• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C03C
審判 全部申し立て 2項進歩性  C03C
管理番号 1330091
異議申立番号 異議2016-700936  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-08-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-09-30 
確定日 2017-06-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5896894号発明「合わせガラス用中間膜及び合わせガラス」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5896894号の明細書、及び、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲及び図面のとおり、訂正後の請求項〔1?17〕について訂正することを認める。 特許第5896894号の請求項1ないし5、7ないし17に係る特許を維持する。 特許第5896894号の請求項6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5896894号の請求項1?17に係る特許についての出願は、平成23年12月28日(優先権主張2010年12月28日、2011年6月29日 日本国)を国際出願日として特許出願され、平成28年3月11日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人株式会社クラレにより特許異議の申立てがされ、平成28年12月27日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年3月3日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人株式会社クラレから意見書は提出されなかったものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のア?シのとおりである。

ア 特許請求の範囲の請求項1において、「ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第1の層と、
前記第1の層の一方の面に積層されており、かつポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第2の層とを備え、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量よりも高く、
かつ前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも低く、
前記第1の層を樹脂膜として用いて、該樹脂膜の粘弾性を測定した場合に、該樹脂膜のガラス転移温度をTg(℃)としたときに、(Tg+170)℃での弾性率G’(Tg+170)の(Tg+30)℃での弾性率G’(Tg+30)に対する比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))が、0.18以上である、合わせガラス用中間膜。」と記載されているのを、
「ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第1の層と、
前記第1の層の一方の面に積層されており、かつポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第2の層とを備え、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量よりも高く、
かつ前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも低く、
前記第1の層を樹脂膜として用いて、該樹脂膜の粘弾性を測定した場合に、該樹脂膜のガラス転移温度をTg(℃)としたときに、(Tg+170)℃での弾性率G’(Tg+170)の(Tg+30)℃での弾性率G’(Tg+30)に対する比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))が、0.18以上であり、
前記第1の層がホウ素原子を有する化合物を含む、合わせガラス用中間膜。」と訂正する。
イ 特許請求の範囲の請求項2において、「ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第1の層と、
前記第1の層の一方の面に積層されており、かつポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第2の層とを備え、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量よりも高く、
かつ前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも低く、
前記第1の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部と、可塑剤としてトリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)60重量部とを含む樹脂膜を用いて、該樹脂膜の粘弾性を測定した場合に、該樹脂膜のガラス転移温度をTg(℃)としたときに、(Tg+170)℃での弾性率G’(Tg+170)の(Tg+30)℃での弾性率G’(Tg+30)に対する比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))が、0.18以上である、合わせガラス用中間膜。」と記載されているのを、
「ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第1の層と、
前記第1の層の一方の面に積層されており、かつポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第2の層とを備え、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑
剤の含有量よりも高く、
かつ前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも低く、
前記第1の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部と、可塑剤としてトリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)60重量部とを含む樹脂膜を用いて、該樹脂膜の粘弾性を測定した場合に、該樹脂膜のガラス転移温度をTg(℃)としたときに、(Tg+170)℃での弾性率G’(Tg+170)の(Tg+30)℃での弾性率G’(Tg+30)に対する比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))が、0.18以上であり、
前記第1の層がホウ素原子を有する化合物を含む、合わせガラス用中間膜。」と訂正する。
ウ 特許請求の範囲の請求項6を削除する。
エ 特許請求の範囲の請求項7において「請求項6」とあるのを、「請求項1?5のいずれか1項」に訂正する。
オ 特許請求の範囲の請求項8において、「請求項1?7のいずれか1項」とあるのを、「請求項1?5、及び7のいずれか1項」に訂正する。
カ 特許請求の範囲の請求項9において、「請求項1?8のいずれか1項」とあるのを、「請求項1?5、7及び8のいずれか1項」に訂正する。
キ 特許請求の範囲の請求項11において、「請求項1?10のいずれか1項」とあるのを、「請求項1?5、及び7?10のいずれか1項」に訂正する。
ク 特許請求の範囲の請求項13において、「請求項1?12のいずれか1項」とあるのを、「請求項1?5、及び7?12のいずれか1項」に訂正する。
ケ 特許請求の範囲の請求項14において、「請求項1?13のいずれか1項」とあるのを、「請求項1?5、及び7?13のいずれか1項」に訂正する。
コ 特許請求の範囲の請求項17において、「請求項1?16のいずれか1項」とあるのを、「請求項1?5、及び7?16のいずれか1項」に訂正する。
サ 明細書の段落【0150】及び【0151】にそれぞれ「実施例2?4」と記載されているのを、「実施例2、3、参考例4」に訂正する。(当審注:訂正請求書に「実施2、3、参考例4」とあるのは、明らかな誤記と認める。)
シ 段落【0151】及び【表1】にそれぞれ「実施例4」と記載されているのを、「参考例4」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記ア、イの訂正事項に関連する記載として、明細書の発明の詳細な説明には「本発明に係る合わせガラス用中間膜の他の特定の局面では、上記第1の層はホウ素原子を有する化合物を含む。」(【0016】)と記載されている。
上記ア、イの訂正は、明細書に記載された事項の範囲内において「第1の層」をホウ素原子を有する化合物を含むものに限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、上記ウの訂正は、請求項6の削除を行うことで特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
さらに、上記エ、サ、シの訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
さらに、上記オ?コの訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とし、また、引用する請求項を減らす減縮を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
そして、ア?コの訂正は一群の請求項に対して請求されたものである。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?17〕について訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1?5、7?17に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明5」、「本件発明7」?「本件発明17」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?5、7?17に記載されるとおりのものである。

(2)取消理由の概要
訂正前の請求項1?5、8?17に係る特許に対して平成28年12月27日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

ア 請求項1?4、8、11?15、17に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1?4、8、11?15、17に係る特許は、取り消されるべきものである。

イ 請求項1?5、8、9、11?17に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1?5、8、9、11?17に係る特許は、取り消されるべきものである。

ウ 請求項9、10に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第5号証に記載された発明に基づき、または、甲第2号証に記載された発明及び甲第5号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項9、10に係る特許は、取り消されるべきものである。
エ 請求項16に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項16に係る特許は、取り消されるべきものである。

(3)甲号証の記載
甲第1号証(特開2008-105942号公報)には、実施例14として、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「PVB樹脂(ブチラール化度=65.9mol%、アセチル化度=0.9mol%)に可塑剤として、テトラエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(4GO)を40重量部(樹脂100重量部に対して)添加した樹脂膜を用いた層(B)と、
前記層(B)の一方の面に積層されており、かつ平均重合度が2300のPVA100重量部に、平均重合度が4000のPVAを42重量部混合して得られたPVAを用いたPVB樹脂(ブチラール化度=57.3mol%、アセチル化度=20.0mol%)に可塑剤として4GOを60重量部(得られたPVB樹脂100重量部に対して)添加した樹脂膜を用いた層(A)と、
を備えた合わせガラス用中間膜。」
甲第2号証(特開2007-331959号公報)には、実施例3として、以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「平均重合度3000、アセチル化度7モル%、ブチラール化度70%のポリビニルブチラール100重量部に対して、可塑剤としてトリエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート(略称3GO)60重量部を添加し、ミキシングロールで充分に混練した後、プレス成形機を用いて150℃30分間プレス成形して得た、平均膜厚0.1mmの遮音層と、
前記遮音層の一方の面に積層されており、かつ平均重合度1700、アセチル化度1モル%、ブチラール化度68%のポリビニルブチラール100重量部に対して、可塑剤としてトリエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート40重量部を添加し、ミキシングロールで充分に混練した後、プレス成形機を用いて150℃30分間プレス成形して得た、平均膜厚0.33mmの保護層と、
を備えた合わせガラス用中間膜。」
甲第3号証(特開2004-67427号公報)には、低温から高温までの広い温度範囲において優れた遮音性能を長期間にわたって安定的に発現し、かつ、透明性、耐候性、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、適正な接着力等の合わせガラスとして必要な基本性能にも優れる合わせガラスを得るに適するとともに、合わせガラスに加工する際に、ガラス板のずれが生じたり、発泡が生じることが殆どなく、取扱性にも優れる合わせガラス用中間膜、および、この合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスを提供するために、架橋反応により高分子主鎖が架橋結合されており、架橋後の見掛け上の平均重合度が架橋前の平均重合度の1.2?8.0倍であることが必要であり、架橋反応によりポリビニルアセタール樹脂の高分子主鎖を架橋結合させる方法としては、いずれの架橋結合させる方法が採られても良いことが記載されている。
甲第4号証(特開2010-201932号公報)には、ポリビニルアセタール樹脂を架橋する方法として、得られたポリビニルアセタール樹脂に残存する水酸基と反応する架橋剤を添加し、水酸基を架橋する方法などが挙げられ、水酸基と反応する架橋剤としては、ホウ酸化合物などが挙げられることが記載され、架橋ポリビニルブチラール樹脂の含有、架橋されたポリビニルアセタール樹脂の積層により、耐貫通性能をより一層高めることができることが記載されている。
甲第5号証((特開平11-255827号公報))には、高い透明性・密着性を有し、常温域で優れた遮音性を有する合わせガラス用中間膜を提供することを課題とする発明において、ポリビニルアセタール樹脂の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は1.05?3であることが好ましいことが記載されている。
甲第6号証(特開平5-1109号公報)には、5連鎖以上の長連鎖のシンジオ型水酸基が多いと、150℃を超える温度領域でも強い分子間水素結合性が生じることが記載されている。
甲第7号証(特開2009-220300号公報)には、ホウ素化合物として、例えば、ホウ酸、ホウ酸リチウム、四ホウ酸リチウム、四ホウ酸ナトリウム等が挙げられている。
甲第8号証(特開平6-926号公報)には、ポリビニルアルコールとして重合度500のポリビニルアルコールと重合度3000のポリビニルアルコールとのブテンド品(ブレンド比1:1)を用いアセタール化度59.9モル%、アセチル基量12.1モル%のポリビニルアセタール樹脂(A)の白色粉末を得た際の、このポリマーの分子量分布比(Mw/Mn)は6.71であったことが記載されている。

(4)判断
ア 取消理由通知に記載した取消理由について
(ア)特許法第29条第1項第3号について
本件発明1?5、7?17は、「第1の層がホウ素原子を有する化合物を含む」のに対し、甲第1号証には、層(B)(「第1の層」に相当すると認める。)に、ホウ素原子を有する化合物を含むことは記載されていない(相違点1)。また、甲第2号証には、遮音層(「第1の層」に相当すると認める。)に、ホウ素原子を有する化合物を含むことは記載されていない(相違点2)。
そして、本件発明1?5、7?17は、第1の層がホウ素原子を有する化合物を含むことで、「第1の層を樹脂膜として用いて、該樹脂膜の粘弾性を測定した場合に、該樹脂膜のガラス転移温度をTg(℃)としたときに、(Tg+170)℃での弾性率G’(Tg+170)の(Tg+30)℃での弾性率G’(Tg+30)に対する比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))」、「第1の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部と、可塑剤としてトリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)60重量部とを含む樹脂膜を用いて、該樹脂膜の粘弾性を測定した場合に、該樹脂膜のガラス転移温度をTg(℃)としたときに、(Tg+170)℃での弾性率G’(Tg+170)の(Tg+30)℃での弾性率G’(Tg+30)に対する比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))」を「0.18以上」とし、発明の課題を解決するものであるから、相違点1、2は、実質的なものである。
(イ)特許法第29条第2項について
甲第1号証、甲第2号証、甲第5号証のいずれにも、第1の層がホウ素原子を有する化合物を含む点について、記載も示唆もないから、本件発明1?5、7?17は、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(ア)特許法第29条第2項について
訂正後の本件発明1?5、7?17は、いずれも訂正前の請求項6に係る「第1の層がホウ素原子を有する化合物を含む」という事項を特定事項とするものとなった。
そこで、特許異議申立人が訂正前の請求項6について提示した甲第3、4号証について検討する。
甲第3号証には、複層構造の中間膜とし、その第1の層のポリビニルアセタール樹脂を、架橋することは記載されていないし、架橋剤としてのホウ素原子を有する化合物についても記載されていない。
してみると、甲第4号証に、ホウ酸化合物の架橋剤が記載されているとしても、甲第3号証の記載から、「第1の層が」ホウ素原子を有する化合物を含むとすることの動機付けがあるといえない。
なお、他の甲第5?8号証からも、「第1の層がホウ素原子を有する化合物を含む」ものとする点は、当業者が容易になしえたことといえない。

