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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05H
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H05H
管理番号 1330617
審判番号 不服2016-6988  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-12 
確定日 2017-07-31 
事件の表示 特願2013-177962「自己管理機能を持つ遠隔プラズマシステム及びその自己管理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月 8日出願公開、特開2014-229603、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年(2013年)8月29日(パリ条約による優先権主張 2013年5月22日、韓国)の出願であって、平成26年8月29日付け(発送同年9月9日)で拒絶理由通知がされ、平成26年12月9日に手続補正がされるとともに意見書が提出され、平成27年5月28日付け(発送同年6月9日)で拒絶理由通知(最後)がされ、同年9月15日に手続補正がされるとともに意見書が提出されたが、同年12月21日付け(発送平成28年1月12日)で前記平成27年9月15日にされた手続補正が却下されるとともに、同日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、平成28年5月12日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされた後、当審において、平成29年4月18日付けで拒絶理由(発送同年同月25日、以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年6月8日に手続補正がされるとともに意見書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願請求項1ないし15に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明15」という。)は、平成29年6月8日にされた手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1ないし15は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
プラズマを発生して工程チャンバーに遠隔で供給する遠隔プラズマ発生器、
前記遠隔プラズマ発生器を工程チャンバーに接続するアダプタを包むように配置されたコアを備える、前記遠隔プラズマ発生器のガス出口周辺に取付けられる変流器、を含む一つ以上のセンサーで構成されるセンサー部、および
前記センサー部の測定値に基づき、前記遠隔プラズマ発生器の作動状態に関する情報を生成する制御部、を含む遠隔プラズマシステムであって、
前記変流器は前記遠隔プラズマ発生器から前記工程チャンバーに供給されるプラズマガスの電流値を測定し、
前記遠隔プラズマシステムは自己管理機能を持つことを特徴とする遠隔プラズマシステム。
【請求項2】
前記センサー部は前記遠隔プラズマ発生器の発生器本体を通じて漏洩する電流を測定する一つ以上の電流測定センサーを含み、前記制御部は前記電流測定センサーによって測定される漏洩電流測定値に基づき、他の作動状態に関する情報を生成する、請求項1に記載の自己管理機能を持つ遠隔プラズマシステム。
【請求項3】
前記センサー部は前記遠隔プラズマ発生器の発生器本体の中で発生するプラズマを測定するためのプラズマ測定センサーを含み、前記制御部は前記プラズマ測定センサーを通じて測定されたプラズマ測定値に基づき、前記遠隔プラズマ発生器の他の作動状態に関する情報を生成する、請求項1に記載の自己管理機能を持つ遠隔プラズマシステム。
【請求項4】
前記センサー部は前記工程チャンバーの中間部分に流入されたプラズマの状態を測定するためのプラズマ測定センサーを含み、前記制御部は前記プラズマ測定センサーで測定されるプラズマ測定値に基づき、前記工程チャンバー内部の工程進行状態に関する情報を生成する、請求項1に記載の自己管理機能を持つ遠隔プラズマシステム。
【請求項5】
前記センサー部は前記工程チャンバーから出る排気ガス中のプラズマの状態を測定するためのプラズマ測定センサーを含み、前記制御部は前記プラズマ測定センサーで測定されるプラズマ測定値に基づき、前記工程チャンバー内部の工程進行状態に関する情報を生成する、請求項1に記載の自己管理機能を持つ遠隔プラズマシステム。
【請求項6】
前記遠隔プラズマ発生器はプラズマ放電空間を持つ発生器本体、前記発生器本体のプラズマ放電空間にプラズマを形成するための起電力を提供するよう、前記発生器本体に取付けられる磁気コアと前記磁気コアに巻線された一次巻線を持つ変圧器、および前記変圧器の一次巻線に駆動電力を供給する電源供給源を含む、請求項1に記載の自己管理機能を持つ遠隔プラズマシステム。
【請求項7】
前記発生器本体の前記プラズマ放電空間にプラズマを形成するための起電力を提供するよう前記発生器本体に取付けられ、前記電源供給源から駆動電力の提供を受けて作動する容量結合電極を含む、請求項6に記載の自己管理機能を持つ遠隔プラズマシステム。
【請求項8】
前記発生器本体の前記プラズマ放電空間にプラズマを形成するための起電力を提供するよう前記発生器本体に取付けられ、前記電源供給源から駆動電力の提供を受けて作動する誘導アンテナコイルを含む、請求項6に記載の自己管理機能を持つ遠隔プラズマシステム。
【請求項9】
前記遠隔プラズマ発生器の発生器本体は一つ以上の絶縁区間によって区分される二つ以上の分離された領域を持つ金属の発生器本体を含み、
前記センサーは前記発生器本体の二つ以上の分離された領域にそれぞれ取付けられる二つ以上の電圧測定センサーを含む、請求項1に記載の自己管理機能を持つ遠隔プラズマシステム。
【請求項10】
前記遠隔プラズマ発生器はプラズマ放電空間と一つ以上の絶縁区間によって区分される二つ以上の分離された領域を持つ金属の発生器本体を含み、前記電流測定センサーは前記発生器本体の二つ以上の分離された領域に取付けられる二つ以上の前記電流測定センサーを含む、請求項2に記載の自己管理機能を持つ遠隔プラズマシステム。
【請求項11】
遠隔プラズマ発生器の作動を始める段階、
前記遠隔プラズマ発生器を工程チャンバーに接続するアダプタを包むように配置されたコアを備える、前記遠隔プラズマ発生器のガス出口周辺に取付けられる変流器、を含む一つ以上のセンサーで構成されるセンサー部によって前記遠隔プラズマ発生器の状態を測定する段階、および
前記センサー部で測定された前記遠隔プラズマ発生器の状態に関する測定値に基づき、前記遠隔プラズマ発生器の作動状態に関する情報を生成する段階、を含み、
前記変流器は前記遠隔プラズマ発生器から前記工程チャンバーに供給されるプラズマガスの電流値を測定することを特徴とする遠隔プラズマシステムの自己管理方法。
【請求項12】
前記センサー部は前記遠隔プラズマ発生器の発生器本体を通じて漏洩する電流を測定する電流測定センサーを含み、前記電流測定センサーによって測定された漏洩電流測定値に基づき、他の作動状態に関する情報を生成する段階を含む、請求項11に記載の遠隔プラズマシステムの自己管理方法。
【請求項13】
前記センサー部は前記遠隔プラズマ発生器の発生器本体の中で発生するプラズマを測定するためのプラズマ測定センサーを含み、前記プラズマ測定センサーによって測定されたプラズマ測定値に基づき、他の作動状態に関する情報を生成する段階を含む、請求項11に記載の遠隔プラズマシステムの自己管理方法。
【請求項14】
前記センサー部は工程チャンバー内部のプラズマの状態を測定するプラズマ測定センサーを含み、前記プラズマ測定センサーによって測定されたプラズマ測定値に基づき、前記工程チャンバー内部の工程進行状態に関する情報を生成する段階を含む、請求項11に記載の遠隔プラズマシステムの自己管理方法。
【請求項15】
前記センサー部は工程チャンバーから出る排気ガス中のプラズマの状態を測定するためのプラズマ測定センサーを含み、前記プラズマ測定センサーで測定されるプラズマ測定値に基づき、前記工程チャンバー内部の工程進行状態に関する情報を生成する段階を含む、請求項11に記載の遠隔プラズマシステムの自己管理方法。」

