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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 G21F 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G21F |
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管理番号 | 1330457 |
審判番号 | 不服2016-14235 |
総通号数 | 213 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-09-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-09-23 |
確定日 | 2017-08-01 |
事件の表示 | 特願2012-201833「熱交換器胴部切断方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 3月27日出願公開、特開2014- 55899、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年9月13日の出願であって、平成28年2月10日付けで拒絶理由が通知され、同年3月29日付けで意見書が提出され、同日付けで手続補正がなされ、同年8月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成28年8月5日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 1 本願請求項1-4に係る発明は、下記の引用文献1-4に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1:特開2011-33349号公報 2:特開平6-142935号公報 3:特開2006-231363号公報 4:特開昭62-118972号公報 第3 審判請求時の補正について 審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。 審判請求時に請求項1に「前記ガスを噴射する切断トーチが設けられた走行装置を前記胴部に設置した軌道により案内することで」という事項を追加する補正は、特許請求の範囲のいわゆる限定的減縮を目的とするものであり、当初明細書の発明の詳細な説明の【0033】に記載されている事項であるから、新規事項を追加するものではない。 そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1-4に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。 第4 本願発明 本願の請求項1-4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明4」という。)は、平成28年9月23日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。 「【請求項1】熱交換器における筒状の胴部を横置きに固定した状態でガス切断する熱交換器胴部切断方法であって、 前記胴部の下側領域において、前記胴部の筒状の径方向に対して交差する方向にガスを噴射させて前記胴部の外側面に当てつつ、前記ガスを噴射する切断トーチが設けられた走行装置を前記胴部に設置した軌道により案内することで前記ガスを前記胴部の外側面に沿って移動させることを特徴とする熱交換器胴部切断方法。 【請求項2】前記胴部の筒状の周方向または前記胴部の筒状の軸方向の少なくとも一方に前記ガスの噴射方向を傾けて前記胴部の筒状の径方向に対して交差する方向に前記ガスを噴射させることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器胴部切断方法。 【請求項3】前記ガスの移動方向の下流側に向けて前記ガスを噴射させることを特徴とする請求項1または2に記載の熱交換器胴部切断方法。 【請求項4】前記熱交換器は原子力発電設備の蒸気発生器であり、横置きにした前記蒸気発生器の胴部を切断することを特徴とする請求項1?3の何れか1つに記載の熱交換器胴部切断方法。」 第5 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について (1)原査定の拒絶の理由に記載された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審において付したものである。以下の引用文献の記載においても同じ。) a「【0001】 本発明は、加圧水型原子力発電プラントの蒸気発生器を解体処理する蒸気発生器の処理方法に関するものである。」 b「【0038】 図3?