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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60N |
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管理番号 | 1330645 |
審判番号 | 不服2016-10025 |
総通号数 | 213 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-09-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-07-04 |
確定日 | 2017-07-19 |
事件の表示 | 特願2011-282638「乗り物用シートのためのシートフレーム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 7月 8日出願公開、特開2013-132917〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本件出願は、平成23年12月26日の出願であって、平成27年10月28日付けで拒絶理由が通知され、同年12月14日付けで手続補正がなされ、平成28年4月8日付けで拒絶の査定がなされ(同査定の謄本の送達(発送)日 同年4月13日)、これに対し、同年7月4日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に特許請求の範囲を補正する手続補正がされたものである。 第2.平成28年4月8日付け手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1.本件補正の内容 本件補正により、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1は、本件補正後の請求項1へ補正された。補正前の特許請求の範囲の請求項1、及び、補正後の特許請求の範囲の請求項1は、それぞれ以下のとおりである(下線は補正箇所を示すために審決で付した。以下の下線も同様に審決で付した。)。 (1)補正前 「【請求項1】 シートクッションを取り付けるための、板状部材からそれぞれ構成される1対のサイドフレームから成るシートクッションフレームであって、スライド機構に連結されるシートクッションフレームと、シートバックを取り付けるための、逆U字形のシートバックフレームとを含み、前記サイドフレームが、前記シートバックフレームの両下端部分にそれぞれ連結される、シートフレームであって、 前記1対のサイドフレームが、変形時に横方向の変位を生じないように、それぞれの後端部の一部から前方に伸張する左右対称のエネルギー吸収部を有し、 前記左右対称のエネルギー吸収部が、対向するサイドフレームに向かってそれぞれの板状部材の一部が凹んだ凹部から成り、又は、その反対側に向かってそれぞれの板状部材の一部が凹んだ凹部から成り、 前記凹部の周縁が、前記後端部上の上端と該上端の下方に位置する前記後端部上の下端との間に伸張する後縁と、前記上端から前記凹部の前端へ伸張する上縁と、前記下端から前記前端へ伸張する下縁とにより画成され、 前記サイドフレームが、それぞれの上端部と下端部とに前記シートフレームの内側に向かって張り出す張り出し部を有し、 前記下端部の張り出し部が、前記上端部の張り出し部よりも幅広く平坦に形成され、前記スライド機構の可動部に直接連結されることを特徴とするシートフレーム。」 (2)補正後 「【請求項1】 シートクッションを取り付けるための、板状部材からそれぞれ構成される左右対称のサイドフレームから成るシートクッションフレームが、シートバックを取り付けるための、 逆U字形のシートバックフレームの両下端部分に左右のリクライニング機構を介してそれぞれ連結されるシートフレームであって、前記左右対称のサイドフレームが、スライド機構の左右の可動部の平坦な上面にそれぞれ直接連結される、シートフレームであって、 前記左右対称のサイドフレームが、前記左右のリクライニング機構の下方にそれぞれの後端部の一部から前方に伸張する左右対称のエネルギー吸収部を有し、 前記左右対称のエネルギー吸収部が、対向するサイドフレームに向かってそれぞれの板状部材の一部が凹んだ凹部から成り、又は、その反対側に向かってそれぞれの板状部材の一部が凹んだ凹部から成り、 前記凹部の周縁が、前記後端部上の上端と該上端の下方に位置する前記後端部上の下端との間に伸張する後縁と、前記上端から前記凹部の前端へ伸張する上縁と、前記下端から前記前端へ伸張する下縁とにより画成され、 前記左右対称のサイドフレームが、それぞれの前記後端部の少なくとも部分、上端部、及び下端部に前記シートフレームの内側に向かって張り出す張り出し部を有し、前記後端部のうち前記エネルギー吸収部の後縁を含む部分は、前記張り出し部を有しないか、又は変形を妨げないように有し、 前記下端部の張り出し部が、前記上端部の張り出し部よりも幅広く平坦に形成され、前記スライド機構の可動部の平坦な上面に直接連結され、 前記変形において、前記エネルギー吸収部の上縁が前記前端を中心に下方へ移動し、前記サイドフレームのエネルギー吸収部を除く本体が上下方向に圧縮され、横方向の変位を生ずることがない、シートフレーム。」 