第3 刊行物の記載及び引用発明
1 引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献1(特表2008-519416号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、イオン、遊離基、原子、および分子を含む活性化ガスを発生させる分野、ならびに活性化ガスを用いて材料を処理する装置および方法に関する。」

イ 「【0034】
図1は、本発明を具体化する活性化ガスを生成するためのトロイダル低電界プラズマ源10の概略図である。プラズマ源10は、電磁エネルギーをプラズマ14に結合する出力変圧器12を含む。出力変圧器12は、高透磁率磁心16と、一次コイル18と、プラズマ14を閉じ込めるプラズマチャンバ20とを含み、プラズマ14が変圧器12の二次回路を形成できるようにする。出力変圧器12は、追加の二次回路を形成する追加の磁心および一次コイル(図示せず)を含むこともできる。
【0035】
プラズマチャンバ20の1つまたは複数の側部がプロセスチャンバすなわち処理チャンバ22に露出され、プラズマ14によって発生される荷電粒子および活性化ガスが、処理すべき材料(図示せず)と直接接触できるようにする。処理すべき材料を支持するために、試料ホルダ23がプロセスチャンバ22内に配置されることができる。処理すべき材料は、プラズマの電位に対してバイアスされることができる。・・・
【0045】
また、トロイダル低電界プラズマ源10は、一次巻線18の電気パラメータを測定するための測定回路36を含むこともできる。一次巻線18の電気パラメータは、一次巻線18を駆動する電流と、一次巻線18の両端間の電圧と、電源24によって発生されるバスまたはライン電圧と、一次巻線18での平均出力と、一次巻線18でのピーク出力とを含む。一次巻線の電気パラメータは、連続的に監視されることができる。
【0046】
また、プラズマ源10は、プラズマ14自体の電気および光学パラメータを測定するための装置を含むこともできる。例えば、プラズマ源10は、変圧器12の二次側を流れるプラズマ電流を測定するために、プラズマチャンバ20の周りに配置された電流プローブ38を含むことができる。また、プラズマ二次側での電圧は、例えば、プラズマ14に平行に、磁心に二次巻線を配置することによって測定することができる。別法として、プラズマに印加される電力が、ACライン電圧および電流の測定値、ならびに電気回路での既知の損失から求められることができる。
【0047】
また、プラズマ源10は、プラズマ14からの発光を測定するための光検出器40を含むこともできる。プラズマ14の電気および光学パラメータは、連続的に監視することができる。さらに、プラズマ源10は、電力制御回路42を含むことができ、電力制御回路42は、電流プローブ38と、出力検出器40と、スイッチング回路26との少なくとも1つからデータを受け入れ、次いで一次巻線18での電流を調節することによって、プラズマでの電力を調節する。」

