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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C07D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C07D
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 C07D
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C07D
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 C07D
管理番号 1330728
審判番号 不服2016-6708  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-06 
確定日 2017-07-25 
事件の表示 特願2014-520111「新規な化合物およびこれを用いた有機電子素子」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月17日国際公開、WO2013/009013、平成26年10月30日国内公表、特表2014-528916〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、2012年6月20日〔パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年7月8日(KR)韓国〕を国際出願日とする出願であって、
平成27年1月30日付けの拒絶理由通知に対して、平成27年6月9日付けで意見書及び手続補正書が提出され、
平成27年12月24日付けの拒絶査定に対して、平成28年5月6日付けで審判請求と同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 平成28年5月6日付け手続補正についての補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
平成28年5月6日付け手続補正を却下する。

〔理由〕
1.補正の内容
平成28年5月6日付け手続補正(以下「第2回目の手続補正」という。)は、
補正前の請求項1?3における
「【請求項1】下記化学式1で表示される化合物:
【化1】

前記化学式1において、
X_(1)はNまたはCR_(3)であり、X_(2)はNまたはCR_(4)であり、X_(3)はNまたはCR_(5)であり、X_(4)はNまたはCR_(6)であり、X_(1)?X_(4)の全てが同時にNではなく、
R_(3)?R_(6)はそれぞれ独立に-(L_(1))_(p)-(Y_(1))_(q)であり、ここで、pは0?10の整数であり、qは1?10の整数であり、R_(3)?R_(6)のうちの隣接する2以上の基は単環式または多環式の環を形成することができ、
L_(1)は酸素;硫黄;置換もしくは非置換の窒素;置換もしくは非置換のリン;置換もしくは非置換のアリーレン基;置換もしくは非置換のアルケニレン基;置換もしくは非置換のフルオレニレン基;置換もしくは非置換のカルバゾリレン基;またはN、O、S原子のうちの1個以上を含む置換もしくは非置換のヘテロアリーレン基であり、
Y_(1)は水素;重水素;ハロゲン基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアリールオキシ基;置換もしくは非置換のアルキルチオキシ基;置換もしくは非置換のアリールチオキシ基;置換もしくは非置換のアルキルスルホキシ基;置換もしくは非置換のアリールスルホキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホウ素基;置換もしくは非置換のアルキルアミン基;置換もしくは非置換のアラルキルアミン基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のフルオレニル基;置換もしくは非置換のカルバゾール基;またはN、O、S原子のうちの1個以上を含む置換もしくは非置換のヘテロ環基であり;
A_(1)環は化学式2で表示され、
【化2】

前記化学式2において、
R_(7)とR_(8)、またはR_(8)とR_(9)、またはR_(9)とR_(10)は化学式1に直接結合される基であり、R_(7)?R_(10)のうちの、化学式1への連結に使用されない基、R_(11)、R_(12)、R_(13)およびR_(14)はそれぞれ独立に-(L_(2))_(r)-(Y_(2))_(s)であり、ここで、rは0?10の整数であり、sは1?10の整数であり、R_(7)?R_(10)のうちの、化学式1への連結に使用されない基、R_(11)、R_(12)、R_(13)およびR_(14)のうちの隣接する2以上の基はベンゼンを形成することができ、
L_(2)は酸素;硫黄;置換もしくは非置換の窒素;置換もしくは非置換のP;置換もしくは非置換のアリーレン基;置換もしくは非置換のアルケニレン基;置換もしくは非置換のフルオレニレン基;置換もしくは非置換のカルバゾリレン基;またはN、O、S原子のうちの1個以上を含む置換もしくは非置換のヘテロアリーレン基であり、
Y_(2)は水素;重水素;ハロゲン基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアリールオキシ基;置換もしくは非置換のアルキルチオキシ基;置換もしくは非置換のアリールチオキシ基;置換もしくは非置換のアルキルスルホキシ基;置換もしくは非置換のアリールスルホキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホウ素基;置換もしくは非置換のアルキルアミン基;置換もしくは非置換のアラルキルアミン基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のフルオレニル基;置換もしくは非置換のカルバゾール基;またはN、O、S原子のうちの1個以上を含む置換もしくは非置換のヘテロ環基であり;
R_(7)?R_(10)のうちの、化学式1への連結に使用されない基、R_(11)、R_(12)、R_(13)およびR_(14)のうちの隣接する2以上の基が互いに連結されて形成された基はそれぞれ独立に、-(L_(2))_(r)-(Y_(2))_(s)で置換され得、
化学式2にL_(2)とY_(2)がそれぞれ2以上存在する場合、これらはそれぞれ独立に互いに同一または異なり、
B_(1)は環を構成する1個以上の炭素が窒素で置換可能なアリール基であり、B_(2)は環を構成する1個以上の炭素が窒素で置換可能なアリール基であり、
R_(1)およびR_(2)は互いに連結され、ベンゼン、ナフタレンまたはフェナントレンを形成するか形成しなくてもよく、R_(1)およびR_(2)が環を形成しない場合、R_(1)およびR_(2)は同一であり、それぞれ独立にフェニル基であり、
R_(1)およびR_(2)が環を形成する場合、化学式1は、下記化学式1-1ないし1-4のいずれか1つで表示され、
【化3】

【化4】

前記化学式1-2ないし化学式1-4において、
R_(1a)?R_(4a)は前記化学式1で定義したR_(1)?R_(2)の定義と同じであり、
A_(1)、およびX_(1)?X_(4)は前記化学式1で定義したとおりであり、
前記化学式1-1は、下記化学式3-1ないし化学式3-18のいずれか1つで表示され、
【化5】

【化6】

前記化学式3-1ないし化学式3-18において、
R_(7)?R_(14)は前記化学式2で定義したとおりであり、
R_(1a)?R_(4a)およびR_(3)?R_(6)はそれぞれ独立に、-(L_(1))_(p)-(Y_(1))_(q)であり、ここで、pは0?10の整数であり、qは1?10の整数であり、
L_(1)は酸素;硫黄;置換もしくは非置換の窒素;置換もしくは非置換のリン;置換もしくは非置換のフェニレン基;置換もしくは非置換のビフェニレン基;置換もしくは非置換のテルフェニレン基;置換もしくは非置換のスチルベニレン基;置換もしくは非置換のフェナントレニレン基;置換もしくは非置換のピレニレン基;置換もしくは非置換のペリレニレン基;置換もしくは非置換のテトラセニレン基;置換もしくは非置換のクリセニレン基;置換もしくは非置換のトリフェニレン基;置換もしくは非置換のアセナフタセニレン基;置換もしくは非置換のフルオランテニレン基;置換もしくは非置換のアルケニレン基;置換もしくは非置換のフルオレニレン基;置換もしくは非置換のチオフェニレン基;置換もしくは非置換のフラニレン基;置換もしくは非置換のピロリレン基;置換もしくは非置換のイミダゾリレン基;置換もしくは非置換のチアゾリレン基;置換もしくは非置換のオキサゾリレン基;置換もしくは非置換のオキサジアゾリレン基;置換もしくは非置換のトリアゾリレン基;置換もしくは非置換のピリジリレン基;置換もしくは非置換のビピリジリレン基;置換もしくは非置換のトリアジニレン基;置換もしくは非置換のアクリジリレン基;置換もしくは非置換のピリダジニレン基;置換もしくは非置換のキノリニレン基;置換もしくは非置換のイソキノリニレン基;置換もしくは非置換のインドリレン基;置換もしくは非置換のベンゾキサゾリレン基;置換もしくは非置換のベンズイミダゾリレン基;置換もしくは非置換のベンゾチアゾリレン基;置換もしくは非置換のベンゾカルバゾリレン基;置換もしくは非置換のベンゾチオフェニレン基;置換もしくは非置換のジベンゾチオフェニレン基;置換もしくは非置換のベンゾフラニレン基;または置換もしくは非置換のジベンゾフラニレン基;置換もしくは非置換のインデノカルバゾリレン基;または置換もしくは非置換のインドロカルバゾリレン基であり、
Y_(1)は水素;重水素;ハロゲン基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアリールオキシ基;置換もしくは非置換のアルキルチオキシ基;置換もしくは非置換のアリールチオキシ基;置換もしくは非置換のアルキルスルホキシ基;置換もしくは非置換のアリールスルホキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホウ素基;置換もしくは非置換のアルキルアミン基;置換もしくは非置換のアラルキルアミン基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のフェニル基;置換もしくは非置換のビフェニル基;置換もしくは非置換のテルフェニル基;置換もしくは非置換のスチルベン基;置換もしくは非置換のフェナントレニル基;置換もしくは非置換のピレニル基;置換もしくは非置換のペリレニル基;置換もしくは非置換のテトラセニル基;置換もしくは非置換のクリセニル基;置換もしくは非置換のフルオレニル基;置換もしくは非置換のアセナフタセニル基;置換もしくは非置換のトリフェニレン基;置換もしくは非置換のフルオランテニル基;置換もしくは非置換のチオフェン基;置換もしくは非置換のフラン基;置換もしくは非置換のピロール基;置換もしくは非置換のイミダゾール基;置換もしくは非置換のチアゾール基;置換もしくは非置換のオキサゾール基;置換もしくは非置換のオキサジアゾール基;置換もしくは非置換のトリアゾール基;置換もしくは非置換のピリジル基;置換もしくは非置換のビピリジル基;置換もしくは非置換のトリアジン基;置換もしくは非置換のアクリジル基;置換もしくは非置換のピリダジン基;置換もしくは非置換のキノリニル基;置換もしくは非置換のイソキノリン基;置換もしくは非置換のインドール基;置換もしくは非置換のベンゾキサゾール基;置換もしくは非置換のベンズイミダゾール基;置換もしくは非置換のベンゾチアゾール基;置換もしくは非置換のベンゾカルバゾール基;置換もしくは非置換のベンゾチオフェン基;置換もしくは非置換のジベンゾチオフェン基;置換もしくは非置換のベンゾフラニル基;置換もしくは非置換のジベンゾフラニル基;置換もしくは非置換のインデノカルバゾリル基;または置換もしくは非置換のインドロカルバゾリル基であり、
R_(1)、R_(2)およびR_(1)とR_(2)が互いに連結されて形成されたベンゼン、ナフタレンまたはフェナントレンはそれぞれ独立に、-(L1)p-(Y1)qで置換され得、
化学式1にL_(1)とY_(1)がそれぞれ2以上存在する場合、これらはそれぞれ独立に互いに同一または異なり、
「置換もしくは非置換」という用語は、重水素;ハロゲン基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;アルキル基;シクロアルキル基;アルコキシ基;アリールオキシ基;アルキルチオキシ基;アリールチオキシ基;アルキルスルホキシ基;アリールスルホキシ基;アルケニル基;シリル基;ホウ素基;アルキルアミン基;アラルキルアミン基;アリールアミン基;フェニル基;ビフェニル基;テルフェニル基;スチルベニル基;ナフチル基;フェナントレニル基;ピレニル基;ペリレニル基;テトラセニル基;クリセニル基;アセナフタセニル基;トリフェニル基;フルオランテニル基;フルオレニル基;チオフェニル基;フラニル基;ピロリル基;イミダゾリル基;チアゾリル基;オキサゾリル基;トリアゾリル基;ピリジル基;ビピリジル基;トリアジニル基;アクリジニル基;ピリダジニル基;キノリニル基;イソキノリニル基;インドリル基;ベンゾキサゾリル基;ベンズイミダゾリル基;ベンゾチアゾリル基;ベンゾカルバゾリル基;ベンゾチオフェニル基;ジベンゾチオフェニル基;ベンゾフラニル基;ジベンゾフラニル基;インデノカルバゾリル基;インドロカルバゾリル基;およびジホスフィンオキシドのうちの少なくとも1つの置換基で置換もしくは非置換されたことを意味する。
【請求項2】前記化学式1は、下記化学式3-1ないし化学式3-3、および化学式3-16のいずれか1つで表示されることを特徴とする請求項1記載の化合物:
【化7】

