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審決分類 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C23C
審判 一部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C23C
管理番号 1330101
異議申立番号 異議2016-700744  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-08-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-08-16 
確定日 2017-06-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5863783号発明「FePt系スパッタリングターゲット及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5863783号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?8〕、〔9、10、13?28〕について訂正することを認める。 特許第5863783号の請求項1?10、13?28に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第5863783号の請求項1?28に係る特許についての出願は、2013年1月11日(優先権主張2012年1月13日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成28年1月8日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許のうち、請求項1?10、13?28に係る特許について、特許異議申立人特許業務法人藤央特許事務所により特許異議の申立てがなされ、平成28年10月19日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成28年12月20日に意見書の提出及び訂正の請求がなされ、この訂正の請求に対して特許異議申立人より平成29年2月22日に意見書の提出がなされ、平成29年3月7日付けで取消理由通知(決定の予告)がなされ、平成29年5月9日に意見書の提出がなされたものである。

第2 訂正の適否についての判断

1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。なお、訂正箇所に下線を付した。
(1)請求項1に記載された「前記金属酸化物相は、インターセプト法によって求めた相の平均の大きさが0.4μm以下である」を、「前記金属酸化物相は、インターセプト法によって求めた相の平均の大きさが0.1μm以上0.4μm以下である」に訂正する(以下、「訂正事項1」という)。

(2)請求項2に記載された「前記C相と前記金属酸化物相とを合わせた相は、インターセプト法によって求めた相の平均の大きさが0.4μm以下である」を、「前記C相と前記金属酸化物相とを合わせた相は、インターセプト法によって求めた相の平均の大きさが0.1μm以上0.4μm以下である」に訂正する(以下、「訂正事項2」という)。

(3)請求項9に記載された「得られるFePt系スパッタリングターゲット中の金属酸化物相は、インターセプト法によって求めた相の平均の大きさが0.4μm以下である」を、「得られるFePt系スパッタリングターゲット中の金属酸化物相は、インターセプト法によって求めた相の平均の大きさが0.1μm以上0.4μm以下である」に訂正する(以下、「訂正事項3」という)。

(4)請求項10に記載された「得られるFePt系スパッタリングターゲット中のC相と金属酸化物相とを合わせた相は、インターセプト法によって求めた相の平均の大きさが0.4μm以下である」を、「得られるFePt系スパッタリングターゲット中のC相と金属酸化物相とを合わせた相は、インターセプト法によって求めた相の平均の大きさが0.1μm以上0.4μm以下である」に訂正する(以下、「訂正事項4」という)。

(5)請求項13に記載された「得られるFePt系スパッタリングターゲット中の金属酸化物相は、インターセプト法によって求めた相の平均の大きさが0.4μm以下である」を、「得られるFePt系スパッタリングターゲット中の金属酸化物相は、インターセプト法によって求めた相の平均の大きさが0.1μm以上0.4μm以下である」に訂正する(以下、「訂正事項5」という)。

(6)請求項14に記載された「得られるFePt系スパッタリングターゲット中のC相と金属酸化物相とを合わせた相は、インターセプト法によって求めた相の平均の大きさが0.4μm以下である」を、「得られるFePt系スパッタリングターゲット中のC相と金属酸化物相とを合わせた相は、インターセプト法によって求めた相の平均の大きさが0.1μm以上0.4μm以下である」に訂正する(以下、「訂正事項6」という)。

2 訂正要件の判断
(1)請求項1?8からなる一群の請求項に係る訂正
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「前記金属酸化物相」の「インターセプト法によって求めた相の平均の大きさ」を「0.4μm以下である」ことから「0.1μm以上0.4μm以下である」ことに減縮するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
訂正事項2は、訂正前の請求項2に記載された「前記C相と前記金属酸化物相とを合わせた相」の「インターセプト法によって求めた相の平均の大きさ」を「0.4μm以下である」ことから「0.1μm以上0.4μm以下である」ことに減縮するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1に関連する記載として、本件特許の願書に添付された明細書(以下、「本件特許明細書」という。)には、「ターゲット中の金属酸化物相の平均の大きさは、インターセプト法によって求めた相の平均の大きさが0.1-0.4μmであることが好ましく、0.15-0.35μmであることがより好ましく、0.2-0.3μmであることが特に好ましい。」(段落【0052】)ことが記載されているから、訂正事項1は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、新規事項の追加に該当しない。
訂正事項2に関連する記載として、本件特許明細書には、「ターゲット中のC相および金属酸化物相を合わせた相の平均の大きさは、インターセプト法によって求めた相の平均の大きさが0.1-0.4μmであることが好ましく、0.15-0.35μmであることがより好ましく、0.2-0.3μmであることが特に好ましい。」(段落【0093】)ことが記載されているから、訂正事項2は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、新規事項の追加に該当しない。
そして、訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「前記金属酸化物相」の「インターセプト法によって求めた相の平均の大きさ」を減縮するものであり、訂正事項2は、訂正前の請求項2に記載された「前記C相と前記金属酸化物相とを合わせた相」の「インターセプト法によって求めた相の平均の大きさ」を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 一群の請求項について
訂正事項1及び2に係る訂正前の請求項3?8は、訂正前の請求項1及び2を引用するものであるから、訂正事項1及び2に係る訂正は、一群の請求項1?8について請求されたものである。

