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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1330730
審判番号 不服2016-8927  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-15 
確定日 2017-07-24 
事件の表示 特願2011-200380号「遊技機のメダル補給装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 4月 4日出願公開、特開2013- 59519号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成23年9月14日に出願したものであって,平成27年9月11日付けで拒絶理由が通知され,同年11月18日に意見書及び手続補正書が提出され,同年12月22日付けで拒絶理由が通知(いわゆる「最後の拒絶理由通知」)され,これに対し平成28年2月24日に意見書及び手続補正書が提出されたが,同年3月29日付けで同年2月24日付けの手続補正が却下されると共に拒絶査定がなされ,これに対して,同年6月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。

第2 平成28年6月15日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年6月15日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の概要
本件補正は特許請求の範囲の請求項1?4の記載を含む補正であり,平成27年11月18日付けの手続補正と本件補正の特許請求の範囲の請求項1の記載はそれぞれ,以下のとおりである(下線部は補正を示す。)。

(補正前:平成27年11月18日付けの手続補正)
「【請求項1】
複数の遊技機が設置される設置島に延設され,それぞれの遊技機に対して小径メダル及び大径メダルを搬送して供給するメダル供給搬送手段と,
前記設置島に延設され,それぞれの遊技機から排出されたメダルを回収して搬送するメダル回収搬送手段と,
前記メダル回収搬送手段で回収されたメダルを小径メダルと大径メダルとに選別し得るメダル選別手段と,
前記メダル回収搬送手段で回収されたメダルを収容するとともに,前記メダル供給搬送手段にメダルを補給するメダル補給手段と,
を具備し,前記遊技機からのメダルの要求信号に応じて前記メダル補給手段を介して小径メダル又は大径メダルを補給可能な遊技機のメダル補給装置であって,
前記選別手段で選別され,前記メダル供給搬送手段を介して前記遊技機に補給される小径メダル又は大径メダルの枚数を計数可能な計数手段と,
前記遊技機からメダルの要求信号を受信したとき,前記計数手段による計数値に基づき不正の有無を判定する判定手段と,
を具備したことを特徴とする遊技機のメダル補給装置。」

(補正後:本件補正:平成28年6月15日付け手続補正)
「【請求項1】
複数の遊技機が設置される設置島に延設され,それぞれの遊技機に対して小径メダル及び大径メダルを搬送して供給するメダル供給搬送手段と,
前記設置島に延設され,それぞれの遊技機から排出されたメダルを回収して搬送するメダル回収搬送手段と,
前記メダル回収搬送手段で回収されたメダルを小径メダルと大径メダルとに選別し得るメダル選別手段と,
前記メダル回収搬送手段で回収されたメダルを収容するとともに,前記メダル供給搬送手段にメダルを補給するメダル補給手段と,
を具備し,前記遊技機からのメダルの要求信号に応じて前記メダル補給手段を介して小径メダル又は大径メダルを補給可能とされるとともに,大当たり信号が発信されず前記小径メダル又は大径メダルが払い出される遊技機が設置され得る遊技機のメダル補給装置であって,
前記選別手段で選別され,前記メダル供給搬送手段を介して前記遊技機に補給される小径メダル又は大径メダルの枚数を計数可能な計数手段と,
前記遊技機からメダルの要求信号を受信したとき,前記計数手段による計数値に基づき,大当たり信号が発信されず前記小径メダル又は大径メダルが払い出される遊技機に対する不正の有無を判定し得る判定手段と,
を具備したことを特徴とする遊技機のメダル補給装置。」

2 補正の適否
(1)補正事項
本件補正は,補正前の請求項1について,以下に挙げる補正事項を含むものである。

ア 補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「遊技機のメダル補給装置」に関して,
「前記遊技機からのメダルの要求信号に応じて前記メダル補給手段を介して小径メダル又は大径メダルを補給可能な」という記載を,
「前記遊技機からのメダルの要求信号に応じて前記メダル補給手段を介して小径メダル又は大径メダルを補給可能とされるとともに,大当たり信号が発信されず前記小径メダル又は大径メダルが払い出される遊技機が設置され得る」という記載にする補正。

イ 補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「判定手段」に関して,
「前記計数手段による計数値に基づき不正の有無を判定する」という記載を,
「前記計数手段による計数値に基づき,大当たり信号が発信されず前記小径メダル又は大径メダルが払い出される遊技機に対する不正の有無を判定し得る」という記載にする補正。

(2)補正の目的等についての検討
ア 補正事項アは,「遊技機のメダル補給装置」について,「大当たり信号が発信されず前記小径メダル又は大径メダルが払い出される遊技機が設置され得る」と限定する補正であり,また,補正後の請求項1に記載された発明は,補正前の請求項1に記載された発明と,産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので,特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 補正事項イは,「不正の有無を判定する」という構成を,「大当たり信号が発信されず前記小径メダル又は大径メダルが払い出される遊技機に対する不正の有無を判定し得る」という構成に限定する補正であり,また,補正後の請求項1に記載された発明は,補正前の請求項1に記載された発明と,産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので,特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そして,本件補正は,段落【0037】?【0039】,【0073】?【0075】の記載に基づくものであるから,新規事項を追加するものではない。

3 独立特許要件
そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か,すなわち,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か,について以下に検討する。

