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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F16L
管理番号 1330079
異議申立番号 異議2016-700575  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-08-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-06-24 
確定日 2017-05-30 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5837628号発明「繊維強化プラスチック製曲管」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5837628号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。 特許第5837628号の請求項1に係る特許を維持する。 特許第5837628号の請求項2-3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5837628号の請求項1に係る特許についての出願は、平成26年1月29日に特許出願され、平成27年11月13日に特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人中川賢治(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成28年11月1日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年1月10日に意見書の提出および訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)があり、その訂正の請求に対して異議申立人から平成29年2月22日に意見書が提出されたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のア?エのとおりである。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1において、「曲管状となるように端面どうしを突き合わせた状態で接合した繊維強化プラスチック製曲管において、」を「曲管状となるように端面どうしを突き合わせた状態で接合した、水力発電所の水圧管に使用される繊維強化プラスチック製曲管において、」に訂正する。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1において、「互いに隣接するものと連続するように形成されていることを特徴とする繊維強化プラスチック製曲管。」を「互いに隣接するものと連続するように形成されており、前記各繊維強化プラスチック製短管の突き合わせ部の内周面には、繊維の方向性がランダムな布状体のみを樹脂含浸させて積層した積層体が、互いに隣接するものと連続するように形成されており、曲率半径が管内径の3倍以上で、前記各繊維強化プラスチック製短管のうち、互いに隣接する2つの繊維強化プラスチック製短管の管軸方向のなす角度を7度以下としたことを特徴とする繊維強化プラスチック製曲管。」に訂正する。

(2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、および特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記ア、イの訂正事項1、2は、前者においては請求項2を削除し、後者においては請求項3を削除するというものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
上記ウの訂正事項3は、訂正前の請求項1に係る特許が「繊維強化プラスチック製曲管」であるものを、「水力発電所の水圧管に使用される繊維強化プラスチック製曲管」とすることで、その用途を限定するものである。したがって、訂正事項3は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、訂正事項3は、明細書段落【0015】に記載されているから、当該訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当しない。さらに、訂正事項3により、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
上記エの訂正事項4は、訂正前の請求項1に係る特許の「繊維強化プラスチック製短管の付き合わせ部」に関し、「前記各繊維強化プラスチック製短管の突き合わせ部の内周面には、繊維の方向性がランダムな布状体のみを樹脂含浸させて積層した積層体が、互いに隣接するものと連続するように形成されており」との限定を付し、また、訂正前の請求項1に係る特許の「繊維強化プラスチック製曲管」に関し、「曲率半径が管内径の3倍以上」との限定を付し、さらに、訂正前の請求項1に係る特許の「繊維強化プラスチック製短管」に関し、「互いに隣接する2つの繊維強化プラスチック製短管の管軸方向のなす角度を7度以下とした」との限定を付すものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、訂正事項4で付したそれぞれの限定は、明細書段落【0015】-【0024】および図1-4に記載されているから、当該訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当しない。さらに、訂正事項4により、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
そして、これらの訂正は一群の請求項に対して請求されたものである。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、および、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。

3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、その訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「少なくとも一端面が管軸方向に対して傾斜した複数の繊維強化プラスチック製短管を、曲管状となるように端面どうしを突き合わせた状態で接合した、水力発電所の水圧管に使用される繊維強化プラスチック製曲管において、
前記各繊維強化プラスチック製短管は、それぞれの突き合わせ部の外周面に、繊維の方向性がランダムな布状体とクロス状に織られた補強繊維とを樹脂含浸させて積層した積層体を形成することによって接合されており、前記積層体は、最内層に前記繊維の方向性がランダムな布状体が配され、互いに隣接するものと連続するように形成されており、
前記各繊維強化プラスチック製短管の突き合わせ部の内周面には、繊維の方向性がランダムな布状体のみを樹脂含浸させて積層した積層体が、互いに隣接するものと連続するように形成されており、
曲率半径が管内径の3倍以上で、前記各繊維強化プラスチック製短管のうち、互いに隣接する2つの繊維強化プラスチック製短管の管軸方向のなす角度を7度以下としたことを特徴とする繊維強化プラスチック製曲管。」

