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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01B
管理番号 1330472
審判番号 不服2016-17719  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-28 
確定日 2017-08-01 
事件の表示 特願2012-550246「透明導電基材の製造方法および透明導電基材」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月22日国際公開、WO2013/121556、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成24年2月16日を国際出願日とする出願であって,平成28年3月31日付けで拒絶理由が通知され,平成28年7月4日に意見書と手続補正書が提出され,平成28年7月21日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成28年11月28日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成28年7月21日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者という。」)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項 1乃至6
・引用文献等 1

<引用文献等一覧>
1.特開2011-119142号公報

第3 本願発明
本願請求項1-6に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明6」という。)は,平成28年11月28日に提出された手続補正書による手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
ロール状に巻かれた基材フィルムを繰り出す繰り出し工程と,長手方向に搬送されている前記基材フィルム上に溶媒に金属ナノワイヤを分散させた塗布液を塗布し,ウエット膜を形成する塗布工程と,前記基材フィルムを前記長手方向に搬送する搬送工程と,前記ウエット膜に含まれている溶媒を乾燥除去する乾燥工程を有する透明導電基材の製造方法であって,
前記乾燥工程は,前記ウエット膜に向かって,前記基材フィルムの長手方向と異なる方向であって前記基材フィルムの一側端から他端へ送風を行い,その表面から突出したナノワイヤに送風の風が当たるようにして各金属ナノワイヤの向きを変更させ,各金属ナノワイヤの配向状態がばらばらになっている状態にする工程を有することを特徴とする透明導電基材の製造方法。
【請求項2】
得られた透明導電基材を巻き取る巻取工程をさらに備え,
前記塗布工程において,前記塗布液はスロットダイから押し出されることを特徴とする請求項1に記載の透明導電基材の製造方法。
【請求項3】
金属ナノワイヤの平均長さが1μm以上100μm以下,直径が200nm以下であって,ウエット膜の膜厚が13μm以下に減少した後に該ウエット膜表面の直ぐ上を前記基材フィルムと平行な方向に該ウエット膜に向かって送風を行なうことを特徴とする請求項1または2に記載の透明導電基材の製造方法。
【請求項4】
基材フィルムの長手方向と略垂直方向から送風を行なうことを特徴とする請求項3に記載の透明導電基材の製造方法。
【請求項5】
4?20m/sの風速にて送風を行なうことを特徴とする請求項3に記載の透明導電基材の製造方法。
【請求項6】
30?60℃に調整された送風にて送風を行なうことを特徴とする請求項3に記載の透明導電基材の製造方法。」

第4 引用発明,引用文献等
1.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は重要箇所に対して当審が付した。以下,同様。)。

ア 「【0036】
本発明に係る透明導電基材の製造装置の乾燥部を,図を用いて説明する。
【0037】
図1において,塗布済みの透明導電基材1はまず無風領域2に入る。無風領域2と乾燥領域3は仕切板6で仕切られ,透明導電基材1は下部の隙間から乾燥領域3に進む。ウェブ状の透明導電基材1は,ワインダー(図示せず)とローラ7により,矢印方向に搬送される。乾燥風はノズル5から,透明導電基材1に向かって吹き出される。ノズル5は移動が可能で,ノズルと透明導電基材1の乾燥面の間隔9は調整できる(移動装置は図示せず)。ノズル間隔,ノズル口径は適宜決めることができるが,例えば,ノズル間隔は10mm?500mm,ノズル口径は0.5mm?5mmであることが好ましい。本発明においては,少なくとも3つ以上のノズル5により透明導電基材1は乾燥される。」

イ 「【0044】
(透明導電基材の作製)
18cm幅に断裁した100μmの二軸延伸PETフィルムに12W・min/m^(2)のコロナ放電処理を施し,銀ナノワイヤ分散液AGW-1を銀の目付け量が60mg/m^(2)となるようにシリンジポンプで流量を調整して押し出しコーターに送液して塗布し,図1の乾燥装置で乾燥した。表1の条件となるように乾燥風温度,乾燥風露点,乾燥風圧,スリットとウェブの距離,ライン速度を変化させて各透明導電基材を作製した。」