(2)請求項9、10、13?28からなる一群の請求項に係る訂正
ア 訂正の目的の適否
訂正事項3は、訂正前の請求項9に記載された「金属酸化物相」の「インターセプト法によって求めた相の平均の大きさ」を「0.4μm以下である」ことから「0.1μm以上0.4μm以下である」ことに減縮するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
訂正事項4は、訂正前の請求項10に記載された「C相と金属酸化物相とを合わせた相」の「インターセプト法によって求めた相の平均の大きさ」を「0.4μm以下である」ことから「0.1μm以上0.4μm以下である」ことに減縮するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
訂正事項5は、訂正前の請求項13に記載された「金属酸化物相」の「インターセプト法によって求めた相の平均の大きさ」を「0.4μm以下である」ことから「0.1μm以上0.4μm以下である」ことに減縮するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
訂正事項6は、訂正前の請求項14に記載された「C相と金属酸化物相とを合わせた相」の「インターセプト法によって求めた相の平均の大きさ」を「0.4μm以下である」ことから「0.1μm以上0.4μm以下である」ことに減縮するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3及び5に関連する記載として、本件特許明細書には、「ターゲット中の金属酸化物相の平均の大きさは、インターセプト法によって求めた相の平均の大きさが0.1-0.4μmであることが好ましく、0.15-0.35μmであることがより好ましく、0.2-0.3μmであることが特に好ましい。」(段落【0052】)ことが記載されているから、訂正事項3及び5は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、新規事項の追加に該当しない。
訂正事項4及び6に関連する記載として、本件特許明細書には、「ターゲット中のC相および金属酸化物相を合わせた相の平均の大きさは、インターセプト法によって求めた相の平均の大きさが0.1-0.4μmであることが好ましく、0.15-0.35μmであることがより好ましく、0.2-0.3μmであることが特に好ましい。」(段落【0093】)ことが記載されているから、訂正事項4及び6は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、新規事項の追加に該当しない。
そして、訂正事項3及び5は、訂正前の請求項9及び13に記載された「金属酸化物相」の「インターセプト法によって求めた相の平均の大きさ」を減縮するものであり、訂正事項4及び6は、訂正前の請求項10及び14に記載された「C相と金属酸化物相とを合わせた相」の「インターセプト法によって求めた相の平均の大きさ」を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 一群の請求項について
訂正事項3及び4に係る訂正前の請求項15?28は、訂正前の請求項9及び10を引用するものであり、訂正事項5及び6に係る訂正前の請求項16?28は、訂正前の請求項13及び14を引用するものであるから、訂正事項3?6に係る訂正は、一群の請求項9、10、13?28について請求されたものである。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?8〕、〔9、10、13?28〕について訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて

1 本件発明
(1)本件訂正請求により訂正された請求項1?28に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1?28に記載された事項により特定される次のとおりである。