図6および図12は、本実施形態における蒸気発生器の処理方法の工程の一部を示すとともにこの処理方法を実施する処理設備43の概略構成を示している。 【0039】 処理設備43には、横置きされた蒸気発生器1の全体を覆う外側グリーンハウス45と、伝熱管15の切断を行う切断装置47と、切断装置47の外側を走行する門型クレーン49と、外側グリーンハウス45の内側に移動可能に設置される蒸気発生器1の一部を覆うレーザ防護ハウス51と、が備えられている。 【0040】 外側グリーンハウス45の天井部には、開閉可能な開口部が設けられている。この開口部を通って天井クレーンの荷役フック53が外側グリーンハウス45の内部に入り込むようにされている。 外側グリーンハウス45およびレーザ防護ハウス51には、図示を省略しているが切断作業時に発生するヒューム、ダスト等を吸引して回収する回収ダクトが備えられている。 支持架台55によって床に横置きされた蒸気発生器1を覆うよう、外側グリーンハウス45は設置される。 【0041】 切断装置47には、蒸気発生器1の両側に、その軸線方向Lに延在するように設置されたレール57に沿って走行するフレーム部59と、レーザ光を照射して切断を行うレーザヘッド61とが備えられている。 フレーム部59は、型鋼によって門型に形成されており、その両側の下部に車輪が取り付けられている。 【0042】 レーザヘッド61は、フレーム部59の両側の内側に軸線方向に間隔をあけてそれぞれ2台設置されている。各レーザヘッド61は、軸線方向L、上下方向Hおよび幅方向Bに移動できるように取り付けられている。 レーザヘッド61は、水平面内で揺動可能とされている。 【0043】 フレーム部59には、図示を省略しているが、管支持板27までの距離を計測する計測器が設置されている。この計測器で管支持板27までの距離を円周複数ヶ所で計測し、フレーム部59を管支持板27に平行となるように位置決めする。 また、フレーム部59には、図示を省略しているが、レーザヘッド61から伝熱管15までの距離を計測する計測器が設置されている。この計測器で伝熱管15までの距離を計測し、レーザヘッド61と伝熱管15との位置決めを行う。 これらの計測器は、接触式、非接触式を問わず、公知の構造のものが用いられる。 【0044】 本実施形態における蒸気発生器の処理方法では、まず、図3に示されるように蒸気発生器1が、支持架台55によって横置きされた状態とされる。このとき、蒸気発生器1は、ホット側水室19とコールド側水室21とが幅方向Bに隣り合うようにされている。 次いで、外側グリーンハウス45を設置する。レーザ防護ハウス51が水室9を覆う位置に移動される。 この状態で、ホット側水室19およびコールド側水室21の除染作業、たとえば、ブラスト除染を実施する。その後、伝熱管15の内部の除染作業、たとえば、ブラスト除染を実施する。 【0045】 次いで、上部胴5を内部部材とともに円錐胴7から切り離し、天井クレーンの荷役フック53を用いて外側グリーンハウス45から外部に搬出する。 所定の場所に搬送された上部胴5部は、上部鏡11および上部胴5が所定の大きさにガス切断されつつ取り外される。さらに給水リング31、気水分離器33および湿分分離器35等が取り外され、別途用意された解体場所に搬送され、解体される。 こうして、解体されたものは、必要に応じて除染され、クリアランス装置で検査した後、指定場所に搬出される。 【0046】 蒸気発生器1では、円錐胴7がリング状にガス切断され、荷役フック53を用いて天井クレーンによって取り外される。取り外された円錐胴7は別途用意された場所で細かく裁断され、保管容器に入れられ仮置きされる。 【0047】 次いで、下部胴3および管群外筒17がそれぞれ所定の大きさにガス切断され、荷役フック53を用いて天井クレーンによって取り外される。 これにより、伝熱管群25が露出されることになる。このとき、図4に示されるように支持架台55によって支持される必要がある範囲の下部胴3および管群外筒17は、切断されず残されている。 【0048】 次いで、伝熱管15の切断工程に入る。切断準備作業として切断装置47用のレールを敷設する。レーザ防護ハウス51を切断される部分を覆う位置に移動させる。切断された伝熱管15が落下する範囲をカバーするように収納容器63が設置される。 次いで、切断装置47を伝熱管15の曲部23に対応する位置に移動させる。このとき、図示しない計測器によって管支持板27までの距離を円周複数ヶ所で計測し、フレーム部59を管支持板27に平行となるように位置決めする。 管支持板27から離れる側のレーザヘッド61は、切断方向が曲部23の中心を向くように設定される。 【0049】 この状態で、後述する直管部分と同様に、たとえば、上下方向Hに並ぶ伝熱管15の外側の列から順次内側の列に向かい、各列では下側の伝熱管15から順次上側の伝熱管15に向かいレーザヘッド61から照射されるレーザ光によってレーザ切断する。 