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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1330876
審判番号 不服2016-6200  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-26 
確定日 2017-08-03 
事件の表示 特願2011-284260「防眩層用組成物、防眩層用組成物の調製方法及び防眩性フィルムの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年7月8日出願公開、特開2013-134358〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
平成23年12月26日 出願
平成27年 6月24日 拒絶理由通知(同年6月30日発送)
平成27年 8月31日 意見書、補正書
平成28年 1月18日 拒絶査定(同年1月26日送達)
平成28年 4月26日 審判請求書、手続補正書
平成29年 1月18日 上申書

2 本願発明
平成28年4月26日付けの手続補正は、請求項1及び6において溶剤の蒸発速度の定義及び測定条件を明確にするものであって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、本願の請求項に係る発明は、上記手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。
「光透過性基材の一方の面上に表面に凹凸形状を有する防眩層を形成するための防眩層用組成物であって、
シリカ微粒子、有機微粒子、バインダー樹脂のモノマー成分及び溶剤を含有し、
前記溶剤は、極性が高くかつ揮発速度が速い溶剤を全溶剤中20質量%以上50質量%以下で含有し、
前記シリカ微粒子は、表面処理されており、該シリカ微粒子の平均1次粒子径が1?100nmであり、
前記有機微粒子の平均粒子径は、0.3?5.0μmである
ことを特徴とする防眩層用組成物。
ただし、前記極性が高くかつ揮発速度が速い溶剤とは、極性が高い溶剤及び揮発速度が速い溶剤の両方の要件を充足する溶剤を意味し、前記極性が高い溶剤とは、溶解度パラメータが10[(cal/cm^(3))^(1/2)]以上の溶剤を意味し、前記揮発速度が速い溶剤とは、相対蒸発速度が150以上の溶剤を意味する。
また、前記相対蒸発速度とは、n-酢酸ブチルの蒸発速度を100とした時の相対蒸発速度をいい、ASTM D3539-87に準拠して、25℃、乾燥空気下におけるn-酢酸ブチルの蒸発時間と各溶剤の蒸発速度を測定し、下記式により算出したものである。
相対蒸発速度=(n-酢酸ブチル90重量%が蒸発するのに要する時間)/(測定溶剤の90重量%が蒸発するのに要する時間)×100」

3 刊行物
(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開平9-251101号公報(以下「刊行物1」という。)には、次の記載がある(下線は審決で付した。以下同じ。)。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は偏光板用保護フィルムに関するものであり、詳しくは、顕著な防眩効果かつ、優れた透過鮮明度を示す偏光板用保護フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】従来偏光板用保護フィルムとしては三酢酸セルロース系樹脂フィルムが用いられてきているが、近年様々な用途、多様な環境で偏光板が使用されるようになり、それに対応した付加価値をもった偏光板用保護フィルムが望まれるようになってきている。そのような付加価値のひとつとして液晶画面の表面のギラツキを抑える防眩加工が挙げられるが、例えば偏光板用保護フィルムの外側最表面にシリカなどの微粒子を存在させて防眩効果を発揮させる手段などがとられていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】液晶画面の表面のギラツキを抑える防眩加工として、偏光板用保護フィルムの外側最表面にシリカ等の微粒子を存在させたものを用いると、防眩効果を発揮することができる反面、微粒子が存在することに由来して偏光板の透過鮮明度が著しく低下してしまっていた。したがって防眩機能を発揮し、かつ仕上がりの偏光板の優れた透過鮮明度を確保する技術を見いだすことが本発明者らの課題であった。」