(2)取消理由の概要
訂正前の請求項1-3に係る特許に対して平成28年11月1日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は次のとおりである。
ア 請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明および刊行物3-5に記載された周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1に係る発明の特許は取り消されるべきものである。
イ 請求項2に係る発明は、刊行物2に記載された発明および刊行物6-7に記載された技術的事項、刊行物3-5に記載された周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項2に係る発明の特許は取り消されるべきものである。
ウ 請求項3に係る発明は、刊行物1に記載された発明あるいは刊行物2に記載された発明および刊行物6-7に記載された技術的事項、刊行物3-5に記載された周知の技術的事項、刊行物8に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項3に係る発明の特許は取り消されるべきものである。
1 刊行物
刊行物1:クリモト技法 No.42(2000.3)FRP(M)同質曲管の製造方法 第90-93ページ
刊行物2:特開2000-291864号公報
刊行物3:実公昭45-7254号公報
刊行物4:実公昭49-41544号公報
刊行物5:実公昭57-20952号公報
刊行物6:強化プラスチック複合管協会規格 強化プラスチック複合管同質曲管 FRPM K-112-2003 平成15年6月 第1-9ページ
刊行物7:JIS ハンドブック 33 ガラス、R3411 ガラスチョップドストランドマット 2012年6月21日 第1版第1刷発行 第858-859ページ
刊行物8:水門鉄管技術基準 FRP(M)水圧管編 第79-81ページ 社団法人 水門鉄管協会 平成13年3月30日 第3版発行
上記刊行物1-刊行物8は、それぞれ、異議申立人による特許異議申立書での甲第6号証、甲第5号証、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証、甲第7号証、甲第8号証および甲第9号証である。

(3)刊行物の記載
ア 刊行物1
(ア)刊行物1(異議申立書における甲第6号証)には、図1-11、表1-4と共に、特に、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
(i)「1.はじめに
当事業部の主力製品である強化プラスチック複合管は、主に電力ケーブル用保護埋設管、橋梁添架管、下水管および圧力管などとして幅広く使用されており、通常FRPM管として知られている。そのFRPM管で施工されるパイプラインの曲がり部分に使用するものが、今回紹介する同質曲管である。名前の通り、パイプであるFRPM管と同材質であり、曲部を積層して接合している曲管である。ここでは、同質曲管を製造するに当たり、製造方法および強度について紹介する。」(第90ページ左欄第1-10行)
(ii)「2.同質曲管について
同質曲管は、FRPM管で形成され、農業用水をはじめとする圧力管などの曲がり部に使用されており、使用に当たっては原則的にスラストブロック防護工を行っている。種類はJIS G 3451に準じた90°、45°などの標準的な角度の同質曲管があるが、口径および角度に応じて製作できるため、多種多様である。また必要角度により積層箇所数(折れ数)を決定している。積層箇所数を表1に、概略図を図1?図3に示す。」(第90ページ左欄第11-19行)
(iii)「3.同質曲管の製造方法
同質曲管の製造方法は大略下記の工程である。
1パイプの準備(合議体注、1は○の中に1、以下同じ)
2基準線および切断線の記入
3パイプの切断およびサンディング
4パイプの突合せ、固定
5積層
6硬化
さらに詳細な製造方法を4章に記述する。」(第90ページ右欄第1-9行)
(iv)「4.6 パイプの突合せ、固定
サンディング後、切管Aはそのままで、切管Bのみを180°反転させてそれぞれの切断面を合わせてチェーンブロックで固定する(第8図参照)。切断面を合わせる場合は、4.3項でパイプに記入した基準線を角度計で調整しながら突合せる(第9図参照)。突き合わせた状態で、接合部にパテを塗り、その上から樹脂を含浸させたガラス繊維を2枚積層する。これが硬化することにより、切断面が固定されることになる。」 (第91ページ右欄第7-15行)
(v)「4.7 積層
4.6項の状態で硬化させると、次は表2に示すガラス積層枚数を積層箇所に積層する。積層の際は、ガラス繊維に樹脂を含ませて積層部に接着させる。次に脱泡ローラを使用して、積層面上を上下に転がし、樹脂で含浸したガラス繊維の中に含まれている気泡を押し出す脱泡作業を行う。
積層工程は次のとおりである。
1ガラス繊維を用意する。(合議体注、1は○の中に1、以下同じ)
2ガラス繊維に硬化材を混練した樹脂を含浸させる。
3樹脂が含浸したガラス繊維を積層部に貼りつける。
4ガラス繊維の上から脱泡ローラーをかけて気泡を取り除く。」(第92ページ左欄第1-13行)