【0050】 切断された各伝熱管15の曲部23は自重で下方に落下する。このように消耗品の交換頻度の少ないレーザ切断を用いているので、切断作業中の消耗品の交換時間が減少し、切断作業時間を短縮できる。 また、上下方向Hに並ぶ伝熱管15に対して常に最も下方に位置する伝熱管15が切断されるので、切断された伝熱管15の下方には落下を邪魔する伝熱管15が存在しないことになる。このように、下方に落下を邪魔する伝熱管15が存在しないので、切断された伝熱管15を下方へ確実に落下させることができる。 【0051】 曲部23の切断作業が終了すると、直管部分の伝熱管15の切断作業に入る。切断された伝熱管15が落下する範囲をカバーするように収納容器63が設置される。 収納容器63は、図10および図11に示されるように、上方が開放された略直方体形状をし、上方の開放部分には蓋64で覆われている。蓋64は、幅方向B中心位置に軸方向に延在する開口部66が設けられ、開口部66が幅方向B両端部よりも下方に位置するように傾斜されている。開口部66は、切断される伝熱管15の長さおよび幅よりも十分大きくされている。 収納容器63は、たとえば、パーツフィーダ等の振動体68の上に設置されている。なお、振動体68を用いないようにしてもよい。」 c「【図3】 ![]() 」 d「【図4】 ![]() 」 (2)引用文献1に記載された発明 上記a?dに明記はないが、【図4】から、蒸気発生器1の下胴部3のガス切断は、当該下胴部3の内部に伝熱管15が密に配設されている状態で行われていることから、蒸気発生器1の下胴部3のガス切断は、外側面にガス噴射して、ガスを下胴部3の外側面に沿って移動させて行われるものと認められる。 よって、上記a?dから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「蒸気発生器1が、支持架台55によって横置きされた状態とされ、前記蒸気発生器1の下部胴3が所定の大きさにガス切断される蒸気発生器1の切断方法であって、 下胴部3の外側面にガス噴射して、ガスを下胴部3の外側面に沿って移動させて行われる蒸気発生器1の切断方法。」 2 引用文献2について (1)原査定の拒絶の理由に記載された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。 a「【0001】 【産業上の利用分野】本発明はプラズマ切断方法に係り、特に3次元形状のプレス部品の切断に用いて好適なプラズマ切断方法に関する。」 b「【0012】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明では、母材をプラズマトーチを用いて切断するプラズマ切断方法において、上記母材に対してプラズマトーチが後退角をもって切断を行う際、プラズマトーチを母材の製品となる側に傾けて切断処理を行うことを特徴とするものである。 【0013】 【作用】上記方法によれば、プラズマトーチが後退角をもって母材を切断する場合でも、プラズマトーチは母材の製品となる側に傾けて切断処理を行うため、発生或いは飛散するドロスは母材の廃材側に付着し、製品側に付着することはない。よって、母材の製品側にドロスが付着するのを確実に防止することができる。」 (2)引用文献2に記載の技術事項 上記記載事項から引用文献2には、 「プラズマ切断方法において、発生或いは飛散するドロスは母材の廃材側に付着し、製品側に付着することはないようにするために、上記母材に対してプラズマトーチが後退角をもって切断を行う際、プラズマトーチを母材の製品となる側に傾けて切断処理を行う」技術事項が記載されているといえる。 3 引用文献3について (1)原査定の拒絶の理由に記載された上記引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。 a「【0001】 本発明は、鋼板のレーザ切断法に関し、造船,土木,建築,橋梁,建設機械,タンク,鋼管等の溶接構造物に用いられる厚鋼板の切断法として好適なものに関する。」 b「【0010】 本発明は、鋼板の表面状態に影響されることなく、優れたレーザ切断性が得られる方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0011】 本発明者等は、レーザ切断性を良好にするため、切断性を阻害する要因を詳細に調査し、その結果、溶融プールから放出されるガスのプラズマ化による投入熱量の低下、切断雰囲気の酸素濃度の低下、さらには溶融したドロスの湯流れ性不良によりレーザ切断性が低下すること、及びこれらが、主に、レーザ光線の進行方向前面に形成される溶融池の大きさ(以下、先行メタルの幅)によって影響を受けることを見出した。」 c「【0018】 本発明は、切断の進行方向に対して後退角を取るようにレーザ光線を照射して切断することを特徴とする。 