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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1330754
審判番号 不服2015-13791  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-22 
確定日 2017-07-26 
事件の表示 特願2010-116513「水分補給剤又は保湿剤と組み合わせた、抗酸化剤としての高ポリフェノール植物抽出物の使用」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 2月 3日出願公開、特開2011- 21001〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年5月20日(パリ条約による優先権主張 2009年6月1日 フランス)の出願であって、平成26年4月30日付けで拒絶理由通知が通知され、同年8月6日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年3月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月22日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?32に係る発明は、平成26年8月6日提出の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?32に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1及び21の記載は、以下のとおりである。
「【請求項1】
ポリオールを含む、少なくとも1種の水分補給剤又は保湿剤と組み合わせた、メイデベンネ種のバラから得られるアントシアニンを含むバラ抽出物を含む、高ポリフェノール植物抽出物を含む、抗酸化作用を有する化粧剤。」
「【請求項21】
メイデベンネ種のバラから得られるアントシアニンを含むバラ抽出物を含む、高ポリフェノール植物抽出物と、ポリオールを含む、少なくとも1種の水分補給剤又は保湿剤との組合せ、及び少なくとも1種の化粧品として許容される賦形剤を含む、請求項1?20のいずれか一項に記載の化粧剤を、化粧用活性剤として含む、化粧用組成物。」

そして、請求項1を引用する場合の請求項21を書き下すと、
「メイデベンネ種のバラから得られるアントシアニンを含むバラ抽出物を含む、高ポリフェノール植物抽出物と、ポリオールを含む、少なくとも1種の水分補給剤又は保湿剤との組合せ、及び少なくとも1種の化粧品として許容される賦形剤を含むものである、ポリオールを含む、少なくとも1種の水分補給剤又は保湿剤と組み合わせた、メイデベンネ種のバラから得られるアントシアニンを含むバラ抽出物を含む、高ポリフェノール植物抽出物を含む、抗酸化作用を有する化粧剤を、化粧用活性剤として含む、化粧用組成物」
となるが、重複した記載を整理しつつ請求項21に係る発明を認定すると、次のとおりとなる。
「ポリオールを含む、少なくとも1種の水分補給剤又は保湿剤と組み合わせた、メイデベンネ種のバラから得られるアントシアニンを含むバラ抽出物を含む、高ポリフェノール植物抽出物を含む、抗酸化作用を有する化粧剤を化粧用活性剤として含み、及び少なくとも1種の化粧品として許容される賦形剤を含む、化粧用組成物。」
(以下、これを「本願発明」という。)

第3 刊行物の記載事項
1 原審における拒絶の理由に引用文献8として引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2004-67552号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。

(1a)「【請求項1】
バラ花弁、又はハイビスカスのガクから得られた赤色色素の1種又は2種以上を有効成分として含有することを特徴とするコラーゲン産生促進剤。
【請求項2】
請求項1に記載のコラーゲン産生促進剤からなる群より1種又は2種以上を有効成分として含有することを特徴とする化粧料。」

(1b)「【0008】本発明で使用されるバラ花弁から得られる赤色色素は、西洋バラ(rosa centifolia)、現代バラ(Hybrid Tea rose)の花弁から、通常、各種溶剤で抽出し、抽出物(エキス)を精製することにより得ることができる。また、ハイビスカスから得られる赤色色素は、ハイビスカス(Hibiscussabdariffa L.)のガクから、通常、各種溶剤で抽出し、抽出物(エキス)を精製することにより得ることができる。」

(1c)「【0010】本発明に係るバラ花弁やハイビスカスのガクから得られる赤色色素の各種化粧料に対する配合量は、化粧料の実施態様、化粧料の使用形態等に応じて変動させることができるので特に限定されない。原則的には、有効量存在すれば良いことになるが、一般的には化粧料組成物中、乾燥重量に換算して0.0001?100質量%が利用でき、好ましくは0.01?10質量%、更に好ましくは0.1?5.0質量%である。特に、用時調製のパウダー状の化粧料等は、この本願発明に係る赤色色素が100質量%を含めた高配合率で利用されることが想定できる。」

