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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1330765
審判番号 不服2016-10360  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-07-08 
確定日 2017-07-26 
事件の表示 特願2013-533006「ラベルを提供する方法、コンピュータ端末、およびラベル」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 4月12日国際公開、WO2012/048324、平成26年 1月16日国内公表、特表2014-500806〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本件出願は、2011年10月10日(パリ条約による優先権主張 2010年10月8日(以下、「優先日」という。)、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成27年7月1日付けで拒絶理由が通知され、同年10月6日付けで手続補正がなされ、平成28年3月2日付けで拒絶の査定がなされ(同査定の謄本の送達(発送)日 同年同月8日)、これに対し、同年7月8日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に特許請求の範囲を補正する手続補正がされたものである。

第2.平成28年7月8日付け手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

本件補正を却下する。

[理由]

1.本件補正の内容

本件補正により、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1は、本件補正後の請求項1へ補正された。補正前の特許請求の範囲の請求項1、及び、補正後の特許請求の範囲の請求項1は、それぞれ以下のとおりである(下線は補正箇所を示すために審決で付した。以下の下線も同様に審決で付した。)。

(補正前)
「【請求項1】
医療用途に用いられるラベルを提供する方法であって、
医療用薬物を抽出する容器に付けられた機械読取可能コードを走査することにより、前記医療用途に用いるためにラベル付けされる前記医療用薬物の識別を受信する工程と、
仮想ラベルを使用者に表示する工程と、
前記医療用途に用いるためにラベル付けされる前記医療用薬物の前記識別に基づいて、前記医療用途に用いられる表示規格に準拠した前記ラベルを作成するために、ラベル内容を印刷する工程と、を含み、
前記仮想ラベルが、前記印刷する工程によって印刷される前記ラベルの外観を使用者が視覚的に確認できるように提供され、
前記仮想ラベルに含まれる前記ラベル内容が、色コード、前記医療用薬物の濃度、前記医療用薬物の有効期限の日付、および前記医療用薬物を用意した個人の識別のうち少なくとも1つを含み、
前記機械読取可能コードが、前記ラベル内容の少なくとも一部として前記印刷する工程により印刷されるラベルを提供する方法。」

(補正後)
「【請求項1】
医療用途に用いられるラベルを提供する方法であって、
医療用薬物を抽出する容器に付けられた機械読取可能コードを走査することにより、前記医療用途に用いるためにラベル付けされる前記医療用薬物の識別を受信する工程と、
仮想ラベルを使用者に表示する工程と、
前記医療用途に用いるためにラベル付けされる前記医療用薬物の前記識別に基づいて、前記医療用途に用いられる表示規格に準拠した前記ラベルを作成するために、ラベル内容を印刷する工程と、を含み、
前記仮想ラベルが、前記印刷する工程によって印刷される前記ラベルの外観を使用者が視覚的に確認できるように提供され、
前記仮想ラベルに含まれる前記ラベル内容が、色コード、前記医療用薬物の濃度、前記医療用薬物の有効期限の日付、および前記医療用薬物を用意した個人の識別を含み、
機械読取可能コードが、前記ラベル内容の一部として前記印刷する工程により印刷されるとともに、前記ラベル内容の他の部分を表すラベルを提供する方法。」

本件補正は、補正前の「前記機械読取可能コード」との誤記を「機械読取可能コード」と訂正することを含むものであって、特許法第17条の2第5項第3号に規定される誤記の訂正を目的とするものに該当する。

また、本件補正は、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「前記仮想ラベルに含まれる前記ラベル内容」について、補正前の「色コード、前記医療用薬物の濃度、前記医療用薬物の有効期限の日付、および前記医療用薬物を用意した個人の識別のうち少なくとも1つを含み」を「色コード、前記医療用薬物の濃度、前記医療用薬物の有効期限の日付、および前記医療用薬物を用意した個人の識別を含み」と限定するとともに、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「機械読取可能コード」について、補正前の「前記ラベル内容の少なくとも一部として前記印刷する工程により印刷される」を「前記ラベル内容の一部として前記印刷する工程により印刷されるとともに、前記ラベル内容の他の部分を表す」と限定することを含むものであって、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

