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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F28F
管理番号 1330490
審判番号 不服2015-5254  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-03-18 
確定日 2017-07-12 
事件の表示 特願2013-528501「冷媒導管とその冷媒導管を備えた熱交換器」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 3月22日国際公開、WO2012/034437、平成25年 9月30日国内公表、特表2013-537298〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年6月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2010年9月13日(CN)中国)を国際出願日とする出願であって、平成26年11月13日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成27年3月18日に拒絶査定不服審判が請求され、その後、当審において平成28年9月26日付けで拒絶理由が通知され、同年12月21日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし9に係る発明は、平成28年12月21日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「熱交換器であって、
集流管と、
端部が前記集流管と繋がる熱交換管と、
前記集流管内に延びている冷媒導管と、
を備え、
前記冷媒導管は、
内部に内室が形成された管壁と、
管壁に形成された開口と、
少なくとも一部が、導管の軸方向に対して略傾斜しているように設けられ、前記開口を通る冷媒を案内するための冷媒案内壁部分と、
を備え、
前記冷媒案内壁部分は窪み壁部分であり、前記窪み壁部分は内室に向かって窪んでおり、
前記冷媒導管の円周方向における前記冷媒案内壁部分の少なくとも中間部は、前記冷媒導管の軸方向に沿った断面を有し、前記断面は、少なくとも1つの曲線状の部分を含み、
或いは、前記冷媒導管の軸方向に沿った前記冷媒案内壁部分の別の断面は、少なくとも1つの曲線状の部分を含む、
ことを特徴とする熱交換器。」

第3 引用文献
1.当審の拒絶の理由に引用されたカナダ国特許発明第2040827号明細書(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(訳は当審による。)。

「It is a further object of the invention to provide a heat exchanger for wood pulp dryers which has a better distribution of steam throughout the heat exchanger so that each tube thereof carries approximately the same proportion of steam.」(2頁7-9行)
(本発明の更なる目的は、各々の管がほぼ同じ割合の蒸気を運ぶように、熱交換器全体により良く蒸気を分配する、木材パルプ乾燥機のための熱交換器を提供することである。)

「Referring to Fig. 1, this shows a steam heat exchanger 10, commonly known as a "steam coil". It has a perimeter frame 12 made of galvanized steel in this example, though other materials could be used. The heat exchanger has a first end 14, which is at the top when the heat exchanger is positioned for use, and a second end 16, which is at the bottom in use. Fig. 2 shows an installation of three heat exchangers 10.1, 10.2 and 10.3 which are generally similar to heat exchanger 10. Like parts have like numbers with the addition of ".1", ".2" and ".3" respectively.
There is a plurality of tubes 18 which extend between the ends of the heat exchanger in parallel, spaced-apart relationship to each other. Referring to the tube 18 which is furthest to the left in Fig. 1, it has an inlet end 20 and an outlet end 22. The other tubes are identical.」(4頁17行-28行)
(図1を参照すると、これは一般に「蒸気コイル」として知られている蒸気熱交換器10を示す。他の材料も使用できるが、この例では亜鉛メッキされたスチール製の周囲フレーム12を備える。熱交換器は、使用のために配置されたとき上部に位置する第1の端部14と、使用中に底部に位置する第2の端部16を備える。図2は、熱交換器10に概して類似する3つの熱交換器10.1、10.2、10.3の装置を示す。同様の部分には、「.1」、「.2」、「.3」をそれぞれ付加した同様の番号を付してある。
熱交換器の端部間に互いに間隔をあけて並行に延びる複数の管18を備える。図1で最も左の管18を参照すると、入口端20と出口端22を備えている。他の管も同じである。)

「Heat exchanger 10 also includes a steam inlet header 36 near first end 14. This header is elongated and perpendicular to tubes 18.The tubes are connected to the header which supplies steam to the tubes.・・・Instead, inlet header 36 in this embodiment of the invention is comprised of an inner conduit 38 which is located within an outer conduit 40.」(5頁20-29行)
(熱交換器10は、第1の端部14の近くに蒸気入口ヘッダー36を備えている。このヘッダーは細長く、管18と直交している。管は管に蒸気を供給するヘッダーに接続している。・・・その代わり、本実施例における入口ヘッダー36は外部導管40の中に位置する内部導管38を含んでいる。)