【0019】 図1は、本発明に係るレーザ切断法を模式的に説明する図で、図において1はレーザ光線、2はレーザ切断される鋼板、3は溶融池、lはレーザ光線1の前方で、熱伝導により溶融される先行メタルの幅、aはレーザ光線1の進行方向、θは後退角を示す。 【0020】 レーザ光線1は、(1)レーザの照射によって発生し、鉛直上方に放出されるガスとレーザ光線1の干渉を防止し、(2)レーザ照射部に形成されるキーホール前方において、熱伝導によって溶融するメタル量を少なくするため、後退角θを5°?30°とし、鋼板2を切断する。 【0021】 後退角θは、5°以下の場合、ガスとレーザ光の干渉を防止する効果が得られず、キーホール前方の溶融メタルも通常の切断と差がない。 【0022】 一方、30°以上になると実質的な板厚が大きくなりすぎて切断性を低下させるとともにドロスが切断面に残るようになり著しく切断性を低下させるため、5°?30°とする。 【0023】 後退角5°?30°により、溶融池3へのレーザ入力を低下させるプラズマ化が防止され、切断雰囲気において酸素濃度も低下しにくくなる。 【0024】 また、レーザ光線が直接切断面に照射されやすくなり溶融部の温度の上昇と裏面でのドロス量の減少が達成され、切断部後方に回り込んだ溶融メタルも切断ガス圧によって容易に吹き飛ばされるために切断性が極めて向上する。」 (2)引用文献3に記載の技術事項 上記記載事項から引用文献3には、 「鋼板のレーザ切断法に関し、レーザ光線1は、(1)レーザの照射によって発生し、鉛直上方に放出されるガスとレーザ光線1の干渉を防止し、(2)レーザ照射部に形成されるキーホール前方において、熱伝導によって溶融するメタル量を少なくするため、後退角θを5°?30°とし、鋼板を切断する。」技術事項が記載されているといえる。 4 引用文献4について (1)原査定の拒絶の理由に記載された上記引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。 a「〔発明の利用分野〕 本発明は、使用済原子炉圧力容器の解体方法に係り、特に原子炉圧力容器の長手方向にアークガウジング・ガス切断法等の熱的切断、プラズマアーク切断法等の電気的切断法等により切断し、原子炉圧力容器を解体する方法に関する。」(第1頁右下欄第1?6行) b「〔発明の目的〕 本発明の目的は、上記した従来技術の欠点をなくし、RPVの胴フランジ部の切れ残りをなくすとともにRPVの胴フランジ部および胴部における切断時のドロスの排出を効果的に行うことによりRPVの切断作業を継続的に行うことができる使用済RPVの解体方法を提供することにある。 〔発明の概要〕 要するに本発明は、RPVを長手方向に切断するに際し、当て板に形成されたスタートホールにより切断トーチを斜め下向きにセットし、次いで切断トーチを斜め下向きに保持した状態でRPVの長手力向に切断することによって、RPVにおける切断トーチを配置した側と反対側に切れ残り部が生じないようにするとともに切断ガスによりドロスを斜め下向きに効率よく吹き飛ばすようにしたものである。」(第2頁左下欄第12行?右下欄第8行) (2)引用文献4に記載の技術事項 上記記載事項から引用文献4には、 「原子炉圧力容器の長手方向にアークガウジング・ガス切断法等の熱的切断、プラズマアーク切断法等の電気的切断法等により切断し、原子炉圧力容器を解体する方法に関し、 切断トーチを斜め下向きに保持した状態でRPVの長手力向に切断することによって、RPVにおける切断トーチを配置した側と反対側に切れ残り部が生じないようにするとともに切断ガスによりドロスを斜め下向きに効率よく吹き飛ばすようにした。」技術事項が記載されているといえる。 第6 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、 引用発明の「蒸気発生器1」及び「下部胴3」が、それぞれ、本願発明1の「熱交換器」及び「筒状の胴部」に相当するから、引用発明の「蒸気発生器1が、支持架台55によって横置きされた状態とされ」ることが、本願発明1の「熱交換器における筒状の胴部を横置きに固定した状態」とすることに相当し、また、引用発明の「前記蒸気発生器1の下部胴3が所定の大きさにガス切断される」ことが、本願発明1の「筒状の胴部を横置きに固定した状態でガス切断する」ことに相当する。 引用発明の「下胴部3の外側面にガス噴射して、ガスを下胴部3の外側面に沿って移動させて行われる蒸気発生器1の切断方法。」と、本願発明1の「前記胴部の下側領域において、前記胴部の筒状の径方向に対して交差する方向にガスを噴射させて前記胴部の外側面に当てつつ、前記ガスを噴射する切断トーチが設けられた走行装置を前記胴部に設置した軌道により案内することで前記ガスを前記胴部の外側面に沿って移動させることを特徴とする熱交換器胴部切断方法。」とは、「ガスを噴射させて前記胴部の外側面に当てつつ、前記ガスを前記胴部の外側面に沿って移動させる熱交換器胴部切断方法。」である点で一致する。 