前記化学式3-1ないし化学式3-3、および化学式3-16において、
R_(1a)?R_(4a)、R_(3)、R_(6)、およびR_(7)?R_(14)は水素であり、
R_(4)およびR_(5)はそれぞれ独立に-(L_(2))_(r)-(Y_(2))_(s)であり、ここで、rは0?10の整数であり、sは1?10の整数であり、
L_(2)は酸素;硫黄;置換もしくは非置換の窒素;置換もしくは非置換のP;置換もしくは非置換のフェニレン基;置換もしくは非置換のビフェニレン基;置換もしくは非置換のテルフェニレン基;置換もしくは非置換のスチルベニレン基;置換もしくは非置換のフェナントレニレン基;置換もしくは非置換のピレニレン基;置換もしくは非置換のペリレニレン基;置換もしくは非置換のテトラセニレン基;置換もしくは非置換のクリセニレン基;置換もしくは非置換のトリフェニレン基;置換もしくは非置換のアセナフタセニレン基;置換もしくは非置換のフルオランテニレン基;置換もしくは非置換のアルケニレン基;置換もしくは非置換のフルオレニレン基;置換もしくは非置換のインデノカルバゾリレン基;置換もしくは非置換のインドロカルバゾリレン基;置換もしくは非置換のベンゾカルバゾリレン基;置換もしくは非置換のチオフェニレン基;置換もしくは非置換のフラニレン基;置換もしくは非置換のピロリレン基;置換もしくは非置換のイミダゾリレン基;置換もしくは非置換のチアゾリレン基;置換もしくは非置換のオキサゾリレン基;置換もしくは非置換のオキサジアゾリレン基;置換もしくは非置換のトリアゾリレン基;置換もしくは非置換のピリジリレン基;置換もしくは非置換のビピリジリレン基;置換もしくは非置換のトリアジニレン基;置換もしくは非置換のアクリジリレン基;置換もしくは非置換のピリダジニレン基;置換もしくは非置換のキノリニレン基;置換もしくは非置換のイソキノリニレン基;置換もしくは非置換のインドリレン基;置換もしくは非置換のベンゾキサゾリレン基;置換もしくは非置換のベンズイミダゾリレン基;置換もしくは非置換のベンゾチアゾリレン基;置換もしくは非置換のベンゾチオフェニレン基;置換もしくは非置換のジベンゾチオフェニレン基;置換もしくは非置換のベンゾフラニレン基;または置換もしくは非置換のジベンゾフラニレン基であり、
Y_(2)は水素;重水素;ハロゲン基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアリールオキシ基;置換もしくは非置換のアルキルチオキシ基;置換もしくは非置換のアリールチオキシ基;置換もしくは非置換のアルキルスルホキシ基;置換もしくは非置換のアリールスルホキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホウ素基;置換もしくは非置換のアルキルアミン基;置換もしくは非置換のアラルキルアミン基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のフェニル基;置換もしくは非置換のビフェニル基;置換もしくは非置換のテルフェニル基;置換もしくは非置換のスチルベン基;置換もしくは非置換のフェナントレニル基;置換もしくは非置換のピレニル基;置換もしくは非置換のペリレニル基;置換もしくは非置換のテトラセニル基;置換もしくは非置換のクリセニル基;置換もしくは非置換のアセナフタセニル基;置換もしくは非置換のトリフェニル基;置換もしくは非置換のフルオランテニル基;置換もしくは非置換のフルオレニル基;置換もしくは非置換のインデノカルバゾリル基;置換もしくは非置換のインドロカルバゾリル基;置換もしくは非置換のベンゾカルバゾリル基;置換もしくは非置換のチオフェン基;置換もしくは非置換のフラン基;置換もしくは非置換のピロール基;置換もしくは非置換のイミダゾール基;置換もしくは非置換のチアゾール基;置換もしくは非置換のオキサゾール基;置換もしくは非置換のオキサジアゾール基;置換もしくは非置換のトリアゾール基;置換もしくは非置換のピリジル基;置換もしくは非置換のビピリジル基;置換もしくは非置換のトリアジン基;置換もしくは非置換のアクリジル基;置換もしくは非置換のピリダジン基;置換もしくは非置換のキノリニル基;置換もしくは非置換のイソキノリン基;置換もしくは非置換のインドール基;置換もしくは非置換のベンゾキサゾール基;置換もしくは非置換のベンズイミダゾール基;置換もしくは非置換のベンゾチアゾール基;置換もしくは非置換のベンゾチオフェン基;置換もしくは非置換のジベンゾチオフェン基;置換もしくは非置換のベンゾフラニル基;または置換もしくは非置換のジベンゾフラニル基である。
【請求項3】前記アリーレン基はフェニレン基またはナフタレン基であり、前記アリール基はフェニル基、ナフチル基、フェナントレニル基、フルオレン基、ジメチルフルオレン基、トリフェニレン基、ベンゾクリセン基またはフルオラントレン基であることを特徴とする請求項2記載の化合物。」との記載を、
補正後の請求項1?3における
「【請求項1】
下記化学式1で表示される化合物:
【化1】

前記化学式1において、
X_(1)はNまたはCR_(3)であり、X_(2)はNまたはCR_(4)であり、X_(3)はNまたはCR_(5)であり、X_(4)はNまたはCR_(6)であり、X_(1)?X_(4)の全てが同時にNではなく、
R_(3)?R_(6)はそれぞれ独立に-(L_(1))_(p)-(Y_(1))_(q)であり、ここで、pは0?10の整数であり、qは1?10の整数であり、R_(3)?R_(6)のうちの隣接する2以上の基は単環式または多環式の環を形成することができ、
L_(1)は置換もしくは非置換の窒素;置換もしくは非置換のリン;置換もしくは非置換のアリーレン基;置換もしくは非置換のフルオレニレン基;置換もしくは非置換のカルバゾリレン基;またはN原子を含む置換もしくは非置換のヘテロアリーレン基であり、
Y_(1)は水素;重水素;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のフルオレニル基;置換もしくは非置換のカルバゾール基;またはN、O、S原子のうちの1個以上を含む置換もしくは非置換のヘテロ環基であり;
A_(1)環は化学式2で表示され、
【化2】

前記化学式2において、
R_(7)とR_(8)、R_(8)とR_(9)、またはR_(9)とR_(10)は化学式1に直接結合される基であり、R_(7)?R_(10)のうちの、化学式1への連結に使用されない基、R_(11)、R_(12)、R_(13)およびR_(14)はそれぞれ独立に-(L_(2))_(r)-(Y_(2))_(s)であり、ここで、rは0?10の整数であり、sは1?10の整数であり、R_(7)?R_(10)のうちの、化学式1への連結に使用されない基、R_(11)、R_(12)、R_(13)およびR_(14)のうちの隣接する2以上の基はベンゼンを形成することができ、
L_(2)は置換もしくは非置換の窒素;置換もしくは非置換のリン;置換もしくは非置換のアリーレン基;置換もしくは非置換のフルオレニレン基;置換もしくは非置換のカルバゾリレン基;またはN原子を含む置換もしくは非置換のヘテロアリーレン基であり、
Y_(2)は水素;重水素;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のフルオレニル基;置換もしくは非置換のカルバゾール基;またはN、O、S原子のうちの1個以上を含む置換もしくは非置換のヘテロ環基であり;
R_(7)?R_(10)のうちの、化学式1への連結に使用されない基、R_(11)、R_(12)、R_(13)およびR_(14)のうちの隣接する2以上の基が互いに連結されて形成された基はそれぞれ独立に、-(L_(2))_(r)-(Y_(2))_(s)で置換され得、
化学式2にL_(2)とY_(2)がそれぞれ2以上存在する場合、これらはそれぞれ独立に互いに同一または異なり、
B_(1)は環を構成する1個以上の炭素が窒素で置換可能なアリール基であり、B_(2)は環を構成する1個以上の炭素が窒素で置換可能なアリール基であり、
R_(1)およびR_(2)は互いに連結され、ベンゼン、ナフタレンまたはフェナントレンを形成するか形成しなくてもよく、R_(1)およびR_(2)が環を形成しない場合、R_(1)およびR_(2)は同一であり、それぞれ独立にフェニル基であり、
R_(1)およびR_(2)が環を形成する場合、化学式1は、下記化学式1-1ないし1-4のいずれか1つで表示され、
【化3】

【化4】

前記化学式1-2ないし化学式1-4において、
R_(1a)?R_(4a)は、隣接する2以上の基と連結され、ベンゼンまたはナフタレンを形成するか形成しなくてもよく、R_(1a)?R_(4a)が環を形成しない場合、R_(1a)?R_(4a)はそれぞれ独立に水素であり、
A_(1)、およびX_(1)?X_(4)は前記化学式1で定義したとおりであり、
前記化学式1-1は、下記化学式3-1ないし化学式3-4及び化学式3-6ないし化学式3-18のいずれか1つで表示され、
【化5】