ウ 「【0100】
また、プラズマ源は、点火プロセスを監視および制御するためのモニタおよび制御回路390を含むことができる。一実施形態では、まず、モニタおよび制御回路390は、プラズマの点火を検出し、次いで、点火シーケンスを終了して、スイッチング回路26を通常動作モードに切り換える。
【0101】
別の実施形態では、モニタおよび制御回路390は、固定された事前設定された時間間隔で、点火プロセスを監視する。時間間隔は、典型的な点火時間の分数であってよい。各時間間隔の最後に、モニタおよび制御回路390は、プラズマが点火されているかどうか判定するために、プラズマ光、または一次巻線の電気的特性を測定する。プラズマ点火が検出される場合、モニタおよび制御回路390は、点火プロセスを終了し、スイッチング回路26を通常動作モードに戻す。プラズマが検出されない場合、モニタおよび制御回路390は、次の時間間隔にも点火プロセスを継続する。点火プロセスに割り当てられた全時間間隔においてプラズマが発生されない場合、障害が発生している。」

エ 図1は次のものである。
【図1】


オ 上記アないしウの記載を踏まえて上記ウの図1をみると、トロイダル低電界プラズマ源10は、プラズマチャンバ20と処理チャンバ22を接続する部材を備えていることがみてとれる。

(2)上記(1)によれば、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「電磁エネルギーをプラズマ14に結合する出力変圧器12を含み、前記出力変圧器12は、高透磁率磁心16と、一次コイル18と、プラズマ14を閉じ込めるプラズマチャンバ20とを含み、プラズマ14が変圧器12の二次回路を形成し、
前記プラズマチャンバ20の1つまたは複数の側部がプロセスチャンバすなわち処理チャンバ22に露出され、プラズマ14によって発生される荷電粒子および活性化ガスが、処理すべき材料と直接接触でき、
一次巻線18の電気パラメータを測定するための測定回路36と、変圧器12の二次側を流れるプラズマ電流を測定するために、プラズマチャンバ20の周りに配置された電流プローブ38と、プラズマ14からの発光を測定するための光検出器40と、電力制御回路42を含み、
前記電力制御回路42は、電流プローブ38と、出力検出器40と、スイッチング回路26との少なくとも1つからデータを受け入れ、次いで一次巻線18での電流を調節することによって、プラズマでの電力を調節し、
プラズマチャンバ20と処理チャンバ22を接続する部材を備えている、
トロイダル低電界プラズマ源10。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献2(特表2006-517335号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
本発明は、プラズマソースの分野に関し、さらに詳しくは、本発明は変圧器結合プラズマソースに関する。」

イ 「【0021】
図3を参照すると、RF発生器110は、インピーダンスマッチングネットワーク120に接続され、これはプラズマソース140内の変圧器310の一次巻線300に接続状態である。プラズマソース140はさらに、プラズマループ320および1:Mの巻数比をもつ変流器330を有する。プラズマループ320は二次巻線340、変流器330の一次側、およびプラズマ抵抗Rpにより示される。多くのプラズマ分野の関係者にとっては、抵抗Rpがプラズマループ320のインピーダンス値を決定付ける。一次巻線300および二次巻線340の間の巻数比はN:1である。
【0022】
一実施形態においては、変流器330のコアがプラズマ320を囲み、この変流器に対する一次の単一巻として作用する。さらに、抵抗器(R)は、プラズマ電流(Ip)に比例する計測電圧(VI)(例えば、VI=R*Ip/M;ここでMは変流器330の二次巻数)を提供するために、変流器330の二次側に接続される。
【0023】
他の実施形態によれば、プラズマソース140内の変圧器310は、N:Lの巻数比をもつ二次巻線350をさらに有する。二次巻線350は、プラズマ320において適用された閉ループの電圧を計測するために誘導される。
【0024】
一実施形態では、巻線350は、変圧器310のコア360周りにワイヤを一回巻いたものであり、プラズマループ320と同様に、磁束を囲むように配置される。このような構成では、閉ループプラズマ電圧、Vplasmaは、二次巻線350を横切って計測された電圧Vpと同じであり、つまり、Vp=Vplasmaである。他の実施形態では、電圧減少成分(示されてない)は、電圧を電力計測回路(示されてない)に接続するために、規定量だけ電圧を減少させる巻線350に接続され得る。
【0025】
図4は、プラズマチャンバ410まわりの様々な構成要素の典型的な配列を示すTCPソース140の一実施形態を示す。上述のように、電力は、磁心360および一次巻線300をもつ変圧器を通してプラズマ320に接続される。二次巻線350は、プラズマ電圧を評価するために使用される。変流器330は、プラズマ電流Ipを計測する。
【0026】
図5は、電力計測回路500の一実施形態を示す。電力計測回路500は、変流器330からリアルタイムの電流値および二次巻線330からリアルタイムの電圧値を受け取る。電力計測回路500は、乗算器510および平均値算出モジュール520を有する。乗算器510は、リアルタイムの電圧値および電流値を受け取り、瞬間電力値を得るために、それぞれ受け取った値の積をとる。各時刻で計算された電力値は平均値算出モジュール520に伝送される。平均値算出モジュール520は、プラズマループ320に伝送された電力の平均値を計算する。」