したがって、本件補正は、第17条の2第5項第2号及び第3号の規定に適合する。

さらに、本件補正は、新規事項を追加するものではない。

そこで、前記に記載された事項により特定される、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用例

(1)原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2007-117572号公報(以下「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

ア.「【0114】
〔ラベル処理部〕
ラベル処理部32は、薬剤ID等の情報を所定の記録媒体(ラベル)に記録する識別情報記録部321と、薬剤IDが記録された記録媒体をシリンジに貼付するラベル貼付部322とを有している。
【0115】
識別情報記録部321は、ラベルの一方の面(表面)に薬剤IDなどを記録(印刷)する。本実施形態においては、図9(A)に示すように、薬剤ID、薬剤名、薬剤濃度、調剤時間等の情報が記録されたバーコードをラベルに印刷するとともに、これらの情報をユーザ認識可能な形態(つまり文字)でラベルに印刷するようになっている。」

イ.「【0117】
ラベル貼付部322は、識別情報記録部321により薬剤ID等が印刷されたラベルをシリンジに貼り付けるよう動作する(図10(A)参照)。このラベル貼付部322は、たとえば、ラベルの非塗布部を覆う被覆部材の端部を保持して被覆部材をラベルから剥離する剥離機構と、被覆部材が剥離されたラベルの接着面をシリンジ800のシリンダ部801の所定位置に配置して押圧する貼付機構とを含んで構成されている。なお、被覆部材が剥離されたラベルの接着面にシリンジ800のシリンダ部801を押圧することにより、ラベルを貼り付けるように構成してもよい。」

ウ.「【0145】
次に、ユーザが、調剤ユニット3の薬剤投入部3bに薬瓶900を投入する(S4)。投入された薬瓶900は、薬瓶保持部312の載置台に載置され、複数の車輪によって保持される。薬瓶保持部312が薬瓶900を回転させると、識別情報読取部37がバーコード903に記録された薬剤ID(識別情報)を読み取る(S5)。調剤ユニット3の制御部30は、通信部26を制御し、読み取られた薬剤の識別IDを制御ユニット2に送信する。」

エ.「【0205】
また、調剤ユニット2は、混合薬剤710の調剤時間をラベルLに記録するようになっているので、医師や看護士は、ラベルL上の調剤時間を見て、そのシリンジ800に充填された混合薬剤710がいつ作成されたものか認識することができる。なお、混合薬剤710の保管可能期限となる時刻をラベルLに記録するようにしてもよい。」

オ.図6からは、薬瓶900にバーコード903が付された点を看取することができる。

カ.上記ア.にはラベルに印刷し、貼り付ける手順が記載されているから、引用例1にはラベルを提供する方法が記載されている。

上記の記載事項を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「薬剤ID等の情報を所定のラベルに記録し、
薬瓶900に付されたバーコード903に記録された薬剤IDを読み取り、
薬剤ID、薬剤名、薬剤濃度、調剤時間等の情報が記録されたバーコードをラベルに印刷するとともに、これらの情報をユーザ認識可能な形態(つまり文字)でラベルに印刷し、
混合薬剤710の保管可能期限となる時刻をラベルLに記録するようにし、
薬剤ID等が印刷されたラベルをシリンジに貼り付ける
ラベルを提供する方法。」

(2)同じく原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2009-502685号公報(以下「引用例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

