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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 F16B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F16B
管理番号 1330817
審判番号 不服2016-17418  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-22 
確定日 2017-08-22 
事件の表示 特願2012-186507号「クリップ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 3月13日出願公開、特開2014- 43897号、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年8月27日の出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。
平成28年 4月14日付け 拒絶理由通知
6月15日 意見書、手続補正書の提出
8月24日付け 拒絶査定
11月22日 審判請求書及び手続補正書の提出

第2 原査定(平成28年8月24日付け拒絶査定)の概要
原査定の概要は次のとおりである。

[原査定の概要]
理由1.本願の平成28年6月15日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1、2に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2.本願の平成28年6月15日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1、2に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:実願平3-12031号(実開平4-101817号)のマイクロフィルム

第3 審判請求時の補正について
1.補正の内容
審判請求時(平成28年11月22日)の手続補正は、特許請求の範囲の補正を含むものであり、その内容は次のとおりである。(下線部は補正箇所を示す。)
(1)補正事項1
補正前の請求項1の
「スタビライザーの内面には、一対の係止脚が取付部材の取付孔を貫通することを防止するリブが形成されており」
を、
「スタビライザーの内面には、一対の係止脚が取付部材の取付孔を貫通することを防止するリブが内面から突出するように形成されており」
とする。
(2)補正事項2
補正前の請求項1の
「取付部材を係合させた係合状態にある係止脚の先端とリブの頂点との距離は、取付部材の板厚より短く設定されている」
を、
「取付部材を係合させた係合状態にある係止脚の先端とリブの頂点との取付部材の板厚方向の距離は、取付部材の板厚より短く設定されており、」
とする。
(3)補正事項3
補正前の請求項1に、
「一対の係止脚は、基端より幅の狭い先端を有し、
リブは、一対の係止脚の先端の可動軌跡に対して支柱の軸方向に重ならない場所に形成されている」
との事項を追加する。
(4)補正事項4
補正前の請求項2に、
「リブの高さ位置は、係止脚の先端の高さ位置より低くなるように設定されている」
との事項を追加する。

2.新規事項の有無
(1)補正事項1
上記補正事項1は、願書に最初に添付した図面(以下、「当初図面」という。)の【図1】、【図2】、【図6】、【図7】に記載されているといえる。
(2)補正事項2
上記補正事項2は、当初図面の【図5】(B)、【図10】(B)に記載されているといえる。
(3)補正事項3
【図6】から、係止脚16の先端が基端より幅の狭いことが看て取れる。
また、
ア 【図7】において、その左半分では、係止脚16の先端は二点鎖線で示され、第1のリブ12b1とこれに繋がる支柱14の基部は実線で示されており、同図の右半分では、係止脚16の先端は実線で示され、第2のリブ12b2とこれに繋がる支柱14の基部は二点鎖線で示されていること、
イ 【図9】の(B)は「取り付け途中の状態を示しており」(本願の明細書の段落【0008】参照)、左半分においては、係止脚16の先端と第1のリブ12b1に繋がる支柱14の基部とが図面の奥行き方向に見て重なっていることが示され、右半分においては、係止脚16の先端と第2のリブ12b2に繋がる支柱14の基部とが図面の奥行き方向に見て重なっていることが示されていること、
ウ 【図8】において、第1のリブ12b1及び第2のリブ12b2は、支柱14の基部から、図面において左右方向に直線状に延びていることが示されていること、
から、係止脚16の先端は、【図9】(B)における奥行き方向において、支柱14の基部とは、ずれた位置にあると理解でき、【図8】を併せ見れば、支柱14の基部に直線状に繋がる第1のリブ12b1及び第2のリブ12b2も、係止脚16の先端とは、ずれた位置にあると理解できる。
したがって、上記補正事項3は、当初図面の【図6】?【図9】に記載されているといえる。
(4)補正事項4
上記補正事項4は、当初図面の【図2】、【図7】に記載されているといえる。