ウ 図2ないし5は次のものである。


(3)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献3(特表2005-519446号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、大気圧かつ雰囲気温度において動作するプラズマ殺菌システムに関するものである。より詳細には、本発明は、そのようなシステムのためのプラズマによる殺菌性ガス生成源に関するものである。」

イ 「【0042】
プラズマ生成システムの第2実施形態が、図6に詳細に示されている。この実施形態においては、電流測定システム(32)は、単に抵抗(48)によって構成されているのではなく、変流器の形態として実現されている。この実施形態は、高電圧回路から測定回路を絶縁し得るという利点を有しているとともに、高電圧回路内の任意の所望箇所において測定を行い得るという利点を有している。図6においては、主要部材に関して、図3と同じ符号が付されている。ただし、電流測定システムは、新たな電流測定システム(90)によって代替されている。この電流測定システム(90)は、フェライト(92)から構成されている。このフェライト(92)を貫通して、高電圧を付帯している導線(22)が配置されている。フェライト(92)は、フェライトの周縁部分に沿って巻回されたワイヤ(94)を備えている。このワイヤ(94)の2つの端部のうちの一方は、アースに対して接続されている。ワイヤ(94)の2つの端部のうちの他方は、変換システム(34)のフィルタ(50)に対して接続されている。この変換システム(34)の動作は、図3を参照して上述したものと同じである。」

ウ 図6は次のものである。
【図6】


(4)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献4(特開2007-266365号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,処理容器内にプラズマを生成して基板を処理するプラズマ処理装置と,そのプラズマ処理装置におけるプラズマ内の高周波電流量の測定方法に関する。」

イ 「【0053】
次に,以上のように構成されたプラズマエッチング装置1の作用について説明する。
【0054】
プラズマエッチング装置1においてエッチング処理を行う際には,図1に示すように先ず基板Wが処理容器2内に搬入され,下部電極12上に載置される。排気管70から排気が行われ処理容器2内が減圧され,ガス吐出孔20aからは所定の処理ガスが供給される。次に,高周波電源31により,下部電極12にプラズマ生成用の高周波電力が供給される。これにより,下部電極12と上部電極20との間に高周波電圧が印加され,処理容器2内の下部電極12と上部電極20との間の処理空間Kにプラズマが生成され,プラズマ領域Pが形成される。このプラズマにより処理ガスから活性種やイオンなどが生成され,ウェハWの表面膜がエッチングされる。所定時間エッチングが行われた後,高周波電力の供給と処理ガスの供給が停止され,ウェハWが処理容器2内から搬出されて,一連のエッチング処理が終了する。
【0055】
プラズマエッチング装置1において,例えばプラズマ領域P内の高周波電流量の変動を検出する際には,先ずプラズマの発生中に,下部プローブ40により処理空間Kの下部電極12付近の周方向θの磁界の時間変化量が検出される。この際,下部プローブ40のコイル40aには,処理空間Kの下部電極12付近の周方向θの磁束Φが通過し,そのコイル40a内の磁束Φの変化によりコイル40aに誘導起電力V(r)1が生じる。この誘導起電力V(r)1が下部電極12の付近の磁界の時間変化量として検出される。また,上部プローブ41により処理空間Kの上部電極20付近の周方向θの磁界の時間変化量が検出される。上部プローブ41のコイル41aには,処理空間Kの上部電極20付近の周方向θの磁束Φが通過し,そのコイル41a内の磁束Φの変化によりコイル41aに誘導起電力V(r)2が生じる。この誘導起電力V(r)2が上部電極20付近の磁界の時間変化量として検出される。
【0056】
誘導起電力V(r)1,V(r)2の検出情報は,アナライザボックス50に入力され,アナライザボックス50では,検出された誘導起電力V(r)1,V(r)2が,高周波電力の基本波,高調波などの各周波数成分に分解される。各周波数成分に分解された誘導起電力V(r)1,V(r)2は,コンピュータ51に送られ,コンピュータ51では,上記式(4)などの算出原理を用いて,各誘導起電力V(r)1,V(r)2に対応する高周波電流量Az1,Az2が算出される。また,コンピュータ51では,高周波電流量Az1から高周波電流量Az2を引いた損出高周波電流量Arが算出される。
【0057】
算出された高周波電流量Az1,Az2,Arは,例えば制御部60に出力され,例えば損出高周波電流量Arが周波数成分毎に予め設定された閾値と比較され,閾値内の場合には正常と判定され,閾値を超えていた場合には,例えばエラーが出力され,基板Wの処理が停止される。また,高周波電流量Az1,Az2,Arの情報は,制御部60に蓄積され,基板Wの処理状態や処理容器2内のコンディションを評価する情報として利用される。なお,閾値の設定の仕方によって,閾値を下回った場合にエラーを出力するようにしてもよい。
【0058】
以上の実施の形態によれば,プローブ40,41が処理容器2内に設置されたので,プラズマ内を流れる高周波電流量Az,Arを直接的に検出することができる。このため,正確な高周波電流量Az,Arを検出でき,この高周波電流量Az,Arにより例えば基板Wの処理状態を正確に評価することができる。
【0059】
また,処理容器2内の上下の電極12,20付近にプローブ40,41をそれぞれ設けたので,下部電極12からプラズマ領域P内に入力される高周波電流量Az1と,プラズマ領域Pから上部電極20に出力される高周波電流量Az2とを検出でき,それらの高周波電流量Az1,Az2から,下部電極12と上部電極20との間の側壁面2aに流出する損出高周波電流量Arを検出できる。これにより,プラズマ領域P内における高周波電流量の変動を検出し,プラズマ領域P内の高周波電流の流れを把握できる。この結果,例えば処理容器2内のコンディションを把握できる。例えば処理容器2の内壁面や電極12,20に汚れや亀裂が生じたり,内壁面の保護膜が減少したり,或いは上部電極20のガス孔20aなどに異常放電が生じているような場合には,高周波電流量Izの上部電極20方向の流れが妨げられたり,側壁面2a方向への流出が妨げられたりして,高周波電流量Az,Arが変わる。したがって,本実施の形態のように高周波電流量Az,Arから高周波電流の流れを把握することにより,処理容器2内のコンディションの変化を検出できる。また,処理容器2内のコンディションを把握できるので,そのコンディションに基づいて他のプラズマエッチング装置との間の機差を補正できる。」