(1)本件補正後の請求項1に係る発明
補正後の請求項1に係る発明(以下,「本願補正発明」という。)は,上記「1 本件補正の概要」に本件補正後の請求項1として記載したとおりのものである(A?Hは,本願補正発明を分説するために当審で付与した。)。
「【請求項1】
A 複数の遊技機が設置される設置島に延設され,それぞれの遊技機に対して小径メダル及び大径メダルを搬送して供給するメダル供給搬送手段と,
B 前記設置島に延設され,それぞれの遊技機から排出されたメダルを回収して搬送するメダル回収搬送手段と,
C 前記メダル回収搬送手段で回収されたメダルを小径メダルと大径メダルとに選別し得るメダル選別手段と,
D 前記メダル回収搬送手段で回収されたメダルを収容するとともに,前記メダル供給搬送手段にメダルを補給するメダル補給手段と,
を具備し,
E 前記遊技機からのメダルの要求信号に応じて前記メダル補給手段を介して小径メダル又は大径メダルを補給可能とされるとともに,大当たり信号が発信されず前記小径メダル又は大径メダルが払い出される遊技機が設置され得る遊技機のメダル補給装置であって,
F 前記選別手段で選別され,前記メダル供給搬送手段を介して前記遊技機に補給される小径メダル又は大径メダルの枚数を計数可能な計数手段と,
G 前記遊技機からメダルの要求信号を受信したとき,前記計数手段による計数値に基づき,大当たり信号が発信されず前記小径メダル又は大径メダルが払い出される遊技機に対する不正の有無を判定し得る判定手段と,
H を具備したことを特徴とする遊技機のメダル補給装置。」

(2)刊行物に記載された事項
(2-1)刊行物1
原査定の平成27年12月22日付け拒絶理由に引用された本願の出願前に頒布された特開2010-284323号公報(以下,「刊行物1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(ア)「【0012】
以下,本発明に係る遊技場のメダル循環システムを実施するための最良の形態について詳しく説明する。図1は本発明が適用される遊技場における複数の設置島の平面図,図2は一つの設置島の側面図,図3は同設置島における搬送ラインと遊技機との関係を示す拡大平面図である。各設置島I(I1?I3)はいずれも同じ構造からなるので,便宜上設置島I1について説明する。設置島I1の長手方向に沿った両側面に,スロットマシン等の遊技機Sが多数台列設されている。そのうち,一側に列設される遊技機S1は,外径が25mmのメダルM1を遊技媒体とするものであり,他側に列設される遊技機S2は,外径が30mmのメダルM2を遊技媒体とするものである。また,二種類の各遊技機S1,S2の一側には,一般に台間機と称されるメダル貸出ユニットD1,D2がそれぞれ配置されている。そして,遊技者が該メダル貸出ユニットD1,D2に現金を投入または磁気カードからなるプリペイドカードを挿入することにより,所定枚数のメダルが貸し出される。」

(イ)「【0016】
補給本体装置5を更に詳しく説明する。メダル選別機6は,図7乃至9に示すように箱枠B内に設けられた水平な基板12の上面に固定され,径の異なるメダルM1,M2が混在している状態でこれらメダルM1,M2を整列させ一個ずつ送出するメダル送出部13と,該メダル送出部13に接続されるメダル排出通路部14と,を備えている。メダル送出部13内には円形室15が形成され,該円形室15の一側に該円形室15と連通する投入樋16が設けられると共に,他側に駆動モータ17が配設されている。円形室15内に水平面に対して約60度の角度に傾斜した状態で支持されると共に,前記駆動モータ17のモータ軸(図示せず。)に接続される送出円盤18が配置される。該送出円盤18の表面には,大径メダルM2の直径よりも若干広い間隔で円周方向に沿って等間隔に配置された複数の突起19,19,…が,該送出円盤18の外周縁より若干内方に位置して設けられる。各メダルM1,M2は,一側面を前記送出円盤18の表面に当接した状態で,かつ,突起19,19,…の間に一個ずつ配置される。そして,前記駆動モータ17が駆動することにより送出円盤18が一定の速度で回転し,各突起19,19間に配置された各メダルM1,M2をメダル排出通路部14へ導く。
・・・
【0021】
前記メダル排出通路部14における増速域22aに,該増速域22aを通過する小・大径メダルM1,M2を検出する第一検知センサ49が配置固定される。また,同じくメダル排出通路部14の大径メダル流下域22cに,該大径メダル流下域22cを通過する大径メダルM2を検出する第二検知センサ50が配置固定される。例えば遊技機S1,S2において,メダルM1,M2の枚数が減少して小径メダルM1または大径メダルM2の補給を必要とした場合,搬送ライン3a,3bに通ずる第一分岐口27または第二分岐口33を開放して所要量のメダルM1,M2を第一・第二搬送ライン排出樋28,34を介し搬送ライン3a,3bに乗架して所定の遊技機S1,S2に供給する。このとき,第一検知センサ49と第二検知センサ50によってそれぞれ通過したメダルの枚数を検出することにより,小径メダルM1または大径メダルM2がメダルを要求している遊技機S1,S2に何枚補給されたかを把握でき都合がよく,管理もし易い。前記小径メダルM1の枚数は,第一検知センサ49によるカウント数から第二検知センサ50によるカウント数を引くことにより算出される。このようにして,遊技機S1,S2には常に必要量のメダルM1,M2を補給することができる。」

(ウ)「【0051】
設置島I1?I3の稼働中に,或る遊技機S1で小径メダルM1が不足してきたとの信号がこれと対応するメダル補給制御装置118から制御装置Eに出力された場合は,メダル選別機6における第一ソレノイド30を消磁して開閉部材29を回動させ,第一分岐口27を開口させる。これにより,選別された小径メダルM1が第一搬送ライン排出樋28を介して小径メダルM1用の搬送ライン3aに供給される。小径メダル用の搬送ライン3aに排出された小径メダルM1は,該搬送ライン3aにより小径メダルM1の補給を必要とされる遊技機S1に向かって搬送される。一方,補給を必要とする遊技機S1に対応する分岐ユニット101aでは,ソレノイド110が励磁して回動部材104が下降し分岐板104aが搬送ベルト99の上面にまで達し,搬送される小径メダルM1を開口部106を介して分岐シュート105内に導く。分岐シュート105に導かれた小径メダルM1は,補給管114を介して所定の遊技機S1に補給される。先の分岐ユニット101aにおける小径メダルM1の補給が終了した後に必要であれば,後の分岐ユニット101bにおけるソレノイド110を励磁させ,同様にして小径メダルM1をメダル貸出ユニットD1に補給する。」