上記補正は、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「シートフレーム」について補正前の「シートクッションを取り付けるための、板状部材からそれぞれ構成される1対のサイドフレームから成るシートクッションフレームであって、スライド機構に連結されるシートクッションフレームと、シートバックを取り付けるための、逆U字形のシートバックフレームとを含み、前記サイドフレームが、前記シートバックフレームの両下端部分にそれぞれ連結される、シートフレーム」を「シートクッションを取り付けるための、板状部材からそれぞれ構成される左右対称のサイドフレームから成るシートクッションフレームが、シートバックを取り付けるための、逆U字形のシートバックフレームの両下端部分に左右のリクライニング機構を介してそれぞれ連結されるシートフレームであって、前記左右対称のサイドフレームが、スライド機構の左右の可動部の平坦な上面にそれぞれ直接連結される、シートフレーム」と限定し、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「サイドフレーム」について補正前の「前記1対のサイドフレームが、変形時に横方向の変位を生じないように、それぞれの後端部の一部から前方に伸張する左右対称のエネルギー吸収部を有し、」を「前記左右対称のサイドフレームが、前記左右のリクライニング機構の下方にそれぞれの後端部の一部から前方に伸張する左右対称のエネルギー吸収部を有し、」及び「前記変形において、前記エネルギー吸収部の上縁が前記前端を中心に下方へ移動し、前記サイドフレームのエネルギー吸収部を除く本体が上下方向に圧縮され、横方向の変位を生ずることがない、」と限定するとともに、補正前の「前記サイドフレームが、それぞれの上端部と下端部とに前記シートフレームの内側に向かって張り出す張り出し部を有し、」を「前記左右対称のサイドフレームが、それぞれの前記後端部の少なくとも部分、上端部、及び下端部に前記シートフレームの内側に向かって張り出す張り出し部を有し、前記後端部のうち前記エネルギー吸収部の後縁を含む部分は、前記張り出し部を有しないか、又は変形を妨げないように有し、前記下端部の張り出し部が、前記上端部の張り出し部よりも幅広く平坦に形成され、前記スライド機構の可動部の平坦な上面に直接連結され、」と限定するものであって、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 したがって、本件補正は、第17条の2第5項第2号の規定に適合する。 さらに、本件補正は、新規事項を追加するものではない。 そこで、前記した事項により特定される、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2.引用例 (1)引用例1 原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特許第4151827号公報(以下「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 ア.「【請求項1】 フロア側に設けられ、シートクッションが設けられるロアフレームと、 該ロアフレームに回転可能に設けられ、シートバックが設けられるアッパフレームと、 前記ロアフレーム及び前記アッパフレームに取着され、前記アッパフレームの回転を禁止/許可するリクライニング機構と、 を有した車両用シートにおいて、 前記ロアフレームにおける前記リクライニング機構の取着部位よりも下方の周縁部に、前記ロアフレームの外側、内側の何れか一方に突出するように形成された折り曲げオフセット部と、 前記ロアフレームの周縁の略全周にわたって形成された補強用の折り曲げフランジ部と、を有し、 前記折り曲げオフセット部の形状は、前記ロアフレームの周縁側が底面側となり、3本の折り曲げ線を有する略三角錐の少なくとも一部であり、 前記折り曲げオフセット部の略中心での前記折り曲げフランジ部のロアフレーム側面に対する折り曲げ角は、他の部分での該折り曲げフランジ部のロアフレーム側面に対する折り曲げ角に比べ小さくなるようにしたことを特徴とする車両用シート。」 イ.「【0016】 最初に、実施の形態例の発明部分を説明するロアフレームの正面図である図1に示すように、ロアフレーム101の上部は図示しないリクライニング機構102を介してアッパフレーム103が取り付けられる。」 ウ.「【0022】 したがって車両後突時には、最初に必ず折り曲げオフセット部121が変形し、ロアフレーム101の変形の箇所、変形の方向が一定となる。 (2)折り曲げオフセット部121は、リクライニング機構102の下部に形成されることにより、車両後突時には、つぶされる方向に変形し、最終的には折り曲げオフセット部の幅方向の両端、即ち、折り曲げ線123と折り曲げ線127が当接することにより、それ以上の変形を禁止するストッパとなる。よって、ロアフレーム101の過度な変形を防止することができる。 (3)ロアフレーム101は、その周縁の略全周にわたって形成された補強用の折り曲げフランジ部111を有することにより、ロアフレーム101の厚さを薄くできる。 (4)折り曲げオフセット部121の形状をロアフレーム101の周縁側が底面側となリ、3本の折り曲げ線、即ち、折り曲げ線123、折り曲げ線125、折り曲げ線127からなる略三角錐の一部としたことにより、車両後突時での、ロアフレーム101の変形による移動は、略三角錐の頂点(O:図1参照)を中心とした回転となり、更に、ロアフレーム101の変形の方向が一定となる。 (5)折り曲げオフセット部121の形状を3本の折り曲げ線からなる略三角錐の少なくとも一部としたことにより、3本の折り曲げ線、即ち、折り曲げ線123、折り曲げ線125、折り曲げ線127から必ず変形し始めるので、変形の状態を正確に制御することができる。 (6)折り曲げオフセット部121の略中心での折り曲げフランジ部111での折り曲げ角(図5における角度θ)は、他の部分の折り曲げフランジ部111での折り曲げ角(図4における角度θ′)に比べ小さくなるように設定した。このため、本実施の形態例では、3本の折り曲げ線のうち、真ん中の折り曲げ線125が一番強度が弱い。したがって、更に、ロアフレーム101の変形の方向が一定となる。」 エ.上記ア.によれば、「車両用シート」が「ロアフレーム」と「アッパフレーム」と「リクライニング機構」とを有するのだから、「ロアフレーム」及び「アッパフレーム」は「車両用シート」の「ロアフレーム」及び「アッパフレーム」である。そして、「ロアフレーム」及び「アッパフレーム」はともにフレームであるから、「車両用シートのフレーム」と総称することができる。 オ.図1ないし5からは、ロアフレームが板状である点が看取できる。 カ.図1からは、ロアフレームにアッパフレームの下端が取り付けられている点が看取できる。 