ウ 図1は次のものである。


(5)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献5(特開2003-318115号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は窓型プローブ、プラズマ監視装置、及び、プラズマ処理装置に関するものであり、特に、被処理基体に高周波、或いは高電圧によるプラズマ放電を用いて処理するプラズマ処理装置におけるプラズマの変動を簡単に、迅速に、精度良く検出するための構成に特徴のある窓型プローブ、プラズマ監視装置、及び、プラズマ処理装置に関するものである。」

イ 「【0021】
【発明の実施の形態】ここで、図2乃至図7を参照して、本発明の第1の実施の形態の窓型プローブ付きプラズマ処理装置及び検出信号処理方法を説明する。
図2参照
図2は本発明の第1の実施の形態の窓型プローブ付きプラズマ処理装置の概略的構成図である。このプラズマ処理装置は、ガス導入口12、排気口13、及び、プローブ取付け部14を有するプロセスチャンバー11、プロセスチャンバー内に配置された、Siウェハ16を載置する下部電極15及び導入ガスを噴射するシャワーヘッドを兼ねる上部電極17とを対向させた平行平板型電極、下部電極15にブロッキングコンデンサ等から構成されインピーダンス整合をとる整合器18を介して13.56MHzのRF電力を印加する高周波電源19、及び、上部電極17を接地する接地配線20から構成される。
【0022】また、プローブ取付け部14は、通常のビューポートを構成するフランジ部材からなるものであり、このフランジ部材に窓型プローブ30を取付け、この窓型プローブ30からの検出出力は同軸ケーブルを介してデジタルオシロスコープ40に接続されている。なお、このデジタルオシロスコープ40の入力インピーダンスは、例えば、50オームとする。・・・
【0038】次に、図4乃至図6を参照して本発明の窓型プローブを用いて測定した電圧波形を説明する。
図4(a)参照
図4(a)は、プロセスチャンバー11に高周波電源18より電力を供給し安定してプラズマを生成した時の、窓型プローブ30から出力される電圧波形である。図において、横軸は時間〔秒〕、縦軸は電圧であり、周波数13.56MHzに対応して1周期73ナノ秒(73ns=7.3×10^(-8)s)で繰り返す安定した電圧波形が得られており、プラズマの振動波形及び振幅を測定することができる。
【0039】図4(b)参照
図4(b)は、不安定な状態のプラズマの場合に観測される電圧波形であり、図に示すようにこの電圧波形には歪があり、波高値(ピーク値)も一周期毎に変動していることが測定される。
【0040】図5参照
図5は、RF放電で入力電力が変動している場合の窓型プローブの検出波形の説明図であり、入力電力の変動に応じて検出波形も緩やかに変化していることが観測される。この場合、検出波形における波高値もRF入力電力に比例していることが確認され、この窓型プローブによる検出波形は、高周波電源19の周波数の周期で変化していて、波形の歪の状態、ピーク値等がプラズマの特性を反映している。
【0041】図6参照
図6は、RF放電での装置異常によりRF電源を即断した場合の窓型プローブの検出波形の説明図であり、RF電源が即断されたため、質量が軽い電子が急激に拡散して壁電位がマイナス側に変化するために検出波形はプラス側に反応している。
【0042】このように、本発明の窓型プローブ30は、プラズマ状態の変化の状況に応じて拡散するイオン流或いは電子流の敏感な変化を捕らえることができるので、プラズマ状態の変化を確実、且つ、迅速に感度良く検出することができる。」