(エ)「【0055】
このように,本発明に係る遊技場のメダル循環システムは,小径メダルM1と大径メダルM2を遊技媒体とする二種類の遊技機S1,S2をそれぞれ一つの設置島Iに列設し,該設置島Iの下部に各遊技機S1,S2から排出され外径の異なるメダルM1,M2を混在した状態で回収するメダル回収搬送装置1を配設し,設置島Iの上部に外径の異なるメダルM1,M2をそれぞれ別個に搬送する一対の搬送ライン3a,3bを並設して有し各遊技機S1,S2にメダルM1,M2を供給するメダル供給搬送装置2を配設し,設置島Iの長手方向の端部にメダル回収搬送装置1により回収された外径の異なるメダルM1,M2を小径メダルM1と大径メダルM2とに選別すると共にこれら小・大径メダルM1,M2をそれぞれメダル供給搬送装置2の各搬送ライン3a,3bに供給する補給本体装置5を設けるようにした。そして,回収されたメダルM1,M2を外径の同じもの同士に選別し,選別されたメダルM1,M2を各搬送ライン3a,3b上を搬送させて各遊技機S1,S2に供給するようにしたので,一つの設置島Iに外径の異なるメダルM1,M2を遊技媒体とする二種類の遊技機S1,S2を混在させて配置するようなことがあっても,一つの設備で外径の異なるメダルを自動的に循環させることができ,該設備の製作や施工が容易であって,設備コストも低廉に成し得る。
【0056】
前記補給本体装置5は,メダル回収搬送装置1により回収されたメダルM1,M2を揚送するメダル揚送リフト10と,該メダル揚送リフト10から排出されるメダルM1,M2を小径メダルM1と大径メダルM2とに選別するメダル選別機6と,小・大径メダルM1,M2をそれぞれ別個に貯留する第一・二メダル貯留タンク7a,7bと,を備え,メダル選別機6により選別された小径メダルM1及び大径メダルM2をそれぞれ経路切替手段によって経路を切り替えることにより第一・二メダル貯留タンク7a,7bまたは各搬送ライン3a,3bに供給するようにしている。これにより,例えば或る遊技機S1,S2に小径メダルM1または大径メダルM2の補給要求があったとき,そのメダルM1,M2に対応するメダル貯留タンク7a,7bから集中的にメダルM1,M2を排出し,対応する搬送ライン3a,3bを介して前記遊技機S1,S2にメダルM1,M2を供給することができ,メダルM1,M2を補給すべき緊急時であっても十分に対応できる。
【0057】
本発明のメダル選別機6は,径の異なるメダルM1,M2が混在している状態でこれらメダルM1,M2を整列させ一個ずつ送出するメダル送出部13と,メダル送出部13に接続され該メダル送出部13から送り出されるメダルM1,M2を小径メダルM1と大径メダルM2とに選別するメダル排出通路部14とを有し,メダル選別機6にメダル送出部13を通過するメダルM1,M2を検出する第一検知センサ49とメダル排出通路部14を通過し選別された小径メダルM1または大径メダルM2を検出する第二検知センサ50を配設したので,メダルM1,M2の補給を必要としている遊技機S1,S2にメダルM1,M2を何枚供給できたか詳しい枚数を知ることができ,これにより各遊技機S1,S2のメダルM1,M2の管理がし易くなるばかりか,遊技機S1,S2から大量のメダルM1,M2を勝手に取るといった不正行為も発見できる。」

上記記載事項(ア)?(エ)より,以下の事項が導かれる。
なお,(a)?(h)は,本願補正発明の構成A?Hに対応した事項を示している。

(a)上記段落【0012】には「設置島I1・・・に・・・遊技機Sが多数台列設されている」と記載され,上記段落【0055】には「小径メダルM1と大径メダルM2を遊技媒体とする二種類の遊技機S1,S2をそれぞれ一つの設置島Iに列設し,・・・設置島Iの上部に外径の異なるメダルM1,M2をそれぞれ別個に搬送する一対の搬送ライン3a,3bを並設して・・各遊技機S1,S2にメダルM1,M2を供給するメダル供給搬送装置2を配設し」と記載されているから,刊行物1には,遊技機S1,S2が多数台列設されている設置島Iの上部に並設し,各遊技機S1,S2に小径メダルM1と大径メダルM2をそれぞれ別個に搬送する一対の搬送ライン3a,3bが記載されているといえる。

(b)上記段落【0055】には「該設置島Iの下部に各遊技機S1,S2から排出され外径の異なるメダルM1,M2を混在した状態で回収するメダル回収搬送装置1を配設し」と記載されているから,刊行物1には,該設置島Iの下部に配設し,各遊技機S1,S2から排出され外径の異なるメダルM1,M2を混在した状態で回収するメダル回収搬送装置1が記載されているといえる。

(c)上記段落【0055】には「メダル回収搬送装置1により回収された外径の異なるメダルM1,M2を小径メダルM1と大径メダルM2とに選別する・・・補給本体装置5」と記載され,上記段落【0056】には「前記補給本体装置5は,メダル回収搬送装置1により回収されたメダルM1,M2を揚送するメダル揚送リフト10と,該メダル揚送リフト10から排出されるメダルM1,M2を小径メダルM1と大径メダルM2とに選別するメダル選別機6と・・・を備え」と記載されているから,刊行物1には,前記メダル回収搬送装置1により回収された外径の異なるメダルM1,M2を小径メダルM1と大径メダルM2とに選別するメダル選別機6が記載されているといえる。

(d)上記段落【0056】には「前記補給本体装置5は,メダル回収搬送装置1により回収されたメダルM1,M2を揚送するメダル揚送リフト10と,該メダル揚送リフト10から排出されるメダルM1,M2を小径メダルM1と大径メダルM2とに選別するメダル選別機6と,小・大径メダルM1,M2をそれぞれ別個に貯留する第一・二メダル貯留タンク7a,7bと,を備え,メダル選別機6により選別された小径メダルM1及び大径メダルM2を・・・第一・二メダル貯留タンク7a,7bまたは各搬送ライン3a,3bに供給する・・・遊技機S1,S2に小径メダルM1または大径メダルM2の補給要求があったとき,そのメダルM1,M2に対応するメダル貯留タンク7a,7bから集中的にメダルM1,M2を排出し,対応する搬送ライン3a,3bを介して前記遊技機S1,S2にメダルM1,M2を供給することができ」と記載されていると共に,補給本体装置5は第一・二メダル貯留タンク7a,7b等にメダルM1,M2を貯留しているといえるから,刊行物1には,メダル回収搬送装置1により回収されたメダルM1,M2を貯留すると共に,小径メダルM1及び大径メダルM2を各搬送ライン3a,3bに供給する補給本体装置5と,を備えた点が記載されているといえる。