イ 「【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、(1)平均粒径0.25μm以上10μm以下の粒子、及び、屈折率1.40以上1.60以下、かつ平均粒径0.1μm以下の微粒子を含有する防眩層を有することを特徴とする偏光板用保護フィルムであって、これにより充分な防眩効果を発揮し、かつ優れた透過鮮明度を示す偏光板用保護フィルムを作成することができる。
【0005】また本発明は、(1a)平均粒径0.25μm以上10μm以下の粒子、及び、屈折率1.40以上1.60以下、かつ平均粒径0.1μm以下の親水性微粒子を含有する防眩層を有することを特徴とする偏光板用保護フィルムであって、これにより充分な防眩効果を発揮し、かつ更に優れた透過鮮明度を示す偏光板用保護フィルムを作成することができる。
【0006】また本発明は、(2)膜厚0.5μm以上5.0μm以下であって、平均粒径が当該膜厚の1.1から2倍の酸化珪素粒子と平均粒径0.005μm以上0.1μm以下の酸化珪素微粒子を含有する防眩層を有することを特徴とする偏光板用保護フィルムであって、これにより充分な防眩効果と、透過鮮明度を有する偏光板用保護フィルムを提供することができ、かつこれを用いて作成した偏光板がスパークルの発生を抑えるという点においても優れたものを提供することができる。
【0007】また本発明は、(2a)膜厚0.5μm以上5.0μm以下であって、平均粒径が当該膜厚の1.1から2倍の酸化珪素粒子と平均粒径0.005μm以上0.1μm以下の親水性酸化珪素微粒子を含有する防眩層を有することを特徴とする偏光板用保護フィルムであって、これにより充分な防眩効果を発揮し、かつ、より優れた透過鮮明度を示す偏光板用保護フィルムを作成することができ、かつこれを用いてスパークルの発生を抑えた偏光板を得ることができるのである。
【0008】また本発明は、(2b)膜厚0.5μm以上5.0μm以下であって、平均粒径が当該膜厚の1.1から2倍の酸化珪素粒子と平均粒径0.005μm以上0.1μm以下の酸化珪素微粒子を含有する防眩クリアハード層を有することを特徴とする偏光板用保護フィルムであって、これによって防眩機能を発揮し、かつ透過鮮明性に優れた偏光板用保護フィルムを提供することができ、更に偏光板表面の機械的強度の点でも優れ、かつスパークルの発生を抑えた偏光板を提供することができるのである。
【0009】(1)に記載した本発明に係る「平均粒径0.25μm以上10μm以下の粒子」とは、偏光板用保護フィルムの外側最表面に存在させることによって、これを用いた液晶画面の表面の防眩機能を発揮するものをいい、平均粒径0.25μm以上10μm以下のものをいう。
【0010】この「粒子」としては、無機粒子及び有機粒子が挙げられる。本発明に使用することのできる無機粒子としては酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、硫酸カルシウム等が挙げられる。
【0011】有機粒子としては、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂、シリコン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、メラミン系樹脂、更にポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリ弗化エチレン系樹脂等が使用できる。
【0012】これらのうちでも、本発明の目的の一つである防眩性を達成するには、シリカなどの酸化珪素が特に好ましく用いられる。ここで好ましく用いられる酸化珪素粒子は、合成非晶質シリカのなかでも湿式法によって作られる超微粉含水珪酸が光沢度を下げる効果が大きく好ましい。湿式法とは珪酸ソーダと鉱酸及び塩類を水溶液中で反応させる方法で、例えば富士シリシア化学(株)製のサイリシアや日本シリカ(株)製のNipsil Eなどがある。
……
【0014】次に「屈折率1.40以上1.60以下の平均粒径0.1μm以下の微粒子」とは、前述の「粒子」とともに偏光板用保護フィルムの外側最表面に存在させることによって、「粒子」による防眩効果を発揮させるとともに、当該フィルムを用いて作成した偏光板用保護フィルムに優れた透過鮮明度を付与する効果を発揮するものである。
【0015】この「微粒子」は無機微粒子及び有機微粒子が挙げられる。本発明に使用することができる無機微粒子としては酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、硫酸カルシウム等が挙げられる。
【0016】有機微粒子としては、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂、シリコン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、メラミン系樹脂、更にポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリ弗化エチレン系樹脂等が使用できる。
【0017】これらのうちでも、本発明の目的である防眩性及び透過鮮明性を達成するには、シリカなどの酸化珪素が特に好ましく用いられる。ここで好ましく用いられる酸化珪素微粒子としては、乾式法で作られるシリカが好ましく、燃焼法で作られる無水珪酸が透過鮮明度を高くする効果が大きく特に好ましい。」

ウ 「【0021】本発明に係る防眩層とは、偏光板を取り付けた液晶ディスプレイの見やすさを向上させるために、例えば蛍光灯の光などが画面にうつるのを防ぐ働きをするもので、この光を乱反射させる物質を含む層をいう。」

エ 「【0023】(1a)に記載した本発明に係る親水性微粒子とは、親水性を示す微粒子をいい、この微粒子は(1)で記載した発明に係る微粒子と同義である。
【0024】ここでいう親水性とは水分吸着量が多いものをいうが、具体的には相対湿度80%における水分吸着量が0.5%以上の微粒子をいう。
【0025】本発明ではこのような親水性微粒子を用いるのが好ましいが、さらには水分吸着量が1.5%以上の微粒子を用いると透過鮮明度が優れるという点において、より好ましい。尚、微粒子の水分量はカールフィッシャー水分計で測定した。本発明では、微量水分測定装置CA-06と水分気化装置VA-06(三菱化成(株)製)を用いて測定した。
【0026】親水性微粒子として用いるのがポリメチルアクリレート微粒子や酸化チタン微粒子の場合は、OH基やAl_(2)O_(3)などの金属酸化物による表面処理によって親水性にすることができ、シリカ微粒子の場合は、微粒子表面のシラノール基密度が高いものをいう。」

オ 「【0042】本発明に係る防眩層は透明樹脂フィルムに担持されており、この透明樹脂フィルムとは偏光板用保護フィルムとして用いることのできるものであればいずれでもよく、例えば酢酸セルロース系樹脂フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、ポリアリレート系フィルム及びポリスルホン系フィルムなどが挙げられる。これらのうちでも特に、従来用いられている三酢酸セルロースのような酢酸セルロース系樹脂フィルムや、耐久性及び機械的強度の点で優れるポリカーボネート系フィルムが本発明の効果を充分に奏するうえで好ましい。」