4.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?5、7?17に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?5、7?17に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項6は削除されたため、本件特許の請求項6に対する特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
合わせガラス用中間膜及び合わせガラス
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2層の多層構造を有する合わせガラス用中間膜に関し、より詳細には、各層がそれぞれ熱可塑性樹脂と可塑剤とを含有する合わせガラス用中間膜、並びに該合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損してもガラスの破片の飛散量が少なく、安全性に優れている。このため、上記合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に広く使用されている。上記合わせガラスは、一対のガラス板の間に合わせガラス用中間膜を挟み込むことにより、製造されている。
【0003】
上記合わせガラス用中間膜の一例として、下記の特許文献1には、アセタール化度が60?85モル%のポリビニルアセタール樹脂100重量部と、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の内の少なくとも一種の金属塩0.001?1.0重量部と、30重量部以上の可塑剤とを含む遮音層が開示されている。この遮音層は、単層で中間膜として用いられ得る。
【0004】
さらに、下記の特許文献1には、上記遮音層と他の層とが積層された多層中間膜も記載されている。遮音層に積層される他の層は、アセタール化度が60?85モル%のポリビニルアセタール樹脂100重量部と、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の内の少なくとも一種の金属塩0.001?1.0重量部と、30重量部以下の可塑剤とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-070200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の中間膜を用いて合わせガラスを構成した場合には、合わせガラスの2000Hz付近の周波数領域における遮音性が充分ではなく、従ってコインシデンス効果による遮音性の低下が避けられないことがある。特に、この合わせガラスの20℃付近での遮音性が充分ではないことがある。
【0007】
ここで、コインシデンス効果とは、ガラス板に音波が入射したとき、ガラス板の剛性と慣性とによって、ガラス面上を横波が伝播して横波と入射音とが共鳴し、その結果、音の透過が起こる現象をいう。
【0008】
また、上記特許文献1に記載の遮音層と他の層とが積層された多層中間膜を用いて合わせガラスを構成した場合には、合わせガラスの20℃付近での遮音性をある程度高めることができる。しかし、多層中間膜が上記遮音層を有するため、該多層中間膜を用いた合わせガラスに発泡が生じることがある。
【0009】
さらに、近年、合わせガラスの遮音性を高めるために、中間膜中の可塑剤の含有量を多くすることが検討されている。中間膜中の可塑剤の含有量を多くすると、合わせガラスの遮音性を改善できる。しかしながら、可塑剤の含有量を多くすると、合わせガラスに発泡が生じることがある。
【0010】
また、建築物又は車両に用いられる合わせガラスは、太陽光に晒された状態で用いられることが多く、比較的高温下に長期間晒されることが多い。例えば、合わせガラスが50℃を超える環境に晒されることもある。合わせガラスが比較的高温下に長期間晒されると、発泡の発生及び発泡の成長がより一層生じやすいという問題がある。
【0011】
本発明の目的は、合わせガラスが比較的高温下に長期間晒されても、発泡の発生及び発泡の成長を抑制できる合わせガラスを得ることができる合わせガラス用中間膜、並びに該合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスを提供することである。
【0012】
本発明の限定的な目的は、遮音性にも優れた合わせガラスを得ることができる合わせガラス用中間膜、並びに該合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の広い局面によれば、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第1の層と、上記第1の層の一方の面に積層されており、かつポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第2の層とを備え、上記第1の層を樹脂膜として用いて、該樹脂膜の粘弾性を測定した場合に、該樹脂膜のガラス転移温度をTg(℃)としたときに、(Tg+170)℃での弾性率G’(Tg+170)の(Tg+30)℃での弾性率G’(Tg+30)に対する比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))が、0.18以上である、合わせガラス用中間膜が提供される。
【0014】
また、本発明の広い局面によれば、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第1の層と、上記第1の層の一方の面に積層されており、かつポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第2の層とを備え、上記第1の層に含まれる上記ポリビニルアセタール樹脂100重量部と、可塑剤としてトリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)60重量部とを含む樹脂膜を用いて、該樹脂膜の粘弾性を測定した場合に、該樹脂膜のガラス転移温度をTg(℃)としたときに、(Tg+170)℃での弾性率G’(Tg+170)の(Tg+30)℃での弾性率G’(Tg+30)に対する比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))が、0.18以上である、合わせガラス用中間膜が提供される。
【0015】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のある特定の局面では、上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%以上であるか、又は上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%未満であり、かつアセタール化度が68モル%以上であることが好ましい。上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%以上であることが好ましい。さらに、上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%未満であり、かつアセタール化度が68モル%以上であることも好ましい。
【0016】
本発明に係る合わせガラス用中間膜の他の特定の局面では、上記第1の層はホウ素原子を有する化合物を含む。
【0017】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のさらに他の特定の局面では、上記ホウ素原子を有する化合物は、メタホウ酸リチウム、四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウム、ホウ酸及びホウ酸エステルからなる群より選択された少なくとも1種を含む。
【0018】
本発明に係る合わせガラス用中間膜の他の特定の局面では、上記弾性率G’(Tg+30)は20万Pa以上である。
【0019】
本発明に係る合わせガラス用中間膜の別の特定の局面では、上記第1の層に含まれている上記ポリビニルアセタール樹脂の分子量分布比(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は6.5以下である。
【0020】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のさらに別の特定の局面では、上記第1の層に含まれている上記ポリビニルアセタール樹脂の分子量分布比(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は2.5?3.2である。
【0021】
本発明に係る合わせガラス用中間膜の他の特定の局面では、上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する上記可塑剤の含有量は、50重量部以上である。
【0022】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のさらに他の特定の局面では、上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する上記可塑剤の含有量は、55重量部以上である。
【0023】
本発明に係る合わせガラス用中間膜の他の特定の局面では、上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は、30モル%以下である。
【0024】
本発明に係る合わせガラス用中間膜の別の特定の局面では、上記第1の層の他方の面に積層されており、かつポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第3の層がさらに備えられている。
【0025】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のさらに別の特定の局面では、上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する上記可塑剤の含有量は、上記第2,第3の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する上記可塑剤の各含有量よりも多い。
【0026】
上記第1?第3の層に含まれている上記ポリビニルアセタール樹脂はそれぞれ、ポリビニルブチラール樹脂を含むことが好ましい。上記第1?第3の層に含まれている上記可塑剤はそれぞれ、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート及びトリエチレングリコールジ-n-ヘプタノエートからなる群から選択された少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0027】
本発明に係る合わせガラスは、第1,第2の合わせガラス構成部材と、該第1,第2の合わせガラス構成部材の間に挟み込まれた中間膜とを備えており、該中間膜が、本発明に従って構成された合わせガラス用中間膜である。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る合わせガラス用中間膜は、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第1の層と、該第1の層の一方の面に積層されており、かつポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第2の層とを備えており、更に上記比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))が、0.18以上であるので、中間膜を用いた合わせガラスが比較的高温下に長期間晒されても、発泡の発生及び発泡の成長を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す断面図である。
【図2】図2は、図1に示す合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの一例を模式的に示す断面図である。
【図3】図3は、第1の層に含まれるポリビニルアセタール樹脂と、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエートとを含む樹脂膜を用いて、該樹脂膜の粘弾性を測定した場合の損失正接tanδと温度との関係及び弾性率G’と温度との関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しつつ本発明の具体的な実施形態及び実施例を挙げることにより、本発明を明らかにする。
【0031】
図1に、本発明の一実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に断面図で示す。
【0032】
図1に示す中間膜1は、第1の層2と、第1の層2の一方の面2a(第1の面)に積層された第2の層3と、第1の層2の他方の面2b(第2の面)に積層された第3の層4とを備える。中間膜1は、合わせガラスを得るために用いられる。中間膜1は、合わせガラス用中間膜である。中間膜1は、多層中間膜である。
【0033】
第1の層2は、第2の層3と第3の層4との間に配置されており、第2の層3と第3の層4との間に挟み込まれている。本実施形態では、第1の層2は中間層であり、かつ第2,第3の層3,4は表面層である。ただし、第2,第3の層3,4が中間層であって、第2,第3の層3,4の外側の表面3a,4aに、他の合わせガラス用中間膜がさらに積層されていてもよい。
【0034】
第1?第3の層2?4はそれぞれ、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有することが好ましい。
【0035】
本実施形態の主な特徴は、第1の層2に含まれる上記ポリビニルアセタール樹脂100重量部と、可塑剤としてトリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)60重量部とを含む樹脂膜Aを用いて、該樹脂膜Aの粘弾性を測定した場合(試験法A)に、該樹脂膜Aのガラス転移温度をTg(℃)としたときに、(Tg+170)℃での弾性率G’(Tg+170)の(Tg+30)℃での弾性率G’(Tg+30)に対する比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))が、0.18以上であることである。
【0036】
また、本実施形態では、第1の層2を樹脂膜Bとして用いて、該樹脂膜Bの粘弾性を測定した場合(試験法B)に、該樹脂膜Bのガラス転移温度をTg(℃)としたときに、(Tg+170)℃での弾性率G’(Tg+170)の(Tg+30)℃での弾性率G’(Tg+30)に対する比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))が、0.18以上である。
【0037】
上記試験法Bでは、第1の層2が上記樹脂膜Bとして用いられ、第1の層2自体が樹脂膜Bである。
【0038】
上記樹脂膜Bは、第1の層2であり、上記ポリビニルアセタール樹脂と上記可塑剤とを第1の層2中での重量比で含む。上記試験法Bでは、合わせガラス用中間膜1において可塑剤を移行させた後に、上記弾性率G’(Tg+170)及び上位弾性率G’(Tg+30)を測定することが好ましい。上記試験法Bでは、合わせガラス用中間膜1を湿度30%(±3%)、温度23℃に1ヶ月間保管して、合わせガラス用中間膜1において可塑剤を移行させた後に、上記弾性率G’(Tg+170)及び弾性率G’(Tg+30)を測定することがより好ましい。
【0039】
上記ガラス転移温度Tg(℃)は、上記粘弾性の測定により得られた測定結果から得られる損失正接tanδのピーク温度を示す。
【0040】
本発明者らは、多層構造を有する合わせガラス用中間膜では、各層間で可塑剤が移行し、この結果、可塑剤の含有量が多い層が形成されること、例えば、第2,第3の層から第1の層に可塑剤が移行し、この結果、第1の層の可塑剤の含有量が多くなることを見出した。さらに、可塑剤の含有量が多い層が形成されると、すなわち第1の層の可塑剤の含有量が多くなると、合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスに発泡が生じやすくなり、更に発泡が一旦生じると、生じた発泡が核となって発泡が成長することも見出した。
【0041】
本発明者らは、上記発泡の発生及び発泡の成長を抑制するために鋭意検討した結果、上記試験法A又は上記試験法Bによる上記比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))が、0.18以上であることにより、中間膜を用いた合わせガラスが比較的高温下に長期間晒されても、発泡の発生及び発泡の成長を充分に抑制できることも見出した。第1の層2中の可塑剤の含有量が多くても、合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長を充分に抑制できるため、合わせガラスの遮音性を高めることができる。特に、上記比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))が0.18以上であるように構成された第1の層2の両面に第2,第3の層3,4が積層された合わせガラス用中間膜1の使用により、中間膜を用いた合わせガラスが比較的高温下に長期間晒されても、発泡の発生及び発泡の成長をより一層抑制できる。
【0042】
上記比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))は、0.18以上であり、好ましくは0.2以上、好ましくは1.0以下である。上記比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))が上記下限以上及び上記上限以下であると、かなり過酷な条件で長期間に渡り合わせガラスが保管されたとしても、合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長をより一層効果的に抑制できる。