(イ) また、表2の注記3)より次の事項が看取できる
FRPM切管の、それぞれの切断面どうしを突き合わせた部分(接合部)の内面に樹脂を含浸させたガラス繊維を2枚積層すること。

(ウ) 上記(ア)(イ)の事項を総合し、当業者における技術常識に基づき、本件発明の発明特定事項に倣って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「少なくとも一端面が管軸方向に対して傾斜した複数のFRPM切管を、曲管状となるように切断面どうしを突き合わせた状態で接合した水圧管に使用されるFRPM曲管において、
前記FRPM切管は、それぞれの切断面どうしを突き合わせた部分(接合部)にパテを塗り、その上から樹脂を含浸させたガラス繊維を2枚積層することにより切断面を固定し、さらに、必要枚数のガラスマットとガラスクロスに樹脂を含ませて積層箇所に積層することにより接合されており、
前記FRPM切管は、それぞれの切断面どうしを突き合わせた部分(接合部)の内面には、樹脂を含浸させたガラス繊維を2枚積層させている、
FRPM曲管。」

(4)判断
ア 取消理由通知書に記載した取消理由について
(ア)対比
本件発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「FRPM切管」および「切断面」は、技術的、機能的にみて本件発明の「繊維強化プラスチック短管」および「端面」に相当する。
また、引用発明の「切断面どうしを突き合わせた部分(接合部)」は、本件発明の「突き合わせ部」に相当し、引用発明の「ガラスマット」および「ガラスクロス」は、技術的、機能的にみて本件発明の「繊維の方向性がランダムな布状体」および「クロス状に織られた補強繊維」に相当する。さらに、引用発明の「樹脂を含ませて」は本件発明の「樹脂含浸させて」に相当する。
引用発明の「水圧管」は、本件発明の「水力発電所の水圧管」との対比において、「水圧管」の限度で一致する。
引用発明は、FRPM切管の、それぞれの切断面どおしを突き合わせた部分(接合部)に、「パテを塗り、その上から樹脂を含浸させたガラス繊維を2枚積層することにより切断面を固定し、さらに、必要枚数のガラスマットとガラスクロスに樹脂を含ませて積層箇所に積層することにより」接合するものである。したがって、引用発明のFRPM切管の、それぞれの切断面どおしを突き合わせた部分(接合部)の外周面には、繊維の方向性がランダムな布状体とクロス状に織られた補強繊維とを樹脂含浸させて積層した積層体が形成されており、そして、この積層体によってFRPM切管は接合されているといえる。
よって、引用発明の「前記FRPM切管は、それぞれの切断面どうしを突き合わせた部分(接合部)にパテを塗り、その上から樹脂を含浸させたガラス繊維を2枚積層することにより切断面を固定し、さらに、必要枚数のガラスマットとガラスクロスに樹脂を含ませて積層箇所に積層することにより接合されており」は、本願発明の「前記各繊維強化プラスチック製短管は、それぞれの突き合わせ部の外周面に、繊維の方向性がランダムな布状体とクロス状に織られた補強繊維とを樹脂含浸させて積層した積層体を形成することによって接合されており」に相当する。
引用発明の「前記FRPM切管は、それぞれの切断面どうしを突き合わせた部分(接合部)の内面には、樹脂を含浸させたガラス繊維を2枚積層させている」ものであり、「樹脂を含浸させたガラス繊維を2枚積層させている」ことにより、繊維を樹脂含浸させて積層した積層体を形成しているといえる。