(e)上記段落【0056】には「前記補給本体装置5は,・・・或る遊技機S1,S2に小径メダルM1または大径メダルM2の補給要求があったとき,そのメダルM1,M2に対応するメダル貯留タンク7a,7bから集中的にメダルM1,M2を排出し,対応する搬送ライン3a,3bを介して前記遊技機S1,S2にメダルM1,M2を供給することができ,」と記載され,上記段落【0051】には「或る遊技機S1で小径メダルM1が不足してきたとの信号」と記載されていると共に,上記段落【0056】の「補給要求」は,上記段落【0051】の記載から「補給要求信号」であることは明らかである。
また,上記段落【0055】には「遊技場のメダル循環システムは,小径メダルM1と大径メダルM2を遊技媒体とする二種類の遊技機S1,S2をそれぞれ一つの設置島Iに列設し,・・・各遊技機S1,S2にメダルM1,M2を供給するメダル供給搬送装置2を配設し,」と記載されている。
これらのことから,刊行物1には,或る遊技機S1,S2で小径メダルM1または大径メダルM2の補給要求信号があったとき,前記補給本体装置5は搬送ライン3a,3bを介して遊技機S1,S2にメダルM1,M2を供給することができるとともに,小径メダルM1と大径メダルM2を遊技媒体とする二種類の遊技機S1,S2が列設されている設置島Iの各遊技機S1,S2にメダルM1,M2を供給する遊技場のメダル循環システムが記載されているといえる。

(f)上記段落【0056】には,「メダル選別機6により選別された小径メダルM1及び大径メダルM2を・・・各搬送ライン3a,3bに供給する・・・対応する搬送ライン3a,3bを介して前記遊技機S1,S2にメダルM1,M2を供給することができ,」と記載され,上記段落【0016】には,「メダル選別機6は・・・メダル排出通路部14と,を備えている」と記載され,上記段落【0021】には,「メダル排出通路部14に・・・小・大径メダルM1,M2を検出する第一検知センサ49・・・大径メダルM2を検出する第二検知センサ50が配置固定され・・・第一検知センサ49と第二検知センサ50によって・・・小径メダルM1または大径メダルM2がメダルを要求している遊技機S1,S2に何枚補給されたか・・・算出される」と記載されている。
これらの記載から,刊行物1には,メダル選別機6により選別され,搬送ライン3a,3bを介して前記遊技機S1,S2に供給することができるメダルM1,M2を,メダル選別機6の小・大径メダルM1,M2を検出する第一検知センサ49と大径メダルM2を検出する第二検知センサ50によって,小径メダルM1または大径メダルM2が遊技機S1,S2に何枚補給されたか算出される点が記載されているといえる。

(g)上記段落【0021】には,「メダル排出通路部14に・・・小・大径メダルM1,M2を検出する第一検知センサ49・・・大径メダルM2を検出する第二検知センサ50が配置固定され・・・第一検知センサ49と第二検知センサ50によって・・・小径メダルM1または大径メダルM2がメダルを要求している遊技機S1,S2に何枚補給されたか・・・算出される」と記載され,上記段落【0057】には,「メダル選別機6は・・・メダル排出通路部14とを有し,メダル選別機6に・・・第一検知センサ49と・・・第二検知センサ50を配設したので,メダルM1,M2の補給を必要としている遊技機S1,S2にメダルM1,M2を何枚供給できたか詳しい枚数を知ることができ,・・・遊技機S1,S2から大量のメダルM1,M2を勝手に取るといった不正行為も発見できる」と記載され,上記段落【0055】には「小径メダルM1と大径メダルM2を遊技媒体とする二種類の遊技機S1,S2」と記載されている。
これらのことから,刊行物1には,第一検知センサ49と第二検知センサ50によって,小径メダルM1または大径メダルM2が遊技機S1,S2に何枚補給されたか算出され,小径メダルM1と大径メダルM2を遊技媒体とする二種類の遊技機S1,S2から大量のメダルM1,M2を勝手に取るといった不正行為を発見できる構成と,を備えた点が記載されているといえる。

(h)上記段落【0055】には「遊技場のメダル循環システムは,・・・各遊技機S1,S2にメダルM1,M2を供給するメダル供給搬送装置2を配設し,」と記載されているから,刊行物1には,各遊技機S1,S2にメダルM1,M2を供給する遊技場のメダル循環システムが記載されているといえる。

上記の記載事項(ア)?(エ)及び上記の認定事項(a)?(h)から,刊行物1には,次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「a 遊技機S1,S2が多数台列設されている設置島Iの上部に並設し,各遊技機S1,S2に小径メダルM1と大径メダルM2をそれぞれ別個に搬送する一対の搬送ライン3a,3bと,
b 該設置島Iの下部に配設し,各遊技機S1,S2から排出され外径の異なるメダルM1,M2を混在した状態で回収するメダル回収搬送装置1と,
c 前記メダル回収搬送装置1により回収された外径の異なるメダルM1,M2を小径メダルM1と大径メダルM2とに選別するメダル選別機6と,
d メダル回収搬送装置1により回収されたメダルM1,M2を貯留すると共に,小径メダルM1及び大径メダルM2を各搬送ライン3a,3bに供給する補給本体装置5と,を備え,
e’或る遊技機S1,S2で小径メダルM1または大径メダルM2の補給要求信号があったとき,前記補給本体装置5は搬送ライン3a,3bを介して遊技機S1,S2にメダルM1,M2を供給することができるとともに,小径メダルM1と大径メダルM2を遊技媒体とする二種類の遊技機S1,S2が列設されている設置島Iの各遊技機S1,S2にメダルM1,M2を供給する遊技場のメダル循環システムであって,
f’メダル選別機6により選別され,搬送ライン3a,3bを介して前記遊技機S1,S2に供給することができるメダルM1,M2を,メダル選別機6の小・大径メダルM1,M2を検出する第一検知センサ49と大径メダルM2を検出する第二検知センサ50によって,小径メダルM1または大径メダルM2が遊技機S1,S2に何枚補給されたか算出され,
g’第一検知センサ49と第二検知センサ50によって,小径メダルM1または大径メダルM2が遊技機S1,S2に何枚補給されたか算出され,小径メダルM1と大径メダルM2を遊技媒体とする二種類の遊技機S1,S2から大量のメダルM1,M2を勝手に取るといった不正行為を発見できる構成と,を備えた,
h 各遊技機S1,S2にメダルM1,M2を供給する遊技場のメダル循環システム。」