以上のとおりであるから、審判請求時の特許請求の範囲の補正は、当初図面に記載された事項であり、新規事項を追加するものではないといえる。

2.補正の目的、独立特許要件
請求項1に関する補正の内、少なくとも補正事項3は限定的減縮を目的とするものといえる。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1、2に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願の請求項1、2に係る発明(以下、「本願発明1、2」という。)は、平成28年8月24日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりである。
「【請求項1】
スタビライザーと、スタビライザーから支柱を介して形成された一対の係止脚とから成るアンカー体を備え、板状の取付部材に形成されている取付孔に一対の係止脚を差し込んでいき、差し込んだ一対の係止脚とスタビライザーとの間で取付部材を係合させることで、スタビライザー側に装着される被取付部材を取付部材に取り付けるクリップであって、
スタビライザーの内面には、一対の係止脚が取付部材の取付孔を貫通することを防止するリブが内面から突出するように形成されており、
取付部材を係合させた係合状態にある係止脚の先端とリブの頂点との取付部材の板厚方向の距離は、取付部材の板厚より短く設定されており、
一対の係止脚は、基端より幅の狭い先端を有し、
リブは、一対の係止脚の先端の可動軌跡に対して支柱の軸方向に重ならない場所に形成されていることを特徴とするクリップ。
【請求項2】
請求項1に記載のクリップであって、
リブは、平面視において、支柱の隅部から形成されており、
リブの高さ位置は、係止脚の先端の高さ位置より低くなるように設定されていることを特徴とするクリップ。」

第5 引用文献1に記載された事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付したものである。)

「【0001】
【産業上の利用分野】
この考案は2枚の板状物を水密的且つガタなく取付ける留め具、特に留め具に一個の係止鍔を設けることで2枚の板状物のいずれをも水密的且つガタなく取付けることのできる板状物の留め具の提供に関する。」

「【0004】
本考案は、かゝる従来の留め具における不都合に鑑み、一個の鍔を介して背中合せ状態に設けられている一対の脚のいずれの側の取付け板状物に対しても前記鍔が水密的且つ弾性的に密着する留め具の提供を目的としている。」

「【0005】
【課題を解決するための手段】
本考案に係る板状物の留め具は、叙上の目的を達成するべく、留め具Aの構成を、周方向の係止鍔1を介して一対の脚2及び3を背中合せ状態に有するものとし、しかも構成される係止鍔1を比較的硬い周回基部1aと、この周回基部1aから一方の脚2の側に屈曲した後、脚3の側に向けて反転屈曲され、断面が略V字状の周回溝4と、この周回溝4の背面側に周回凸条5が設けられている弾性周回縁部1bとで構成してあると共に、前記脚2には、前記周回凸条5との間で第1の板状物Bの取付け穴の穴縁を挾持する弾性係止片6を設け、又前記脚3には前記周回基部1aとの間で第2の板状物Cの取付け穴の穴縁を挾持する弾性係止片7を設けて構成してある。
【0006】
【作用】
脚2及び3を係止鍔1の両側に背中合せ状態に有すると共に、係止鍔1に比較的硬い周回基部1aと、弾性周回縁部1bとを設け、この弾性周回縁部1bを断面が略V字状の周回溝4及びこの周回溝4の背面側に周回凸条5を設けた構成とすることによって、脚2の弾性係止片6との間に挾持される第1の板状物Bに係止鍔1の周回凸条5が密に接するように機能する。
又、脚3の弾性係止片7と前記周回基部1aとの間に挾持される第2の板状物Cに弾性周回縁部1bの縁端1b' が密に接するように機能する。」