【請求項1】
Fe、Ptおよび金属酸化物を含有し、さらにFe、Pt以外の1種以上の金属元素を含有するFePt系スパッタリングターゲットであって、
Ptを40at%以上60at%未満、Fe、Pt以外の前記1種以上の金属元素を0at%よりも多く20at%以下含有し、かつ、Ptと前記1種以上の金属元素の合計が60at%以下であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなるFePt系合金相と、不可避的不純物を含む金属酸化物相とが互いに分散した構造を有し、
ターゲット全体に対する前記金属酸化物の含有量が20vol%以上40vol%以下であるFePt系スパッタリングターゲットであり、
前記金属酸化物相は、インターセプト法によって求めた相の平均の大きさが0.1μm以上0.4μm以下であることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲット。
【請求項2】
Fe、Pt、Cおよび金属酸化物を含有し、さらにFe、Pt以外の1種以上の金属元素を含有するFePt系スパッタリングターゲットであって、
Ptを40at%以上60at%未満、Fe、Pt以外の前記1種以上の金属元素を0at%よりも多く20at%以下含有し、かつ、Ptと前記1種以上の金属元素の合計が60at%以下であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなるFePt系合金相と、不可避的不純物を含むC相と、不可避的不純物を含む金属酸化物相とが互いに分散した構造を有し、
ターゲット全体に対するCの含有量が0vol%よりも多く20vol%以下であり、ターゲット全体に対する前記金属酸化物の含有量が10vol%以上40vol%未満であり、かつ、ターゲット全体に対するCと金属酸化物の合計含有量が20vol%以上40vol%以下であるFePt系スパッタリングターゲットであり、
前記C相と前記金属酸化物相とを合わせた相は、インターセプト法によって求めた相の平均の大きさが0.1μm以上0.4μm以下であることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲット。
【請求項3】
請求項1または2において、
Fe、Pt以外の前記1種以上の金属元素は、Cu、Ag、Mn、Ni、Co、Pd、Cr、V、Bのうちの1種以上であることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲット。
【請求項4】
請求項1または2において、
Fe、Pt以外の前記1種以上の金属元素には、Cuが含まれることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲット。
【請求項5】
請求項1または2において、
Fe、Pt以外の前記1種以上の金属元素は、Cuのみであることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲット。
【請求項6】
請求項1-5のいずれかにおいて、
前記金属酸化物は、SiO_(2)、TiO_(2)、Ti_(2)O_(3)、Ta_(2)O_(5)、Cr_(2)O_(3)、CoO、Co_(3)O_(4)、B_(2)O_(3)、Fe_(2)O_(3)、CuO、Cu_(2)O、Y_(2)O_(3)、MgO、Al_(2)O_(3)、ZrO_(2)、Nb_(2)O_(5)、MoO_(3)、CeO_(2)、Sm_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、WO_(2)、WO_(3)、HfO_(2)、NiO_(2)のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とするFePt系スパッタリングターゲット。
【請求項7】
請求項1-6のいずれかにおいて、
相対密度が90%以上であることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲット。
【請求項8】
請求項1-7のいずれかにおいて、
磁気記録媒体用であることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲット。
【請求項9】
Ptを40at%以上60at%未満、Fe、Pt以外の前記1種以上の金属元素を0at%よりも多く20at%以下含有し、かつ、Ptと前記1種以上の金属元素の合計が60at%以下であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなるFePt系合金粉末に、
不可避的不純物を含む金属酸化物粉末を、前記FePt系合金粉末および前記金属酸化物粉末の合計に対して20vol%以上40vol%以下となるように添加し、混合して混合粉末を作製した後、
作製した該混合粉末を加圧下で加熱して成形するFePt系スパッタリングターゲットの製造方法であり、
得られるFePt系スパッタリングターゲット中の金属酸化物相は、インターセプト法によって求めた相の平均の大きさが0.1μm以上0.4μm以下であることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項10】
Ptを40at%以上60at%未満、Fe、Pt以外の前記1種以上の金属元素を0at%よりも多く20at%以下含有し、かつ、Ptと前記1種以上の金属元素の合計が60at%以下であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなるFePt系合金粉末に、
不可避的不純物を含むC粉末および不可避的不純物を含む金属酸化物粉末を、該C粉末および該金属酸化物粉末の、前記FePt系合金粉末、前記C粉末および前記金属酸化物粉末の合計に対する含有量をそれぞれαvol%およびβvol%としたとき、
0<α≦20
10≦β<40
20≦α+β≦40
となるように添加し、混合して混合粉末を作製した後、
作製した該混合粉末を加圧下で加熱して成形するFePt系スパッタリングターゲットの製造方法であり、
得られるFePt系スパッタリングターゲット中のC相と金属酸化物相とを合わせた相は、インターセプト法によって求めた相の平均の大きさが0.1μm以上0.4μm以下であることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項11】
Ptを40at%以上60at%未満、Fe、Pt以外の前記1種以上の金属元素を0at%よりも多く20at%以下含有し、かつ、Ptと前記1種以上の金属元素の合計が60at%以下であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなるFePt系合金粉末に、
不可避的不純物を含む金属酸化物粉末を、前記FePt系合金粉末および前記金属酸化物粉末の合計に対して20vol%以上40vol%以下となるように添加し、混合して混合粉末を作製した後、
作製した該混合粉末を加圧下で加熱して成形するFePt系スパッタリングターゲットの製造方法であり、
前記混合粉末を作製する際の前記混合は、酸素が存在する雰囲気の下でなされ、
前記雰囲気は前記混合の途中段階で大気に開放されることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項12】
Ptを40at%以上60at%未満、Fe、Pt以外の前記1種以上の金属元素を0at%よりも多く20at%以下含有し、かつ、Ptと前記1種以上の金属元素の合計が60at%以下であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなるFePt系合金粉末に、
不可避的不純物を含むC粉末および不可避的不純物を含む金属酸化物粉末を、該C粉末および該金属酸化物粉末の、前記FePt系合金粉末、前記C粉末および前記金属酸化物粉末の合計に対する含有量をそれぞれαvol%およびβvol%としたとき、
0<α≦20
10≦β<40
20≦α+β≦40
となるように添加し、混合して混合粉末を作製した後、
作製した該混合粉末を加圧下で加熱して成形するFePt系スパッタリングターゲットの製造方法であり、
前記混合粉末を作製する際の前記混合は、酸素が存在する雰囲気の下でなされ、
前記雰囲気は前記混合の途中段階で大気に開放されることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項13】
請求項11において、
得られるFePt系スパッタリングターゲット中の金属酸化物相は、インターセプト法によって求めた相の平均の大きさが0.1μm以上0.4μm以下であることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項14】
請求項12において、
得られるFePt系スパッタリングターゲット中のC相と金属酸化物相とを合わせた相は、インターセプト法によって求めた相の平均の大きさが0.1μm以上0.4μm以下であることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項15】
請求項9または10において、
前記混合粉末を作製する際の前記混合は、酸素が存在する雰囲気の下でなされることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項16】
請求項11-15のいずれかにおいて、
前記雰囲気には該雰囲気外から酸素が供給されていることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項17】
請求項16において、
前記酸素の供給は大気を供給することによりなされることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項18】
請求項11-17のいずれかにおいて、
前記雰囲気は大気であることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項19】
請求項11-16のいずれかにおいて、
前記雰囲気は不活性ガスと酸素とから実質的になることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項20】
請求項11-19のいずれかにおいて、
前記雰囲気の酸素濃度が10vol%以上30vol%以下であることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項21】
請求項9-20のいずれかにおいて、
Fe、Pt以外の前記1種以上の金属元素は、Cu、Ag、Mn、Ni、Co、Pd、Cr、V、Bのうちの1種以上であることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項22】
請求項9-20のいずれかにおいて、
Fe、Pt以外の前記1種以上の金属元素には、Cuが含まれることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項23】
請求項9-20のいずれかにおいて、
Fe、Pt以外の前記1種以上の金属元素は、Cuのみであることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項24】
請求項9-23のいずれかにおいて、
前記金属酸化物は、SiO_(2)、TiO_(2)、Ti_(2)O_(3)、Ta_(2)O_(5)、Cr_(2)O_(3)、CoO、Co_(3)O_(4)、B_(2)O_(3)、Fe_(2)O_(3)、CuO、Cu_(2)O、Y_(2)O_(3)、MgO、Al_(2)O_(3)、ZrO_(2)、Nb_(2)O_(5)、MoO_(3)、CeO_(2)、Sm_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、WO_(2)、WO_(3)、HfO_(2)、NiO_(2)のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とするFePt系スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項25】
請求項9-24のいずれかにおいて、
前記混合粉末を加圧下で加熱して成形する際の雰囲気を真空または不活性ガス雰囲気とすることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項26】
請求項9-25のいずれかにおいて、
前記FePt系合金粉末をアトマイズ法で作製することを特徴とするFePt系スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項27】
請求項26において、
前記アトマイズ法は、アルゴンガスまたは窒素ガスを用いて行うことを特徴とするFePt系スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項28】
請求項9-27のいずれかにおいて、
得られるFePt系スパッタリングターゲットは、磁気記録媒体用であることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲットの製造方法。

2 取消理由の概要
訂正前の請求項1?10、13?28に係る特許に対して、平成28年10月19日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)請求項1?10、13?28に係る発明は、明確であるといえないから、請求項1?10、13?28に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしてない特許出願に対してなされたものである。
(2)請求項1?10、13?28に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明といえないから、請求項1?10、13?28に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしてない特許出願に対してなされたものである。
(3)発明の詳細な説明には、当業者が請求項1?10、13?28に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているといえないから、請求項1?10、13?28に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。