「Inner conduit 38 has a first end 42 and a second end 70. A flange 44 at the first end is used to connect the inner conduit to a source of steam, such as steam pipe 46.2 shown for center heat exchanger 10.2 in Fig. 2.
The inner conduit has a series of openings 56, 58, 60, 62, 64, 66 and 68 in the top thereof. While seven openings are shown for illustrative purposes, the number is not critical and depends in part on their size. As seen in Fig. 7 and 8, the openings of this embodiment are formed by lateral slits and depressions in the top of the inner conduit. Other types of apertures could be substituted.」(6頁6-14行)
(内部導管38は、第1の端部42と第2の端部70を備えている。第1の端部のフランジ44は、例えば、図2に示される中央の熱交換器10.2のための蒸気パイプ46.2のような蒸気源に内部導管を接続するために用いられる。
内部導管は一連の開口56、58、60、62、64、66、68を上部に備えている。説明のため7つの開口が示されているが、数は重要でなく、ある程度大きさに依存する。図7、8に見られるように、この実施例の開口は内部導管の上部の横方向スリットと窪みによって形成される。他のタイプの開口を代用することもできる。)

FIG.1、FIG.2、FIG.7、FIG.8は次のとおりである。


FIG.1を参照すると、管18の端部が外部導管40に繋がっていること、内部導管38が外部導管40の中に延びていることが理解できる。
そうすると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「熱交換器10であって、
外部導管40と、
端部が外部導管40に繋がる管18と、
外部導管40の中に延びている内部導管38と、
を備え、
内部導管38は、蒸気源に接続されるとともに、一連の開口56、58、60、62、64、66、68を上部に備え、
上記開口は内部導管38の上部の横方向スリットと窪みによって形成される
熱交換器10。」

2.当審の拒絶の理由に引用された特開平9-166368号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

「【0007】それ故に本発明の課題は、媒体を均等に分配でき、単純な構成の連通孔によって媒体の排出を円滑にできることによって分流の均一化を計ることができる熱交換器を提供することにある。」

「【0011】図1及び2を参照して、第1実施の形態例の熱交換器は、互いに平行に配置されている一対のヘッダ-パイプ1,2と、これらのヘッダ-パイプ1,2のそれぞれに連通している複数の熱交換用のチューブエレメント(以下チューブという)3と、チューブ3の間に介在されて熱交換用の空気が表面に当たり通過するたフィン4とを有している。
・・・
【0013】一方のヘッダーパイプ1の一方端面には熱媒を一方のヘッダーパイプ1内に導入するための導入管7が挿通されている。他方のヘッダーパイプ2の一方端面には他方のヘッダーパイプ2から熱媒を外に導出するための導出管8が挿通されている。これらの導入管7及び導出管8は同じ方向からヘッッダーパイプ1、2に導入されている。さらに、一方のヘッダーパイプ1の内部には、導入管7に一方端が接続され、一方のヘッダーパイプ1の奥部にまでのびている分岐管7aが接続されている。なお、導入管7と分岐管7aとは、一体のものであってもよい。」

「【0016】媒体の流れは、図2及び図3に示したように、導入管7側から導入された媒体を一方のヘッダーパイプ1内に設置されている分岐管7aに導き、図3に示すように、一方のヘッダーパイプ1を所定のチューブ群に分割した区画A,B,Cにそれぞれ連通部10、11、12を介して分配されて矢印で示すようにチューブ3に導かれる。さらにチューブ3内をU字形(図2では上方向から下方向に流れ再び上方向に流れる)に流れ、冷媒を他方のヘッダーパイプ2に導びき、導出管8から排出される。」

「【0037】図13は、図4に示した一方のヘッダーパイプ1とこのヘッダーパイプ1に挿入されている分岐管7aとの構成の一部を変形した構成例を示している。なお、図13に示した熱交換器においては、図4に示した保持板9a,9bを有していない。
【0038】一方のヘッダーパイプ1には、図4に示したヘッダーパイプ1と同様に分岐管7aが配置されている。分岐管7aには、複数の連通部61a,61b,61cが形成されている。分岐管7aには、、図11及び図12に示した切り欠き部50の形状と近似形状の複数の連通部61a,61b,61cが形成されている。さらに分岐管7aには、複数の連通部61a,61b,61cの長手方向の位置縁側に矢印で示した媒体を偏流するための偏流部62a,62b,62cが形成されている。複数の連通部61a,61b,61cと偏流部62a,62b,62cとは、分岐管7aに少なくとも一つ設ける必要がある。」

「【0042】偏流部62a,62bは連通部61a,61b,61cの縁部分の分岐管7aもしくは分岐管21を少し潰すことによって形成すればよい。
【0043】このように、連通部61a,61b,61cに偏流部62a,62b,62cもしくは邪魔板63a,63bを設けることによって、媒体の排出を円滑に行うことができ、しいては分流均一化を計っている。」

