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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1330498
審判番号 不服2015-21061  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-11-27 
確定日 2017-07-12 
事件の表示 特願2013-174006「コンテンツライセンス供与のための方法、システム及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 2月13日出願公開、特開2014- 29695〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,2008年6月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年6月19日(以下,「優先日」という。),米国)に国際出願した特願2010-513418号の一部を新たな特許出願とした特願2012-132042号(出願日:平成24年6月11日)の一部を平成25年8月23日に新たな特許出願としたものであって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成25年 9月24日 :翻訳文,手続補正書の提出
平成25年 9月24日 :出願審査請求書,上申書の提出
平成27年 3月30日付け :拒絶理由の通知
平成27年 7月 1日 :意見書,手続補正書の提出
平成27年 7月17日付け :拒絶査定
平成27年11月27日 :審判請求書,手続補正書の提出
平成28年 2月24日 :前置報告
平成28年 5月30日 :上申書の提出
平成28年 8月10日付け :拒絶理由の通知(当審)
平成28年12月12日 :意見書,手続補正書の提出


第2 本願発明

本願の請求項に係る発明は,上記平成28年12月12日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載されたとおりのものであると認められるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,以下のとおりのものである。

「 【請求項1】
ユーザがコンテンツにアクセスするように動作可能な第1装置と通信するライセンス供与サーバであって,前記第1装置によってアクセス可能な前記コンテンツを前記ユーザが第2装置上で使用するためのライセンスを生成するように動作可能なライセンス供与サーバと,を具備し,
前記第2装置は,前記ライセンス供与サーバと通信し,前記第1装置によってアクセス可能な前記コンテンツにアクセスするように動作可能であり,
前記第1装置が,前記第2装置上で前記第1装置によってアクセス可能な前記コンテンツを前記ユーザが使用するための前記ライセンスを,ネットワークを介して前記ライセンス供与サーバに要求する,コンテンツライセンス供与システム。」


第3 引用例

1 引用例1に記載されている技術的事項および引用発明

(1)本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,当審の平成28年8月10日付けの拒絶理由通知において引用された,特開2006-190200号公報(平成18年7月20日公開,以下,「引用例1」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

A 「【技術分野】
【0001】
本発明は,ネットワークにおける情報共有システムに関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットの普及と,電子メール等のインターネットサービスを利用できる携帯電話等の移動情報端末の普及があいまって,移動情報端末に対する情報流通の期待は高まっている。
【0003】
しかし,複数の移動情報端末での同じ情報の共有や同じ情報を異なる複数移動情報端末間で継承するなどの情報流通をより活発にさせるためには移動情報端末の数的拡大が必須条件でもあるが,その数的拡大を阻害している原因の一つに情報利用の経済的負担の問題がある。」

B 「【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の情報共有システムは,オーナーがライセンスを有する電子コンテンツを他のユーザと共有するための情報共有システムであって,オンラインで,オーナーからの情報共有のための共有ライセンスの発行の請求を受け付ける請求受け付け手段と,該取得した共有ライセンスに基づき,オンラインで,他のユーザの端末に情報共有するためのライセンスを付与する共有ライセンス付与手段と,該共有ライセンスに基づき,他のユーザの端末に該電子コンテンツをオンラインで送信する電子コンテンツ送信手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば,著作権の保護を行いながら,異なる端末間でデータを共有するシステムを提供でき,且つ,情報流通サービスの普及を促すことができる。」

C 「【0029】
今日,一人が複数の情報端末を所有していることが当たり前になってきているが,異なった端末を場所・時間・状況に応じて使い分けて利用する際に,現在,ある端末に一端ダウンロードしたコンテンツを利用途中(閲覧中の地図情報など)で異なる別の端末に継承させることが出来ない。
…(中略)…
【0031】
本発明では,ある端末に一端ダウンロードしたコンテンツを異なる端末に継承することを実現することにより,カーナビで利用した駐車場までの情報を降車と同時に所有している携帯電話に継承することで,さらに駐車場からハイキングコースやレストランなどまでの道案内情報のシームレスな継続利用とコンテンツ利用料金などの経済的負担をなくすことができる。」