3 取消理由に対する当審の判断
(1)特許法第36条第6項第2号
ア 請求項1には、「前記金属酸化物相は、インターセプト法によって求めた相の平均の大きさが0.1μm以上0.4μm以下である」との発明特定事項を含む「FePt系スパッタリングターゲット」の発明が記載されている。
そして、「前記金属酸化物相」の「大きさ」といった特性を用いて物を特定しようとする発明が明確であるためには、当該特性を決定する試験・測定方法が、JIS等の標準的なものにより定められた試験・測定方法であること、当該技術分野において当業者に慣用されている試験・測定方法であること、慣用されていないにしても当業者が当該特性の試験・測定方法を理解することができること、あるいは、発明の詳細な説明に当該特性の試験・測定方法が明確に記載されていることのいずれかが必要といえる。
この点について検討すると、インターセプト法は、当該技術分野において慣用されている測定方法である。
また、発明の詳細な説明の段落【0053】?【0055】には、インターセプト法による金属酸化物相の平均の大きさの測定方法として、撮影時の倍率が10000倍のターゲット断面のSEM写真の金属酸化物相の大きさを測定することが記載されているし、実施例1(特に、段落【0257】)には、ターゲット断面のSEM写真の黒色の部分がB_(2)O_(3)相であり、白色の部分がFePtCu合金相であることが記載されているから、インターセプト法による金属酸化物相の平均の大きさの測定方法は、撮影時の倍率が10000倍のターゲット断面のSEM写真の黒色及び白色の部分のうちの黒色の部分の大きさを測定するものといえる。
そして、SEM写真の撮影と同時にEPMA等で各元素の組成分布を示す元素分布像を測定することは、例えば、乙第9号証(特開2011-208167号公報)の段落【0030】に「ターゲットの組織観察は、観察面(被スパッタ面に対し平行な面)を研磨して鏡面とした後、高分解能のFE-EPMA(フィールドエミッション型電子線プローブマイクロアナライザ、日本電子製JXA-8500F、以下EPMA)にて、倍率15,000倍にて、二次電子像および反射電子像(COMPO像)、および各元素の組成分布を示す元素分布像を用いて実施した。」と記載されているように、通常行われていることであり、このような技術によって、SEM写真における個々の相の境界を識別していることは技術常識といえるから、本件特許明細書の撮影時の倍率が10000倍のターゲット断面のSEM写真のB_(2)O_(3)相である黒色の部分と、FePtCu合金相である白色の部分の境界は、このような技術常識に基づき識別されているといえる。
したがって、発明の詳細な説明には、インターセプト法による金属酸化物相の平均の大きさの測定方法が明確に記載されているといえるから、請求項1の「前記金属酸化物相は、インターセプト法によって求めた相の平均の大きさが0.1μm以上0.4μm以下である」との発明特定事項も明確である。
よって、請求項1に係る発明及びこれらを引用する請求項3?8に係る発明は明確である。

イ 請求項2には、「前記C相と前記金属酸化物相とを合わせた相は、インターセプト法によって求めた相の平均の大きさが0.1μm以上0.4μm以下である」との発明特定事項を含む「FePt系スパッタリングターゲット」の発明が記載されている。
そして、「前記C相と前記金属酸化物相とを合わせた相」の「大きさ」といった特性を用いて物を特定しようとする発明が明確であることについて検討すると、発明の詳細な説明の段落【0053】?【0055】及び【0094】には、インターセプト法によるC相および金属酸化物相を合わせた相の平均の大きさの測定方法として、撮影時の倍率が10000倍のターゲット断面のSEM写真のC相および金属酸化物相を合わせた相の大きさを測定することが記載されているし、実施例2(特に、段落【0270】)には、ターゲット断面のSEM写真の黒色の部分がC相及びSiO_(2)相であり、白色の部分がFePtCu合金相であることが記載されているから、インターセプト法によるC相および金属酸化物相を合わせた相の平均の大きさの測定方法は、撮影時の倍率が10000倍のターゲット断面のSEM写真の黒色及び白色の部分のうちの黒色の部分の大きさを測定するものといえる。
そして、本件特許明細書の撮影時の倍率が10000倍のターゲット断面のSEM写真のC相及びSiO_(2)相である黒色の部分と、FePtCu合金相である白色の部分の境界は、上記アで検討した技術常識に基づき識別されているといえる。
したがって、発明の詳細な説明には、インターセプト法によるC相および金属酸化物相を合わせた相の平均の大きさの測定方法が明確に記載されているといえるから、請求項2の「前記C相と前記金属酸化物相とを合わせた相は、インターセプト法によって求めた相の平均の大きさが0.1μm以上0.4μm以下である」との発明特定事項も明確である。
よって、請求項2に係る発明及びこれらを引用する請求項3?8に係る発明は明確である。

ウ 請求項9及び13に係る発明の「金属酸化物相は、インターセプト法によって求めた相の平均の大きさが0.1μm以上0.4μm以下である」との発明特定事項、並びに、請求項10及び14に係る発明の「C相と金属酸化物相とを合わせた相は、インターセプト法によって求めた相の平均の大きさが0.1μm以上0.4μm以下である」との発明特定事項も、上記ア及びイで検討したと同様に明確である。
よって、請求項9、10、13及び14に係る発明、並びに、これらを引用する請求項15?28に係る発明は明確である。

