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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 H01B 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01B |
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管理番号 | 1330670 |
審判番号 | 不服2016-16727 |
総通号数 | 213 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-09-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-11-08 |
確定日 | 2017-08-08 |
事件の表示 | 特願2015- 416「遮蔽された電気ケーブル」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 5月14日出願公開、特開2015- 92499、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2010年12月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2010年9月23日 米国)を国際出願日とする出願である特願2013-530129号の一部を、平成27年1月5日に新たな特許出願としたものであって、平成27年11月30日付けで拒絶理由が通知され、平成28年6月7日付けで誤訳訂正がなされたが、同年7月5日付けで拒絶査定(原査定)がなされ、これに対し、同年11月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がされたものである。 第2 原査定の理由の概要 原査定(平成28年7月5日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 1.本願請求項1-2に係る発明は、以下の引用文献1-3に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1..特開2006-286480号公報 2.実願昭60-076507号(実開昭61-194218号)のマイクロフィルム 3.特開2001-266659号公報 第3 本願発明 本願請求項1-2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明2」という。)は、平成28年11月8日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-2に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 遮蔽電気ケーブルであって、 前記ケーブルの長さに沿って延在し、前記ケーブルの幅に沿って互いに間隔を置いて配置されている複数の導体セットを含み、各々が1つ以上の絶縁導体を含む、複数の導体セットと、 同心部分、挟まれた部分、及び移行部分を含む第1及び第2の遮蔽フィルムであり、横断面において、前記同心部分が、前記各導体セットの1つ以上の端部導体と実質的に同心であり、前記第1及び第2の遮蔽フィルムの挟まれた部分が組み合わされて、前記導体セットの2つの側に、前記第1及び第2の遮蔽フィルムを電気的に接触させる導電性要素を含む前記ケーブルの挟まれた部分を形成し、前記移行部分が、前記同心部分と前記挟まれた部分との間に緩やかな移行を提供するように配置される、第1及び第2の遮蔽フィルムと、 前記複数の導体セット上に配置される第1のEMI吸収層と、を含むケーブルであり、 各遮蔽フィルムが導電層を含み、 前記移行部分のうちの第1の移行部分は、 1つ以上の端部導体のうちの第1の端部導体に近接し、 前記第1及び第2の遮蔽フィルムの前記導電層と、前記同心部分と、前記第1の端部導体に近接する前記挟まれた部分のうちの前記第1の挟まれた部分と、の間の面積として定義される、断面積A_(1)を有し、式中A_(1)は、前記第1の端部導体の断面積よりも小さく、 各遮蔽フィルムは、前記ケーブルの幅にわたって変化する曲率半径によって、横断面において特徴付けることが可能であり、各遮蔽フィルムに関する曲率半径は、前記ケーブルの幅にわたって、少なくとも100マイクロメートルであり、 前記第1及び第2の遮蔽フィルムが、主として電磁界を反射させることによって該電磁界を弱化させ、前記第1のEMI吸収層が、主として電磁界を吸収することによって該電磁界を弱化させる、 ケーブル。 