キ.「【0016】
本開示は、一つには、製品のパッケージング、保管、使用、および/または販売のシステムおよび方法に向けられる。このような製品は、例えば、細胞培養、幹細胞培養、タンパク質、核酸およびリボ核酸の利用および研究を含むがこれに限らない分子生物学や細胞生物学などの生物科学、薬学、ならびにその他の産業的および学術的実験室研究および製造で用いられる製品、ならびにさまざまな物質の組成を含む。本開示および本発明は、一つには、本明細書に記載のおよび/またはそのような方法で用いられるラベルおよび容器に向けられる。本発明は、一つには、このような製品およびサービスのユーザーおよび提供者に対して利益を提供する、改良された効率的なパッケージング、ラベル付け、保管、販売、およびそのようなシステムの使用方法を提供する。本明細書に開示されるシステムおよび方法の個別の要素およびこれらの要素の任意の組み合わせにより、特定の利点が提供される。そのため、本明細書に開示された発明は、本開示の個々の要素および要素の組み合わせの両方を含む。」

ク.「【0060】
ラベルは、別の媒体に部分的または完全に印刷されて接着剤またはその他の手段によりボトルおよび/またはカバーに貼り付けまたは取り付けられてもいし、直接容器および/またはカバーにペイント、印刷、または染色されてもよいし、容器表面にエンボスされたラベル部分とともに製造されてもよいし、容器の材料に含まれてもよい。本開示の更なる局面では、容器およびカバーのラベルは、容器とは別個に提供されてもよい、ユーザーが容器に添付または容器とは別に使用してもよい。ラベルは、また、ラベルつき容器およびカバーと組み合わせて提供されてもよい。例えば、さまざまな情報を含んだ小さなラベルは、パッケージに貼り付けられてもよいし、特定の種類の製品の保管スペースを示すまたは特定の製品の色コードおよび番号コードの記録としてカタログあるいは実験室のノートに貼り付けるために用いる容器と一緒にパックされてもよい。」

ケ.「【0063】
本開示の一局面は、ラベルは、認識しやすく覚えやすいシンボル特定の製品を識別するのに用いられるように、簡単にアクセス可能なフォーマットで必要な情報を提供する。そのため、ある態様では、容器のラベルは、色コード化されたエリアまたはストライプを含む。このエリアは、容器の正面、背面、一方または両側面、または正面ならびに背面および/または一方もしくは両側面からはっきりと見えるストライプまたはエリアであってよい。色コード化されたエリアは、また、容器の1つ以上の側面に添付されたラベルの大部分または全部を含んでもよく、または容器またはカバーの全部または一部を覆うシュリンクラップであってもよい。そのため、ラベルの色コード化されたエリアは、容器の1つ以上の表面の1つ以上のラベルの1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%(例えば、約5%?約100%、約10%?約100%、約20%?約100%、約30%?約100%、約40%?約100%、約50%?約100%、約60%?約100%、約70%?約100%、約80%?約100%、約5%?約80%、約10%?約80%、約20%?約80%、約30%?約80%、約40%?約80%、約50%?約80%、約60%?約80%、など)までを含んでもよい。特定の態様では、ラベルは1桁、2桁、または3文字の、文字、数字、またはその他の符号を含む文字の組み合わせのいずれかの識別子を含み、色と合わせて特定の製品を示す。インジケータは、ラベルの色コード化された領域、または数字または英数字の指示子がコード化された色で印刷される白またはコード化された色にコントラストのついた色のラベルの別の領域に任意で印刷される。上記のようなラベルは、容器またはカバー(例えば、キャップまたはふた)に添付または印刷されてもよい。」

コ.上記ク.にはラベルに印刷し、貼り付ける手順が記載されているから、引用例2にはラベルを提供する方法が記載されている。

上記の記載事項を総合すると、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

「薬学で用いられる製品の使用に向けられるものであって、
別の媒体に部分的または完全に印刷されて接着剤またはその他の手段によりボトルおよび/またはカバーに貼り付けまたは取り付けられ、
色コード化され、または数字または英数字の指示子がコード化された色で印刷される
ラベルを提供する方法。」