エ 特許異議申立人は、本件特許明細書に記載されたインターセプト法に従って測定された、実施例1の金属酸化物相、あるいは、実施例2のC相と金属酸化物相とを合わせた相の平均の大きさの測定値にばらつきがあること、及び、SEM写真の観察領域の違いによって、金属酸化物層、あるいは、C相と金属酸化物相とを合わせた相の平均の大きさの測定値に変動があることを根拠にして、インターセプト法による金属酸化物層、あるいは、C相と金属酸化物相とを合わせた相の平均の大きさが一義的に定まらず、請求項1?10、13?28に係る発明が不明瞭である旨を主張している(特許異議申立書第18頁第7行?第20頁第24行)。
しかしながら、特許異議申立人の行った実施例1の金属酸化物相、及び、実施例2のC相と金属酸化物相とを合わせた相の平均の大きさの測定値は、上記アで検討した技術常識を考慮して行っておらず、本件特許明細書に記載されたインターセプト法に従って測定された測定値といえない。
また、請求項1?10、13?28に係る発明の金属酸化物相、あるいは、C相と金属酸化物相とを合わせた相のインターセプト法によって求めた相の平均の大きさは、FePt系スパッタリングターゲットの全体の平均値を示すものであり、複数の測定箇所での複数のSEM写真から算出されるものであると、当業者であれば当然認識するものであるから、1枚毎のSEM写真の観察領域の違いによって、金属酸化物相、あるいは、C相と金属酸化物相とを合わせた相の平均の大きさの測定値に変動があるとしても、請求項1?10、13?28に係る発明が不明瞭となっているとはいえない。
よって、特許異議申立人の上記主張は妥当でない。

オ また、特許異議申立人は、本件特許明細書のSEM写真における黒色の部分が金属酸化物相、あるいは、C相と金属酸化物相とを合わせた相であることが元素分析等に基づいて確認されていないこと、及び、請求項1?10、13?28に係る発明のスパッタリングターゲットの相対密度が93.36?100.09%であることを根拠にして、SEM写真における黒色の部分の一部が空隙の可能性があるから、本件特許明細書に記載された、インターセプト法による金属酸化物相、あるいは、C相および金属酸化物相を合わせた相の平均の大きさの測定方法が明確でない旨を主張している(特許異議申立書第20頁第25行?第21頁第12行、平成29年2月22日付け意見書第9頁第21?30行)。
しかしながら、乙第7号証(日本分析化学会編、「機器分析の辞典」、株式会社朝倉書店、2007年5月20日、第234?236頁)に「試料に組成の違いがあると二次電子の発生量が異なり、比較的平らな試料では組成の違いの方が強く現れる.これはおもに反射電子の影響によるものであり、組成の違いが二次電子放出量に反映されたものである.」(第236頁左欄第24?29行)と記載され、さらに、乙第6号証(日本規格協会編、「JISハンドブック49化学分析」、一般社団法人日本規格協会、2017年1月31日、第1167?1172頁)の図4及び図7に記載されているように、原子番号Zが大きいほど二次電子放出率及び反射電子の放出率が大きくなることから、SEM写真において、金属相が白く(明るく)表示され、非金属相が黒く(暗く)表示されることは技術常識であるといえる。また、上記アで検討した技術常識を考慮すれば、「撮影時の倍率が10000倍のターゲット断面のSEM写真」の黒色及び白色の部分の境界を明確にするために、元素分析等に基づく確認を当然行っているといえるから、特許異議申立人の上記主張は妥当でない。

(2)特許法第36条第6項第1号
ア 請求項1には、「Ptを40at%以上60at%未満、Fe、Pt以外の前記1種以上の金属元素を0at%よりも多く20at%以下含有し、かつ、Ptと前記1種以上の金属元素の合計が60at%以下であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなるFePt系合金相と、不可避的不純物を含む金属酸化物相とが互いに分散した構造を有し」、「前記金属酸化物相は、インターセプト法によって求めた相の平均の大きさが0.1μm以上0.4μm以下である」との発明特定事項を含む「FePt系スパッタリングターゲット」の発明が記載されている。
そして、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明の解決しようとする課題は、段落【0051】の記載からみて、ターゲットの場所によるスパッタレートの違いを小さくすることといえる。
そうしてみると、請求項1に係る発明が、発明の詳細な説明に記載された発明であるというためには、請求項1に係る発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により、当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲のものであること、すなわち、請求項1に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載され、かつ、ターゲットの場所によるスパッタレートの違いを小さくできるスパッタリングターゲットであることを、発明の詳細な説明の記載により当業者が認識できる範囲のものであることを要する。
そこで検討すると、発明の詳細な説明の実施例1には、ターゲット表面の組織全体に微細なB_(2)O_(3)相が分散し、インターセプト法によって求めたB_(2)O_(3)相の平均の大きさが0.14μmである(50Fe-45Pt-5Cu)-20.3vol%B_(2)O_(3)ターゲットが記載されている。
また、スパッタリングにおいて飛び出す原子の割合を表すものとして、スパッタ収率が知られているところ、乙第1号証(株式会社アルバック編、「新版真空ハンドブック」、株式会社オーム社、平成20年3月10日、第258頁)の図8・1・9(a)及び表8・1・10には、金属単体及び酸化物の種類によってスパッタ収率が異なることが示されている。そして、スパッタ収率の大きな物質が偏在するスパッタ面のスパッタレートは大きく、スパッタ収率の小さな物質が偏在するスパッタ面のスパッタレートは小さくなるため、スパッタ収率の異なる物質が存在するスパッタリングターゲットにおいては、当該物質が微細に分散することで、ターゲットの場所によるスパッタレートの違いを小さくできることは技術常識といえる。
したがって、上記技術常識を考慮すると、請求項1に係る発明は、ターゲットの場所によるスパッタレートの違いを小さくできるスパッタリングターゲットであると、発明の詳細な説明の記載から当業者であれば当然に認識できるものである。
よって、請求項1に係る発明及びこれを引用する請求項3?8に係る発明は発明の詳細な説明に記載された発明である。