上記の記載事項を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「フロア側に設けられ、シートクッションが設けられる板状のロアフレームと、 該ロアフレームに回転可能に設けられ、シートバックが設けられるアッパフレームと、 前記ロアフレーム及び前記アッパフレームに取着されるリクライニング機構と、 前記ロアフレームにおける前記リクライニング機構の取着部位よりも下方の周縁部に、前記ロアフレームの外側、内側の何れか一方に突出するように形成された折り曲げオフセット部と、 前記ロアフレームの周縁の略全周にわたって形成された補強用の折り曲げフランジ部と、を有し、 前記折り曲げオフセット部の形状は、前記ロアフレームの周縁側が底面側となり、3本の折り曲げ線を有する略三角錐の少なくとも一部であり、 前記折り曲げオフセット部の略中心での前記折り曲げフランジ部のロアフレーム側面に対する折り曲げ角は、他の部分での該折り曲げフランジ部のロアフレーム側面に対する折り曲げ角に比べ小さくなるようにし、 ロアフレーム101の上部はリクライニング機構102を介してアッパフレーム103の下端が取り付けられ、 折り曲げオフセット部121は、リクライニング機構102の下部に形成されることにより、車両後突時には、つぶされる方向に変形し、最終的には折り曲げオフセット部の幅方向の両端、即ち、折り曲げ線123と折り曲げ線127が当接することにより、それ以上の変形を禁止するストッパとなり、 折り曲げオフセット部121の形状をロアフレーム101の周縁側が底面側となリ、3本の折り曲げ線、即ち、折り曲げ線123、折り曲げ線125、折り曲げ線127からなる略三角錐の一部としたことにより、車両後突時での、ロアフレーム101の変形による移動は、略三角錐の頂点を中心とした回転となり、更に、ロアフレーム101の変形の方向が一定となり、 折り曲げオフセット部121の略中心での折り曲げフランジ部111での折り曲げ角は、他の部分の折り曲げフランジ部111での折り曲げ角に比べ小さくなるように設定したため、3本の折り曲げ線のうち、真ん中の折り曲げ線125が一番強度が弱く、ロアフレーム101の変形の方向が一定となる 車両用シートのフレーム。」 (2)引用例2 同じく原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2001-186957号公報(以下「引用例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 キ.「【0007】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態によるシートバックフレーム構造について、図面を参照しながら説明する。なお、図中の矢印Fを付している場合は、その矢印の方向が車両の前方を示す。図1は、本発明に係るシートバックフレーム1を示し、図2及び図3はそのサイドフレームを示す。そのシートバックフレーム1は、逆U字形のパイプからなるアッパフレーム2と、アッパフレーム2の下端両端部に溶接により固着されている左右サイドフレーム3,4と、左右サイドフレーム3,4の下部の間に溶接により固定されているパイプからなるロアフレーム5とを備えている。 【0008】アッパフレーム2の上端部には、ヘッドレストを支持する一対のブラケット2aを、その長手方向を上下に向けて溶接にて固定している。左右サイドフレーム3,4は、対称形状であるので、左側のサイドフレーム3について説明すると、サイドフレーム3は、平板を横断面がコ字形状になるように成形したものであり、車両の幅方向に面する平板面6が設けられ、該平板面6の全周部にフランジ7が形成されている。平板面6は、上部と下部に同一平面上にある基準面8を設け、該基準面8の間には、図3または図4に示すように、基準面8に接する屈曲線9,10からシートの内方側に傾斜した、三角形からなる2つの傾斜部11,12を設けている。これらの傾斜部11,12の縦方向断面は、くの字形状を呈し、これら傾斜部11,12の境界には、稜線13が設けられている。」 ク.「【0011】次に、本実施の形態のシートバックフレーム構造の作用について説明する。図3に示すように、シートバックフレームに後方からの荷重Wがかかると、図4に示すように、サイドフレーム3には車両の内側に傾斜している変形部である2つの傾斜部11,12に応力が集中する。変形部に応力が集中すると、稜線13を折れ線として図中に示す矢印a?cの方向にサイドフレーム3が塑性変形し、その際にその変形量に見合った衝撃エネルギーを吸収することができる。荷重Wが大きければ、傾斜部11,12は重ね合うまで変形するが、さらに荷重Wが大きい場合は、図3に示す屈曲線9上に示すQがリンフォースメント15のサイドプレート17の上端部にあるストッパ部19に当接し、荷重Wが一定範囲内にあれば、サイドフレーム3のそれ以上の変形を阻止することができる。したがって、サイドフレーム3の変形の入力の位置、方向及び変形の量を調整することにより、車両の衝突時において乗員のサポート性能の向上を図ることができる。」 上記の記載事項を総合すると、引用例2には、次の事項(以下「引用例2記載事項」という。)が記載されているものと認められる。 「シートバックフレーム1は、逆U字形のパイプからなるアッパフレーム2と、左右サイドフレーム3,4と、ロアフレーム5とを備え、 左右サイドフレーム3,4は、対称形状であり、 サイドフレーム3は、平板を横断面がコ字形状になるように成形したものであり、車両の幅方向に面する平板面6が設けられ、 平板面6は、上部と下部に同一平面上にある基準面8を設け、 該基準面8の間には、基準面8に接する屈曲線9,10からシートの内方側に傾斜した、三角形からなる2つの傾斜部11,12を設け、 これらの傾斜部11,12の縦方向断面は、くの字形状を呈し、これら傾斜部11,12の境界には、稜線13が設けられ、 シートバックフレームに後方からの荷重Wがかかると、サイドフレーム3には車両の内側に傾斜している変形部である2つの傾斜部11,12に応力が集中し、変形部に応力が集中すると、稜線13を折れ線としてサイドフレーム3が塑性変形し、その際にその変形量に見合った衝撃エネルギーを吸収することができ、 サイドフレーム3の変形の入力の位置、方向及び変形の量を調整することにより、車両の衝突時において乗員のサポート性能の向上を図ることができる点。」 (3)引用例3 同じく原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開平10-201561号公報(以下「引用例3」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 ケ.「【0009】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態によるシートバックフレームについて、図面を参照しながら説明する。図1及び図2は本発明に係るシートバックフレーム1を示す。このシートバックフレーム1は、主として、左右対称形のサイドフレーム2a,2bと、サイドフレーム2a,2bの両上端部に溶着されているU字形のアッパフレームとしてのアッパパイプ3、サイドフレーム2a,2bの下部に溶着されているロアフレームとしてのロアパイプ4、及びアッパパイプ3の下部に溶着されているバックプレート5から構成されている。 【0010】サイドフレーム2a,2bは、断面がコ字形の板で形成され、図2に示すように、乗員の膝に位置する中段高さのAB-BC間を結ぶ線が弓なりに形成され、下端部にリクライニング装置の取付用ボルト孔7aが2個形成されている。図3に示すように、サイドフレーム2a,2bは前側12aを後側12bよりも広くした前開き形状である。また、サイドフレーム2a,2bの面は、図2に示すように、三角形ADB、BCD、CDEで示される三角平面を、サイドフレーム2a,2bの上下方向に隣接して設けている。これらの各三角平面は、サイドフレーム2a,2bの前側12aから後側12bにわたる辺a?dを2辺とし、サイドフレーム2a,2bの前側部または後側部を1辺としている。この各三角平面は同一平面上になく、図4に示すように三角形ADB、BCDの共通辺bで大きな折れ部を形成し、三角形CBD、CDEの共通辺cでも折れ部を形成し、また、三角形ADBの辺aと三角形CDEの辺dでも折れ部を形成している。」 コ.「【0013】以上、本発明の実施の形態によるシートバックフレームの構成について説明したが、次にその作用、効果について説明する。本実施の形態では、シートバックフレーム1のサイドフレーム2a,2bともに、リクライニング装置を取付けることができるので、このシートバックフレームを用いることで、両持ちリクライニングの座席とすることができる。このシートバックフレーム1の片側のみにリクライニング装置を取付け、他方のヒンジをフリーヒンジとし、リクライニング装置側と同一取付けにすることで、片持ちリクライニングの座席となる。これにより、同一のシートバックフレーム1で、片持ちリクライニングと両持ちリクライニングの座席としての対応が可能となる。したがって、同一形状のシートバックフレームを、大量に生産するようになり、生産コストが安くなる。 【0014】図2に示すように、三角平面ABD、BCDにより大きな折り部を設定し、さらにサイドフレーム2a,2bを前開きにしたことから、シートバックフレーム1に後方への荷重が加わったとき、サイドフレームの折れる部位や倒れる方向を限定することができる。すなわち、サイドフレーム2a,2bが折れ曲がるときは、三角平面ABD、BCD,CDEがこれらの共通辺b,cで折れ曲がり、かつ三角平面ABD、BCD、CDEの面積が大きいことから、荷重入力のコントロールできる時間的幅が広がり、強い荷重を長い時間で受けることができ、変形途中で急激なモーメント変化が起こらない。」 上記の記載事項を総合すると、引用例3には、次の事項(以下「引用例3記載事項」という。)が記載されているものと認められる。 「シートバックフレーム1は、 左右対称形のサイドフレーム2a,2bと、サイドフレーム2a,2bの両上端部に溶着されているU字形のアッパフレームとしてのアッパパイプ3から構成され、 サイドフレーム2a,2bともに、リクライニング装置を取付けることができ、 サイドフレーム2a,2bの面は、三角平面を、サイドフレーム2a,2bの上下方向に隣接して設け、 三角平面ABD、BCDにより大きな折り部を設定し、 シートバックフレーム1に後方への荷重が加わったとき、サイドフレームの折れる部位や倒れる方向を限定することができる点。」 (4)引用例4 同じく原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2009-154693号公報(以下「引用例4」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 サ.「【0009】 はじめに、図1?2を参照して、本発明の実施例に係る車両用シートの骨格の構成について説明する。この車両用シートの例として、例えば、自動車内に配置されている助手席を例に説明することとする。この車両用シートの骨格は、乗員の着座部となるクッションフレーム1と、乗員の背凭れ部となるバックフレーム2とから主として構成されている。 【0010】 これらクッションフレーム1とバックフレーム2のうち、クッションフレーム1について説明すると、クッションフレーム1は、インナ側とアウタ側(図1において、左側と右側)の左右1対のロアアーム10、10から構成されている。この両ロアアーム10は、所望する車両用シートの形状を成す壁面12と、その周縁を折り曲げることによって形成されるフランジ14とから構成されている。 【0011】 また、クッションフレーム1は、両ロアアーム10が、左右1対からなるロアレール30、30と同アッパレール32、32から構成される公知のスライド機構Sを介して車両フレームFに対し組み付けられることで、前後方向にスライド移動可能となっている。このとき、クッションフレーム1は、両ロアアーム10のうち、インナ側(右側)のロアアーム10が、アウタ側(左側)のロアアーム10に対して左右方向の外方(図3において、右側)へ張り出す格好となるように、アッパレール32に組み付けられている。」 シ.