【化6】

前記化学式3-1ないし化学式3-4及び化学式3-6ないし化学式3-18において、
R_(7)?R_(14)は前記化学式2で定義したとおりであり、
R_(1a)?R_(4a)およびR_(3)?R_(6)はそれぞれ独立に、-(L_(1))_(p)-(Y_(1))_(q)であり、ここで、pは0?10の整数であり、qは1?10の整数であり、
L_(1)は置換もしくは非置換の窒素;置換もしくは非置換のリン;置換もしくは非置換のフェニレン基;置換もしくは非置換のビフェニレン基;置換もしくは非置換のテルフェニレン基;置換もしくは非置換のスチルベニレン基;置換もしくは非置換のフェナントレニレン基;置換もしくは非置換のピレニレン基;置換もしくは非置換のペリレニレン基;置換もしくは非置換のテトラセニレン基;置換もしくは非置換のクリセニレン基;置換もしくは非置換のトリフェニレン基;置換もしくは非置換のアセナフタセニレン基;置換もしくは非置換のフルオランテニレン基;置換もしくは非置換のフルオレニレン基;置換もしくは非置換のピロリレン基;置換もしくは非置換のイミダゾリレン基;置換もしくは非置換のトリアゾリレン基;置換もしくは非置換のピリジリレン基;置換もしくは非置換のビピリジリレン基;置換もしくは非置換のトリアジニレン基;置換もしくは非置換のアクリジリレン基;置換もしくは非置換のピリダジニレン基;置換もしくは非置換のキノリニレン基;置換もしくは非置換のイソキノリニレン基;置換もしくは非置換のインドリレン基;置換もしくは非置換のベンズイミダゾリレン基;置換もしくは非置換のベンゾカルバゾリレン基;置換もしくは非置換のインデノカルバゾリレン基;または置換もしくは非置換のインドロカルバゾリレン基であり、
Y_(1)は水素;重水素;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のフェニル基;置換もしくは非置換のビフェニル基;置換もしくは非置換のテルフェニル基;置換もしくは非置換のスチルベン基;置換もしくは非置換のフェナントレニル基;置換もしくは非置換のピレニル基;置換もしくは非置換のペリレニル基;置換もしくは非置換のテトラセニル基;置換もしくは非置換のクリセニル基;置換もしくは非置換のフルオレニル基;置換もしくは非置換のアセナフタセニル基;置換もしくは非置換のトリフェニレン基;置換もしくは非置換のフルオランテニル基;置換もしくは非置換のチオフェン基;置換もしくは非置換のフラン基;置換もしくは非置換のピロール基;置換もしくは非置換のイミダゾール基;置換もしくは非置換のチアゾール基;置換もしくは非置換のオキサゾール基;置換もしくは非置換のオキサジアゾール基;置換もしくは非置換のトリアゾール基;置換もしくは非置換のピリジル基;置換もしくは非置換のビピリジル基;置換もしくは非置換のトリアジン基;置換もしくは非置換のアクリジル基;置換もしくは非置換のピリダジン基;置換もしくは非置換のキノリニル基;置換もしくは非置換のイソキノリン基;置換もしくは非置換のインドール基;置換もしくは非置換のベンゾキサゾール基;置換もしくは非置換のベンズイミダゾール基;置換もしくは非置換のベンゾチアゾール基;置換もしくは非置換のベンゾカルバゾール基;置換もしくは非置換のベンゾチオフェン基;置換もしくは非置換のジベンゾチオフェン基;置換もしくは非置換のベンゾフラニル基;置換もしくは非置換のジベンゾフラニル基;置換もしくは非置換のインデノカルバゾリル基;または置換もしくは非置換のインドロカルバゾリル基であり、
R_(1)、R_(2)およびR_(1)とR_(2)が互いに連結されて形成されたベンゼン、ナフタレンまたはフェナントレンはそれぞれ独立に、-(L_(1))_(p)-(Y_(1))_(q)で置換され得、
化学式1にL_(1)とY_(1)がそれぞれ2以上存在する場合、これらはそれぞれ独立に互いに同一または異なり、
「置換もしくは非置換」という用語は、重水素;ハロゲン基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;アルキル基;シクロアルキル基;アルコキシ基;アリールオキシ基;アルキルチオキシ基;アリールチオキシ基;アルキルスルホキシ基;アリールスルホキシ基;アルケニル基;シリル基;ホウ素基;アルキルアミン基;アラルキルアミン基;アリールアミン基;フェニル基;ビフェニル基;テルフェニル基;スチルベニル基;ナフチル基;フェナントレニル基;ピレニル基;ペリレニル基;テトラセニル基;クリセニル基;アセナフタセニル基;トリフェニル基;フルオランテニル基;フルオレニル基;チオフェニル基;フラニル基;ピロリル基;イミダゾリル基;チアゾリル基;オキサゾリル基;トリアゾリル基;ピリジル基;ビピリジル基;トリアジニル基;アクリジニル基;ピリダジニル基;キノリニル基;イソキノリニル基;インドリル基;ベンゾキサゾリル基;ベンズイミダゾリル基;ベンゾチアゾリル基;ベンゾカルバゾリル基;ベンゾチオフェニル基;ジベンゾチオフェニル基;ベンゾフラニル基;ジベンゾフラニル基;インデノカルバゾリル基;インドロカルバゾリル基;およびジホスフィンオキシドのうちの少なくとも1つの置換基で置換もしくは非置換されたことを意味する。
【請求項2】前記化学式1は、下記化学式3-1ないし化学式3-3、および化学式3-16のいずれか1つで表示されることを特徴とする請求項1記載の化合物:
【化7】

前記化学式3-1ないし化学式3-3、および化学式3-16において、
R_(1a)?R_(4a)、R_(3)、R_(6)、およびR_(7)?R_(14)は水素であり、
R_(4)およびR_(5)はそれぞれ独立に-(L_(2))_(r)-(Y_(2))_(s)であり、ここで、rは0?10の整数であり、sは1?10の整数であり、
L_(2)は酸素;硫黄;置換もしくは非置換の窒素;置換もしくは非置換のリン;置換もしくは非置換のフェニレン基;置換もしくは非置換のビフェニレン基;置換もしくは非置換のテルフェニレン基;置換もしくは非置換のスチルベニレン基;置換もしくは非置換のフェナントレニレン基;置換もしくは非置換のピレニレン基;置換もしくは非置換のペリレニレン基;置換もしくは非置換のテトラセニレン基;置換もしくは非置換のクリセニレン基;置換もしくは非置換のトリフェニレン基;置換もしくは非置換のアセナフタセニレン基;置換もしくは非置換のフルオランテニレン基;置換もしくは非置換のアルケニレン基;置換もしくは非置換のフルオレニレン基;置換もしくは非置換のインデノカルバゾリレン基;置換もしくは非置換のインドロカルバゾリレン基;置換もしくは非置換のベンゾカルバゾリレン基;置換もしくは非置換のチオフェニレン基;置換もしくは非置換のフラニレン基;置換もしくは非置換のピロリレン基;置換もしくは非置換のイミダゾリレン基;置換もしくは非置換のチアゾリレン基;置換もしくは非置換のオキサゾリレン基;置換もしくは非置換のオキサジアゾリレン基;置換もしくは非置換のトリアゾリレン基;置換もしくは非置換のピリジリレン基;置換もしくは非置換のビピリジリレン基;置換もしくは非置換のトリアジニレン基;置換もしくは非置換のアクリジリレン基;置換もしくは非置換のピリダジニレン基;置換もしくは非置換のキノリニレン基;置換もしくは非置換のイソキノリニレン基;置換もしくは非置換のインドリレン基;置換もしくは非置換のベンゾキサゾリレン基;置換もしくは非置換のベンズイミダゾリレン基;置換もしくは非置換のベンゾチアゾリレン基;置換もしくは非置換のベンゾチオフェニレン基;置換もしくは非置換のジベンゾチオフェニレン基;置換もしくは非置換のベンゾフラニレン基;または置換もしくは非置換のジベンゾフラニレン基であり、
Y_(2)は水素;重水素;ハロゲン基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアリールオキシ基;置換もしくは非置換のアルキルチオキシ基;置換もしくは非置換のアリールチオキシ基;置換もしくは非置換のアルキルスルホキシ基;置換もしくは非置換のアリールスルホキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホウ素基;置換もしくは非置換のアルキルアミン基;置換もしくは非置換のアラルキルアミン基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のフェニル基;置換もしくは非置換のビフェニル基;置換もしくは非置換のテルフェニル基;置換もしくは非置換のスチルベン基;置換もしくは非置換のフェナントレニル基;置換もしくは非置換のピレニル基;置換もしくは非置換のペリレニル基;置換もしくは非置換のテトラセニル基;置換もしくは非置換のクリセニル基;置換もしくは非置換のアセナフタセニル基;置換もしくは非置換のトリフェニル基;置換もしくは非置換のフルオランテニル基;置換もしくは非置換のフルオレニル基;置換もしくは非置換のインデノカルバゾリル基;置換もしくは非置換のインドロカルバゾリル基;置換もしくは非置換のベンゾカルバゾリル基;置換もしくは非置換のチオフェン基;置換もしくは非置換のフラン基;置換もしくは非置換のピロール基;置換もしくは非置換のイミダゾール基;置換もしくは非置換のチアゾール基;置換もしくは非置換のオキサゾール基;置換もしくは非置換のオキサジアゾール基;置換もしくは非置換のトリアゾール基;置換もしくは非置換のピリジル基;置換もしくは非置換のビピリジル基;置換もしくは非置換のトリアジン基;置換もしくは非置換のアクリジル基;置換もしくは非置換のピリダジン基;置換もしくは非置換のキノリニル基;置換もしくは非置換のイソキノリン基;置換もしくは非置換のインドール基;置換もしくは非置換のベンゾキサゾール基;置換もしくは非置換のベンズイミダゾール基;置換もしくは非置換のベンゾチアゾール基;置換もしくは非置換のベンゾチオフェン基;置換もしくは非置換のジベンゾチオフェン基;置換もしくは非置換のベンゾフラニル基;または置換もしくは非置換のジベンゾフラニル基である。
【請求項3】L_(2)は、置換もしくは非置換の窒素;置換もしくは非置換のリン;フェニレン基;ナフタレン基;置換もしくは非置換のフルオレニレン基;置換もしくは非置換のカルバゾリレン基;またはN原子を含む置換もしくは非置換のヘテロアリーレン基であり、
Y_(2)は、水素;重水素;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;フェニル基;ナフチル基;フェナントレニル基;フルオレン基;ジメチルフルオレン基;トリフェニレン基;ベンゾクリレン基;フルオラントレン基;置換もしくは非置換のフルオレニル基;置換もしくは非置換のカルバゾール基;またはN、O、S原子のうちの1個以上を含む置換もしくは非置換のヘテロ環基である
ことを特徴とする請求項2記載の化合物。」との記載に改める補正を含むものである。