イ 請求項2には、「Ptを40at%以上60at%未満、Fe、Pt以外の前記1種以上の金属元素を0at%よりも多く20at%以下含有し、かつ、Ptと前記1種以上の金属元素の合計が60at%以下であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなるFePt系合金相と、不可避的不純物を含むC相と、不可避的不純物を含む金属酸化物相とが互いに分散した構造を有し」、「前記C相と前記金属酸化物相とを合わせた相は、インターセプト法によって求めた相の平均の大きさが0.1μm以上0.4μm以下である」との発明特定事項を含む「FePt系スパッタリングターゲット」の発明が記載されている。
そして、発明の詳細な説明の実施例2には、ターゲット表面の組織全体に微細なC相及びSiO_(2)相が分散し、インターセプト法によって求めたC相とSiO_(2)相を合わせた相の平均の大きさが0.27μmである(45Fe-45Pt-10Cu)-15vol%C-15vol%SiO_(2)ターゲットが記載されており、さらに、上記アで検討した技術常識を考慮すると、請求項2に係る発明は、ターゲットの場所によるスパッタレートの違いを小さくできるスパッタリングターゲットであると、発明の詳細な説明の記載から当業者であれば当然に認識できるものである。
よって、請求項2に係る発明及びこれを引用する請求項3?8に係る発明は発明の詳細な説明に記載された発明である。

ウ 請求項9及び13には、「FePt系合金粉末」と「金属酸化物粉末」を「混合して混合粉末を作製した後」、「作製した該混合粉末を加圧下で加熱して成形」して、「金属酸化物相は、インターセプト法によって求めた相の平均の大きさが0.1μm以上0.4μm以下である」ことを含む「FePt系スパッタリングターゲットの製造方法」の発明が記載されている。また、請求項10及び14には、「FePt系合金粉末」と「C粉末」と「金属酸化物粉末」を「混合して混合粉末を作製した後」、「作製した該混合粉末を加圧下で加熱して成形」して、「C相と金属酸化物相とを合わせた相は、インターセプト法によって求めた相の平均の大きさが0.1μm以上0.4μm以下である」ことを含む「FePt系スパッタリングターゲットの製造方法」の発明が記載されている。
そして、請求項9、10、13及び14に係る発明は、金属酸化物相、あるいは、C相と金属酸化物相とを合わせた相が微細に分散するように製造する方法といえるから、上記ア及びイで検討したと同様に、発明の詳細な説明の記載により当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲のものである。
よって、請求項9、10、13及び14に係る発明、並びに、これらを引用する請求項15?28に係る発明は発明の詳細な説明に記載された発明である。

エ 特許異議申立人は、実施例1及び2において、場所によるスパッタレートのばらつきを抑えることができたことが例証されていないこと、特許異議申立人が測定した実施例2のC相と金属酸化物相とを合わせた相は0.4μm以下でないこと、及び、SEM写真における黒色の部分は金属酸化物相またはC相と金属酸化物相とを合わせた相であることが確認されておらず、金属酸化物相またはC相と金属酸化物相とを合わせた相が均一に分散していることが不明であることを根拠にして、請求項1?10、13?28に係る発明が上記課題を解決できることは理解できず、請求項1?10、13?28に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された事項でない旨を主張している(特許異議申立書第11頁下から3行?第16頁15行、平成29年2月22日付け意見書第2頁第23行?第3頁第18行)。
しかしながら、上記(1)オで検討した、スパッタリングターゲットのSEM写真において、金属の磁性相が白く(明るく)表示され、B_(2)O_(3)やSiO_(2)、Cなどの非磁性相が黒く(暗く)表示されるとの技術常識を踏まえれば、SEM写真から金属酸化物相またはC相と金属酸化物相とを合わせた相は均一に分散しているといえる。また、特許異議申立人の行った実施例2のC相と金属酸化物相とを合わせた相の平均の大きさの測定値は、上記(1)アで検討した技術常識を考慮して行っておらず、本件特許明細書に記載されたインターセプト法に従って測定された測定値といえない。
したがって、特許異議申立人の主張は採用できない。

(3)特許法第36条第4項第1号
ア 請求項1の「前記金属酸化物相は、インターセプト法によって求めた相の平均の大きさが0.1μm以上0.4μm以下である」との発明特定事項を含む「FePt系スパッタリングターゲット」の発明に対して、本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例1には、ターゲット表面の組織全体に微細なB_(2)O_(3)相が分散し、インターセプト法によって求めたB_(2)O_(3)相の平均の大きさが0.14μmである(50Fe-45Pt-5Cu)-20.3vol%B_(2)O_(3)ターゲット、及び、ボールミルとホットプレスによる前記ターゲットの製造方法が具体的に記載されている。
また、請求項2の「前記C相と前記金属酸化物相とを合わせた相は、インターセプト法によって求めた相の平均の大きさが0.1μm以上0.4μm以下である」との発明特定事項を含む「FePt系スパッタリングターゲット」の発明に対して、本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例2には、ターゲット表面の組織全体に微細なC相及びSiO_(2)相が分散し、インターセプト法によって求めたC相とSiO_(2)相を合わせた相の平均の大きさが0.27μmである(45Fe-45Pt-10Cu)-15vol%C-15vol%SiO_(2)ターゲット、及び、ボールミルとホットプレスによる前記ターゲットの製造方法が具体的に記載されている。
そして、金属酸化物層、あるいは、C相と金属酸化物相とを合わせた相のインターセプト法によって求めた相の平均の大きさを0.1μm?0.4μmとすることは、ボールミルとホットプレスの条件設定によって、当業者の過度の試行錯誤を要することなく実施できるものと認められる。
また、請求項9及び13の「得られるFePt系スパッタリングターゲット中の金属酸化物相は、インターセプト法によって求めた相の平均の大きさが0.1μm以上0.4μm以下である」との発明特定事項を含む「FePt系スパッタリングターゲットの製造方法」の発明、あるいは、請求項10及び14の「得られるFePt系スパッタリングターゲット中のC相と金属酸化物相とを合わせた相は、インターセプト法によって求めた相の平均の大きさが0.1μm以上0.4μm以下である」との発明特定事項を含む「FePt系スパッタリングターゲットの製造方法」の発明に対しても同様に、当業者の過度の試行錯誤を要することなく実施できるものと認められる。
よって、発明の詳細な説明には、請求項1?10、13?28に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されている。