(1d)「【0015】バラから得られる赤色色素の作成
原材料として、バラ花弁の乾燥物を100g使用した。前記原材料100gにイオン交換水450mLを加え、60℃で3時間加熱抽出した後No.2濾紙にて濾過する。全ての濾液を合わせ、ODS(φ=50mm,h=500mm)カラムクロマトグラフィーに付し、ODS吸着画分を、20%エタノールで溶出し、ロータリーエバポレーターにて減圧濃縮、凍結乾燥し、バラ花弁赤色色素約7gを得た。」

(1e)「【0023】本発明の皮膚の老化症状の改善効果として、小ジワの改善効果及び皮膚弾力改善効果について表3に示す実施例4及び比較例1の処方にて作成した化粧水をブラインドにて1日1回、2カ月間連続して40才代?60才代の女性パネラー10名をランダムに2グループに分け、一方のグループには、実施例4処方の化粧水を、もう一方のグループには比較例1処方の化粧水を使用させて、試験開始前及び終了後の肌状態を比較して評価した。評価基準は、小ジワの程度については肉眼観察及び写真撮影により目視評価し表4に、皮膚弾力改善効果についてはキュートメーターにより皮膚の弾力回復率を測定し、試料の使用前後の差を表6にそれぞれ示した。そして、小ジワの改善効果及び皮膚弾力改善効果の結果を表3に示した。尚、実施例及び比較例の化粧水は、1?7を混合溶解した後、8と混合し、作成した。」

(1f)「【0027】
【表3】


刊行物1は、化粧料に関する技術を開示するもの(上記(1a))であり、上記(1e)、(1f)によれば、実施例4として、【表3】に示される処方の化粧水が記載されている。(なお、【表3】には数値の単位が明記されていないが、【0010】(上記(1c))に配合量について質量%で示されていることから、【表3】の処方の数値も質量%であるといえる。)

そうすると、刊行物1には、
「成分(質量%)として、
バラ赤色色素 0.001
グリセリン 5.000
ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(20E.O) 1.500
エタノール 10.000
メチルパラベン 0.100
酸化防止剤 0.100
香料 0.050
精製水 残部
合計 100.000
の処方の化粧水。」(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

2 また、同じく、原審における拒絶の理由に引用文献9として引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2009-23936号公報(以下、「刊行物2」という。)には、次の事項が記載されている。

(2a)「【請求項1】
カナメモチ抽出物を含有することを特徴とするラジカル消去性抗酸化剤。
【請求項2】
カナメモチ抽出物を含有することを特徴とする活性酸素消去性抗酸化剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載の抗酸化剤を含有することを特徴とする化粧料組成物。」

(2b)「【背景技術】
【0002】
カナメモチ類は、芽吹きどきの新葉は赤く、次第に緑色の割合が増えていくが、赤色は殆ど1年中保たれる。生垣用などに改良されたものは特に新葉の色が鮮やかで、ベニカナメとも呼ばれ、全葉の7割以上の広範な部位が赤色を呈し、天然の赤色色素を効率的に生産する。このカナメモチの赤色色素はアントシアニンであることが報告されており、果実中のアントシアニンとしてシアニジン-3-グルコシド(クリサンテミン)とシアニジン-3-ラムノグルコシド(アンチリニン)が報告されている(非特許文献1)。
【0003】
また、葉と果実のフラボノイドパターンは類似すること(非特許文献2)や日本で見られる被子植物において新葉が赤くなり、アントシアニンが生産されること(非特許文献3)を考えると、赤いカナメモチの新葉においてもアントシアニンが蓄積されると考えられる。
【0004】
アントシアニンは、合成着色料に比べて安全性が高いことや自然な色合いを有することから、古くから種々の食品に着色料として利用されてきた。また、最近になってアントシアニンが抗酸化性やラジカル消去性、さらには抗変異原性などを示すことが見いだされ、生体内酸化ストレスやDNA変異を抑止する食品因子としても再評価されている。」