よって、引用発明の「前記FRPM切管は、それぞれの切断面どうしを突き合わせた部分(接合部)の内面には、樹脂を含浸させたガラス繊維を2枚積層させている」は、本件発明の「前記各繊維強化プラスチック製短管の突き合わせ部の内周面には、繊維の方向性がランダムな布状体のみを樹脂含浸させて積層した積層体が、互いに隣接するものと連続するように形成されて」いることとの対比において、「前記各繊維強化プラスチック製短管の突き合わせ部の内周面には、繊維を樹脂含浸させて積層した積層体が形成されて」いる限度で一致するといえる。
したがって、本件発明と引用発明の一致点および相違点は次のとおりである。
【一致点】
「少なくとも一端面が管軸方向に対して傾斜した複数の繊維強化プラスチック製短管を、曲管状となるように端面どうしを突き合わせた状態で接合した、水圧管に使用される繊維強化プラスチック製曲管において、
前記各繊維強化プラスチック製短管は、それぞれの突き合わせ部の外周面に、繊維の方向性がランダムな布状体とクロス状に織られた補強繊維とを樹脂含浸させて積層した積層体を形成することによって接合されており、
前記各繊維強化プラスチック製短管の突き合わせ部の内周面には、繊維を樹脂含浸させて積層した積層体が形成されている、
繊維強化プラスチック製曲管。」
【相違点1】
水圧管に関し、本件発明が「水力発電所の水圧管」であるのに対し、引用発明はそのように特定されていない点。
【相違点2】
突き合わせ部の外周面において形成された各繊維強化プラスチック製短管を接合する積層体に関し、本件発明では、その「最内層に前記繊維の方向性がランダムな布状体が配され」ているものであるのに対し、引用発明では、「パテを塗り、その上から樹脂を含浸させたガラス繊維を2枚積層」し、「さらに、必要枚数のガラスマットとガラスクロスに樹脂を含ませて積層箇所に積層する」ものであるが、最内層がガラスマットであるのか明らかでない点。
【相違点3】
同じく、突き合わせ部の外周面において形成された各繊維強化プラスチック製短管を接合する積層体に関し、本件発明では、「互いに隣接するものと連続するように形成されている」ものであるのに対して、引用発明ではそのようには特定されていない点。
【相違点4】
突き合わせ部の内周面に形成された積層体に関し、本願発明では、「繊維の方向性がランダムな布状体のみを樹脂含浸させて積層した積層体」であるのに対し、引用発明では、「樹脂を含浸させたガラス繊維を2枚積層させている」ものであるが、繊維の方向性がランダムな布状体であるガラスマットのみを樹脂含浸させて積層した積層体か明らかでない点。
【相違点5】
同じく、突き合わせ部の内周面に形成された積層体に関し、本件発明では、「互いに隣接するものと連続するように形成されている」ものであるのに対して、引用発明ではそのようには特定されていない点。
【相違点6】
繊維強化ブラスチック製曲管の曲率半径に関し、本件発明では、「管内径の3倍以上」であるのに対し、引用発明のFRPM曲管の曲率半径については特定されていない点。
【相違点7】
各繊維強化プラスチック製短管のうち、互いに隣接する2つの繊維強化プラスチック製短管の管軸方向のなす角度が7度以下であるのに対し、引用発明の切管の管軸方向のなす角度については特定されていない点。