カ 「【0030】防眩層は、例えばジアセチルセルロースのようなバインダー中に酸化珪素粒子や酸化珪素微粒子を含んで所望の膜厚を実現するものであればよく、また、このバインダーとして活性線硬化性樹脂を用いて、塗布後活性線照射により酸化珪素粒子や酸化珪素微粒子含有活性線硬化樹脂層を形成させてもよい。ひとつの層に多機能を付与できるという点において、また、偏光板表面の機械的強度を増すことができるという点においては(2b)の発明のところで述べたようにバインダーとして活性線硬化性樹脂を用いた防眩クリアハード層とするのがより好ましい。
【0031】本発明で用いることのできる活性線硬化性樹脂とは紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応などを経て硬化する樹脂をいう。
【0032】活性線硬化性樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂などが代表的具体例として挙げられるが、紫外線や電子線以外の活性線照射によって硬化する樹脂であってもよい。紫外線硬化性樹脂の例としては紫外線硬化性ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化性アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化性アクリル酸エステル系樹脂、紫外線硬化性メタクリル酸エステル系樹脂、紫外線硬化性ポリエステルアクリレート系樹脂及び紫外線硬化性ポリオールアクリレート系樹脂などが挙げられる。
【0033】本発明に用いることのできる紫外線硬化性ポリオールアクリレート系樹脂としてはトリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタエリスリトール等の光重合モノマーオリゴマーである。これらのポリオールアクリレート系樹脂は高架橋性で硬化性が大きい、硬度が大きい、硬化収縮が小さい、又低臭気性で低毒性であり安全性も比較的高いのが特徴である。
【0034】上記の紫外線硬化性ポリオールアクリレート系樹脂には、その効果を損なわない範囲で他の紫外線硬化性樹脂、例えば紫外線硬化性エポキシ系樹脂を含有して使用してもよい。アクリレート系樹脂は厚膜塗布した硬化塗膜は、硬化収縮によりカーリングが強くなり、取り扱い作業上支障をきたす場合がある。エポキシ系樹脂はアクリレート系樹脂と比べて一般に硬化収縮が小さく硬化塗膜のカーリングも小さい。ここで言う紫外線硬化性エポキシ系樹脂とはエポキシ基を分子内に2個以上含む化合物で、カチオン重合開始剤を含有し、紫外線を照射することにより架橋反応するエポキシ樹脂である。
【0035】本発明に用いることのできる電子線硬化性樹脂の例としては、好ましくは、アクリレート系の官能基を有するもの、例えば、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂などが挙げられる。」

キ 「【0067】
【実施例】以下本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0068】
(紫外線硬化性樹脂組成物Aの調製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート単量体 50重量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート2量体 20重量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート3量体以上の成分 20重量部
1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル 10重量部
ジエトキシベンゾフェノンUV開始剤 2重量部
芳香族スルホニウム塩系UV開始剤 0.5重量部
フッ素系界面活性剤 1重量部
シリカ(平均粒径1.8μm) 2.5重量部
親水性シリカ(平均粒径0.01μm) 2重量部
メチルエチルケトン 50重量部
酢酸エチル 50重量部
イソプロピルアルコール 50重量部
以上を高速撹拌機(TKホモミキサー、特殊機化工業(株)製)で撹拌し、その後衝突型分散機(マントンゴーニー、ゴーリン(株)製)で分散した。」