3.対比

本願補正発明と引用発明1とを対比する。

後者のラベルは、「薬剤ID等の情報」を「記録」するのだから、医療用途に用いられることは明らかである。
後者の「薬瓶900に付されたバーコード903」は、前者の「医療用薬物を抽出する容器に付けられた機械読取可能コード」に相当し、同様に、「薬剤ID等が印刷されたラベルをシリンジに貼り付ける」ことは、「医療用薬物の識別」が「医療用途に用いるためにラベル付けされる」ことに、「バーコード903に記録された薬剤IDを読み取」ることは、「医療用薬物の識別を受信する」ことにそれぞれ相当する。
そうすると、後者は、前者の「医療用薬物を抽出する容器に付けられた機械読取可能コードを走査することにより、前記医療用途に用いるためにラベル付けされる前記医療用薬物の識別を受信する工程」を備えているといえる。
後者の「薬剤ID」は、「薬剤ID等が印刷されたラベルをシリンジに貼り付ける」のだから、前者の「前記医療用途に用いるためにラベル付けされる前記医療用薬物の前記識別」に相当し、後者の「薬剤ID」の「情報をユーザ認識可能な形態(つまり文字)でラベルに印刷」することは、ラベルに印刷された「薬剤ID」がラベル内容であることは明らかだから、前者の「前記ラベルを作成するために、ラベル内容を印刷する」ことに相当する。
そうすると、後者の「薬剤ID」の「情報をユーザ認識可能な形態(つまり文字)でラベルに印刷」することと、前者の「前記医療用途に用いるためにラベル付けされる前記医療用薬物の前記識別に基づいて、前記医療用途に用いられる表示規格に準拠した前記ラベルを作成するために、ラベル内容を印刷する工程」とは、「前記医療用途に用いるためにラベル付けされる前記医療用薬物の前記識別に基づいて、前記ラベルを作成するために、ラベル内容を印刷する工程」との概念で共通する。
前者は「ラベル内容を印刷する」ものであって、かつ、「仮想ラベル」は「印刷される前記ラベルの外観を使用者が視覚的に確認できるように提供され」るのだから、仮想ラベルに含まれるラベル内容が、印刷されたラベルに含まれるラベル内容と共通することは明らかである。そうすると、後者の「薬剤ID、薬剤名、薬剤濃度、調剤時間等の情報」を「ユーザ認識可能な形態(つまり文字)でラベルに印刷し、混合薬剤710の保管可能期限となる時刻をラベルLに記録する」ことと、前者の「前記仮想ラベルに含まれる前記ラベル内容が、色コード、前記医療用薬物の濃度、前記医療用薬物の有効期限の日付、および前記医療用薬物を用意した個人の識別を含」むこととは、「ラベル内容が、医療用薬物の濃度を含」むとの概念で共通する。
後者は「薬剤ID、薬剤名、薬剤濃度、調剤時間等の情報が記録されたバーコードをラベルに印刷するとともに、これらの情報をユーザ認識可能な形態(つまり文字)でラベルに印刷」するから、薬剤ID、薬剤名、薬剤濃度、調剤時間等の情報が記録されたバーコードをラベルに印刷するとともに、薬剤ID、薬剤名、薬剤濃度、調剤時間等の情報をユーザ認識可能な形態(つまり文字)でもラベルに印刷するものである。そうすると、後者の「バーコード」が前者の「機械読取可能コード」に相当し、同様に「薬剤ID、薬剤名、薬剤濃度、調剤時間等の情報」が「前記ラベル内容の他の部分」に相当するから、後者の「薬剤ID、薬剤名、薬剤濃度、調剤時間等の情報が記録されたバーコードをラベルに印刷する」点は、前者の「機械読取可能コードが、前記ラベル内容の一部として前記印刷する工程により印刷されるとともに、前記ラベル内容の他の部分を表す」点に相当する。

