ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12N 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C12N 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 C12N 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C12N |
---|---|
管理番号 | 1330764 |
審判番号 | 不服2016-9842 |
総通号数 | 213 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-09-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-06-30 |
確定日 | 2017-07-26 |
事件の表示 | 特願2012-556250「CD52に対するモノクローナル抗体」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 9月 9日国際公開、WO2011/109662、平成25年 6月10日国内公表、特表2013-520999〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成23年(2011年)3月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2010年3月4日 米国(US))を国際出願日とする出願であって、主な経緯は次のとおりである。 平成27年 3月17日付け 拒絶理由通知書 平成27年 9月24日 手続補正書・意見書 平成27年10月 6日 上申書 平成28年 2月23日付け 拒絶査定 平成28年 6月30日 審判請求書・手続補正書 平成28年 7月15日 手続補正書(方式) 第2 平成28年6月30日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成28年6月30日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 上記補正により、補正前の平成27年9月24日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?20が補正された。具体的には、請求項1?5,8,10?11が削除され、請求項1?12のうち、請求項1が、補正前の 「【請求項6】 抗体または抗体フラグメントがイヌCD52を認識する抗体であり、抗体が配列番号5を含む重鎖および配列番号6を含む軽鎖を含む、請求項1に記載の抗体または抗体フラグメント。」 から、補正後の 「【請求項1】 イヌCD52に結合し、配列番号5を含む重鎖および配列番号6を含む軽鎖を含む、抗体または抗体フラグメント。」 へと補正された。 ここで、補正前の請求項6に係る発明を特定するために必要な事項である「イヌCD52を認識する」を「イヌCD52に結合し」とする上記補正は、「抗体または抗体フラグメント」の機能を限定するものである。 そして、補正前の当該請求項に記載された発明と補正後の当該請求項に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。 したがって、請求項1についての上記補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当し、補正後の請求項1を引用する請求項3?12についても同様に、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当する。 そして、補正後の請求項1,3?12に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。 2.本件補正発明 本願の補正後の請求項に係る発明は、平成28年6月30日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。そのうち、請求項1に係る発明は、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 イヌCD52に結合し、配列番号5を含む重鎖および配列番号6を含む軽鎖を含む、抗体または抗体フラグメント。」(以下、これを「本件補正発明1」という) 3.優先権主張の効果について 本件補正発明1の発明特定事項のうち、抗体または抗体フラグメントが「配列番号5を含む重鎖および配列番号6を含む軽鎖を含む」ことについて、優先権出願番号61/310450(優先日:2010年3月4日,米国)に係る出願の明細書には記載されていないことから、本件補正発明1についての優先権主張の効果は認められない。 よって、本件補正発明1における、以下に検討する特許法第29条第1項第3号に規定する新規性、及び同法同条第2項に規定する進歩性の判断基準日は、本願の出願日(2011年3月3日)であると認める。 