【請求項2】 遮蔽電気ケーブルであって、 前記ケーブルの長さに沿って延在し、前記ケーブルの幅に沿って互いに間隔を置いて配置されていて、各々が、1つ以上の絶縁導体を含む複数の導体セットと、 同心部分、挟まれた部分、及び移行部分を含む、第1及び第2の遮蔽フィルムであり、横断面において、前記同心部分が、各導体セットの1つ以上の端部導体と実質的に同心であり、前記第1及び第2の遮蔽フィルムの挟まれた部分が組み合わされて、前記導体セットの2つの側に、前記第1及び第2の遮蔽フィルムを電気的に接触させる導電性要素を含む前記ケーブルの挟まれた部分を形成し、前記移行部分が、前記同心部分と前記挟まれた部分との間に緩やかな移行を提供するように配置される、第1及び第2の遮蔽フィルムと、 前記複数の導体セット上に配置される第1のEMI吸収層と、を含むケーブルであり、 前記2つの遮蔽フィルムの一方は、前記同心部分のうちの第1の同心部分、前記挟まれた部分のうちの第1の挟まれた部分、及び前記移行部分のうちの第1の移行部分を含み、前記第1の移行部分は、前記第1の同心部分を前記第1の挟まれた部分に接続し、 前記第1の同心部分は、曲率半径R_(1)を有し、前記移行部分は、曲率半径r_(1)を有し、 R_(1)/r_(1)が、2?15の範囲であり、 前記第1及び第2の遮蔽フィルムが、主として電磁界を反射させることによって該電磁界を弱化させ、前記第1のEMI吸収層が、主として電磁界を吸収することによって該電磁界を弱化させる、 ケーブル。」 第4 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、当審で付加した。以下同じ。) ア.「【技術分野】 【0001】 本発明は、コンピュータデバイスの周辺機器、高解像度の画像の伝送や高速HDDなどの記憶媒体の伝送回路に用いられる差動信号伝送ケーブルに関する。」(2頁14-17行) イ.「【発明を実施するための最良の形態】 【0022】 まず、本発明の実施の形態を図1、図2、図3に基づいて説明する。 【0023】 ここで、図1は本発明の差動信号伝送ケーブルを構成する差動信号対電線の斜視図、図2は差動信号伝送ケーブルの部分拡大断面図、図3は差動信号伝送ケーブルの断面図である。 【0024】 まず、図1に示すように差動信号対電線9は、例えば外径0.254mmの軟銅線からなる中心導体1とこの中心導体1の外周に設けた厚さ0.28mmの難燃ポリオレフィンからなる絶縁層2により構成された絶縁電線3を2本平行に並べ、その両側面に接して平行に配置されたドレイン線4、4を包含するように導電性テープ5が縦添えされシールド層が構成されている。この導電性テープ5は樹脂フィルム層5aの表面に金属層5bを設けさらにその金属層5bの表面上に接着層5cが設けられており、導電性テープ5の接着層5cが絶縁電線3並びにドレイン線4の側に向くように縦添えされている。またドレイン線4は中心導体1に用いたものと同じ外径の軟銅線である。 【0025】 ここで、中心導体1とドレイン線4を軟銅線として説明したが錫メッキや銀メッキを施した軟銅線の単線若しくは撚り線であっても良い。 【0026】 また、絶縁層2は難燃ポリオレフィンに限られるものではなく高周波でも安定した低誘電率特性のあるポリエチレン、TPE、フッ素樹脂や発泡体であっても良い。 【0027】 そして、導電性テープ5は厚さ0.015mmのアルミ蒸着ポリエステルフィルムのアルミ面上にホットメルトタイプの熱可塑性樹脂を接着層としてアルミ面上の全面若しくは部分的に薄くコーティングしたものが良い。ただし導電性テープ5は絶縁フィルム層5aの表面に金属層5bを設けさらにその金属層5bの表面に接着層5cを設けた構成であれば良く上記構成に限定されるものでない。 【0028】 次に、図2及び図3に示すように差動信号伝送ケーブル10は、複数本の差動信号対電線9がコネクターピッチ間隔に合わせて平面状に平行に揃えて並べられ、フィルム層7aと接着層7bから成る絶縁フィルム7、7により両側から貼り合わせられることにより外部絶縁層8が形成されている。 