図1及び3からは、フランジ14がロアアーム10の内側に折り曲げられる点、及び、ロアアーム10の下端部のフランジ14が、上端部のフランジ14よりも幅広く平坦に形成され、スライド機構Sのアッパレール32、32の平坦な上面に直接連結される点を看取することができる。 上記の記載事項を総合すると、引用例4には、次の事項(以下「引用例4記載事項」という。)が記載されているものと認められる。 「車両用シートの骨格は、 乗員の着座部となるクッションフレーム1と、乗員の背凭れ部となるバックフレーム2とから主として構成され、 クッションフレーム1は、インナ側とアウタ側の左右1対のロアアーム10、10から構成され、 クッションフレーム1は、両ロアアーム10が、スライド機構Sを介して車両フレームFに対し組み付けられ、 ロアアーム10は、壁面12と、その周縁を折り曲げることによって形成されるフランジ14とから構成され、 フランジ14がロアアーム10の内側に折り曲げられ、 ロアアーム10の下端部のフランジ14が、上端部のフランジ14よりも幅広く平坦に形成され、スライド機構Sのアッパレール32、32の平坦な上面に直接連結される点。」 (5)引用例5 同じく原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開昭62-012435号公報(以下「引用例5」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 ス.「シートクツシヨン側アーム12の下縁には内側に向けて複数個のフランジ部12aを曲折成形してあつて、このフランジ部12aを介してアツパレール3の上面にボルト・ナツト7固定してある。」(第3ページ左上欄第1?4行) セ.第1?3図からは、アツパレール3の上面が平坦である点、及び、シートクツシヨン側アーム12の下縁のフランジ部12aが、上縁のフランジ部よりも幅広く平坦に形成される点を看取することができる。 上記の記載事項を総合すると、引用例5には、次の事項(以下「引用例5記載事項」という。)が記載されているものと認められる。 「シートクツシヨン側アーム12の下縁には内側に向けて複数個のフランジ部12aを曲折成形してあつて、このフランジ部12aを介してアツパレール3の上面にボルト・ナツト7固定してあり、 アツパレール3の上面が平坦であり、 シートクツシヨン側アーム12の下縁のフランジ部12aが、上縁のフランジ部よりも幅広く平坦に形成される点。」 (6)引用例6 前置報告書で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2002-012072号公報(以下「引用例6」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 ソ.「【0022】シートクッション2には、その側辺部に沿ってシートクッションフレーム10が設けられている。シートバック3には、シートクッション2と同様に、その側辺部に沿ってシートバックフレーム12が設けられている。シートバックフレーム12は、その下部に回動連結部材14が接続されており、この回動連結部材14を介して該下部がシートクッションフレーム10の後端側のシートバック支持部10aに回動可能に連結されている。この回動連結部材14は、シートバックフレーム12をこの回動連結部材14を回動中心として前方及び後方へ傾倒(リクライニング)させるように回動すると共に、このシートバックフレーム12をシートクッションフレーム10に対して任意の角度にて固定することができるように構成されている。シートバック3は、このシートバックフレーム12と常時一体にて座席前後方向にリクライニングする。」 タ.「【0026】シートクッションフレーム10の後部のシートバック支持部10aの前縁側の近傍部分には、シートバック3に対し所定値を超える前方へのモーメントが生じた際に塑性変形してこのシートバック3が前方へ回動することを許容する衝撃吸収部16が設けられている。」 チ.図1からは、1対のシートクッションフレーム10が左右対称である点、及び、シートバックフレーム12が逆U字形である点を看取することができる。 ツ.図1からは、上記セ.の記載を踏まえると、シートバックフレーム12は、その両下部に左右の回動連結部材14が接続される点を看取することができる。 上記の記載事項を総合すると、引用例6には、次の事項(以下「引用例6記載事項」という。)が記載されているものと認められる。 「1対のシートクッションフレーム10が左右対称であり、 シートバックフレーム12が逆U字形であり、 シートバックフレーム12は、その両下部に左右の回動連結部材14が接続されており、この回動連結部材14を介して該下部がシートクッションフレーム10の後端側のシートバック支持部10aに回動可能に連結され、 シートクッションフレーム10の後部のシートバック支持部10aの前縁側の近傍部分には、シートバック3に対し所定値を超える前方へのモーメントが生じた際に塑性変形してこのシートバック3が前方へ回動することを許容する衝撃吸収部16が設けられている点。」 3.対比 本願補正発明と引用発明1とを対比する。 後者の「シートクッション」は、その構造、機能、作用等からみて、前者の「シートクッション」に相当し、同様に、「ロアフレーム」は「サイドフレーム」に、「シートバック」は「シートバック」に、「アッパフレーム」は「シートバックフレーム」に、「リクライニング機構」は「リクライニング機構」に、「折り曲げフランジ部」は「張り出し部」に、「車両用シートのフレーム」は「シートフレーム」に、それぞれ相当する。 後者の「ロアフレーム」は「シートクッションが設けられる」のだから、シートクッションのフレームであることは明らかである。そうすると、後者の「シートクッションが設けられる板状のロアフレーム」と前者の「シートクッションを取り付けるための、板状部材からそれぞれ構成される左右対称のサイドフレームから成るシートクッションフレーム」とは「シートクッションを取り付けるための、板状部材から構成されるサイドフレームから成るシートクッションフレーム」との概念で共通する。 後者の「シートバックが設けられるアッパフレーム」と前者の「シートバックを取り付けるための、逆U字形のシートバックフレーム」とは、シートバックを取り付けるための、シートバックフレーム」との概念で共通する。 