2.補正の適否
(1)補正の目的要件
上記請求項3についての補正は、補正前の「【請求項3】前記アリーレン基はフェニレン基またはナフタレン基であり、前記アリール基はフェニル基、ナフチル基、フェナントレニル基、フルオレン基、ジメチルフルオレン基、トリフェニレン基、ベンゾクリセン基またはフルオラントレン基であることを特徴とする請求項2記載の化合物。」との記載を、
補正後の「【請求項3】L_(2)は、置換もしくは非置換の窒素;置換もしくは非置換のリン;フェニレン基;ナフタレン基;置換もしくは非置換のフルオレニレン基;置換もしくは非置換のカルバゾリレン基;またはN原子を含む置換もしくは非置換のヘテロアリーレン基であり、Y_(2)は、水素;重水素;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;フェニル基;ナフチル基;フェナントレニル基;フルオレン基;ジメチルフルオレン基;トリフェニレン基;ベンゾクリレン基;フルオラントレン基;置換もしくは非置換のフルオレニル基;置換もしくは非置換のカルバゾール基;またはN、O、S原子のうちの1個以上を含む置換もしくは非置換のヘテロ環基であることを特徴とする請求項2記載の化合物。」との記載に改める補正を含むものである。

この点に関して、審判請求書の第7頁では『すなわち、旧請求項3は旧請求項2のL_(2)を限定するための請求項であり、「前記アリーレン基」という記載を含む請求項であるところ、旧請求項3が引用する旧請求項2には「アリーレン基」という記載がないため、旧請求項2の具体的なアリーレン基の記載等を用いて、旧請求項3に記載の発明を明確化するための補正を行いました。』との説明がなされている。
しかしながら、補正前の請求項3(旧請求項3)の「前記アリーレン基はフェニレン基またはナフタレン基であり、前記アリール基はフェニル基…またはフルオラントレン基である」との記載にあるように、補正前の請求項3は「前記アリーレン基」及び「前記アリール基」のみを「フェニレン基」や「フェニル基」などのより具体的なアリーレン基又はアリール基に特定するものであるからから、補正後の請求項3の記載に、当該「アリーレン基」又は「アリール基」の範囲に含まれない「置換もしくは非置換のカルバゾリレン基」や「置換もしくは非置換のカルバゾール基」などを盛り込むことが補正前の請求項3の記載に対する「明りようでない記載の釈明」を目的とするものであると認めることができない。

そして、補正前の請求項2及び補正後の請求項2の各々に共通して記載された「L_(2)は…置換もしくは非置換のインデノカルバゾリレン基;置換もしくは非置換のインドロカルバゾリレン基;置換もしくは非置換のベンゾカルバゾリレン基;…であり、Y_(2)は…置換もしくは非置換のインデノカルバゾリル基;置換もしくは非置換のインドロカルバゾリル基;置換もしくは非置換のベンゾカルバゾリル基;…である。」との記載にある「L_(2)」及び「Y_(2)」の選択肢に含まれるのは、例えば「ベンゾカルバゾリル基」のように更にベンゼン環が縮合した特定のカルバゾリル基であって、ただの「カルバゾリレン基」や「カルバゾリル基」が含まれないのに対して、
補正後の請求項3の記載は「L_(2)は…置換もしくは非置換のカルバゾリレン基;…であり、Y_(2)は…置換もしくは非置換のカルバゾール基;…であることを特徴とする請求項2記載の化合物。」となっているので、
補正後の請求項2を引用する補正後の請求項3の記載は、補正後の請求項2に記載された「ベンゾカルバゾリレン基」や「ベンゾカルバゾリル基」などの限定された置換基の選択肢に含まれない「カルバゾリレン基」及び「カルバゾリル基」を含んでいるという点において、その記載に矛盾があることが明らかである。

してみると、補正後の請求項3の記載に「置換もしくは非置換のカルバゾリレン基」や「置換もしくは非置換のカルバゾール基」などの事項を新たに盛り込む上記請求項3についての補正は、補正前の記載における「誤記」又は「明りようでない記載」の不備を解消する目的でなされているとはいえないので、特許法第17条の2第5項第3号に掲げる「誤記の訂正」ないし同4号に掲げる「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」を目的とするものに該当しない。
そして、補正後の請求項3の記載に「置換もしくは非置換のカルバゾリレン基」や「置換もしくは非置換のカルバゾール基」などの事項を新たに盛り込む上記請求項3についての補正が、同2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的とするものに該当しないことは明らかであり、また、同1号に掲げる「第三十6条第5項に規定する請求項の削除」を目的とするものに該当しないことも明らかである。

したがって、第2回目の手続補正は、特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たしておらず、目的要件を満たしていない。

(2)独立特許要件
ア.特許請求の範囲の減縮について
上記請求項1についての補正は、補正前の請求項1に記載された「前記化学式1-1は、下記化学式3-1ないし化学式3-18のいずれか1つで表示され、」という事項を、補正後の請求項1に記載された「前記化学式1-1は、下記化学式3-1ないし化学式3-4及び化学式3-6ないし化学式3-18のいずれか1つで表示され、」という事項に改める補正を含むものであって、
当該補正によって、その「化学式1-1」の選択肢の範囲が、補正前の「下記化学式3-1ないし化学式3-18のいずれか1つ」から、その「化学式3-5」である場合の選択肢が削除されて、補正後の「下記化学式3-1ないし化学式3-4及び化学式3-6ないし化学式3-18のいずれか1つ」に減縮されている。
してみると、上記請求項1についての補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的とする補正を含んでいるといえる。
そこで、補正後の請求項1並びにその従属項である請求項2及び3に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について検討する。

イ.明確性要件
(ア)補正後の請求項2の記載について
補正後の請求項2に記載された「L_(2)は酸素;硫黄;置換もしくは非置換の窒素;置換もしくは非置換のリン;」という発明特定事項は、
補正後の請求項1に記載された「L_(2)は置換もしくは非置換の窒素;置換もしくは非置換のリン;」という発明特定事項に比べて、
その選択肢の中に「酸素」及び「硫黄」を含んでいるという点において、より広範な事項を、その「特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項」として含んでいるものである。
してみると、補正後の請求項1を引用する従属形式で記載された補正後の請求項2の記載は、その記載に矛盾があり、特許を受けようとする発明が明確ではない。
したがって、補正後の請求項2の記載は、特許を受けようとする発明が明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、補正後の請求項2に係る発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものはない。

(イ)補正後の請求項3の記載について
補正後の請求項3の「L_(2)は…置換もしくは非置換のカルバゾリレン基;…であり、Y_(2)は…置換もしくは非置換のカルバゾール基;…であることを特徴とする請求項2記載の化合物。」との記載は、
補正後の請求項2の「L_(2)は…置換もしくは非置換のインデノカルバゾリレン基;置換もしくは非置換のインドロカルバゾリレン基;置換もしくは非置換のベンゾカルバゾリレン基;…であり、Y_(2)は…置換もしくは非置換のインデノカルバゾリル基;置換もしくは非置換のインドロカルバゾリル基;置換もしくは非置換のベンゾカルバゾリル基;…である。」との記載にある選択肢に含まれない範囲の「カルバゾリレン基」又は「カルバゾリル基」をも含んでいるものである。
してみると、補正後の請求項2を引用する従属形式で記載された補正後の請求項3の記載は、その記載に技術的な矛盾があるという点において特許を受けようとする発明が明確ではない。
したがって、補正後の請求項3の記載は、特許を受けようとする発明が明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、補正後の請求項3に係る発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものはない。

ウ.サポート要件
(ア)一般に『特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり,明細書のサポート要件の存在は,特許出願人…が証明責任を負うと解するのが相当である。』とされている〔平成17年(行ケ)10042号判決参照。〕。

(イ)また、一般に『いわゆる化学物質の発明は,新規で,有用,すなわち産業上利用できる化学物質を提供することにその本質が存するから,その成立性が肯定されるためには,化学物質そのものが確認され,製造できるだけでは足りず,その有用性が明細書に開示されていることを必要とする。そして,化学物質の発明の成立のために必要な有用性があるというためには,用途発明で必要とされるような用途についての厳密な有用性が証明されることまでは必要としないが,一般に化学物質の発明の有用性をその化学構造だけから予測することは困難であり,試験してみなければ判明しないことは当業者の広く認識しているところである。したがって,化学物質の発明の有用性を知るには,実際に試験を行い,その試験結果から,当業者にその有用性が認識できることを必要とする。』とされている〔平成20(行ケ)10483号判決参照〕。

(ウ)ここで、本願明細書の段落0009を含む明細書全体の記載からみて、補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)の解決しようとする課題は「有機電子素子の有機物層を形成する場合、素子の効率上昇、駆動電圧の下降および安定性上昇などの効果を示すことができる」という「新規な含窒素ヘテロ環化合物」の提供にあるものと認められ、少なくとも産業上利用することができる発明として『有機電子素子の用途に有用な含窒素ヘテロ環化合物の提供』にあるものと認められる。

(エ)そして、本願明細書の段落0283?0299には、実験例1-1-1?1-1-21が記載され、製作された有機発光素子に電流を印加した結果として、次の表1「

」が記載され、同段落0300?0312には、実験例2-1-1?2-1-12が記載され、製作された有機発光素子に電流を印加した結果として、次の表2「

」が記載され、同段落0313?0323には、実験例3-1-1?3-1-8が記載され、製作された有機発光素子に電流を印加した結果として、次の表3「

」が記載されている。

(オ)以上の表1?3の結果を整理すると、補正後の請求項1の「化学式1は、下記化学式1-1ないし1-4のいずれか1つ」との記載にある選択肢のうちの[化学式1-3]及び[化学式1-4]のもの、並びに「前記化学式1-1は、下記化学式3-1ないし化学式3-4及び化学式3-6ないし化学式3-18のいずれか1つ」との記載にある選択肢のうちの[化学式3-4]、[化学式3-6]?[化学式3-7]、[化学式3-10]?[化学式3-12]及び[化学式3-14]?[化学式3-18]のものについては、発明の詳細な説明に「有機電子素子」としての有用性が実際の試験により裏付けされていない。

(カ)そして、有機電子素子用化合物の技術分野においては、化合物の基本骨格が異なる場合に、その「素子の効率上昇」や「駆動電圧の下降」や「安定性上昇」などの有用性を示し得るか『実際に試験してみなければ判明しない』ことが当業者の広く認識しているところであるから、実験的な裏付けを欠く上記[化学式1-3]や[化学式1-4]や[化学式3-4]などのものを含む補正発明の全てが、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも認められない。