(2-2)刊行物2
原査定の平成27年12月22日付け拒絶理由に引用された本願の出願前に頒布された特開2001-246046号公報(以下,「刊行物2」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)「【0004】また,従来は,パチスロ機から補給要求信号が制御装置に送られると,そのままコインを補給していたので,パチスロ機内のコインが不正行為によって抜かれた場合であっても,貯留量が減少して補給要求信号が出るとコインを補給してしまい,遊技店が大きな損失を被ることとなる。
【0005】本発明はこの様な事情に鑑みなされたもので,その目的は,パチスロ機内のコインが不正に抜かれた場合にはコインの補給を停止して遊技店の損失を最小限にとどめるようにしたパチスロ機用の島設備を提供しようとするものである。」

(イ)「【0042】また,この制御装置22には,パチスロ機3から出力されるコイン補給要求信号を入力した場合に,履歴メモリ52に記憶されているコイン投入数の累計にコイン補給数の累計を加算し,この加算値からコイン払出数を減算する演算を行ない,この演算結果が,予め設定した判断基準値以上(例えば,零以上)の場合には当該パチスロ機3へのコインの補給を実行することなく異常を報知し,一方,上記演算結果が上記判断基準値未満(例えば,零未満)の場合には当該パチスロ機3へのコインの補給を実行する補給セキュリティ判断処理部55を備える。」

(ウ)「【0050】図7中の数式において,Xはコイン投入数,Yはコイン払出数,Zはコイン補給数であり,履歴メモリ52に記憶されているコイン投入数の累計ΣXにコイン補給数の累計ΣZを加算し,この加算値からコイン払出数の累計ΣYを減算する演算を行ない,この演算結果が零以上の場合には当該パチスロ機3へのコインの補給を実行することなく異常を報知し,一方,上記演算結果が零未満の場合には当該パチスロ機3へのコインの補給を実行することを意味する。すなわち,ΣXとΣZとを加算した数は当該パチスロ機3のコイン排出装置に入ったコイン数となり,また,ΣYは当該パチスロ機3のコイン排出装置から外部に出たコイン数となる。ここで,{(ΣX+ΣZ)-ΣY}が零以上(正),すなわち,払出数(ΣY)が,投入コイン数に補給コイン数を加えた数(ΣX+ΣZ)を補給要求時に超える場合は正常な遊技であると考えられ,逆に補給要求時に払出数(ΣY)が(ΣX+ΣZ)を越えていない場合は正常な遊技ではあり得ないので,不正行為(コイン抜き)があったと判断する。そして,この判断は補給信号の出力時にタイミングを合わせて行なう。」

上記の記載事項(ア)?(ウ)から,刊行物2には,次の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「g’パチスロ機3から出力されるコイン補給要求信号を入力した場合に,コイン投入数の累計にコイン補給数の累計を加算し,この加算値からコイン払出数の累計を減算する演算を行ない,コインを払い出すパチスロ機3に不正行為(コイン抜き)があったか判断する制御装置22」

(3)対比
本願補正発明と引用発明1とを対比する。

(a)引用発明1の「遊技機S1,S2」,「設置島I」,「小径メダルM1」,「大径メダルM2」及び「搬送ライン3a,3b」は,それぞれ,本願補正発明の「遊技機」,「設置島」,「小径メダル」,「大径メダル」及び「メダル供給搬送手段」に相当する。
したがって,引用発明1の「遊技機S1,S2が多数台列設されている設置島Iの上部に並設し,各遊技機S1,S2に小径メダルM1と大径メダルM2をそれぞれ別個に搬送する一対の搬送ライン3a,3b」は,本願補正発明の「複数の遊技機が設置される設置島に延設され,それぞれの遊技機に対して小径メダル及び大径メダルを搬送して供給するメダル供給搬送手段」に相当する。

(b)引用発明1の「メダル回収搬送装置1」は,本願補正発明の「メダル回収搬送手段」に相当する。
このことから,引用発明1の「該設置島Iの下部に配設し,各遊技機S1,S2から排出され外径の異なるメダルM1,M2を混在した状態で回収するメダル回収搬送装置1」は,本願補正発明の「前記設置島に延設され,それぞれの遊技機から排出されたメダルを回収して搬送するメダル回収搬送手段」に相当する。

(c)引用発明1の「メダル選別機6」は,本願補正発明の「メダル選別手段」に相当する。
このことから,引用発明1の「前記メダル回収搬送装置1により回収された外径の異なるメダルM1,M2を小径メダルM1と大径メダルM2とに選別するメダル選別機6」は,本願補正発明の「前記メダル回収搬送手段で回収されたメダルを小径メダルと大径メダルとに選別し得るメダル選別手段」に相当する。

(d)引用発明1の「貯留する」及び「補給本体装置5」は,それぞれ,本願補正発明の「収容する」及び「メダル補給手段」に相当する。
したがって,引用発明1の「メダル回収搬送装置1により回収されたメダルM1,M2を貯留すると共に,小径メダルM1及び大径メダルM2を各搬送ライン3a,3bに供給する補給本体装置5」は,本願補正発明の「前記メダル回収搬送手段で回収されたメダルを収容するとともに,前記メダル供給搬送手段にメダルを補給するメダル補給手段」に相当する。