【0043】
また、建築物又は車両に用いられる合わせガラスは、太陽光に晒された状態で用いられることが多く、比較的高温下に晒されることが多い。例えば、合わせガラスが50℃を超える環境に晒されることもある。上記試験法Aにおける上記比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))が0.18以上であるか、又は上記試験法Bにおける上記比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))が0.18以上であれば、合わせガラスがかなり過酷な高温下(例えば40?60℃、場合によっては50℃を超える)に長期間保管されても、合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長をより一層抑制できる。
【0044】
高温下での合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長をより一層抑制する観点からは、上記比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))は、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.22以上、更に好ましくは0.3以上、特に好ましくは0.4以上、より好ましくは0.95以下である。特に、上記比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))をポリビニルアルコール樹脂の平均重合度で制御する場合、またはホウ素原子を有する化合物で制御する場合、合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長を十分に抑制し、かつ合わせガラスの遮音性をより一層高めることができることから、上記比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))は好ましくは0.22以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.4以上、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.88以下である。更に、上記比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))が0.85以下であると、中間膜を容易に成形することができる。
【0045】
第1の層2に含まれる上記ポリビニルアセタール樹脂100重量部と、可塑剤としてトリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)60重量部とを含む樹脂膜Aを用いて、該樹脂膜Aの粘弾性を測定した場合(試験法A)に、該樹脂膜Aのガラス転移温度をTg(℃)としたときに、(Tg+80)℃での弾性率G’(Tg+80)の(Tg+30)℃での弾性率G’(Tg+30)に対する比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))が、0.65以上であることが好ましい。
【0046】
また、第1の層2を樹脂膜Bとして用いて、該樹脂膜Bの粘弾性を測定した場合(試験法B)に、該樹脂膜Bのガラス転移温度をTg(℃)としたときに、(Tg+80)℃での弾性率G’(Tg+80)の(Tg+30)℃での弾性率G’(Tg+30)に対する比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))が、0.65以上であることが好ましい。
【0047】
上記比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))が0.18以上であり、かつ上記比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))が、0.65以上である場合には、合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長を広い温度範囲に渡りより一層抑制できる。上記比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))が0.20以上であり、かつ上記比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))が、0.65以上である場合には、合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長を広い温度範囲に渡りさらに一層抑制できる。但し、上記試験法Aにおける上記比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))が0.18以上であるか、又は上記試験法Bにおける上記比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))が0.18以上であれば、上記試験法Aにおける上記比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))は0.65未満であってもよく、上記試験法Bにおける上記比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))は0.65未満であってもよい。
【0048】
上記比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))は好ましくは1.0以下である。上記比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))が0.65以上であると、合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長をより一層効果的に抑制することが容易である。また、上記比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))が上記下限以上及び上記上限以下であると、合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長をより一層効果的に抑制することが容易である。
【0049】
合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長をより一層抑制する観点からは、上記比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))は、より好ましくは0.7以上、より好ましくは0.95以下であり、更に好ましくは0.75以上、更に好ましくは0.9以下である。特に、上記比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))をポリビニルアルコール樹脂の平均重合度で制御する場合、合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長を十分に抑制し、かつ合わせガラスの遮音性をより一層高めることができることから、上記比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))は、好ましくは0.65以上、より好ましくは0.66以上、更に好ましくは0.67以上、特に好ましくは0.7以上、好ましくは0.82以下、より好ましくは0.8以下である。更に、上記比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))が0.82以下、又は、0.8以下であると、中間膜を容易に成形することができる。
【0050】
上記試験法A又は上記試験法Bによる上記比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))を0.18以上にする方法としては、第1の層2中のポリビニルアセタール樹脂を合成する際に、平均重合度が比較的高いポリビニルアルコール樹脂を使用する方法や、第1の層2中のポリビニルアセタール樹脂の分子間の相互作用を強くする方法や、第1の層2中にホウ素原子を有する化合物を添加する方法等が挙げられる。上記第1の層2中のポリビニルアセタール樹脂の分子間の相互作用を強くする方法として、該ポリビニルアセタール樹脂の分子間を物理的に架橋する方法や、化学的に架橋する方法が挙げられる。なかでも、中間膜1を押出機にて容易に成形することができることから、第1の層2中のポリビニルアセタール樹脂を合成する際に、平均重合度が比較的高いポリビニルアルコール樹脂を使用する方法、第1の層2中のポリビニルアセタール樹脂の分子間を物理的に架橋する方法、及び第1の層2中にホウ素原子を有する化合物を添加する方法が好ましい。
【0051】
上記試験法A又は上記試験法Bによる上記比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))を0.65以上にする方法としては、第1の層2中のポリビニルアセタール樹脂を合成する際に、平均重合度が比較的高いポリビニルアルコール樹脂を使用する方法や、第1の層2中のポリビニルアセタール樹脂の分子間の相互作用を強くする方法等が挙げられる。上記第1の層2中のポリビニルアセタール樹脂の分子間の相互作用を強くする方法として、該ポリビニルアセタール樹脂の分子間を物理的に架橋する方法や、化学的に架橋する方法が挙げられる。なかでも、中間膜1を押出機にて容易に成形することができることから、第1の層2中のポリビニルアセタール樹脂を合成する際に、平均重合度が比較的高いポリビニルアルコール樹脂を使用する方法や第1の層2中のポリビニルアセタール樹脂の分子間を物理的に架橋する方法が好ましい。
【0052】
上記粘弾性の測定により得られる損失正接tanδと温度との関係及び弾性率G’と温度との関係の一例を、図3を用いて説明する。
【0053】
損失正接tanδと温度とは、図3に示すような関係にある。損失正接tanδのピークPにおける温度がガラス転移温度Tgである。
【0054】
また、図3に示す破線A2の弾性率G’におけるガラス転移温度Tgと、実線A1の弾性率G’におけるガラス転移温度Tgとは同じ温度である。例えば、弾性率G’(Tg+30)を基準として弾性率G’(Tg+170)の変化量Dが小さいほど、かなり過酷な高温(例えば40?60℃、場合によっては50℃を超える)下での合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長を効果的に抑制できる。実線A1の弾性率G’における変化量D1は、破線A2の弾性率G’における変化量D2よりも小さい。従って、図3においては、変化量D2が比較的大きい破線A2の弾性率G’を示す場合よりも、変化量D1が比較的小さい実線A1の弾性率G’を示す場合の方が、かなり過酷な高温下での合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長を効果的に抑制できる。
【0055】
また、図3に示す破線A2の弾性率G’におけるガラス転移温度Tgと、実線A1の弾性率G’におけるガラス転移温度Tgとは同じ温度である。例えば、弾性率G’(Tg+30)を基準として弾性率G’(Tg+80)の変化量Dが小さいほど、常温(例えば10?20℃)?高温(例えば30?50℃)下での合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長を効果的に抑制できる。実線A1の弾性率G’における変化量D3は、破線A2の弾性率G’における変化量D4よりも小さい。従って、図3においては、変化量D4が比較的大きい破線A2の弾性率G’を示す場合よりも、変化量D3が比較的小さい実線A1の弾性率G’を示す場合の方が、常温?高温での合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長を効果的に抑制できる。
【0056】
上記G’(Tg+30)は、20万Pa以上であることが好ましい。上記G’(Tg+30)は、より好ましくは22万Pa以上、更に好ましくは23万Pa以上、特に好ましくは24万Pa以上、好ましくは1000万Pa以下、より好ましくは500万Pa以下、特に好ましくは100万Pa以下、最も好ましくは50万Pa以下、更に最も好ましくは30万Pa以下である。上記G’(Tg+30)が上記下限以上であると、合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長をより一層効果的に抑制できる。
【0057】
なお、上記弾性率G’と温度との関係は、ポリビニルアセタール樹脂の種類に大きく影響され、特にポリビニルアセタール樹脂を得るために用いられる上記ポリビニルアルコール樹脂の平均重合度に大きく影響され、可塑剤の種類には大きく影響されず、一般の可塑剤の含有量では該可塑剤の含有量に大きく影響されない。可塑剤として3GOにかえて3GO以外の一塩基性有機酸エステル等の可塑剤を用いた場合の上記比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))、特に可塑剤としてトリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート(3GH)及びトリエチレングリコールジ-n-ヘプタノエート(3G7)を用いた場合の上記比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))は、3GOを用いた場合の上記比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))と大きく相違しない。また、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、可塑剤の含有量が50?80重量部である場合に、上記比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))は大きく相違しない。ポリビニルアセタール樹脂100重量部と、可塑剤としてトリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)60重量部とを含む樹脂膜を用いて測定された上記比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))は、第1の層2自体を用いて測定された上記比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))と大きな差異はない。このことは、上記比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))についてもいえる。
【0058】
上記試験法A及び上記試験法Bにて得られる上記比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))が共に0.18以上であることが好ましいが、上記試験法Bにて得られる上記比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))が0.18以上であることがより好ましい。上記試験法A及び上記試験法Bにて得られる上記比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))が共に0.65以上であることが好ましいが、上記試験法Bにて得られる上記比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))が0.65以上であることがより好ましい。上記試験法Aにおける上記比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))は0.65未満であってもよく、上記試験法Bにおける上記比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))は0.65未満であってもよい。上記試験法Aにおける上記比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))と上記試験法Bにおける上記比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))との双方が0.65未満であってもよい。
【0059】
また、第1の層2中の上記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する上記可塑剤の含有量が50重量部以上である場合には、合わせガラスの遮音性を充分に高めることができる。
【0060】
以下、中間膜の上記第1?第3の層に含まれている各成分の詳細を説明する。
【0061】
(ポリビニルアセタール樹脂)
上記第1?第3の層がそれぞれ、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有することにより、上記第1?第3の層の接着力を高くすることができる。このため、合わせガラス構成部材に対する中間膜の接着力をより一層高くすることができる。上記ポリビニルアセタール樹脂は、カルボン酸変性されていないポリビニルアセタール樹脂であってもよく、カルボン酸変性されたポリビニルアセタール樹脂(カルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂)であってもよい。本明細書において、「ポリビニルアセタール樹脂」には、カルボン酸変性されていないポリビニルアセタール樹脂と、カルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂とが含まれる。
【0062】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコール樹脂をアルデヒドによりアセタール化することにより製造できる。上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコール樹脂をアセタール化することにより得られるポリビニルアセタール樹脂である。上記カルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂は、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂をアルデヒドによりアセタール化することにより得られる。
【0063】
上記ホウ素原子を有する化合物の分散性を高めたり、合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長をより一層抑制したりする観点からは、上記ポリビニルアルコール樹脂をアセタール化する際に、上記ホウ素原子を有する化合物を添加することが好ましい。
【0064】
合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長をより一層抑制する観点からは、上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂は、平均重合度が1500以上のポリビニルアルコール樹脂をアセタール化することにより得られていることが好ましい。合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長をより一層抑制する観点からは、上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂は、平均重合度が3000を超えるポリビニルアルコール樹脂をアセタール化することにより得られていることも好ましい。
【0065】
合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長をさらに一層抑制する観点からは、上記第1の層中のポリビニルアセタール樹脂を得るために用いられる上記ポリビニルアルコール樹脂の平均重合度の好ましい下限は1600、より好ましい下限は1700、更に好ましい下限は1800、特に好ましい下限は1900、最も好ましい下限は2000、好ましい上限は7000、好ましい上限は6000、好ましい上限は5000、好ましい上限は4900、好ましい上限は4500である。また、合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長をさらに一層抑制するために、上記第1の層中のポリビニルアセタール樹脂を得るために用いられる上記ポリビニルアルコール樹脂の平均重合度の好ましい下限は3010、より好ましい下限は3050、より一層好ましい下限は3500、更に好ましい下限は3600、特に好ましい下限は4000、最も好ましい下限は4050である。特に、合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長をより一層抑制し、合わせガラスの遮音性を充分に高め、かつ中間膜を容易に成形できることから、上記第1の層中のポリビニルアセタール樹脂を得るために用いられる上記ポリビニルアルコール樹脂の平均重合度は3010以上であることが好ましく、3020以上であることがより好ましく、4000以下であることが好ましく、4000未満であることがより好ましく、3800以下であることが更に好ましく、3600以下であることが特に好ましく、3500以下であることが最も好ましい。
【0066】
本発明者らは、上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂を得るために用いられる上記ポリビニルアルコール樹脂の平均重合度が上記下限以上であることにより、上記試験法A及び上記試験法Bによる上記比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))が上記下限及び上記上限を満たすようにすることが容易であり、更に上記比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))が上記下限及び上記上限を満たすようにすることが容易であることも見出した。
【0067】
本発明において、上記第1の層は、ポリビニルアセタール樹脂として、平均重合度が3000を越えるポリビニルアルコール樹脂をアセタール化することにより得られるポリビニルアセタール樹脂のみを含有してもよく、平均重合度が3000を越えるポリビニルアルコール樹脂をアセタール化することにより得られるポリビニルアセタール樹脂と他のポリビニルアセタール樹脂とを含有してもよい。上記他のポリビニルアセタール樹脂が、平均重合度が3000以下のポリビニルアルコール樹脂をアセタール化することにより得られるポリビニルアセタール樹脂(以下、「ポリビニルアセタール樹脂Z」ともいう)である場合、平均重合度が3000を超えるポリビニルアルコール樹脂をアセタール化することにより得られたポリビニルアセタール樹脂とポリビニルアセタール樹脂Zとの合計100重量%中、平均重合度が3000を超えるポリビニルアルコール樹脂をアセタール化することにより得られるポリビニルアセタール樹脂の含有量の好ましい下限は5重量%、より好ましい下限は50重量%、更に好ましい下限は70重量%、特に好ましい下限は90重量%、好ましい上限は100重量%、より好ましい上限は95重量%である。特に、合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長をより一層抑制できることから、上記他のポリビニルアセタール樹脂は、平均重合度が3000を超えるポリビニルアルコール樹脂をアセタール化することにより得られるポリビニルアセタール樹脂であることが好ましい。
【0068】
なお、上記ポリビニルアルコール樹脂の平均重合度は、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠した方法により求められる。
【0069】
また、上記第2,第3の層中のポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコール樹脂をアセタール化することにより製造できる。上記第2,第3の層中のポリビニルアセタール樹脂を得るためのポリビニルアルコール樹脂の平均重合度の好ましい下限は200、より好ましい下限は500、更に好ましい下限は1000、特に好ましい下限は1500、好ましい上限は4000、より好ましい上限は3500、更に好ましい上限は3000、特に好ましい上限は2500である。上記平均重合度が上記好ましい下限を満たすと、合わせガラスの耐貫通性をより一層高めることができる。上記平均重合度が上記好ましい上限を満たすと、中間膜の成形が容易になる。なお、上記第2,第3の層は、上記カルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂を含んでいてもよい。
【0070】
上記第1の層中のポリビニルアセタール樹脂を得るために用いるポリビニルアルコール樹脂の平均重合度は、上記第2,第3の層中のポリビニルアセタール樹脂を得るために用いるポリビニルアルコール樹脂の平均重合度よりも高いことが好ましく、500以上高いことが好ましく、800以上高いことが好ましく、1000以上高いことがより好ましく、1300以上高いことが更に好ましく、1800以上高いことが特に好ましい。
【0071】
上記ポリビニルアルコール樹脂は、例えば、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。上記ポリビニルアルコール樹脂のけん化度は、一般に70?99.9モル%の範囲内であり、75?99.8モル%の範囲内であることが好ましく、80?99.8モル%の範囲内であることがより好ましい。
【0072】
上記アルデヒドは特に限定されない。上記アルデヒドとして、一般には、炭素数が1?10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1?10のアルデヒドとしては、例えば、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-バレルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、n-オクチルアルデヒド、n-ノニルアルデヒド、n-デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド及びベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、n-ブチルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド又はn-バレルアルデヒドが好ましく、n-ブチルアルデヒドがより好ましい。上記アルデヒドは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0073】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルブチラール樹脂であることが好ましい。上記第1?第3の層に含まれている上記ポリビニルアセタール樹脂はそれぞれ、ポリビニルブチラール樹脂を含むことが好ましい。ポリビニルブチラール樹脂の合成は容易である。さらに、ポリビニルブチラール樹脂の使用により、合わせガラス構成部材に対する中間膜の接着力がより一層適度に発現する。さらに、耐光性及び耐候性等をより一層高めることができる。
【0074】
中間層である上記第1の層に含まれているポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率(水酸基量)の好ましい下限は16モル%、より好ましい下限は18モル%、更に好ましい下限は20モル%、特に好ましい下限は22モル%、好ましい上限は30モル%、より好ましい上限は29モル%、更に好ましい上限は27モル%、特に好ましい上限は25モル%である。上記水酸基の含有率が上記好ましい下限を満たすと、上記第1の層の接着力をより一層高くすることができる。上記水酸基の含有率が上記好ましい上限を満たすと、合わせガラスの遮音性をより一層高めることができる。さらに、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱性をより一層高めることができる。
【0075】
なお、ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が低いと、ポリビニルアセタール樹脂の親水性が低くなる。このため、可塑剤の含有量を多くすることができ、この結果、合わせガラスの遮音性をより一層高くすることができる。上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、上記第2,第3の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂の各水酸基の含有率よりも低い場合、上記第1の層の可塑剤の含有量を多くすることができる。合わせガラスの遮音性を更に一層高くすることができることから、上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は、上記第2,第3の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂の各水酸基の含有率よりも2モル%以上低いことが好ましく、4モル%以上低いことがより好ましく、6モル%以上低いことが更に好ましく、8モル%以上低いことが特に好ましい。
【0076】
表面層である上記第2,第3の層に含まれている上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率の好ましい下限は26モル%、より好ましい下限は27モル%、更に好ましい下限は28モル%、特に好ましい下限は29モル%、最も好ましい下限は30モル%、好ましい上限は35モル%、より好ましい上限は34モル%、更に好ましい上限は33モル%、特に好ましい上限は32モル%、最も好ましい上限は31.5モル%である。上記水酸基の含有率が上記好ましい下限を満たすと、中間膜の接着力をより一層高くすることができる。上記水酸基の含有率が上記好ましい上限を満たすと、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱性をより一層高めることができる。
【0077】
上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値である。上記水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により、上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基が結合しているエチレン基量を測定することにより求めることができる。
【0078】
上記第1の層に含まれている上記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度(アセチル基量)は、30モル%以下であることが好ましい。アセチル化度が30モル%を超えると、ポリビニルアセタール樹脂を製造する際の反応効率が低下することがある。
【0079】
上記第1の層に含まれている上記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度の好ましい下限は0.1モル%、より好ましい下限は0.5モル%、更に好ましい下限は0.8モル%、好ましい上限は24モル%、より好ましい上限は20モル%、更に好ましい上限は19.5モル%、特に好ましい上限は15モル%である。上記第2,第3の層に含まれている上記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度の好ましい下限は0.1モル%、より好ましい下限は0.5モル%、更に好ましい下限は0.8モル%、好ましい上限は20モル%、より好ましい上限は5モル%、更に好ましい上限は2モル%、特に好ましい上限は1.5モル%である。上記アセチル化度が上記好ましい下限を満たすと、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性がより一層高くなる。上記アセチル化度が上記好ましい上限を満たすと、中間膜の耐湿性をより一層高めることができる。合わせガラスの遮音性を更に一層高くすることができることから、上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度が、上記第2,第3の層中のポリビニルアセタール樹脂の各アセタール化度よりも低い場合、上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度は、上記第2,第3の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂の各アセチル化度よりも3モル%以上高いことが好ましく、5モル%以上高いことがより好ましく、7モル%以上高いことが更に好ましく、10モル%以上高いことが特に好ましい。
【0080】
上記アセチル化度は、主鎖の全エチレン基量から、アセタール基が結合しているエチレン基量と、水酸基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値である。上記アセタール基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0081】
上記第1の層に含まれているポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度の好ましい下限は50モル%、より好ましい下限は54モル%、更に好ましい下限は58モル%、特に好ましい下限は60モル%、好ましい上限は85モル%、より好ましい上限は80モル%、更に好ましい上限は79モル%である。上記第2,第3の層に含まれているポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度の好ましい下限は60モル%、より好ましい下限は65モル%、更に好ましい下限は66モル%、特に好ましい下限は67モル%、好ましい上限は75モル%、より好ましい上限は72モル%、更に好ましい上限は71モル%、特に好ましい上限は70モル%である。上記アセタール化度が上記好ましい下限を満たすと、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性がより一層高くなる。上記アセタール化度が上記好ましい上限を満たすと、ポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間を短縮できる。合わせガラスの遮音性を更に一層高くすることができることから、上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度と、上記第2,第3の層中のポリビニルアセタール樹脂の各アセチル化度との差の絶対値が3以下である場合、上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は、上記第2,第3の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂の各アセタール化度よりも3モル%以上高いことが好ましく、5モル%以上高いことがより好ましく、7モル%以上高いことが更に好ましく、10モル%以上高いことが特に好ましい。
【0082】
上記アセタール化度は、アセタール基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値である。
【0083】
上記アセタール化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により、アセチル基量とビニルアルコール量(水酸基の含有率)とを測定し、得られた測定結果からモル分率を算出し、ついで、100モル%からアセチル基量とビニルアルコール量とを差し引くことにより算出され得る。
【0084】
なお、ポリビニルアセタール樹脂がポリビニルブチラール樹脂である場合には、上記アセタール化度(ブチラール化度)及びアセチル化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」もしくはASTM D1396-92に準拠した方法により測定された結果から算出され得る。ASTM D1396-92に準拠した方法による測定が好ましい。
【0085】
更に、合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長をより一層抑制することができ、合わせガラスの遮音性をより一層高めることができることから、上記第1の層に含まれているポリビニルアセタール樹脂は、アセチル化度が8モル%未満であるポリビニルアセタール樹脂(以下、「ポリビニルアセタール樹脂A」ともいう)、又は、アセチル化度が8モル%以上であるポリビニルアセタール樹脂(以下、「ポリビニルアセタール樹脂B」ともいう)であることが好ましい。
【0086】
上記ポリビニルアセタール樹脂Aのアセチル化度aは8モル%未満であり、7.5モル%以下であることが好ましく、7モル%以下であることが好ましく、6モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることが好ましく、0.1モル%以上であることが好ましく、0.5モル%以上であることが好ましく、0.8モル%以上であることが好ましく、1モル%以上であることが好ましく、2モル%以上であることが好ましく、3モル%以上であることが好ましく、4モル%以上であることが好ましい。上記アセチル化度aが上記上限以下及び上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性がより一層高くなり、合わせガラスの遮音性をより一層高めることができる。
【0087】
上記ポリビニルアセタール樹脂Aのアセタール化度aの好ましい下限は68モル%、より好ましい下限は70モル%、更に好ましい下限は71モル%、特に好ましい下限は72モル%、好ましい上限は85モル%、より好ましい上限は83モル%、更に好ましい上限は81モル%、特に好ましい上限は79モル%である。上記アセタール化度aが上記下限以上であると、合わせガラスの遮音性をより一層高めることができる。上記アセタール化度aが上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂Aを製造するために必要な反応時間を短縮できる。
【0088】
上記ポリビニルアセタール樹脂Aの水酸基の含有率aは30モル%以下であることが好ましく、27.5モル%以下であることが好ましく、27モル%以下であることが好ましく、26モル%以下であることが好ましく、25モル%以下であることが好ましく、24モル%以下であることが好ましく、23モル%以下であることが好ましく、16モル%以上であることが好ましく、18モル%以上であることが好ましく、19モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることが好ましい。上記水酸基の含有率aが上記上限以下であると、合わせガラスの遮音性をより一層高めることができる。上記水酸基の含有率aが上記下限以上であると、中間膜の接着力をより一層高くすることができる。
【0089】
上記ポリビニルアセタール樹脂Aはポリビニルブチラール樹脂であることが好ましい。
【0090】
上記ポリビニルアセタール樹脂Bのアセチル化度bは、8モル%以上であり、9モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることが好ましく、11モル%以上であることが好ましく、12モル%以上であることが好ましく、30モル%以下であることが好ましく、28モル%以下であることが好ましく、26モル%以下であることが好ましく、24モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることが好ましく、19.5モル%以下であることが好ましい。上記アセチル化度bが上記下限以上であると、合わせガラスの遮音性をより一層高めることができる。上記アセチル化度bが上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂Bを製造するために必要な反応時間を短縮できる。なかでも、ポリビニルアセタール樹脂Bを製造するために必要な反応時間をより一層短縮できることから、上記ポリビニルアセタール樹脂Bのアセチル化度bは20モル%未満であることが好ましい。
【0091】
上記ポリビニルアセタール樹脂Bのアセタール化度bの好ましい下限は50モル%、より好ましい下限は52.5モル%、更に好ましい下限は54モル%、特に好ましい下限は60モル%、好ましい上限は80モル%、より好ましい上限は77モル%、更に好ましい上限は74モル%、特に好ましい上限は71モル%である。上記アセタール化度bが上記下限以上であると、合わせガラスの遮音性をより一層高めることができる。上記アセタール化度bが上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂Bを製造するために必要な反応時間を短縮できる。
【0092】
上記ポリビニルアセタール樹脂Bの水酸基の含有率bは30モル%以下であることが好ましく、27.5モル%以下であることが好ましく、27モル%以下であることが好ましく、26モル%以下であることが好ましく、25モル%以下であることが好ましく、18モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることが好ましく、22モル%以上であることが好ましく、23モル%以上であることが好ましい。上記水酸基の含有率bが上記上限以下であると、合わせガラスの遮音性をより一層高めることができる。上記水酸基の含有率bが上記下限以上であると、中間膜の接着力をより一層高くすることができる。
【0093】
上記ポリビニルアセタール樹脂Bはポリビニルブチラール樹脂であることが好ましい。
【0094】
上記ポリビニルアセタール樹脂A及び上記ポリビニルアセタール樹脂Bは、平均重合度が1500以上のポリビニルアルコール樹脂をアルデヒドによりアセタール化することで得られていることが好ましい。上記アルデヒドは炭素数1?10のアルデヒドであることが好ましく、炭素数4又は5のアルデヒドであることがより好ましい。上記ポリビニルアルコール樹脂A,Bの平均重合度の好ましい下限は1600、好ましい下限は1700、好ましい下限は1800、好ましい下限は1900、好ましい下限は2000、好ましい下限は2100、好ましい上限は7000、好ましい上限は6000、好ましい上限は5000、好ましい上限は4900、好ましい上限は4500である。上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂は、平均重合度が3000を超え、4000未満であるポリビニルアルコール樹脂をアセタール化することにより得られていることが特に好ましい。
【0095】
上記第1の層に含まれている上記ポリビニルアセタール樹脂の分子量分布比(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、一般に1.1以上であり、好ましくは1.2以上、より好ましくは2以上、好ましくは6.7以下、より好ましくは6.5以下、更に好ましくは3.4以下である。
【0096】
上記第1の層に含まれている上記ポリビニルアセタール樹脂の上記分子量分布比の好ましい下限は1.2、より好ましい下限は1.5、更に好ましい下限は2.0、特に好ましい下限は2.5、好ましい上限は5.5、より好ましい上限は5、更に好ましい上限は4.6、特に好ましい上限は3.2である。上記第1の層に含まれている上記ポリビニルアセタール樹脂の上記分子量分布比は、2.5?3.2であることが特に好ましい。上記分子量分布比は、上記第1の層に含まれている上記ポリビニルアセタール樹脂の重量平均分子量Mwの上記第1の層に含まれている上記ポリビニルアセタール樹脂の数平均分子量Mnに対する比を示す。本発明者らは、上記第1の層に含まれているポリビニルアセタール樹脂の上記分子量分布比が上記下限以上及び上記上限以下であることにより、又は、2.5?3.2であることにより、上記試験法A又は上記試験法Bによる上記比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))及び上記比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))が上記下限及び上記上限を満たすようにすることが容易であり、更に合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長をより一層効果的に抑制できることも見出した。なかでも、合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長を更に一層効果的に抑制でき、合わせガラスの遮音性をより一層高めることができることから、上記第1の層に含まれている上記ポリビニルアセタール樹脂の分子量分布比が6.5以下であり、かつ上記第1の層に含まれている上記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する上記可塑剤の含有量が50重量部以上であることが好ましい。特に、上記第1の層に含まれている上記ポリビニルアセタール樹脂が、上記ポリビニルアセタール樹脂Bを含む場合、上記ポリビニルアセタール樹脂Bの分子量分布比が6.5以下であり、かつ上記第1の層に含まれている上記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する上記可塑剤の含有量が55重量部以上であることが好ましい。
【0097】
なお、上記重量平均分子量及び上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるポリスチレン換算での重量平均分子量及び数平均分子量を示す。例えば、ポリスチレン換算での重量平均分子量及び数平均分子量を測定するために、分子量既知のポリスチレン標準試料のGPC測定を行う。ポリスチレン標準試料(昭和電工社製「Shodex Standard SM-105」、「Shodex Standard SH-75」)として、重量平均分子量580、1,260、2,960、5,000、10,100、21,000、28,500、76,600、196,000、630,000、1,130,000、2,190,000、3,150,000、3,900,000の14試料を用いる。それぞれの標準試料ピークのピークトップが示す溶出時間に対して分子量をプロットし得られる近似直線を検量線として使用する。恒温恒湿室(湿度30%(±3%)、温度23℃)に1ヶ月放置した多層中間膜から表面層(上記第2,第3の層)と中間層(上記第1の層)とを剥離し、剥離された第1の層(中間層)をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、0.1重量%の溶液を調製する。得られた溶液をGPC装置により分析し、重量平均分子量及び数平均分子量を測定できる。GPC装置として、GPC用光散乱検出器(VISCOTEK社製「Model270(RALS+VISCO)」)が接続されたGPC装置(日立ハイテク社製「RI:L2490、オートサンプラー:L-2200、ポンプ:L-2130、カラムオーブン:L-2350、カラム:GL-A120-SとGL-A100MX-Sの直列」)を用いて、上記重量平均分子量及び上記数平均分子量を分析できる。
【0098】
また、合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長をより一層抑制し、遮音性に優れた合わせガラスを得る観点からは、上記第1の層に含まれている上記ポリビニルアセタール樹脂は、カルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂であることが好ましく、カルボン酸変性ポリビニルブチラール樹脂であることがより好ましい。カルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂の使用により、上記試験法A又は上記試験法Bによる上記比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))が上記下限及び上記上限を満たすようにすることが容易であり、かつ上記試験法A又は上記試験法Bによる上記比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))が上記下限及び上記上限を満たすようにすることが容易である。本発明者らは、カルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂の使用により、合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長をより一層効果的に抑制できることを見出した。
【0099】
上記カルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂は、アセタール基を有するエチレン基と、アセチル基を有するエチレン基と、水酸基を有するエチレン基と、カルボン酸で変性されたエチレン基とを有する。上記カルボン酸としては、不飽和ジカルボン酸や不飽和トリカルボン酸等が挙げられる。上記カルボン酸は、マレイン酸やイタコン酸等の不飽和ジカルボン酸であることが好ましい。上記アセタール基を有するエチレン基と、上記アセチル基を有するエチレン基と、上記水酸基を有するエチレン基と、上記カルボン酸で変性されたエチレン構造単位の割合は特に限定されないが、全エチレン構造単位を100モル%とした場合、上記カルボン酸で変性されたエチレン構造単位の割合は、0モル%を超え、10モル%以下であることが好ましく、9モル%以下であることが好ましく、8モル%以下であることが好ましく、7モル%以下であることが好ましく、6モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることが好ましく、4モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることが好ましく、2モル%以下であることが好ましく、1モル%以下であることが好ましい。
【0100】
(可塑剤)
上記第1?第3の層にそれぞれ含まれている上記可塑剤は特に限定されない。上記可塑剤として、従来公知の可塑剤を用いることができる。上記可塑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0101】
上記可塑剤としては、例えば、一塩基性有機酸エステル及び多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、並びに有機リン酸可塑剤及び有機亜リン酸可塑剤などのリン酸可塑剤等が挙げられる。なかでも、有機エステル可塑剤が好ましい。上記可塑剤は液状可塑剤であることが好ましい。
【0102】
上記一塩基性有機酸エステルとしては、特に限定されず、例えば、グリコールと一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコールエステル、並びにトリエチレングリコール又はトリプロピレングリコールと一塩基性有機酸とのエステル等が挙げられる。上記グリコールとしては、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びトリプロピレングリコール等が挙げられる。上記一塩基性有機酸としては、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2-エチル酪酸、ヘプチル酸、n-オクチル酸、2-エチルヘキシル酸、n-ノニル酸及びデシル酸等が挙げられる。
【0103】
上記多塩基性有機酸エステルとしては、特に限定されず、例えば、多塩基性有機酸と、炭素数4?8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物が挙げられる。上記多塩基性有機酸としては、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸等が挙げられる。
【0104】
上記有機エステル可塑剤としては、特に限定されず、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ-n-オクタノエート、トリエチレングリコールジ-n-ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ-n-ヘプタノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,3-プロピレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,4-ブチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコールジ-2-エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリレート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ヘプチルとアジピン酸ノニルとの混合物、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド、及びリン酸エステルとアジピン酸エステルとの混合物等が挙げられる。これら以外の有機エステル可塑剤を用いてもよい。上述のアジピン酸エステル以外の他のアジピン酸エステルを用いてもよい。
【0105】
上記有機リン酸可塑剤としては、特に限定されず、例えば、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート及びトリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0106】
上記可塑剤は、下記式(1)で表されるジエステル可塑剤であることが好ましい。このジエステル可塑剤の使用により、合わせガラスの遮音性をより一層高めることができる。
【0107】
【化1】

【0108】
上記式(1)中、R1及びR2はそれぞれ、炭素数5?10の有機基を表し、R3は、エチレン基、イソプロピレン基又はn-プロピレン基を表し、pは3?10の整数を表す。上記式(1)中のR1及びR2はそれぞれ、炭素数6?10の有機基であることが好ましい。
【0109】
上記可塑剤は、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート(3GH)、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)及びトリエチレングリコールジ-n-ヘプタノエート(3G7)からなる群から選択された少なくとも1種を含むことが好ましく、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエートを含むことがより好ましい。上記第1?第3の層に含まれている上記可塑剤はそれぞれ、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート及びトリエチレングリコールジ-n-ヘプタノエートからなる群から選択された少なくとも1種を含むことが好ましい。これらの好ましい可塑剤の使用により、合わせガラスの遮音性をより一層高めることができる。
【0110】
中間膜の各層における上記可塑剤の含有量は特に限定されない。
【0111】
合わせガラスの遮音性を充分に高める観点からは、上記第1の層中のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する可塑剤の含有量は40重量部以上であることが好ましい。上記第1の層の可塑剤の含有量が多くても、上記比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))が0.18以上であるように上記第1の層を構成することによって、合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長を抑制できる。
【0112】
上記第1の層中のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する可塑剤の含有量の好ましい下限は40重量部、より好ましい下限は45重量部、更に好ましい下限は50重量部、特に好ましい下限は55重量部、最も好ましい下限は60重量部、好ましい上限は80重量部、より好ましい上限は78重量部、更に好ましい上限は75重量部、特に好ましい上限は70重量部である。また、上記第1の層中の平均重合度が3000を超えるポリビニルアルコール樹脂をアセタール化することにより得られているポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する可塑剤の含有量の好ましい下限は40重量部、より好ましい下限は45重量部、更に好ましい下限は50重量部、特に好ましい下限は55重量部、最も好ましい下限は60重量部、好ましい上限は80重量部、より好ましい上限は78重量部、更に好ましい上限は75重量部、特に好ましい上限は70重量部である。上記可塑剤の含有量が上記好ましい下限を満たすと、合わせガラスの耐貫通性をより一層高めることができる。上記第1の層の可塑剤の含有量が多いほど、合わせガラスの遮音性をより一層高めることができる。上記可塑剤の含有量が上記好ましい上限を満たすと、中間膜の透明性をより一層高めることができる。
【0113】
上記第2,第3の層中のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する可塑剤の含有量の好ましい下限は25重量部、より好ましい下限は30重量部、更に好ましい下限は35重量部、好ましい上限は50重量部、より好ましい上限は45重量部、更に好ましい上限は40重量部、特に好ましい上限は39重量部である。上記可塑剤の含有量が上記好ましい下限を満たすと、中間膜の接着力が高くなり、合わせガラスの耐貫通性をより一層高めることができる。上記可塑剤の含有量が上記好ましい上限を満たすと、中間膜の透明性をより一層高めることができる。
【0114】
合わせガラスの遮音性をより一層高める観点からは、上記第1の層中のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する可塑剤の含有量は、上記第2,第3の層中のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する可塑剤の各含有量よりも多いことが好ましい。合わせガラスの遮音性をさらに一層高める観点からは、上記第1の層中のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する可塑剤の含有量は、上記第2,第3の層中のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する可塑剤の各含有量よりも5重量部以上多いことが好ましく、10重量部以上多いことがより好ましく、12重量部以上多いことがさらに好ましく、15重量部以上多いことが特に好ましい。
【0115】
(ホウ素原子を有する化合物)
合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長をより一層抑制し、遮音性に優れた合わせガラスを得る観点からは、上記第1の層は、ホウ素原子を有する化合物を含むことが好ましい。上記ホウ素原子を有する化合物は特に限定されないが、メタホウ酸塩、四ホウ酸塩、ホウ酸及びホウ酸エステル等が挙げられる。合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長をより一層抑制し、遮音性に優れた合わせガラスを得る観点からは、上記ホウ素原子を有する化合物は、メタホウ酸塩、四ホウ酸塩、ホウ酸塩、ホウ酸又はホウ酸エステルであることが好ましい。
【0116】
上記メタホウ酸塩としては、メタホウ酸リチウム等が挙げられる。上記四ホウ酸塩としては、四ホウ酸ナトリウム及び四ホウ酸カリウム等が挙げられる。上記ホウ酸エステルとしては、n-ブチルボロン酸、n-ヘキシルボロン酸、トリ-n-オクチルボラート、トリオクタデシルボロン酸、2-イソプロピル-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオクタボロラン、トリイソプロピルボラート、トリ-n-プロピルボラート、及びトリーn-ブチルボレート等が挙げられる。
【0117】
合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長をより一層抑制し、遮音性に優れた合わせガラスを得る観点からは、上記ホウ素原子を有する化合物は、メタホウ酸リチウム、四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウム、ホウ酸、n-ブチルボロン酸、n-ヘキシルボロン酸、トリ-n-オクチルボラート、トリオクタデシルボロン酸、2-イソプロピル-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオクタボロラン、トリイソプロピルボラート、トリーn-プロピルボラート、及びトリ-n-ブチルボレートからなる群より選択された少なくとも1種を含むことが好ましい。合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長をより一層抑制し、遮音性に優れた合わせガラスを得る観点からは、上記ホウ素原子を有する化合物は、メタホウ酸リチウム、四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウム、及び、ホウ酸からなる群より選択された少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0118】
上記ホウ素原子を有する化合物の分子量は特に限定されないが、好ましくは1000以下、より好ましくは500以下である。
【0119】
上記ホウ素原子を有する化合物を、樹脂中に添加することが好ましい。上記ホウ素原子を有する化合物を、樹脂中に添加する方法としては、上記ホウ素原子を有する化合物を溶媒に溶解させた溶液を、ポリビニルアセタール樹脂を得る際のアセタール化反応時に樹脂中に添加する方法や、ホウ素原子を有する化合物を溶媒又は界面活性剤と混合し、樹脂中に添加する方法等が挙げられる。上記ホウ素原子を有する化合物は、ポリビニルアセタール樹脂を得るための樹脂中に添加してもよく、ポリビニルアセタール樹脂中に添加してもよい。上記ホウ素原子を有する化合物は、上記ホウ素原子を有する化合物を直接樹脂中に添加してもよく、上記ホウ素原子を有する化合物を溶媒に溶解させた溶液を樹脂中に添加してもよく、上記ホウ素原子を有する化合物と溶媒又は界面活性剤との混合物を樹脂中に添加してもよい。上記溶媒又は界面活性剤の使用により、樹脂中にホウ素原子を有する化合物をより一層均一に分散させることができる。また、樹脂中にホウ素原子を有する化合物を均一に分散させることで、中間膜における各層の押出成形が容易になる。
【0120】
上記溶媒として、例えば、純水、アルコール、可塑剤、ポリアルキレンポリオール、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル、及びポリアルキレングリコールアリールエーテル等が挙げられる。例えば、ポリアルキレンポリオールはテトラエチレングリコールであることが好ましく、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルはテトラエチレングリコールフェニルエーテルであることが好ましく、ポリアルキレングリコールアリールエーテルはポリアルキレングリコールフェニルエーテルであることが好ましい。
【0121】
上記界面活性剤として、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル、及びポリアルキレングリコールアリールエーテル等が挙げられる。例えば、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルはポリエチレングリコールアルキルエーテルであることが好ましく、ポリアルキレングリコールアリールエーテルはポリエチレングリコールフェニルエーテルであることが好ましい。なかでも、樹脂中にホウ素原子を有する化合物をより一層均一に分散させることができるので、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル又はポリアルキレングリコールアリールエーテルが好ましい。
【0122】
上記第1の層中のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する上記界面活性剤の含有量の好ましい下限は0.1重量部、より好ましい下限は1重量部、更に好ましい下限は5重量部、特に好ましい下限は10重量部、好ましい上限は50重量部、より好ましい上限は40重量部、更に好ましい上限は30重量部、特に好ましい上限は20重量部、最も好ましい上限は15重量部である。上記界面活性剤の含有量が上記好ましい下限を満たすと、樹脂中にホウ素原子を有する化合物をより一層均一に分散させることができる。上記界面活性剤の含有量が上記好ましい上限を満たすと、合わせガラスの耐貫通性をより一層高めることができる。
【0123】
上記第1の層中のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する上記可塑剤の含有量と、上記第1の層中のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する上記界面活性剤の含有量との合計の好ましい下限は45重量部、より好ましい下限は50重量部、更に好ましい下限は55重量部、特に好ましい下限は60重量部、好ましい上限は85重量部、より好ましい上限は80重量部、更に好ましい上限は75重量部、特に好ましい上限は70重量部である。上記合計が上記好ましい下限を満たすと、合わせガラスの遮音性をより一層高めることができる。上記合計が上記好ましい上限を満たすと、合わせガラスの耐貫通性をより一層高めることができる。
【0124】
上記第1の層中のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する上記ホウ素原子を有する化合物の含有量の好ましい下限は0.01重量部、より好ましい下限は0.05重量部、更に好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は5重量部、より好ましい上限は1重量部、更に好ましい上限は0.5重量部である。上記ホウ素原子を有する化合物の含有量が上記好ましい下限を満たすと、合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長をより一層抑制できる。上記ホウ素原子を有する化合物の含有量が上記好ましい上限を満たすと、合わせガラスの透明性をより一層高くすることができる。
【0125】
上記第1の層中のホウ素原子の含有量の好ましい下限は1ppm、好ましい下限は2ppm、好ましい下限は5ppm、好ましい下限は10ppm、好ましい下限は15ppm、好ましい下限は20ppmであり、好ましい上限は10000ppm、好ましい上限は5000ppm、好ましい上限は3000ppm、好ましい上限は1000ppm、好ましい上限は900ppm、好ましい上限は800ppm、好ましい上限は700ppm、好ましい上限は600ppm、好ましい上限は500ppm、好ましい上限は400ppm、好ましい上限は300ppm、好ましい上限は200ppm、好ましい上限は100ppm、好ましい上限は50ppmである。上記ホウ素原子の含有量が上記好ましい下限を満たすと、合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長をより一層抑制できる。上記ホウ素原子の含有量が上記好ましい上限を満たすと、合わせガラス用中間膜の成形が容易になる。なお、上記第1の層中のホウ素原子とは、上記ホウ素原子を有する化合物に由来するホウ素原子だけではなく、本発明に係る合わせガラス用中間膜に含まれるホウ素原子を含む。また、上記第1の層中のホウ素原子の含有量は、ICP発光分光分析法により、測定することができる。
【0126】
(他の成分)
上記第1?第3の層はそれぞれ、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、染料、接着力調整剤、耐湿剤、蛍光増白剤及び赤外線吸収剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0127】
(合わせガラス用中間膜の製造方法、及び合わせガラス)
本発明に係る合わせガラス用中間膜の製造方法としては特に限定されないが、上記ポリビニルアセタール樹脂と上記可塑剤とを含む樹脂組成物を用いて、上記第1?第3の層をそれぞれ形成した後に、例えば、上記第2の層と上記第1の層と上記第3の層とをこの順に積層する方法、並びに該樹脂組成物を、押出機を用いて共押出することにより、上記第2の層と上記第1の層と上記第3の層とをこの順に積層する方法等が挙げられる。中間膜の製造効率が優れることから、上記第2,第3の層に、同一のポリビニルアセタール樹脂が含まれていることが好ましく、上記第2,第3の層に、同一のポリビニルアセタール樹脂及び同一の可塑剤が含まれていることがより好ましく、上記第2,第3の層が同一の樹脂組成物により形成されていることが更に好ましい。
【0128】
上記ホウ素原子を有する化合物の分散性を高めたり、合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長をより一層抑制したりする観点からは、上記第1の層を得るための組成物が上記ホウ素原子を有する化合物を含むことが好ましい。
【0129】
本発明に係る合わせガラス用中間膜はそれぞれ、合わせガラスを得るために用いられる。
【0130】
図2に、図1に示す中間膜1を用いた合わせガラスの一例を模式的に断面図で示す。
【0131】
図2に示す合わせガラス11は、第1の合わせガラス構成部材12と、第2の合わせガラス構成部材13と、中間膜1とを備える。中間膜1は、第1,第2の合わせガラス構成部材12,13の間に挟み込まれている。
【0132】
第1の合わせガラス構成部材12は、第2の層3の外側の表面3aに積層されている。第2の合わせガラス構成部材13は、第3の層4の外側の表面4aに積層されている。従って、合わせガラス11は、第1の合わせガラス構成部材12と、第2の層3と、第1の層2と、第3の層4と、第2の合わせガラス構成部材13とがこの順で積層されて構成されている。
【0133】
上記第1,第2の合わせガラス構成部材としては、ガラス板及びPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等が挙げられる。合わせガラスには、2枚のガラス板の間に中間膜が挟み込まれている合わせガラスだけでなく、ガラス板とPETフィルム等との間に中間膜が挟み込まれている合わせガラスも含まれる。合わせガラスは、ガラス板を備えた積層体であり、少なくとも1枚のガラス板が用いられていることが好ましい。
【0134】
上記ガラス板としては、無機ガラス及び有機ガラスが挙げられる。上記無機ガラスとしては、フロート板ガラス、熱線吸収板ガラス、熱線反射板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、及び線入り板ガラス等が挙げられる。上記有機ガラスは、無機ガラスに代用される合成樹脂ガラスである。上記有機ガラスとしては、ポリカーボネート板及びポリ(メタ)アクリル樹脂板等が挙げられる。上記ポリ(メタ)アクリル樹脂板としては、ポリメチル(メタ)アクリレート板等が挙げられる。
【0135】
上記合わせガラスの耐貫通性をより一層高める観点からは、中間膜の厚みの好ましい下限は0.05mm、より好ましい下限は0.25mm、好ましい上限は3mm、より好ましい上限は1.5mmである。中間膜の厚みが上記好ましい下限及び上記好ましい上限をそれぞれ満たすと、合わせガラスの耐貫通性及び透明性をより一層高めることができる。上記第1の層の厚みの好ましい下限は0.01mm、より好ましい下限は0.04mm、更に好ましい下限は0.07mm、好ましい上限は0.3mm、より好ましい上限は0.2mm、更に好ましい上限は0.18mm、特に好ましい上限は0.16mmである。上記第1の層の厚みが上記下限を満たすと、合わせガラスの遮音性をより一層高めることができ、上記上限を満たすと、合わせガラスの透明性をより一層高めることができる。上記第2,第3の層の厚みの好ましい下限は0.1mm、より好ましい下限は0.2mm、更に好ましい下限は0.25mm、特に好ましい下限は0.3mm、好ましい上限は0.6mm、より好ましい上限は0.5mm、更に好ましい上限は0.45mm、特に好ましい上限は0.4mmである。上記第2,第3の層の厚みが上記下限を満たすと、合わせガラスの耐貫通性をより一層高めることができ、上記上限を満たすと、合わせガラスの透明性をより一層高めることができる。また、上記第1の層の厚みの中間膜の厚みに対する比((上記第1の層の厚み)/(上記中間膜の厚み))が小さく、上記第1の層に含まれる可塑剤の含有量が多いほど、合わせガラスにおける発泡が発生し、発泡が成長する傾向にある。特に、中間膜における上記比が0.05?0.35であり、上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する上記可塑剤の含有量が55重量部以上である場合に、本発明に係る合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長を十分に抑制し、かつ合わせガラスの遮音性をより一層高めることができる。上記比((上記第1の層の厚み)/(中間膜の厚み))の好ましい下限は0.06、より好ましい下限は0.07、更に好ましい下限は0.08、特に好ましい下限は0.1、好ましい上限は0.3、より好ましい上限は0.25、更に好ましい上限は0.2、特に好ましい上限は0.15である。
