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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01R |
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管理番号 | 1330820 |
審判番号 | 不服2017-351 |
総通号数 | 213 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-09-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-01-11 |
確定日 | 2017-08-22 |
事件の表示 | 特願2012-234676号「コネクタのロック部構造」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月12日出願公開、特開2014- 86288号、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年10月24日の出願であって、平成28年5月12日付けで拒絶理由が通知され、同年6月23日に意見書が提出されたが、同年10月31日付け(発送日:同年11月8日)で拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、平成29年1月11日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。 第2 原査定の概要 原査定の概要は次のとおりである。 本願請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1及び2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2008-269946号公報 2.実願昭56-120966号(実開昭58-26178号) のマイクロフィルム 第3 本願発明 本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 断面円形ないし長円形のコネクタハウジングにロック部が外向きに突出して設けられると共に、該ロック部を覆う断面湾曲状のロック覆い壁が設けられ、該ロック覆い壁の前端に、該ロック覆い壁の下端から頂上にかけて後上がりの湾曲部ないし傾斜部が形成され、該湾曲部ないし傾斜部の下端が該コネクタハウジングの前端に段差なく続いたことを特徴とするコネクタのロック部構造。」 第4 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について 引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1) 「【0011】 <実施形態1> 本発明の実施形態1を図1ないし図5によって説明する。本実施形態のコネクタ10は、雌型コネクタを例示するものであり、コネクタハウジング20及び端子金具60を備えて構成される。 【0012】 端子金具60は導電性の金属板を曲げ加工等して形成され、図1に示すように、電線90の端末にゴム栓80とともに接続されている。この端子金具60は前方から相手側の雄端子金具(図示せず)が挿入されて接続される箱形の本体部61を備えた周知の雌側端子金具として構成される。 【0013】 コネクタハウジング20は合成樹脂製であって、図4に示すように、端子金具60を収容可能なキャビティ21を有する端子収容部22と、端子収容部22の周りを取り囲む筒部23とを備える。端子収容部22と筒部23との間には、相手側の雄型コネクタのフード部(図示せず)が嵌入可能となっている。端子収容部22のキャビティ21は、幅方向に一列となって複数配置され、その内壁に、端子金具60を抜け止めするランス24が撓み可能に形成されている。 【0014】 端子収容部22の上面の幅方向略中央にはロックアーム25が弾性撓み可能に形成されている。また、筒部23にはロックアーム25の周りを取り囲むように膨出する膨出部26が前後方向に形成されている。 【0015】 ロックアーム25は、図2に示すように、前後方向に延びるアーム部27と、アーム部27の長さ方向中間部の下面と端子収容部22の上面とに連係される左右一対の支持部28とを備え、支持部28を中心としてアーム部27がシーソ状に揺動変位可能(弾性変位可能)となっている。アーム部27にはその先端部を残してロック溝29が前後に貫通して形成され、アーム部27の先端部にはロック本体部31が形成されている。コネクタハウジング20が相手側の雄型コネクタに正規嵌合されると、相手側のロック突部がロック溝29に嵌ってロック本体部31に弾性係止され、これにより両コネクタハウジングが嵌合状態(離脱規制状態)にロックされるようになっている。 【0016】 また、アーム部27の後端部には両コネクタハウジングの離脱時にロック解除操作を行うための操作部32が形成されている。ロックアーム25のうち操作部32を除く部分は膨出部26によって隠蔽状態に包囲されている一方、操作部32は膨出部26の後端部に開口して形成された切欠凹部33を通して露出されている。 そして、アーム部27の後端部の両側縁には、図5に示すように、幅方向の両側外方に張り出す左右一対の張出部35が形成されている。各張出部35は、両側方へ張り出したあと前方へ向けて細帯状に延出され、その延出端が膨出部26の内壁に一体に連なっている。かかる張出部35は筒部23側との一体化によってロックアーム25全体に適度な剛性を付与する役割を担っている。 【0017】 さて、膨出部26には、ロックアーム25を挟んだ両側に、アーム部27の両側縁との間に間隔をあけつつ前後に沿設される左右一対のリブ36が形成されている。各リブ36は、筒部23の内向き円弧の端縁から上方へ立ち上げられた縦壁として構成されている。また、膨出部26には、切欠凹部33と対応する部位を除いて各リブ36の上端に対して段付き状に連なる梁部37が形成され、この梁部37がロックアーム25(操作部32を除く)の上方を被覆して配置されている。」 (2) 図1及び図2を参照すると、コネクタハウジング20は、断面矩形状で角部が丸みを帯びた筒部23を有していること、該筒部23内の端子収容部22に、ロックアーム25が外向きに突出して設けられていること、及びロックアーム25を覆う、断面が段付き状に連なる直線状の膨出部26が形成されていることが看取される。 