(キ)さらに、上記の実験例1-1-1?1-1-21、実験例2-1-1?2-1-12、並びに実験例3-1-1?3-1-8において実際に試験された「含窒素ヘテロ環化合物」は、補正発明の[化学式1」及び「化学式1-1ないし1-4」並びに「化学式3-1ないし化学式3-4及び化学式3-6ないし化学式3-18」は、補正後の請求項1の『「置換もしくは非置換」という用語は、重水素;ハロゲン基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;アルキル基;シクロアルキル基;アルコキシ基;アリールオキシ基;アルキルチオキシ基;アリールチオキシ基;アルキルスルホキシ基;アリールスルホキシ基;アルケニル基;シリル基;ホウ素基;アルキルアミン基;アラルキルアミン基;アリールアミン基;フェニル基;ビフェニル基;テルフェニル基;スチルベニル基;ナフチル基;フェナントレニル基;ピレニル基;ペリレニル基;テトラセニル基;クリセニル基;アセナフタセニル基;トリフェニル基;フルオランテニル基;フルオレニル基;チオフェニル基;フラニル基;ピロリル基;イミダゾリル基;チアゾリル基;オキサゾリル基;トリアゾリル基;ピリジル基;ビピリジル基;トリアジニル基;アクリジニル基;ピリダジニル基;キノリニル基;イソキノリニル基;インドリル基;ベンゾキサゾリル基;ベンズイミダゾリル基;ベンゾチアゾリル基;ベンゾカルバゾリル基;ベンゾチオフェニル基;ジベンゾチオフェニル基;ベンゾフラニル基;ジベンゾフラニル基;インデノカルバゾリル基;インドロカルバゾリル基;およびジホスフィンオキシドのうちの少なくとも1つの置換基で置換もしくは非置換されたことを意味する。』との記載における「置換基」が、上記実験例1-1-9で用いられている[化合物3-1-1-34」において「重水素」である場合のものが記載されていることを除き、全て「水素」の場合のものに限られている。

(ク)加えて、補正発明の[化学式1」及び「化学式1-1ないし1-4」並びに「化学式3-1ないし化学式3-4及び化学式3-6ないし化学式3-18」における「R_(3)?R_(6)」の「-(L_(1))_(p)-(Y_(1))_(q)」という定義において、その「L_(1)」が例えば「非置換の窒素」や「非置換のリン」などである場合(なかんづくpが10の整数である場合)については、本願明細書の発明の詳細な説明に実質的な記載が見当たらず、このような場合のものが補正発明の『有機電子素子の用途に有用な含窒素ヘテロ環化合物の提供』という課題を解決できると当業者が認識できるといえる技術常識の存在も見当たらない。

(ケ)してみると、平成27年1月30日付けの拒絶理由通知書の第2頁にある『請求項1に記載の一般式における置換基R1-R6…には、上記具体的に記載されたものと比べ、その大きさや性質の異なるものが多数含まれており、ここで、化学構造が大きく異なればその製造方法や性質が異なることが技術常識であるところ、かかる特定の構造の化合物についての記載を、請求項1に記載の一般式で表される化合物全てにまで、一般化ないし拡張し得るとは言えず、…請求項1は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求しようとするものである。』との指摘と同様の理由により、補正発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも認められない。

(コ)この点に関して、平成28年5月6日付けの審判請求書の第7?8頁において、審判請求人は『審査官殿は、上記拒絶査定において…と述べられました。これに対しまして、この度の補正の結果、新請求項1に記載の発明は、本願明細書によってサポートされております。すなわち、本出願の発明の詳細な説明は、新請求項1に係る発明すべてについて、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているものであり、また、新請求項1は、発明の詳細な説明に記載した範囲内において特許を請求しようとするものであります。以上より、審査官殿ご指摘の実施可能要件及びサポート要件に係る拒絶理由1及び2は解消されたものと思料いたします。』とのみ主張している。

(サ)しかしながら、当該主張を精査しても、平成27年12月24日付けの拒絶査定の第1頁の『上記補正後の特許請求の範囲においても、R3?R6に関しては、発明の詳細な説明において具体的に記載されたものと比べてその大きさや性質の異なる多種多様な構造が包含されている。…よって、…請求項1は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求しようとするものである。』との指摘にある理由2(サポート要件)の拒絶理由が解消されていると認める具体的な根拠が見当たらない。

(シ)したがって、補正発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも認められないので、補正後の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定に適合するものではなく、補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものはない。

エ.実施可能要件
(ア)一般に『物の有する機能・特性等からその物の構造等を予測することが困難な技術分野(例:化学物質)において、機能・特性等で特定された物のうち、発明の詳細な説明に具体的に製造方法が記載された物(及びその具体的な物から技術常識を考慮すると製造できる物)以外の物について、当業者が、技術常識を考慮してもどのように作るか理解できない場合(例えば、そのような物を作るために、当業者に期待しうる程度を越える試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要があるとき)は、実施可能要件違反となる。』とされている。

(イ)また、一般に『物の発明における発明の「実施」とは,その物の生産,使用等をする行為をいう(特許法2条3項1号)から,特許法36条4項1号の「その実施をすることができる」(実施可能要件)とは,その物を生産することができ,かつ,その物を使用できることである。したがって,物の発明については,明細書の記載又はその示唆及び出願当時の技術常識に基づき,当業者がその物を生産することができ,かつ,その物を使用できるのであれば,上記の実施可能要件を満たすということができる。』とされている〔平成26年(行ケ)第10202号判決参照。〕。

(ウ)ここで、本願明細書の段落0131?0136及び0154?0159には、次のとおりの記載がなされている。
「【0131】<実施例>
<製造例1>下記の化合物A-1、A-2、A-3、A-4の製造
【0132】【化55】

【0133】(製造例1-1)化合物A-1の製造
2,4-ジクロロフェニルボロン酸(2,4-dichlorophenylboronic acid)(18.3g、95.8mmol)と2-ブロモ-1-ナフトアルデヒド(2-bromo-1-naphthaldehyde)(20.5g、87.2mmol)をテトラヒドロフラン(THF)(300mL)に完全に溶かした後、2Mの炭酸カリウム水溶液(180mL)を添加し、テトラキストリフェニルホスフィノパラジウム(Pd(PPh_(3))_(4))(2.0g、2mol%)を入れた後、5時間撹拌還流した。常温に温度を下げて水層を除去し、有機層を無水硫酸マグネシウム(MgSO_(4))で乾燥した後、濾過した。濾液を減圧濃縮させてテトラヒドロフラン:ヘキサン=1:10でカラムし、前記化合物A-1(21.0g、80%)を製造した。
MS:[M+H]^(+)=301
【0134】(製造例1-2)化合物A-2の製造
前記製造例1-1で製造した化合物A-1(26.2g、87.0mmol)とジアミノベンゼン(9.4g、87.0mmol)をジオキサン(1,4-dioxane)(200mL)と酢酸(AcOH)(20mL)に懸濁させた。得られた混合物を約6時間撹拌還流し、常温に冷却した。前記混合物を水(100mL)で希釈した後、生成された固体を濾過し、水とエチルエーテル(ethyl ether)で洗浄し、前記化合物A-2(19.3g、57%)を製造した。MS:[M+H]^(+)=389
【0135】(製造例1-3)化合物A-3の製造
前記製造例1-2で製造した化合物A-2(1.99g、5.10mmol)とナトリウム-ターシャリー-ブトキシド(NaOt-Bu)(0.58g、6.01mmol)およびPd[P(t-Bu)_(3)]_(2)(51mg、2mol%)をトルエン(50mL)に懸濁させた。得られた混合物を約6時間撹拌還流し、常温に冷却した。反応溶液に蒸溜水を入れて反応を終了させ、有機層を抽出して無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、濾過した。濾液を減圧濃縮させてテトラヒドロフラン:ヘキサン=1:5でカラムし、前記化合物A-3(0.756g、42%)を製造した。MS:[M+H]^(+)=353
【0136】(製造例1-4)化合物A-4の製造
前記製造例1-3で製造した化合物A-3(14.4g、40.8mmol)にビス(ピナコラト)ジボロン(Bis(pinacolato)diboron)(11.4g、4.49mmol)および酢酸カリウム(KOAc)(12.0g、122mmol)をジオキサン(250mL)に懸濁させた。前記懸濁液にPd(dba)_(2)(0.70g、3mol%)とPCy_(3)(0.69g、6mol%)を加えた。混合物を約8時間撹拌還流し、常温に冷却した。前記混合物を水(250mL)で希釈し、ジクロロメタン(3×150mL)で抽出した。有機抽出物を硫酸マグネシウム上で乾燥した後、濾過した。濾液を減圧濃縮させてエチルエーテルとヘキサンで再結晶し、前記化合物A-4(14.5g、80%)を製造した。MS:[M+H]^(+)=445…
【0154】
<製造例9>下記の化合物A-33、A-34、A-35の製造
【0155】【化63】

【0156】前記製造例1において、ジアミノベンゼンの代わりにアンモニウムアセテートとベンジル(benzil)を使用したことを除いては、前記製造例1と同様の方法で化合物A-35を製造した。MS:[M+H]^(+)=547
【0157】
<製造例10>下記の化合物A-36、A-37、A-38の製造
【0158】【化64】

【0159】前記製造例1において、ジアミノベンゼンの代わりにジアミノナフタレンを使用したことを除いては、前記製造例1と同様の方法で化合物A-38を製造した。MS:[M+H]^(+)=495」

(エ)上記「製造例9」について、本願明細書の段落0156には「前記製造例1において、ジアミノベンゼンの代わりにアンモニウムアセテートとベンジル(benzil)を使用したことを除いては、前記製造例1と同様の方法で化合物A-35を製造した。」との説明がなされているが、その「製造例1」の方法は、上記段落0134の記載にあるように「ジアミノベンゼン」という「ジアミン誘導体」を用いた反応スキームに基づくものであるのに対して、その「製造例9」の方法は、上記段落0154の記載にあるようにジフェニルジケトン(別名:ベンジル)という「ジケト誘導体」と「アンモニウムアセテート」とを併用した反応スキームに基づくものであって、その反応スキームが全く異なっている。
このため、上記「前記製造例1と同様の方法で化合物A-35を製造」との記載によっては、具体的にどのような反応条件を採用した方法で当該[化合物A-35]を製造できるのか、当業者に期待し得る程度を越える試行錯誤を行う必要があるものと認められ、当該[化合物A-35]を反応中間体として合成される補正後の請求項1を引用する請求項12に列挙される[化学式3-4-1-1]?[化学式3-4-1-12]を含む一連の化合物については、当業者が当該化合物の「製造」及び「使用」をできる程度に発明の詳細な説明が記載されているとは認められない。