ウ 図2は次のものである。


(6)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献6(特開2001-23969号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体デバイスの製造に適したプラズマ装置およびその動作方法に関し、特に、プラズマ中で形成された特定種類のガスが排気ガスに残存する量を検知することのできるプラズマ装置およびその動作方法に関する。」

イ 「【0039】(実施形態2)次に、図3を参照しながら、本発明によるプラズマ装置の他の実施形態を説明する。
【0040】前述の実施形態1では、質量分析装置8のための排気ポンプ9として専用のポンプを使用しているが、本実施形態では、質量分析装置8の排気ポンプをプラズマ装置本体の排気ポンプ5が兼ねている。すなわち、質量分析装置8に取り込まれた排気ガスは、質量分析装置8のイオン化室と排気ポンプ5とを接続する配管20を通じて排気ポンプ5に送られる。
【0041】このような構成を採用することによって、排気ポンプの合計個数を削減し、装置コストを低減させることができる。また、質量分析装置8に採取されたガスは再び除害装置6を経て排気されることになるため、より完全に近い状態の閉じたガスシステムを構成することができる。このような構成にすれば、プロセスガスに塩素や一酸化炭素などの有害なガスを用いる場合でも、より高い安全を確保できる。
【0042】図1および図3のプラズマ装置は、除害装置6としてプラズマによってガスを分解する型のものを用いているが、触媒式の除害装置を用いても良い。図4は、触媒式の除害装置の構成を示している。
【0043】この除害装置は、プラズマ装置から出た排気ガスを触媒によって分解するために、ヒータ44を有する予熱室43と触媒層45とを備えている。更に、この除害装置は、エッチング装置などのプラズマ装置から出た排気ガスを受け取る充填室41と、排気ガス中に含まれる水溶性ガスや微粒子を除去するための水スプレー室42と、触媒層45を透過したガスを冷却する冷却室46と、スクラバー47とを備えている。ヒータ44に投入される電力は電源49から供給され、電源49の出力は温度制御装置48によって調整される。温度制御装置48は、ヒータ44の温度を検知する温度センサ50の出力に基づいて電源49の出力を制御する。・・・
【0047】ステップS4で、除害装置に高周波電力を印加し、除害装置を動作させる。ステップS5で、プラズマ装置本体においてエッチング等のプロセス処理を開始した後、除害装置から出た排気ガスの一部について電子付着質量分析を行い、排気ガス中のフッ素負イオンの信号強度を測定する(ステップS6)。ステップS7において、演算装置を用いて測定データに対するフィッティングを行い、図2のグラフに示すようなピーク値の分離を行う。フィッティングは、例えばガウス型関数を用いて行うことが好ましい。
【0048】ステップS8で、これらピーク値をプロセス時間に対応づけながら記憶装置に蓄える。記憶装置は、質量分析装置またはプラズマ装置の何れに備えられても良い。
【0049】ステップS9で、記憶装置に蓄積されているピーク値をプラズマ装置および/または質量分析装置の表示装置上で出力させてもよい。そうすることによって、プラズマ装置のオペレータがPFCの除害状況をほぼリアルタイムでモニタすることができる。
【0050】なお、質量分析装置は常に動作している必要はない。エッチングや薄膜堆積などの一つのプロセスステップの間に一度、排気ガスのモニタリングを実行すれば充分な場合も多い。」