「【0007】
以下、本考案に係る板状物の留め具の典型的な一実施例を添付の図面について説明する。
この実施例の留め具Aは、板状物に対する弾性的且つ水密的な密着性をもたらす弾性係止片等を一体に有する都合等からインジェクション成形による合成樹脂成形品であることが好ましい。
そして、この留め具Aは周方向に設けられている係止鍔1を介して脚2、脚3を背中合せの状態に有していると共に、脚2に弾性係止片6が、脚3に弾性係止片7が夫々設けられている。
【0008】
次いで、係止鍔1は、比較的硬く、弾性変形を生じ難い周回基部1aを有していると共に、この周回基部1aから脚2の側に屈曲した後、脚3の側に反転屈曲して断面が略V字状の周回溝4と、この周回溝4の背面側が周回凸条5とされている弾性周回縁部1bとを有する構成としてある。
・・・
【0009】
次いで脚2は係止鍔1から一体に突設された角筒状をなしており、先端部を内窄まりの薄肉傾斜部2aとして板状物の取付け穴に対する挿入性を良くしてあると共に、対向する両側壁にコ字状のスリット8で弾性係止片6を区分して構成してある。
この弾性係止片6は脚2の先端側から係止鍔1の側に向けて設けられており、脚2の外側面から漸次外方に自由端側が突き出す構成としてあり、この弾性係止片6の自由端と前記係止鍔1の周回凸条5との間で第1の板状物Bを挾持する構成としてある。
【0010】
更に、脚3は係止鍔1から一体に突設されている先窄まりの支板状をなしており、先端の両面から係止鍔1の側に向けて弾性係止片7、7を、この弾性係止片7、7間の間隔が漸次拡開するように設け、この弾性係止片7の自由端部と前記係止鍔1の周回基部1aとの間で第2の板状物Cを挾持する構成としてある。
・・・
【0012】
かゝる構成からなる留め具Aの脚2をパッキン9を介して第1の板状物Bの取付け穴に挿入し、脚2の弾性係止片6と、係止鍔1の周回凸条5との間で該第1板状物Bを挾持する。
この第1の板状物Bは、弾性係止片6による係止状態で係止鍔1の周回凸条5に強く密着し、弾性周回縁部1bにある縁端1b' を周回基部1aの面から脚3の側に突き出させるだけの板厚を有するものを用いる。
次いで、脚3を第2の板状物Cの取付け穴に挿入し、この第2の板状物Cの面に前記弾性周回縁部1bの縁端1b' が密着状態で、脚3の弾性係止片7と周回基部1aとの間で該第2の板状物Cを挾持する。」

【図6】から、弾性係止片7の先端と周回基部1aとの第2の板状物Cの板厚方向の距離は、第2の板状物Cの板厚よりも短く設定されていることを看取しうる。

以上のア?オの事項及び【図1】?【図7】の記載からみて、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
〔引用発明〕
「比較的硬く、弾性変形を生じ難い周回基部1aを有していると共に、この周回基部1aから脚2の側に屈曲した後、脚3の側に反転屈曲して断面が略V字状の周回溝4と、この周回溝4の背面側が周回凸条5とされている弾性周回縁部1bとを有する係止鍔1と、
係止鍔1から一体に突設されている先窄まりの支板状をなしており、先端の両面から係止鍔1の側に向けて弾性係止片7、7を、この弾性係止片7、7間の間隔が漸次拡開するように設けた脚3を備え、
脚3を第2の板状物Cの取付け穴に挿入し、この第2の板状物Cの面に前記弾性周回縁部1bの縁端1b' が密着状態で、脚3の弾性係止片7と周回基部1aとの間で該第2の板状物Cを挾持することで、
係止鍔を介して脚3と背中合わせの状態で形成されている脚2の弾性係止片6の自由端と係止鍔1の周回凸条5との間で第1の板状物Bを挾持する、板状物の留め具であって、
弾性係止片7の先端と周回基部1aとの第2の板状物Cの板厚方向の距離は、第2の板状物Cの板厚よりも短く設定されている、板状物の留め具。」