D 「【0051】
以下に,本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
図1は,コンテンツアクセスライセンスを共有する場合の制御シーケンス図(a)と決済シーケンス図(b)である。
…(中略)…
【0053】
端末Aがライセンスのオーナーとし,端末B,Cがライセンスを共有する端末とする。端末Aからライセンス共有要求が,グループ指定あるいは個別指定で送られてくると,ネットワークを介して,ASP(Application Service Provider)に通知される。ASPがこれに対し,端末Aに応答すると,ASPはコンテンツプロバイダに端末A,B,Cの間でのライセンスの共有要求を送信する。認められると,コンテンツプロバイダからASPに,共有を認める旨の通知とライセンス付きコンテンツが送られる。ASPは端末Aに対し,ライセンスを提供すると共に,端末B,Cも呼び出して,ライセンスを提供する。正常にライセンスが提供されると,結果通知が端末Aになされ,処理を終了する。」

(2)ここで,引用例1に記載されている事項を検討する。

ア 上記Aの段落【0001】,【0002】の「本発明は,ネットワークにおける情報共有システムに関する。」,「インターネットの普及と,電子メール等のインターネットサービスを利用できる携帯電話等の移動情報端末の普及があいまって,移動情報端末に対する情報流通の期待は高まっている。」との記載,上記Bの段落【0013】の「本発明の情報共有システムは,オーナーがライセンスを有する電子コンテンツを他のユーザと共有するための情報共有システムであって,」との記載からすると,インターネット等の「ネットワーク」における,オーナーがライセンスを有する電子コンテンツを他のユーザと共有するための「情報共有システム」が読み取れる。
また,上記Dの段落【0053】の「端末Aがライセンスのオーナーとし,端末B,Cがライセンスを共有する端末とする。端末Aからライセンス共有要求が,グループ指定あるいは個別指定で送られてくると,ネットワークを介して,ASP(Application Service Provider)に通知される。ASPがこれに対し,端末Aに応答すると,ASPはコンテンツプロバイダに端末A,B,Cの間でのライセンスの共有要求を送信する。」との記載からすると,オーナーがライセンスを有する電子コンテンツを他のユーザと共有するための「情報共有システム」の態様として,ライセンスのオーナーとしての「端末A」及び,「端末A」とライセンスを共有する,他のユーザの「端末B,C」と,インターネット等の「ネットワーク」を介して通信可能な「ASP(Application Service Provider)」を含む「情報共有システム」が読み取れる。
加えて,上記Dの段落【0053】の「認められると,コンテンツプロバイダからASPに,共有を認める旨の通知とライセンス付きコンテンツが送られる。」との記載からすると,「ASP(Application Service Provider)」はさらに,コンテンツ送信元であって,ライセンス発行元である「コンテンツプロバイダ」に接続されることが読み取れるから,引用例1には,
“ライセンスのオーナーとしての端末Aと,
前記端末Aとライセンスを共有する,他のユーザの端末B,Cと,
前記端末A及び前記端末B,Cからインターネット等のネットワークを介して通信可能なASP(Application Service Provider)と,
前記ASPに接続され,コンテンツ送信元であって,ライセンス発行元であるコンテンツプロバイダと,を具備”する“情報共有システム”
が記載されていると解される。

イ 上記Bの段落【0013】の「オンラインで,オーナーからの情報共有のための共有ライセンスの発行の請求を受け付ける請求受け付け手段と,」との記載,上記Dの段落【0053】の「端末Aからライセンス共有要求が,グループ指定あるいは個別指定で送られてくると,ネットワークを介して,ASP(Application Service Provider)に通知される。ASPがこれに対し,端末Aに応答すると,ASPはコンテンツプロバイダに端末A,B,Cの間でのライセンスの共有要求を送信する。」との記載からすると,ライセンス共有要求が端末AからASPに通知され,さらに,ASPからコンテンツプロバイダに送信されることが読み取れるから,引用例1には,
“前記端末Aからライセンス共有要求が,グループ指定あるいは個別指定で送られてくると,ネットワークを介して,前記ASPに通知され,
前記ASPは前記コンテンツプロバイダに前記端末A,B,Cの間でのライセンスの共有要求を送信”すること
が記載されていると解される。

ウ 上記Dの段落【0053】の「認められると,コンテンツプロバイダからASPに,共有を認める旨の通知とライセンス付きコンテンツが送られる。ASPは端末Aに対し,ライセンスを提供すると共に,端末B,Cも呼び出して,ライセンスを提供する。正常にライセンスが提供されると,結果通知が端末Aになされ,処理を終了する。」との記載からすると,コンテンツプロバイダにより端末A,B,Cの間でのライセンスの共有要求が認められると,コンテンツプロバイダはASPに対し,共有を認める旨の通知とライセンス付きコンテンツを送信し,それに続いて,ASPは端末Aにライセンスを提供すると共に,端末B,Cにもライセンスを提供することが読み取れるから,引用例1には,
“前記コンテンツプロバイダにより前記共有要求が認められると,コンテンツプロバイダはASPに,共有を認める旨の通知とライセンス付きコンテンツを送信し,
前記ASPは前記端末Aに対し,ライセンスを提供すると共に,前記端末B,Cも呼び出して,ライセンスを提供する”こと
が記載されていると解される。