ウ 図3は次のものである。


(7)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献7(特開2003-209103号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0071】(第2の実施の形態)以下、本発明の第2の実施の形態に係る処理装置について、図面を参照して説明する。第2の実施の形態では、半導体ウェハ(以下、ウェハ)等の被処理体の表面に、チャンバ内でのプラズマ処理によりフッ化酸化シリコン等のシリコン系膜を成膜する処理装置のドライクリーニングを例として説明する。処理装置のドライクリーニングは、フッ素系ガス(三フッ化窒素(NF3))のプラズマをチャンバ内に通すことにより行う。
【0072】図5に第2の実施の形態に係る処理装置11の構成を示す。図5に示すように、処理装置11は、制御装置12と、チャンバ13と、クリーニングガス供給ライン50と、排気ライン15と、を備える。
【0073】制御装置12は、後述する、成膜処理、クリーニング処理等の処理装置11全体の動作を制御する。なお、理解を容易にするため、制御装置12の動作の詳細については省略する。
【0074】チャンバ13は、真空引き可能に構成され、その内部に被処理体であるウェハが収容される。チャンバ13は、高周波電源等を備える図示しないプラズマ発生機構を備え、内部にプラズマを発生可能に構成されている。プラズマ発生機構によりチャンバ13の内部においてウェハ表面にプラズマ処理が施され、フッ化酸化シリコン等のシリコン系膜が形成される。
【0075】クリーニングガス供給ライン50は、クリーニングガスとしてのNF3ガスを供給するNF3源51と、希釈ガスとしてのArガスを供給するAr源52と、を備える。また、クリーニングガス供給ライン50は、その内部を通過するガスを活性化するアクチベータ53が設けられている。NF3源51およびAr源52は、バルブ54a,54bおよびMFC55a,55bを介してアクチベータ53に接続されている。
【0076】アクチベータ53は、図示しないプラズマ発生機構を備え、内部を通過するガスの、例えば、ECR(Electron Cyclotron Resonance)プラズマ、誘導結合型プラズマ(Inductive Coupled Plasma:ICP)等の高密度プラズマを発生させる。アクチベータ53は、その内部を通過するクリーニングガス(NF3)をプラズマ状態とし、発生したフッ素ラジカルを選択的に排気する。
【0077】上記構成により、クリーニング時には、クリーニングガス供給ライン50から、フッ素ラジカルを主成分とするクリーニングガスがチャンバ13内に供給される。フッ素はシリコンと結合性が高く、チャンバ13内に付着、堆積したシリコン系膜は、クリーニングガスにより高速かつ効果的に除去(エッチング)される。
【0078】排気ライン15は、ターボ分子ポンプ(TMP)22と、ドライポンプ23(DP)と、測定部56と、を備える。排気ライン15はチャンバ13に接続され、排気ライン15を介してチャンバ13は排気され、所定の圧力状態まで減圧される。
【0079】TMP22は、チャンバ13と第1の排気管25を介して接続されている。第1の排気管25には、可変流量バルブ26と、バルブと、がチャンバ13側から順に設けられている。TMP22は、チャンバ13内を高真空状態に減圧する。また、可変流量バルブ26は、チャンバ13内を所定の高真空状態に保持する。第1の排気管25は、TMP22の排気速度、長さ等から、例えば、50mm程度の内径とされている。
【0080】ドライポンプ23は、TMP22の排気側に第2の排気管28によって接続されている。TMP22とドライポンプ23との間には、バルブが設けられている。ドライポンプ23は、あらびきポンプとして機能し、チャンバ13内をTMP22が作動可能な圧力とする。ドライポンプ23の排気側は、図示しない除害装置に接続されており、排気ライン15を通過した排気ガスは無害化されて大気に放出される。
【0081】第2の排気管28は、ドライポンプ23の排気速度、長さ等から、例えば、40mm程度の内径とされている。ここで、ドライポンプ23はTMP22よりも排気容量が小さく、従って、第2の排気管28は第1の排気管25よりも小径となる。
【0082】測定部56は、TMP22の排気側に接続された第2の排気管28に取り付けられている。測定部56は、処理の間、第2の排気管28内を流れるガス中のパーティクル量を測定している。パーティクルは、チャンバ13内に付着、堆積した膜がある程度大きくなって剥離することなどによって発生し、歩留まり低下の原因となる。従って、排気ガス中のパーティクル量をモニタすることにより、チャンバ13の汚染状態を知ることができる。
【0083】排気ガスをモニタしている測定部56は、パーティクル量が所定量に達すると、制御装置12にその旨を示す信号を送出する。制御装置12は、この信号に基づいて、成膜処理を一旦終了し、クリーニング処理を開始する。なお、測定部56は、バルブの給気側と排気側とのどちらに設けられていてもよい。」

イ 図5は次のものである。


第4 対比・判断
1 本願発明1と引用発明の対比
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
引用発明における「プラズマ14」、「プラズマチャンバ20」、「(プロセスチャンバすなわち)処理チャンバ22」、「プラズマチャンバ20と処理チャンバ22を接続する部材」及び「トロイダル低電界プラズマ源10」は、本願発明1の「プラズマ」、「遠隔プラズマ発生器」、「工程チャンバー」、「アダプタ」及び「遠隔プラズマシステム」にそれぞれ相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「プラズマを発生して工程チャンバーに遠隔で供給する遠隔プラズマ発生器、
前記遠隔プラズマ発生器を工程チャンバーに接続するアダプタを備える、遠隔プラズマシステム。」

(相違点1)
本願発明1は「前記遠隔プラズマ発生器を工程チャンバーに接続するアダプタを包むように配置されたコアを備える、前記遠隔プラズマ発生器のガス出口周辺に取付けられる変流器、を含む一つ以上のセンサーで構成されるセンサー部」を含み、「前記変流器は前記遠隔プラズマ発生器から前記工程チャンバーに供給されるプラズマガスの電流値を測定」するという構成を備えるのに対し、引用発明は、そのような構成を備えていない点。