後者の「ロアフレームの上部はリクライニング機構を介してアッパフレームの下端が取り付けられ」る点と、前者の「シートバックフレームの両下端部分に左右のリクライニング機構を介してそれぞれ連結される」点とは、「シートバックフレームの下端部分にリクライニング機構を介して連結される」との概念で共通する。 例えば、引用文献1に「衝撃が大きい場合には、ロアフレーム3が変形することにより、衝撃のエネルギーが吸収される。」(段落【0004】)と記載されるように、衝撃により変形する部材がエネルギーを吸収することは技術常識であるところ、後者の「ロアフレーム」に形成された「折り曲げオフセット部」は、「車両後突時には、つぶされる方向に変形」するから、エネルギーを吸収することは明らかであって、前者の「エネルギー吸収部」に相当する。 後者の「前記ロアフレームにおける前記リクライニング機構の取着部位よりも下方の周縁部に、前記ロアフレームの外側、内側の何れか一方に突出するように形成された折り曲げオフセット部」であって、「前記折り曲げオフセット部の形状は、前記ロアフレームの周縁側が底面側となり、3本の折り曲げ線を有する略三角錐の少なくとも一部であ」る点と、前者の「前記左右対称のサイドフレームが、前記左右のリクライニング機構の下方にそれぞれの後端部の一部から前方に伸張する左右対称のエネルギー吸収部を有し、前記左右対称のエネルギー吸収部が、対向するサイドフレームに向かってそれぞれの板状部材の一部が凹んだ凹部から成り、又は、その反対側に向かってそれぞれの板状部材の一部が凹んだ凹部から成り、前記凹部の周縁が、前記後端部上の上端と該上端の下方に位置する前記後端部上の下端との間に伸張する後縁と、前記上端から前記凹部の前端へ伸張する上縁と、前記下端から前記前端へ伸張する下縁とにより画成され」る点とは、後者の「略三角錐」の「底面側」が前者の「後縁」に相当し、同様に「略三角錐」の「3本の折り曲げ線」のうちの上側及び下側の「折り曲げ線」がそれぞれ「上縁」及び「下縁」に相当する。また、後者の「略三角錐」はロアフレームの周縁側を底面側とするから、その頭頂部はロアフレームの前側に位置していて、前者の「前端」に相当する。そうすると、両者は「前記サイドフレームが、前記リクライニング機構の下方に後端部の一部から前方に伸張するエネルギー吸収部を有し、前記エネルギー吸収部が、板状部材の一部が凹んだ凹部から成り、又は、その反対側に向かって板状部材の一部が凹んだ凹部から成り、前記凹部の周縁が、前記後端部上の上端と該上端の下方に位置する前記後端部上の下端との間に伸張する後縁と、前記上端から前記凹部の前端へ伸張する上縁と、前記下端から前記前端へ伸張する下縁とにより画成される」との概念で共通する。 後者の「折り曲げフランジ部」は「ロアフレームの周縁の略全周にわたって形成された」ものであり、「折り曲げオフセット部121の略中心での折り曲げフランジ部111での折り曲げ角は、他の部分の折り曲げフランジ部111での折り曲げ角に比べ小さくなるように設定したため、3本の折り曲げ線のうち、真ん中の折り曲げ線125が一番強度が弱く、ロアフレーム101の変形の方向が一定となる」から、「折り曲げオフセット部」の「折り曲げフランジ部」は変形を妨げないといえる。そうすると、後者の「折り曲げフランジ部」のこのような点と前者の「前記左右対称のサイドフレームが、それぞれの前記後端部の少なくとも部分、上端部、及び下端部に前記シートフレームの内側に向かって張り出す張り出し部を有し、前記後端部のうち前記エネルギー吸収部の後縁を含む部分は、前記張り出し部を有しないか、又は変形を妨げないように有」する点とは、「前記サイドフレームが、前記後端部の少なくとも部分、上端部、及び下端部に張り出す張り出し部を有し、前記後端部のうち前記エネルギー吸収部の後縁を含む部分は、前記張り出し部を変形を妨げないように有する」との概念で共通する。 後者の「折り曲げオフセット部121は、車両後突時には、つぶされる方向に変形し、最終的には折り曲げオフセット部の幅方向の両端、即ち、折り曲げ線123と折り曲げ線127が当接することにより、それ以上の変形を禁止するストッパとなり、折り曲げオフセット部121の形状をロアフレーム101の周縁側が底面側となリ、3本の折り曲げ線、即ち、折り曲げ線123、折り曲げ線125、折り曲げ線127からなる略三角錐の一部としたことにより、車両後突時での、ロアフレーム101の変形による移動は、略三角錐の頂点を中心とした回転となり、更に、ロアフレーム101の変形の方向が一定とな」る点は、「略三角錐の頂点を中心とした回転」が上下方向の移動を含むことは明らかであるから、前者の「前記変形において、前記エネルギー吸収部の上縁が前記前端を中心に下方へ移動し、前記サイドフレームのエネルギー吸収部を除く本体が上下方向に圧縮され」る点に相当する。 したがって、両者は、 「シートクッションを取り付けるための、板状部材から構成されるイドフレームから成るシートクッションフレームが、シートバックを取り付けるための、シートバックフレームの下端部分にリクライニング機構を介して連結されるシートフレームであって、 前記サイドフレームが、前記リクライニング機構の下方に後端部の一部から前方に伸張するエネルギー吸収部を有し、 前記エネルギー吸収部が、板状部材の一部が凹んだ凹部から成り、又は、その反対側に向かって板状部材の一部が凹んだ凹部から成り、 前記凹部の周縁が、前記後端部上の上端と該上端の下方に位置する前記後端部上の下端との間に伸張する後縁と、前記上端から前記凹部の前端へ伸張する上縁と、前記下端から前記前端へ伸張する下縁とにより画成され、 前記サイドフレームが、前記後端部の少なくとも部分、上端部、及び下端部に前記シートフレームの内側に向かって張り出す張り出し部を有し、前記後端部のうち前記エネルギー吸収部の後縁を含む部分は、前記張り出し部を変形を妨げないように有し、 前記変形において、前記エネルギー吸収部の上縁が前記前端を中心に下方へ移動し、前記サイドフレームのエネルギー吸収部を除く本体が上下方向に圧縮される、シートフレーム。