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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W |
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管理番号 | 1330649 |
審判番号 | 不服2016-10790 |
総通号数 | 213 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-09-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-07-15 |
確定日 | 2017-08-08 |
事件の表示 | 特願2014-100597「異種ネットワークにおける受信を促進するセルにわたって情報交換するためのメカニズム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月 9日出願公開、特開2014-195294、請求項の数(20)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2010年(平成22年)6月16日(パリ条約による優先権主張 2009年6月16日 米国、2010年6月15日 米国)を国際出願日として出願した特願2012?516275号の一部を、平成26年5月14日に新たに外国語書面出願したものであって、平成27年2月25日付けで拒絶理由が通知され、同年9月3日付けで意見書が提出され、平成28年3月4日付けで拒絶査定されたところ、同年7月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされ、同年9月21日に前置報告がされ、同年12月27日に審判請求人から前置報告に対する上申がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成28年3月4日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願の請求項1-20に係る発明(平成26年6月13日付け手続補正書)は先の平成27年2月25日付け拒絶理由通知書に記載した下記の理由により特許を受けることができない。 理由1 この出願の請求項1-20に係る発明は、下記引用文献1-2に記載された発明及び引用文献3に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特表2009-514325号公報 2.国際公開第2009/055973号 3.再公表特許第96/023371号 第3 本願発明 本願請求項1-20に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明20」という。)は、平成28年7月15日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-20に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 ワイヤレス通信の方法において、 ユーザ機器(UE)からの信号を含む信号を受信することと、 隣接するeノードBのシステム情報を取得することと、 前記UEからの信号に関して、前記受信した信号を向上させるために、前記システム情報に基づいて、前記受信した信号を処理することとを含み、 前記受信した信号は、前記隣接するeノードBと通信中の第2のUEからの信号を含み、前記処理することは、前記UEからの信号に関して、前記受信した信号の信号対干渉比を改善させるために、前記システム情報に基づいて、前記第2のUEからの信号を前記受信した信号から消去することを含み、前記システム情報を取得することは、前記隣接するeノードBから前記システム情報を取得するように第3のUEに要求することをさらに含み、前記システム情報は、前記第3のUEから取得する方法。」 本願発明2-5は本願発明1を減縮した発明である。 本願発明6-10、11-15、16-20は、それぞれ本願発明1-5に対しカテゴリ表現が異なるだけの発明である。 第4 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0001】 本発明は、移動通信ネットワークに関する。詳細には、移動通信ネットワークのアップリンク方向におけるセル間干渉の低減に関する。」 「【0027】 本発明の目的は、割当てられたリソースが第1の基地局と第2の基地局の間でセル間干渉を引き起こす可能性があることを特徴とする少なくとも第2の基地局でどのリソースが割当てられているかを、第1の基地局に認識せることによって、達成される。これらの割当てられたリソースは、セル間干渉のリスクが高くなるという結果をもたらす、優先度の高いユーザによって割当てられていることが好ましい。従って、第1の基地局は、無線リソースすなわちチャネルを識別するためのIDによって、またはリソースが割当てられている移動端末を識別するためのIDによって、割当てられたリソースに気付いているため、第1の基地局はシステム性能を低下させる可能性のある干渉を低減することができる。 【0028】 このようにして、この目的は、その基地局によってサービス提供される移動端末を識別するためのIDを、またはその基地局によって提供されるアップリンク方向のチャネルを識別するためのIDを、使用するように構成された移動通信ネットワーク内の基地局の中で使用されるように構成された第1のユニットによって達成される。本発明による第1のユニットは、干渉低減の目的で気付いているべき少なくとも第2の基地局に属する、移動端末もしくはチャネルの少なくとも1つの追加IDの情報を管理する手段と、追加IDによって識別された移動端末もしくはチャネルによって引き起こされたセル間干渉を低減する手段とを備える。」 「【0030】 移動端末またはチャネルを識別するのに使用されるIDには、一好適実施形態によると拡散符号が含まれている。拡散符号は、CDMAに基づくネットワークおよびOFDMに基づくネットワークではスクランブリングコードと呼ばれてもよい。