上記引用文献1の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 18cm幅に断裁した100μmの二軸延伸PETフィルムに12W・min/m^(2)のコロナ放電処理を施し,銀ナノワイヤ分散液AGW-1を銀の目付け量が60mg/m^(2)となるようにシリンジポンプで流量を調整して押し出しコーターに送液して塗布し,乾燥装置で乾燥する透明導電基材の製造方法であって,
製造方法の乾燥部において,塗布済みの透明導電基材1はまず無風領域2に入り,無風領域2と乾燥領域3は仕切板6で仕切られ,透明導電基材1は下部の隙間から乾燥領域3に進み,ウェブ状の透明導電基材1は,ワインダーとローラ7により,矢印方向(図1)に搬送され,乾燥風はノズル5から,透明導電基材1に向かって吹き出される,
透明導電基材の製造方法。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。
a 引用発明の「二軸延伸PETフィルム」,「銀ナノワイヤ分散液」は,それぞれ,本願発明1の「基材フィルム」,「溶媒に金属ナノワイヤを分散させた塗布液」に相当する。
b 引用発明の「銀ナノワイヤ分散液AGW-1を銀の目付け量が60mg/m^(2)となるようにシリンジポンプで流量を調整して押し出しコーターに送液して塗布」する工程は「塗布工程」といえ,本願発明1の「塗布工程」とは,「基材フィルム上に溶媒に金属ナノワイヤを分散させた塗布液を塗布し,ウエット膜を形成する」点で共通する。
c 引用発明の「ウェブ状の透明導電基材1は,ワインダーとローラ7により,矢印方向(図1)に搬送され」る工程は,本願発明1の「前記基材フィルムを前記長手方向に搬送する搬送工程」に相当する。
d 引用発明の「乾燥風はノズル5から,透明導電基材1に向かって吹き出される」工程は「乾燥工程」といえ,本願発明1の「乾燥工程」とは,「前記ウエット膜に含まれている溶媒を乾燥除去する乾燥工程であって,前記乾燥工程は,前記ウエット膜に向かって,前記基材フィルムの長手方向と異なる方向へ送風を行う」点で共通する。

したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「 基材フィルム上に溶媒に金属ナノワイヤを分散させた塗布液を塗布し,ウエット膜を形成する塗布工程と,前記基材フィルムを前記長手方向に搬送する搬送工程と,前記ウエット膜に含まれている溶媒を乾燥除去する乾燥工程を有する透明導電基材の製造方法であって,
前記乾燥工程は,前記ウエット膜に向かって,前記基材フィルムの長手方向と異なる方向へ送風を行う透明導電基材の製造方法。」

(相違点1)
本願発明1は「ロール状に巻かれた基材フィルムを繰り出す繰り出し工程」を有するのに対し,
引用発明ではそのような工程を有するか否かは明らかでない点。
(相違点2)
一致点の「塗布工程」において,
本願発明1では「長手方向に搬送されている前記基材フィルム」に塗布するのに対し,
引用発明ではそのような特定はない点。
(相違点3)
一致点の「乾燥工程」が,
本願発明1では,「前記ウエット膜に向かって,前記基材フィルムの長手方向と異なる方向であって前記基材フィルムの一側端から他端へ送風を行い,その表面から突出したナノワイヤに送風の風が当たるようにして各金属ナノワイヤの向きを変更させ,各金属ナノワイヤの配向状態がばらばらになっている状態にする工程を有する」のに対し,
引用発明では,単に「乾燥風はノズル5から,透明導電基材1に向かって吹き出される」即ち「前記ウエット膜に向かって,前記基材フィルムの長手方向と異なる方向」へ「送風を行う」ものである点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み,まず(相違点3)につき検討する。