【0029】 ここで絶縁フィルム7はフィルム層7aの表面上に接着層7bを設けたものであれば良く、このような絶縁フィルム7としては例えば厚さ0.3mmのポリエステルテープの表面に熱可塑性樹脂を接着層として全面若しくは部分的に設けたものが良い。 【0030】 さらにコネクターピッチ間隔はコネクタの仕様に合わせ例えば3.81mmの倍数の間隔で平面状に配列されている。 【0031】 このようにして形成された差動信号伝送ケーブル10は、図1に示すように差動信号対電線9のシールド層が導電性テープ5を縦添えすることにより形成されるので、絶縁電線3やドレイン線4が捻られることはなく差動信号対電線の対内スキューは生じない。 【0032】 次に、図2、図3に示すように導電性テープ5の接着層5cにより絶縁電線3とドレイン線4は導電性テープ5に接着固定されるので絶縁電線とドレイン線は互いにずれることなくシールド層を形成することができるため、差動信号対電線を構成する2本の絶縁電線3とドレイン線4は互いに長さのバラツキを生じることがないことから、差動信号対電線9の対内スキューのバラツキを小さくすることができる。」(4頁25行-5頁24行) したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 〈引用発明〉 「複数本の差動信号対電線9がコネクターピッチ間隔に合わせて平面状に平行に揃えて並べられ、フィルム層7aと接着層7bから成る絶縁フィルム7、7により両側から貼り合わせられることにより外部絶縁層8が形成されている差動信号伝送ケーブル10であって、 前記差動信号対電線9は、外径0.254mmの軟銅線からなる中心導体1とこの中心導体1の外周に設けた厚さ0.28mmの難燃ポリオレフィンからなる絶縁層2により構成された絶縁電線3を2本平行に並べ、その両側面に接して平行に配置されたドレイン線4、4を包含するように導電性テープ5が縦添えされシールド層が構成されたものであって、 前記導電性テープ5は樹脂フィルム層5aの表面に金属層5bを設けさらにその金属層5bの表面上に接着層5cが設けられており、接着層5cにより絶縁電線3とドレイン線4は導電性テープ5に接着固定され、 前記絶縁フィルム7はフィルム層7aの表面上に接着層7bを設けたものである、 差動信号伝送ケーブル10。」 2.引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。 ア.「(産業上の利用分野) 本考案は通信装置および電子装置用の配線用電線であって、厚さが薄く、平らな形状をしており、床、壁、天井等に貼り付けて配線する電線に関するものである。」(1頁11-15行) イ.「第1図に示すように、熱可塑性樹脂もしくは加熱硬化性樹脂の絶縁体2により被覆された軟銅線もしくはメッキ付き軟銅線からなる導体1に、さらにもう一層、保護層としてポリイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂もしくはポリエーテルイミド樹脂等の強靭なプラスチックからなる保護層3で被覆したものを1条として、それを2条ないし4条ずつを密接に引きそろえ、その上下両側から金属テープ4で挾んで融着し、遮蔽体とする。さらにその上に両側から、PE、PVC、PET、PP、PVDF等のプラスチック単体もしくは複数の材質を貼り合わせた保護用プラスチックテープ5で貼り合わせて、平形の電線を作成する。この場合、所要の対数の条数を平行に引きそろえたものに沿わせて1本の軟銅線からなる接地線12を金属テープ4の中に一緒に封入して、導体に沿えた接地線として使用する。」(4頁20行-5頁16行) ・上記イ.には、平形の電線において、絶縁体2により被覆された軟銅線からなる導体1を保護層3で被覆したものを1条として、それを2条ずつを密接に引きそろえ、その上下両側から金属テープ4で挾んで融着し、遮蔽体とすること、が記載されている。 ・また、図1の記載によれば、上記「上下両側から金属テープ4で挾んで融着」される部分は、「2条」の線の両側部分である。 ・さらに、図1の記載によれば、「金属テープ4」は、横断面において、前記「1条」の線と同心部分を有しており、該「同心部分」と、前記「融着」された部分の間には、大きさは不明ではあるが、両部分間の移行を行う移行部分が存在するものと認められる。 