4.特許法第29条第1項第3号について (1)引用例1、引用発明 原査定の拒絶の理由で文献7として引用され、審判請求人自身を出願人とする、本願出願日前の2010年3月11日に頒布された刊行物である国際公開第2010/027488号(以下、「引用例1」という)には、次の事項が記載されている。 なお、翻訳は当審によるものであり、下線は当審が付与したものである。以下、同様である。 (1-a)「実施例2.抗体のバリアントの構築、発現及び精製 I.ラットの抗ヒトCD52抗体に由来する抗体のバリアント ラットの抗ヒトCD52抗体が、本発明に従ってイヌ化された。pdb 1bfo_E及びpdb 1bfo_F(Campath-1G,クローンYTH34.5HL,タンパク質データバンクタンパク質(pdb),寄託の日:1998年5月20日)に示された抗ヒトCD52抗体の配列。可変領域が、公衆に利用可能な配列に対応する合成オリゴヌクレオチドをアセンブルすることによって調製され、可変領域の5’-及び3’-末のそれぞれにおけるフランキング制限部位としてのHindIII及びNheIを有するpSMARTにクローン化された。アセンブルされた生産物は、その後、プロモーター及び重鎖定常領域を含む、もしくはラムダ軽鎖定常領域を含む、発現ベクターにサブクローン化された。発現カセット全体は、ヒトのサイトメガロウイルス最初期(CMV)プロモーター、コザック配列、及びコード配列のすぐ上流にシグナルペプチド配列を含み、フレーム内において、結果として生じる抗体生産物を分泌経路に指向させるための軽鎖及び重鎖の両方の可変領域を有している。 イヌの配列を含む抗体のバリアントが、ラット抗ヒトCD52可変領域をテンプレートとして用いて構築された。この実施例では、イヌの配列が、国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)において利用可能なゲノム配列から収集され、高頻度の配列が、現在の実施例の遺伝子を構築するために選択された。CDR領域、フレームワーク領域及びJフラグメントが、カバットによる記述により同定され、修正して表3にリストした。多様な組み合わせを含む修飾された発現カセットが、本発明においてリストされたイヌの定常領域に結合した。これらの抗体のバリアントの遺伝子は、その後、哺乳動物細胞において組換え抗体を生産するために発現ベクターに移された。 VET111は、ラットのカッパ可変領域の配列を含み、その全体としてイヌのラムダ定常領域であるVET104に結合していた。VET114では、ラットのカッパJフラグメントがイヌのラムダJフラグメントに置換された。VET112では、ラットのカッパJフラグメント及びラットのカッパFR1の両方が、イヌのラムダ配列に置換された。VET222は、ラットの重鎖可変領域を含み、その全体としてイヌの定常領域であるVET214に結合していた。VET224では、ラットのJフラグメントがイヌのJフラグメントに置換された。VET223では、ラットのJフラグメント及びラットのFR1の両方が、イヌの配列に置換された。 表3. M:マウス;D:イヌ;FR_(M-VK)=マウスのカッパ軽鎖(LC)FR;FR_(D-VL)=イヌのラムダLC FR;CDR_(M-VK)=マウスのカッパLC CDR;CDR_(M-VH)=マウスの重鎖(HC)からのCDR;CD_(D-L)又はCD_(D-K)=イヌのラムダ又はイヌのカッパLCからの定常領域;CD_(D-H)=イヌのHCからの定常領域」(35頁4行目?36頁2行目、表3) (1-b)「表7.抗体のバリアント及びコントロールを用いた増殖細胞アッセイ 」(表7) (1-c)「 」(51?52頁に跨がる表) (1-d)「 」(53頁中?下段の表の一部) ここで、上記記載事項(1-a)及び上記記載事項(1-b)の下線部分より、引用例1には、Jフラグメントがイヌの配列に置換された、次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されていると認められる。 「配列番号43を含み、構造「FR1_(R-VL)-CDR1_(R-VK)-FR2_(R-VK)CDR2_(R-VK)-FR3_(R-VK)-CDR3_(R-VK)-FR4_(D-VL)-C_(D-L)」を有する軽鎖(VET114)および配列番号46を含み、構造「FR1_(R-VH)-CDR1_(R-VH)-FR2_(R-VH)CDR2_(R-VH)-FR3_(R-VH)-CDR3_(R-VH)-FR4_(R-VH)-C_(D-H)」を有する重鎖(VET224)を含む抗体。」 (2)対比 本件補正発明1と引用発明とを対比すると、両者は軽鎖および重鎖を含む抗体である点で一致し、以下の2点で一応相違する。 