したがって、両者は、

「医療用途に用いられるラベルを提供する方法であって、
医療用薬物を抽出する容器に付けられた機械読取可能コードを走査することにより、前記医療用途に用いるためにラベル付けされる前記医療用薬物の識別を受信する工程と、
前記医療用途に用いるためにラベル付けされる前記医療用薬物の前記識別に基づいて、前記ラベルを作成するために、ラベル内容を印刷する工程と、を含み、
前記ラベル内容が、前記医療用薬物の濃度を含み、
機械読取可能コードが、前記ラベル内容の一部として前記印刷する工程により印刷されるとともに、前記ラベル内容の他の部分を表すラベルを提供する方法。」

の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
前者が、「仮想ラベルを使用者に表示する工程」を有し、「仮想ラベルが、印刷する工程によって印刷されるラベルの外観を使用者が視覚的に確認できるように提供され」、「ラベル内容」が「仮想ラベルに含まれる」のに対して、後者はそのようなものでない点。

[相違点2]
前者のラベルが、「医療用途に用いられる表示規格に準拠した」ものであるのに対して、後者はそのようなものでない点。

[相違点3]
前者のラベルの「ラベル内容が、色コード、医療用薬物の有効期限の日付、および医療用薬物を用意した個人の識別を含」むのに対して、後者はそのようなものでない点。

4.判断

上記相違点について検討する。

(1)相違点1について

ラベルの印刷において、印刷結果を確認するために、印刷する工程によって印刷されるラベルの外観を使用者が視覚的に確認できるように仮想ラベルを提供し、ラベル内容が仮想ラベルに含まれるようにすることは、例えば、いずれも本願の優先日前に頒布された以下の刊行物に示されるように、本願の優先日前に周知の技術事項(以下、「周知技術」という。)である。
・特開2009-39893号公報
【請求項1】、段落【0044】?【0055】、図5?6参照。「ラベルイメージLI」が本願補正発明の「仮想ラベル」に相当する。
・特開2006-289796号公報
【請求項1】、段落【0039】?【0052】、図5?8参照。「ラベルイメージ114」が本願補正発明の「仮想ラベル」に相当する。
・特開2002-307760号公報
【請求項1】、段落【0048】?【0049】、図9?10参照。「ラベルイメージプレビュー902」、「ラベルイメージプレビュー1002」が本願補正発明の「仮想ラベル」に相当する。
そして、引用発明1は、「医療現場にて調剤される薬剤を使用する場合における調剤時や投与時の記録ミスを防止すること」(段落【0014】)を課題とするものであるところ、印刷結果を確認することが記録ミス防止に寄与することは明らかであるから、引用発明1において記録ミスを防止するために上記周知技術を採用し、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

(2)相違点2について

引用発明1は、医療用途に用いられるのだから、医療用途に用いられる表示規格に準拠することは当然なすべきことである。
そうすると、引用発明1において、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

(3)相違点3について

ア.色コードについて

引用発明2の「ラベル」は「薬学で用いられる製品の使用に向けられる」ものであるから、本願補正発明の「医療用途に用いられるラベル」に相当し、引用発明2の「色コード」及び「コード化された色」は、本願補正発明の「色コード」に相当する。
そうすると、引用発明1及び2はともに医療用途に用いられるラベルに係るものであって、引用発明1は「医療現場にて調剤される薬剤を使用する場合における調剤時や投与時の記録ミスを防止すること」(段落【0014】)を、また、引用文献2は「ボトルの中身の識別が難しいこと」(段落【0005】)をそれぞれ課題としており、薬剤を誤りなく識別することを課題とする点で共通するから、引用発明1に引用発明2を適用することにより、相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項であるラベルが色コードを含むようにすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

イ.医療用薬物の有効期限の日付について

引用発明1は、「混合薬剤710の保管可能期限となる時刻をラベルLに記録するようにしてもよい」ものであって、「混合薬剤710の保管可能期限」は本願補正発明の「医療用薬物の有効期限」に相当する。そして、「医療用薬物の有効期限」を時刻で示すか日付で示すかは、医療用薬物の種類や用法に応じて当業者が適宜選択できる設計的事項であるから、引用発明1において、混合薬剤710の保管可能期限を日付で示して、本願補正発明の相違点3に係る発明特定事項であるラベルが医療用薬物の有効期限の日付を含むようにすることは、当業者が容易になし得ることである。