上記の記載事項及び図面の記載を総合すると、引用文献1には、「コネクタ」に関して、実施形態1として、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「断面矩形状で角部が丸みを帯びた筒部23と、該筒部23内の端子収容部22にロックアーム25が外向きに突出して設けられると共に、筒部23に該ロックアーム25を覆う断面が段付き状に連なる直線状の膨出部26が設けられるコネクタの構造。」 2 引用文献2について 引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1) 「従来、この種のコネクタは第1図に示すような雌ハウジング1と雄ハウジング2とから構成されるものがあった。該雌ハウジングlの左右側壁には各々2条の切割溝1aが切込まれていてこれによりロッキングアーム1bが形成されている。該ロッキングアーム1bは特にその前方部分が外方に多少撓むことが出来るようになっていて、中央部にロック用溝穴1cが穿設されている。1dはブリッジ状の補強枠であって、上記切割溝1aにより雌ハウジング1の導入部が成形時の変形を起し易かったり、雄ハウジング2挿入時にこじれ易くなっているのを補強すると共に、上記ロッキングアーム1bの撓み過ぎを規制している。1eは逆嵌合防止用の案内溝であって、この中に雄ハウジング2の突条部2aを嵌挿させ、雌ハウジングlに対する雄ハウジング2の嵌合方向を正確にガイドしている。2bは係合突起であって、上記ロッキングアーム1bのロック用溝穴1cに係合するようになっている。」(明細書1ページ17行?2ページ15行) (2) 「しかしながら、上記のような補強枠1dは第2図からも明らかなように、雄ハウジング2の横巾寸法より2L分も外方に突出することになり、しかも雌ハウジング1の導入部の補強効果を増すために寸法Mを出来るだけ小さくしようとすると、雌ハウジング1の横巾が益々大きくなってしまう欠点があった。」(明細書2ページ16?3ページ2行) (3) 第1図を参照すると、雌ハウジング1の左右に、補強枠1dが設けられ、該補強枠1dの前端に外に開口した後ろ広がりの傾斜部が形成され、該傾斜部が雌ハウジング1の前端に段差なく続いているのが看取される。 第5 対比・判断 1 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「筒部23」及び「筒部23内の端子収容部22」は、本願発明の「コネクタハウジング」に相当する。 以下同様に、「ロックアーム25」は、「ロック部」に、 「ロックアーム25を覆う」「膨出部26」は、「ロック部を覆うロック覆い壁」に、それぞれ相当する。 引用発明の「コネクタの構造」は、実質的にコネクタのロックアームの周辺部分の構造であるから、本願発明の「コネクタのロック部構造」に相当する。 以上のことから、本願発明と引用発明とは次の点で一致する。 「コネクタハウジングにロック部が外向きに突出して設けられると共に、該ロック部を覆うロック覆い壁が設けられるコネクタのロック部構造。」 一方で、両者は次の点で相違する。 [相違点1] 本願発明では、コネクタハウジングの断面は「円形ないし長円形」で、ロック覆い壁の断面は「湾曲状」であるのに対して、 引用発明では、筒部23は断面矩形状で角部が丸みを帯びており、膨出部26は断面が段付き状に連なる直線状である点。 [相違点2] 本願発明では、「ロック覆い壁の前端に、該ロック覆い壁の下端から頂上にかけて後上がりの湾曲部ないし傾斜部が形成され、該湾曲部ないし傾斜部の下端が該コネクタハウジングの前端に段差なく続い」ているとの構成を備えているのに対して、 引用発明では、膨出部26が、かかる構成を備えていない点。 2 判断 事案に鑑みて、上記相違点2について先に検討する。 引用文献2に記載された事項において、補強枠1dは、切割溝1aにより雌ハウジング1に形成されるので、雌ハウジング1の導入部が成形時の変形を起し易かったり、雄ハウジング2挿入時にこじれ易くなっているのを補強すると共に、ロッキングアーム1bの撓み過ぎを規制するために設けられるもので(前記「第4 2(1)」を参照。)、また、補強枠1dの前端の後ろ広がりの傾斜部の寸法Mは、傾斜部を設けることで撓んだロッキングアーム1bの先端が補強枠1dの外に臨むようにして、横巾方向のLを小さくするようにし、雌ハウジング1の横巾の増加の防止と補強効果とを考慮したものである(前記「第4 2(2)」を参照。)。 一方、引用発明の膨出部26は、ロックアーム25のうち操作部32を除く部分を隠蔽状態に包囲するためのものであり(前記「第4 1(1)」の段落【0016】を参照。)、図1、2を併せ見ても、ロックアーム25が撓んだ状態にあっても隠蔽しようとするものと理解できる。 このように、引用文献2に記載された事項の補強枠1dは、補強と撓み過ぎの規制のために設けられているのに対して、引用発明の膨出部26は、ロックアーム25の隠蔽のために設けられている点で、両者は設ける目的(課題)が異なる。 そうすると、引用文献2に記載された事項における、補強と撓み過ぎの規制のために設けられた補強枠1dの、横巾の増加の防止と補強効果とを考慮して形成された後ろ広がりの傾斜部を、引用発明におけるロックアーム25の隠蔽のために設けられた膨出部26に、適用する動機付けがあるとはいえない。 したがって、相違点2に係る本願発明の構成は、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 よって、相違点1について判断するまでもなく、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-08-07 |
出願番号 | 特願2012-234676(P2012-234676) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H01R)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 片岡 弘之 |
特許庁審判長 |
平田 信勝 |
特許庁審判官 |
小関 峰夫 中川 隆司 |
発明の名称 | コネクタのロック部構造 |
代理人 | 瀧野 秀雄 |
代理人 | 津田 俊明 |
代理人 | 福田 康弘 |
代理人 | 瀧野 文雄 |
代理人 | 鳥野 正司 |