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 前者においては「サイドフレームが左右対称であり、左右のリクライニング機構を有し、左右のリクライニング機構の下方にそれぞれの後端部の一部から前方に伸張する左右対称のエネルギー吸収部を有し、左右対称のエネルギー吸収部が、対向するサイドフレームに向かってそれぞれの板状部材の一部が凹んだ凹部から成り、又は、その反対側に向かってそれぞれの板状部材の一部が凹んだ凹部から成る」のに対して、後者はその点につき明らかでない点。 [相違点2] 前者においては「シートバックフレームが逆U字形である」のに対して、後者はその点につき明らかでない点。 [相違点3] 前者においては「左右対称のサイドフレームが、スライド機構の左右の可動部の平坦な上面にそれぞれ直接連結される」のに対して、後者はその点につき明らかでない点。 [相違点4] 前者においては「変形において、サイドフレームのエネルギー吸収部を除く本体が横方向の変位を生ずることがない」のに対して、後者はその点につき明らかでない点。 4.判断 上記相違点について検討する。 (1)相違点1について 一般に、シートフレームの変形を調整するエネルギー吸収部を有するシートフレームにおいて、エネルギー吸収部が設けられるフレーム及びエネルギー吸収部をそれぞれ左右対称とすることは、例えば、上記引用例2記載事項、引用例3記載事項及び引用例6記載事項のように、本出願の出願前に周知の技術事項(以下「周知技術1」という。)である。 引用発明1は「車両後突時に、ロアフレームの変形の箇所、変形の方向が一定となる車両用シートを提供すること」(段落【0005】)を課題とするものであって、引用発明1と周知技術1とはシートフレームの技術分野に属する点で共通し、エネルギー吸収部によってシートフレームの変形を調整するという共通の作用・機能を有するから、引用発明1において周知技術1を採用することは当業者が容易に想到することができたものである。 そして、引用発明1に周知技術1を適用すれば、凹部から成るエネルギー吸収部が左右対称に設けられることになるから、必然的に、エネルギー吸収部は、対向するフレームに向かってそれぞれの板状部材の一部が凹んだ凹部から成り、又は、その反対側に向かって板状部材の一部が凹んだ凹部から成ることになる。 引用発明1においてリクライニング装置をシートフレームの左右に設けるか片側に設けるかは、シートフレームの強度等を勘案して当業者が適宜選択することができる設計事項であって、一般に、シートフレームにおいて左右のリクライニング装置を設けることは、例えば、上記引用例3記載事項及び引用例6記載事項のように、本出願の出願前に周知の技術事項(以下「周知技術2」という。)であるから、引用発明1において上記相違点1に係る本願補正発明の「左右のリクライニング機構を有する」との点を採用することは当業者が容易に想到し得るものである。 そうすると、引用発明1に周知技術1及び2を適用して、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。 (2)相違点2について シートバックフレームはシートを支持する枠材であるから、その支持強度を高めることは一般的な課題であって、シートバックフレームにおいて支持強度を高めるために左右両側のフレームを連結することは常套手段である。 そして、一般に、シートバックフレームを逆U字形にして左右のフレームを連結することは、例えば、上記引用例2記載事項、引用例3記載事項及び引用例6記載事項のように、本出願の出願前に周知の技術事項(以下「周知技術3」という。)であるから、引用発明1においてシートバックフレークの支持強度を高めるために、周知技術3を採用することは当業者が容易になし得たことである。 そうすると、引用発明1に周知技術3を適用して、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。 (3)相違点3について 一般に、シートフレームにおいて、左右対称のサイドフレームを、スライド機構の左右の可動部の平坦な上面にそれぞれ直接連結することは、例えば、上記引用例4記載事項及び引用例5記載事項のように、本出願の出願前に周知の技術事項(以下「周知技術4」という。)である 引用発明1と周知技術4とはシートフレームの技術分野に属する点で共通する。また、上記(2)のとおり、シートフレームにおいて支持強度を高めることは一般的な課題であるところ、周知技術4のように、シートフレームの各部材の連結部分を平坦にしたり直接連結すれば、シートフレームの強度が高まることは当業者にとって明らかな事項である。 すると、引用発明1において、シートフレームの支持強度を高めるために、周知技術4を採用することは当業者が容易になし得たことである。 そうすると、引用発明1に周知技術4を適用して、相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。 (4)相違点4について 上記(1)のとおり、エネルギー吸収部が設けられるフレーム及びエネルギー吸収部をそれぞれ左右対称とすることは本出願の出願前に周知の技術事項(「周知技術1」)である。 本出願の明細書の段落【0023】には「本発明に係るシートフレームでは、左右1対のサイドフレームが左右対称のエネルギー吸収部を有することにより、サイドフレームが上下方向にバランス良く圧縮変形し、横方向の変位を生じることがない。」と記載されているところ、引用発明1に周知技術1を適用すれば、左右1対のサイドフレームが左右対称のエネルギー吸収部を有することになるから、本願補正発明と同様に、サイドフレームが横方向の変位を生じることはなく、エネルギー吸収部を除く本体も横方向の変位を生じないものと認められる。 そうすると、引用発明1に周知技術1を適用して、相違点び4に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。 そして、本願補正発明の発明特定事項の全体によって奏される効果も、引用発明1及び周知技術1ないし4から当業者が予測し得る範囲内のものである。 よって、本願補正発明は、引用発明1及び周知技術1ないし4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 5.