ク 「【0078】実施例1
以上の塗布液を調製したのち、以下の方法に従って各試料を作成した。
【0079】〈本発明試料1の作成〉ポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量4万、ビスフェノールA型)100重量部、2-(2′-ヒドロキシ-3′,5′-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール1.0重量部、メチレンクロライド430重量部、メタノール90重量部を密閉容器に投入し、加圧下80℃で撹拌しながら完全に溶解した。これを濾過し、33℃でステンレスバンド上に均一に流延し5分間乾燥した。次に65℃で乾燥し、ステンレスバンド上から剥離後、多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ膜厚50μmのポリカーボネートフィルムを得た。尚、このときステンレスバンドに接していた側をb面とし、その反対側をa面とした。
【0080】このポリカーボネートフィルムのb面に紫外線硬化性樹脂組成物Aを乾燥膜厚3.0μmとなるように塗布し、80℃にて5分間乾燥した。続いて60W/cm高圧水銀灯を10cmの距離から4秒間照射して紫外線硬化樹脂層Aを形成した。次にa面に易接着層(a)用塗布液の下層液(1)及び上層液(2)の順に各々20ml/m^(2)塗布し100℃で5分間乾燥し、本発明試料1を得た。
【0081】〈本発明試料2の作成〉本発明試料1で用いた紫外線硬化性樹脂組成物Aにおける親水性シリカ(平均粒径0.01μm)2重量部に代えて疎水性シリカ(平均粒径0.01μm)2重量部を用いる以外は本発明試料1の作成方法と同じにして本発明試料2を得た。
【0082】〈本発明試料3の作成〉本発明試料1で用いた紫外線硬化性樹脂組成物Aにおける親水性シリカ(平均粒径0.01μm)2重量部に代えて親水性ポリメチルメタクリレート(平均粒径0.01μm)2重量部を用いる以外は本発明試料1の作成方法と同じにして本発明試料3を得た。
【0083】〈本発明試料4の作成〉本発明試料1で用いた紫外線硬化性樹脂組成物Aにおける親水性シリカ(平均粒径0.01μm)2重量部に代えて疎水性ポリメチルメタクリレート(平均粒径0.01μm)2重量部を用いる以外は本発明試料1の作成方法と同じにして本発明試料4を得た。
【0084】〈本発明試料5の作成〉本発明試料1で用いた紫外線硬化性樹脂組成物Aにおけるシリカ(平均粒径1.8μm)2.5重量部に代えてポリメチルメタクリレート(平均粒径3.5μm)2.5重量部を用いる以外は発明試料1の作成方法と同じにして本発明試料5を得た。
【0085】〈本発明試料6の作成〉三酢酸セルロース(酸化度61.0%)100重量部、トリフェニルホスフェート9重量部、2-(2′-ヒドロキシ-3′,5′-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール8重量部、メチレンクロライド430重量部、メタノール90重量部を密閉容器に投入し、加圧下80℃で撹拌しながら完全に溶解した。これを濾過し、33℃でステンレスバンド上に均一に流延し、剥離が可能になるまで溶媒を蒸発させ、ステンレスバンド上から剥離後、多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ膜厚80μmの三酢酸セルロースフィルムを得た。このときステンレスバンドに接している面をb面とし、反対側の面をa面とした。
【0086】本発明試料1の作成におけるポリカーボネートフィルムに代えて、この三酢酸セルロースフィルムを用いて、a面に易接着層(b)用塗布液を用いて塗布する以外は本発明試料1の作成方法と同じにして本発明試料6を得た。
【0087】〈本発明試料7の作成〉本発明試料1の作成における膜厚80μmのポリカーボネートフィルムを用い、このフィルムのb面に紫外線硬化性樹脂組成物Bを乾燥膜厚8.0μmとなるように塗布し、80℃にて5分間乾燥した。続いて60W/cm高圧水銀灯を10cmの距離から4秒間照射して紫外線硬化樹脂層Bを形成した。次にa面に易接着層(a)用塗布液の下層液(1)及び上層液(2)の順に各々20ml/m^(2)塗布し100℃で5分間乾燥し、本発明試料7を得た。
【0088】〈比較試料1の作成〉本発明試料1で用いた紫外線硬化性樹脂組成物Aにおける親水性シリカ(平均粒径0.01μm)2重量部に代えて親水性シリカ(平均粒径0.25μm)2重量部を用いる以外は発明試料1の作成方法と同じにして比較試料1を得た。
【0089】〈比較試料2の作成〉本発明試料1で用いた紫外線硬化性樹脂組成物Aにおけるシリカ(平均粒径1.8μm)2.5重量部に代えてポリメチルメタクリレート(平均粒径3.5μm)2.5重量部を用い、また親水性シリカ(平均粒径0.01μm)2重量部に代えて親水性シリカ(平均粒径0.25μm)2重量部を用いる以外は本発明試料1の作成方法と同じにして比較試料2を得た。
【0090】〈比較試料3の作成〉本発明試料1で用いた紫外線硬化性樹脂組成物Aにおける親水性シリカ(平均粒径0.01μm)2重量部に代えて親水性酸化チタン(平均粒径0.03μm、結晶形ルチル型)2重量部を用いる以外は発明試料1の作成方法と同じにして比較試料3を得た。
【0091】〈比較試料4の作成〉本発明試料1で用いた紫外線硬化性樹脂組成物Aにおけるシリカ(平均粒径1.8μm)2.5重量部に代えてシリカ(平均粒径0.2μm)2.5重量部を用いる以外は発明試料1の作成方法と同じにして比較試料4を得た。
【0092】〈比較試料5の作成〉本発明試料1の作成における膜厚80μmのポリカーボネートフィルムを用い、このフィルムのb面に紫外線硬化性樹脂組成物Cを乾燥膜厚3.0μmとなるように塗布し、80℃にて5分間乾燥した。続いて60W/cm高圧水銀灯を10cmの距離から4秒間照射して紫外線硬化樹脂層Cを形成した。次にa面に易接着層(a)用塗布液の下層液(1)及び上層液(2)の順に各々20ml/m^(2)塗布し100℃で5分間乾燥し、比較試料5を得た。」

ケ 「【0093】以上のようにして作成した本発明試料1?7及び比較試料1?5について性能評価を行った。
【0094】〈防眩性能の評価-光沢度の測定-〉偏光板用保護フィルムである本発明試料1?7及び比較試料1?5について光沢度を測定した。測定方法はJISK7105を準用し、測定器東京電色工業(株)製T-2600DA型を使用した(60度光沢)。測定結果を表1に示した。
【0095】〈透過鮮明度の評価〉偏光板用保護フィルムである本発明試料1?7及び比較試料1?5について透過鮮明度を測定した。測定方法は、写像性測定機ICM-1DP(スガ試験機(株)製)を用い、JISK-7105-1981の透過鮮明度の測定に準じた。測定結果を表1に示した。
【0096】透過鮮明度(%)=幅0.125mm、0.5mm、1.0mm、2.0mmの4種類の光学くしのトータル値とした。
【0097】
【表1】

【0098】表1からわかる通り、微粒子が添加されていない比較試料5や屈折率の高すぎる酸化チタンを添加した比較試料3よりも屈折率1.40以上1.60以下の微粒子を添加した本発明試料1、2、3及び4を比較すると、透過鮮明度が劇的に優れているいることがわかる。
【0099】又、微粒子がポリメチルメタクリレートよりもシリカの方がより好ましく、親水性の方がより好ましいことが本発明試料1、2、3および4の透過鮮明度の結果を比較することによりわかる。
……
【0102】粒子はポリメチルメタクリレートよりもシリカの方が好ましいことが本発明試料1と5の透過鮮明度の結果からわかる。」