(e)引用発明1の「小径メダルM1または大径メダルM2の補給要求信号」及び「各遊技機S1,S2にメダルM1,M2を供給する遊技場のメダル循環システム」は,それぞれ,本願補正発明の「メダルの要求信号」及び「遊技機のメダル補給装置」に相当する。
また,引用発明1は「前記補給本体装置5は搬送ライン3a,3bを介して遊技機S1,S2にメダルM1,M2を供給することができる」から,引用発明1は「搬送ライン3a,3b」だけでなく「補給本体装置5」を介して「メダルM1,M2を供給することができる」といえる。
しかしながら,引用発明1の「設置島I」に「列設されている」「二種類の遊技機S1,S2」は,「小径メダルM1と大径メダルM2を遊技媒体とする」から,入賞により小径メダルM1又は大径メダルM2が払い出される遊技機S1,S2であることは明らかであるが,大当たり信号が発信されず小径メダルM1又は大径メダルM2が払い出される遊技機S1,S2であるか不明である。
これらのことから,引用発明1の「或る遊技機S1,S2で小径メダルM1または大径メダルM2の補給要求信号があったとき,前記補給本体装置5は搬送ライン3a,3bを介して遊技機S1,S2にメダルM1,M2を供給することができるとともに,小径メダルM1と大径メダルM2を遊技媒体とする二種類の遊技機S1,S2が列設されている設置島Iの各遊技機S1,S2にメダルM1,M2を供給する遊技場のメダル循環システム」と,本願補正発明の「前記遊技機からのメダルの要求信号に応じて前記メダル補給手段を介して小径メダル又は大径メダルを補給可能とされるとともに,大当たり信号が発信されず前記小径メダル又は大径メダルが払い出される遊技機が設置され得る遊技機のメダル補給装置」とは,「前記遊技機からのメダルの要求信号に応じて前記メダル補給手段を介して小径メダル又は大径メダルを補給可能とされるとともに,」「前記小径メダル又は大径メダルが払い出される遊技機が設置され得る遊技機のメダル補給装置」である点で共通している。

(f)引用発明1の「小径メダルM1または大径メダルM2が」「算出され」る構成は,メダルを計数できる構成であるといえるから,本願補正発明の「小径メダル又は大径メダルの枚数を計数可能な計数手段」に相当する。
しかしながら,引用発明1は,既に「遊技機S1,S2に何枚補給されたか算出され」るものであり,今後何枚補給されるか算出されるものであるとまではいえない。
したがって,引用発明1の「小・大径メダルM1,M2を検出する第一検知センサ49と大径メダルM2を検出する第二検知センサ50によって,小径メダルM1または大径メダルM2が遊技機S1,S2に何枚補給されたか算出され」る構成は,本願補正発明と「前記遊技機に補給」の「小径メダル又は大径メダルの枚数を計数可能な計数手段」である点で共通しているといえる。
以上のことから,引用発明1の「メダル選別機6により選別され,搬送ライン3a,3bを介して前記遊技機S1,S2に供給することができるメダルM1,M2を,メダル選別機6の小・大径メダルM1,M2を検出する第一検知センサ49と大径メダルM2を検出する第二検知センサ50によって,小径メダルM1または大径メダルM2が遊技機S1,S2に何枚補給されたか算出され」る構成と,本願補正発明の「前記選別手段で選別され,前記メダル供給搬送手段を介して前記遊技機に補給される小径メダル又は大径メダルの枚数を計数可能な計数手段」とは,「前記選別手段で選別され,前記メダル供給搬送手段を介して前記遊技機に補給」の「小径メダル又は大径メダルの枚数を計数可能な計数手段」である点で共通している。

(g)引用発明1の「二種類の遊技機S1,S2」は,「小径メダルM1と大径メダルM2を遊技媒体とする」から,上記(e)でも言及したように,入賞により小径メダルM1又は大径メダルM2が払い出される遊技機S1,S2であることは明らかであるが,上記「二種類の遊技機S1,S2」が,大当たり信号が発信されずに小径メダルM1又は大径メダルM2が払い出されるか不明である。
また,引用発明1は,「第一検知センサ49と第二検知センサ50によって,小径メダルM1または大径メダルM2が遊技機S1,S2に何枚補給されるか算出され,小径メダルM1と大径メダルM2を遊技媒体とする二種類の遊技機S1,S2から大量のメダルM1,M2を勝手に取るといった不正行為を発見できる構成」「を備え」ているから,算出された枚数に基づき(計数手段による計数値に基づき),小径メダルM1又は大径メダルM2が払い出される遊技機S1,S2に対する不正行為を発見できる構成(不正行為の有無を判定し得る判定手段)を備えていることは明らかである。
しかしながら,不正行為を発見できるタイミングが不明であるから,或る遊技機S1,S2に小径メダルM1または大径メダルM2の補給要求があったときに,不正行為を発見できるか不明である。
これらのことから,引用発明1の「第一検知センサ49と第二検知センサ50によって,小径メダルM1または大径メダルM2が遊技機S1,S2に何枚補給されるか算出され,小径メダルM1と大径メダルM2を遊技媒体とする二種類の遊技機S1,S2から大量のメダルM1,M2を勝手に取るといった不正行為を発見できる構成」と,本願補正発明の「前記遊技機からメダルの要求信号を受信したとき,前記計数手段による計数値に基づき,大当たり信号が発信されず前記小径メダル又は大径メダルが払い出される遊技機に対する不正の有無を判定し得る判定手段」とは,「前記計数手段による計数値に基づき,」「前記小径メダル又は大径メダルが払い出される遊技機に対する不正の有無を判定し得る判定手段」である点で共通している。