(3)以上,ア乃至ウの検討によれば,引用例1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「 ライセンスのオーナーとしての端末Aと,
前記端末Aとライセンスを共有する,他のユーザの端末B,Cと,
前記端末A及び前記端末B,Cからインターネット等のネットワークを介して通信可能なASP(Application Service Provider)と,
前記ASPに接続され,コンテンツ送信元であって,ライセンス発行元であるコンテンツプロバイダと,を具備し,
前記端末Aからライセンス共有要求が,グループ指定あるいは個別指定で送られてくると,前記ネットワークを介して,前記ASPに通知され,
前記ASPは前記コンテンツプロバイダに前記端末A,B,Cの間でのライセンスの共有要求を送信し,
前記コンテンツプロバイダにより前記共有要求が認められると,コンテンツプロバイダはASPに,共有を認める旨の通知とライセンス付きコンテンツを送信し,
前記ASPは前記端末Aに対し,ライセンスを提供すると共に,前記端末B,Cも呼び出して,ライセンスを提供する,情報共有システム。」


2 引用例2に記載されている技術的事項

本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,当審の平成28年8月10日付けの拒絶理由通知において引用された,特開2003-58657号公報(平成15年2月28日公開,以下,「引用例2」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

E 「【0012】
【発明の実施の形態】以下,本発明の実施の形態について,図1から図5を用いて説明する。図1は,本発明の実施形態に係るコンテンツ配信システム19の構成を示すブロック図である。コンテンツ配信システム19は,映像,ゲームおよび著作物などのコンテンツのライセンス(=コンテンツ利用権)を管理サーバ1が集中管理する通信配信システムであって,管理サーバ1,ユーザ端末11?13および通信ネットワーク18から構成される。
【0013】<管理サーバ1>管理サーバ1は,ハードディスクなどからなる3つのデータベース(ライセンス情報データベース2,ユーザデータベース3,コンテンツデータベース4)と,プログラムなどによって実現される6つの処理部(暗号部5,認証部6,権利管理部7,チケット生成部8,配信部9,通信部10)を備え,ユーザからのコンテンツ配信要求に対してコンテンツを配信するとともに,配信されたコンテンツをユーザが利用できるようにするライセンスチケットを,ユーザからの要求に応じて発行する。」

3 参考文献1に記載されている技術的事項

本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,特表2005-515526号公報(平成17年5月26日公表,以下,「参考文献1」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

F 「【0224】
公正な使用のサポート
図15を参照して,本発明のクライアント・システム1503を,所有者のメディア資産のための一種の「本拠地」と想像してみる。所有者が,自分の携帯型のMP3プレーヤ1504に,歌のコピーを得たいと思えば,彼は,いくつかの方法を持つ。しかしながら,まず最初に,彼は,クライアント・システム1503を登録するのとほとんど同じように,本発明のサービス1501に,MP3プレーヤ1504の所有権を登録する必要がある。
【0225】
各ユーザ・デバイス1504に対して,なんらかの形式のセキュアなオーセンティケーション能力が,用いられると仮定する。そうすると,本発明が,どのように働くかを心に描くことは,簡単なことである。所有者は,デバイス1504上への歌のコピーを要求し,本発明のサービス1501は,ライセンス・データベース1502を用いて,デバイス1504が,その所有者に登録されていること,および,その所有者が,その歌に対するライセンスを持っていることをチェックする。ひとたび,その情報が実証されれば,本発明のサービス1501は,ダウンロードによる場合とほとんど同じように,その歌を,セキュア・サーバ1505から,デバイス1504上で利用可能にする。
…(中略)…
【0227】
所有者は,2つ以上のクライアント・システム1503, 1506を所有していてもよい。所有者は,本発明のサービス1501に,それらの自分のクライアント・システムを登録する。サービス1501は,各クライアント・システム1503, 1506に,その所有者によって所有されている互いに他方のクライアント・システムに対するオーセンティケーション情報を供給する。これは,クライアント・システム1503, 1506が,サービス1501の必要なしに,互いにオーセンティケートすることを可能にする。」