よって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点がある。 (一致点) 「熱交換器における筒状の胴部を横置きに固定した状態でガス切断する熱交換器胴部切断方法であって、 ガスを噴射させて前記胴部の外側面に当てつつ、前記ガスを前記胴部の外側面に沿って移動させる熱交換器胴部切断方法。」である点。 (相違点) (相違点1)ガスを噴射させて胴部の外側面に当てる方向について、本願発明1においては「胴部の下側領域において、前記胴部の筒状の径方向に対して交差する方向」であるのに対して、引用発明においては、その点が特定されていない点。 (相違点2)ガスを前記胴部の外側面に沿って移動させる手法について、本願発明1においては「ガスを噴射する切断トーチが設けられた走行装置を前記胴部に設置した軌道により案内することで」行われるのに対して、引用発明においては、その点が特定されていない点。 (2)相違点についての判断 ア 上記相違点1について検討すると、ガス噴射の方向を「胴部の筒状の径方向に対して交差する方向」とすることに関連して、引用文献2?4には、上記の「第5 引用文献、引用発明等」において、それぞれ、「2」の「(2)」、「3」の「(2)」、及び「4」の「(2)」に記載された技術事項が記載されているといえるので、それぞれの技術事項が引用発明に適用できるかについて検討する。 イ 引用文献2に記載された技術事項について 引用文献2に記載された技術事項は、「発生或いは飛散するドロスは母材の廃材側に付着し、製品側に付着することはないようにする」ことを目的とするものであるところ、引用発明は「下部胴3が所定の大きさにガス切断される」ものであって、切断後、全てが廃材となることが想定されているものであるから、切断後に製品側と母材側に分かれるものではない。 よって、ドロスを「製品側に付着することがないように」プラズマトーチを母材の製品となる側に傾けて切断処理を行う引用文献2に記載の技術事項を引用発明に適用する余地はなく、適用の動機付けがないといえる。 ウ 引用文献3に記載された技術事項について 引用文献3に記載された技術事項は、「レーザの照射によって発生し、鉛直上方に放出されるガスとレーザ光線1の干渉を防止し、」その結果として「溶融するメタル量を少なくする」ことを目的とするものであるところ、引用発明は「レーザ光線」を用いるものでないから、引用文献3に記載の技術事項を引用発明に適用する余地はなく、適用の動機付けがないといえる。 エ 引用文献4に記載された技術事項について 引用文献4に記載された技術事項は、「切断トーチを斜め下向きに保持した状態で」「切断することによって、」「ドロスを斜め下向きに効率よく吹き飛ばすようにした」ものであるところ、引用発明は「下胴部3の外側面にガス噴射」するものであって、下胴部3の「下側領域において」は、ガス噴射方向は上向きとなり、「切断トーチを斜め下向きに保持」する引用文献2に記載の技術事項を引用発明に適用して本願発明1の相違点1に係る「(ガスを噴射させて胴部の外側面に当てる方向を)胴部の下側領域において、前記胴部の筒状の径方向に対して交差する方向」とする発明特定事項を得る動機付けがないといえる。 オ 本願発明1の作用効果について そして、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項によって、本願発明1は、本願明細書に記載の「ガス切断により発生したドロスが切断トーチに落下する事態を防ぐことができる。」という顕著な作用効果を奏する。 (3)小括 よって、相違点2について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献2?4に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 2 本願発明2?4について 本願発明2?4は、本願発明1をさらに限定したものであるから、本願発明1と同様に、当業者が引用発明及び引用文献2?4に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明1?4は、引用発明及び引用文献2?4に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-07-19 |
出願番号 | 特願2012-201833(P2012-201833) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G21F)
P 1 8・ 575- WY (G21F) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 後藤 孝平 |
特許庁審判長 |
伊藤 昌哉 |
特許庁審判官 |
森林 克郎 小松 徹三 |
発明の名称 | 熱交換器胴部切断方法 |
代理人 | 特許業務法人酒井国際特許事務所 |