したがって、引用文献2には、以下の技術的事項が記載されていると認められる。 「平形の電線において、絶縁体2により被覆された軟銅線からなる導体1を保護層3で被覆したものを1条として、それを2条ずつを密接に引きそろえ、その上下両側から金属テープ4で挾んで前記2条の両側部分を融着し遮蔽体とすることで、各金属テープ4が、横断面において、前記1条の線と同心な同心部分と、前記融着される融着部分と、両部分間の移行部分を含むこと。」 3.引用文献3について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。 ア.「【0003】 【発明が解決しようとする課題】そこで本発明が解決しようとする課題は、筐体内部に配設された複数の回路基板間の信号を伝送するケーブルに於いて、伝送ケーブルへのノイズの入射及び放射を抑制することにより、伝送信号の品位を確保し、しかも筐体内部に配するために柔軟性に富んだ伝送ケーブルを提供するとともに、前記伝送ケーブルをもの用いた装置を提供するものである。」(3頁3欄) イ.「【0008】(実施例3)この実施例の構成は、図4に示すように、線芯1の周りにPVCにて形成された絶縁層2を施したケーブルに可撓性を有した電波吸収体3cを巻き付けて固着した構成である。尚、固着の方法は粘着テープを使用しておこなったが、ケーブルの周囲に固定できる方法で有れば特に規定しない。図5は、この実施例における電波吸収体3cの一例を示すものである。この電波吸収体3cは、繊維長約2mmのカーボン繊維をクロロプレンゴム中に40重量%分散させ、0.4mmの厚さにシート化した電磁波反射層8を形成した。次に、Fe-Cu-Nb-Si-B系からなるナノ結晶化合金の扁平形状粉をクロロプレンゴム中に73重量%分散させ、0.5mmの厚さにシート化した電磁波吸収層9を形成した。次に、Fe-Cu-Nb-Si-B系からなるナノ結晶化合金の粒形状粉を、クロロプレンゴム中に82重量%分散させ、0.5mmの厚さにシート化した電磁波吸収層10を形成した。次に、カルボニル鉄合金粒形状粉を、クロロプレンゴム中に70重量%分散させ、0.4mmの厚さにシート化した電磁波吸収層11を形成した。これら4種類のシートを順次積層し一体化することにより全体の厚さが1.8mmのシート状の電波吸収体3cを形成した。図16は、この実施例にて作製された電波吸収体の電磁波ノイズの吸収率を示す。この図より、この電波吸収体が0.5?10GHzの広い周波数帯域で70%以上の高い吸収率が得られていることが判る。尚、伝送ケーブルにこの電波吸収体を使用する場合、ケーブルの放射ノイズが問題となるような場合は、電磁波吸収層11側をケーブルに密接するように配置するのが好ましく、ケーブルがアンテナとなって放射するノイズにはコネクタの付近に配すると効果的であり、更に望ましくはケーブル全体に配置するのが良い。また、他のケーブルや基板、ICなどから放射されるノイズがケーブルに入射するノイズが問題になる場合は、電磁波反射層8側をケーブルに密着するように配置するのが望ましく、ノイズの入射場所が特定できる場合は少なくとのその場所に配すると効果的であり、更に望ましくはケーブル全体に配置するのが良い。 ・・・以下略・・・ 」(4頁6欄-5頁8欄) したがって、引用文献3には、以下の技術的事項が記載されていると認められる。 「線芯1の周りにPVCにて形成された絶縁層2を施したケーブルに、電磁波反射層8と電磁波吸収層9、10、11からなる電波吸収体3c巻き付けて固着し、電磁波反射層8側をケーブルに密着するように配置することで、伝送ケーブルへのノイズの入射及び放射を抑制すること。」 第5 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 ア.引用発明の「差動信号伝送ケーブル10」は、「導電性テープ5が縦添えされシールド層が構成されたもの」であるから、引用発明の「差動信号伝送ケーブル10」は、本願発明1の「遮蔽電気ケーブル」に相当する。 イ.