図1、図13は次のとおりである。
【図1】

【図13】


そうすると、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「熱交換器であって、
ヘッダーパイプ1と、
ヘッダーパイプ1に連通している複数の熱交換用のチューブエレメント3と、
ヘッダーパイプ1に挿入されている分岐管7aと、を備え、
分岐管7aには、複数の連通部61a,61b,61cが形成され、
さらに分岐管7aには、複数の連通部61a,61b,61cの長手方向の位置縁側に媒体を偏流するための偏流部62a,62b,62cが形成され、
偏流部62a,62b,62cは連通部61a,61b,61cの縁部分の分岐管7aを少し潰すことによって形成した
熱交換器。」

第4 対比・判断
1.引用発明1との対比・判断
(1)対比
引用発明1の「熱交換器10」、「外部導管40」は、それぞれ、本願発明の「熱交換器」、「集流管」に相当し、引用発明1の「端部が外部導管40に繋がる管18」は、本願発明の「端部が前記集流管と繋がる熱交換管」に相当する。
引用発明1の「内部導管38」は、蒸気源に接続されるところ、「蒸気」と本願発明の「冷媒」は、「熱媒体」の限りで一致するから、引用発明1の「外部導管40の中に延びている内部導管38」と本願発明の「前記集流管内に延びている冷媒導管」とは、「前記集流管内に延びている熱媒体導管」の限りで一致する。
引用発明1の「内部導管38」が、「内部に内室が形成された管壁」を備えることは明らかであり、引用発明1の「一連の開口56、58、60、62、64、66、68」は、本願発明の「管壁に形成された開口」に相当する。
引用発明1の一連の開口を形成する「窪み」は、内部導管38の軸方向に対して傾斜しており、一連の開口を蒸気が通ることは明らかである。そうすると、引用発明1の一連の開口を形成する「窪み」は、本願発明の「内室に向かって窪んで」いる「窪み壁部分」に相当するとともに、本願発明の「冷媒案内壁部分」とは、「少なくとも一部が、導管の軸方向に対して略傾斜しているように設けられ、前記開口を通る熱媒体を案内するための熱媒体案内壁部分」の限りで一致する。
よって、本願発明と引用発明1との一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「熱交換器であって、
集流管と、
端部が前記集流管と繋がる熱交換管と、
前記集流管内に延びている熱媒体導管と、
を備え、
前記熱媒体導管は、
内部に内室が形成された管壁と、
管壁に形成された開口と、
少なくとも一部が、導管の軸方向に対して略傾斜しているように設けられ、前記開口を通る熱媒体を案内するための熱媒体案内壁部分と、
を備え、
前記熱媒体案内壁部分は窪み壁部分であり、前記窪み壁部分は内室に向かって窪んでいる、
熱交換器。」

[相違点1]
熱媒体が、本願発明は「冷媒」であるのに対し、引用発明は「蒸気」である点。
[相違点2]
熱媒体案内壁部分に関し、本願発明は「前記冷媒導管の円周方向における前記冷媒案内壁部分の少なくとも中間部は、前記冷媒導管の軸方向に沿った断面を有し、前記断面は、少なくとも1つの曲線状の部分を含み、或いは、前記冷媒導管の軸方向に沿った前記冷媒案内壁部分の別の断面は、少なくとも1つの曲線状の部分を含む」と特定されているのに対し、引用発明1はそのように特定されていない点。

(2)判断
ア.相違点1について
一般に加熱や冷却に用いられる流体を熱媒体といい、特に、加熱に用いるときは熱媒、冷却に用いるときは冷媒というところ、引用発明1の蒸気は加熱に用いる熱媒といえる。
しかし、熱交換器は、加熱、冷却のいずれにも用いられることが周知であるとともに、引用発明1の熱交換器が、冷却に用いることに特に支障のある構造であるとも認められない。
よって、引用発明1の熱交換器を冷却に用いることとして、熱媒体を蒸気から冷媒に変更し、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ.相違点2について
引用発明1の一連の開口56、58、60、62、64、66、68を形成する「窪み」は、管18の軸方向に沿った断面を有し、その断面の一例が引用文献1のFIG.7に図示されている。図示された断面は、略直線状と認められるが、引用文献1に「他のタイプの開口を代用することもできる」ことが記載されており、特に直線状の断面とする必要性も認められないことから、他の形状とすることは任意になし得たことといえる。
そして、本願発明において「少なくとも1つの曲線状の部分」を含むこととした技術上の意義に関して、本願明細書には、「窪み壁部分23を弧形又は類弧形のものにすることで、冷媒が開口位置を流れる際の抵抗力を低減することに寄与する。」(【0033】)との記載はあるものの、冷媒案内壁部分の軸方向に沿った断面が「少なくとも1つの曲線状の部分」を含む場合に冷媒の抵抗力を低減できるとの技術常識は認められず、また、本願明細書を参照しても、冷媒の抵抗力を低減できることが実際に確認されているとは認められない。
また、流体の流路を設計するにあたって、損失を考慮することは通常のことであるから、引用発明1を具体化するに際しても、一連の開口を形成する「窪み」を、流体抵抗を低減する観点も含めて設計することは当業者が容易に想到し得たことである。
よって、引用発明1の一連の開口を形成する「窪み」について、相違点2に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が容易になし得た設計事項の範囲内のことである。

