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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F01D
管理番号 1330108
異議申立番号 異議2016-700523  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-08-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-06-08 
確定日 2017-06-16 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5829774号発明「蒸気タービン」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5829774号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2について訂正することを認める。 特許第5829774号の請求項1、2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5829774号の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成27年6月19日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人 政平 愛弓(以下、「特許異議申立人」という。)より請求項1及び2に対して特許異議の申立てがされ、平成28年9月13日付けで取消理由が通知され、平成28年11月18日に意見書の提出及び訂正請求がされ、平成28年11月29日付けで訂正請求があった旨の通知がされ、平成28年12月27日に特許異議申立人から意見書が提出され、平成29年2月8日付けで取消理由通知(決定の予告)がされ、平成29年4月13日に意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否
1 訂正事項
1-1 特許権者は、特許請求の範囲の請求項1を以下の事項により特定されるとおりの請求項1として訂正することを請求する(訂正事項1-1)。
なお、下線部は訂正箇所を示す(以下、同様。)。

「【請求項1】
第一ロータ部材と前記第一ロータ部材の両端部に接合される第二ロータ部材とからなる高中圧タービンのロータと、
前記高中圧タービンのロータが挿通される外部車室ケーシングと、
前記外部車室ケーシングの内側に配され、前記高中圧タービンのロータが挿通される内部車室ケーシングとを有し、
前記第一ロータ部材は、内部に軸方向の中空部を有するNi基合金からなり、室温から700℃までの平均線膨張係数が12.4×10^(-6)/℃?14.5×10^(-6)/℃の範囲内であり、
前記第二ロータ部材は、前記Ni基合金よりも成型容易性を有する内部が中実の材料からなり、室温から700℃までの平均線膨張係数が11.2×10^(-6)/℃?12.4×10^(-6)/℃の範囲内であり、
前記高中圧タービンのロータは、前記第一ロータ部材の一端に形成される高圧タービン室内に動翼列を有し、
前記高中圧タービンのロータは、前記第一ロータ部材の他端と前記第二ロータ部材との接合部に形成される中圧タービン室内に動翼列を有し、
前記中圧タービン室内の動翼列は、前記第一ロータ部材と前記第二ロータ部材の双方に連なって設けられており、
前記中圧タービン室内の動翼列の段数は、前記第二ロータ部材に設けられる段数よりも前記第一ロータ部材に設けられる段数の方が多く、
前記外部車室ケーシングは、前記高中圧タービンのロータの軸方向の中央において前記高圧タービン室と前記中圧タービン室とを仕切る隔壁を有するとともに、前記高中圧タービンのロータが軸方向に突出する両端において、前記高中圧タービンのロータとの隙間を封止するシール装置を有し、
前記内部車室ケーシングは、前記外部車室ケーシングに拘束される両端開放型の筒状部材であり、前記高圧タービン室及び前記中圧タービン室に静翼列を有するとともに、前記隔壁との突き合わせ部分において前記高中圧タービンのロータの軸方向両側に前記高中圧タービンのロータとの隙間を封止するシール部材を有し、
高圧蒸気が前記隔壁の前記高圧タービン室側に供給され前記高圧タービン室内へと流入せしめられ、
中圧蒸気が前記隔壁の前記中圧タービン室側に供給され前記中圧タービン室内へと流入せしめられる、ことを特徴とする蒸気タービン。」

1-2 特許権者は、特許請求の範囲の請求項2を以下の事項により特定されるとおりの請求項2として訂正することを請求する(訂正事項1-2)。

「【請求項2】
第一ロータ部材と前記第一ロータ部材の両端部に接合される第二ロータ部材とからなる高中圧タービンのロータと、
前記高中圧タービンのロータが挿通される外部車室ケーシングと、
前記外部車室ケーシングの内側に配され、前記高中圧タービンのロータが挿通される内部車室ケーシングとを有し、
前記第一ロータ部材は、内部に軸方向の中空部を有するNi基合金からなり、室温から700℃までの平均線膨張係数が12.4×10^(-6)/℃?14.5×10^(-6)/℃の範囲内であり、
前記第二ロータ部材は、前記Ni基合金よりも成型容易性を有する内部が中実の材料からなり、室温から700℃までの平均線膨張係数が11.2×10^(-6)/℃?12.4×10^(-6)/℃の範囲内であり、
前記高中圧タービンのロータは、前記第一ロータ部材の一端と前記第二ロータ部材との接合部に形成される高圧タービン室内に動翼列を有し、
前記高中圧タービンのロータは、前記第一ロータ部材の他端に形成される中圧タービン室内に動翼列を有し、
前記高圧タービン室内の動翼列は、前記第一ロータ部材と前記第二ロータ部材の双方に連なって設けられており、
前記高圧タービン室内の動翼列の段数は、前記第二ロータ部材に設けられる段数よりも前記第一ロータ部材に設けられる段数の方が多く、
前記外部車室ケーシングは、前記高中圧タービンのロータの軸方向の中央において前記高圧タービン室と前記中圧タービン室とを仕切る隔壁を有するとともに、前記高中圧タービンのロータが軸方向に突出する両端において、前記高中圧タービンのロータとの隙間を封止するシール装置を有し、
前記内部車室ケーシングは、前記外部車室ケーシングに拘束される両端開放型の筒状部材であり、前記高圧タービン室及び前記中圧タービン室に静翼列を有するとともに、前記隔壁との突き合わせ部分において前記高中圧タービンのロータの軸方向両側に前記高中圧タービンのロータとの隙間を封止するシール部材を有し、
高圧蒸気が前記隔壁の前記高圧タービン室側に供給され前記高圧タービン室内へと流入せしめられ、
中圧蒸気が前記隔壁の前記中圧タービン室側に供給され前記中圧タービン室内へと流入せしめられる、ことを特徴とする蒸気タービン。」

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

訂正事項1-1の、請求項1に係る訂正は、本件訂正前の請求項1における「Ni基合金」を、本件訂正後に「内部に軸方向の中空部を有するNi基合金」と限定するとともに、本件訂正前の請求項1における「材料」を、本件訂正後に「内部が中実の材料」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項1-2の、請求項2に係る訂正は、本件訂正前の請求項2における「Ni基合金」を、本件訂正後に「内部に軸方向の中空部を有するNi基合金」と限定するとともに、本件訂正前の請求項2における「材料」を、本件訂正後に「内部が中実の材料」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正前の請求項1及び2は、訂正前において一群の請求項に該当するものではない。したがって、訂正の請求は、請求項ごとにされたものである。

3 小括
したがって、上記訂正請求による訂正事項1-1及び1-2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項1、2について訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
上記訂正請求により訂正された請求項1及び2に係る発明(以下「本件発明1及び2」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