(イ)判断
事案に鑑み上記【相違点2】について検討する。
刊行物1には、突き合わせ部の外周面において形成された各FRPM切管(本件発明の繊維強化プラスチック製短管に相当する。)を接合する積層体の最内層に、繊維の方向性がランダムな布状体といえるガラスマットを配置することは記載されていないし、その示唆もない。
特に、刊行物1の表2(第92ページ)には、積層体が、繊維の方向性がランダムな布状体といえるガラスマットとクロス状に織られた補強繊維といえるガラスクロスの組み合わせによって形成されることが記載されているとはいい得るものの、ガラスマットを積層体の最内層に配置することまで記載されているとはいえないし、その示唆もない。しかも、表2のガラス繊維による積層体は、パイプの突合せ、固定の段階で接合部にパテを塗り、その上から樹脂を含浸させたガラス繊維を2枚積層させたものの、さらにその上に積層されるものであり(上記刊行物1の摘示事項(iv)(v)、参照。)、仮にパテを隙間、表面の凹凸を埋めるものであるとして積層体としては無視しうると解しても、接合部固定のためのガラス繊維を2枚積層させた積層体の、そのガラス繊維が、繊維の方向性がランダムな布状体であるガラスマットとすることは刊行物1には記載されていないし、その示唆もない。
また、刊行物2-8にも、上記の点、すなわち、繊維強化プラスチック製短管どうしの突き合わせ部の外周面に形成される積層体の最内層に繊維の方向性がランダムな布状体を配置する点については記載も示唆もない。
そして、本件発明は、上記の点を有することにより、水密性の点でスムーズベント管に近い性能を有するという格別の作用効果(本件明細書段落【0013】)を奏するものであるといえる。
したがって、引用発明において相違点2に係る本件発明の構成となすことは、引用発明および刊行物2-8に記載された事項から当業者が容易になし得るものではない。
よって、本件発明は、その他の相違点について検討するまでもなく、引用発明および刊行物2-8に記載された事項から当業者が容易に発明できたものとはいえない。

イ 採用しなかった特許異議申立理由について
異議申立人の提出した証拠のうち、取消理由で採用しなかった甲第1号証にも、上記ア(ア)で説示した相違点2に係る本件発明の構成は記載されていないし、示唆もされていない(甲第1号証には、突き合わせ部の外周面において形成された各繊維強化プラスチック製短管を接合する積層体に関し、クロス状に織られた補強繊維といえる複合クロスを樹脂含浸させて積層したものが記載されている。)。
したがって、上記ア(イ)での説示内容もふまえると、本件発明は、当業者が甲第1号証に記載の発明および甲第2-4、6号証に記載の事項に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。
また、請求項2-3に係る特許は、訂正により削除されたため、請求項2-3に係る特許に対して、異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、異議申立人の主張は理由がない。

4.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由および特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては本件特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一端面が管軸方向に対して傾斜した複数の繊維強化プラスチック製短管を、曲管状となるように端面どうしを突き合わせた状態で接合した、水力発電所の水圧管に使用される繊維強化プラスチック製曲管において、
前記各繊維強化プラスチック製短管は、それぞれの突き合わせ部の外周面に、繊維の方向性がランダムな布状体とクロス状に織られた補強繊維とを樹脂含浸させて積層した積層体を形成することによって接合されており、前記積層体は、最内層に前記繊維の方向性がランダムな布状体が配され、互いに隣接するものと連続するように形成されており、
前記各繊維強化プラスチック製短管の突き合わせ部の内周面には、繊維の方向性がランダムな布状体のみを樹脂含浸させて積層した積層体が、互いに隣接するものと連続するように形成されており、
曲率半径が管内径の3倍以上で、前記各繊維強化プラスチック製短管のうち、互いに隣接する2つの繊維強化プラスチック製短管の管軸方向のなす角度を7度以下としたことを特徴とする繊維強化プラスチック製曲管。
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-05-19 
出願番号 特願2014-14315(P2014-14315)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (F16L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 渡邉 洋  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 一ノ瀬 覚
尾崎 和寛
登録日 2015-11-13 
登録番号 特許第5837628号(P5837628)
権利者 株式会社栗本鐵工所
発明の名称 繊維強化プラスチック製曲管  
代理人 中谷 弥一郎  
代理人 鎌田 直也  
代理人 田川 孝由  
代理人 鎌田 文二  
代理人 中谷 弥一郎  
代理人 鎌田 文二  
代理人 鎌田 直也  
代理人 田川 孝由  
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