コ 上記アないしケ(特に、オ、キ、ク)によると、刊行物1には、本発明試料5に適用された紫外線硬化性樹脂組成物として、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が開示されていると認められる。
「 偏光板用保護フィルムとして用いる透明樹脂フィルムに担持される防眩層を形成するための紫外線硬化性樹脂組成物であって、
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート単量体50重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート2量体20重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート3量体以上の成分20重量部、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル10重量部、ジエトキシベンゾフェノンUV開始剤2重量部、芳香族スルホニウム塩系UV開始剤0.5重量部、フッ素系界面活性剤1重量部、ポリメチルメタクリレート(平均粒径3.5μm)2.5重量部、親水性シリカ(平均粒径0.01μm)2重量部、メチルエチルケトン50重量部、酢酸エチル50重量部、及び、イソプロピルアルコール50重量部を高速撹拌機(TKホモミキサー、特殊機化工業(株)製)で撹拌し、その後衝突型分散機(マントンゴーニー、ゴーリン(株)製)で分散した紫外線硬化性樹脂組成物。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である、特開2010-113219号公報(以下「刊行物2」という。)には、次の記載がある。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、防眩性ハードコートフィルムに関する。特に、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等のフラットパネルディスプレイや電子ペーパー等のフレキシブルディスプレイに好適に用いることができる防眩性ハードコートフィルムに関する。」

イ 「【0007】
本発明の目的は、表面硬度、透明性、防眩性、黒色再現性に優れた防眩性ハードコートフィルムを提供することにある。また、本発明の目的は、近年PDPに要求されている透明性と防眩性とを同時に備え、さらに、近年PDPに要求されている黒色再現性を備えた防眩性ハードコートフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、バインダー成分、および有機粒子を構成成分として含む防眩性ハードコート層を有する防眩性ハードコートフィルムにおいて、トータルヘイズおよび表面の光沢度を特定の数値範囲とすることによって、上記目的が達成されることを見出し、本発明に到達した。すなわち本発明は、
(1)透明樹脂基材の少なくとも片面に、バインダー成分と、有機粒子とを構成成分として含む防眩性ハードコート層を有する防眩性ハードコートフィルムであって、トータルヘイズ(Hz)が0.1%以上4.0%以下、60度光沢度が80以上120未満である防眩性ハードコートフィルムである。
【0009】
さらに本発明は、
(2)防眩性ハードコート層の内部ヘイズ(Hihc)が0.5以下であること、
(3)防眩性ハードコート層が、バインダー樹脂と、バインダー成分の質量に対して10質量%以上70質量%以下の無機充填剤とを構成成分として含むバインダー成分、およびバインダー成分の質量に対して0.1質量%以上5.0質量%以下の有機粒子を含む溶液に、さらにバインダー成分の質量に対して0.5質量%以上5.0質量%以下の無機微粒子を後添加してなる塗液を硬化してなる防眩性ハードコート層であること、
(4)有機粒子が、バインダー成分との屈折率差が0.03未満、平均粒径が1μm以上10μm以下であること、
(5)防眩性ハードコート層の膜厚みが、有機粒子の平均粒径の50%以上200%以下の範囲にあること、
(6)防眩性ハードコート層の表面における表面突起高さ分布の半値幅が0.2μm以上0.7μm以下の範囲にあること、
(7)防眩性ハードコート層の表面における中心線平均表面粗さ(Ra)が0.01μm以上0.25μm以下であること
のうち、少なくともいずれか1つの態様を具備することによって、さらに優れた防眩性ハードコートフィルムを得ることができる。」

ウ 「【0032】
[無機充填剤]
本発明におけるバインダー成分は、防眩性ハードコート層の表面硬度および強度の向上効果を高める目的、あるいはカールを抑制する目的で無機充填剤を含有することが好ましい。
【0033】
かかる無機充填剤としては、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物が好ましく、防眩性ハードコート層の表面硬度および強度の向上効果をより高くすることができる。また、透明性および防眩性の向上効果をより高くすることができる。さらに、滑り性に優れる。中でも、ケイ素酸化物が好ましく、表面硬度の向上効果を特に高くすることができ、強度を特に高くすることができる。」

エ 「【0040】
さらに、本発明における無機充填剤は、バインダー樹脂に対する分散性を向上させる目的、防眩性ハードコート層中における分散常態を良好なものとする目的、あるいはバインダー樹脂と架橋点を生成して、防眩性ハードコート層の表面硬度および強度を向上させる目的で、重合性の表面処理剤によって表面処理されている態様が好ましい。
【0041】
かかる表面処理剤としては、例えばシラノール基を含有する、もしくは加水分解することでシラノール基を生成する化合物(以下、シランカップリング剤と表記することがある。)が挙げられ、好ましく用いられる。さらにはシラノール基と、シラノール基以外の重合性官能基とを併せ持ったシランカップリング剤が好ましい。このようなシランカップリング剤におけるシラノール基と無機充填剤の表面に存在する水酸基とは、熱等により架橋反応することができ、それによって無機充填剤の表面にシランカップリング剤が結合した態様となり、有機成分中における分散性を高くすることができる。シラノール基以外の重合性官能基としては、例えばアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、エチニル基、アクリルアミド基、水酸基等を挙げることができる。
【0042】
上記のようなシランカップリング剤は、例えばTSL-8350、TSL-8337、TSL-8370、TSL-8375(以上、GE東芝シリコーン社製)、A-9530(新中村化学製)、A-187(日本ユニカー製)等の市販品として入手することができ、好ましく用いることができる。」