ア 本件発明1
「【請求項1】
第一ロータ部材と前記第一ロータ部材の両端部に接合される第二ロータ部材とからなる高中圧タービンのロータと、
前記高中圧タービンのロータが挿通される外部車室ケーシングと、
前記外部車室ケーシングの内側に配され、前記高中圧タービンのロータが挿通される内部車室ケーシングとを有し、
前記第一ロータ部材は、内部に軸方向の中空部を有するNi基合金からなり、室温から700℃までの平均線膨張係数が12.4×10^(-6)/℃?14.5×10^(-6)/℃の範囲内であり、
前記第二ロータ部材は、前記Ni基合金よりも成型容易性を有する内部が中実の材料からなり、室温から700℃までの平均線膨張係数が11.2×10^(-6)/℃?12.4×10^(-6)/℃の範囲内であり、
前記高中圧タービンのロータは、前記第一ロータ部材の一端に形成される高圧タービン室内に動翼列を有し、
前記高中圧タービンのロータは、前記第一ロータ部材の他端と前記第二ロータ部材との接合部に形成される中圧タービン室内に動翼列を有し、
前記中圧タービン室内の動翼列は、前記第一ロータ部材と前記第二ロータ部材の双方に連なって設けられており、
前記中圧タービン室内の動翼列の段数は、前記第二ロータ部材に設けられる段数よりも前記第一ロータ部材に設けられる段数の方が多く、
前記外部車室ケーシングは、前記高中圧タービンのロータの軸方向の中央において前記高圧タービン室と前記中圧タービン室とを仕切る隔壁を有するとともに、前記高中圧タービンのロータが軸方向に突出する両端において、前記高中圧タービンのロータとの隙間を封止するシール装置を有し、
前記内部車室ケーシングは、前記外部車室ケーシングに拘束される両端開放型の筒状部材であり、前記高圧タービン室及び前記中圧タービン室に静翼列を有するとともに、前記隔壁との突き合わせ部分において前記高中圧タービンのロータの軸方向両側に前記高中圧タービンのロータとの隙間を封止するシール部材を有し、
高圧蒸気が前記隔壁の前記高圧タービン室側に供給され前記高圧タービン室内へと流入せしめられ、
中圧蒸気が前記隔壁の前記中圧タービン室側に供給され前記中圧タービン室内へと流入せしめられる、ことを特徴とする蒸気タービン。」

イ 本件発明2
「【請求項2】
第一ロータ部材と前記第一ロータ部材の両端部に接合される第二ロータ部材とからなる高中圧タービンのロータと、
前記高中圧タービンのロータが挿通される外部車室ケーシングと、
前記外部車室ケーシングの内側に配され、前記高中圧タービンのロータが挿通される内部車室ケーシングとを有し、
前記第一ロータ部材は、内部に軸方向の中空部を有するNi基合金からなり、室温から700℃までの平均線膨張係数が12.4×10^(-6)/℃?14.5×10^(-6)/℃の範囲内であり、
前記第二ロータ部材は、前記Ni基合金よりも成型容易性を有する内部が中実の材料からなり、室温から700℃までの平均線膨張係数が11.2×10^(-6)/℃?12.4×10^(-6)/℃の範囲内であり、
前記高中圧タービンのロータは、前記第一ロータ部材の一端と前記第二ロータ部材との接合部に形成される高圧タービン室内に動翼列を有し、
前記高中圧タービンのロータは、前記第一ロータ部材の他端に形成される中圧タービン室内に動翼列を有し、
前記高圧タービン室内の動翼列は、前記第一ロータ部材と前記第二ロータ部材の双方に連なって設けられており、
前記高圧タービン室内の動翼列の段数は、前記第二ロータ部材に設けられる段数よりも前記第一ロータ部材に設けられる段数の方が多く、
前記外部車室ケーシングは、前記高中圧タービンのロータの軸方向の中央において前記高圧タービン室と前記中圧タービン室とを仕切る隔壁を有するとともに、前記高中圧タービンのロータが軸方向に突出する両端において、前記高中圧タービンのロータとの隙間を封止するシール装置を有し、
前記内部車室ケーシングは、前記外部車室ケーシングに拘束される両端開放型の筒状部材であり、前記高圧タービン室及び前記中圧タービン室に静翼列を有するとともに、前記隔壁との突き合わせ部分において前記高中圧タービンのロータの軸方向両側に前記高中圧タービンのロータとの隙間を封止するシール部材を有し、
高圧蒸気が前記隔壁の前記高圧タービン室側に供給され前記高圧タービン室内へと流入せしめられ、
中圧蒸気が前記隔壁の前記中圧タービン室側に供給され前記中圧タービン室内へと流入せしめられる、ことを特徴とする蒸気タービン。」

2 取消理由の概要
本件発明1及び2に係る特許に対して平成29年2月8日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

ア 請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、請求項1に係る特許は、取り消されるべきものである。

イ 請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、請求項1に係る特許は、取り消されるべきものである。

3 甲号証の記載等
(1)甲第1号証
取消理由通知において引用した刊行物である甲第1号証(「火力原子力発電 2006年10月号」(Vol.57 No.601)、p89?p106、社団法人火力原子力発電技術協会、平成18年10月15日発行)には、次の事項が記載されている。

ア 「2.2.1 A-USCタービン開発目標
現在のUSC技術では600℃級が主流であるが,700℃の蒸気条件を採用すれば,図8に示すように二段再熱の場合で熱効率が約46%にまで向上し,600℃級一段再熱との相対比で約10%向上する。このような大幅な熱効率向上とCO2排出量削減の観点から700℃級USC(以下,A-USC)の実現が強く望まれており,日米欧の各国で開発が進められている。
A-USC用の蒸気タービンを実現するための最重要課題のひとつは,高温材料の開発である。600℃級USC用蒸気タービンの開発が12Cr鋼の改良による高温強度の向上によって実現したように,A-USCタービンの開発においても更なる高温に耐えうる材料の開発が必要である。
A-USCタービン用の候補材料としては,ボイラ同様Ni基合金に期待が掛かっており,日米欧の各国で開発が進められているが,A-USCタービンに適用可能な材料とするためには,単に高温強度の高い材料を開発するだけでなく,タービンロータや車室に適用可能なレベルの大型鋼塊製造技術の開発や,高温蒸気中における特性の確認,溶接性の検証などの開発課題がある。また,Ni基合金などの高温材料は従来の材料に比べると高価であり,経済的な設計を実現するためにはNi基合金の適用部位を極力制限する必要がある。このため,溶接構造の適用や,より効果的な冷却構造の開発によって,高温材料の使用範囲を低減することがA-USCタービン設計における目標となっている。
以下に,A-USC実用化のための開発課題とその開発状況について説明する。」(第94ページ右欄第2ないし29行)

イ 「また一方で,大型鋼塊製造性を向上させたとしても,Ni基合金で従来の蒸気タービンと同等サイズのロータを完全一体で製造することは技術面および設備容量の点で難しくなることが予想され,高温高圧の部分をコンパクトな別車室とする構造や,分割製作したロータ部材を軸方向に溶接で連結した溶接ロータの採用も検討する必要がある。溶接ロータを採用する場合,図11のようにNi基合金をロータ中央部(高温部)のみに適用し,両端の中・低温部には12Cr鋼を適用することで,高価なNi基合金の使用量を低減した経済的な設計が可能となるが,このような溶接ロータを実現するためには,Ni基合金どうしの共材溶接技術および,Ni基合金と12Cr鋼の異材溶接技術の確立が必要である。
さらに,設計面から蒸気タービン用Ni基合金に要求される特性に低熱膨張性がある。かつて649℃の蒸気条件を採用した米国のEddystone 1号機ではオーステナイト系材料が使用されたが,線膨張係数の高さに起因する熱応力による疲労損傷を惹き起こし,弁室に亀裂が発生する等のトラブルに見舞われた。一般的にNi基合金の線膨張係数は,オーステナイト鋼ほど高くないが,600℃級USCタービンで使用されているフェライト系12Cr鋼より高く,熱応力増加や回転部・静止部間の伸び差増大が懸念される。従って,A-USCタービンの信頼性・運用性を損なわぬよう,低熱膨張Ni基合金の開発が求められる。また,前述した12Cr鋼との異材溶接に関しても,両者の線膨張係数は近い方が望ましい。」(第96ページ右欄第5行ないし第97ページ右欄第4行)