第6 対比・判断
1.本願発明1
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 後者の「係止鍔1」は、その機能からみて、前者の「スタビライザー」に相当する。
イ 後者の「先窄まりの支板状」及び「先端の両面から係止鍔1の側に向け」た「弾性係止片7、7」は、前者の「支柱」及び「一対の係止脚」に相当し、後者の「係止鍔1から一体に突設されている先窄まりの支板状をなしており、先端の両面から係止鍔1の側に向けて弾性係止片7、7を、この弾性係止片7、7間の間隔が漸次拡開するように設けた脚3」は、前者の「スタビライザーから支柱を介して形成された一対の係止脚とから成るアンカー体」に相当する。
ウ 後者の「第2の板状物C」は、前者の「板状の取付部材」に相当し、後者の「脚3を第2の板状物Cの取付け穴に挿入」することは、前者の「板状の取付部材に形成されている取付孔に一対の係止脚を差し込んでい」くことに相当する。
エ 後者の「脚3の弾性係止片7と」係止鍔部1の「周回基部1aとの間で第2の板状物Cを挾持する」ことは、前者の「差し込んだ一対の係止脚とスタビライザーとの間で取付部材を係合させること」に相当する。
オ 後者の「係止鍔を介して脚3と背中合わせの状態で形成されている脚2の弾性係止片6の自由端と係止鍔1の周回凸条5との間で」「挾持」される「第1の板状物B」は、前者の「スタビライザー側に装着される被取付部材」に相当し、後者の「第1の板状物B」は「係止鍔1」を介在して「第2の板状物C」に取り付けられていることになるので、前者の「被取付部材を取付部材に取り付ける」ことを備えている。
カ 後者の「板状物の留め具」は、脚3の弾性係止片7、7の第2の板状物Cへの係止状態からみて、前者の「クリップ」に相当する。
キ 後者の「係止鍔1」の「比較的硬く、弾性変形を生じ難い周回基部1a」は、脚3の弾性係止片7との間で第2の板状物Cを挾持するものであり、また、「弾性係止片7の先端と周回基部1aとの第2の板状物Cの板厚方向の距離は、第2の板状物Cの板厚よりも短く設定されている」ので、第2の板状物Cが当接する周回基部1aが弾性係止片7の第2板状物Cに対する貫通を防止しているといえる。
そうすると、後者の「係止鍔1」の「周回基部1a」は、前者の「一対の係止脚が取付部材の取付孔を貫通することを防止するリブ」と、「一対の係止脚が取付部材の取付孔を貫通することを防止する当接部分」である限りにおいて一致し、後者の「係止鍔1」が「周回基部1a」を有することは、前者の「スタビライザーの内面には、一対の係止脚が取付部材の取付孔を貫通することを防止するリブが内面から突出するように形成されて」いることと、「スタビライザーの内面には、一対の係止脚が取付部材の取付孔を貫通することを防止する当接部分が形成されて」いる限りにおいて一致する。
ク 後者の「弾性係止片7の先端と周回基部1aとの第2の板状物Cの板厚方向の距離は、第2の板状物Cの板厚よりも短く設定されている」ことは、前者の「取付部材を係合させた係合状態にある係止脚の先端とリブの頂点との取付部材の板厚方向の距離は、取付部材の板厚より短く設定されて」いることと、「取付部材を係合させた係合状態にある係止脚の先端と当接部分との取付部材の板厚方向の距離は、取付部材の板厚より短く設定されて」いる限りにおいて一致する。