(3)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である、特開2011-112964号公報(以下「刊行物3」という。)には、次の記載がある。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体及び光学積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ、モニター、タッチパネル等の画像表示画面の保護フィルムとして、ハードコート性(耐擦傷性)、帯電防止性(埃付着防止、液晶の帯電による配向の乱れ防止)、反射防止性(視認性向上)、防眩性、防汚性(指紋付着防止)等の性能を有する機能層からなる光学積層体が知られている。
【0003】
上記光学積層体において、特に、画像表示面への外光の反射や外景の映り込みによる視認性の低下を改善するために、表面に凹凸形状を有する防眩層を備えることが知られている。このような防眩層を有する光学積層体は、近年主流となってきた高精細タイプの液晶ディスプレイ等に設置した場合、上記凹凸形状により映像光が散乱し、いわゆるギラツキが発生する。このギラツキを防止するために、光学積層体に内部散乱性を有する層を別に一層形成して二層構造とすることが知られている。
……
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記現状に鑑み、外景の映り込み、ギラツキ及びコントラストの低下を防止し、視認性及び色再現性に優れた光学積層体を提供することを目的とする。」

イ 「【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、光透過性基材上に少なくとも防眩層を有する光学積層体であって、上記防眩層は、上記光透過性基材と反対側表面に凹凸形状を有し、上記凹凸形状は、上記防眩層を構成するバインダー樹脂の相分離により形成された凹凸形状(A)、及び、上記防眩層に含まれる内部散乱粒子により形成された凹凸形状(B)からなり、かつ、十点平均粗さRzが3μm未満であることを特徴とする光学積層体である。」

ウ 「【0040】
上記内部散乱粒子としては、上述の樹脂との親和性と屈折率との関係を満たすものであれば、特に限定されないが、金属酸化物又は有機樹脂ビーズであることが好ましく、有機樹脂ビーズであることがより好ましい。また、上記内部散乱粒子は、樹脂に対する親和性の改善のために表面処理が施されていることが好ましい。
【0041】
上記金属酸化物としては、シリカが好ましい。上記シリカとしては、特に限定されず、結晶性、ゾル状、ゲル状のいずれの状態であってもよいし、不定形、球形であってもよい。
上記シリカの市販品としては、湿式合成不定形シリカ(サイリシア(商品名)、富士シリシア製)、フュームドシリカ(アエロジル(商品名)、デグサ社製)、コロイダルシリカ(MEK-ST(商品名)、日産化学工業)等を挙げることができる。
上記金属酸化物は、樹脂に対する親和性を調整するために表面処理が施されていてもよい。」

4 対比
本願発明と刊行物1発明とを対比する。
(1)刊行物1発明の「偏光板用保護フィルムとして用いる透明樹脂フィルムに担持される防眩層を形成するための紫外線硬化性樹脂組成物」と本願発明の「光透過性基材の一方の面上に表面に凹凸形状を有する防眩層を形成するための防眩層用組成物」とを対比する。
刊行物1発明の「防眩層」は、「ポリメチルメタクリレート(平均粒径3.5μm)」及び「親水性シリカ(平均粒径0.01μm)」からなる粒子を含有する「紫外線硬化性樹脂組成物」により形成されるものであって、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化の際に当該粒子に起因してその表面に凹凸が形成されることは技術常識に照らし明らかであるから、本願発明の「表面に凹凸形状を有する防眩層」に相当する。
刊行物1発明の「防眩層」を「担持」する「偏光板用保護フィルムとして用いる透明樹脂フィルム」は、本願発明の「光透過性基材」に相当し、同様に「防眩層を形成するための紫外線硬化性樹脂組成物」は、「防眩層用組成物」に相当する。
そして、刊行物1発明において「防眩層」が「担持される」のは、「偏光板用保護フィルムとして用いる透明樹脂フィルム」の一方の面であることは自明の事項であるから、刊行物1発明は、「光透過性基材の一方の面上に表面に凹凸形状を有する防眩層を形成するための防眩層用組成物」との本願発明の構成を備えている。