ウ 「ケースAは最も熱効率が高いと考えられる2段再熱のケースであり,基本システム構成を図14に示す。超高圧タービン(VHP)入口の主蒸気条件は圧力35MPa,温度700℃である。再熱蒸気温度は第一段,第二段ともに720℃とした。この温度条件はヨーロッパのAD700プロジェクトで検討されたものと同じである。本構成による熱効率は46%(送電端,高位発熱量基準)と予測された。
このような構成とした場合,適用材料は図15のようになる。まずボイラを見ると,加熱器や再熱器の一部で開発Ni基合金が使われ,その他の部分は従来材料でまかなえることがわかる。そして,ボイラからタービンへの蒸気管,弁も開発Ni基合金で構成する。タービンは内部ケーシングとロータの一部に開発Ni基合金を適用する。この検討ではケースAを担当したメーカはロータに溶接構造を適用することを想定しており,従来材料(12Cr鋼)と開発Ni基合金は図11で紹介したように接合部で溶接される。タービン翼は高温になる部分だけ従来ガスタービンで使われてきたNi基合金を適用する。」(第99ページ右欄第6行ないし第100ページ左欄第1行)

上記アないしウ並びに図11、12及び15によれば、甲第1号証には以下の発明(以下「甲1発明1」という。)が記載されていると認められる。

「第一ロータ部材と前記第一ロータ部材の両端部に溶接される第二ロータ部材とからなる高中圧タービンのロータと、
前記高中圧タービンのロータが挿通される外部車室ケーシングと、
前記外部車室ケーシングの内側に配され、前記高中圧タービンのロータが挿通される内部車室ケーシングとを有し、
前記第一ロータ部材は、Ni基合金からなり、室温から700℃までの平均線膨張係数が所定の範囲内であり、
前記第二ロータ部材は、内部が中実の12Cr鋼からなり、室温から700℃までの平均線膨張係数が所定の範囲内であり、
前記高中圧タービンのロータは、前記第一ロータ部材の一端に形成される高圧タービン室内に動翼列を有し、
前記高中圧タービンのロータは、前記第一ロータ部材の他端と前記第二ロータ部材との接合部に形成される中圧タービン室内に動翼列を有し、
前記中圧タービン室内の動翼列は、前記第一ロータ部材と前記第二ロータ部材の双方に連なって設けられており、
前記中圧タービン室内の動翼列の段数は、前記第二ロータ部材に設けられる段数よりも前記第一ロータ部材に設けられる段数の方が多く、
前記内部車室ケーシングは、前記外部車室ケーシングに拘束される両端開放型の筒状部材であり、前記高圧タービン室及び前記中圧タービン室に静翼列を有し、
高圧蒸気が前記高圧タービン室側に供給され前記高圧タービン室内へと流入せしめられ、
中圧蒸気が前記中圧タービン室側に供給され前記中圧タービン室内へと流入せしめられる、蒸気タービン。」

また、上記アないしウ並びに図11、12及び15によれば、甲第1号証には以下の発明(以下「甲1発明2」という。)が記載されていると認められる。

「第一ロータ部材と前記第一ロータ部材の両端部に溶接される第二ロータ部材とからなる高中圧タービンのロータと、
前記高中圧タービンのロータが挿通される外部車室ケーシングと、
前記外部車室ケーシングの内側に配され、前記高中圧タービンのロータが挿通される内部車室ケーシングとを有し、
前記第一ロータ部材は、Ni基合金からなり、室温から700℃までの平均線膨張係数が所定の範囲内であり、
前記第二ロータ部材は、内部が中実の12Cr鋼からなり、室温から700℃までの平均線膨張係数が所定の範囲内であり、
前記高中圧タービンのロータは、前記第一ロータ部材の一端と前記第二ロータ部材との接合部に形成される高圧タービン室内に動翼列を有し、
前記高中圧タービンのロータは、前記第一ロータ部材の他端に形成される中圧タービン室内に動翼列を有し、
前記高圧タービン室内の動翼列は、前記第一ロータ部材と前記第二ロータ部材の双方に連なって設けられており、
前記高圧タービン室内の動翼列の段数は、前記第二ロータ部材に設けられる段数よりも前記第一ロータ部材に設けられる段数の方が多く、
前記内部車室ケーシングは、前記外部車室ケーシングに拘束される両端開放型の筒状部材であり、前記高圧タービン室及び前記中圧タービン室に静翼列を有し、
高圧蒸気が前記高圧タービン室側に供給され前記高圧タービン室内へと流入せしめられ、
中圧蒸気が前記中圧タービン室側に供給され前記中圧タービン室内へと流入せしめられる、蒸気タービン。」

(2)甲第2号証
取消理由通知において引用した刊行物である甲第2号証(国際公開第2009/154243号)には、次の事項が記載されている。

ア 「蒸気タービンを含む石炭焚火力発電では、従来より高効率化が進められてきており、現在では一般的に600℃級以下の蒸気条件で発電が行われ、タービンロータ、動翼等の主要部材には前記蒸気温度に対する耐熱性を有する12Cr鋼などの高クロム鋼(フェライト系耐熱鋼)が用いられている。
また近年、CO_(2)排出量削減と、更なる熱効率向上のために、700℃級の蒸気条件を採用した発電技術が求められているが、700℃級の蒸気条件を採用すると前記12Cr鋼などの高クロム鋼(フェライト系耐熱鋼)では強度不足となる。
そこで、タービンロータの材料として、更に高い高温強度を有するNi基合金を適用することが考えられるが、Ni基合金は大型鋼塊の製造が難しいためタービンロータの大型化が難しく、さらに非常に高価格であるため、Ni基合金のみを用いてタービンロータを製造することは現実的ではない。」(明細書第1ページ第13ないし24行)

イ 「従って、本発明はかかる従来技術の問題に鑑み、Ni基合金と12Cr鋼などの他の耐熱性鉄鋼材料とを溶接によって接合しても、該接合部における強度を維持することができ、700℃級の蒸気条件でも採用可能なタービンロータ及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため本発明においては、
蒸気又は燃焼ガスが作動流体として導入される回転機器に備えられ、通過する作動流体温度に応じて異なる強度の複数の部材を溶接によって接合した回転機器のロータにおいて、室温(「常温」ともいう。以下同様。)から700℃までの平均線膨張係数が12.4×10^(-6)/℃?14.5×10^(-6)/℃、望ましくは14.0×10^(-6)/℃以下であるNi基合金で形成された第1の部材と、高クロム鋼で形成された第2の部材とを溶接によって接合することで構成され、前記作動流体の入口にあたる部位を前記Ni基合金で形成した第1の部材とすることを特徴とする。
前記第1の部材と前記第2の部材とを溶接によって接合して構成することで、ロータの大型化にも対応することができる。
また、前記第1の部材を室温から700℃までの平均線膨張係数が12.4×10^(-6)/℃?14.5×10^(-6)/℃、望ましくは14.0×10^(-6)/℃以下であるNi基合金で形成し、前記第2の部材を高クロム鋼で形成することにより、前記第1の部材と前記第2の部材との線膨張係数の差が小さくなるため、前記第1の部材と前記第2の部材との溶接継手部にかかる熱応力も小さくなり、従って前記溶接継手部においても充分な強度を維持することができる。
また、蒸気又は燃焼ガスである作動流体の入口にあたる部位をNi基合金で形成した第1の部材とすることで作動流体のロータへの導入温度と略同温となる高温部におけるロータの強度を維持することができ、その他の部位(作動流体のロータへの導入温度未満の部位)においても高クロム鋼で形成した第2の部材とすることで充分な強度を維持することができる。
本発明は、作動流体が700℃級の蒸気であっても適用可能である。
また、それぞれNi基合金で形成された少なくとも2つの前記第1の部材と、それぞれ高クロム鋼で形成された少なくとも2つの前記第2の部材とから構成され、前記2つ以上の第1の部材同士を溶接によって接合し、該第1の部材同士が接合された部材の両端部それぞれに、前記第2の部材を溶接によって接合することで構成されることが好ましい。
これにより、ロータのさらなる大型化に対応することができるとともに、ロータ設計の自由度が高くなる。
また、前記高クロム鋼で形成された第2の部材の少なくとも一端側に、低合金鋼で形成された第3の部材を溶接によって接合することで構成されることが好ましい。
低合金鋼は通常ロータの軸受けに使われる金属との相性がよく、ロータの端部に低合金鋼で形成された第3の部材を溶接によって接合することにより、ロータ端部における軸受けとの接触部で溶接肉盛などの加工が不要となる。
また、室温から700℃までの平均線膨張係数が12.4×10^(-6)/℃?14.5×10^(-6)/℃、望ましくは14.0×10^(-6)/℃以下を満たすNi基合金の組成として、前記Ni基合金が、重量%で、C:0.15%以下、Si:1%以下、Mn:1%以下、Cr:5?15%、Mo、W及びReの1種又は2種以上をMo+(W+Re)/2:17?25%、Al:0.2?2%、Ti:0.5?4.5%、Fe:10%以下、B:0.02%以下及びZr:0.2%以下の1種又は2種を含有し、Al+Tiの原子%が2.5?7.0%であり、残部Niと不可避的不純物からなっていてもよい。
さらに、前記Ni基合金が、重量%で、C:0.15%以下、Si:1%以下、Mn:1%以下、Cr:5?20%、Mo:17?26%、Al:0.1?2.0%、Ti:0.1?2.0%、Fe:10%以下、B:0.02%以下、Zr:0.2%以下、W及びReとを含有し、残部の成分は実質的にNiからなり、Al+Tiの原子%が1?5.5%であり、次式:17≦Mo+(W+Re)/2≦27を満たしてもよい。
さらに、前記Ni基合金が、重量%で、C:0.15%以下、Si:1%以下、Mn:1%以下、Cr:5?20%、Mo、W及びReの1種又は2種以上をMo+(W+Re)/2:17?27%、Al:0.1?2%、Ti:0.1?2%、Nb及びTaをNb+Ta/2:1.5%以下、Fe:10%以下、Co:5%以下、B:0.001?0.02%、Zr:0.001?0.2%を含有し、残部Niと不可避的不純物からなっていてもよい。
さらに、前記Ni基合金が、重量%で、C:0.15%以下、Si:1%以下、Mn:1%以下、Cr:5?20%未満、Mo、W及びReの1種又は2種以上をMo+(W+Re)/2:5?20%未満、W:10%以下、Al:0.1?2.5%、Ti:0.10?0.95%、Nb及びTaをNb+Ta/2:1.5%以下、B:0.001?0.02%、Zr:0.001?0.2%、Fe:4%以下を含有し、Al+Ti+Nb+Taの原子%が2.0?6.5%であり、残部Niと不可避的不純物からなっていてもよい。
また、前記高クロム鋼として、
前記高クロム鋼が、室温から700℃までの平均線膨張係数が11.2×10^(-6)/℃?12.4×10^(-6)/℃であり、重量%で、Cr:7%を超え10.0%未満、Ni:1.5%以下、V:0.10%?0.30%以下、Nb:0.02?0.10%、N:0.01?0.07%、C:0.10%以上、Si:0.10%以下、Mn:0.05?1.5%、Al:0.02%以下、及びMo並びにWをA(1.75%Mo、0.0%W)、B(1.75%Mo、0.5%W)、C(1.53%Mo、0.5%W)、D(1.3%Mo、1.0%W)、E(2.0%Mo、1.0%W)、F(2.5%Mo、0.5%W)、G(2.5%Mo、0.0%W)、Aを結ぶ直線の内側(直線を含まず)の量を含有し、残部が鉄及び付随的不純物よりなっていてもよい。
さらに、前記高クロム鋼が、線膨張係数が11.2×10^(-6)/℃?12.4×10^(-6)/℃であり、重量%で、C:0.08?0.25%、Si:0.10%以下、Mn:0.10%以下、Ni:0.05?1.0%、Cr:10.0?12.5%、Mo:0.6?1.9%、W:1.0?1.95%、V:0.10?0.35%、Nb:0.02?0.10%、N:0.01?0.08%、B:0.001?0.01%、Co:2.0?8.0%を含有し、残部が鉄及び付随的不純物よりなっていてもよい。」(第2ページ第17行ないし第5ページ第14行)

ウ 「(構成)
まず図1を用いて実施例1に係る例えば650℃以上の高温蒸気が導入される蒸気タービンに用いられるタービンロータの構成について説明する。
図1に示すように、タービンロータ1は、2つのNi基合金部11a、11b、2つの高クロム鋼部12a、12b、2つの低クロム鋼部13a、13bから構成されている。」(第8ページ第15ないし20行)

エ 「(材料)
次に、タービンロータ1を構成する、Ni基合金部11a、11b、高クロム鋼部12a、12b、低クロム鋼部13a、13bの材料について説明する。
(A)Ni基合金部
Ni基合金部は、650℃以上であって好ましくは700℃程度の高温であっても安定して使用可能な耐熱性を有し、室温から700℃までの平均線膨張係数が12.4×10^(-6)/℃?14.5×10^(-6)/℃、望ましくは14.0×10^(-6)/℃以下であるNi基合金で形成されている。前記範囲の線膨張係数を有するNi基合金を用いることで、Ni基合金部11a、11bと高クロム鋼部12a、12bとの線膨張係数の差が小さくなるため、Ni基合金部11a、11bと高クロム鋼部12a、12bとの間の溶接継手22a、22bにかかる熱応力も小さくなり、従って前記溶接継手においても充分な強度を維持して、Ni基合金部11a、11bと高クロム鋼部12a、12bを接合することができる。
前記線膨張係数が12.4×10^(-6)/℃?14.5×10^(-6)/℃、望ましくは14.0×10^(-6)/℃以下であるNi基合金として表1にまとめた(1)?(4)の化学組成範囲の材料が挙げられる。
なお、Ni基合金は、(1)?(4)の範囲に限定されるものではなく、650℃以上の高温であっても安定して使用可能な耐熱性を有し、室温から700℃までの平均線膨張係数が前記の12.4×10^(-6)/℃?14.5×10^(-6)/℃、望ましくは14.0×10^(-6)/℃以下の範囲のNi基合金であれば他の組成であってもよい。
【表1】(省略)
表1中における%は重量%を意味する。
また、表1中における(1)?(4)の組成のNi基合金には不可避的不純物も含まれるが、その含有率は0%に近いほど好ましい。
(B)高クロム鋼部
高クロム鋼部は、650℃程度の温度まで安定して使用可能な耐熱性を有し、室温から700℃までの平均線膨張係数が11.2×10^(-6)/℃?12.4×10^(-6)/℃である高クロム鋼で形成されている。前記範囲の線膨張係数を有するNi基合金を用いることで、Ni基合金部11a、11bと高クロム鋼部12a、12bとの線膨張係数の差が小さくなるため、Ni基合金部11a、11bと高クロム鋼部12a、12bとの間の溶接継手22a、22bにかかる熱応力も小さくなり、従って前記溶接継手においても充分な強度を維持して、Ni基合金部11a、11bと高クロム鋼部12a、12bを接合することができる。
前記線膨張係数が11.2×10^(-6)/℃?12.4×10^(-6)/℃である高クロム鋼として表2にまとめた(5)(6)の化学組成範囲の材料が挙げられる。
なお、高クロム鋼は、(5)(6)の範囲に限定されるものではなく、650℃程度の温度まで安定して使用可能な耐熱性を有し、室温から700℃までの平均線膨張係数が前記の11.2×10^(-6)/℃?12.4×10^(-6)/℃の範囲の高クロム鋼であれば他の組成であってもよい。
このような範囲の高クロム鋼には、一般にタービンロータに使用される12Cr鋼も含まれており、従来よりタービンロータに使用されている12Cr鋼を高クロム鋼として使用できる。
【表2】(省略)
表2中における%は重量%を意味する。
また、表2中における(5)(6)の組成の高クロム鋼には不可避的不純物も含まれるが、その含有率は0%に近いほど好ましい。」(第9ページ第8行ないし第12ページ下から第5行)

オ 「【書類名】請求の範囲
【請求項1】
蒸気又は燃焼ガスが作動流体として導入される回転機器に備えられ、通過する作動流体温度に応じて異なる強度の複数の部材を溶接によって接合した回転機器のロータにおいて、
室温から700℃までの平均線膨張係数が12.4×10^(-6)/℃?14.5×10^(-6)/℃であるNi基合金で形成された第1の部材と、高クロム鋼で形成された第2の部材とを溶接によって接合することで構成され、
前記作動流体の入口にあたる部位を前記Ni基合金で形成した第1の部材とすることを特徴とする回転機器のロータ。
【請求項2】
それぞれNi基合金で形成された少なくとも2つの前記第1の部材と、
それぞれ高クロム鋼で形成された少なくとも2つの前記第2の部材とから構成され、
前記2つ以上の第1の部材同士を溶接によって接合し、
該第1の部材同士が接合された部材の両端部それぞれに、前記第2の部材を溶接によって接合することで構成されることを特徴とする請求項1記載の回転機器のロータ。
【請求項3】
前記Ni基合金で形成された第1の部材同士の溶接継手に1段目の時効処理を施した後、前記第1の部材と前記第2の部材とを溶接し、前記第1の部材同士の溶接継手の2段目の時効処理と、前記第1の部材と第2の部材の溶接部の溶接後熱処理とを同温度で同時に行って形成されることを特徴とする請求項2記載の回転機器のロータ。
【請求項4】
前記Ni基合金が、重量%で、C:0.15%以下、Si:1%以下、Mn:1%以下、Cr:5?15%、Mo、W及びReの1種又は2種以上をMo+(W+Re)/2:17超?25%、Al:0.2?2%、Ti:0.5?4.5%、Fe:10%以下、B:0.02%以下及びZr:0.2%以下の1種又は2種を含有し、Al+Tiの原子%が2.5?7.0%であり、残部Niと不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1?3何れかに記載の回転機器のロータ。
【請求項5】
前記Ni基合金が、重量%で、C:0.15%以下、Si:1%以下、Mn:1%以下、Cr:5?20%、Mo:17?26%、Al:0.1?2.0%、Ti:0.1?2.0%、Fe:10%以下、B:0.02%以下、Zr:0.2%以下、W及びReとを含有し、残部の成分は実質的にNiからなり、Al+Tiの原子%が1?5.5%であり、次式:
17≦Mo+(W+Re)/2≦27
を満たすことを特徴とする請求項1?3何れかに記載の回転機器のロータ。
【請求項6】
前記Ni基合金が、重量%で、C:0.15%以下、Si:1%以下、Mn:1%以下、Cr:5?20%、Mo、W及びReの1種又は2種以上をMo+(W+Re)/2:17?27%、Al:0.1?2%、Ti:0.1?2%、Nb及びTaをNb+Ta/2:1.5%以下、Fe:10%以下、Co:5%以下、B:0.001?0.02%、Zr:0.001?0.2%を含有し、残部Niと不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1?3何れかに記載の回転機器のロータ。
【請求項7】
前記Ni基合金が、重量%で、C:0.15%以下、Si:1%以下、Mn:1%以下、Cr:5?20%未満、Mo、W及びReの1種又は2種以上をMo+(W+Re)/2:5?20%未満、W:10%以下、Al:0.1?2.5%、Ti:0.10?0.95%、Nb及びTaをNb+Ta/2:1.5%以下、B:0.001?0.02%、Zr:0.001?0.2%、Fe:4%以下を含有し、Al+Ti+Nb+Taの原子%が2.0?6.5%であり、残部Niと不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1?3何れかに記載の回転機器のロータ。
【請求項8】
前記高クロム鋼が、室温から700℃までの平均線膨張係数が11.2×10^(-6)/℃?12.4×10^(-6)/℃であり、重量%で、Cr:7%を超え10.0%未満、Ni:1.5%以下、V:0.10%?0.30%以下、Nb:0.02?0.10%、N:0.01?0.07%、C:0.10%以上、Si:0.10%以下、Mn:0.05?1.5%、Al:0.02%以下、及びMo並びにWをA(1.75%Mo、0.0%W)、B(1.75%Mo、0.5%W)、C(1.53%Mo、0.5%W)、D(1.3%Mo、1.0%W)、E(2.0%Mo、1.0%W)、F(2.5%Mo、0.5%W)、G(2.5%Mo、0.0%W)、Aを結ぶ直線の内側(直線を含まず)の量を含有し、残部が鉄及び付随的不純物よりなることを特徴とする請求項1?7何れかに記載の回転機器のロータ。
【請求項9】
前記高クロム鋼が、室温から700℃までの平均線膨張係数が11.2×10^(-6)/℃?12.4×10^(-6)/℃であり、重量%で、C:0.08?0.25%、Si:0.10%以下、Mn:0.10%以下、Ni:0.05?1.0%、Cr:10.0?12.5%、Mo:0.6?1.9%、W:1.0?1.95%、V:0.10?0.35%、Nb:0.02?0.10%、N:0.01?0.08%、B:0.001?0.01%、Co:2.0?8.0%を含有し、残部が鉄及び付随的不純物よりなることを特徴とする請求項1?7何れかに記載の回転機器のロータ。
【請求項10】
前記高クロム鋼で形成された第2の部材の少なくとも一端側に、
低合金鋼で形成された第3の部材を溶接によって接合することで構成されることを特徴とする請求項1?9何れかに記載の回転機器のロータ。
【請求項11】
前記低合金鋼が、2.25CrMoV鋼又はCrMoV鋼であることを特徴とする請求項10に記載の回転機器のロータ。
【請求項12】
前記Ni基合金で形成された第1の部材同士の溶接継手に1段目の時効処理を施した後、前記第1の部材と前記第2の部材とを溶接し、さらに前記第2の部材と第3の部材を溶接し、前記Ni基合金の溶接継手の2段目の時効処理と、前記第1の部材と第2の部材の溶接部の溶接後処理と、前記第2の部材と第3の部材の溶接部の溶接後処理とを同温度で同時に行って形成されることを特徴とする請求項10又は11に記載の回転機器のロータ。
【請求項13】
室温から700℃までの平均線膨張係数が12.4×10^(-6)/℃?14.5×10^(-6)/℃であるNi基合金で形成された少なくとも2つの第1の部材同士を溶接によって接合し、
該第1の部材同士の溶接継手に1段目の時効処理を施し、
前記第1の部材同士が接続された部材の両端部それぞれに、高クロム鋼で形成された第2の部材を溶接によって接合し、
前記第1の部材同士の溶接継手の2段目の時効処理と、前記第1の部材と第2の部材の溶接部の溶接後処理を同温度で同時に行うことを特徴とする回転機器のロータの製造方法。
【請求項14】
前記第1の部材同士の溶接継手の1段目の時効処理を700?1000℃で行い、前記第1の部材同士の溶接継手の2段目の時効処理と、前記第1の部材と第2の部材の溶接部の溶接後処理とを600?800℃で実施することを特徴とする請求項13記載の回転機器のロータの製造方法。
【請求項15】
少なくとも2つの前記第1の部材同士を溶接によって接合し、
該第1の部材同士の溶接継手に1段目の時効処理を施し、
前記第1の部材同士が接続された部材の両端部それぞれに、高クロム鋼で形成された第2の部材を溶接によって接合し、
前記第2の部材の少なくとも一端側に、低合金鋼で形成された第3の部材を溶接によって接合し、
前記第1の部材同士の溶接継手の2段目の時効処理と、前記第1の部材と第2の部材の溶接部の溶接後処理と、前記第2の部材と第3の部材の溶接部の溶接後処理とを同温度で同時に行うことを特徴とする請求項13記載の回転機器のロータの製造方法。
【請求項16】
前記第1の部材同士の溶接継手の1段目の時効処理を700?1000℃で行い、前記第1の部材同士の溶接継手の2段目の時効処理と、前記第1の部材と第2の部材の溶接部の溶接後処理と、前記第2の部材と第3の部材の溶接部の溶接後処理とを600?800℃で実施することを特徴とする請求項15記載の回転機器のロータの製造方法。」(請求の範囲の請求項1ないし16)