(オ)そして、上記「製造例10」について、本願明細書の段落0159には「前記製造例1において、ジアミノベンゼンの代わりにジアミノナフタレンを使用したことを除いては、前記製造例1と同様の方法で化合物A-38を製造した。」との説明がなされており、上記段落0158で使用されている「1,2-ジアミノナフタレン」を用いた場合には、補正後の請求項1に記載された[化学式1-2]の基本骨格を有するもの(補正後の請求項1を引用する請求項12に列挙される[化学式3-5-1-1]?[化学式3-5-1-12]を含む一連の化合物に代表されるもの)のみが得られるものとして記載され、同請求項1に記載された[化学式1-3]の基本骨格を有するものが得られるものとしては記載されていない。
このため、本願明細書の発明の詳細な説明には、上記[化学式1-3]の基本骨格を有する化合物を具体的にどのような方法で製造できるのか、当業者が過度の試行錯誤を要することなく実施できるといえる記載がなされていないので、補正後の請求項1に記載された[化学式1-3]の基本骨格を有する一連の化合物については、当業者が「製造」及び「使用」できる程度に発明の詳細な説明が記載されているとは認められない。

(カ)さらに、上記『ウ.(エ)?(カ)』において示したように、有機電子素子用の化合物の技術分野において、化合物の基本骨格が異なる場合に、その「素子の効率上昇」や「駆動電圧の下降」や「安定性上昇」などの有用性を示し得るか否かは『実際に試験してみなければ判明しない』ことが当業者の広く認識しているところであるのに、補正後の請求項1に記載された上記[化学式1-3]や[化学式1-4]や[化学式3-4]などのものについては、発明の詳細な説明に「有機電子素子」としての有用性が実際の試験により裏付けされていない。このため、補正後の請求項1に記載された「化合物」という物の発明については、明細書の記載又はその示唆及び出願当時の技術常識に基づき、当業者がその物を「使用」できるとはいえない。

(キ)加えて、上記『ウ.(キ)?(ケ)』において示したように、補正後の請求項1の『「置換もしくは非置換」という用語は…を意味する。』との記載における多数の選択肢からなる「置換基」は、上記[化合物3-1-1-34」が「重水素」である以外、全て「水素」の場合のものに限られており、補正発明の「化学式1」等における「R_(3)?R_(6)」の「-(L_(1))_(p)-(Y_(1))_(q)」について、その「L_(1)」が例えば「非置換の窒素」や「非置換のリン」などである場合(例えば「-P-P-N-P-N-Y_(1)」などである場合)については、本願明細書の発明の詳細な説明に実質的な記載が見当たらず、このような場合のものを、明細書の記載又はその示唆及び出願当時の技術常識に基づき、当業者がその物を「製造」及び「使用」できるといえる技術常識の存在も見当たらない。

(ク)このため、平成27年1月30日付けの拒絶理由通知書の第2頁の『請求項1に記載の一般式における置換基R1-R6…には、上記具体的に記載されたものと比べ、その大きさや性質の異なるものが多数含まれており、ここで、化学構造が大きく異なればその製造方法や性質が異なることが技術常識であるところ、かかる特定の構造の化合物についての記載を、請求項1に記載の一般式で表される化合物全てにまで、一般化ないし拡張し得るとは言えず、…請求項1の記載の一般式の化合物全てについて、実際に製造してその活性を確認することは、当業者に過度の負担を課すものと言わざるを得ない。』との指摘と同様の理由により、本願明細書の発明の詳細な説明の記載が実施可能要件違反にならないと認めるに至らない。

(ケ)したがって、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が補正後の請求項1に係る発明を実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載しているものではないから、特許法第36条第4項第1号に適合するものではなく、補正後の請求項1に係る発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものはない。

オ.進歩性要件
(ア)引用文献及びその記載事項
原査定で引用文献1として引用された本願優先日前に頒布された刊行物である「国際公開第2010/062065号」には、和訳にして、次の記載がある。

摘記1a:請求項1及び13(第137?138及び167頁)
「[1]下記化学式1で示されるか、下記化学式1の構造を2以上含む含窒素複素環誘導体:
[化学式1]

前記化学式1において、
X_(1)はNまたはCR_(3)であり、X_(2)はNまたはCR_(4)であり、X_(3)はNまたはCR_(5)であり、X_(4)はNまたはCR_(6)であり、Y_(1)はNまたはCR_(7)であり、Y_(2)はNまたはCR_(8)であり、Y_(3)はNまたはCR_(9)であり、Y_(4)はNまたはCR_(10)であり、X_(1)?X_(4)とY_(1)?Y_(4)は同時にNではなく、
R_(3)?R_(10)は各々独立に-(L)_(p)-(Y)_(q)であり、ここで、pは0?10の整数であり、qは1?10の整数であり、R_(3)?R_(10)のうちの隣接する2以上の基は単環式もしくは多環式の環を形成することができ、
Lは酸素;硫黄;置換もしくは非置換の窒素;置換もしくは非置換のリン;置換もしくは非置換のアリーレン基;置換もしくは非置換のアルケニレン基;置換もしくは非置換のフルオレニレン基;置換もしくは非置換のカルバゾリレン基;またはN、O、S原子のうちの1個以上を含む置換もしくは非置換のヘテロアリーレン基であり、
Yは水素;重水素;ハロゲン基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアリールオキシ基;置換もしくは非置換のアルキルチオキシ基;置換もしくは非置換のアリールチオキシ基;置換もしくは非置換のアルキルスルホキシ基;置換もしくは非置換のアリールスルホキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホウ素基;置換もしくは非置換のアルキルアミン基;置換もしくは非置換のアラルキルアミン基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のフルオレニル基;置換もしくは非置換のカルバゾール基;またはN、O、S原子のうちの1個以上を含む置換もしくは非置換の複素環基であり;
R_(1)およびR_(2)は互いに連結されて置換もしくは非置換の脂肪族、芳香族またはヘテロ芳香族の単環式もしくは多環式の環を形成するか形成しなくてもよく、R_(1)およびR_(2)が環を形成しない場合、R_(1)およびR_(2)は互いに同じであるか異なり、各々独立に、置換もしくは非置換のC_(3)?C_(40)のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のC_(6)?C_(60)のアリール基;置換もしくは非置換のC_(2)?C_(40)のアルケニル基;置換もしくは非置換のC_(2)?C_(60)の複素環基であり、
R_(1)、R_(2)およびR_(1)とR_(2)が互いに連結されて形成された芳香族またはヘテロ芳香族の単環式および多環式の環は各々独立に-(L)_(p)-(Y)_(q)で置換されてもよく、
化学式1にLとYが各々2以上存在する場合、これらは各々独立に互いに同じであるか異なり、
但し、X_(1)?X_(4)とY_(1)?Y_(4)が同時にCR_(3)?CR_(10)である場合、R_(3)?R_(10)のうちの少なくとも一つは水素ではない置換基を有するか、R_(1)とR_(2)が互いに結合して置換された単環式もしくは多環式の環を形成する。…
[13] 前記化学式1は下記化学式で示される、請求項1に記載の含窒素複素環誘導体:



摘記1b:段落327?328(第67頁)
「[327](11)下記化合物A-35、A-36、A-37、A-38の製造
[328]



摘記1c:段落476?478(第81頁)
「[476]<実施例7>化学式1-a-31の化合物の製造
[477]

[478]前記実施例1において、化合物B-1の代わりに4-ブロモビフェニル(4-bromobiphenyl)(2.33g、10.0mmol)を用いたことを除いては、実施例1と同じ方法により製造して、前記化合物1-a-31(2.95g、70%)を製造した。MS:[M+H]^(+)=421」

摘記1d:段落656?658(第98?99頁)
「[656]<実施例52>化学式3-c-13の化合物の製造
[657]

[658]前記実施例1において、化合物B-1の代わりに化合物B-15(3.21g、10.0mmol)を、化合物A-4の代わりに化合物A-38(4.45g、10.0mmol)を用いたことを除いては、実施例1と同じ方法により製造して、前記化合物3-c-13(3.36g、60%)を製造した。MS:[M+H]^(+)=561」

摘記1e:段落951?956及び968?971(第128?132頁)
「[951]実験例2-1-1?2-1-38および比較例2によって製作された有機発光素子に電流を印加した時、表4-5の結果が得られた。
[952][表4-5]
[953]… │ 化合物 │電圧… │効率… │…
│実験例2-1-2│1-a-31│4.52│21.57│…
[954]…│比較例2│ ET-A2 │5.31│23.07│…
[955]
[956]前記表4-5において、化学式1の構造を有する化合物は、電子輸送および注入能力に優れるため、有機発光素子に適用可能であることを確認することができる。…
[968]実験例3-1-1?3-1-7および比較例3-1によって製作された有機発光素子に電流を印加した時、表4-6の結果が得られた。
[969][表4-6]
[970]… │EML… │電圧… │電流効率…│…
│ 比較例3-1 │ PH │6.23│15.25│…
│実験例3-1-3│3-c-13│5.34│28.48│…
[971]表4-6から見るように、本発明に係る化学式の化合物誘導体は有機発光素子をはじめとする有機電子素子において発光物質の役割を果たすことができ、本発明に係る素子は効率、駆動電圧、安定性の面に優れた特性を示す。特に効率の面で高い発光特性を示す。」

(イ)引用文献1に記載された発明
引用文献1の請求項3(摘記1a)の[4-a-5]の化学式で示される含窒素複素環誘導体についての記載、及びその段落328(摘記1b)にその請求項1の「化学式1」のY_(1)?Y_(4)上のR_(7)?R_(10)のうち「隣接する2以上の基」が多環式の環を形成した場合の含窒素複素環誘導体を製造するために用いられる中間体化合物の製造方法が記載され、当該請求項3の[4-a-5]の化学式で示される含窒素複素環誘導体を当業者が製造できる程度に記載されているといえるから、引用文献1には、
『下記化学式で示される含窒素複素環誘導体:[4-a-5]

』についての発明(以下「引用発明a」という。)が記載されているといえる。

(ウ)対比
補正発明と引用発明aとを対比する。
引用発明aの化合物は、補正発明の[化学式3-3]のR_(7)?R_(14)、R_(1a)?R_(4a)、R_(3)?R_(4)及びR_(6)が水素であるものに相当するから、補正発明の『化学式1が化学式1-1で表示され、化学式1-1が化学式3-3で表示され、そのR_(7)?R_(14)が水素〔化学式2の定義における-(L_(2))_(r)-(Y_(2))_(s)において「r=0、s=1、Y_(2)=水素」のもの〕であり、そのR_(1a)?R_(4a)、R_(3)?R_(4)及びR_(6)が水素〔-(L_(1))_(p)-(Y_(1))_(q)において「p=0、q=1、Y_(1)=水素」のもの〕であるもの』に相当する。