スクランブリングコードは、移動端末または移動端末に割当てられたチャネルを識別するために使用されてもよい。(ここで留意すべきだが、1つの移動端末に1つ以上のチャネルが同時に割当てられてもよい。)従って、スクランブリングコードは、予約済スクランブリングコードが少なくとも第2の基地局によって識別できるようにする手段が提供されていることを特徴とする、例えば優先度の高い、または高速データ速度のE-DCH(エンハンスト専用チャネル)ユーザまたはチャネルのために、第2の基地局において予約されてもよい。ここで留意すべきだが、ユーザという用語は、この明細書では移動端末とも呼ばれるユーザ装置を指し示すのに用いられ、ユーザには1つ以上のチャネルが割当てられてもよい。従って、本発明によってどのリソースが割当てられるのかを第1の基地局に認識させるのに使用されることになるIDは、移動端末、チャネル、もしくはその組み合わせを識別するためのIDであってもよい。使用されることになるIDのもう1つの例は、タイムスロット番号および周波数と共に、GSMネットワーク内の移動端末およびセルを識別するのに用いられる、学習系列コードである。 【0031】 好適実施形態による第1の基地局の中で用いられるように構成された第1のユニットは、第2の基地局で予約済のスクランブリングコードの情報を管理する手段を備える。そこで第1の基地局は、予約済スクランブリングコードによって識別された移動端末またはチャネルによって引き起こされるセル間干渉を低減することができる。各種のセル間干渉低減装置が用いられてもよい。これについては、さらに後述する。 【0032】 どのスクランブリングコードが第2の基地局で予約されているのかという情報を、第1の基地局は、例えば下記の実施形態の1つを用いることによって取得する。 【0033】 さらに、ノードがこの情報をさらに第1の基地局へ送信することを特徴とする、第2の基地局の中で用いられている第2のユニットは、第2の基地局のリソースを制御するノード、例えばRNCまたはBSCに属するUEの予約済ID、例えばアップリンクのスクランブリングコード、の情報を送信する手段を備えてもよい。あるいは、第2のユニットは、少なくとも1つの予約済IDのために用いられるため、複数の事前定義されたIDをノード、例えばRNCまたはBSCで予約する手段と、これらのコードに割当てられることになる優先度の高いE-DCHユーザを選択する手段とを備えてもよい。従って本発明は、予約済IDの情報を送受信する手段を備えた、例えばRNCまたはBSCのような、少なくとも1つの基地局を制御するノードにも関係する。予約済IDを示す新たな情報要素が導入されてもよい。 【0034】 第1の基地局で用いられることになる第1のユニットは、予約済IDの情報をネットワーク内でそのノードから、例えばRNCから受信するように構成されてもよい。しかし、例えば高速データ速度ユーザを意図した、予約済スクランブリングコードの情報もまた、ネットワークの配置においてハードコード化されてもよい。 【0035】 第1の選択肢によると、RNCによって制御される基地局が、それらの対応するRNCに接続された他の基地局についての予約済スクランブリングコードの通知を受ける(すなわち、他の基地局が同じRNCに接続されることも別のRNCに接続されることもあるだろう)。RNCは、同じ場所に位置してもよいが、それでもやはり別のRNCエンティティを表す。 【0036】 第2の選択肢によると、ノード(例えばRNC、O&Mセンタ、または同様のもの)が、制御される各基地局に、隣接セルの基地局に属するIDを通知する。他の基地局の予約済IDについての知識をどのようにして配布するかを決定する際にノードがガイド(手引き)として使えるよう、隣接セルのリストが使用されてもよい。」 「【0038】 本発明の好適実施形態によると、第1のユニットは、前記追加IDによって識別された移動端末またはチャネルがアクティブであるかどうかを検出する手段を備える。第1の基地局で使用されることになる第1のユニットは、例えば割当てられたリソースを用いて移動端末のIDを知ることによって、第2の基地局で割当てられたリソースの情報を有していることから、第1の基地局は、干渉低減を第2の基地局の移動端末に適用することができる。従って、この好適実施形態によると、干渉低減は、識別された移動端末/チャネルがアクティブである場合に限って実行されることが望ましいことから、第1の基地局で第1のユニットが、まず、識別された移動端末/チャネルがアクティブかどうか、すなわち、第2の基地局に接続されているかどうかを検出することが望ましい。それは、接続されていない移動端末は、干渉低減の目的でのみ復号されることを意味し、復号されたデータ情報は、通常はRNCへさらに送信されることはない。移動端末がアクティブであるかどうか検出する目的で、第2の基地局における識別された移動端末またはチャネルの受信電力が、第1の基地局によってサービス提供されている移動端末の電力と比較される。 【0039】 それ以外に使用されてもよい干渉低減の方法として、多様な干渉低減とマルチユーザ検出(MUD)がある。干渉低減の方法の例としては、個々のユーザを復号する処理と復号された情報を用いて干渉を再生して取り去る処理とをデコーダが切り替えることを特徴とする並行部分的干渉除去と、第1のユーザが復号され、その信号が再生され、次いで再生された信号が受信信号から差し引かれ、第2のユーザが残りの信号から復号され、次いでその信号が再生され、受信信号から最初の2つの再生された信号が差し引かれ、第3のユーザが残りの信号から復号されること等を特徴とする順次干渉除去とがある。」 「【0046】 詳細な説明では3Gとエンハンストアップリンクに焦点を当てているが、本発明は、一般に、例えばGSM、進化した3G、4G、OFDMシステムのような、他のセルラーネットワーク内でセル間干渉を低減するのにも適用可能である。」 