(2)刊行物1発明の「紫外線硬化性樹脂組成物」の組成と本願発明の「防眩層用組成物」の組成を対比する。
刊行物1発明の「紫外線硬化性樹脂組成物」は、「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート単量体」、「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート2量体」、「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート3量体以上の成分」、「1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル」、「ポリメチルメタクリレート(平均粒径3.5μm)」、「親水性シリカ(平均粒径0.01μm)」、「メチルエチルケトン」、「酢酸エチル」及び「イソプロピルアルコール」等の成分を「高速撹拌機(TKホモミキサー、特殊機化工業(株)製)で撹拌し、その後衝突型分散機(マントンゴーニー、ゴーリン(株)製)で分散した」ものであるから、これらの成分を含有しているといえる。
刊行物1発明の「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート単量体」、「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート2量体」、「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート3量体以上の成分」及び「1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル」は、段落【0030】ないし【0034】の記載(上記3(1)カを参照。)及び技術常識に照らせばバインダーとなる樹脂を構成するモノマーであると解されるから、本願発明の「バインダー樹脂のモノマー成分」に相当する。
刊行物1発明の「親水性シリカ(平均粒径0.01μm)」は、親水性シリカの平均粒径が0.01μmであることを意味すると解されるから、本願発明の「前記シリカ微粒子は、表面処理されており、該シリカ微粒子の平均1次粒子径が1?100nmであ」ることと、「シリカ微粒子の平均1次粒子径が1?100nmである」点で共通する。
刊行物1発明の「ポリメチルメタクリレート(平均粒径3.5μm)」は、ポリメチルメタクリレートの平均粒径が3.5μmであることを意味すると解されるから、本願発明の「有機微粒子の平均粒子径は、0.3?5.0μmである」に相当する。
刊行物1発明の「メチルエチルケトン」、「酢酸エチル」及び「イソプロピルアルコール」はいずれも溶剤であると解されるところ、「イソプロピルアルコール」は、「溶解度パラメータが10[(cal/cm^(3))^(1/2)]以上」であり、「ASTM D3539-87に準拠して、25℃、乾燥空気下におけるn-酢酸ブチルの蒸発時間と各溶剤の蒸発速度を測定し」、「相対蒸発速度=(n-酢酸ブチル90重量%が蒸発するのに要する時間)/(測定溶剤の90重量%が蒸発するのに要する時間)×100」の式から算出した「相対蒸発速度が150以上」であることは明らかであるから、本願発明の「極性が高くかつ揮発速度が速い溶剤」に相当する。また、「メチルエチルケトン」及び「酢酸エチル」が「極性が高くかつ揮発速度が速い溶剤」に該当しないことは明らかである。
そして、刊行物1発明において、全溶剤中の「イソプロピルアルコール」の割合を計算すると、50重量部/(50重量部+50重量部+50重量部)×100=33.3重量%となるから、刊行物1発明は、「溶剤は、極性が高くかつ揮発速度が速い溶剤を全溶剤中20質量%以上50質量%以下で含有」するとの本願発明の構成を備えている。

(3)したがって、両者は以下の点で一致している。
(一致点)
「光透過性基材の一方の面上に表面に凹凸形状を有する防眩層を形成するための防眩層用組成物であって、
シリカ微粒子、有機微粒子、バインダー樹脂のモノマー成分及び溶剤を含有し、
前記溶剤は、極性が高くかつ揮発速度が速い溶剤を全溶剤中20質量%以上50質量%以下で含有し、
前記シリカ微粒子の平均1次粒子径が1?100nmであり、
前記有機微粒子の平均粒子径は、0.3?5.0μmである
防眩層用組成物。
ただし、前記極性が高くかつ揮発速度が速い溶剤とは、極性が高い溶剤及び揮発速度が速い溶剤の両方の要件を充足する溶剤を意味し、前記極性が高い溶剤とは、溶解度パラメータが10[(cal/cm^(3))^(1/2)]以上の溶剤を意味し、前記揮発速度が速い溶剤とは、相対蒸発速度が150以上の溶剤を意味する。
また、前記相対蒸発速度とは、n-酢酸ブチルの蒸発速度を100とした時の相対蒸発速度をいい、ASTM D3539-87に準拠して、25℃、乾燥空気下におけるn-酢酸ブチルの蒸発時間と各溶剤の蒸発速度を測定し、下記式により算出したものである。
相対蒸発速度=(n-酢酸ブチル90重量%が蒸発するのに要する時間)/(測定溶剤の90重量%が蒸発するのに要する時間)×100」

(4)他方、両者は以下の点で相違している。
(相違点)
シリカ微粒子に関し、本願発明では、シリカ微粒子は表面処理されているのに対し、刊行物1発明では、親水性シリカである点。