ウ.医療用薬物を用意した個人の識別について

医療用薬物のラベルには、例えば、引用発明1の「薬剤ID、薬剤名、薬剤濃度、調剤時間等の情報」のように種々の情報が記録されるものである。そして、どのような情報を記録するかは、医療用薬物の種類、使用方法及び管理方法等に応じて当業者が選択することができる事項であって、医療用薬物を用意した個人の識別を記録することも、例えば、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2004-168847号公報(段落【0081】参照。「調合者」が「医療用薬物を用意した個人」に相当する。)及び特開2009-142674号公報(段落【0023】参照。「調製者の識別」が「医療用薬物を用意した個人の識別」に相当する。)に示されるように、本出願の優先日前の常套手段である。
そうすると、引用発明1において、上記常套手段を踏まえれば、本願補正発明の相違点3に係る発明特定事項であるラベルが医療用薬物を用意した個人の識別を含むようにすることは、当業者が容易になし得ることである。

そして、本願補正発明の発明特定事項の全体によって奏される効果も、引用発明1、2及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。

よって、本願補正発明は、引用発明1、2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5.むすび

以上のとおりであって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

したがって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3.本願の発明について

1.本願の発明

本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成27年10月6日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
医療用途に用いられるラベルを提供する方法であって、
医療用薬物を抽出する容器に付けられた機械読取可能コードを走査することにより、前記医療用途に用いるためにラベル付けされる前記医療用薬物の識別を受信する工程と、
仮想ラベルを使用者に表示する工程と、
前記医療用途に用いるためにラベル付けされる前記医療用薬物の前記識別に基づいて、前記医療用途に用いられる表示規格に準拠した前記ラベルを作成するために、ラベル内容を印刷する工程と、を含み、
前記仮想ラベルが、前記印刷する工程によって印刷される前記ラベルの外観を使用者が視覚的に確認できるように提供され、
前記仮想ラベルに含まれる前記ラベル内容が、色コード、前記医療用薬物の濃度、前記医療用薬物の有効期限の日付、および前記医療用薬物を用意した個人の識別のうち少なくとも1つを含み、
前記機械読取可能コードが、前記ラベル内容の少なくとも一部として前記印刷する工程により印刷されるラベルを提供する方法。」

2.引用例

原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載内容、並びに引用発明は、上記「第2」の「2.引用例」に記載したとおりである。

3.対比・判断

本願発明は、上記「第2」の「1.本件補正後の本願の発明」で検討したとおり、「前記機械読取可能コード」が「機械読取可能コード」の誤記であることを踏まえると、本願補正発明に係る「機械読取可能コード」について「色コード、前記医療用薬物の濃度、前記医療用薬物の有効期限の日付、および前記医療用薬物を用意した個人の識別を含み」を「色コード、前記医療用薬物の濃度、前記医療用薬物の有効期限の日付、および前記医療用薬物を用意した個人の識別のうち少なくとも1つを含み」と上位概念化するとともに、「機械読取可能コード」について「前記ラベル内容の一部として前記印刷する工程により印刷されるとともに、前記ラベル内容の他の部分を表す」を「前記ラベル内容の少なくとも一部として前記印刷する工程により印刷される」と上位概念化したものである。

そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに構成要件を限定したものに相当する本願補正発明が、前記「第2」の「3.対比」及び「4.判断」に記載したとおり、引用発明1、2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明1、2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明1、2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-02-24 
結審通知日 2017-02-28 
審決日 2017-03-13 
出願番号 特願2013-533006(P2013-533006)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 名取 乾治  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 藤本 義仁
森次 顕
発明の名称 ラベルを提供する方法、コンピュータ端末、およびラベル  
代理人 上田 邦生  

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