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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C03C
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C03C
管理番号 1330100
異議申立番号 異議2016-701032  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-08-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-11-04 
確定日 2017-06-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5914453号発明「ディスプレイ用ガラス基板およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5914453号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?12〕について訂正することを認める。 特許第5914453号の請求項1?12に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5914453号の請求項1?12に係る特許についての出願は、2013年12月25日(優先権主張2012年12月28日、日本国 2012年12月28日、日本国 2012年12月28日、日本国)に特許出願され、平成28年4月8日にその特許権の設定登録がされたものであって、登録後の経緯は以下のとおりである。

平成28年11月 4日 :特許異議申立人 籾井 孝文による特許異議の申立て
平成29年 1月25日付け:取消理由の通知
同年 3月24日付け:訂正の請求、意見書の提出

なお、特許権者による訂正の請求及び意見書に対して、特許異議申立人に意見を求めたが、期間内に応答はなかった。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
平成29年3月24日付け訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)による、一群の請求項1?12に係る訂正の内容は以下ア、イのとおりである。

ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、「モル%表示で、・・・R_(2)O 0.01?0.8%」と記載されているのを、「モル%表示で、・・・R_(2)O 0.1%超、0.8%以下」に訂正する。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2において、「モル%表示で、・・・R_(2)O 0.01?0.8%」と記載されているのを、「モル%表示で、・・・R_(2)O 0.1%超、0.8%以下」に訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、及び一群の請求項
ア 訂正の目的について
訂正事項1、2はそれぞれ、訂正前の請求項1、2の発明特定事項である、モル%表示でのR_(2)Oの含有量を更に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無について
本件明細書【0100】には、R_(2)Oの含有量について、「0?0.8mol%であり、・・・一層好ましくは0.1?0.4mol%」と記載されている。
そして、本件明細書【0131】?【0149】に記載された実施例には、R_(2)Oを0.1mol%超としたガラス組成も開示されている。
してみれば、R_(2)Oの含有量について、端点である0.1mol%を除き、「モル%表示で、・・・R_(2)O 0.1%超、0.8%以下」としても、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項1、2は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1、2は、上記「ア」のとおり、モル%表示でのR_(2)Oの含有量を更に限定することにより、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1、2は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

エ 一群の請求項について
訂正事項1に係る訂正前の請求項1を訂正前の請求項3?12が引用しており、訂正事項2に係る訂正前の請求項2を訂正前の請求項3?12が引用していたから、訂正前の請求項1?12は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、本件訂正請求は、当該一群の請求項ごとに請求をしたものと認められる。

(3)訂正の適否についてのむすび
以上のとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?12〕について訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
(1)本件特許発明
上記のとおり訂正が認められるので、本件訂正請求により訂正された訂正請求項1?12に係る発明(以下「本件特許発明1?12」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?12に記載されたとおりのものと認める。

(2)取消理由の概要
訂正前の請求項1?12に係る特許に対して、平成29年1月25日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

理由1.請求項1?5、7?12に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

理由2.請求項1?5、7?12に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2?4号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

甲第1号証:特表2009-525942号公報
甲第2号証:特表2011-522767号公報
甲第3号証:特開2006-213595号公報
甲第4号証:WO2009/054314の再公表公報

(3)当審の判断
訂正により、独立請求項である請求項1、2に係る発明である本件特許発明1、2は、いずれも、モル%表示で、R_(2)Oを0.1%超、0.8%以下含有するガラスから形成されるものに限定された。
一方、甲第1号証に記載の発明は、その請求項1に記載のとおり、「アルカリを含まないガラス」に関するものであり、【0047】には、「本明細書で用いる『アルカリを含まないガラス』は、0.1モルパーセント以下の合計アルカリ濃度を有するガラスである。」と記載されている。
したがって、本件特許発明1、2、及びこれらのいずれかを引用する本件特許発明3?12は、甲第1号証に記載の発明ではない。

また、甲第2?4号証に記載された技術事項を考慮しても、上記「アルカリを含まないガラス」に関する甲1号証に記載の発明において、アルカリ濃度(R_(2)O)を0.1モル%超とすることが、当業者が容易になし得ることであるとはいえない。
したがって、本件特許発明1、2、及びこれらのいずれかを引用する本件特許発明3?12は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2?4号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件請求項1?12に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モル%表示で、
SiO_(2) 60?80%、
Al_(2)O_(3) 8?20%、
B_(2)O_(3) 0?8%、
MgO 2.1?15%、
R_(2)O 0.1%超、0.8%以下、を含有し、
BaO/ROが0.05?1であり、
Y_(2)O_(3)およびLa_(2)O_(3)を実質的に含有せず、
歪点が670℃以上である、ガラスから形成されるディスプレイ用ガラス基板。ここで、ROは(MgO+CaO+SrO+BaO)を表しており、R_(2)Oは(Li_(2)O+Na_(2)O+K_(2)O)を表している。
【請求項2】
モル%表示で、
SiO_(2) 60?80%、
Al_(2)O_(3) 8?20%、
B_(2)O_(3) 0?8%、
MgO 2.1?15%、
R_(2)O 0.1%超、0.8%以下、を含有し、
(SiO_(2)+(2×Al_(2)O_(3)))/((2×B_(2)O_(3))+RO+(10×R_(2)O))が2.5以上であり、
BaO/ROが0.05?1であり、
Y_(2)O_(3)およびLa_(2)O_(3)を実質的に含有せず、
歪点が670℃以上である、ガラスから形成されるディスプレイ用ガラス基板。ここで、ROは(MgO+CaO+SrO+BaO)を表しており、R_(2)Oは(Li_(2)O+Na_(2)O+K_(2)O)を表している。
【請求項3】
モル%表示で、
CaO 0?20%、
SrO 0?15%、
BaO 0.1?15%、を含有する、請求項1又は2記載のガラス基板。
【請求項4】
モル%表示で、SiO_(2)-(1/2×Al_(2)O_(3))が65%未満である、請求項1?3のいずれか1項に記載のガラス基板。
【請求項5】
モル%表示で、B_(2)O_(3)+RO+ZnOが15?25%である、請求項1?4のいずれか1に記載のガラス基板。
【請求項6】
SnO_(2)とFe_(2)O_(3)とを含有し、
モル%表示で、
SnO_(2) 0.03?0.15%であり、
SnO_(2)とFe_(2)O_(3)との合量は0.05?0.2%である、請求項1?5のいずれか1項に記載のガラス基板。
【請求項7】
モル%表示で、
SiO_(2) 66?72%、
Al_(2)O_(3) 11?15%、
B_(2)O_(3) 0?8%、
MgO 2.1?6%、
CaO 2?11%、
SrO 0?1%、
BaO 1?10%、を含有する、請求項1?6のいずれか1項に記載のガラス基板。
【請求項8】
As_(2)O_(3)を実質的に含有しない、請求項1?7のいずれか1項に記載のガラス基板。
【請求項9】
モル比((SiO_(2)+(2×Al_(2)O_(3)))/((2×B_(2)O_(3))+RO+(10×R_(2)O))は、2.5?5.0である、請求項1?8のいずれか1項に記載のガラス基板。
【請求項10】
モル%表示でROを10?18%含有する、請求項1?9のいずれか1項に記載のガラス基板。
【請求項11】
CaOを含有し、モル比CaO/ROは、0.52以下である、請求項1?10のいずれか1項に記載のガラス基板。
【請求項12】
所定の組成に調合したガラス原料を少なくとも直接通電加熱を用いて熔解する熔解工程と、
前記熔解工程にて熔解した熔融ガラスを平板状ガラスに成形する成形工程と、
前記平板状ガラスを徐冷する工程であって、前記平板状ガラスの熱収縮率を低減するように前記平板状ガラスの冷却条件を制御する徐冷工程と、を含む請求項1?11のいずれか1項に記載のガラス基板を製造するディスプレイ用ガラス基板の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-05-30 
出願番号 特願2013-266268(P2013-266268)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C03C)
P 1 651・ 113- YAA (C03C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 岡田 隆介  
特許庁審判長 新居田 知生
特許庁審判官 永田 史泰
中澤 登
登録日 2016-04-08 
登録番号 特許第5914453号(P5914453)
権利者 AvanStrate株式会社
発明の名称 ディスプレイ用ガラス基板およびその製造方法  
代理人 特許業務法人特許事務所サイクス  
代理人 特許業務法人特許事務所サイクス  

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