むすび 以上のとおりであって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 したがって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。 第3.本願の発明について 1.本願の発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成27年9月2日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、「第1」の「[理由]1.(2)」に記載したとおりのものである。 2.引用例 原査定の拒絶理由に引用された本願の出願前に頒布された刊行物である引用例1ないし5の記載内容は、上記「第2」の「2.引用例」に記載したとおりである。 3.対比及び判断 本願発明は、上記「第2」の「1.(2)」で検討したとおり、本願補正発明に係る「シートフレーム」について、「シートクッションを取り付けるための、板状部材からそれぞれ構成される左右対称のサイドフレームから成るシートクッションフレームが、シートバックを取り付けるための、逆U字形のシートバックフレームの両下端部分に左右のリクライニング機構を介してそれぞれ連結されるシートフレームであって、前記左右対称のサイドフレームが、スライド機構の左右の可動部の平坦な上面にそれぞれ直接連結される、シートフレーム」を「シートクッションを取り付けるための、板状部材からそれぞれ構成される1対のサイドフレームから成るシートクッションフレームであって、スライド機構に連結されるシートクッションフレームと、シートバックを取り付けるための、逆U字形のシートバックフレームとを含み、前記サイドフレームが、前記シートバックフレームの両下端部分にそれぞれ連結される、シートフレーム」と上位概念化し、本願補正発明に係る「サイドフレーム」について、「前記左右対称のサイドフレームが、前記左右のリクライニング機構の下方にそれぞれの後端部の一部から前方に伸張する左右対称のエネルギー吸収部を有し、」及び「前記変形において、前記エネルギー吸収部の上縁が前記前端を中心に下方へ移動し、前記サイドフレームのエネルギー吸収部を除く本体が上下方向に圧縮され、横方向の変位を生ずることがない、」を補正前の「前記1対のサイドフレームが、変形時に横方向の変位を生じないように、それぞれの後端部の一部から前方に伸張する左右対称のエネルギー吸収部を有し、」と上位概念化するとともに、「前記左右対称のサイドフレームが、それぞれの前記後端部の少なくとも部分、上端部、及び下端部に前記シートフレームの内側に向かって張り出す張り出し部を有し、前記後端部のうち前記エネルギー吸収部の後縁を含む部分は、前記張り出し部を有しないか、又は変形を妨げないように有し、前記下端部の張り出し部が、前記上端部の張り出し部よりも幅広く平坦に形成され、前記スライド機構の可動部の平坦な上面に直接連結され、」を「前記サイドフレームが、それぞれの上端部と下端部とに前記シートフレームの内側に向かって張り出す張り出し部を有し、前記下端部の張り出し部が、前記上端部の張り出し部よりも幅広く平坦に形成され、前記スライド機構の可動部に直接連結される」と上位概念化するものである。 そうすると、本願発明と引用発明1とは、上記「第2」の「3.対比」において認定した相違点2及び以下の点において相違し、その他の点において一致する。 [相違点A] 前者においては「サイドフレームが1対であり、左右対称のエネルギー吸収部を有し、左右対称のエネルギー吸収部が、対向するサイドフレームに向かってそれぞれの板状部材の一部が凹んだ凹部から成り、又は、その反対側に向かってそれぞれの板状部材の一部が凹んだ凹部から成る」のに対して、後者はその点につき明らかでない点。 [相違点B] 前者においては「シートクッションフレームがスライド機構に連結される」のに対して、後者はその点につき明らかでない点。 [相違点C] 前者においては「サイドフレームが変形時に横方向の変位を生じないようにエネルギー吸収部を有する」のに対して、後者はその点につき明らかでない点。 以上の相違点について検討する。 相違点2については、「第2」の「4.(2)」で検討したとおりであるから、引用発明1に周知技術3を適用して、相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。 相違点Aについては、「第2」の「4.(1)」での検討を踏まえると、引用発明1に周知技術1を適用して相違点Aに係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。 相違点Bについては、「第2」の「4.(3)」の相違点3と同様に、引用発明1に周知技術4を適用して相違点Bに係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。 相違点Cについては、「第2」の「4.(4)」の相違点4と同様に、引用発明1に周知技術1を適用して相違点Cに係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。 したがって、本願発明は、引用発明1並びに周知技術1、3及び4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項に該当し特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-05-15 |
結審通知日 | 2017-05-22 |
審決日 | 2017-06-02 |
出願番号 | 特願2011-282638(P2011-282638) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B60N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小島 哲次 |
特許庁審判長 |
黒瀬 雅一 |
特許庁審判官 |
畑井 順一 森次 顕 |
発明の名称 | 乗り物用シートのためのシートフレーム |
代理人 | 堀 明▲ひこ▼ |