5 判断
(1)相違点について
防眩層用組成物の技術分野において、「シリカ微粒子」を「表面処理」するとは、シリカ微粒子をシランカップリング剤等で処理し、その表面を疎水化することを意味することは当業者にとって自明の事項といえるところ、そのことは、本願明細書の段落【0019】に、「上記表面処理としては、例えば、上記シリカ微粒子を、オクチルシランを有するシランカップリング剤で処理する方法等が挙げられる。ここで、通常、上記シリカ微粒子の表面には水酸基が存在しているが、上記表面処理がされることで上記シリカ微粒子表面の水酸基が少なくなり、上記シリカ微粒子の比表面積が小さくなる。」と記載されていることからも明らかである。
これに対し、刊行物2及び3に記載のように、シリカ微粒子を表面処理し、その表面を疎水化することにより、バインダー樹脂に対する分散性を向上させたり、バインダー樹脂との架橋点を生成して、防眩層の表面硬度及び強度を向上させることは、周知の技術である(刊行物2には、ケイ素酸化物からなる無機充填剤のバインダー樹脂に対する分散性を向上させる目的、あるいはバインダー樹脂と架橋点を生成して、防眩性ハードコート層の表面硬度および強度を向上させる目的で、無機充填剤をシランカップリング剤によって表面処理することが記載されている(上記3(2)ウ、エを参照。)。また、刊行物3には、樹脂に対する親和性の改善のために、シリカからなる内部散乱粒子に表面処理を施すことが記載されている(上記3(3)ウを参照。))。
そこで、刊行物1発明に上記周知技術を適用して、上記相違点に係る本願発明の構成とすることの容易想到性について検討する。
刊行物1には、実施例1として、紫外線硬化性樹脂組成物に用いられる添加粒子の材料や添加微粒子の材料、表面処理がそれぞれ異なる本発明試料1ないし7、比較試料1ないし5を作成し、それらの防眩性能、透過鮮明度を評価した結果が表1に記載されている(上記3(1)キないしケを参照。)。そして、表1からは、添加微粒子として親水性のシリカを用いた本発明試料1の透過鮮明度は82.2であり、添加微粒子として疎水性のシリカを用いた本発明試料1の透過鮮明度は70.5であることがみてとれ、これに関連し、刊行物1の段落【0099】には、「微粒子がポリメチルメタクリレートよりもシリカの方がより好ましく、親水性の方がより好ましいことが本発明試料1、2、3および4の透過鮮明度の結果を比較することによりわかる。」(上記3(1)ケを参照。)と記載されている。以上の記載によれば、刊行物1発明において、親水性シリカに代えて、透過鮮明度に劣る表面処理された疎水性シリカを用いる動機付けはないようにも思われる。
しかし、一方で、液晶画面の表面に適用される偏光板用保護フィルムの防眩層には、耐擦傷性が求められることは周知の課題であり、刊行物1の段落【0008】にも、防眩クリアハード層を有することにより、偏光板表面の機械的強度に優れたものとすることが記載され(上記3(1)イを参照。)、当該課題が示唆されている。そして、刊行物1発明に上記周知技術を適用すれば、「親水性シリカ(平均粒径0.01μm)」の表面が疎水化されることにより、バインダーとの架橋点を生成して、防眩層の表面硬度及び強度を向上させること、すなわち耐擦傷性が高まることは明らかである。
加えて、刊行物1の表1によれば、添加微粒子として親水性のシリカを用いた本発明試料1と、添加微粒子として疎水性のシリカを用いた本発明試料2の透過鮮明度の差を計算すると、82.2-70.5=11.7であるところ、添加粒子としてPMMA(ポリメチルメタクリレート)を用い、添加微粒子として親水性のシリカを用いた、透過鮮明度が74.9である本発明試料5において、親水性のシリカに代えて疎水性のシリカを用いることにより、本発明試料1と本発明試料2との比較と同様に透過鮮明度が11.7下がると仮定しても、透過鮮明度は63.2であって、比較試料1、2、3及び5の透過鮮明度と比べて十分高いといえる。
してみると、刊行物1発明において防眩層の透過鮮明度より耐擦傷性を重視して、「親水性シリカ(平均粒径0.01μm)」を表面処理すること、すなわち上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、刊行物1発明の紫外線硬化性樹脂組成物から形成された防眩層を有する偏光板用保護フィルムが適用される液晶画面の用途等を考慮して、当業者が適宜なし得たことである。

(2)本願発明の効果について
本願発明によってもたらされる効果を全体としてみても、刊行物1発明及び周知技術から当業者が当然に予測できる程度のものであって、格別顕著なものとはいえない。

(3)請求人の主張について
請求人は、
ア 刊行物1では、粒径の異なる2種の微粒子が、いずれも親水性の酸化珪素微粒子が好ましいとされていることから、刊行物1発明に、周知技術であるとされる無機微粒子の表面処理(刊行物2及び3)を組み合わせることが容易であるとは到底考えられない旨(審判請求書6頁21ないし24行)、
イ 本願発明に係る防眩層用組成物において、シリカ微粒子は、防眩層用組成物中では凝集体を形成しているが均一に分散した状態であり、該組成物を用いた塗膜においては特定の凝集状態を形成させることが必要であるのに対し、刊行物1に記載の防眩層を形成するための組成物は、特定の凝集状態を形成させることは一切考慮されておらず、むしろ構成材料を均一に分散させた状態を維持させている旨(平成29年1月18日提出の上申書3頁下から10行ないし下から5行)、主張している。
しかし、アについては上記(1)のとおりであり、イについては、本願発明において、「シリカ微粒子は、防眩層用組成物中では凝集体を形成しているが均一に分散した状態であり、該組成物を用いた塗膜においては特定の凝集状態を形成すること」は特定されていないから、上記請求人の主張は、いずれも採用できない。

(4)小括
よって、本願発明は、当業者が刊行物1発明及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明(本願の請求項1に係る発明)は特許を受けることができないから、請求項2ないし7に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-06-05 
結審通知日 2017-06-06 
審決日 2017-06-19 
出願番号 特願2011-284260(P2011-284260)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 最首 祐樹早川 貴之  
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 清水 康司
中田 誠
発明の名称 防眩層用組成物、防眩層用組成物の調製方法及び防眩性フィルムの製造方法  
代理人 特許業務法人 安富国際特許事務所  
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