【0136】
上記第1,第2の合わせガラス構成部材の厚みは、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。また、上記合わせガラス構成部材がガラス板である場合に、該ガラス板の厚みは、1?3mmの範囲内であることが好ましい。上記合わせガラス構成部材がPETフィルムである場合に、該PETフィルムの厚みは、0.03?0.5mmの範囲内であることが好ましい。
【0137】
上記合わせガラスの製造方法は特に限定されない。例えば、上記第1,第2の合わせガラス構成部材の間に、中間膜を挟んで、押圧ロールに通したり、又はゴムバックに入れて減圧吸引したりして、上記第1,第2の合わせガラス構成部材と中間膜との間に残留する空気を脱気する。その後、約70?110℃で予備接着して積層体を得る。次に、積層体をオートクレーブに入れたり、又はプレスしたりして、約120?150℃及び1?1.5MPaの圧力で圧着する。このようにして、上記合わせガラスを得ることができる。
【0138】
上記合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に使用できる。合わせガラスは、これらの用途以外にも使用できる。合わせガラスは、建築用又は車両用の合わせガラスであることが好ましく、車両用の合わせガラスであることがより好ましい。合わせガラスは、自動車のフロントガラス、サイドガラス、リアガラス又はルーフガラス等に使用できる。
【0139】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0140】
実施例、参考例及び比較例では、下記のポリビニルブチラール樹脂(ポリビニルアセタール樹脂)を用いた。ポリビニルブチラール樹脂のブチラール化度(アセタール化度)、アセチル化度及び水酸基の含有率はASTM D1396-92に準拠した方法により測定した。なお、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」により測定した場合も、ASTM D1396-92に準拠した方法と同様の数値を示した。
【0141】
(実施例1)
(1)多層中間膜の作製
平均重合度が2310であるポリビニルアルコール樹脂をn-ブチルアルデヒドでブチラール化することにより得られたポリビニルブチラール樹脂(水酸基の含有率23.4モル%、アセチル化度12.2モル%、ブチラール化度64.4モル%)100重量部に、可塑剤であるトリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)60重量部及び四ホウ酸ナトリウム0.12重量部を添加し、ミキシングロールで充分に混練し、中間層用樹脂組成物を得た。
【0142】
さらに、平均重合度が1700であるポリビニルアルコール樹脂をn-ブチルアルデヒドでブチラール化することにより得られたポリビニルブチラール樹脂(水酸基の含有率30.9モル%、アセチル化度0.8モル%、ブチラール化度68.3モル%)100重量部に、可塑剤であるトリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)37.5重量部を添加し、ミキシングロールで充分に混練し、表面層用樹脂組成物を得た。
【0143】
得られた中間層用樹脂組成物及び表面層用樹脂組成物を用いて、押出機により共押出することにより、表面層(厚み350μm)と中間層(厚み100μm)と表面層(厚み350μm)とが順に積層された多層中間膜を作製した。
【0144】
(2)耐貫通性試験に用いる合わせガラスの作製
得られた多層中間膜を縦30cm×横30cmの大きさに切断した。次に、透明なフロートガラス(縦30cm×横30cm×厚さ2.5mm)2枚の間に、多層中間膜を挟み込み、積層体を得た。この積層体をゴムバック内に入れ、2.6kPaの真空度で20分間脱気した後、脱気したままオーブン内に移し、更に90℃で30分間保持して真空プレスし、積層体を予備圧着した。オートクレーブ中で135℃及び圧力1.2MPaの条件で、予備圧着された積層体を20分間圧着し、耐貫通性試験に用いる合わせガラスを得た。
【0145】
(3)遮音性測定に用いる合わせガラスの作製
多層中間膜を縦30cm×横2.5cmの大きさに切断し、透明なフロートガラス(縦30cm×横2.5cm×厚さ2.5mm)を用いたこと以外は耐貫通性試験に用いる合わせガラスと同様の方法で、遮音性測定に用いる合わせガラスを得た。
【0146】
(4)発泡試験に用いる合わせガラスの作製
(試験法Aの発泡試験に用いる合わせガラス)
得られた多層中間膜を縦30cm×横15cmの大きさに切断し、温度23℃の環境下にて、10時間保管した。なお、得られた多層中間膜の両面にはエンボスが形成されており、そのエンボスの十点平均粗さは30μmであった。切断された多層中間膜において、多層中間膜の端部から縦方向にそれぞれ内側に向かって8cmの位置と、多層中間膜の端部から横方向にそれぞれ内側に向かって5cmの位置との交点4箇所に、直径6mmの貫通孔を形成し、貫通孔を有する多層中間膜を得た。
【0147】
透明なフロートガラス(縦30cm×横15cm×厚さ2.5mm)2枚の間に、貫通孔を有する多層中間膜を挟み込み、積層体を得た。積層体の外周縁は、熱融着により端部から幅2cmを封止することにより、エンボスに残留した空気および貫通孔に残留した空気を封じ込めた。この積層体を135℃、圧力1.2MPaの条件で20分間圧着することで、残留した空気を多層中間膜中に溶かし込み、発泡試験に用いる合わせガラスを得た。
【0148】
(試験法Bの発泡試験に用いる合わせガラス)
多層中間膜に貫通孔を形成しなかったこと以外は試験法Aの発泡試験に用いる合わせガラスと同様にして、試験法Bの発泡試験に用いる合わせガラスを得た。
【0149】
(試験法Cの発泡試験に用いる合わせガラス)
試験法Aの発泡試験に用いる合わせガラスと同様にして、試験法Cの発泡試験に用いる合わせガラスを得た。
【0150】
(実施例2、3、参考例4及び比較例1?4)
第1?第3の層の組成及び、第1の層に用いるポリビニルアセタール樹脂又はカルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂を得るために用いるポリビニルアルコール樹脂又はカルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂の平均重合度を下記の表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、中間膜及び合わせガラスを作製した。
【0151】
なお、参考例4では、中間層用樹脂組成物においてポリビニルブチラール樹脂にかえて、カルボン酸変性ポリビニルブチラール樹脂(平均重合度1800、水酸基の含有率21.3モル%、アセチル化度12.6モル%、ブチラール化度64.9モル%、カルボン酸変性の割合1.2モル%)を用い、第1?第3の層の組成を下記の表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、中間膜及び合わせガラスを作製した。また、実施例2、3、参考例4及び比較例1?4の表面層用樹脂組成物に含まれるポリビニルブチラール樹脂は平均重合度が1700のポリビニルアルコール樹脂をアセタール化することにより得た。
【0152】
(実施例5)
界面活性剤Aであるポリエチレングリコールアルキルエーテル(三洋化成工業社製「サンノニックSS-70」)10重量部と、ホウ素原子を有する化合物であるメタホウ酸リチウム0.0125重量部とを混合した混合液に、可塑剤であるトリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)50重量部を添加し、充分に混合し、可塑剤分散液を作製した。平均重合度が2300であるポリビニルアルコール樹脂をn-ブチルアルデヒドでブチラール化することにより得られたポリビニルブチラール樹脂(水酸基の含有率23モル%、アセチル化度12.5モル%、ブチラール化度64.5モル%)100重量部に、可塑剤分散液全量を添加し、ミキシングロールで充分に混練し、中間層用樹脂組成物を得た。
【0153】
さらに、平均重合度が1700であるポリビニルアルコール樹脂をn-ブチルアルデヒドでブチラール化することにより得られたポリビニルブチラール樹脂(水酸基の含有率30.4モル%、アセチル化度0.8モル%、ブチラール化度68.8モル%)100重量部に、可塑剤であるトリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)38.5重量部を添加し、ミキシングロールで充分に混練し、表面層用樹脂組成物を得た。
【0154】
得られた中間層用樹脂組成物及び表面層用樹脂組成物を用いて、押出機により共押出することにより、表面層(厚み350μm)と中間層(厚み100μm)と表面層(厚み350μm)とが順に積層された多層中間膜を作製した。
【0155】
実施例1と同様にして、耐貫通性試験に用いる合わせガラス、遮音性測定に用いる合わせガラス及び発泡試験に用いる合わせガラスを作製した。なお、試験法Cにて発泡試験を行った。
【0156】
(実施例6?9、参考例10、実施例11、参考例12?15、実施例16、参考例17、実施例18?57及び比較例5?6)
可塑剤分散液の組成、第1?第3の層の組成、並びに、第1?第3の層に用いるポリビニルアセタール樹脂を得るために用いるポリビニルアルコール樹脂の平均重合度、ブチラール化度、アセチル化度及び水酸基の含有率を下記の表2?7に示すように変更したこと以外は実施例5と同様にして、中間膜及び合わせガラスを作製した。
【0157】
界面活性剤Aはポリエチレングリコールアルキルエーテル(三洋化成工業社製「サンノニックSS-70」)、界面活性剤Bはポリエチレングリコールアルキルエーテル(三洋化成工業社製「ナロアクティーCL-40」、界面活性剤Cはポリエチレングリコールフェニルエーテル(第一工業製薬社製)である。
【0158】
(評価)
(1)遮音性
合わせガラスをダンピング試験用の振動発生機(振研社製「加振機G21-005D」)により加振し、そこから得られた振動特性を機械インピーダンス測定装置(リオン社製「XG-81」)にて増幅し、振動スペクトルをFFTスペクトラムアナライザー(横河ヒューレッドパッカード社製「FFTアナライザー HP3582A」)により解析した。
【0159】
このようにして得られた損失係数と合わせガラスとの共振周波数との比から、20℃における音周波数(Hz)と音響透過損失(dB)との関係を示すグラフを作成し、音周波数2,000Hz付近における極小の音響透過損失(TL値)を求めた。このTL値が高いほど、遮音性が高くなる。TL値が35dB以上の場合を「○」、TL値が35dB未満の場合を「×」と判定した。
【0160】
(2)発泡状態(試験法A及び試験法B)
発泡試験に用いる合わせガラスを、各多層中間膜について5枚作製し、50℃のオーブン内に100時間放置した。放置後の合わせガラスにおいて、発泡の有無及び発泡の大きさを平面視にて目視で観察した(試験法A)。さらに、発泡試験に用いる合わせガラスを、各多層中間膜について5枚作製し、50℃のオーブン内に30日間放置した。放置後の合わせガラスにおいて、発泡の有無及び発泡の大きさを平面視にて目視で観察した(試験法B)。観察結果から、発泡の状態を下記の判定基準で判定した。
【0161】
[発泡の状態の判定基準]
5枚の合わせガラスに発生した発泡を、楕円で近似し、その楕円面積を発泡面積とした。5枚の合わせガラスにて観察された楕円面積の平均値を求め、合わせガラスの面積(30cm×15cm)に対する楕円面積の平均値(発泡面積)の割合(百分率)を求めた。
【0162】
○○:5枚全ての合わせガラスに発泡が観察されなかった
○:楕円面積の平均値(発泡面積)の割合が5%未満であった
△:楕円面積の平均値(発泡面積)の割合が5%以上、10%未満であった
×:楕円面積の平均値(発泡面積)の割合が10%以上であった
【0163】
(3)発泡状態(試験法C)
発泡試験に用いる合わせガラスを、各多層中間膜について5枚作製し、60℃のオーブン内に50時間放置した。放置後の合わせガラスにおいて、発泡の有無及び発泡の大きさを平面視にて目視で観察した(試験法C)。観察結果から、発泡の状態を下記の判定基準で判定した。
【0164】
[発泡の状態の判定基準]
5枚の合わせガラスに発生した発泡を、楕円で近似し、その楕円面積を発泡面積とした。5枚の合わせガラスにて観察された楕円面積の平均値を求め、合わせガラスの面積(30cm×15cm)に対する楕円面積の平均値(発泡面積)の割合(百分率)を求めた。
【0165】
○○:5枚全ての合わせガラスに発泡が観察されなかった
○:楕円面積の平均値(発泡面積)の割合が3%未満であった
△:楕円面積の平均値(発泡面積)の割合が3%以上、5%未満であった
×:楕円面積の平均値(発泡面積)の割合が5%以上であった
【0166】
(4)耐貫通性
耐貫通性試験に用いる合わせガラス(縦30cm×横30cm)を、表面温度が23℃となるように調整した。次いで、JIS R3212に準拠して、4mの高さから、6枚の合わせガラスに対してそれぞれ、質量2260g及び直径82mmの剛球を、合わせガラスの中心部分に落下させた。6枚の合わせガラス全てについて、剛球が衝突した後5秒以内に剛球が貫通しなかった場合を合格とした。剛球が衝突した後5秒以内に剛球が貫通しなかった合わせガラスが3枚以下であった場合は不合格とした。4枚の場合には、新しく6枚の合わせガラスの耐貫通性を評価した。5枚の場合には、新しく1枚の合わせガラスを追加試験し、剛球が衝突した後5秒以内に剛球が貫通しなかった場合を合格とした。同様の方法で、5m及び6mの高さから、6枚の合わせガラスに対してそれぞれ、質量2260g及び直径82mmの剛球を、合わせガラスの中心部分に落下させ、合わせガラスの耐貫通性を評価した。
【0167】
(5)試験法Aによる弾性率G’の測定
実施例、参考例及び比較例の合わせガラス用中間膜の第1の層に含まれる各ポリビニルアセタール樹脂(第1の層に用いるポリビニルアセタール樹脂)100重量部と、可塑剤としてトリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)60重量部とを充分に混練し、混練物を得た。得られた混練物をプレス成型機でプレス成型して、平均厚さが0.35mmの樹脂膜Aを得た。得られた樹脂膜Aを25℃及び相対湿度30%の条件で2時間放置した。2時間放置した後に、TAINSTRUMENTS社製のARES-G2を用いて、粘弾性を測定した。治具として、直径8mmのパラレルプレートを用いた。3℃/分の降温速度で100℃から-10℃まで温度を低下させる条件、及び周波数1Hz及び歪1%の条件で測定を行った。得られた測定結果において、損失正接のピーク温度をガラス転移温度Tg(℃)とした。また、得られた測定結果とガラス転移温度Tgとから、(Tg+30)℃での弾性率G’(Tg+30)の値と、(Tg+80)℃での弾性率G’(Tg+80)の値と、(Tg+170)℃での弾性率G’(Tg+170)の値とを読み取った。また、比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))と比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))とを求めた。なお、実施例5?9、参考例10、実施例11、参考例12?15、実施例16、参考例17、実施例18?20及び比較例5,6については、比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))のみを算出した。
【0168】
(6)試験法Bによる弾性率G’の測定
実施例、参考例及び比較例の合わせガラス用中間膜を恒温恒湿室(湿度30%(±3%)、温度23℃)に1ヶ月間保管した。1ヶ月間保管した後すぐに、表面層と中間層と表面層とを剥離することにより、中間層を取り出した。2枚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの間に配置された型枠(縦2cm×横2cm×厚み0.76mm)内に、剥離された中間層1gを置き、温度150℃、プレス圧0kg/cm^(2)で10分間予熱した後、80kg/cm^(2)で15分間プレス成型した。予め20℃に設定したハンドプレス機に、プレス成型された中間層を配置し、10MPaで10分間プレスすることにより冷却した。次いで、2枚のPETフィルムの間に配置された型枠から、1枚のPETフィルムを剥離し、恒温恒湿室(湿度30%(±3%)、温度23℃)で24時間保管した後、TAINSTRUMENTS社製のARES-G2を用いて、粘弾性を測定した。治具として、直径8mmのパラレルプレートを用いた。3℃/分の降温速度で100℃から-10℃まで温度を低下させる条件、及び周波数1Hz及び歪1%の条件で測定を行った。得られた測定結果において、損失正接のピーク温度をガラス転移温度Tg(℃)とした。また、得られた測定結果とガラス転移温度Tgとから、(Tg+30)℃での弾性率G’(Tg+30)の値と、(Tg+80)℃での弾性率G’(Tg+80)の値と、(Tg+170)℃での弾性率G’(Tg+170)の値とを読み取った。また、比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))と比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))とを求めた。なお、実施例5?9、参考例10、実施例11、参考例12?15、実施例16、参考例17、実施例18?20及び比較例5,6については、比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))のみを算出した。
【0169】
結果を下記の表1?7に示す。下記表1?7において、可塑剤の種類である3GOはトリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエートを表し、3G7はトリエチレングリコールジ-n-ヘプタノエートを表す。また、第1の層に用いたポリビニルアセタール樹脂又はカルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂の分子量分布比(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)の値も下記の表1に示した。なお、第1の層に用いたポリビニルアセタール樹脂Xの数平均分子量Mnは5万?50万の範囲内であった。上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるポリスチレン換算での数平均分子量を示す。
【0170】
【表1】

