ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01Q 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 取り消して特許、登録 H01Q |
---|---|
管理番号 | 1330801 |
審判番号 | 不服2016-16760 |
総通号数 | 213 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-09-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-11-09 |
確定日 | 2017-08-15 |
事件の表示 | 特願2015-501536「逆F型アンテナ及び車載用複合アンテナ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月28日国際公開、WO2014/129632、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2014年2月24日(優先権主張2013年2月22日 日本国)を国際出願日とする出願であって、平成28年4月11日付けで拒絶理由通知がされ、平成28年6月17日付けで手続補正がされ、平成28年8月5日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成28年11月9日に拒絶査定不服審判の請求がされ、同時に手続補正がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成28年8月5日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1に係る発明は、以下の引用文献1-3に基づいて、本願請求項2に係る発明は、以下の引用文献1-4に基づいて、本願請求項3に係る発明は、以下の引用文献1-5に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2005-086335号公報 2.特開2006-074422号公報(周知技術を示す文献) 3.特開平02-270405号公報(周知技術を示す文献) 4.特開2003-324310号公報 5.特開平09-153730号公報 第3 審判請求時の補正について 審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。 審判請求時の補正によって請求項1、5の「前記アース部材と電気的に結合した状態で該アース部材から垂直に立ち上がる短絡部と、前記短絡部と電気的に結合した状態で前記短絡部の上端から前記アース部材に対して平行に延びる平板部と、」を「前記アース部材に対して平行に延びる平板部と、上端が前記平板部と電気的に結合し及び下端が前記アース部材と電気的に結合すると共に該アース部材から垂直に立ち上がり、かつ、前記平板部の長手方向へ折り曲げられる短絡部と、」とする補正は、平板部と短絡部の記載を整理するとともに、「短絡部」が「平板部の長手方向へ折り曲げられ」ている構成とすることに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、当初明細書等に記載された事項であり、新規事項を追加するものでもないといえる。 そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1-8に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。 第4 本願発明 本願請求項1-8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明8」という。)は、平成28年11月9日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。 「アース部材と、 前記アース部材に対して平行に延びる平板部と、上端が前記平板部と電気的に結合し及び下端が前記アース部材と電気的に結合すると共に該アース部材から垂直に立ち上がり、かつ、前記平板部の長手方向へ折り曲げられる短絡部と、前記平板部の同一水平面において前記短絡部と反対側の端部の側で該平板部の長手方向と直交する方向に延出する突出部とを有する第1アンテナ部材と、 一方の縁端部に給電部を有し他方の縁端部に向けて幅広となると共に前記平板部と電気的に結合する導体パターンを含む第2アンテナ部材と、を備え、 前記第2アンテナ部材は、前記アース部材と前記平板部との間に、前記突出部と反対側の縁端に対して所定の距離をおいて配置されることを特徴とする逆F型アンテナ。」 なお、本願発明2-8の概要は以下のとおりである。 本願発明2-4は、本願発明1を減縮した発明である。 本願発明5は、本願発明1の逆F型アンテナとアンテナユニットを備えた車載用複合アンテナ装置とした発明である。 本願発明6-8は、本願発明5を減縮した発明である。 第5 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審が付与。) 