そして、引用発明aの化合物は、補正発明の[化学式3-3]のR_(5)が-アントラセン環-ナフタレン環〔補正発明の-(L_(1))_(p)-(Y_(1))_(q)において2通りの解釈が成り立ち、第一の解釈として「p=2、q=1、L_(1)=アントラセニレン基及びナフチレン基、Y_(1)=水素」と解され、第二の解釈として「p=1、r=1、L_(1)=アントラセニレン基、Y_(1)=ナフチル基」と解されるもの〕である場合に相当するから、上記「第一の解釈」の場合で検討するに、
引用発明aの『L_(1)=アントラセニレン基及びナフチレン基』と、補正発明の『L_(1)=置換もしくは非置換のフェニレン基;ビフェニレン基;テルフェニレン基;スチルベニレン基;フェナントレニレン基;ピレニレン基;ペリレニレン基;テトラセニレン基;クリセニレン基;トリフェニレン基;アセナフタセニレン基』は、両者とも『L_(1)=アリーレン基』である点において共通する。

してみると、補正発明と引用発明aは、両者とも『下記化学式1で表示される化合物:

前記化学式1において、
X_(1)はCR_(3)であり、X_(2)はCR_(4)であり、X_(3)はCR_(5)であり、X_(4)はCR_(6)であり、X_(1)?X_(4)の全てが同時にNではなく、
R_(3)?R_(6)はそれぞれ独立に-(L_(1))_(p)-(Y_(1))_(q)であり、ここで、pは0(R_(3)、R_(4)及びR_(6))または1(R_(5))の整数であり、qは1の整数であり、
L_(1)は非置換のアリーレン基(R_(5))であり、
Y_(1)は水素(R_(3)、R_(4)及びR_(6));非置換のアリール基(R_(5))であり;
A_(1)環は化学式2で表示され、

前記化学式2において、
R_(9)とR_(10)は化学式1に直接結合される基であり、R_(7)?R_(10)のうちの、化学式1への連結に使用されない基、R_(11)、R_(12)、R_(13)およびR_(14)はそれぞれ独立に-(L_(2))_(r)-(Y_(2))_(s)であり、ここで、rは0の整数であり、sは1の整数であり、
Y_(2)は水素であり;
B_(1)はアリール基であり、B_(2)はアリール基であり、
R_(1)およびR_(2)は互いに連結され、ベンゼンを形成し、
R_(1)およびR_(2)が環を形成する場合、化学式1は、下記化学式1-1で表示され、

前記化学式1-1は、下記化学式3-3で表示され、

前記化学式3-3において、
R_(7)?R_(14)は前記化学式2で定義したとおりであり、
R_(1a)?R_(4a)およびR_(3)?R_(6)はそれぞれ独立に、-(L_(1))_(p)-(Y_(1))_(q)であり、ここで、pは0(R_(3)、R_(4)及びR_(6))または2(R_(5))の整数であり、qは1の整数であり、
L_(1)は非置換のアリーレン基であり、
Y_(1)は水素であり、
R_(1)とR_(2)が互いに連結されて形成されたベンゼンはそれぞれ独立に、-(L_(1))_(p)-(Y_(1))_(q)で置換され得(p=0、q=1、Y_(1)=水素)、
化学式1にL_(1)とY_(1)がそれぞれ2以上存在する場合、これらはそれぞれ独立に互いに同一または異なる。』という点において一致し、
両者の「化学式3-3」の「R_(5)」の「-(L_(1))_(p)-(Y_(1))_(q)」という定義における「L_(1)」が、
前者においては「L_(1)は置換もしくは非置換の窒素;置換もしくは非置換のリン;置換もしくは非置換のフェニレン基;置換もしくは非置換のビフェニレン基;置換もしくは非置換のテルフェニレン基;置換もしくは非置換のスチルベニレン基;置換もしくは非置換のフェナントレニレン基;置換もしくは非置換のピレニレン基;置換もしくは非置換のペリレニレン基;置換もしくは非置換のテトラセニレン基;置換もしくは非置換のクリセニレン基;置換もしくは非置換のトリフェニレン基;置換もしくは非置換のアセナフタセニレン基;置換もしくは非置換のフルオランテニレン基;置換もしくは非置換のフルオレニレン基;置換もしくは非置換のピロリレン基;置換もしくは非置換のイミダゾリレン基;置換もしくは非置換のトリアゾリレン基;置換もしくは非置換のピリジリレン基;置換もしくは非置換のビピリジリレン基;置換もしくは非置換のトリアジニレン基;置換もしくは非置換のアクリジリレン基;置換もしくは非置換のピリダジニレン基;置換もしくは非置換のキノリニレン基;置換もしくは非置換のイソキノリニレン基;置換もしくは非置換のインドリレン基;置換もしくは非置換のベンズイミダゾリレン基;置換もしくは非置換のベンゾカルバゾリレン基;置換もしくは非置換のインデノカルバゾリレン基;または置換もしくは非置換のインドロカルバゾリレン基」であるのに対して、後者においては「L_(1)は非置換のアントラセニレン基;または非置換のナフチレン基」である点において相違する。

(ウ)判断
上記相違点について検討する。
引用文献1に記載された発明は、その請求項1(摘記1a)に記載された発明の「化学式1」で示されるように、補正発明の「R_(5)」に相当する位置の置換基が、引用発明aの「-アントラセニレン基-ナフチレン基-水素」である場合のものに限られず、例えば、その請求項13(摘記1a)の[4-a-4]で示される化合物(補正発明の「R_(5)」に相当する位置の置換基が「-水素」であるもの)や、その段落529(摘記1c)の[1-a-31]で示される化合物(補正発明の「R_(5)」に相当する位置の置換基が「フェニレン基-フェニレン基-水素」であるもの)などが、有機電子素子用の化合物として同等な効果を期待できるものとして記載されている。
してみると、引用文献1の請求項1に記載された発明の一例として含まれる引用発明aについて、その「R_(5)」の「-アントラセニレン基-ナフチレン基-水素」を、同じく引用文献1の請求項1に記載された発明の一例である[4-a-4]で示される化合物(補正発明の「-(L_(1))_(p)-(Y_(1))_(q)」がp=0、q=1、Y_(1)=水素のもの)や、同[1-a-31]で示される化合物(補正発明の「-(L_(1))_(p)-(Y_(1))_(q)」がp=2、q=1、L_(1)=フェニレン基、Y_(1)=水素のもの)における対応する置換基に置き換えることは、当業者にとって通常の創作能力の発揮の範囲である。

また、引用発明aの置換基を置き換えた場合の化合物を合成することは、引用文献1の段落328(摘記1b)の合成スキームにおいて用いられている「3-ブロモ-2-ホルミル-キノリン」に代えて「1-ブロモ-2-ホルミル-ナフタレン」などの対応する化合物を用いて、その[化合物A-38]に対応する中間体を合成し、同段落477(摘記1c)の合成スキームにおいて用いられている「4-ブロモビフェニル」などの随意の化合物を用いて、所望の目的化合物が得られることが明らかであって、
原審の引用文献2(特開2010-120893号公報)の段落0143の「化合物A-60」や「化合物A-62」についての記載及び同段落0474の合成スキームについての記載、並びに原審の引用文献3(韓国公開特許第10-2010-0099459号公報)の「化合物47」及び「化合物48」についての記載をも参酌するに、補正後の請求項1の化学式2のB_(1)及びB_(2)が窒素で置換されていないアリール基である場合の化合物を合成することが、本願優先日当時の技術水準において当業者にとって格別困難なことであるとは認められない。
そして、補正発明の効果について検討するに、引用文献1の段落971(摘記1e)の「本発明に係る化学式の化合物誘導体は有機発光素子をはじめとする有機電子素子において発光物質の役割を果たすことができ、本発明に係る素子は効率、駆動電圧、安定性の面に優れた特性を示す。」との記載にあるように、引用文献1に記載された化学式の化合物誘導体は、効率、駆動電圧、安定性の面で優れた特性を示すものであるから、本願明細書の段落0009に記載された「素子の効率上昇、駆動電圧の下降および安定性上昇などの効果を示すことができる」という効果が、当業者にとって格別予想外の効果であるとはいえず、また、補正発明に含まれる非常に広範な化合物の全てについて格別顕著な効果があるとも認められない。
したがって、補正発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

3.まとめ
以上総括するに、第2回目の手続補正は、特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たしておらず、仮に目的要件を満たすとしても、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、その余のことを検討するまでもなく、第2回目の手続補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、〔補正の却下の決定〕の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
第2回目の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?22に係る発明は、平成27年6月9日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?22に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
そして、本願請求項1に係る発明(以下「本1発明」という。)は、上記『第2 1.』に記載されたとおりのものである。

2.原査定の理由
原査定の理由は『この出願については、平成27年1月30日付け拒絶理由通知書に記載した理由1、2及び5によって、拒絶をすべきものです。』というものである。そして、平成27年1月30日付けの拒絶理由通知書には、理由1として「1.この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。」との理由と、理由2として「2.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。」との理由が示され、その「下記の点」として、上記『第2 2.(2)ウ.(ケ)及びエ.(ク)』に示した指摘がなされている。また、理由5として「5.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」との理由が示され、その「下記の刊行物」として、上記『第2 2.(2)オ.(ア)』に示した引用文献1(国際公開第2010/062065号)が提示されている。

第4 当審の判断
1.理由1について
上記『第2 2.(2)』の項において検討した「補正発明」は、本1発明を限定的に減縮したものであって、本1発明は上記「補正発明」を包含するものであるところ、上記『第2 2.(2)ウ.(キ)?(ケ)及びエ.(カ)?(ク)』において示したのと同様に、本1発明の[化学式1」及び「化学式1-1ないし1-4」並びに「化学式3-1ないし化学式3-18」における「R_(3)?R_(6)」の「-(L_(1))_(p)-(Y_(1))_(q)」という定義において、その「L_(1)」が例えば「酸素;硫黄;置換もしくは非置換の窒素;置換もしくは非置換のP;」などである場合(なかんづくpが10の整数である場合)については、本願明細書の発明の詳細な説明に具体的な合成例などの実質的な記載が見当たらない。
してみると、本1発明の一般式における置換基「R_(3)?R_(6)」には、上記具体的に記載されたものと比べ、その大きさや性質の異なるものが多数含まれており、ここで、化学構造が大きく異なればその製造方法や性質が異なることが技術常識であるところ、請求項1に記載の一般式の化合物全てについて、実際に製造してその有用性を確認することは、当業者に過度の負担を課すものと言わざるを得ない。
したがって、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本1発明を実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載しているものではないから、特許法第36条第4項第1号に適合するものではなく、本願は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

2.理由2について
本1発明は、上記「補正発明」を包含するものであって、上記「補正発明」よりも特許を受けようとする発明の範囲がより広範なものである。
してみると、上記『第2 2.(2)ウ.』の項において示したのと同様の理由により、本1発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも認められない。
したがって、本願請求項1の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されたものではないから、特許法第36条第6項第1号の規定に適合するものではなく、本願は特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。