本願発明1の「前記基材フィルムの長手方向と異なる方向であって前記基材フィルムの一側端から他端へ」がどの方向を意味するのかについて,本願明細書の
「【0006】
しかしながら,金属ナノワイヤを用いた透明導電基材の課題として,金属ナノワイヤの長軸がフィルムの搬送方向(搬送方向=長手方向=MD)に揃うことがある。金属ナノワイヤの長軸がフィルムのMDに揃うと,MDの表面抵抗値と,MDと垂直の方向(幅方向=短手方向=TD)の表面抵抗値に差(異方性)ができる。すなわち,MDの抵抗値よりもTDの抵抗値が大きくなる。これはMDの導電パスは密に,TDの導電パスは疎になるためであろう。金属ナノワイヤの長軸がフィルムのMDに揃う原因は定かではないが,
i)塗布液を基材フィルム上に塗布する際,液を押し出す力によってナノワイヤが液の流れ(MD)に配向する(液の流れから最も抵抗を受けない方向にナノワイヤが揃う)。
ii)塗布液を基材フィルム上に塗布した後,基材フィルム/塗布液(ウエット膜)を搬送する際に,基材フィルムがMDに動くことでウエット膜中のナノワイヤがフィルムMDに並ぶ。
ということが考えられる(図5参照)。
特許文献1ではこのような課題を解決するために,せん断速度(フィルム搬送速度/スロットダイヘッド先端とフィルムとの間隔)を特定した。しかしながら,フィルムの搬送速度は製造設備(特に乾燥設備)の能力によって制限され,スロットダイヘッド先端とフィルムとの間隔はダイの形状や塗布液の性質により制限されるため,液の性質にあったスロットダイと十分な乾燥能力を有する製造設備でなければ,せん断速度を変更し得る幅は小さく,ナノワイヤの配向状態をバラバラにするためにせん断速度を調整することはできない。」
「【0021】
[透明導電基材の製法]
塗布工程:調整した塗布液を例えばダイコータを用いて基材上に塗布する。塗布液の厚さは特に限定されないが10?30μm程度が望ましい。
搬送工程:塗布工程にてウエット膜が形成された基材フィルムを乾燥工程へ搬送する。搬送手段は特に限定されないが,ロール搬送が一般的である。搬送工程が長い場合,該行程にてウエット膜厚が適度に減少することがある。そのような場合は後述する乾燥工程にてすぐにナノワイヤの向きを変更させる送風を行ってもよい。また搬送工程が短い場合は,ある程度乾燥を行い,ウエット膜厚を減少させた後,ナノワイヤの向きを変更させる送風を行うことが望ましい。
乾燥工程:乾燥方法は特に限定されず,IRヒータ等を用い加熱する方法,乾燥風により加温する方法などを例示することができるが,乾燥炉内の空気が滞留すると溶媒蒸気濃度が上昇し乾燥に時間がかかるので乾燥風を用いることが望ましい。乾燥風は塗布面が荒れることを防止するために,フィルムの進行方向と逆方向に送風することが好ましい。また,乾燥風はフィルム表面から十数?数十cmのところを流れるようにすることが好ましい(図3参照)。なお,乾燥工程における乾燥風は必須ではなく,乾燥工程中に設ける金属ナノワイヤの向きを変更させる工程における風のみで乾燥することが可能である。その場合,乾燥には乾燥風よりもナノワイヤの向きを変更させる風の方の影響が大きい。
【0022】
[金属ナノワイヤの向きを変更させる工程]
乾燥工程中に設ける。
具体的な手段としては,MDと異なる方向から,基材上のウエット膜に向かって送風する。この風の向きはTDが,最も効率よく異方性を改善することができる。基材フィルムを上方から見た場合,風は一側端から他端へ(TDへ)吹くことが最も望ましい〔図4(a)参照〕。この風の中心はウエット膜表面の直ぐ上(1?数cm)を基材と平行な方向に吹くことが望ましい〔図4(b)参照〕。ウエット膜に吹き付けるように吹くと,基材表面の平滑性が乱れる恐れがある。この風の高さは,基材表面(ウエット膜の表面)の平滑性を乱さす,基材表面から突出したナノワイヤに風が当たるように適宜調節する。