「【技術分野】 【0001】 本発明は、2種類の周波数帯域(バンド)の信号波の送信や受信が可能で車載用通信機器等に用いて好適な小型のデュアルバンドアンテナと、その共振周波数調整方法とに関する。 【背景技術】 【0002】 小型化に適したデュアルバンドアンテナとして、従来、放射導体板に切欠きを設けることによって高低2種類の周波数で共振可能とした逆F型アンテナが提案されている(例えば、特許文献1参照)。 【0003】 図6はかかる従来例を示す説明図であり、同図に示す逆F型のデュアルバンドアンテナ1は、放射導体板2に長方形状の切欠き4を形成することによって、第1の周波数f1に共振するL字形導体片2aと、第1の周波数f1よりも高周波な第2の周波数f2に共振する矩形導体片2bとを備えている。放射導体板2の一辺端は短絡導体板3に連続しており、短絡導体板3は接地導体板5上に立設されて放射導体板2と該接地導体板5とを短絡している。放射導体板2は全面が接地導体板5と所定の間隔を存して対向しており、放射導体板2の所定位置に給電ピン6がはんだ付けされている。この給電ピン6は、接地導体板5とは非接触で図示せぬ給電回路に接続されている。 【0004】 このように概略構成された従来のデュアルバンドアンテナ1は、L字形導体片2aの延出方向に沿った長さ寸法が第1の周波数f1に対応する共振長λ1の約4分の1に設定され、かつ、延出寸法が短い矩形導体片2bの長さ寸法が第2の周波数f2に対応する共振長λ2(ただしλ2<λ1)の約4分の1に設定されている。それゆえ、給電ピン6を介して放射導体板2に所定の高周波電力を供給することにより、各導体片2a,2bを互いに異なる周波数で共振させることができ、高低2種類の周波数帯域の信号波が送受信可能となる。」 【図6】 したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「接地導体板5と、 接地導体板5と所定の間隔を存して対向している放射導体板2と、一辺端は短絡導体板3に連続し、接地導体版5に立設されて放射導体板2と該接地導体板5とを短絡している短絡導体板3と、 前記放射導体板2は、長方形状の切欠き4を形成することによって、第1の周波数f1に共振するL字形導体片2aと、第1の周波数f1よりも高周波な第2の周波数f2に共振する矩形導体片2bとを備えており、 放射導体板2の所定位置にはんだ付けされ、給電回路に接続されている給電ピン6と、を備える 逆F型アンテナ。」 2.引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審が付与。) 「【0004】 以下、図1乃至図4を参照して、従来の逆F型アンテナ10について説明する。図1は逆F型アンテナ10の斜視図である。図2は逆F型アンテナ10の平面図である。図3は逆F型アンテナ10の正面図である。図4は逆F型アンテナ10の右側面図である。 【0005】 逆F型アンテナ10は、接地導体12と、L字形の放射導体14と、垂直導体16とを有する。 【0006】 詳述すると、接地導体12は一辺の長さがWGの正方形をしている。図示の例では、接地導体12の長さWGは90mmである。 【0007】 放射導体14は、接地導体12に対して極めて狭いギャップを空けて設けられた給電点18から垂直に延びる垂直部分141と、この垂直部分141の先端(上端)から接地導体12に平行に水平方向に延びる水平部分142とを有する。垂直部分141は、給電点18を頂点とした逆二等辺三角形の形状をしている。この逆二等辺三角形の頂点と対向する逆二等辺三角形の辺が垂直部分141の先端(上端)となっている。水平部分142は長さLLで、幅WLの矩形形状をしている。図示の例では、水平部分142の長さLLは69.75mmであり、幅WLは30mmである。水平部分142の一端は垂直部分141の先端(上端)と接続され、水平部分142の他端は開放端となっている。放射導体14の給電点18から開放端までの長さは、電気長で、放射波長のほぼ1/4に選んである。」 【図1】 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審が付与。) 「第1図において、基本構成は前記第7図に示した従来の平板パッチアンテナと同じであるが、給電軸3’がテーパ形になっている点が異なっている。すなわち、給電軸3’はパッチ2側が底面となり、地板1側が頂点となる円錐形となっている。」(2頁左下欄17行?2頁右下欄1行) 【図1】 したがって、上記引用文献2-3によれば、「給電点から他端に向けて幅広となる形状をしている放射導体を有するアンテナ」という技術的事項が記載されていると認められる。 第6 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 引用発明における「接地導体板5」は、本願発明1における「アース部材」に、 引用発明における「接地導体板5と所定の間隔を存して対向している放射導体板2」は、本願発明における「アース部材に対して平行に延びる平板部」に、 引用発明における「一辺端は短絡導体板3に連続し、接地導体版5に立設されて放射導体板2と該接地導体板5とを短絡している短絡導体板3」は、本願発明における「上端が前記平板部と電気的に結合し及び下端が前記アース部材と電気的に結合すると共に該アース部材から垂直に立ち上がり、かつ、前記平板部の長手方向へ折り曲げられる短絡部」に、 それぞれ相当する。 