3.理由5について
(1)引用文献1の記載事項
上記引用文献1には、上記『第2 2.(2)オ.(ア)』に示したとおりの記載がある。

(2)引用文献1に記載された発明
引用文献1には、上記『第2 2.(2)オ.(イ)』に示したとおりの「引用発明a」が記載されている。
また、引用文献1の段落656(摘記1d)の[化学式3-c-13]の記載からみて、引用文献1には、
『下記化学式で示される含窒素複素環誘導体:[化学式3-c-13]

』についての発明(以下「引用発明c」という。)も記載されている。

(3)引用発明aに基づく対比・判断
本1発明は上記「補正発明」を包含するものである。してみると、上記『第2 2.(2)オ.(イ)?(ウ)』において示したのと同様の理由により、本1発明に進歩性は認められない。
したがって、本1発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(4)引用発明cに基づく対比・判断
ア.対比
本1発明と引用発明cとを対比する。
引用発明cの化合物は、本1発明の[化学式3-5]のR_(7)?R_(14)、R_(1a)?R_(4a)、R_(3)?R_(4)及びR_(6)が水素であるものに相当するから、本1発明の『化学式1が化学式1-1で表示され、化学式1-1が化学式3-5で表示され、そのR_(7)?R_(14)が水素〔化学式2の定義における-(L_(2))_(r)-(Y_(2))_(s)において「r=0、s=1、Y_(2)=水素」のもの〕であり、そのR_(1a)?R_(4a)、R_(3)?R_(4)及びR_(6)が水素〔-(L_(1))_(p)-(Y_(1))_(q)において「p=0、q=1、Y_(1)=水素」のもの〕であるもの』に相当する。
そして、引用発明cの化合物は、本1発明の[化学式3-5]のR_(5)が-フェニレン基-カルバゾリル基で〔本1発明の-(L_(1))_(p)-(Y_(1))_(q)において「p=1、r=1、L_(1)=フェニレン基、Y_(1)=カルバゾリル基」と解されるもの〕である場合に相当するから、
引用発明cの『L_(1)=フェニレン基』は、本1発明の『L_(1)=非置換のフェニレン基』に相当し、
引用発明cの『Y_(1)=カルバゾリル基』と、本1発明の『L_(1)=置換もしくは非置換のベンゾカルバゾール基;インデノカルバゾリル基;インドロカルバゾリル基』とは、両者とも『L_(1)=カルバゾリル基』である点において共通する。

してみると、本1発明と引用発明cは、両者とも『下記化学式1で表示される化合物:

前記化学式1において、
X_(1)はCR_(3)であり、X_(2)はCR_(4)であり、X_(3)はCR_(5)であり、X_(4)はCR_(6)であり、X_(1)?X_(4)の全てが同時にNではなく、
R_(3)?R_(6)はそれぞれ独立に-(L_(1))_(p)-(Y_(1))_(q)であり、ここで、pは0(R_(3)、R_(4)及びR_(6))または1(R_(5))の整数であり、qは1の整数であり、
L_(1)は非置換のアリーレン基(R_(5))であり、
Y_(1)は水素(R_(3)、R_(4)及びR_(6));置換もしくは非置換のカルバゾール基(R_(5))であり;
A_(1)環は化学式2で表示され、

前記化学式2において、
R_(9)とR_(10)は化学式1に直接結合される基であり、R_(7)?R_(10)のうちの、化学式1への連結に使用されない基、R_(11)、R_(12)、R_(13)およびR_(14)はそれぞれ独立に-(L_(2))_(r)-(Y_(2))_(s)であり、ここで、rは0の整数であり、sは1の整数であり、
Y_(2)は水素であり;
B_(1)は環を構成する1個の炭素が窒素で置換されたアリール基であり、B_(2)はアリール基であり、
R_(1)およびR_(2)は互いに連結され、ベンゼンを形成し、
R_(1)およびR_(2)が環を形成する場合、化学式1は、下記化学式1-1で表示され、

前記化学式1-1は、下記化学式3-5で表示され、

前記化学式3-5において、
R_(7)?R_(14)は前記化学式2で定義したとおりであり、
R_(1a)?R_(4a)およびR_(3)?R_(6)はそれぞれ独立に、-(L_(1))_(p)-(Y_(1))_(q)であり、ここで、pは0(R_(3)、R_(4)及びR_(6))または1(R_(5))の整数であり、qは1の整数であり、
L_(1)は非置換のフェニレン基であり、
Y_(1)は水素(R_(3)、R_(4)及びR_(6));非置換のカルバゾール基(R_(5))であり、
R_(1)とR_(2)が互いに連結されて形成されたベンゼンはそれぞれ独立に、-(L_(1))_(p)-(Y_(1))_(q)で置換され得(p=0、q=1、Y_(1)=水素)、
化学式1にL_(1)とY_(1)がそれぞれ2以上存在する場合、これらはそれぞれ独立に互いに同一または異なる。』という点において一致し、
両者の「化学式3-5」の「R_(5)」の「-(L_(1))_(p)-(Y_(1))_(q)」という定義における「Y_(1)」が、
前者においては「Y_(1)は水素;重水素;ハロゲン基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアリールオキシ基;置換もしくは非置換のアルキルチオキシ基;置換もしくは非置換のアリールチオキシ基;置換もしくは非置換のアルキルスルホキシ基;置換もしくは非置換のアリールスルホキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホウ素基;置換もしくは非置換のアルキルアミン基;置換もしくは非置換のアラルキルアミン基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のフェニル基;置換もしくは非置換のビフェニル基;置換もしくは非置換のテルフェニル基;置換もしくは非置換のスチルベン基;置換もしくは非置換のフェナントレニル基;置換もしくは非置換のピレニル基;置換もしくは非置換のペリレニル基;置換もしくは非置換のテトラセニル基;置換もしくは非置換のクリセニル基;置換もしくは非置換のフルオレニル基;置換もしくは非置換のアセナフタセニル基;置換もしくは非置換のトリフェニレン基;置換もしくは非置換のフルオランテニル基;置換もしくは非置換のチオフェン基;置換もしくは非置換のフラン基;置換もしくは非置換のピロール基;置換もしくは非置換のイミダゾール基;置換もしくは非置換のチアゾール基;置換もしくは非置換のオキサゾール基;置換もしくは非置換のオキサジアゾール基;置換もしくは非置換のトリアゾール基;置換もしくは非置換のピリジル基;置換もしくは非置換のビピリジル基;置換もしくは非置換のトリアジン基;置換もしくは非置換のアクリジル基;置換もしくは非置換のピリダジン基;置換もしくは非置換のキノリニル基;置換もしくは非置換のイソキノリン基;置換もしくは非置換のインドール基;置換もしくは非置換のベンゾキサゾール基;置換もしくは非置換のベンズイミダゾール基;置換もしくは非置換のベンゾチアゾール基;置換もしくは非置換のベンゾカルバゾール基;置換もしくは非置換のベンゾチオフェン基;置換もしくは非置換のジベンゾチオフェン基;置換もしくは非置換のベンゾフラニル基;置換もしくは非置換のジベンゾフラニル基;置換もしくは非置換のインデノカルバゾリル基;または置換もしくは非置換のインドロカルバゾリル基」であるのに対して、後者においては「Y_(1)は非置換のカルバゾール基」である点において相違する。

イ.判断
上記相違点について検討する。
引用文献1に記載された発明は、その請求項1(摘記1a)に記載された発明の「化学式1」で示されるように、補正発明の「R_(5)」に相当する位置の置換基が、引用発明cの「-フェニレン基-カルバゾリル基」である場合のものに限られず、例えば、その段落328(摘記1b)の[化合物A-37]で示される化合物(本1発明の「R_(5)」に相当する位置の置換基が「-塩素」であって、本1発明の発明特定事項の全てを満たすもの)が引用発明cの化合物を合成するための中間体化合物として記載され、また、例えば、その段落529(摘記1c)の[1-a-31]で示される化合物(本1発明の「R_(5)」に相当する位置の置換基が「-フェニレン基-フェニル基」であるもの)などが、有機電子素子用の化合物として同等な効果を期待できるものとして記載されている。
してみると、引用文献1の請求項1に記載された発明の一例として含まれる引用発明cについて、その「-フェニレン基-カルバゾリル基」を、同じく引用文献1の請求項1に記載された発明の一例である[1-a-31]で示される化合物(本1発明の「-(L_(1))_(p)-(Y_(1))_(q)」がp=1、q=1、L_(1)=フェニレン基、Y_(1)=フェニル基のもの)や、引用発明cの化合物を合成するための中間体化合物としても記載される[化合物A-37]で示される化合物(本1発明の「-(L_(1))_(p)-(Y_(1))_(q)」がp=0、q=1、Y_(1)=塩素のもの)における対応する置換基に置き換えることは、当業者にとって通常の創作能力の発揮の範囲である。
また、引用発明cの置換基を置き換えた場合の化合物を合成することは、引用文献1の段落328(摘記1b)の合成スキームに本1発明の発明特定事項の全てを満たす[化合物A-37]で示される化合物の製造例が具体的に記載されているから、本願優先日当時の技術水準において当業者にとって容易になし得るものと認められる。
そして、本1発明の効果について検討するに、引用文献1の段落971(摘記1e)の「本発明に係る化学式の化合物誘導体は有機発光素子をはじめとする有機電子素子において発光物質の役割を果たすことができ、本発明に係る素子は効率、駆動電圧、安定性の面に優れた特性を示す。」との記載にあるように、引用文献1に記載された化学式の化合物誘導体は、効率、駆動電圧、安定性の面で優れた特性を示すものであるから、本願明細書の段落0009に記載された「素子の効率上昇、駆動電圧の下降および安定性上昇などの効果を示すことができる」という効果が、当業者にとって格別予想外の効果であるとはいえず、また、本1発明の広範な化合物の全てについて格別顕著な効果があるとも認められない。
したがって、本1発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

6.むすび
以上のとおり、本願は、特許法第36条第4項第1号及び第6項に規定する要件を満たしておらず、また、本1発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-02-23 
結審通知日 2017-02-27 
審決日 2017-03-10 
出願番号 特願2014-520111(P2014-520111)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C07D)
P 1 8・ 537- Z (C07D)
P 1 8・ 574- Z (C07D)
P 1 8・ 575- Z (C07D)
P 1 8・ 536- Z (C07D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青鹿 喜芳村守 宏文  
特許庁審判長 井上 雅博
特許庁審判官 齊藤 真由美
木村 敏康
発明の名称 新規な化合物およびこれを用いた有機電子素子  
代理人 実広 信哉  
代理人 渡部 崇  

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