(相違点2)
本願発明1は「前記センサー部の測定値に基づき、前記遠隔プラズマ発生器の作動状態に関する情報を生成する制御部、を含む遠隔プラズマシステムであって」、「前記遠隔プラズマシステムは自己管理機能を持つ」という構成を備えるのに対し、引用発明は、「一次巻線18の電気パラメータを測定するための測定回路36と、変圧器12の二次側を流れるプラズマ電流を測定するために、プラズマチャンバ20の周りに配置された電流プローブ38と、プラズマ14からの発光を測定するための光検出器40と、電力制御回路42を含み、前記電力制御回路42は、電流プローブ38と、出力検出器40と、スイッチング回路26との少なくとも1つからデータを受け入れ、次いで一次巻線18での電流を調節することによって、プラズマでの電力を調節」するものである点。

イ 相違点についての判断
上記相違点1について検討すると、引用発明に関して、引用文献1には、プラズマチャンバ20と処理チャンバ22を接続する部材において、変流器を用いて、プラズマチャンバ20から、処理チャンバ22に供給されるプラズマガスの電流値を測定することの記載はなく、またこのようにすることの示唆もない。
そして、引用文献1の発明の詳細な説明には、プラズマチャンバ20の周りに配置された電流プローブ38以外に、電流値を測定することの記載はない。
また、引用文献2ないし7のいずれにもプラズマチャンバから処理チャンバに供給されるプラズマガスの電流値を測定することは記載されていない。
よって、上記相違点1に係る本願発明1の構成は、当業者であっても引用発明及び引用文献2ないし7に記載された技術事項に基づいて容易に想到し得たとはいえない。
したがって、相違点2について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2ないし7に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

(2)本願発明2ないし10について
本願発明2ないし10も、本願発明1の「前記遠隔プラズマ発生器を工程チャンバーに接続するアダプタを包むように配置されたコアを備える、前記遠隔プラズマ発生器のガス出口周辺に取付けられる変流器、を含む一つ以上のセンサーで構成されるセンサー部」を含み、「前記変流器は前記遠隔プラズマ発生器から前記工程チャンバーに供給されるプラズマガスの電流値を測定」するという構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明及び引用文献2ないし7に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

(3)本願発明11ないし15について
本願発明11ないし15は、物の発明である本願発明1ないし5をそれぞれ方法の発明のカテゴリーとするものであって、本願発明1の「前記遠隔プラズマ発生器を工程チャンバーに接続するアダプタを包むように配置されたコアを備える、前記遠隔プラズマ発生器のガス出口周辺に取付けられる変流器、を含む一つ以上のセンサーで構成されるセンサー部」を含み、「前記変流器は前記遠隔プラズマ発生器から前記工程チャンバーに供給されるプラズマガスの電流値を測定」するという構成と同様の、「前記遠隔プラズマ発生器を工程チャンバーに接続するアダプタを包むように配置されたコアを備える、前記遠隔プラズマ発生器のガス出口周辺に取付けられる変流器、を含む一つ以上のセンサーで構成されるセンサー部によって前記遠隔プラズマ発生器の状態を測定する段階」を含み、「前記変流器は前記遠隔プラズマ発生器から前記工程チャンバーに供給されるプラズマガスの電流値を測定する」という構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明及び引用文献2ないし7に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1ないし15について上記引用文献1ないし7に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、本願発明1ないし10は、「前記遠隔プラズマ発生器を工程チャンバーに接続するアダプタを包むように配置されたコアを備える、前記遠隔プラズマ発生器のガス出口周辺に取付けられる変流器、を含む一つ以上のセンサーで構成されるセンサー部」を含み、「前記変流器は前記遠隔プラズマ発生器から前記工程チャンバーに供給されるプラズマガスの電流値を測定」するという構成を、本願発明11ないし15は、「前記遠隔プラズマ発生器を工程チャンバーに接続するアダプタを包むように配置されたコアを備える、前記遠隔プラズマ発生器のガス出口周辺に取付けられる変流器、を含む一つ以上のセンサーで構成されるセンサー部によって前記遠隔プラズマ発生器の状態を測定する段階」を含み、「前記変流器は前記遠隔プラズマ発生器から前記工程チャンバーに供給されるプラズマガスの電流値を測定する」という構成を備えるものとなったから、上記のとおり、本願発明1ないし15は上記引用発明及び引用文献2ないし7に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
当審では、
「本件の特許請求の範囲の請求項2ないし10は、『・・・自己管理機能を持つ、請求項・・に記載の遠隔プラズマシステム。』と記載されているが、上記記載では、『自己管理機能を持つ』構成(主語)が何であるのか不明確であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。」
との拒絶の理由を通知しているが、平成29年6月8日にされた手続補正で補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし15は、当業者が引用発明及び引用文献2ないし7に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-07-10 
出願番号 特願2013-177962(P2013-177962)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H05H)
P 1 8・ 537- WY (H05H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藤本 加代子  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 松川 直樹
小松 徹三
発明の名称 自己管理機能を持つ遠隔プラズマシステム及びその自己管理方法  
代理人 ▲吉▼川 俊雄  

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