(2c)「【0009】
本発明によれば、カナメモチ抽出物を抗酸化剤として化粧料組成物に用いることにより、有効に抗酸化性、ラジカル消去性が発揮され、高いアンチエージング効果、抗しわ効果、抗たるみ効果などを発現でき、同時にカナメモチの有効利用が促進される。」

第4 対比
1 本願発明と引用発明とを対比する。
ア 化粧水も化粧用組成物の一つであるから、引用発明の「化粧水」は、本願発明の「化粧用組成物」に相当する。

イ 本願明細書【0042】、【0043】には、水分補給剤又は保湿剤のポリオールとして、グリセロールが有利に選択される旨記載され、【0068】、【0069】、【0073】にはグリセロールを成分として含む「本発明の実施例1-本発明による化粧用組成物」(製品A)が記載され、【0116】には「保湿剤としてのグリセロール6%と組み合わせたバラ抽出物を含む組成物に対応する製品A」と記載されていることから、引用発明に含まれる「グリセリン」(審決注:グリセロールと同義)は、本願発明の「ポリオールを含む、少なくとも1種の水分補給剤又は保湿剤」に相当することは明らかである。

ウ 本願発明の「化粧剤」及び「化粧用活性剤」との用語は、本願明細書全体の記載からみて、それぞれ、化粧料に配合される成分としての剤、及び、活性を有する化粧用の剤の意味で用いられているものと解される。
一方、刊行物1の(1a)、(1b)、(1d)、(1e)によれば、引用発明の「バラ赤色色素」は、バラ抽出物(エキス)を精製することにより得たものであり、有効成分の1つとして、すなわち、小ジワの改善効果及び皮膚弾力改善効果という活性を有するものとして化粧水に含有させるものである。
そうすると、引用発明の化粧水が、グリセリンと併用して、成分としてバラ赤色色素を含有することは、本願発明の化粧用組成物が「水分補給剤又は保湿剤と組み合わせた、バラ抽出物を含む、化粧剤を化粧用活性剤として含」むことに相当するといえる。

エ 本願明細書【0060】には「化粧用組成物は、色素、染料、ポリマー、界面活性剤、レオロジー添加剤、香料、電解質、pH調製剤、抗酸化剤、保存料及びそれらの混合物から選択できる少なくとも1種の化粧品として許容される賦形剤を含む。」と記載されている。
一方、引用発明の成分をみると、「ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(20E.O)」は界面活性剤であり、「メチルパラベン」は化粧料における防腐剤として周知の物質であるから保存料に該当し、「酸化防止剤」は抗酸化剤と同義である。
してみると、引用発明の成分である「ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(20E.O)」、「メチルパラベン」、「酸化防止剤」及び「香料」は、いずれも、本願発明における「賦形剤」に相当する。

2 したがって、本願発明と引用発明とは、
「ポリオールを含む、少なくとも1種の水分補給剤又は保湿剤と組み合わせた、バラ抽出物を含む、化粧剤を化粧用活性剤として含み、及び少なくとも1種の化粧品として許容される賦形剤を含む、化粧用組成物。」の発明である点で一致し、
次の点で相違する。

<相違点1>:バラ抽出物(バラ赤色色素)について、本願発明は「メイデベンネ種のバラ」から得られるものであると特定するのに対して、引用発明はそのような特定がされていない点。
<相違点2>:本願発明に含まれる化粧剤は「アントシアニンを含むバラ抽出物を含む、高ポリフェノール植物抽出物を含む、抗酸化作用を有する」と特定されているのに対して、引用発明にはそのような特定がされていない点。