4 参考文献2に記載されている技術的事項

本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,特開2004-303111号公報(平成16年10月28日公開,以下,「参考文献2」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

G 「【0026】
図1は実施形態のライセンス管理方法を適用しうるコンテンツ配信システム(著作権管理システム)のシステム構成例を示す図である。
【0027】
図1において,10はライセンス管理装置,20aおよび20bおよび20cは再生端末装置,31はライセンスサーバ,32はコンテンツ配信サーバ,33はポータルサーバ,40はルータ,50は有線あるいは無線を用いたホームネットワーク,60は有線あるいは無線を用いた公衆通信網あるいは専用通信網である。
【0028】
ライセンスサーバ31は,暗号化されてライセンス管理装置10や再生端末装置20a?20cに配信されるコンテンツに対するライセンスを管理し,ライセンス管理装置10からの要求に応じてライセンスを送信する機能を有する。
【0029】
コンテンツ配信サーバ32は,暗号化されたコンテンツをライセンス管理装置10あるいは再生端末装置20に配信するための機能を有しており,コンテンツ配信サーバ32から配信されるコンテンツのコンテンツ鍵はライセンスサーバ31で管理される。」


第4 対比

1 本願発明と引用発明とを対比する。

(1)本願発明と引用発明とを対比すると,引用発明の「ライセンス」は「コンテンツ」を端末で使用するためのものであるから,引用発明の「コンテンツ」,「ライセンス」はそれぞれ,本願発明の「コンテンツ」,「ライセンス」に相当することは明らかである。
また,引用発明の「端末A」は,ライセンスオーナーの端末であり,ユーザがコンテンツにアクセスするように動作可能な端末であるといえるから,本願発明の「第1装置」に相当するといえる。
加えて,引用発明では,「端末A」が他のユーザの「端末B,C」とのライセンスの共有を要求することから,他のユーザの「端末B,C」がネットワークを介してコンテンツを使用することは自明であるから,引用発明の「端末B,C」は本願発明の「第2装置」に相当するといえる。

(2)引用発明では,「ASP(Application Service Provider)」はネットワークを介して端末A及び端末B,Cと通信可能に接続され,端末Aからライセンス共有要求を受けると「コンテンツプロバイダ」に送信し,「コンテンツプロバイダ」により共有要求が認められると,端末Aに対し,ライセンスを提供すると共に,端末B,Cも呼び出して,ライセンスを提供するところ,端末A及び端末B,Cからみれば,ネットワークを介して直接通信可能な「ASP」が「コンテンツプロバイダ」の機能を含んだ,ライセンスを提供するプロバイダサーバ群として動作しているといえる。
そうすると,引用発明の「ASP」及び「コンテンツプロバイダ」からなる構成,と本願発明の「ライセンス供与サーバ」とは,ライセンスを生成する“プロバイダサーバ”である点で一致し,引用発明と本願発明とは,“第1装置と通信しているプロバイダサーバであって,前記コンテンツを前記第1装置と第2装置とで使用するためのライセンスを生成するように動作可能なプロバイダサーバ”を具備する点で共通するといえる。

(3)引用発明では,「ASP」は「端末A及び前記端末B,Cからインターネット等のネットワークを介して通信可能」であるところ,上記(1),(2)での検討から,引用発明の「端末A」,「端末B,C」はそれぞれ,本願発明の「第1装置」,「第2装置」に相当し,引用発明の「ASP」及び「コンテンツプロバイダ」と本願発明の「ライセンス供与サーバ」とは,“プロバイダサーバ”である点で一致し,「端末B,C」は「端末A」が「ASP」を介してアクセス可能な「コンテンツ」にアクセス可能であることは明らかであるから,引用発明と本願発明とは,“第2装置は,前記プロバイダサーバと通信しており,前記第1装置によってアクセス可能な前記コンテンツにアクセスするように動作可能であ”る点で共通するといえる。

(4)引用発明では,「端末Aからライセンス共有要求が,グループ指定あるいは個別指定で送られてくると,前記ネットワークを介して,前記ASPに通知され」るところ,上記(2)での検討から,引用発明の「ASP」及び「コンテンツプロバイダ」と本願発明の「ライセンス供与サーバ」とは,“プロバイダサーバ”である点で一致することから,引用発明と本願発明とは,“第1装置が,前記コンテンツを前記第1装置と前記第2装置とで使用するための前記ライセンスを,ネットワークを介して前記プロバイダサーバに要求する”点で共通するといえる。