そうすると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。
〔一致点〕
「スタビライザーと、スタビライザーから支柱を介して形成された一対の係止脚とから成るアンカー体を備え、板状の取付部材に形成されている取付孔に一対の係止脚を差し込んでいき、差し込んだ一対の係止脚とスタビライザーとの間で取付部材を係合させることで、スタビライザー側に装着される被取付部材を取付部材に取り付けるクリップであって、
スタビライザーの内面には、一対の係止脚が取付部材の取付孔を貫通することを防止する当接部分が形成されており、
取付部材を係合させた係合状態にある係止脚の先端と当接部分との取付部材の板厚方向の距離は、取付部材の板厚より短く設定されている、クリップ。」
〔相違点〕
本願発明1は、「スタビライザーの内面には、一対の係止脚が取付部材の取付孔を貫通することを防止するリブが内面から突出するように形成されており、取付部材を係合させた係合状態にある係止脚の先端とリブの頂点との取付部材の板厚方向の距離は、取付部材の板厚より短く設定されており、一対の係止脚は、基端より幅の狭い先端を有し、リブは、一対の係止脚の先端の可動軌跡に対して支柱の軸方向に重ならない場所に形成されている」との事項を有しているのに対して、引用発明は、弾性係止片7の先端と周回基部1aとの第2の板状物Cの板厚方向の距離は、第2の板状物Cの板厚よりも短く設定されているものであり、弾性係止片7の第2板状物Cに対する貫通を防止するのは周回基部1aであり、弾性係止片7の先端の形状及び可動軌跡について特定されていない点。

上記相違点について検討する。
引用文献1には、次の記載がある。
「【0004】
本考案は、・・・一個の鍔を介して背中合せ状態に設けられている一対の脚のいずれの側の取付け板状物に対しても前記鍔が水密的且つ弾性的に密着する留め具の提供を目的としている。」(上記「第5 イ」参照)
「【0006】
【作用】
脚2及び3を係止鍔1の両側に背中合せ状態に有すると共に、係止鍔1に比較的硬い周回基部1aと、弾性周回縁部1bとを設け、この弾性周回縁部1bを断面が略V字状の周回溝4及びこの周回溝4の背面側に周回凸条5を設けた構成とすることによって、脚2の弾性係止片6との間に挾持される第1の板状物Bに係止鍔1の周回凸条5が密に接するように機能する。
又、脚3の弾性係止片7と前記周回基部1aとの間に挾持される第2の板状物Cに弾性周回縁部1bの縁端1b' が密に接するように機能する。」(上記「第5 ウ」参照)
当該記載によれば、係止鍔1の周回基部1aから周回溝4及びこの周回溝4の背面側に周回凸条5を設けた弾性周回縁部1bへと続く構成にしたことにより、第1の板状物Bに係止鍔1の周回凸条5が密に接し、第2の板状物Cに弾性周回縁部1bの縁端1b' が密に接するように機能するものと理解でき、そうすると、周回基部1aを含んだ上記の構成により所期の目的を達成しているものにおいて、あえて周回基部1aを係止鍔1から部分的に突出したリブ形状とすることは、引用文献1に記載も示唆もされていないし、他に積極的な動機付けも見あたらず、当業者にとって容易に想到できることとはいえない。
さらに、引用発明において、周回基部1aをリブ形状とした上で、脚3の弾性係止片7の先端の可動軌跡に対して脚3の軸方向に重ならないような形状とすることも、当業者にとって容易に想到できることとはいえない。
したがって、引用発明を相違点に係る本願発明1の構成とすることは、当業者にとって容易になし得ることとはいえない。
よって、本願発明1は、引用文献1に記載された発明(引用発明)とはいえず、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

2.本願発明2
本願発明2は、本願発明1のすべての事項を備えさらに限定したものであるので、本願発明1と同様に、引用文献1に記載された発明(引用発明)とはいえず、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

第7 原査定について
審判請求時の手続補正により、本願発明1、2は、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1に記載された発明(引用発明)と、上記「第6 1.」で述べた「相違点」で相違するものとなった。したがって、原査定の理由1を維持することはできない。
また、上記「相違点」は、上記「第6 1.」で検討したとおり、当業者であっても容易に想到することができたとはいえず、本願発明1、2は引用発明から容易に発明をすることができたとはいえない。したがって、原査定の理由2を維持することもできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-08-07 
出願番号 特願2012-186507(P2012-186507)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (F16B)
P 1 8・ 121- WY (F16B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 保田 亨介  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 平田 信勝
中川 隆司
発明の名称 クリップ  
代理人 特許業務法人岡田国際特許事務所  

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