この風の風速は4?20m/sが好ましく,特に8?12m/sが好ましい。風速が4m/s未満ではナノワイヤの配向状態を変える効果が乏しく,20m/sを超えると基材表面の平滑性が乱れる恐れがある。
この風の温度は30?60℃が望ましい。風の温度が高いと塗膜が白化する等,外観が悪くなる恐れがある。また風の温度が高いと乾燥時間が短くなり,ナノワイヤの向きを変更させ得るポイントが狭くなる。逆にこの風の温度が低いと,ウエット膜の乾燥に影響しにくくなるため,ナノワイヤの向きを変更させ得るポイントは長くなるが,乾燥時間が長くなるので,雰囲気温度以上,特に30℃以上であることが望ましい。尚,乾燥工程にお
いて乾燥風を用いる場合,この風(ナノワイヤの向きを変える風)の温度と乾燥風の温度が同じ温度であれば,温調設備が一つでよい。
送風時間を短縮する,或いはライン速度を増速するためには,特に予め乾燥風等によってウエット膜の厚みが13μm以下に減少してからナノワイヤの向きを変える風を送風することが望ましく,特にウエット膜の厚みが10μm以下に減少してから送風することが望ましい。また送風はウエット膜が完全に乾燥するまで行ってもよいが,多少水系の溶媒が残っていても,ナノワイヤの自由度が奪われる程度までウエット厚が減少していれば送風を停止してもよい。具体的にはウエット膜の厚みが5μm以下の領域においては送風を停止してもよい。その後必要ならば乾燥風などによる乾燥を行ってもよい。」
の記載及び関連する図面の記載を参酌すれば,本願発明1の「前記基材フィルムの長手方向と異なる方向であって前記基材フィルムの一側端から他端へ」が,「MDと垂直の方向(幅方向=短手方向=TD)」,即ち,「基材フィルムの幅方向」を指すことは明らかである。
これに対し,引用発明は「乾燥風はノズル5から,透明導電基材1に向かって吹き出される」ものであるが,引用文献1の図1も参酌すれば,該乾燥風の送風方向は,平面状の「二軸延伸PETフィルム」の面に直交する方向であると認められる。また,引用文献1には,乾燥風の送風方向として本願発明1の「基材フィルムの幅方向」を選択する動機付けとなる記載は存在しない。
さらに,引用文献1には,乾燥風の送風方向として「基材フィルムの幅方向」を選択することで「その表面から突出したナノワイヤに送風の風が当たるようにして各金属ナノワイヤの向きを変更させ,各金属ナノワイヤの配向状態がばらばらになっている状態にする」ことについて記載も示唆も無い。
そうすると,上記(相違点3)に係る本願発明1の構成は,引用発明1に基づいて当業者が容易に想到し得たものということはできない。

したがって,他の相違点について検討するまでも無く,本願発明1は,当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-6について
本願発明2-6も,本願発明1の「前記ウエット膜に向かって,前記基材フィルムの長手方向と異なる方向であって前記基材フィルムの一側端から他端へ送風を行い,その表面から突出したナノワイヤに送風の風が当たるようにして各金属ナノワイヤの向きを変更させ,各金属ナノワイヤの配向状態がばらばらになっている状態にする工程を有する」と同一の構成を備えるものである。
したがって,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-07-18 
出願番号 特願2012-550246(P2012-550246)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 和田 財太  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 土谷 慎吾
新川 圭二
発明の名称 透明導電基材の製造方法および透明導電基材  
代理人 須藤 晃伸  
代理人 須藤 阿佐子  
代理人 須藤 晃伸  
代理人 須藤 阿佐子  
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