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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02B
管理番号 1330599
審判番号 不服2016-14018  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-20 
確定日 2017-07-20 
事件の表示 特願2012- 33229「内燃機関」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月 2日出願公開、特開2013-170466〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1 手続の経緯

本願は、平成24年2月17日の出願であって、平成27年12月16日付けで拒絶理由が通知され、平成28年2月17日に意見書が提出されるとともに、同日に明細書及び特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されたが、平成28年6月30日付けで拒絶査定がされ、これに対して、平成28年9月20日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に明細書及び特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出され、平成28年11月30日に上申書が提出されたものである。

2 本願発明

本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成28年9月20日付け手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

なお、本願の特許請求の範囲の請求項1は、上記平成28年9月20日に提出された手続補正書によっても補正されておらず、上記平成28年2月17日に提出された手続補正書により補正されたままである。

「【請求項1】
内燃機関のピストン頂面と、シリンダヘッド下面と、ピストンが摺動自在に収容されるシリンダの内壁と、により囲まれた燃焼室を備えた内燃機関であって、
シリンダヘッドに取り付けられ、シリンダヘッド下面から燃焼室に臨んで燃料を噴射する燃料噴射ノズルを備え、
燃料噴射ノズルの外周側に設けられ、相互に独立した複数の円筒状の空気室と、
当該複数の円筒状の空気室と、前記燃焼室と、をそれぞれ連通する相互に独立した複数の円筒状の連通部と、
を含んで構成されると共に、
前記円筒状の連通部は、前記円筒状の空気室より小径であることを特徴とする内燃機関。」

3 刊行物1発明

ア 刊行物の記載事項

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である実願昭59-42371号(実開昭60-153824号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

(ア) 「(技術分野)
本考案はディーゼル機関の燃焼室に関し、噴射燃料の燃焼効果を高めたものである。」(明細書第1ページ第15ないし17行)

(イ) 「(考案の目的)
そこで、本考案はシリンダヘッドの燃料噴射ノズルの周辺にクリアランス燃焼室に開口する空気室を設け、この空気室の空気をピストンの膨張行程時に燃焼室で一旦発生した黒煙や未燃焼炭化水素に供給することにより、黒煙や未燃焼炭化水素の酸化を促進し、その結果、排気中の有害成分の低減を図るとともに、低燃費および出力の向上を図ることを目的とする。
(考案の構成)
本考案のディーゼル機関の燃焼室はシリンダ、シリンダヘッドおよびピストンにより画成されたクリアランス燃焼室と、前記ピストンの頂部に設けられたピストン燃焼室と、シリンダヘッドに設けられ前記ピストン燃焼室に臨む燃料噴射ノズルとを有するディーゼル機関の燃焼室において、前記シリンダヘッドの燃料噴射ノズル周辺に前記クリアランス燃焼室に開口する空気室を設けたことをその構成とする。」(明細書第4ページ第10行ないし第5ページ第8行)

(ウ) 「最後に、第7図に示す第5実施例は、燃料噴射ノズル16のノズルボディ17の周囲に円筒状の空気室24を設け、この空気室24のクリアランス燃焼室14に開口する開口部を小径に形成し、絞り部としたものである。本実施例によれば、燃焼室へ流出する際に絞り部によって空気室24内の空気の噴出速度を高めることができるため、黒煙および未燃焼炭化水素の酸化をより促進することができる。
なお、上記各実施例においては、空気室が燃料噴射ノズルの全周囲に亘って取囲むよう円筒状または環状に形成された場合について説明したが、これに限らず、それぞれ独立した空気室を燃料噴射ノズルの周辺に円状に配設しても、また噴霧の個数や滞留位置に対応して散在させてもよい。」(明細書第9ページ第15行ないし第10ページ第10行)

イ 上記ア及び図面の記載から分かること

(ア) 上記ア(ウ)の「この空気室24のクリアランス燃焼室14に開口する開口部を」の記載、及び第7図等からみて、空気室24は、上部の拡大径部と、クリアランス燃焼室14に開口する開口部とで構成されることが分かる。

(イ) 上記ア(ウ)によれば、第7図に示す第5実施例について、「円筒状の空気室24を設け、この空気室24のクリアランス燃焼室14に開口する開口部を小径に形成し、絞り部とした」の記載と、その記載に続く、「これに限らず、それぞれ独立した空気室を燃料噴射ノズルの周辺に円状に配設しても、また噴霧の個数や滞留位置に対応して散在させてもよい」の記載を上記(ア)とあわせてみると、「それぞれ独立した空気室を燃料噴射ノズルの周辺に円状に配設」するということは、それぞれ独立した複数の空気室24の上部の拡大径部と、クリアランス燃焼室14及びピストン燃焼室15とをそれぞれ連通するそれぞれ独立した複数の開口部とを備えることであることが分かる。