引用発明における「給電ピン6」と、本願発明1における「第2アンテナ部材」は、共に「アース部材と平板部とを電気的に接続し、給電部を有する第2部材」であって該部材が「アース部材と前記平板部との間に、所定の位置に配置」されている点で同じである。 引用発明における「放射導体板2」と、一辺端が短絡導体板3に連続している「短絡導体板3」を合わせて「第1アンテナ部材」と呼ぶことは任意である。 したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「アース部材と、 前記アース部材に対して平行に延びる平板部と、上端が前記平板部と電気的に結合し及び下端が前記アース部材と電気的に結合すると共に該アース部材から垂直に立ち上がり、かつ、前記平板部の長手方向へ折り曲げられる短絡部と、を有する第1アンテナ部材と、 アース部材と平板部とを電気的に接続し、給電部を有する第2部材と、を備え、 前記第2部材は、アース部材と前記平板部との間に、所定の位置に配置されることを特徴とする逆F型アンテナ。」 (相違点1) 一致点の「第1アンテナ部材」に関し、本願発明1は、「前記平板部の同一水平面において前記短絡部と反対側の端部の側で該平板部の長手方向と直交する方向に延出する突出部」を有するのに対し、引用発明は「長方形状の切欠き4を形成することによって、第1の周波数f1に共振するL字形導体片2aと、第1の周波数f1よりも高周波な第2の周波数f2に共振する矩形導体片2bとを備え」ている点。 (相違点2) 一致点の「第2部材」に関し、本願発明1は、「一方の縁端部に給電部を有し他方の縁端部に向けて幅広となると共に前記平板部と電気的に結合する導体パターンを含」んでおり、「前記突出部と反対側の縁端に対して所定の距離をおいて配置」されるのに対し、引用発明は「ピン」であって、「所定位置」である点。 (2)相違点についての判断 事案に鑑み、相違点2について検討する。 引用例2-3は、「給電点から他端に向けて幅広となる形状としている放射導体」によって電気的に結合しており、該「放射導体」は「第1アンテナ部材」とは異なる部材ではあるが、「放射導体」そのものであって、「導体パターンを含む」部材ではない。 そして、「部材の導体パターン」によって電気的に結合することは、引用例2-3にも記載が無く、周知な技術でもないから、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 また、本願発明1は、該「第2アンテナ部材」により、明細書【0047】記載の効果を有するものである。 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2-3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2.本願発明2-8について 本願発明2も、本願発明1の「前記突出部と反対側の縁端に対して所定の距離をおいて配置」されている「一方の縁端部に給電部を有し他方の縁端部に向けて幅広となると共に前記平板部と電気的に結合する導体パターンを含」む第2アンテナ部材を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 また、本願発明3も、本願発明1の「前記突出部と反対側の縁端に対して所定の距離をおいて配置」されている「一方の縁端部に給電部を有し他方の縁端部に向けて幅広となると共に前記平板部と電気的に結合する導体パターンを含」む第2アンテナ部材を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 なお、本願発明4-8は、原査定では、拒絶の理由を発見していない。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明1は、当業者が引用発明及び引用文献2-3に記載された技術的事項に基づいて、本願発明2は、当業者が引用発明及び引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて、本願発明3は、当業者が引用発明及び引用文献2-5に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-07-25 |
出願番号 | 特願2015-501536(P2015-501536) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H01Q)
P 1 8・ 57- WY (H01Q) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 米倉 秀明 |
特許庁審判長 |
大塚 良平 |
特許庁審判官 |
中野 浩昌 吉田 隆之 |
発明の名称 | 逆F型アンテナ及び車載用複合アンテナ装置 |
代理人 | 特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ |