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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05H
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H05H
管理番号 1330423
審判番号 不服2016-6517  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-02 
確定日 2017-08-01 
事件の表示 特願2012- 7158「プラズマ処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月 1日出願公開、特開2013-149377、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年1月17日の出願であって、平成27年7月9日付けで拒絶理由が通知され、同年9月4日付けで意見書が提出され、同日付けで手続補正がなされ、平成28年1月29日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対して、同年5月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされ、その後、当審において、平成29年1月30日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由1」という。)が通知され、同年3月9日付けで意見書が提出され、同日付けで手続補正がなされ、同年3月27日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由2」という。)が通知され、同年5月17日付けで意見書が提出され、同日付けで手続補正がなされ、同年5月29日付けで、同年5月17日付けで提出された手続補正書に対する手続補正指令がなされ、同年6月1日付けで手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成28年1月29日付けの拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願の請求項1?3に係る発明は、以下の引用文献A及びBに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
A.特開2011-171153号公報
B.特開2010-251708号公報

第3 当審拒絶理由1,2の概要
当審拒絶理由1,2の概要は次のとおりである。
1 当審拒絶理由1の概要
(1)理由(1)
分割素片間に介在される各部材(カバープレート支持具の軸部やガス供給部におけるカバープレートの軸部)と分割素片の間に「所定の幅の隙間」が設定されていることが特定されていない本願発明1?4は、本願の発明の詳細な説明に記載されていないものである。
また、「所定の幅」の具体的大きさが特定されていない本願発明1?4は、本願の発明の詳細な説明に記載されていないものである。
よって、本願発明1?3は発明の詳細な説明に記載されたものでないから、特許法第36条第6項第1号に違反している。
また、本願発明1?3は明確でないから、特許法第36条第6項第2号に違反している。

(2)理由(2)
本願の請求項1?3に係る発明は、以下の引用文献Bに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
B.特開2010-251708号公報(原査定の引用文献Bと同じ文献)

2 当審拒絶理由2の概要
平成29年3月9日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1における「前記カバープレートは、前記処理ガス供給部に対向する部分において、前記カバープレートを下方から支持する・・・」の記載は、明らかな矛盾を含んでおり、意味が不明である。(「前記カバープレートを下方から支持する」は、「前記誘電体カバーを下方から支持する」の誤りと思われる。)
よって、請求項1に係る発明は明確でない。

第4 本願発明
本願の請求項1?3に係る発明(以下、順に「本願発明1」?「本願発明3」という。)は、平成29年6月1日付けで提出された手続補正書に記載された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される次のとおりの発明である。
「【請求項1】
プラズマが発生する処理空間をなす処理室と、該処理室内において前記プラズマに晒される基板と対向して配置される誘電体カバーとを備えるプラズマ処理装置において、
前記誘電体カバーは複数の分割素片が組み合わされて構成され、
隣接する2つの前記分割素片の境目はカバープレートによって覆われ、
各前記分割素片は前記カバープレートによって下方から支持され、
前記隣接する2つの分割素片の境目には第1の所定の幅の隙間が設けられ、
前記カバープレートは、隣接する2つの前記分割素片の全境目の90%以上を覆い、
各前記分割素片は正方形、若しくは矩形の誘電体部材からなり、該誘電体部材の一辺は少なくとも500mm以上であり、
前記カバープレートを支持するカバープレート支持具が、前記カバープレートとは別に設けられ、
処理ガスを供給するガス供給部がさらに設けられ、
前記カバープレートは、前記ガス供給部及び前記処理室の間に介在し、且つ前記ガス供給部及び前記処理室を連通するガス導入穴を有し、
前記カバープレート支持具は、前記カバープレートを下方から支持するフランジ及び軸部を有する断面T字状の部材からなり、
前記カバープレート支持具の軸部及び各前記分割素片の間には第2の所定の幅の隙間が設けられ、
前記カバープレートは、前記処理ガス供給部に対向する部分において、前記誘電体カバーを下方から支持するフランジ及び軸部を有する断面がT字状の部材からなり、
前記カバープレートの軸部及び各前記分割素片の間には第3の所定の幅の隙間が設けられ、
前記第1の所定の幅は、各前記分割素片が熱膨張しても前記隣接する2つの分割素片が当接することがない程度の大きさであり、
前記第2の所定の幅は、各前記分割素片が熱膨張しても前記カバープレート支持具の軸部及び各前記分割素片が当接することがない程度の大きさであり、
前記第3の所定の幅は、各前記分割素片が熱膨張しても前記カバープレートの軸部及び各前記分割素片が当接することがない程度の大きさであることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記誘電体部材の一辺は少なくとも900mm以上であることを特徴とする請求項1記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記誘電体カバーに関して前記基板と反対側に配されて高周波電力が印加される高周波アンテナと、
前記誘電体カバー及び前記高周波アンテナの間に配される誘電体窓と、
前記誘電体窓を支持する梁とをさらに備え、
前記カバープレートは前記梁に取り付けられることを特徴とする請求項1又は2記載のプラズマ処理装置。」

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献B
特開2010-251708号公報(以下「引用例1」という。)には次の事項が記載されている。(下線は当審において付されたものである。)
ア「【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導結合プラズマ処理装置において、処理室の天井部分を構成する窓部材の下面を覆うカバーを固定するためのカバー固定具およびカバー固定装置に関する。」
イ「【0023】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1ないし図4を参照して、本発明の第1の実施の形態に係るカバー固定具を含む誘導結合プラズマ処理装置の構成について説明する。図1は、誘導結合プラズマ処理装置を示す断面図である。図2は、図1における「窓部材」としての誘電体壁およびサスペンダを示す斜視図である。図3は、図1における誘電体壁および高周波アンテナを示す斜視図である。図4は、図1における「カバー」としての誘電体カバーおよび「カバー固定具」としての誘電体カバー固定具を示す底面図である。
【0024】
図1に示した誘導結合プラズマ処理装置1は、例えばFPD用のガラス基板(以下、単に「基板」と記す)Sに対してプラズマ処理を行うものである。FPDとしては、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネセンス(Electro Luminescence;EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル(PDP)等が例示される。
【0025】
誘導結合プラズマ処理装置1は、本体容器2と、この本体容器2内に配置されて、本体容器2内の空間を上下の2つの空間に区画する「窓部材」としての誘電体壁6とによって構成されたアンテナ室4と処理室5とを備えている。アンテナ室4は本体容器2内における誘電体壁6の上側の空間を画定し、処理室5は本体容器2内における誘電体壁6の下側の空間を画定する。従って、誘電体壁6は、アンテナ室4の底部を構成すると共に、処理室5の天井部分を構成する。処理室5は、気密に保持され、そこで基板に対してプラズマ処理が行われる。
【0026】
本体容器2は、上部と底部と4つの側部とを有する角筒形状の容器である。なお、本体容器2は、上部と底部と筒状部とを有する円筒形状の容器であってもよい。本体容器2の材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金等の導電性材料が用いられる。本体容器2の材料としてアルミニウムを用いた場合には、本体容器2の内壁面から汚染物が発生しないように、本体容器2の内壁面にはアルマイト処理が施される。また、本体容器2は接地されている。」
ウ「【0032】
誘導結合プラズマ処理装置1は、更に、誘電体壁6の下面を覆う「カバー」としての誘電体カバー12を備えている。誘電体カバー12は、略正方形形状の上面および底面と、4つの側面とを有する板状をなしている。誘電体カバー12は、誘電体材料によって形成されている。誘電体カバー12の材料としては、例えば、Al_(2)O_(3)等のセラミックスや、石英が用いられる。
【0033】
一例として、誘電体カバー12は、誘電体壁6と同様に4つの部分に分割されている。すなわち、図4に示したように、誘電体カバー12は、第1の部分カバー12A、第2の部分カバー12B、第3の部分カバー12Cおよび第4の部分カバー12Dを有している。第1ないし第4の部分カバー12A,12B,12C,12Dは、それぞれ、誘電体壁6の第1ないし第4の部分壁6A,6B,6C,6Dの下面を覆っている。なお、誘電体カバー12は、4つの部分に分割されていなくてもよい。
【0034】
図4に示したように、誘導結合プラズマ処理装置1は、更に、誘電体カバー12を固定する本実施の形態に係る「カバー固定具」としての誘電体カバー固定具18A,18B1,18B2,18B3,18B4を備えている。後で詳しく説明するが、誘電体カバー12は、誘電体カバー固定具18A,18B1,18B2,18B3,18B4によって固定されている。また、図示しないが、誘電体カバー12には、支持梁16の開口部に対応した複数の開口部が形成されている。
【0035】
基板Sに対してプラズマ処理が行われる際には、アンテナ13に、高周波電源15から誘導電界形成用の高周波電力(例えば、13.56MHzの高周波電力)が供給される。これにより、アンテナ13によって、処理室5内に誘導電界が形成される。この誘導電界は、後述する処理ガスをプラズマに転化させる。
【0036】
本体容器2の外部には、更に、ガス供給装置20が設置されている。ガス供給装置20は、サスペンダ8Aの中空部に挿入されたガス供給管21を介して支持梁16のガス流路に接続されている。ガス供給装置20は、プラズマ処理に用いられる処理ガスを供給するためのものである。プラズマ処理が行われる際には、処理ガスは、ガス供給管21、支持梁16内のガス流路および開口部、ならびに誘電体カバー12の開口部を通して、処理室5内に供給される。処理ガスとしては、例えば、SF6ガスが用いられる。」
エ「【0042】
次に、図4ないし図6を参照して、本実施の形態に係る誘電体カバー固定具について詳しく説明する。図4には、誘電体カバー12および誘電体カバー固定具18A,18B1,18B2,18B3,18B4が示されている。図5は、図4における5-5線で示される位置の断面を示す断面図である。図6は、図4における6-6線で示される位置の断面を示す断面図である。図4において、丸印は、ねじを表している。
【0043】
前述のように、誘電体カバー12は、第1ないし第4の部分カバー12A?12Dを有している。図4において、第1の部分カバー12Aは誘電体カバー12全体の配置領域のうちの左上の領域に配置され、第2の部分カバー12Bは誘電体カバー12全体の配置領域のうちの右上の領域に配置され、第3の部分カバー12Cは誘電体カバー12全体の配置領域のうちの左下の領域に配置され、第4の部分カバー12Dは誘電体カバー12全体の配置領域のうちの右下の領域に配置されている。
【0044】
誘電体カバー12の中央部において、第1ないし第4の部分カバー12A,12B,12C,12Dには、それぞれ、それらを合わせたときに十字形状の開口部となるL字形状の切り欠き部12Aa,12Ba,12Ca,12Daが形成されている。」
オ「【0054】
被固定部18A3は、支持部材である支持梁16との位置関係が変化しないように固定される。具体的には、被固定部18A3は、以下のようにして、支持梁16に対して固定されている。まず、被固定部18A3の上面は、支持梁16の下面に当接している。誘電体カバー固定具18Aは、更に、被固定部18A3を支持梁16に対して固定する複数のねじを備えている。このねじの数は、例えば、図4に示したように8つである。図6には、そのうちの2つのねじ19A1,19A2を示している。図6に示した例では、ねじ19A1,19A2の頭部は被固定部18A3の下方に配置され、ねじ19A1,19A2の軸部は被固定部18A3を貫通して支持梁16に結合している。ねじ19A1,19A2以外のねじも、ねじ19A1,19A2と同様である。
【0055】
図7は、誘電体カバー固定具18Aの固定方法の他の例を示す断面図である。この例では、ねじ19A1,19A2の頭部は支持梁16の上方に配置され、ねじ19A1,19A2の軸部は支持梁16を貫通して被固定部18A3に結合している。ねじ19A1,19A2以外のねじも、ねじ19A1,19A2と同様である。」
カ「【0083】
図11は、図4に対応した図であって、第3の変形例の誘電体カバーおよび誘電体カバー固定具を示す底面図である。第3の変形例の誘電体カバー固定具58A,58B1,58B2,58B3,58B4,58B5,58B6,58B7,58B8,58C1,58C2,58C3,58C4,58D1,58D2,58D3,58D4,58E1,58E2,58E3,58E4は、図4に示した誘電体カバー固定具18A,18B1,18B2,18B3,18B4に代るものである。
【0084】
処理室5側から見た誘電体カバー固定具58Aの形状は十字形状である。処理室5側から見た誘電体カバー固定具58B1?58B8,58C1?58C4の形状は、いずれも長方形である。処理室5側から見た誘電体カバー固定具58D1?58D4の形状は、いずれもL字形状である。処理室5側から見た誘電体カバー固定具58E1?58E4の形状は、いずれもT字形状である。
【0085】
誘電体カバー固定具58Aは、誘電体カバー12の中央部における十字形状の開口部を覆うように配置されている。なお、誘電体カバー固定具58Aには、支持梁16の開口部に対応した開口部が形成されていてもよい。
【0086】
誘電体カバー固定具58B1?58B8,58C1?58C4は、それぞれ、図10に示した誘電体カバー固定具48B1?48B8,48C1?48C4と同じ位置に配置され、誘電体カバー12の下面の一部を支持する。
【0087】
誘電体カバー固定具58D1は、誘電体カバー固定具58B1,58B5を連結するように配置されている。誘電体カバー固定具58D2は、誘電体カバー固定具58B3,58B6を連結するように配置されている。誘電体カバー固定具58D3は、誘電体カバー固定具58B2,58B7を連結するように配置されている。誘電体カバー固定具58D4は、誘電体カバー固定具58B4,58B8を連結するように配置されている。誘電体カバー固定具58D1?58D4は、それぞれ、誘電体カバー12の下面の一部を支持する。」
キ「【0094】
第3の変形例では、処理室5側から見て、誘電体カバー12の下面における外縁全体と、隣接する2つの部分カバーの下面同士の境界全体が、複数の誘電体カバー固定具によって覆われている。そのため、第3の変形例によれば、処理室5側から見て、誘電体カバー12の外周部と支持棚7との間に生じる隙間や、隣接する2つの部分カバーの間に生じる隙間を、完全に覆うことができる。これにより、上記の隙間にプラズマが入り込むことを抑制することができる。その結果、上記の隙間にプラズマが入り込むことによって支持棚7や支持梁16の損傷や異常放電が発生することを抑制することができる。この効果は、特に、各誘電体カバー固定具が、2つの誘電体カバー固定具が水平方向に隣接して配置される際に2つの誘電体カバー固定具の側部同士が噛み合う形状の側部を備えていることにより、顕著に発揮される。
【0095】
第3の変形例における誘電体カバー固定具におけるその他の構成、作用および効果は、図6または図7に示した誘電体カバー固定具と同様である。」
ク「【図1】


ケ「【図4】


コ「【図5】


サ「【図6】


シ「【図7】


ス「【図11】


(2)引用例1に記載された発明(引用発明)の認定
上記(1)サ(【図6】)、シ(【図7】)から、誘導体カバー12A及び12Bの間の開口部が誘導体カバー固定具18Aの被固定部18A3で埋められていること、及び誘導体12A及び12Bは、それぞれ、誘導体カバー固定具18Aの支持部18A1及び18A2で下から支持されていること、が見て取れる。そして、上記(1)キの【0095】における「第3の変形例における誘電体カバー固定具におけるその他の構成、作用および効果は、図6または図7に示した誘電体カバー固定具と同様である。」の記載から、第3の変形例を示す上記(1)ス(【図11】)における誘導体カバー12A及び12Bの間の境界に配置された誘電体カバー固定具58C3についても、誘導体カバー12A及び12Bの間の境界に設けられた隙間が、誘導体カバー固定具58C3の被固定部で埋められ、また、誘導体カバー12A及び12Bは、それぞれ、誘導体カバー固定具の両側の支持部の一方で下から支持されるものといえる。
また、【図6】から、誘電体カバー固定具(【図6】においては18A)が、前記誘電体カバー(【図6】においては12A及び12B)を下方から支持するフランジ及び軸部を有する断面がT字状の部材からなることが見て取れる。また、誘電体カバー固定具は、ねじ19A1及び19A2によって下から取り付けられることが見て取れる。そして、ねじ19A1及び19A2は、フランジ及び軸部を有する断面T字状の部材であるといえる。
よって、引用例1には、次に記載するように、上記【図11】に示された誘導体カバー固定具の第3の変形例を備えたプラズマ処理装置が記載されている。
「本体容器2と、この本体容器2内に配置されて、本体容器2内の空間を上下の2つの空間に区画する『窓部材』としての誘電体壁6とによって構成されたアンテナ室4と処理室5とを備え、アンテナ室4は本体容器2内における誘電体壁6の上側の空間を画定し、処理室5は本体容器2内における誘電体壁6の下側の空間を画定する誘導結合プラズマ処理装置1であって、
誘導結合プラズマ処理装置1は、更に、誘電体壁6の下面を覆う『カバー』としての誘電体カバー12を備え、誘電体カバー12は、第1の部分カバー12A、第2の部分カバー12B、第3の部分カバー12Cおよび第4の部分カバー12Dの4つの部分に分割され、
2つの誘導体カバー(例えば、12A及び12B)の間の境界に設けられた隙間が、誘導体カバー固定具の被固定部で埋められ、また、当該2つの誘導体カバーは、それぞれ、誘導体カバー固定具の両側の支持部の一方で下から支持され、
誘電体カバー12A?Dの下面における外縁全体と、隣接する2つの部分カバーの下面同士の境界全体が、複数の誘電体カバー固定具によって覆われ、そのため、処理室5側から見て、誘電体カバー12A?Dの外周部と支持棚7との間に生じる隙間や、隣接する2つの部分カバーの間に生じる隙間を、完全に覆うことができ、
誘電体カバー12A?Dは、略正方形形状の上面および底面と、4つの側面とを有する板状をなし、誘電体カバー12A?Dは、誘電体材料によって形成され、
誘電体カバー固定具は、更に、被固定部を支持梁16に対して固定する複数の『ねじ19A1及び19A2』を備えており、
本体容器2の外部には、更に、ガス供給装置20が設置されており、ガス供給装置20は、プラズマ処理に用いられる処理ガスを供給するためのものであり、プラズマ処理が行われる際には、処理ガスは、ガス供給管21、支持梁16内のガス流路および開口部、ならびに誘電体カバー12の開口部を通して、処理室5内に供給され、
また、誘電体カバー固定具が、前記誘電体カバーを下方から支持するフランジ及び軸部を有する断面がT字状の部材からなり、
誘電体カバー固定具は、フランジ及び軸部を有する断面T字状の部材である『ねじ19A1及び19A2』によって下から取り付けられる誘導結合プラズマ処理装置1。」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「本体容器2と、この本体容器2内に配置されて、本体容器2内の空間を上下の2つの空間に区画する『窓部材』としての誘電体壁6とによって構成されたアンテナ室4と処理室5とを備え、アンテナ室4は本体容器2内における誘電体壁6の上側の空間を画定し、処理室5は本体容器2内における誘電体壁6の下側の空間を画定する誘導結合プラズマ処理装置1」であって、「更に、誘電体壁6の下面を覆う『カバー』としての誘電体カバー12を備え」る「プラズマ処理装置1」が、本願発明1の「プラズマが発生する処理空間をなす処理室と、該処理室内において前記プラズマに晒される基板と対向して配置される誘電体カバーとを備えるプラズマ処理装置」に相当する。
引用発明の「誘電体カバー12は、第1の部分カバー12A、第2の部分カバー12B、第3の部分カバー12Cおよび第4の部分カバー12Dの4つの部分に分割され」ることが、本願発明1の「前記誘電体カバーは複数の分割素片が組み合わされて構成され」ることに相当する。
引用発明の「2つの誘導体カバー(例えば、12A及び12B)の間の境界に設けられた隙間が、誘導体カバー固定具の被固定部で埋められ」ることが、本願発明1の「隣接する2つの前記分割素片の境目はカバープレートによって覆われ」ることに相当する。
引用発明の「当該2つの誘導体カバーは、それぞれ、誘導体カバー固定具の両側の支持部の一方で下から支持され」ることが、本願発明1の「各前記分割素片は前記カバープレートによって下方から支持され」ることに相当する。
引用発明の「誘電体カバー12A?Dの下面における外縁全体と、隣接する2つの部分カバーの下面同士の境界全体が、複数の誘電体カバー固定具によって覆われ、そのため、処理室5側から見て、誘電体カバー12A?Dの外周部と支持棚7との間に生じる隙間や、隣接する2つの部分カバーの間に生じる隙間を、完全に覆うことができ」ることが、本願発明1の「前記隣接する2つの分割素片の境目には第1の所定の幅の隙間が設けられ、前記カバープレートは、隣接する2つの前記分割素片の全境目の90%以上を覆」うことに相当する。
引用発明の「誘電体カバー12A?Dは、略正方形形状の上面および底面と、4つの側面とを有する板状をなし、誘電体カバー12A?Dは、誘電体材料によって形成され」ることが、本願発明1の「各前記分割素片は正方形、若しくは矩形の誘電体部材からな」ることに相当する。
引用発明の「誘電体カバー固定具は、更に、被固定部を支持梁16に対して固定する複数のねじを備えて」いることが、本願発明1の「前記カバープレートを支持するカバープレート支持具が、前記カバープレートとは別に設けられ」ることに相当する。
引用発明の「本体容器2の外部には、更に、ガス供給装置20が設置されており、ガス供給装置20は、プラズマ処理に用いられる処理ガスを供給するためのものであり、プラズマ処理が行われる際には、処理ガスは、ガス供給管21、支持梁16内のガス流路および開口部、ならびに誘電体カバー12の開口部を通して、処理室5内に供給され」ることが、本願発明1の「処理ガスを供給するガス供給部がさらに設けられ、前記カバープレートは、前記ガス供給部及び前記処理室の間に介在し、且つ前記ガス供給部及び前記処理室を連通するガス導入穴を有し」ていることに相当する。
引用発明の「誘電体カバー固定具は、フランジ及び軸部を有する断面T字状の部材である『ねじ19A1及び19A2』によって下から取り付けられる」ことが、本願発明1の「前記カバープレート支持具は、前記カバープレートを下方から支持するフランジ及び軸部を有する断面T字状の部材からな」ることに相当する。
引用発明の「誘電体カバー固定具が、前記誘電体カバーを下方から支持するフランジ及び軸部を有する断面がT字状の部材からな」ることが、本願発明1の「前記カバープレートは、前記処理ガス供給部に対向する部分において、前記誘電体カバーを下方から支持するフランジ及び軸部を有する断面がT字状の部材からな」ることに相当する。

よって、本願発明1と引用発明とは、
「プラズマが発生する処理空間をなす処理室と、該処理室内において前記プラズマに晒される基板と対向して配置される誘電体カバーとを備えるプラズマ処理装置において、
前記誘電体カバーは複数の分割素片が組み合わされて構成され、
隣接する2つの前記分割素片の境目はカバープレートによって覆われ、
各前記分割素片は前記カバープレートによって下方から支持され、
前記隣接する2つの分割素片の境目には第1の所定の幅の隙間が設けられ、
前記カバープレートは、隣接する2つの前記分割素片の全境目の90%以上を覆い、
各前記分割素片は正方形、若しくは矩形の誘電体部材からなり、
前記カバープレートを支持するカバープレート支持具が、前記カバープレートとは別に設けられ、
処理ガスを供給するガス供給部がさらに設けられ、前記カバープレートは、前記ガス供給部及び前記処理室の間に介在し、且つ前記ガス供給部及び前記処理室を連通するガス導入穴を有し、
前記カバープレート支持具は、前記カバープレートを下方から支持するフランジ及び軸部を有する断面T字状の部材からなり、
前記カバープレートは、前記処理ガス供給部に対向する部分において、前記誘電体カバーを下方から支持するフランジ及び軸部を有する断面がT字状の部材からなるプラズマ処理装置。」
の発明である点で一致し、一方で、 次の各相違点を有する。
(相違点)
(相違点1)
誘電体部材からなる分割素片の大きさについて、本願発明1においては「一辺は少なくとも500mm以上」であるのに対して、引用発明においては、4つに分割された誘電体カバーの1枚当たりの大きさについては特定がない点。
(相違点2)
「第1の所定の幅(隣接する2つの分割素片の境目の隙間の幅)」について、本願発明1においては、「各前記分割素片が熱膨張しても前記隣接する2つの分割素片が当接することがない程度の大きさ」であるのに対して、引用発明(の「2つの誘導体カバー(例えば、12A及び12B)の間の境界に設けられた隙間」)については、大きさについての特定がない点。
(相違点3)
本願発明1においては、「前記カバープレート支持具の軸部及び各前記分割素片の間には第2の所定の幅の隙間が設けられ」、「前記第2の所定の幅は、各前記分割素片が熱膨張しても前記カバープレート支持具の軸部及び各前記分割素片が当接することがない程度の大きさ」であると特定されているのに対して、引用発明においては、「ねじ19A1及び19A2」(本願発明1の「カバープレート支持具」に相当)と「誘電体カバー12」(本願発明1の「分割素片」に相当)との間に隙間を設けることは特定されていない点。
(相違点4)
本願発明1においては、「前記カバープレートの軸部及び各前記分割素片の間には第3の所定の幅の隙間が設けられ」、「前記第3の所定の幅は、各前記分割素片が熱膨張しても前記カバープレートの軸部及び各前記分割素片が当接することがない程度の大きさである」と特定されているのに対して、引用発明においては、「誘電体カバー固定具」(本願発明1の「カバープレート」に相当)の軸部と「誘電体カバー12」(本願発明1の「分割素片」に相当)との間に隙間を設けることは特定されていない点。

(2)相違点についての判断
上記の相違点3について検討すると、「カバープレート支持具の軸部」と「分割素片」の間に「所定の幅の隙間」を設けることについては、原査定で提示された引用文献Aにも記載されておらず、また、それを開示する公知文献を発見することができない。ましてや、当該「所定の幅の隙間」を「各前記分割素片が熱膨張しても前記カバープレート支持具の軸部及び各前記分割素片が当接することがない程度の大きさ」とすることについては、上記の引用文献Aを含む公知文献から、想定し得るものではない。
すなわち、上記相違点3に係る構成を得ることは当業者が容易に想到し得たことではない。

(3)まとめ
以上のとおり、本願発明1は、相違点1,2,4について検討するまでもなく、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということができない。

3 本願発明2?3について
本願発明2?3は、本願発明1をさらに限定した発明であり、上記の相違点3に係る「前記カバープレート支持具の軸部及び各前記分割素片の間には第2の所定の幅の隙間が設けられ」、「前記第2の所定の幅は、各前記分割素片が熱膨張しても前記カバープレート支持具の軸部及び各前記分割素片が当接することがない程度の大きさ」であるという特定事項を備える発明であるから、本願発明1と同様に、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということができない。

第7 原査定についての判断
平成29年6月1日付けで手続補正書が提出されたことにより、請求項1?3は上記「第6」の相違点3に係る「前記カバープレート支持具の軸部及び各前記分割素片の間には第2の所定の幅の隙間が設けられ」、「前記第2の所定の幅は、各前記分割素片が熱膨張しても前記カバープレート支持具の軸部及び各前記分割素片が当接することがない程度の大きさ」であるという特定事項を備えるものとなっており、上記「第6」のとおり、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるということはできない。したがって、原査定を維持することはできない。

第8 当審拒絶理由1の理由(1)及び当審拒絶理由2について
平成29年6月1日付けで手続補正書が提出された結果、これらの拒絶理由は、いずれも解消した。

第9 むすび
以上のとおりであり、原査定の拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に、本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-07-19 
出願番号 特願2012-7158(P2012-7158)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H05H)
P 1 8・ 537- WY (H05H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藤本 加代子  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 森林 克郎
松川 直樹
発明の名称 プラズマ処理装置  
代理人 別役 重尚  

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