ここで、第1の基地局と第2の基地局は隣接しているから、「第2の基地局」は「隣接する基地局」に相当すること、引用文献1は、セル間干渉を低減する発明であるから、第1の基地局は第2の基地局と通信中の第2の移動端末からの信号を受信し、前記第2の移動端末からの信号を第1の基地局が受信した信号から消去する処理を行うことは明らかであるから、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「移動通信ネットワークの方法において、 移動端末からの信号を含む信号を受信することと、 隣接する基地局のID情報を取得することと、 前記移動端末からの信号に関して、前記受信した信号を向上させるために、前記ID情報に基づいて、前記受信した信号を処理することとを含み、 前記受信した信号は、前記隣接する基地局と通信中の第2の移動端末からの信号を含み、前記処理することは、前記移動端末からの信号に関して、前記受信した信号の信号対干渉比を改善させるために、前記ID情報に基づいて、前記第2の移動端末からの信号を前記受信した信号から消去することを含み、前記ID情報は、ノード(RNC)から取得する方法。」 2.引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2の5頁15行?26行、6頁27行?7頁3行、7頁11行?17行、7頁25行?29行、及び図3の記載からみて、当該引用文献2には、「基地局BNS1から隣接基地局BS2に、移動局MSを介して隣接BS調整のための制御情報を転送する。」という技術的事項が記載されていると認められる。 3.引用文献3について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3の13頁5行?28行、及び図5、7-9の記載から、当該引用文献3には、「方式Bの無線基地局が、選択した移動局に対して、方式Aの無線基地局からの電界レベルを測定することを指示し、移動局はその測定結果を方式Bの無線基地局に送信する。」という周知技術が記載されていると認められる。 第5 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 引用発明の「移動通信ネットワーク」は本願発明1の「ワイヤレス通信」に、引用発明の「移動端末」は本願発明1の「UE」に、引用発明の「ID情報」は本願発明1の「システム情報」に相当し、引用発明の段落【0046】の記載から、引用発明の「基地局」が4Gの基地局とするならば、本願発明1の「eノードB」に相当するといえる。 したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「ワイヤレス通信の方法において、 ユーザ機器(UE)からの信号を含む信号を受信することと、 隣接するeノードBのシステム情報を取得することと、 前記UEからの信号に関して、前記受信した信号を向上させるために、前記システム情報に基づいて、前記受信した信号を処理することとを含み、 前記受信した信号は、前記隣接するeノードBと通信中の第2のUEからの信号を含み、前記処理することは、前記UEからの信号に関して、前記受信した信号の信号対干渉比を改善させるために、前記システム情報に基づいて、前記第2のUEからの信号を前記受信した信号から消去することを含む方法。」 (相違点) (相違点1)引用発明は、システム情報をRNCから取得しているのに対し、本願発明1は、システム情報を取得することは、前記隣接するeノードBから前記システム情報を取得するように第3のUEに要求することをさらに含み、前記システム情報は、前記第3のUEから取得する点。 (2)相違点1についての判断 上記の通り、引用文献2には、「基地局BS1から隣接基地局BS2に、移動局MSを介して隣接BS調整のための制御情報を転送する。」という技術事項が開示されるのみであり、隣接基地局BS2は移動局MSに対して基地局BS1の情報を取得するように要求していることは開示がない。また、引用文献3には、「方式Bの無線基地局が、選択した移動局に対して、方式Aの無線基地局からの電界レベルを測定することを指示し、移動局はその測定結果を方式Bの無線基地局に送信する。」という周知技術が記載されているのみであり、ここでも、方式Bの無線基地局が移動局に対して方式Aの無線基地局の情報を取得するように要求することが周知技術であることについて開示されているとすることはできない。 また、引用発明は基地局がID情報をRNCから取得することが前提となっているから、そのID情報を移動局を介して取得するように基地局を構成する動機は発生しない。 したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び引用文献3に記載された周知技術に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。 2.本願発明2-5について 本願発明2-5も、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び引用文献3に記載された周知技術に基いて容易に発明できたものとはいえない。 3.本願発明6-10、11-15、16-20について 本願発明1-5と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び引用文献3に記載された周知技術に基いて容易に発明できたものとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-07-26 |
出願番号 | 特願2014-100597(P2014-100597) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H04W)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 三浦 みちる |
特許庁審判長 |
菅原 道晴 |
特許庁審判官 |
矢頭 尚之 山本 章裕 |
発明の名称 | 異種ネットワークにおける受信を促進するセルにわたって情報交換するためのメカニズム |
代理人 | 福原 淑弘 |
代理人 | 井関 守三 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 岡田 貴志 |