(h)引用発明1の「各遊技機S1,S2にメダルM1,M2を供給する遊技場のメダル循環システム」は,本願補正発明の「遊技機のメダル補給装置」に相当する。

上記(a)?(h)から,本願補正発明と引用発明1とは,
[一致点]
「A 複数の遊技機が設置される設置島に延設され,それぞれの遊技機に対して小径メダル及び大径メダルを搬送して供給するメダル供給搬送手段と,
B 前記設置島に延設され,それぞれの遊技機から排出されたメダルを回収して搬送するメダル回収搬送手段と,
C 前記メダル回収搬送手段で回収されたメダルを小径メダルと大径メダルとに選別し得るメダル選別手段と,
D 前記メダル回収搬送手段で回収されたメダルを収容するとともに,前記メダル供給搬送手段にメダルを補給するメダル補給手段と,
を具備し,
E’前記遊技機からのメダルの要求信号に応じて前記メダル補給手段を介して小径メダル又は大径メダルを補給可能とされるとともに,前記小径メダル又は大径メダルが払い出される遊技機が設置され得る遊技機のメダル補給装置であって,
F’前記選別手段で選別され,前記メダル供給搬送手段を介して前記遊技機に補給の小径メダル又は大径メダルの枚数を計数可能な計数手段と,
G’前記計数手段による計数値に基づき,前記小径メダル又は大径メダルが払い出される遊技機に対する不正の有無を判定し得る判定手段と,
を具備した
H 遊技機のメダル補給装置。」
である点で一致し,以下の点で相違する。

[相違点1](構成E,G)
遊技機のメダル補給装置に設置され得る「前記小径メダル又は大径メダルが払い出される遊技機」に関して,
本件発明は,「大当たり信号が発信されず」「メダルが払い出される」のに対して,
引用発明1は,そのような構成であるか不明である点。

[相違点2](構成F,G)
「前記遊技機に補給の小径メダル又は大径メダルの枚数を計数可能な計数手段」が計数する対象(構成F),及び「前記計数手段による計数値に基づき,」「前記小径メダル又は大径メダルが払い出される遊技機に対する不正の有無を判定し得る判定手段」の判定タイミング(構成G)に関して,
本件発明は,「補給される」「メダル」(構成F),及び「前記遊技機からメダルの要求信号を受信したとき」(構成G)であるのに対して,
引用発明1は,「補給された」「メダル」(構成F)であり,そのようなタイミング(構成G)でない点。

(4)判断
ア 相違点1について
本願明細書の段落【0006】?【0007】には「【0006】・・・しかし,所謂(ART)と称される大当たり信号が発信されない状態でメダルが払い出される遊技機もあることから,このような遊技機が設置されている場合,エラー表示が頻繁になされてしまう可能性があった。【0007】本発明は,このような事情に鑑みてなされたもので,大当たり信号が発信されずメダルが払い出される遊技機が設置された場合であっても,遊技機に対する不正行為を把握することができるとともにメダルの要求信号に応じて自動的にメダルを補給することができる遊技機のメダル補給装置を提供することにある。」(下線は当審で付した。)と記載されている。
本願明細書のこの記載から,前記相違点1に係る大当たり信号が発信されずメダルが払い出される遊技機に該当するのは,ART状態中において大当たり信号が発信されずにメダルが払い出される遊技機等であるといえる。

大当たり信号が発信されずメダルが払い出される遊技機(ART状態中において大当たり信号が発信されずにメダルが払い出される遊技機等)は,一例として,特開2010-220822号公報(【0043】には「スロットマシン1の・・・RT・ART状態は,外部出力端子1aから該当する信号が出力されないため」と,【0048】には 「図9は,RT・ART中において,一定の時間における払出メダル数を監視し,非大当り状態であるにも拘わらず,短時間に多くのメダルが払い出されることで,クレジット機能に係る不正の判定を行う処理であり」と記載されているから,ART状態中において大当たり信号が発信されずにメダルが払い出されるスロットマシン[大当たり信号が発信されずメダルが払い出される遊技機]が記載されている。)に記載されているように,周知(以下,「周知技術」という。)である。
引用発明1の各遊技機S1,S2にメダルM1,M2を供給する遊技場のメダル循環システムにおいて,遊技機S1,S2の対象を,上記周知技術である大当たり信号が発信されずメダルが払い出される遊技機(ART状態中において大当たり信号が発信されずにメダルが払い出される遊技機等)として,上記相違点1に係る本件発明の構成とすることは,当業者が適宜なし得たことである。

イ 相違点2について
上記(2)(2-2)に記載された引用発明2は,「パチスロ機3から出力されるコイン補給要求信号を入力した場合に,コイン投入数の累計にコイン補給数の累計を加算し,この加算値からコイン払出数の累計を減算する演算を行ない,コインを払い出すパチスロ機3に不正行為(コイン抜き)があったか判断する」発明である。
引用発明1と引用発明2は共に,メダル・コイン等を払出す遊技機(パチスロ機)に対して不正行為を発見(不正行為があったか判断)する技術に関する発明であり,技術分野が共通している。
したがって,引用発明1に,引用発明2のパチスロ機3から出力されるコイン補給要求信号を入力した場合に,コインを払い出すパチスロ機3に不正行為があったか判断する発明を適用して,或る遊技機S1,S2で,小径メダルM1または大径メダルM2の補給要求信号があったときに,遊技機S1,S2に小径メダルM1または大径メダルM2が何枚補給されるか算出した小径メダルM1または大径メダルM2の補給枚数に基づき,上記遊技機S1,S2に対する不正行為が発見できるようにして,上記相違点2に係る本件発明の構成とすることは,当業者が適宜なし得たことである。