第5 当審の判断
相違点について検討する。
1 <相違点2>について
<相違点2>について先に検討すると、バラ赤色色素の主要なものがアントシアニン色素であることは、本願の優先日前に周知の事項であり(下記の周知文献A、B参照)、また、アントシアニンが、抗酸化作用を有するポリフェノールの範疇に含まれるものであることも周知の事項である(必要であれば、下記の周知文献C参照)。

周知文献A:特開2002-201372号公報(特に、【0002】)
周知文献B:特表平11-506535号公報(特に、16頁13?15行)
周知文献C:日本化粧品技術者会 編、「化粧品事典」、第3刷、丸善、平成17年4月25日、770頁、「ポリフェノール」の項(特に、「抗酸化作用」の項 参照)

また、アントシアニンが抗酸化性やラジカル消去性を有し、アントシアニンを含む成分を抗酸化剤として化粧料組成物に用いることにより、生体内酸化ストレスを抑止し、高いアンチエージング効果、抗しわ効果、抗たるみ効果などの発現が期待されることも、刊行物2((2a)?(2c))に開示されているとおり、周知の事項である。
してみると、刊行物1には記載は無いが、上記周知事項を踏まえれば、バラ赤色色素がアントシアニン(すなわちポリフェノール)を含むことは明らかであって、引用発明の「バラ赤色色素」は、「アントシアニンを含むバラ抽出物を含む、高ポリフェノール植物抽出物」といえるものである。
そして、引用発明の「バラ赤色色素」が、成分として含まれるアントシアニン(すなわちポリフェノール)の抗酸化性に起因する抗酸化作用を有することは当業者であれば自明のことであって、<相違点2>にかかる本願発明の構成は、かかる自明の作用を特定したに過ぎない。

2 <相違点1>について
刊行物1の(1b)、(1d)によれば、バラ抽出物である引用発明の「バラ赤色色素」の原材料のバラは、通常の西洋バラ、現代バラの花弁が用いられるものであり、使用するバラに制限があるものではない。
ところで、メイデベンネは、種苗法に基づく品種登録において、登録番号 第11806号(京成バラ園芸株式会社、登録年月日2004/03/03)として登録された現代バラの品種であり、本願の優先日当時、切り花として普通に市販されているものであって、入手困難等の特段の事情は見当たらない。
してみると、バラ抽出物である引用発明の「バラ赤色色素」の原材料であるバラとして普通に市販されている品種を選択すること、そしてその品種としてメイデベンネを選択する程度のことは当業者にとって格別の困難性があるとはいえない。

3 本願発明の効果について
請求人は審判請求書で「メイデベンネ種のバラ抽出物と、ポリオールを含む水分補給剤又は保湿剤間の相乗作用」は予測し得ない旨主張するが、引用発明においても、バラ赤色色素とグリセリンが併用されており、本願発明と同じ成分が含まれている以上、引用発明においても本願発明と同様の効果が既に奏されているものといわざるを得ない。
そして、本願明細書の記載を見る限り、メイデベンネ種のバラと水分補給剤または保湿剤とを組合せることにより、他の品種のバラと水分補給剤または保湿剤とを組合せた場合に比べて格別顕著な効果を奏すことは何ら確認できないから、特にメイベデンネ種のバラを選択したことにより、当業者が予測できない格別顕著な効果を奏すものとは認められない。

第6 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明から当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-02-21 
結審通知日 2017-02-28 
審決日 2017-03-14 
出願番号 特願2010-116513(P2010-116513)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 吾一馳平 裕美  
特許庁審判長 須藤 康洋
特許庁審判官 小川 慶子
齊藤 光子
発明の名称 水分補給剤又は保湿剤と組み合わせた、抗酸化剤としての高ポリフェノール植物抽出物の使用  
代理人 野田 雅一  
代理人 池田 正人  
代理人 山田 行一  
代理人 城戸 博兒  
代理人 山口 和弘  
代理人 池田 成人  
代理人 木元 克輔  
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