引用発明の「2本平行に並べ」た「絶縁電線3」は、「セット」といえ、また、「複数本」が「コネクターピッチ間隔に合わせて平面状に平行に揃えて並べられ」「差動信号対電線9」を構成するものであって、さらに、「外径0.254mmの軟銅線からなる中心導体1とこの中心導体1の外周に設けた厚さ0.28mmの難燃ポリオレフィンからなる絶縁層2により構成された」ものであるから、引用発明の「絶縁電線3」は、本願発明1の「絶縁導体」に相当し、そして、引用発明の「2本平行に並べ」た「絶縁電線3」は、本願発明1の「前記ケーブルの長さに沿って延在し、前記ケーブルの幅に沿って互いに間隔を置いて配置されている複数の導体セットを含み、各々が1つ以上の絶縁導体を含む、複数の導体セット」に相当する。 ウ.引用発明の「導電性テープ5」は、「表面に金属層5bを設け」たものであって、さらに、「絶縁電線3を2本平行に並べ、その両側面に接して平行に配置されたドレイン線4、4を包含するように」「縦添えされシールド層」を「構成」するものであって、さらに、「接着層5cにより絶縁電線3とドレイン線4は導電性テープ5に接着固定され」ており、「導電性テープ5」と「絶縁電線3」が「接着固定」される部分では、「導電性テープ5」と「絶縁電線3」は実質的に同心と認められることから、引用発明の「導電性テープ5」と、本願発明1の「同心部分、挟まれた部分、及び移行部分を含む第1及び第2の遮蔽フィルムであり、横断面において、前記同心部分が、前記各導体セットの1つ以上の端部導体と実質的に同心であり、前記第1及び第2の遮蔽フィルムの挟まれた部分が組み合わされて、前記導体セットの2つの側に、前記第1及び第2の遮蔽フィルムを電気的に接触させる導電性要素を含む前記ケーブルの挟まれた部分を形成し、前記移行部分が、前記同心部分と前記挟まれた部分との間に緩やかな移行を提供するように配置される、第1及び第2の遮蔽フィルム」とは、「同心部分を含む遮蔽フィルムであり、横断面において、前記同心部分が、前記各導体セットの1つ以上の端部導体と実質的に同心である、遮蔽フィルム」の点では共通する。 さらに、引用発明の「導電性テープ5」に「金属層5b」を設けることと、本願発明1の「各遮蔽フィルムが導電層を含」むこととは、「遮蔽フィルムが導電層を含」む点では共通し、「金属層5b」が電磁界を反射させることは明らかである。 よって、本願発明1と引用発明は、以下の点で一致、ないし相違している。 (一致点) 「遮蔽電気ケーブルであって、 前記ケーブルの長さに沿って延在し、前記ケーブルの幅に沿って互いに間隔を置いて配置されている複数の導体セットを含み、各々が1つ以上の絶縁導体を含む、複数の導体セットと、 同心部分を含む遮蔽フィルムであり、横断面において、前記同心部分が、前記各導体セットの1つ以上の端部導体と実質的に同心である、遮蔽フィルムと、を含むケーブルであり、 遮蔽フィルムが導電層を含み、 前記遮蔽フィルムが、主として電磁界を反射させることによって該電磁界を弱化させる、 ケーブル。」 (相違点1) 上記「遮蔽フィルム」が、本願発明1では、「同心部分、挟まれた部分、及び移行部分を含む第1及び第2の遮蔽フィルムであり」、そして、該「第1及び第2の遮蔽フィルム」は、「横断面において」「前記第1及び第2の遮蔽フィルムの挟まれた部分が組み合わされて、前記導体セットの2つの側に、前記第1及び第2の遮蔽フィルムを電気的に接触させる導電性要素を含む前記ケーブルの挟まれた部分を形成し、前記移行部分が、前記同心部分と前記挟まれた部分との間に緩やかな移行を提供するように配置され」ており、さらに、「前記移行部分のうちの第1の移行部分は、1つ以上の端部導体のうちの第1の端部導体に近接し、前記第1及び第2の遮蔽フィルムの前記導電層と、前記同心部分と、前記第1の端部導体に近接する前記挟まれた部分のうちの前記第1の挟まれた部分と、の間の面積として定義される、断面積A_(1)を有し、式中A_(1)は、前記第1の端部導体の断面積よりも小さく」、また、「各遮蔽フィルムは、前記ケーブルの幅にわたって変化する曲率半径によって、横断面において特徴付けることが可能であり、各遮蔽フィルムに関する曲率半径は、前記ケーブルの幅にわたって、少なくとも100マイクロメートルであ」るのに対して、 引用発明では、「導電性テープ5」は、同芯部分は含むが、そのような挟まれた部分、及び移行部分を含まない1本のものであり、曲率半径によっても特徴付けられない点。 (相違点2) 本願発明1では、「前記複数の導体セット上に配置される第1のEMI吸収層」を含み、「前記第1のEMI吸収層が、主として電磁界を吸収することによって該電磁界を弱化させる」のに対して、引用発明では、そのようなEMI層を含んでいない点。 (2)相違点についての判断 上記相違点1について検討する。 