後(中和剤による分解停止後)のカプセル皮膜の組成であることは明らかであり、実施例1は、カラギナンの分解停止後のシームレスソフトカプセルの製造工程の実施例に過ぎず、「カラギナンを酸性pH調整剤によって分解する工程と、その分解を中和剤によって停止する工程」についての実施例ではない。

(3)カプセル皮膜の組成物の粘度とカラギナンの分解の程度のとの関係について
ア 上記(2)でみたとおり、本件明細書には、カラギナンの分解前のカプセル皮膜の組成物中のカラギナン濃度や粘度に関する説明はなく、「カラギナンを酸性pH調整剤によって分解する工程と、その分解を中和剤によって停止する工程」の実施例もない。

イ そうであるところ、特許権者が提出した平成28年5月30日付け意見書(7頁24?26行)及び同意見書に添付された乙第1号証(追加実験)の比較例2にも示されるとおり、カプセル皮膜の組成物の粘度は添加する水の量(すなわち、水分の存在を加味しての液体状態におけるカラギナンの濃度)によって変化するものである。そうすると、カプセル皮膜の組成物の粘度は、カラギナンの分解の程度のみによって決まるものではないことが明らかである。

ウ してみると、カラギナンの分解工程における分解前のカラギナンの濃度(あるいは、分解前の粘度)等の分解条件が本件明細書に全く開示されていないという状況の下では、カラギナンの分解後の、シームレスソフトカプセル皮膜の組成物の粘度を30?150mPa・sに調整したとしても、カラギナンをどの程度分解すればよいか依然として不明であると言わざるを得ない。

(4)小括
よって、本件明細書の記載は、本件発明について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。

2 平成29年1月11日付け意見書における特許権者の主張
(1)上記意見書(4頁6?25行)において、特許権者は以下のとおり主張している。
ア 「しかし、当業者であれば、本件明細書の記載や当該技術分野の技術水準を踏まえた上で、本件発明11において、カラギナンを酸性pH調整剤によって分解し、その分解を中和剤によって停止し、シームレスソフトカプセル皮膜の組成物の粘度を30?150mPa・sに調整し、滴下法に供することだけでなく、シームレスソフトカプセル皮膜の組成物におけるカラギナンの含有率を50%以上とすること、前記カラギナンが少なくともκカラギナンを含むこと、シームレスソフトカプセル皮膜の硬度を5?40Nとすること、調製されるシームレスソフトカプセルの皮膜率を7?15%にすることが特定されていることを併せ考慮することにより、シームレスソフトカプセル皮膜組成物におけるカラギナンの濃度をどの程度とするか、分解前のシームレスソフトカプセル皮膜組成物の粘度をどの程度とするか、酸性pH調整剤や中和剤の濃度をどの程度とするか、処理温度、分解時間、中和剤で分解を停止するタイミングをどの程度とするか等の具体的処理条件を適宜設定することができます。
すなわち、当業者であれば、本件明細書の記載や当該技術分野の技術水準を踏まえ、例えば、シームレスソフトカプセル皮膜組成物におけるカラギナンの濃度を約50?80%とし、分解前のシームレスソフトカプセル皮膜組成物の粘度を約300?2000mPa・sとし、酸性pH調整剤の濃度を約0.1?1%とし、中和剤の濃度を約0.2?2%とし、分解処理温度を約80?95℃とし、分解時間を約5?360分とするといった具体的処理条件を適宜設定することができます。」

イ しかしながら、カラギナンの分解後の、シームレスソフトカプセル皮膜の組成物の粘度を30?150mPa・sに調整するだけでは、カラギナンの分解の程度を把握できないことは、上記1(3)で示したとおりであり、シームレスソフトカプセル皮膜の組成物におけるカラギナンの含有率は分解前の水分含有量が不明である以上、分解の程度を示す特定事項として不十分であり、κカラギナン等原料のカラギナンの種類の如何はカラギナンの分解の程度とは直接関係がなく、シームレスソフトカプセル皮膜の硬度や調製されるシームレスソフトカプセルの皮膜率はカプセル製造後の性状であって、カラギナンの分解工程中でのカラギナンの分解の程度を示す指標とはならない。
そして、シームレスソフトカプセルを得るための酸性pH調整剤によるカラギナンの分解や中和剤によるその停止に関する技術水準を示す証拠は何ら提示されていない以上、何をもって、「シームレスソフトカプセル皮膜組成物におけるカラギナンの濃度を約50?80%とし、及び/又は、分解前のカプセル皮膜組成物の粘度を約300?2000mPa・sとすれば、本発明の特徴(「手指で割れやすく、割れる際の音や感触などの付加価値を有している」)を備えたシームレスソフトカプセルが得られるであろうことを十分明確に理解することができる」(同意見書5頁15?20行)といえるのか不明であり、具体的なカラギナンの濃度や分解前のカプセル皮膜組成物の粘度の数値が導き出せる根拠も全く不明であって、特許権者の主張は採用できない。

(2)また、特許権者は、次のようにも主張する。
ア 「審判官殿は、カプセル皮膜組成物におけるカラギナンの濃度によっては、カラギナンが全く分解されてない状態であっても本件発明で特定される粘度となる旨指摘しております。しかし、そのような場合は、例えば乙第1号証の比較例2に示されるように、シームレスソフトカプセル皮膜の硬度が本件発明11の数値限定の下限値である5Nよりも低い値(比較例2では1N)となり、本発明におけるシームレスソフトカプセル皮膜からは外れることとなります。」(同意見書4頁26行?5頁6行)

イ しかしながら、分解前のカプセル皮膜組成物におけるカラギナンの濃度や粘度が未知数である状況下、シームレスソフトカプセルを製造後にその硬度やその他の製造後の性状の特定事項がその数値範囲内に入っているか否かを確かめなければ、本件発明のシームレスソフトカプセルを製造できたか否かわからないとすれば、それは、当業者に過度の試行錯誤を強いるものといえ、当業者が本件発明を容易に実施できるものとはいえないので、かかる特許権者の主張も採用できない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。
したがって、本件発明11、12に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
また、請求項1?10に係る特許は、訂正により、削除されたため、本件特許の請求項1?10に対して、異議申立人 尾田久敏がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(削除)
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
【請求項6】(削除)
【請求項7】(削除)
【請求項8】(削除)
【請求項9】(削除)
【請求項10】(削除)
【請求項11】
カプセル内容物がシームレスソフトカプセル皮膜内に充填されたシームレスソフトカプセルの、滴下法による製造方法であって、
前記製造方法における、前記シームレスソフトカプセル皮膜の調製方法が、前記シームレスソフトカプセル皮膜の組成物となるカラギナンを酸性pH調整剤によって分解する工程と、その分解を中和剤によって停止する工程と、分解停止後の、カラギナンを少なくとも有する前記シームレスソフトカプセル皮膜の組成物を、前記カプセル内容物と共に、滴下法に供する工程とを備え、
前記滴下法に供する前記シームレスソフトカプセル皮膜の組成物の75℃における粘度が、前記分解する工程及び前記停止する工程により、30?150mPa・sに調整されており、
前記シームレスソフトカプセル皮膜の組成物におけるカラギナンの含有率を50%以上とし、
前記カラギナンが少なくともκカラギナンを含み、
製造されるシームレスソフトカプセルの皮膜率を7?15%に調整し、
前記シームレスソフトカプセル皮膜の硬度を5?40Nに調整することを特徴とするシームレスソフトカプセルの製造方法。
【請求項12】
シームレスソフトカプセル皮膜の組成物がさらにアルギン酸塩類を含み、かつ、シームレスソフトカプセル皮膜の調製方法が、シームレスソフトカプセル皮膜に含まれるアルギン酸塩類を、カルシウムイオン及びエタノールを含むゲル化助剤水溶液中でゲル化処理する工程をさらに備えることを特徴とする請求項11に記載のシームレスソフトカプセルの製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-03-30 
出願番号 特願2011-191389(P2011-191389)
審決分類 P 1 651・ 536- ZAA (A61K)
最終処分 取消  
前審関与審査官 澤田 浩平  
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 齊藤 光子
小川 慶子
登録日 2015-06-05 
登録番号 特許第5754777号(P5754777)
権利者 富士カプセル株式会社
発明の名称 ソフトカプセル及びその製造方法  
代理人 廣田 雅紀  
代理人 堀内 真  
代理人 堀内 真  
代理人 廣田 雅紀  
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