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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1330597 |
審判番号 | 不服2016-12769 |
総通号数 | 213 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-09-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-08-24 |
確定日 | 2017-07-20 |
事件の表示 | 特願2014-520028「半導体装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月12日国際公開、WO2013/183671〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成25年6月5日(優先権主張 2012年6月8日)を国際出願日とするものであって、手続の概要は以下のとおりである。 拒絶理由通知 :平成28年 1月28日(起案日) 意見書 :平成28年 4月 7日 手続補正 :平成28年 4月 7日 拒絶査定 :平成28年 5月16日(起案日) 拒絶査定不服審判請求 :平成28年 8月24日 2.本願発明 本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成28年4月7日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「 【請求項1】 上金型及び下金型を有するコンプレッションモールドを用いたコンプレッション成型方式により半導体装置を製造する製造方法であって、 半導体素子を封止する封止材を付与し、前記半導体素子と対向する金型にリリースフィルムを設けて前記上金型と前記下金型とにより前記封止材を硬化させる工程を含み、 前記リリースフィルムにおける前記封止材との接触側に、電磁波を遮蔽するための遮蔽材料が予め設けられた前記リリースフィルムを前記上金型に設け、 前記封止材を硬化させる工程において前記封止材に前記遮蔽材料を転写することを特徴とする半導体装置の製造方法。」 3.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開2007-287937号公報(平成19年11月1日公開、以下「引用例」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。) (1)「【0001】 本発明は、通信機器周辺での使用に耐え得る樹脂封止型半導体装置及びその製造方法に関し、特に、半導体封止用樹脂の外周部の少なくとも一部に電磁波シールド樹脂部を有する樹脂封止型半導体装置及びその製造方法に関する。」 (2)「【0015】 (第1の実施形態) 図1は、本発明の樹脂封止型半導体装置を製造する場合の樹脂封止の操作を時系列に示したものである。ここでは、片面封止法によるBGAの製造を例とし、移送成形(トランスファー成形)による封止について示し、図1において、(a)は樹脂封止前、(b)は樹脂封止中、(c)は樹脂封止後の半導体装置の断面と周辺部材の断面図を示したものである。なお、上下の金型と担体フィルムとは便宜上、空間を空けて示し、これは以下の実施形態の説明においても同様である。 【0016】 配線基板1に搭載された半導体素子2に、信号接続のためにボンディングワイヤー3が配線基板1から伸びて接続されている。この配線基板1の下には、移送成形用の下金型4があり、上方には移送成形用の上金型5があり、また、上金型5と配線基板1との間には、所定の部分に、硬化前(B-ステージ)の電磁波シールド用樹脂6を塗布した担体フィルム7がある。 【0017】 樹脂封止前の状況では、金型4,5は、硬化に必要な温度まで加熱されており、担体フィルム7は、減圧口により上金型5に固定されている(図1(a))。上下の金型を締めて固定し、次に、ゲート口8から予備加熱された半導体封止用樹脂9を半導体素子部に注入し(図1(b))、エアベント部10にまで到達したら、半導体封止用樹脂9を加熱硬化して成形すると同時に、担体フィルム表面に形成されたB-ステージ状態の電磁波シールド用樹脂6を半導体封止用樹脂の外周部に転写し、かつ硬化させる。金型4,5を外し、配線基板1の裏側に金属ボールを接続し、個々のパッケージを図に示した切断線11でカットして電磁波シールド樹脂部を有するBGAパッケージを製造することができる(図1(c))。」 (3)「【0022】 このようなベース樹脂、例えばKE-シリーズ等の半導体封止用樹脂を、アセトン等の溶媒に溶かして、金属材料、カーボン材料、フェライト材料等からなる電磁波シールド用添加剤を練り込み、適当な粘度になるまで溶媒を気散させてペーストとし、担体フィルムに塗布して、さらに溶媒を気散させて乾かし、B-ステージ状態の樹脂とすることができる。」 (4)「【0030】 (第3の実施形態) 図3は、本発明の樹脂封止型半導体装置を製造する場合の樹脂封止の操作を時系列に示したものである。ここでは、片面封止によるBGAの製造を例とし、第1の実施形態とは異なり、圧縮成形による封止について示した。図3において、(a)は樹脂封止前、(b)は樹脂封止中、(c)は樹脂封止後の半導体装置の断面と周辺部材の断面図を示したものである。なお、この実施形態で使用する材料等は、第1の実施形態と同じである。 【0031】 配線基板41に搭載された半導体素子42に、信号接続のためにボンディングワイヤー43が配線基板41から伸びて接続されている。この配線基板41の下には、圧縮成形用の下金型44があり、上方には圧縮成形用の上金型45があり、また、上金型45と配線基板41との間には、所定の部分に、硬化前(B-ステージ状態)の電磁波シールド樹脂部46が形成された半導体封止用樹脂シート47とフィルム48がある。 【0032】 樹脂封止前の状況では、上下金型44,45は、硬化に必要な温度まで加熱されており、半導体封止用樹脂シート47は、配線基板41及び半導体素子42の上に積層された状態で成形前に予備加熱されている(図3(a))。半導体封止用樹脂シート47が、十分に加熱され溶融したら、上金型45が下降させて金型を締め、半導体素子42を、半導体封止用樹脂を加熱硬化させると同時に電磁波シールド樹脂部46も加熱硬化させることで樹脂封止する(図3(b))。金型44,45を外し、配線基板41に金属ボールを接続し、個々のパッケージを図に示した切断線49でカットしてBGAパッケージを製造することができる(図3(c))。 【0033】 なお、半導体封止用樹脂シート47は、図示したように、電磁波シールド用樹脂部を半導体封止用樹脂の外周部の一部に形成されるようにしたものであればよく、これを全面に形成してもよい。また、この他に、半導体封止用樹脂からなるシートと電磁波シールド樹脂からなるシートを複数枚組み合わせて積層した多層樹脂シートとして形成することができ、電磁波シールド層と半導体封止用樹脂層をそれぞれ含んでいれば何層でも構わない。多層樹脂シートとして構成されるシートの究極は、片表面が電磁波シールド機能を持ち、もう一方の面が絶縁機能を持つ傾斜機能材料である。また、フィルム48は、第1の実施形態の担体フィルムと同じものである。」 上記摘示事項及び図面の記載から以下のことがいえる。 (a)引用例には、「半導体封止用樹脂の外周部の少なくとも一部に電磁波シールド樹脂部を有する樹脂封止型半導体装置の製造方法」が記載されている(摘示事項(1))。 (b)第1の実施形態は、移送成形(トランスファー成形)による封止である。半導体素子2が搭載された配線基板1の下には、移送成形用の下金型4があり、上方には移送成形用の上金型5があり、また、上金型5と配線基板1との間には、所定の部分に、硬化前(B-ステージ)の電磁波シールド用樹脂6を塗布した担体フィルム7がある。樹脂封止前の状況では、担体フィルム7は、減圧口により上金型5に固定されている。上下の金型を締めて固定し、ゲート口8から予備加熱された半導体封止用樹脂9を半導体素子部に注入し、半導体封止用樹脂9を加熱硬化して成形すると同時に、担体フィルム表面に形成されたB-ステージ状態の電磁波シールド用樹脂6を半導体封止用樹脂の外周部に転写し、かつ硬化させる(摘示事項(2))。 (c)ベース樹脂を、アセトン等の溶媒に溶かして、金属材料、カーボン材料、フェライト材料等からなる電磁波シールド用添加剤を練り込み、適当な粘度になるまで溶媒を気散させてペーストとし、担体フィルムに塗布して、さらに溶媒を気散させて乾かし、B-ステージ状態の樹脂とすることができる。(摘示事項(3)) (d)担体フィルム7における半導体封止用樹脂9との接触側に、B-ステージ状態の電磁波シールド用樹脂6が形成される(図1(a))。 (e)第3の実施形態は、圧縮成形による封止である。半導体素子42が搭載された配線基板41の下には、圧縮成形用の下金型44があり、上方には圧縮成形用の上金型45があり、また、上金型45と配線基板41との間には、所定の部分に、硬化前(B-ステージ状態)の電磁波シールド樹脂部46が形成された半導体封止用樹脂シート47とフィルム48がある。半導体封止用樹脂シート47が、十分に加熱され溶融したら、上金型45を下降させて金型を締め、半導体素子42を、半導体封止用樹脂を加熱硬化させると同時に電磁波シールド樹脂部46も加熱硬化させることで樹脂封止する。フィルム48は、第1の実施形態の担体フィルムと同じものである(摘示事項(4))。 (f)樹脂封止前の状況では、フィルム48は、第1の実施形態の担体フィルムと同様に、減圧口により上金型45に固定されている(図3(a))。 第3の実施形態に着目して、以上を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。 「圧縮成形用の下金型44及び圧縮成形用の上金型45を用いた圧縮成形による樹脂封止型半導体装置の製造方法であって、 半導体素子42が搭載された配線基板41の下には、圧縮成形用の下金型44があり、上方には圧縮成形用の上金型45があり、 上金型45と配線基板41との間には、所定の部分に、硬化前(B-ステージ状態)の電磁波シールド樹脂部46が形成された半導体封止用樹脂シート47とフィルム48があり、 樹脂封止前の状況では、フィルム48は、減圧口により上金型45に固定されており、 半導体封止用樹脂シート47が、十分に加熱され溶融したら、上金型45を下降させて金型を締め、半導体素子42を、半導体封止用樹脂を加熱硬化させると同時に電磁波シールド樹脂部46も加熱硬化させることで樹脂封止する樹脂封止型半導体装置の製造方法。」 また、第1の実施形態に着目して、引用例には、次の技術事項(以下「技術事項」という。)が記載されているものと認める。 「移送成形用の下金型4及び移送成形用の上金型5を用いた移送成形(トランスファー成形)により樹脂封止型半導体装置を製造することであって、 半導体素子2が搭載された配線基板1の下には、移送成形用の下金型4があり、上方には移送成形用の上金型5があり、 上金型5と配線基板1との間には、半導体封止用樹脂9との接触側の所定の部分に、硬化前(B-ステージ)の電磁波シールド用樹脂6を塗布した担体フィルム7があり、 樹脂封止前の状況では、担体フィルム7は、減圧口により上金型5に固定されており、 上下の金型を締めて固定し、ゲート口8から予備加熱された半導体封止用樹脂9を半導体素子部に注入し、半導体封止用樹脂9を加熱硬化して成形すると同時に、担体フィルム表面に形成されたB-ステージ状態の電磁波シールド用樹脂6を半導体封止用樹脂の外周部に転写し、かつ硬化させて樹脂封止型半導体装置を製造すること。」 4.対比 そこで、本願発明と引用発明とを対比する。 (1)半導体装置を製造する製造方法 引用発明は、「樹脂封止型半導体装置の製造方法」であるから、本願発明と引用発明とは、「半導体装置を製造する製造方法」である点で一致する。 (2)コンプレッション成型方式 引用発明は、「圧縮成形用の下金型44及び圧縮成形用の上金型45を用いた圧縮成形」によるものであり、本願発明の「コンプレッションモールド」は、封止材を圧縮、加熱して硬化させる金型であり、上金型と、下金型とから構成されている(【0018】)。 したがって、本願発明と引用発明とは、「上金型及び下金型を有するコンプレッションモールドを用いたコンプレッション成型方式」によるものである点で一致する。 (3)封止材を硬化させる工程 引用発明は、「半導体素子42が搭載された配線基板41の下には、圧縮成形用の下金型44があり、上方には圧縮成形用の上金型45があり、上金型45と配線基板41との間には、半導体封止用樹脂シート47とフィルム48があり、樹脂封止前の状況では、フィルム48は、減圧口により上金型45に固定されており、半導体封止用樹脂シート47が、十分に加熱され溶融したら、上金型45を下降させて金型を締め、半導体素子42を、半導体封止用樹脂を加熱硬化させる」ものである。そして、「上金型45と配線基板41との間には、半導体封止用樹脂シート47があ」ることは、「半導体素子を封止する封止材を付与」することともいえ、「フィルム48」が「リリースフィルム」として用いられることは明らかである。 したがって、本願発明と引用発明とは、「半導体素子を封止する封止材を付与し、前記半導体素子と対向する金型にリリースフィルムを設けて前記上金型と前記下金型とにより前記封止材を硬化させる工程」を含む点で一致する。 (4)金型内への遮蔽材料の配置 金型内への遮蔽材料の配置について、本願発明は、「前記リリースフィルムにおける前記封止材との接触側に、電磁波を遮蔽するための遮蔽材料が予め設けられた前記リリースフィルムを前記上金型に設け」るのに対し、引用発明は、「上金型45と配線基板41との間には、所定の部分に、硬化前(B-ステージ状態)の電磁波シールド樹脂部46が形成された半導体封止用樹脂シート47があ」る点で相違する。 (5)封止材への遮蔽材料の形成 封止材への遮蔽材料の形成について、本願発明は、「前記封止材を硬化させる工程において前記封止材に前記遮蔽材料を転写する」のに対し、引用発明は、「半導体封止用樹脂を加熱硬化させると同時に電磁波シールド樹脂部46も加熱硬化させる」点で相違する。 そうすると、本願発明と引用発明とは、次の点で一致する。 <一致点> 「上金型及び下金型を有するコンプレッションモールドを用いたコンプレッション成型方式により半導体装置を製造する製造方法であって、 半導体素子を封止する封止材を付与し、前記半導体素子と対向する金型にリリースフィルムを設けて前記上金型と前記下金型とにより前記封止材を硬化させる工程を含む半導体装置の製造方法。」の点。 そして、次の点で相違する。 <相違点> (1)金型内への遮蔽材料の配置について、本願発明は、「前記リリースフィルムにおける前記封止材との接触側に、電磁波を遮蔽するための遮蔽材料が予め設けられた前記リリースフィルムを前記上金型に設け」るのに対し、引用発明は、「上金型45と配線基板41との間には、所定の部分に、硬化前(B-ステージ状態)の電磁波シールド樹脂部46が形成された半導体封止用樹脂シート47があ」る点。 (2)封止材への遮蔽材料の形成について、本願発明は、「前記封止材を硬化させる工程において前記封止材に前記遮蔽材料を転写する」のに対し、引用発明は、「半導体封止用樹脂を加熱硬化させると同時に電磁波シールド樹脂部46も加熱硬化させる」点。 5.判断 そこで、上記相違点について検討する。 相違点(1)、(2)について 「引用発明」と「技術事項」とは、同じ文献に記載された、同じ課題を解決するものであるとともに、「圧縮成形」と「担体フィルム表面に形成されたB-ステージ状態の電磁波シールド用樹脂6を半導体封止用樹脂の外周部に転写」することとの組み合わせに不都合はない。 したがって、金型内への遮蔽材料の配置について、引用発明における「上金型45と配線基板41との間には、所定の部分に、硬化前(B-ステージ状態)の電磁波シールド樹脂部46が形成された半導体封止用樹脂シート47があ」る構成に代えて、「技術事項」の「上金型5と配線基板1との間には、半導体封止用樹脂9との接触側の所定の部分に、硬化前(B-ステージ)の電磁波シールド用樹脂6を塗布した担体フィルム7があり、樹脂封止前の状況では、担体フィルム7は、減圧口により上金型5に固定されて」いる構成を採用して、本願発明のように、「前記リリースフィルムにおける前記封止材との接触側に、電磁波を遮蔽するための遮蔽材料が予め設けられた前記リリースフィルムを前記上金型に設け」るようにするとともに、封止材への遮蔽材料の形成について、引用発明における「半導体封止用樹脂を加熱硬化させると同時に電磁波シールド樹脂部46も加熱硬化させる」構成に代えて、「技術事項」の「半導体封止用樹脂9を加熱硬化して成形すると同時に、担体フィルム表面に形成されたB-ステージ状態の電磁波シールド用樹脂6を半導体封止用樹脂の外周部に転写し、かつ硬化させる」構成を採用して、本願発明のように、「前記封止材を硬化させる工程において前記封止材に前記遮蔽材料を転写する」ようにすることは、当業者が適宜なし得る。 また、明細書に記載された本願発明が奏する効果についてみても、本願発明の構成のものとして当業者であれば予測し得る程度のものに過ぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。 6.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例に記載された発明及び技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-05-22 |
結審通知日 | 2017-05-23 |
審決日 | 2017-06-05 |
出願番号 | 特願2014-520028(P2014-520028) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 豊島 洋介 |
特許庁審判長 |
國分 直樹 |
特許庁審判官 |
関谷 隆一 酒井 朋広 |
発明の名称 | 半導体装置の製造方法 |
代理人 | 阿部 寛 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 清水 義憲 |
代理人 | 平野 裕之 |