ウ 刊行物1発明

上記ア及びイ並びに図面の記載を総合すると、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されている。

<刊行物1発明>

「シリンダ、シリンダヘッド及びピストンの頂部により画成されたクリアランス燃焼室14と、ピストンの頂部に形成されたピストン燃焼室15を備えたディーゼル機関であって、
シリンダヘッドに設けられ、ピストン燃焼室15に臨む燃料噴射ノズル16を備え、
燃料噴射ノズルの周辺に円状に配設され、それぞれ独立した複数の空気室24の上部の拡大径部と、
複数の空気室24の上部の拡大径部と、クリアランス燃焼室14及びピストン燃焼室15とをそれぞれ連通するそれぞれ独立した複数の開口部と、
を含んで構成されると共に、
開口部は通路断面積が小さい絞り部であるディーゼル機関。」

4 対比・判断

本願発明と刊行物1発明とを対比すると、その構造、機能又は技術的意義からみて、刊行物1発明における「ディーゼル機関」は、本願発明における「内燃機関」に相当し、以下同様に、「シリンダヘッドに設けられ」は「シリンダヘッドに取り付けられ」に、「ピストン燃焼室15に臨む燃料噴射ノズル16」は「シリンダヘッド下面から燃焼室に臨んで燃料を噴射する燃料噴射ノズル」に、「周辺に円状に配設され」は「外周側に設けられ」に、 「それぞれ独立した」は「相互に独立した」に、「空気室24の上部の拡大径部」は「空気室」に、「開口部」は「連通部」に、「通路断面積が小さい絞り部」は「円筒状の空気室より小径」に、それぞれ相当する。
「燃焼室」について、本願明細書の段落【0003】の「リエントラント型燃焼室(図8参照)」及び「燃焼室壁面に衝突した噴霧が滞留し、」、同じく段落【0004】の「ピストン9の頂面に燃焼室の大半を成すように窪むキャビティ10を備え、」及び同じく段落【0021】の「ピストン120の頂面に凹状に設けられたピストン燃焼室(キャビティ)121」等の記載を参酌すると、刊行物1発明における「シリンダ、シリンダヘッド及びピストンの頂部により画成されたクリアランス燃焼室14と、ピストンの頂部に形成されたピストン燃焼室15」及び「クリアランス燃焼室14及びピストン燃焼室15」は、それぞれ、本願発明における「内燃機関のピストン頂面と、シリンダヘッド下面と、ピストンが摺動自在に収容されるシリンダの内壁と、により囲まれた燃焼室」及び「燃焼室」に相当する。
以上から、本願発明の用語に倣って整理すると、本願発明と刊行物1発明とは、
「内燃機関のピストン頂面と、シリンダヘッド下面と、ピストンが摺動自在に収容されるシリンダの内壁と、により囲まれた燃焼室を備えた内燃機関であって、
シリンダヘッドに取り付けられ、シリンダヘッド下面から燃焼室に臨んで燃料を噴射する燃料噴射ノズルを備え、
燃料噴射ノズルの外周側に設けられ、相互に独立した複数の空気室と、
複数の空気室と、燃焼室と、をそれぞれ連通する相互に独立した複数の連通部と、
を含んで構成されると共に、
開口部は空気室より小径である内燃機関。」である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点>
「空気室」及び「連通部」に関して、
本願発明においては、それぞれ、「円筒状の空気室」及び「円筒状の連通部」であるのに対し、
刊行物1発明においては、「空気室24の上部の拡大径部」及び「連通部」がどのような断面形状であるのか明らかでない点(以下、「相違点」という。)。

上記相違点について検討する。
まず、本願の請求項1には、「複数の円筒状の空気室」、「複数の円筒状の連通部」と記載されているところ、本願の図5ないし7をみると(平成28年2月17日付け意見書における発明特定事項Dの下線部の補正事項についての説明参照)、断面が略円形であって、空気が入出する内部空間が略円柱状である複数の空気室及び連通路が開示されていることからみて、本願発明における「円筒状」とは、かかる「内部空間が略円柱状」のものを意味するものと認める。
これに対して、刊行物1発明においては、「空気室24の上部の拡大径部」及び「連通部」がどのような断面形状であるのか明らかでないところ、種々の断面形状の中で円形のものを採用することは、例えば、刊行物1の第3図及び第5図並びに対応する説明(刊行物1の明細書第6ページ第3ないし8行及び同書第8ページ下から第17行ないし第9ページ第2行)に示されるように、ごく普通に採用するものであり、また、円形の断面形状とすることによる格別のものは見当たらない。
したがって、刊行物1発明において、空気室24の上部の拡大径部及び連通部を断面円形で内部空間を略円柱状のものとして、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到できたことである。

そして、本願発明は、全体としてみても、刊行物1発明から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

したがって、本願発明は、刊行物1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5 結語

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-05-22 
結審通知日 2017-05-24 
審決日 2017-06-06 
出願番号 特願2012-33229(P2012-33229)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 櫻田 正紀永田 和彦  
特許庁審判長 佐々木 芳枝
特許庁審判官 槙原 進
伊藤 元人
発明の名称 内燃機関  
代理人 提中 清彦  

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