イ 特許異議申立人は、本件特許明細書には、金属酸化物相、あるいは、C相と金属酸化物相とを合わせた相の平均の大きさが数ナノメートルまで超微細化する方法が記載されておらず、また、そのような技術常識が存在しないことを根拠にして、本件特許明細書には、請求項1?10、13?28に係る発明の金属酸化物相、あるいは、C相と金属酸化物相とを合わせた相の平均の大きさの範囲の全ての範囲について、当業者が実施できる程度に記載されていない旨を主張している(特許異議申立書第17頁第20行?第18頁第3行)。
しかしながら、請求項1?10、13?28に係る発明には、金属酸化物相、あるいは、C相と金属酸化物相とを合わせた相の平均の大きさが数ナノメートルのものは含まれないから、異議申立人の上記主張は妥当でない。

4 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由
特許異議申立人は、本件特許明細書に記載されたインターセプト法に従って測定された、実施例2のC相と金属酸化物相とを合わせた相の平均の大きさの測定値が、請求項2、10、14に記載された範囲に含まれないことを根拠にして、本件特許明細書には、請求項2?10、14?28に係る発明を当業者が実施できる程度に記載されていない旨を主張している(特許異議申立書第16頁第20行?第17頁第19行)。
しかしながら、上記3(1)エで検討したとおり、特許異議申立人の行った実施例2のC相と金属酸化物相とを合わせた相の平均の大きさの測定値は、上記3(1)アで検討した技術常識を考慮して行っておらず、本件特許明細書に記載されたインターセプト法に従って測定された測定値といえない。
よって、特許異議申立人の上記主張は妥当でない。