上記「第4」の「2.」の引用文献2には、平形の電線において、絶縁体2により被覆された軟銅線からなる導体1を保護層3で被覆したものを1条として、それを2条ずつを密接に引きそろえ、その上下両側から金属テープ4で挾んで前記2条の両側部分を融着し遮蔽体とすることで、各金属テープ4が、横断面において、前記1条の線と同心な同心部分と、前記融着される融着部分と、両部分間の移行部分を含む、という技術的事項が記載されている。 ここで、引用発明1の遮蔽部材として金属テープに代え引用文献2に記載の遮蔽体を用いることは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。 しかしながら、引用文献2には、遮蔽体を構成する金属テープの移行部分の断面積と1条の線の断面積の関係、及び曲率半径に関しては記載されていない。 また、上記「第4」の「3.」の引用文献3には、電磁波反射層8と電磁波吸収層9、10、11からなる電波吸収体3cによって、伝送ケーブルへのノイズの入射及び放射を抑制することは記載されているが、電波吸収体3cは移行部分を有さないものである。 そして、本願発明1は、遮蔽フィルムの移行部分のサイズ、及び曲率半径を上記相違点1のように規定することで、ケーブルの機械的性能及び電気的性能を低下させない、という効果(本願の明細書段落【0078】-【0079】等参照。)を奏するものである。 したがって、上記相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2.本願発明2について 本願発明2と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 ア.引用発明の「差動信号伝送ケーブル10」は、「導電性テープ5が縦添えされシールド層が構成されたもの」であるから、引用発明の「差動信号伝送ケーブル10」は、本願発明2の「遮蔽電気ケーブル」に相当する。 イ.引用発明の「2本平行に並べ」た「絶縁電線3」は、「セット」といえ、また、「複数本」が「コネクターピッチ間隔に合わせて平面状に平行に揃えて並べられ」「差動信号対電線9」を構成するものであって、さらに、「外径0.254mmの軟銅線からなる中心導体1とこの中心導体1の外周に設けた厚さ0.28mmの難燃ポリオレフィンからなる絶縁層2により構成された」ものであるから、引用発明の「絶縁電線3」は、本願発明1の「絶縁導体」に相当し、そして、引用発明の「2本平行に並べ」た「絶縁電線3」は、本願発明2の「前記ケーブルの長さに沿って延在し、前記ケーブルの幅に沿って互いに間隔を置いて配置されていて、各々が、1つ以上の絶縁導体を含む複数の導体セット」に相当する。 ウ.引用発明の「導電性テープ5」は、「表面に金属層5bを設け」たものであって、さらに、「絶縁電線3を2本平行に並べ、その両側面に接して平行に配置されたドレイン線4、4を包含するように」「縦添えされシールド層」を「構成」するものであって、さらに、「接着層5cにより絶縁電線3とドレイン線4は導電性テープ5に接着固定され」ており、「導電性テープ5」と「絶縁電線3」が「接着固定」される部分では、「導電性テープ5」と「絶縁電線3」は実質的に同心と認められることから、引用発明の「導電性テープ5」と、本願発明2の「同心部分、挟まれた部分、及び移行部分を含む第1及び第2の遮蔽フィルムであり、横断面において、前記同心部分が、前記各導体セットの1つ以上の端部導体と実質的に同心であり、前記第1及び第2の遮蔽フィルムの挟まれた部分が組み合わされて、前記導体セットの2つの側に、前記第1及び第2の遮蔽フィルムを電気的に接触させる導電性要素を含む前記ケーブルの挟まれた部分を形成し、前記移行部分が、前記同心部分と前記挟まれた部分との間に緩やかな移行を提供するように配置される、第1及び第2の遮蔽フィルム」とは、「同心部分を含む遮蔽フィルムであり、横断面において、前記同心部分が、前記各導体セットの1つ以上の端部導体と実質的に同心である、遮蔽フィルムと、を含むケーブル」の点では共通する。 さらに、引用発明の「導電性テープ5」は「金属層5b」を有しており、「金属層5b」が電磁界を反射させることは明らかである。 よって、本願発明2と引用発明は、以下の点で一致、ないし相違している。 (一致点) 「遮蔽電気ケーブルであって、 前記ケーブルの長さに沿って延在し、前記ケーブルの幅に沿って互いに間隔を置いて配置されていて、各々が、1つ以上の絶縁導体を含む複数の導体セットと、 同心部分を含む遮蔽フィルムであり、横断面において、前記同心部分が、前記各導体セットの1つ以上の端部導体と実質的に同心である、遮蔽フィルムと、を含むケーブルであり、 前記遮蔽フィルムが、主として電磁界を反射させることによって該電磁界を弱化させる、 ケーブル。」 (相違点1) 上記「遮蔽フィルム」が、本願発明2では、「同心部分、挟まれた部分、及び移行部分を含む第1及び第2の遮蔽フィルムであり」、そして、該「第1及び第2の遮蔽フィルム」は、「横断面において」「前記第1及び第2の遮蔽フィルムの挟まれた部分が組み合わされて、前記導体セットの2つの側に、前記第1及び第2の遮蔽フィルムを電気的に接触させる導電性要素を含む前記ケーブルの挟まれた部分を形成し、前記移行部分が、前記同心部分と前記挟まれた部分との間に緩やかな移行を提供するように配置され」ており、さらに、「前記2つの遮蔽フィルムの一方は、前記同心部分のうちの第1の同心部分、前記挟まれた部分のうちの第1の挟まれた部分、及び前記移行部分のうちの第1の移行部分を含み、前記第1の移行部分は、前記第1の同心部分を前記第1の挟まれた部分に接続し、前記第1の同心部分は、曲率半径R_(1)を有し、前記移行部分は、曲率半径r_(1)を有し、R_(1)/r_(1)が、2?15の範囲であ」るのに対して、 引用発明では、「導電性テープ5」は、同芯部分は含むが、そのような挟まれた部分、及び移行部分を得含まない1本のものである点。 (相違点2) 本願発明2では、「前記複数の導体セット上に配置される第1のEMI吸収層」を含み、「前記第1のEMI吸収層が、主として電磁界を吸収することによって該電磁界を弱化させる」のに対して、 引用発明では、そのようなEMI層を含んでいない点。 (2)相違点についての判断 上記相違点1について検討する。 上記「第4」の「2.」の引用文献2には、平形の電線において、絶縁体2により被覆された軟銅線からなる導体1を保護層3で被覆したものを1条として、それを2条ずつを密接に引きそろえ、その上下両側から金属テープ4で挾んで前記2条の両側部分を融着し遮蔽体とすることで、各金属テープ4が、横断面において、前記1条の線と同心な同心部分と、前記融着される融着部分と、両部分間の移行部分を含む、という技術的事項が記載されている。 ここで、引用発明1の遮蔽部材として金属テープに代え引用文献2に記載の遮蔽フォルムも用いることは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。 しかしながら、引用文献2には、遮蔽体を構成する金属テープの移行部分の曲率半径に関しては記載されていない。 また、上記「第4」の「3.」の引用文献3には、電磁波反射層8と電磁波吸収層9、10、11からなる電波吸収体3cによって、伝送ケーブルへのノイズの入射及び放射を抑制することは記載されているが、電波吸収体3cは移行部分を有さないものである。 そして、本願発明2は、遮蔽フィルムの移行部分の曲率半径を上記相違点1のように規定することで、ケーブルの機械的性能及び電気的性能を低下させない、という効果(本願の明細書段落【0078】-【0079】等参照。)を奏するものである。 したがって、上記相違点2について判断するまでもなく、本願発明2は、当業者であっても引用発明、引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-07-21 |
出願番号 | 特願2015-416(P2015-416) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
WY
(H01B)
P 1 8・ 121- WY (H01B) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 和田 財太 |
特許庁審判長 |
新川 圭二 |
特許庁審判官 |
山澤 宏 山田 正文 |
発明の名称 | 遮蔽された電気ケーブル |
代理人 | 柳 康樹 |
代理人 | 清水 義憲 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 阿部 寛 |
代理人 | 保坂 一之 |
代理人 | 酒巻 順一郎 |
代理人 | 池田 成人 |