【0171】
【表2】

【0172】
【表3】

【0173】
【表4】

【0174】
【表5】

【0175】
【表6】

【0176】
【表7】

【0177】
上記表に示すように、実施例、参考例及び比較例の合わせガラス用中間膜では、第1の層を構成するポリビニルアセタール樹脂と第1の層を構成する可塑剤とを上記表1の含有量で含む樹脂膜B(第1の層)を用いて、多層中間膜の各層間で可塑剤を移行させた後、該樹脂膜B(第1の層)の弾性率G’を測定した結果、該樹脂膜Bの比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))は、第1の層に含まれているポリビニルアセタール樹脂100重量部と3GO60重量部とを含む樹脂膜Aの比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))とほぼ同様であった。また、実施例、参考例及び比較例の合わせガラス用中間膜では、第1の層を構成するポリビニルアセタール樹脂と第1の層を構成する可塑剤とを上記表1の含有量で含む樹脂膜B(第1の層)を用いて、多層中間膜の各層間で可塑剤を移行させた後、該樹脂膜B(第1の層)の弾性率G’を測定した結果、該樹脂膜Bの比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))は、第1の層に含まれているポリビニルアセタール樹脂100重量部と3GO60重量部とを含む樹脂膜Aの比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))とほぼ同様であった。
【符号の説明】
【0178】
1…中間膜
2…第1の層
2a…一方の面
2b…他方の面
3…第2の層
3a…外側の表面
4…第3の層
4a…外側の表面
11…合わせガラス
12…第1の合わせガラス構成部材
13…第2の合わせガラス構成部材
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第1の層と、
前記第1の層の一方の面に積層されており、かつポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第2の層とを備え、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量よりも高く、
かつ前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも低く、
前記第1の層を樹脂膜として用いて、該樹脂膜の粘弾性を測定した場合に、該樹脂膜のガラス転移温度をTg(℃)としたときに、(Tg+170)℃での弾性率G’(Tg+170)の(Tg+30)℃での弾性率G’(Tg+30)に対する比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))が、0.18以上であり、
前記第1の層がホウ素原子を有する化合物を含む、合わせガラス用中間膜。
【請求項2】
ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第1の層と、
前記第1の層の一方の面に積層されており、かつポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第2の層とを備え、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量よりも高く、
かつ前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも低く、
前記第1の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部と、可塑剤としてトリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)60重量部とを含む樹脂膜を用いて、該樹脂膜の粘弾性を測定した場合に、該樹脂膜のガラス転移温度をTg(℃)としたときに、(Tg+170)℃での弾性率G’(Tg+170)の(Tg+30)℃での弾性率G’(Tg+30)に対する比(G’(Tg+170)/G’(Tg+30))が、0.18以上であり、
前記第1の層がホウ素原子を有する化合物を含む、合わせガラス用中間膜。
【請求項3】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%以上であるか、又は前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%未満であり、かつアセタール化度が68モル%以上である、請求項1又は2に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項4】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%以上である、請求項3に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項5】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%未満であり、かつアセタール化度が68モル%以上である、請求項3に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
前記ホウ素原子を有する化合物は、メタホウ酸リチウム、四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウム、及び、ホウ酸及びホウ酸エステルからなる群より選択された少なくとも1種を含む、請求項1?5のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項8】
前記弾性率G’(Tg+30)が20万Pa以上である、請求項1?5、及び7のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項9】
前記第1の層に含まれている前記ポリビニルアセタール樹脂の分子量分布比(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が6.5以下である、請求項1?5、7及び8のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項10】
前記第1の層に含まれている前記ポリビニルアセタール樹脂の分子量分布比(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が2.5?3.2である、請求項9に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項11】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が、50重量部以上である、請求項1?5、及び7?10のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項12】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が、55重量部以上である、請求項11に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項13】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、30モル%以下である、請求項1?5、及び7?12のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項14】
前記第1の層の他方の面に積層されており、かつポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第3の層をさらに備える、請求項1?5、及び7?13のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項15】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が、前記第2,第3の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の各含有量よりも多い、請求項14に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項16】
前記第1?第3の層に含まれている前記ポリビニルアセタール樹脂がそれぞれ、ポリビニルブチラール樹脂を含み、
前記第1?第3の層に含まれている前記可塑剤がそれぞれ、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート及びトリエチレングリコールジ-n-ヘプタノエートからなる群から選択された少なくとも1種を含む、請求項14又は15に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項17】
第1,第2の合わせガラス構成部材と、
前記第1,第2の合わせガラス構成部材の間に挟み込まれた中間膜とを備え、
前記中間膜が、請求項1?5、及び7?16のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜である、合わせガラス。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-05-30 
出願番号 特願2012-504596(P2012-504596)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (C03C)
P 1 651・ 121- YAA (C03C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山崎 直也  
特許庁審判長 新居田 知生
特許庁審判官 瀧口 博史
後藤 政博
登録日 2016-03-11 
登録番号 特許第5896894号(P5896894)
権利者 積水化学工業株式会社
発明の名称 合わせガラス用中間膜及び合わせガラス  
代理人 特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所  
代理人 田口 昌浩  
代理人 特許業務法人宮▲崎▼・目次特許事務所  
代理人 田口 昌浩  
代理人 特許業務法人せとうち国際特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