2 以上から,本願発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。

<一致点>

「 ユーザがコンテンツにアクセスするように動作可能な第1装置と,
前記コンテンツを使用する第2装置と,
前記第1装置と通信しているプロバイダサーバであって,前記コンテンツを前記第1装置と第2装置とで使用するためのライセンスを生成するように動作可能なプロバイダサーバと,を具備し,
前記第2装置は,前記プロバイダサーバと通信しており,前記第1装置によってアクセス可能な前記コンテンツにアクセスするように動作可能であり,
前記第1装置が,前記コンテンツを前記第1装置と前記第2装置とで使用するための前記ライセンスを,ネットワークを介して前記プロバイダサーバに要求する,コンテンツライセンス供与システム。」

<相違点1>
プロバイダサーバの構成に関し,本願発明では,「ライセンス供与サーバ」のみでプロバイダサーバを構成するのに対して,引用発明では,「ASP」と「コンテンツプロバイダ」とからプロバイダサーバ群を構成する点。

<相違点2>
ライセンスに関し,本願発明では,「第1装置によってアクセス可能な前記コンテンツを前記ユーザが第2装置上で使用するためのライセンス」であるのに対して,引用発明では,オーナー端末Aと,他のユーザの端末B,Cが共有してコンテンツを使用するためのライセンスであって,当該ライセンスに係る使用可能なコンテンツの範囲について明記されていない点。


第5 当審の判断

上記相違点1,2について検討する。

1 相違点1について

引用発明では,端末A及び端末B,Cからみれば,ネットワークを介して直接通信可能な「ASP」が「コンテンツプロバイダ」の機能を含んだプロバイダサーバとして動作しているといえる。
また,複数のユーザ端末にネットワークを介して接続する管理サーバが,ライセンス要求の受け付け,ライセンスの発行,ライセンス認証を統合的に行うことは,例えば,引用例2(上記Eを参照)に記載されるように当該技術分野における周知技術であり,そのようなライセンスに係る,要求受け付け,発行,認証の機能を,「ASP」と「コンテンツプロバイダ」のような複数のサーバにより実現するか,「ライセンス供与サーバ」のような1つのサーバにより実現するかは,当業者が必要に応じて選択可能な設計的事項である。
そうすると,引用発明において,ASPとコンテンツプロバイダとの機能を統合して,適宜,ライセンス供与サーバを構成し,当該ライセンス供与サーバが両者の機能を実現することは,当業者が容易に想到し得たことである。

2 相違点2について

引用発明では,端末A,B,C間でライセンスが共有されるところ,共有後に異なる端末の間で使用可能なコンテンツの範囲を同一にすることは普通に行われている。
また,引用例1(上記Cを参照)には,情報共有システムの別の態様として,一人が複数の情報端末を所有している場合にも異なる端末でコンテンツの利用を継承することができる旨が記載されており,引用発明の態様を,ライセンスオーナーが所有する複数の端末の間でライセンスを共有可能に設計変更することへの動機が認められる。
そして,同一ユーザが所有する複数の端末がライセンスを共有し,同一ユーザが所有する異なる端末で同じコンテンツを使用可能とする旨の技術は,例えば,参考文献1(上記Fを参照),参考文献2(上記Gを参照)に記載されるように当該技術分野における周知技術であった。
そうすると,引用発明において,他のユーザの端末B,Cがオーナー端末Aと共有してコンテンツを使用するためのライセンスに代えて,適宜,ユーザの第1装置によってアクセス可能なコンテンツについて,前記ユーザが所有する第2装置上で使用するためのライセンスとすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

3 小括

上記で検討したごとく,相違点1,2に係る構成は当業者が容易に想到し得たものであり,そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本願発明の奏する作用効果は,引用発明,及び,引用例2,参考文献1,参考文献2に記載の当該技術分野の周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。


第6 むすび

以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-02-01 
結審通知日 2017-02-07 
審決日 2017-02-28 
出願番号 特願2013-174006(P2013-174006)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 和田 財太  
特許庁審判長 高木 進
特許庁審判官 須田 勝巳
辻本 泰隆
発明の名称 コンテンツライセンス供与のための方法、システム及び装置  
代理人 奥村 元宏  
代理人 福原 淑弘  
代理人 井関 守三  
代理人 蔵田 昌俊  

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