5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?10、13?28に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?10、13?28に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Fe、Ptおよび金属酸化物を含有し、さらにFe、Pt以外の1種以上の金属元素を含有するFePt系スパッタリングターゲットであって、
Ptを40at%以上60at%未満、Fe、Pt以外の前記1種以上の金属元素を0at%よりも多く20at%以下含有し、かつ、Ptと前記1種以上の金属元素の合計が60at%以下であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなるFePt系合金相と、不可避的不純物を含む金属酸化物相とが互いに分散した構造を有し、
ターゲット全体に対する前記金属酸化物の含有量が20vol%以上40vol%以下であるFePt系スパッタリングターゲットであり、
前記金属酸化物相は、インターセプト法によって求めた相の平均の大きさが0.1μm以上0.4μm以下であることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲット。
【請求項2】
Fe、Pt、Cおよび金属酸化物を含有し、さらにFe、Pt以外の1種以上の金属元素を含有するFePt系スパッタリングターゲットであって、
Ptを40at%以上60at%未満、Fe、Pt以外の前記1種以上の金属元素を0at%よりも多く20at%以下含有し、かつ、Ptと前記1種以上の金属元素の合計が60at%以下であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなるFePt系合金相と、不可避的不純物を含むC相と、不可避的不純物を含む金属酸化物相とが互いに分散した構造を有し、
ターゲット全体に対するCの含有量が0vol%よりも多く20vol%以下であり、ターゲット全体に対する前記金属酸化物の含有量が10vol%以上40vol%未満であり、かつ、ターゲット全体に対するCと金属酸化物の合計含有量が20vol%以上40vol%以下であるFePt系スパッタリングターゲットであり、
前記C相と前記金属酸化物相とを合わせた相は、インターセプト法によって求めた相の平均の大きさが0.1μm以上0.4μm以下であることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲット。
【請求項3】
請求項1または2において、
Fe、Pt以外の前記1種以上の金属元素は、Cu、Ag、Mn、Ni、Co、Pd、Cr、V、Bのうちの1種以上であることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲット。
【請求項4】
請求項1または2において、
Fe、Pt以外の前記1種以上の金属元素には、Cuが含まれることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲット。
【請求項5】
請求項1または2において、
Fe、Pt以外の前記1種以上の金属元素は、Cuのみであることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲット。
【請求項6】
請求項1-5のいずれかにおいて、
前記金属酸化物は、SiO_(2)、TiO_(2)、Ti_(2)O_(3)、Ta_(2)O_(5)、Cr_(2)O_(3)、CoO、Co_(3)O_(4)、B_(2)O_(3)、Fe_(2)O_(3)、CuO、Cu_(2)O、Y_(2)O_(3)、MgO、Al_(2)O_(3)、ZrO_(2)、Nb_(2)O_(5)、MoO_(3)、CeO_(2)、Sm_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、WO_(2)、WO_(3)、HfO_(2)、NiO_(2)のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とするFePt系スパッタリングターゲット。
【請求項7】
請求項1-6のいずれかにおいて、
相対密度が90%以上であることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲット。
【請求項8】
請求項1-7のいずれかにおいて、
磁気記録媒体用であることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲット。
【請求項9】
Ptを40at%以上60at%未満、Fe、Pt以外の前記1種以上の金属元素を0at%よりも多く20at%以下含有し、かつ、Ptと前記1種以上の金属元素の合計が60at%以下であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなるFePt系合金粉末に、
不可避的不純物を含む金属酸化物粉末を、前記FePt系合金粉末および前記金属酸化物粉末の合計に対して20vol%以上40vol%以下となるように添加し、混合して混合粉末を作製した後、
作製した該混合粉末を加圧下で加熱して成形するFePt系スパッタリングターゲットの製造方法であり、
得られるFePt系スパッタリングターゲット中の金属酸化物相は、インターセプト法によって求めた相の平均の大きさが0.1μm以上0.4μm以下であることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項10】
Ptを40at%以上60at%未満、Fe、Pt以外の前記1種以上の金属元素を0at%よりも多く20at%以下含有し、かつ、Ptと前記1種以上の金属元素の合計が60at%以下であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなるFePt系合金粉末に、
不可避的不純物を含むC粉末および不可避的不純物を含む金属酸化物粉末を、該C粉末および該金属酸化物粉末の、前記FePt系合金粉末、前記C粉末および前記金属酸化物粉末の合計に対する含有量をそれぞれαvol%およびβvol%としたとき、
0<α≦20
10≦β<40
20≦α+β≦40
となるように添加し、混合して混合粉末を作製した後、
作製した該混合粉末を加圧下で加熱して成形するFePt系スパッタリングターゲットの製造方法であり、
得られるFePt系スパッタリングターゲット中のC相と金属酸化物相とを合わせた相は、インターセプト法によって求めた相の平均の大きさが0.1μm以上0.4μm以下であることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項11】
Ptを40at%以上60at%未満、Fe、Pt以外の前記1種以上の金属元素を0at%よりも多く20at%以下含有し、かつ、Ptと前記1種以上の金属元素の合計が60at%以下であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなるFePt系合金粉末に、
不可避的不純物を含む金属酸化物粉末を、前記FePt系合金粉末および前記金属酸化物粉末の合計に対して20vol%以上40vol%以下となるように添加し、混合して混合粉末を作製した後、
作製した該混合粉末を加圧下で加熱して成形するFePt系スパッタリングターゲットの製造方法であり、
前記混合粉末を作製する際の前記混合は、酸素が存在する雰囲気の下でなされ、
前記雰囲気は前記混合の途中段階で大気に開放されることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項12】
Ptを40at%以上60at%未満、Fe、Pt以外の前記1種以上の金属元素を0at%よりも多く20at%以下含有し、かつ、Ptと前記1種以上の金属元素の合計が60at%以下であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなるFePt系合金粉末に、
不可避的不純物を含むC粉末および不可避的不純物を含む金属酸化物粉末を、該C粉末および該金属酸化物粉末の、前記FePt系合金粉末、前記C粉末および前記金属酸化物粉末の合計に対する含有量をそれぞれαvol%およびβvol%としたとき、
0<α≦20
10≦β<40
20≦α+β≦40
となるように添加し、混合して混合粉末を作製した後、
作製した該混合粉末を加圧下で加熱して成形するFePt系スパッタリングターゲットの製造方法であり、
前記混合粉末を作製する際の前記混合は、酸素が存在する雰囲気の下でなされ、
前記雰囲気は前記混合の途中段階で大気に開放されることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項13】
請求項11において、
得られるFePt系スパッタリングターゲット中の金属酸化物相は、インターセプト法によって求めた相の平均の大きさが0.1μm以上0.4μm以下であることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項14】
請求項12において、
得られるFePt系スパッタリングターゲット中のC相と金属酸化物相とを合わせた相は、インターセプト法によって求めた相の平均の大きさが0.1μm以上0.4μm以下であることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項15】
請求項9または10において、
前記混合粉末を作製する際の前記混合は、酸素が存在する雰囲気の下でなされることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項16】
請求項11-15のいずれかにおいて、
前記雰囲気には該雰囲気外から酸素が供給されていることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項17】
請求項16において、
前記酸素の供給は大気を供給することによりなされることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項18】
請求項11-17のいずれかにおいて、
前記雰囲気は大気であることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項19】
請求項11-16のいずれかにおいて、
前記雰囲気は不活性ガスと酸素とから実質的になることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項20】
請求項11-19のいずれかにおいて、
前記雰囲気の酸素濃度が10vol%以上30vol%以下であることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項21】
請求項9-20のいずれかにおいて、
Fe、Pt以外の前記1種以上の金属元素は、Cu、Ag、Mn、Ni、Co、Pd、Cr、V、Bのうちの1種以上であることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項22】
請求項9-20のいずれかにおいて、
Fe、Pt以外の前記1種以上の金属元素には、Cuが含まれることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項23】
請求項9-20のいずれかにおいて、
Fe、Pt以外の前記1種以上の金属元素は、Cuのみであることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項24】
請求項9-23のいずれかにおいて、
前記金属酸化物は、SiO_(2)、TiO_(2)、Ti_(2)O_(3)、Ta_(2)O_(5)、Cr_(2)O_(3)、CoO、Co_(3)O_(4)、B_(2)O_(3)、Fe_(2)O_(3)、CuO、Cu_(2)O、Y_(2)O_(3)、MgO、Al_(2)O_(3)、ZrO_(2)、Nb_(2)O_(5)、MoO_(3)、CeO_(2)、Sm_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、WO_(2)、WO_(3)、HfO_(2)、NiO_(2)のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とするFePt系スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項25】
請求項9-24のいずれかにおいて、
前記混合粉末を加圧下で加熱して成形する際の雰囲気を真空または不活性ガス雰囲気とすることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項26】
請求項9-25のいずれかにおいて、
前記FePt系合金粉末をアトマイズ法で作製することを特徴とするFePt系スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項27】
請求項26において、
前記アトマイズ法は、アルゴンガスまたは窒素ガスを用いて行うことを特徴とするFePt系スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項28】
請求項9-27のいずれかにおいて、
得られるFePt系スパッタリングターゲットは、磁気記録媒体用であることを特徴とするFePt系スパッタリングターゲットの製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-05-30 
出願番号 特願2013-514451(P2013-514451)
審決分類 P 1 652・ 536- YAA (C23C)
P 1 652・ 537- YAA (C23C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 塩谷 領大  
特許庁審判長 新居田 知生
特許庁審判官 宮澤 尚之
山崎 直也
登録日 2016-01-08 
登録番号 特許第5863783号(P5863783)
権利者 田中貴金属工業株式会社
発明の名称 FePt系スパッタリングターゲット及びその製造方法  
代理人 藤田 崇  
代理人 高矢 諭  
代理人 松山 圭佑  
代理人 高矢 諭  
代理人 牧野 剛博  
代理人 藤田 崇  
代理人 牧野 剛博  
代理人 松山 圭佑  

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