相違点1: 本件補正発明1は、配列番号5を含む重鎖および配列番号6を含む軽鎖を含むのに対して、引用発明は、配列番号43を含み、構造「FR1_(R-VL)-CDR1_(R-VK)-FR2_(R-VK)CDR2_(R-VK)-FR3_(R-VK)-CDR3_(R-VK)-FR4_(D-VL)-C_(D-L)」を有する軽鎖(VET114)、および配列番号46を含み、構造「FR1_(R-VH)-CDR1_(R-VH)-FR2_(R-VH)CDR2_(R-VH)-FR3_(R-VH)-CDR3_(R-VH)-FR4_(R-VH)-C_(D-H)」を有する重鎖(VET224)を含む点。 相違点2: 本件補正発明1は、イヌCD52に結合することが特定されているのに対して、引用発明はかかる特定を有しない点。 (3)当審の判断 上記相違点1,2について検討する。 相違点1について: 引用発明が規定する軽鎖(VET114)の構造 「FR1_(R-VL)-CDR1_(R-VK)-FR2_(R-VK)CDR2_(R-VK)-FR3_(R-VK)-CDR3_(R-VK)-FR4_(D-VL)-C_(D-L)」 のうち、定常領域であるC_(D-L)の説明として、「CD_(D-L)又はCD_(D-K)=イヌのラムダ又はイヌのカッパLCからの定常領域」と説明されている。ここで、表3で用いられている用語の対応関係から「CD_(D-L)」は「C_(D-L)」の誤記であることは明らかであり、定常領域であるC_(D-L)は「イヌのラムダLCからの定常領域」であると認められる。 そして、上記記載事項(1-a)には、同じく定常領域であるCD-Lを含むVET111に関して、イヌのラムダ定常領域であるVET104が結合することが記載されていること、また、本願の発明の詳細な説明においてイヌのラムダ軽鎖定常領域として記載されている配列は、上記記載事項(1-d)における配列番号55で示されるVET104のアミノ酸配列以外に存在しないことを考慮すれば、引用発明が規定する軽鎖(VET114)の定常領域として採用されているのは、配列番号55のアミノ酸配列で示されるイヌのラムダ定常領域(VET104)であると認められる。 同様に、引用発明が規定する重鎖(VET224)の構造 「FR1_(R-VH)-CDR1_(R-VH)-FR2_(R-VH)CDR2_(R-VH)-FR3_(R-VH)-CDR3_(R-VH)-FR4_(R-VH)-C_(D-H)」 のうち、定常領域であるC_(D-H)の説明として、「イヌのHCからの定常領域」と説明されている。 そして、上記記載事項(1-a)には、同じく定常領域であるC_(D-H)を含むVET222に関して、イヌの定常領域であるVET214に結合することが記載されていること、また、本願の発明の詳細な説明においてイヌの重鎖定常領域として記載されている配列は、上記記載事項(1-d)における配列番号54で示されるVET214のアミノ酸配列以外に存在しないことを考慮すれば、引用発明が規定する重鎖(VET224)の定常領域として採用されているのは、配列番号54のアミノ酸配列で示されるイヌの定常領域(VET214)であると認められる。 そうすると、引用発明が規定する軽鎖(VET114)は、上記記載事項(1-c)より、配列番号43で示されるアミノ酸配列(107アミノ酸)と、上記記載事項(1-d)より、イヌのラムダ定常領域(VET104)の配列番号55で示されるアミノ酸配列(106アミノ酸)を含むものであるといえ、上述の2つをこの順番で繋いだアミノ酸配列(213アミノ酸)は、本願の配列番号6で示されるアミノ酸配列(213アミノ酸)と100%の配列同一性を有する。 同様に、引用発明が規定する重鎖(VET224)は、上記記載事項(1-c)より、配列番号46で示される以下のアミノ酸配列(121アミノ酸)と、上記記載事項(1-d)より、イヌの定常領域(VET214)の配列番号54で示されるアミノ酸配列(335アミノ酸)を含むものであるといえ、上述の2つをこの順番で繋いだアミノ酸配列(456アミノ酸)は、本願の配列番号5で示されるアミノ酸配列(456アミノ酸)と100%の配列同一性を有する。 このことから、引用発明は、本件補正発明1が規定する配列番号5を含む重鎖および配列番号6を含む軽鎖を含むものと認められる。 よって、上記相違点1は実質的な相違点ではない。 相違点2について: 上記相違点1で述べたとおり、本件補正発明と引用発明とは、抗体の構造において差異がないのであるから、「イヌCD52に結合する」ことは、単に抗体の性質を述べただけに過ぎず、上記相違点2は実質的な相違点にはならない。 したがって、本件補正発明1は、引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。 5.特許法第29条第2項について 「第2 4.(1)引用例1、引用発明」における引用発明の認定において、引用例1の記載事項(1-b)?(1-c)の解釈として、「VET114」が、配列番号43を含む軽鎖であることのみ、すなわち可変領域の部分のみが特定されていて、その定常領域が判然しないとして、また、「VET224」が、配列番号46を含む重鎖であることのみ、すなわち可変領域の部分のみが特定されていて、その定常領域が判然しないとして、本件補正発明1が引用発明と実質的な相違点を有するとして、以下に検討する。 