そして,本願補正発明の作用効果も,引用発明1,引用発明2,周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって,本願補正発明は,引用発明1,引用発明2,周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)請求人の主張について
請求人は審判請求書第8頁第18行?第9頁第11行において,
「すなわち,「大径メダルを使用する遊技機及び小径メダルを使用する遊技機のそれぞれを設置可能」な構成と,「大当たり信号が発信されず小径メダル又は大径メダルが払い出される遊技機が設置され得る」構成とを組み合わせ,「メダルの径に応じた不正行為の把握」に加え,「大当たり信号が発信されず小径メダル又は大径メダルが払い出される遊技機の有無に応じた不正行為の把握」を行う点に本願発明の重要な特徴がある。
これに対し,引用文献1,2に記載の発明は,何れも「大径メダルを使用する遊技機及び小径メダルを使用する遊技機のそれぞれを設置可能」な構成と,「大当たり信号が発信されず小径メダル又は大径メダルが払い出される遊技機が設置され得る」構成の両方を具備するものではなく,本願発明の如く「メダルの径に応じた不正行為の把握」に加え,「大当たり信号が発信されず小径メダル又は大径メダルが払い出される遊技機の有無に応じた不正行為の把握」を行うことができない。
なお,審査官殿は,補正の却下の決定の備考欄において,「スロットマシンにおいて,ビッグボーナス(大当たり)や小当たりなどの入賞役があることは例示するまでもなく周知な事項である」と記載されているが,本願発明の如く「大当たり信号が発信されず小径メダル又は大径メダルが払い出される遊技機が設置され得る」構成と,「大径メダルを使用する遊技機及び小径メダルを使用する遊技機のそれぞれを設置可能」な構成とを組み合わせ,判定手段にて「遊技機からメダルの要求信号を受信したとき,計数手段による計数値に基づき,大当たり信号が発信されず小径メダル又は大径メダルが払い出される遊技機に対する不正の有無を判定し得る」ものは,周知な事項では決してない。」
と主張している。

しかしながら,本願補正発明には,「メダルの径に応じた不正行為の把握」,及び「大当たり信号が発信されず小径メダル又は大径メダルが払い出される遊技機の有無に応じた不正行為の把握」という構成はなく,これらの記載に対応する構成もない。
また,本願の願書に最初に添付した特許請求の範囲,明細書及び図面(以下,「当初明細書等」という。),及び本願の明細書及び図面には,「メダルの径に応じた不正行為の把握」,及び「大当たり信号が発信されず小径メダル又は大径メダルが払い出される遊技機の有無に応じた不正行為の把握」については記載されていない。
これらのことから,請求人の「引用文献1,2に記載の発明は,・・・本願発明の如く「メダルの径に応じた不正行為の把握」に加え,「大当たり信号が発信されず小径メダル又は大径メダルが払い出される遊技機の有無に応じた不正行為の把握」を行うことができない。」という主張は,本願補正発明の記載に基づく主張ではなく,当初明細書等,及び本願の明細書及び図面の記載に基づく主張でもない。

そして,上記(3)において既に検討したように,引用発明1は,本願補正発明の「大径メダルを使用する遊技機及び小径メダルを使用する遊技機のそれぞれを設置可能」な構成に相当する構成,「小径メダル又は大径メダルが払い出される遊技機が設置され得る」構成に相当する構成を有していると共に,小径メダルM1及び大径メダルM2が何枚補給されるか算出され,不正行為を発見できる構成を有しているから,「メダルの径に応じた不正行為の把握」(メダルの径毎の不正行為の把握)することができるといえる。
それに,上記(3)において既に検討したように,引用発明1は,本願補正発明の「計数手段による計数値に基づき,小径メダル又は大径メダルが払い出される遊技機に対する不正の有無を判定し得る判定手段」に相当する構成も有しており,上記(4)において既に検討したように,大当たり信号が発信されずメダルが払い出される遊技機(ART状態中において大当たり信号が発信されずにメダルが払い出される遊技機等)は周知であるから,周知技術を適用した引用発明1は,「大当たり信号が発信されず小径メダル又は大径メダルが払い出される遊技機の有無に応じた不正行為の把握」(大当たり信号が発信されず小径メダル又は大径メダルが払い出される遊技機の有無に関わらず,遊技機に対する不正行為の把握)することができるといえる。
さらに,引用発明1は,遊技機からの大当たり信号の有無とは関係なく,不正の有無を判定し得るものであるから,上記周知技術を適用しなくても,引用発明1は実質的に「大当たり信号が発信されず小径メダル又は大径メダルが払い出される遊技機の有無に応じた不正行為の把握」(大当たり信号が発信されず小径メダル又は大径メダルが払い出される遊技機の有無に関わらず,遊技機に対する不正行為の把握)を行うことができるといえる。
しかも,本願補正発明と,引用発明1に引用発明2を適用した発明との相違点は,設置され得る遊技機が「大当たり信号が発信されず」「メダルが払い出される」点だけであり,引用発明1は,遊技機からの大当たり信号の有無とは関係なく,不正の有無を判定し得るものであるから,周知技術として「大当たり信号が発信されずメダルが払い出される遊技機(ART状態中において大当たり信号が発信されずにメダルが払い出される遊技機等)」があれば十分であり,上記(4)において既に検討したように,本願補正発明は,引用発明1,引用発明2,周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,請求人の主張するような周知技術は必要ない。
以上のことから,請求人の主張を採用することはできない。

(6)まとめ
したがって,本願補正発明は,特許法第29条第2項の規定に基づいて特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正は,上記のとおり却下されることとなったので,本願の請求項1?4に係る発明は,平成28年6月15日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,上記「第2[理由]1」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

1 刊行物1
原査定の拒絶理由に引用された本願の出願前に頒布された刊行物1の記載事項及び引用発明1の認定については,上記「第2[理由]3(2)(2-1)」に記載したとおりである。

2 対比・判断
本願発明は,上記「第2[理由]1」で検討した本願補正発明から,実質的な変更とならない特定事項を除き,「遊技機のメダル補給装置」について,「大当たり信号が発信されず前記小径メダル又は大径メダルが払い出される遊技機が設置され得る」との限定を削除し,「不正の有無を判定」について,「大当たり信号が発信されず前記小径メダル又は大径メダルが払い出される遊技機に対する」とする限定を削除したものである。
そうすると,本願発明と引用発明1の相違点は,上記「第2[理由]2(3)」の[相違点1]の構成を削除したものであるから,本願発明は,引用発明1,引用発明2に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって,その余の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-05-18 
結審通知日 2017-05-23 
審決日 2017-06-05 
出願番号 特願2011-200380(P2011-200380)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀬川 勝久池谷 香次郎  
特許庁審判長 本郷 徹
特許庁審判官 藤田 年彦
瀬津 太朗
発明の名称 遊技機のメダル補給装置  
代理人 越川 隆夫  

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