ウ.まとめ
本願発明が、引用発明1から予測できない格別顕著な効果を奏するものとは認められない。
よって、本願発明は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである

2.引用発明2との対比・判断
(1)対比
引用発明2の「ヘッダーパイプ1」は、本願発明の「集流管」に相当し、引用発明2の「ヘッダーパイプ1に連通している複数の熱交換用のチューブエレメント3」は、本願発明の「端部が前記集流管と繋がる熱交換管」に相当する。
引用文献2に、媒体として冷媒を想定している旨の記載がある(【0016】)ことを勘案すれば、引用発明2の「ヘッダーパイプ1に挿入されている分岐管7a」は、本願発明の「前記集流管内に延びている冷媒導管」に相当する。
引用発明2の「分岐管7a」が「内部に内室が形成された管壁」を備えることは明らかであり、引用発明2の「複数の連通部61a,61b,61c」は、本願発明の「管壁に形成された開口」に相当する。
引用発明2の「偏流部62a,62b,62c」は、分岐管7aを少し潰すことによって形成したものであることも考慮すれば、本願発明の「少なくとも一部が、導管の軸方向に対して略傾斜しているように設けられ、前記開口を通る冷媒を案内するための冷媒案内壁部分」に相当するとともに、本願発明の「内室に向かって窪んで」いる「窪み壁部分」に相当する。
よって、本願発明と引用発明2との一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「熱交換器であって、
集流管と、
端部が前記集流管と繋がる熱交換管と、
前記集流管内に延びている冷媒導管と、
を備え、
前記冷媒導管は、
内部に内室が形成された管壁と、
管壁に形成された開口と、
少なくとも一部が、導管の軸方向に対して略傾斜しているように設けられ、前記開口を通る冷媒を案内するための冷媒案内壁部分と、
を備え、
前記冷媒案内壁部分は窪み壁部分であり、前記窪み壁部分は内室に向かって窪んでいる、
熱交換器。」

[相違点3]
本願発明は「前記冷媒導管の円周方向における前記冷媒案内壁部分の少なくとも中間部は、前記冷媒導管の軸方向に沿った断面を有し、前記断面は、少なくとも1つの曲線状の部分を含み、或いは、前記冷媒導管の軸方向に沿った前記冷媒案内壁部分の別の断面は、少なくとも1つの曲線状の部分を含む」と特定されているのに対し、引用発明2はそのように特定されていない点。

(2)判断
引用発明2の「偏流部62a,62b,62c」は、「分岐管7a」の軸方向に沿った断面を有し、その断面の一例は、引用文献2の図13より略直線状と認められる。
しかし、「偏流部62a,62b,62c」の断面を特に直線状に形成する必要性は認められないから、他の形状とすることは任意になし得たことといえる。
そして、本願発明において「少なくとも1つの曲線状の部分」を含むこととした技術上の意義に関して、本願明細書には、「窪み壁部分23を弧形又は類弧形のものにすることで、冷媒が開口位置を流れる際の抵抗力を低減することに寄与する。」(【0033】)との記載はあるものの、冷媒案内壁部分の軸方向に沿った断面が「少なくとも1つの曲線状の部分」を含む場合に冷媒の抵抗力を低減できるとの技術常識は認められず、また、本願明細書を参照しても、冷媒の抵抗力を低減できることが実際に確認されているとは認められない。
また、流体の流路を設計するにあたって、損失を考慮することは通常のことであるし、引用文献2には、媒体の排出を円滑にできることによって分流の均一化を計ることが記載されている(【0007】)から、引用発明2を具体化するに際して、「偏流部62a,62b,62c」を、流体抵抗を低減する観点も含めて設計することは当業者が容易に想到し得たことである。
よって、引用発明2の「偏流部62a,62b,62c」について、相違点3に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が容易になし得た設計事項の範囲内のことである。
そして、本願発明が、引用発明2から予測できない格別顕著な効果を奏するものとは認められない。
よって、本願発明は、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1又は引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-02-08 
結審通知日 2017-02-14 
審決日 2017-02-27 
出願番号 特願2013-528501(P2013-528501)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F28F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 充  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 窪田 治彦
紀本 孝
発明の名称 冷媒導管とその冷媒導管を備えた熱交換器  
代理人 奥西 祐之  
代理人 田中 光雄  
代理人 山崎 宏  
代理人 山崎 宏  
代理人 奥西 祐之  
代理人 田中 光雄  
代理人 大畠 康  
代理人 大畠 康  

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