引用例1の記載事項(1-b)?(1-c)には、「VET114」の構造が「FR1_(R-VL)-CDR1_(R-VK)-FR2_(R-VK)CDR2_(R-VK)-FR3_(R-VK)-CDR3_(R-VK)-FR4_(D-VL)-C_(D-L)」で示され、C_(D-L)はイヌのラムダLCからの定常領域であると説明されており、イヌのラムダLCからの定常領域として記載されている配列は、引用例1の記載事項(1-d)における配列番号55で示されるVET104のアミノ酸配列以外に存在しないことから、「VET114」の定常領域として、配列番号55のアミノ酸配列で示されるイヌのラムダ定常領域(VET104)を用いて、上記構造を有する軽鎖を構築し、 また、引用例1の記載事項(1-b)?(1-c)には、「VET224」の構造が「FR1_(R-VH)-CDR1_(R-VH)-FR2_(R-VH)CDR2_(R-VH)-FR3_(R-VH)-CDR3_(R-VH)-FR4_(R-VH)-C_(D-H)」で示され、C_(D-H)はイヌのHCからの定常領域であると説明されており、イヌのHCからの定常領域として記載されている配列は、引用例1の記載事項(1-d)における配列番号54で示されるVET214のアミノ酸配列以外に存在しないことから、「VET114」の定常領域として、配列番号54のアミノ酸配列で示されるイヌの定常領域(VET214)を用いて、上記構造を有する重鎖を構築して、 本件補正発明1の抗体を作製することは当業者であれば容易になし得るものである。 そして、本件補正発明1の効果についても、イヌのCD52に結合して、CD52に関連するイヌの疾患を処置できるという、引用例1に記載された発明から当業者が予想できる程度のものに過ぎない。 したがって、本件補正発明1は、引用例1に記載された発明から当業者が容易になし得るものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。 6.小括 以上のとおり、平成28年6月30日付けの手続補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明 平成28年6月30日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願請求項に係る発明は、平成27年9月24日付けにより補正された特許請求の範囲の請求項1?20に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。そのうち、請求項6に係る発明は、以下のとおりのものである。 「【請求項6】 抗体または抗体フラグメントがイヌCD52を認識する抗体であり、抗体が配列番号5を含む重鎖および配列番号6を含む軽鎖を含む、請求項1に記載の抗体または抗体フラグメント。」(以下、これを「本願発明6」という) 1.優先権主張の効果について 「第2 3.優先権主張の効果について」に記載したのと同様に、本願発明6についての優先権主張の効果は認められず、本願発明6における、以下に検討する特許法第29条第2項に規定する進歩性の判断基準日は、本願の出願日(2011年3月3日)であると認める。 2.特許法第29条第2項について 本願発明6は、本件補正発明1における「イヌCD52に結合し」という限定事項が解除された、イヌCD52を認識する抗体である。 そうすると、本願発明6の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明1が、「第2 5.特許法第29条第2項について」に記載したとおり、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明6も同様の理由により、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 結び 以上のとおりであるから、本願請求項6に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないので、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-02-16 |
結審通知日 | 2017-02-21 |
審決日 | 2017-03-10 |
出願番号 | 特願2012-556250(P2012-556250) |
審決分類 |
P
1
8・
572-
Z
(C12N)
P 1 8・ 113- Z (C12N) P 1 8・ 575- Z (C12N) P 1 8・ 121- Z (C12N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田中 晴絵、渡邉 潤也、星 浩臣 |
特許庁審判長 |
田村 明照 |
特許庁審判官 |
長井 啓子 三原 健治 |
発明の名称 | CD52に対するモノクローナル抗体 |
代理人 | 冨田 憲史 |
代理人 | 笹倉 真奈美 |
代理人 | 田中 光雄 |
代理人 | 山崎 宏 |