上記アないしオ及び図1の記載から、甲第2号証には、次の技術(以下、「甲2技術」という。)が記載されていると認める。

「第一ロータ部材と前記第一ロータ部材の両端部に接合される第二ロータ部材とからなるタービンのロータにおいて、
前記第一ロータ部材は、Ni基合金からなり、室温から700℃までの平均線膨張係数が12.4×10^(-6)/℃?14.5×10^(-6)/℃の範囲内であり、
前記第二ロータ部材は、前記Ni基合金よりも成型容易性を有する材料からなり、室温から700℃までの平均線膨張係数が11.2×10^(-6)/℃?12.4×10^(-6)/℃の範囲内である、タービンのロータ。」

(3)周知技術1
蒸気タービンの技術分野において、蒸気タービンの高温部を構成するロータ部材の内部に中空部を設ける技術は、本件特許出願の原出願の出願前に周知の技術(以下、「周知技術1」という。例えば、特開平9-53404号公報(甲第5号証)の段落【0014】及び図1、特開2007-321630号公報(甲第6号証)の段落【0054】及び図5等の記載を参照。)である。

(4)周知技術2
蒸気タービンの技術分野において、外部車室ケーシングに「隔壁」及び「シール装置」を設けることは、本件特許出願の原出願の出願前に周知の技術(以下、「周知技術2」という。例えば、特開2000-356110号公報(甲第3号証)の段落【0002】ないし【0005】及び図8、特開平5-240001号公報(甲第4号証)の段落【0012】及び【0013】並びに図1を参照。)である。

(5)周知技術3
蒸気タービンの技術分野において、内部車室ケーシングに「シール部材」を設けることは、本件特許出願の原出願の出願前に周知の技術(以下、「周知技術3」という。例えば、特開2000-356110号公報(甲第3号証)の段落【0002】ないし【0005】及び図8を参照。)である。

4 判断
(1)取消理由通知書に記載した取消理由について
ア 本件発明1について
本件発明1と甲1発明1とを対比すると、甲1発明1における「溶接」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、本件発明1における「接合」に相当する。
また、本件発明における「Ni基合金よりも成型容易性を有する内部が中実の材料」とは、実施例を参照すると、「例えば高Cr鋼」(段落【0026】)であり、甲1発明1における「12Cr鋼」は、「高Cr鋼」であるから、甲1発明1における「内部が中実の12Cr鋼」は、「内部が中実の高Cr鋼」という限りにおいて、本件発明1における「Ni基合金よりも成型容易性を有する内部が中実の材料」に相当する。
また、甲1発明1における「第一ロータ部材は、・・・室温から700℃までの平均線膨張係数が所定の範囲内であり」は、「第一ロータ部材は、・・・室温から700℃までの平均線膨張係数が所定の範囲内であり」という限りにおいて、本件発明1における「第一ロータ部材は、・・・室温から700℃までの平均線膨張係数が12.4×10^(-6)/℃?14.5×10^(-6)/℃の範囲内であり」に相当し、同様に、甲1発明1における「第二ロータ部材は、・・・室温から700℃までの平均線膨張係数が所定の範囲内であり」は、「第二ロータ部材は、・・・室温から700℃までの平均線膨張係数が所定の範囲内であり」という限りにおいて、本件発明1における「第二ロータ部材は、・・・室温から700℃までの平均線膨張係数が11.2×10^(-6)/℃?12.4×10^(-6)/℃の範囲内であり」に相当する。

よって、本件発明1と甲1発明1とは、
「第一ロータ部材と前記第一ロータ部材の両端部に接合される第二ロータ部材とからなる高中圧タービンのロータと、
前記高中圧タービンのロータが挿通される外部車室ケーシングと、
前記外部車室ケーシングの内側に配され、前記高中圧タービンのロータが挿通される内部車室ケーシングとを有し、
前記第一ロータ部材は、Ni基合金からなり、室温から700℃までの平均線膨張係数が所定の範囲内であり、
前記第二ロータ部材は、内部が中実の高Cr鋼からなり、室温から700℃までの平均線膨張係数が所定の範囲内であり、
前記高中圧タービンのロータは、前記第一ロータ部材の一端に形成される高圧タービン室内に動翼列を有し、
前記高中圧タービンのロータは、前記第一ロータ部材の他端と前記第二ロータ部材との接合部に形成される中圧タービン室内に動翼列を有し、
前記中圧タービン室内の動翼列は、前記第一ロータ部材と前記第二ロータ部材の双方に連なって設けられており、
前記中圧タービン室内の動翼列の段数は、前記第二ロータ部材に設けられる段数よりも前記第一ロータ部材に設けられる段数の方が多く、
前記内部車室ケーシングは、前記外部車室ケーシングに拘束される両端開放型の筒状部材であり、前記高圧タービン室及び前記中圧タービン室に静翼列を有し、
高圧蒸気が前記高圧タービン室側に供給され前記高圧タービン室内へと流入せしめられ、
中圧蒸気が前記中圧タービン室側に供給され前記中圧タービン室内へと流入せしめられる、蒸気タービン。」
という点で一致し、次の点で相違する。

<相違点>
(ア)「第一ロータ部材」に関して、本件発明1においては、「内部に軸方向の中空部を有するNi基合金からなり、室温から700℃までの平均線膨張係数が12.4×10^(-6)/℃?14.5×10^(-6)/℃の範囲内」であるのに対し、甲1発明1においては、「Ni基合金からなり、室温から700℃までの平均線膨張係数が(図12に示される)所定の範囲内」である点(以下、「相違点1」という。)。

(イ)「第二ロータ部材」に関して、本件発明1においては、「Ni基合金よりも成型容易性を有する内部が中実の材料からなり、室温から700℃までの平均線膨張係数が11.2×10^(-6)/℃?12.4×10^(-6)/℃の範囲内」であるのに対し、甲1発明1においては、「内部が中実の12Cr鋼からなり、室温から700℃までの平均線膨張係数が(図12に示される)所定の範囲内」である点(以下、「相違点2」という。)。

(ウ)本件発明1においては、「外部車室ケーシングは、高中圧タービンのロータの軸方向の中央において高圧タービン室と前記中圧タービン室とを仕切る隔壁を有するとともに、高中圧タービンのロータが軸方向に突出する両端において、高中圧タービンのロータとの隙間を封止するシール装置を有」するのに対し、甲1発明1においては、そのような「隔壁」及び「シール装置」を有するか否か明らかでない点(以下、「相違点3」という。)。

(エ)本件発明1においては「内部車室ケーシング」は、「隔壁との突き合わせ部分において高中圧タービンのロータの軸方向両側に高中圧タービンのロータとの隙間を封止するシール部材を有」するのに対し、甲1発明1においては、そのような「シール部材」を有するか否か明らかでない点(以下、「相違点4」という。)。

以下、上記相違点について検討する。
(ア)相違点1及び2について
事案に鑑み、まず相違点1及び2について検討する。
相違点1に関して、蒸気タービンの高温部を構成するロータ部材の内部に中空部を設ける技術は、本件出願の原出願の出願前に周知の技術(上記「周知技術1」)である。
したがって、甲1発明1において、周知技術1を適用することにより、蒸気タービンの高温部を構成するロータ部材の内部に中空部を設けることまでは当業者が容易に想到できることであるといえる。
また、相違点2に関して、「12%Cr鋼」が、「Ni基合金よりも成型容易性を有する材料」であることは、技術常識である(例えば、甲第2号証の明細書第1ページ第13ないし24行の記載を参照。)。
しかしながら、甲1発明1において、「Ni基合金からなる第一ロータ部材」のみに「軸方向の中空部」を設けるとともに「前記Ni基合金よりも成型容易性を有する材料」を内部が中実のままとすることにより、「内部に軸方向の中空部を有するNi基合金」からなる第一ロータ部材の両端部に「前記Ni基合金よりも成型容易性を有する内部が中実の材料」からなる第二ロータ部材を各々接合し、その結果、「内部に軸方向の中空部を有するNi基合金」からなる第一ロータ部材が密閉されるようになることが容易であるとまではいえない。
してみれば、甲1発明1において、甲2技術及び周知技術1を適用しても、相違点1及び2に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到できたこととはいえない。
そして、本件発明1は、相違点1及び2に係る本件発明1の発明特定事項を有することにより、明細書に記載された顕著な効果を奏するものである。
そうすると、相違点3及び4について判断するまでもなく、本件発明1は、甲1発明1、甲2技術並びに周知技術1ないし3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(イ)まとめ
以上のとおり、本件発明1は、甲1発明1、甲2技術及び周知技術1ないし3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件特許の請求項1に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。

(ウ)特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は、平成28年12月27日付け意見書において、「・・・甲1発明のNi合金からなるロータ中央部(「第一ロータ部材」に相当)の内部に中空部を設けた場合、その中空部は、甲1発明に係る中実の12%Cr鋼からなるロータ部材(「第二ロータ部材」に相当)に挟まれる結果、密閉されたものとなることは明らかである。」(第5ページ第18ないし21行)と主張している。
しかしながら、特許異議申立人は、「Ni合金からなるロータ中央部の内部に中空部を設けた」という事項が記載された引用文献を提示しているわけではないから、特許異議申立人の上記主張は、当を得ていない。

イ 本件発明2について
本件発明2と甲1発明2とを対比すると、甲1発明2における「溶接」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、本件発明2における「接合」に相当する。
また、甲1発明2における「中実の12Cr鋼」は、「中実の高Cr鋼」という限りにおいて、本件発明1における「Ni基合金よりも成型容易性を有する材料」に相当する。
また、甲1発明2における「第一ロータ部材は、・・・室温から700℃までの平均線膨張係数が所定の範囲内であり」は、「第一ロータ部材は、・・・室温から700℃までの平均線膨張係数が所定の範囲内であり」という限りにおいて、本件発明2における「第一ロータ部材は、・・・室温から700℃までの平均線膨張係数が12.4×10^(-6)/℃?14.5×10^(-6)/℃の範囲内であり」に相当し、同様に、甲1発明2における「第二ロータ部材は、・・・室温から700℃までの平均線膨張係数が所定の範囲内であり」は、「第二ロータ部材は、・・・室温から700℃までの平均線膨張係数が所定の範囲内であり」という限りにおいて、本件発明2における「第二ロータ部材は、・・・室温から700℃までの平均線膨張係数が11.2×10^(-6)/℃?12.4×10^(-6)/℃の範囲内であり」に相当する。

よって、本件発明2と甲1発明2とは、
「第一ロータ部材と前記第一ロータ部材の両端部に接合される第二ロータ部材とからなる高中圧タービンのロータと、
前記高中圧タービンのロータが挿通される外部車室ケーシングと、
前記外部車室ケーシングの内側に配され、前記高中圧タービンのロータが挿通される内部車室ケーシングとを有し、
前記第一ロータ部材は、Ni基合金からなり、室温から700℃までの平均線膨張係数が所定の範囲内であり、
前記第二ロータ部材は、中実の高Cr鋼からなり、室温から700℃までの平均線膨張係数が所定の範囲内であり、
前記高中圧タービンのロータは、前記第一ロータ部材の一端と前記第二ロータ部材との接合部に形成される高圧タービン室内に動翼列を有し、
前記高中圧タービンのロータは、前記第一ロータ部材の他端に形成される中圧タービン室内に動翼列を有し、
前記高圧タービン室内の動翼列は、前記第一ロータ部材と前記第二ロータ部材の双方に連なって設けられており、
前記高圧タービン室内の動翼列の段数は、前記第二ロータ部材に設けられる段数よりも前記第一ロータ部材に設けられる段数の方が多く、
前記内部車室ケーシングは、前記外部車室ケーシングに拘束される両端開放型の筒状部材であり、前記高圧タービン室及び前記中圧タービン室に静翼列を有し、
高圧蒸気が前記高圧タービン室側に供給され前記高圧タービン室内へと流入せしめられ、
中圧蒸気が前記中圧タービン室側に供給され前記中圧タービン室内へと流入せしめられる、蒸気タービン。」
という点で一致し、次の点で相違する。

<相違点>
(ア)「第一ロータ部材」に関して、本件発明2においては、「内部に軸方向の中空部を有するNi基合金からなり、室温から700℃までの平均線膨張係数が12.4×10^(-6)/℃?14.5×10^(-6)/℃の範囲内」であるのに対し、甲1発明2においては、「Ni基合金からなり、室温から700℃までの平均線膨張係数が(図12に示される)所定の範囲内」である点(以下、「相違点1’」という。)。

(イ)「第二ロータ部材」に関して、本件発明2においては、「Ni基合金よりも成型容易性を有する中実の材料からなり、室温から700℃までの平均線膨張係数が11.2×10^(-6)/℃?12.4×10^(-6)/℃の範囲内」であるのに対し、甲1発明2においては、「中実の12Cr鋼からなり、室温から700℃までの平均線膨張係数が(図12に示される)所定の範囲内」である点(以下、「相違点2’」という。)。

(ウ)本件発明2においては、「外部車室ケーシングは、高中圧タービンのロータの軸方向の中央において高圧タービン室と中圧タービン室とを仕切る隔壁を有するとともに、高中圧タービンのロータが軸方向に突出する両端において、高中圧タービンのロータとの隙間を封止するシール装置を有」するのに対し、甲1発明2においては、そのような「隔壁」及び「シール装置」を有するか否か明らかでない点(以下、「相違点3’」という。)。

(エ)本件発明2においては「内部車室ケーシングは、・・・隔壁との突き合わせ部分において高中圧タービンのロータの軸方向両側に高中圧タービンのロータとの隙間を封止するシール部材を有」するのに対し、甲1発明2においては、そのような「シール部材」を有するか否か明らかでない点(以下、「相違点4’」という。)。

以下、上記相違点について検討する。
(ア)相違点1’及び2’について
相違点1’及び2’は、上記相違点1及び2と同じものであり、相違点1’及び2’についての判断も、上記相違点1及び2についての判断と同じである。
してみれば、甲1発明2において、甲2技術及び周知技術1を適用しても、相違点1’及び2’に係る本件発明2の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到できたこととはいえない。
そして、本件発明2は、相違点1’及び2’に係る本件発明2の発明特定事項を有することにより、明細書に記載された顕著な効果を奏するものである。
そうすると、相違点3’及び4’について判断するまでもなく、本件発明2は、甲1発明2、甲2技術及び周知技術1ないし3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(イ)まとめ
以上のとおり、本件発明2は、甲1発明2、甲2技術及び周知技術1ないし3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件特許の請求項2に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。

(ウ)特許異議申立人の意見について
上記ア(ウ)と同様である。

(2)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立て理由について
取消理由通知において採用しなかった特許異議申立て理由はない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一ロータ部材と前記第一ロータ部材の両端部に接合される第二ロータ部材とからなる高中圧タービンのロータと、
前記高中圧タービンのロータが挿通される外部車室ケーシングと、
前記外部車室ケーシングの内側に配され、前記高中圧タービンのロータが挿通される内部車室ケーシングとを有し、
前記第一ロータ部材は、内部に軸方向の中空部を有するNi基合金からなり、室温から700℃までの平均線膨張係数が12.4×10^(-6)/℃?14.5×10^(-6)/℃の範囲内であり、
前記第二ロータ部材は、前記Ni基合金よりも成型容易性を有する内部が中実の材料からなり、室温から700℃までの平均線膨張係数が11.2×10^(-6)/℃?12.4×10^(-6)/℃の範囲内であり、
前記高中圧タービンのロータは、前記第一ロータ部材の一端に形成される高圧タービン室内に動翼列を有し、
前記高中圧タービンのロータは、前記第一ロータ部材の他端と前記第二ロータ部材との接合部に形成される中圧タービン室内に動翼列を有し、
前記中圧タービン室内の動翼列は、前記第一ロータ部材と前記第二ロータ部材の双方に連なって設けられており、
前記中圧タービン室内の動翼列の段数は、前記第二ロータ部材に設けられる段数よりも前記第一ロータ部材に設けられる段数の方が多く、
前記外部車室ケーシングは、前記高中圧タービンのロータの軸方向の中央において前記高圧タービン室と前記中圧タービン室とを仕切る隔壁を有するとともに、前記高中圧タービンのロータが軸方向に突出する両端において、前記高中圧タービンのロータとの隙間を封止するシール装置を有し、
前記内部車室ケーシングは、前記外部車室ケーシングに拘束される両端開放型の筒状部材であり、前記高圧タービン室及び前記中圧タービン室に静翼列を有するとともに、前記隔壁との突き合わせ部分において前記高中圧タービンのロータの軸方向両側に前記高中圧タービンのロータとの隙間を封止するシール部材を有し、
高圧蒸気が前記隔壁の前記高圧タービン室側に供給され前記高圧タービン室内へと流入せしめられ、
中圧蒸気が前記隔壁の前記中圧タービン室側に供給され前記中圧タービン室内へと流入せしめられる、ことを特徴とする蒸気タービン。
【請求項2】
第一ロータ部材と前記第一ロータ部材の両端部に接合される第二ロータ部材とからなる高中圧タービンのロータと、
前記高中圧タービンのロータが挿通される外部車室ケーシングと、
前記外部車室ケーシングの内側に配され、前記高中圧タービンのロータが挿通される内部車室ケーシングとを有し、
前記第一ロータ部材は、内部に軸方向の中空部を有するNi基合金からなり、室温から700℃までの平均線膨張係数が12.4×10^(-6)/℃?14.5×10^(-6)/℃の範囲内であり、
前記第二ロータ部材は、前記Ni基合金よりも成型容易性を有する内部が中実の材料からなり、室温から700℃までの平均線膨張係数が11.2×10^(-6)/℃?12.4×10^(-6)/℃の範囲内であり、
前記高中圧タービンのロータは、前記第一ロータ部材の一端と前記第二ロータ部材との接合部に形成される高圧タービン室内に動翼列を有し、
前記高中圧タービンのロータは、前記第一ロータ部材の他端に形成される中圧タービン室内に動翼列を有し、
前記高圧タービン室内の動翼列は、前記第一ロータ部材と前記第二ロータ部材の双方に連なって設けられており、
前記高圧タービン室内の動翼列の段数は、前記第二ロータ部材に設けられる段数よりも前記第一ロータ部材に設けられる段数の方が多く、
前記外部車室ケーシングは、前記高中圧タービンのロータの軸方向の中央において前記高圧タービン室と前記中圧タービン室とを仕切る隔壁を有するとともに、前記高中圧タービンのロータが軸方向に突出する両端において、前記高中圧タービンのロータとの隙間を封止するシール装置を有し、
前記内部車室ケーシングは、前記外部車室ケーシングに拘束される両端開放型の筒状部材であり、前記高圧タービン室及び前記中圧タービン室に静翼列を有するとともに、前記隔壁との突き合わせ部分において前記高中圧タービンのロータの軸方向両側に前記高中圧タービンのロータとの隙間を封止するシール部材を有し、
高圧蒸気が前記隔壁の前記高圧タービン室側に供給され前記高圧タービン室内へと流入せしめられ、
中圧蒸気が前記隔壁の前記中圧タービン室側に供給され前記中圧タービン室内へと流入せしめられる、ことを特徴とする蒸気タービン。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-06-07 
出願番号 特願2015-117790(P2015-117790)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (F01D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 米澤 篤  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 金澤 俊郎
槙原 進
登録日 2015-10-30 
登録番号 特許第5829774号(P5829774)
権利者 三菱重工業株式会社
発明の名称 蒸気タービン  
代理人 森 隆一郎  
代理人 森 隆一郎  
代理人 志賀 正武  
代理人 松沼 泰史  
代理人 高橋 詔男  
代理人 山崎 哲男  
代理人 高橋 詔男  
代理人 志賀 正武  
代理人 山崎 哲男  
代理人 松沼 泰史  

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