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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
管理番号 1330909
審判番号 不服2015-5241  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-03-18 
確定日 2017-08-02 
事件の表示 特願2011-504191「天然のエステル、ワックス、又は油で処理された顔料、それの生産のための工程、及びそれと共に作られた化粧品」拒絶査定不服審判事件〔平成21年10月15日国際公開、WO2009/126859、平成23年 5月26日国内公表、特表2011-516576〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 主な手続の経緯
本願は,国際出願日である平成21年4月10日(パリ条約に基づく優先権主張 平成20年4月11日及び平成21年4月8日,いずれもアメリカ合衆国)にされたとみなされる特許出願であって,平成25年9月11日付けで拒絶理由が通知され,平成26年11月4日付けで拒絶査定がされ,これに対して,平成27年3月18日に拒絶査定不服審判が請求され,平成28年6月29日付けで拒絶理由(以下「本件拒絶理由」という。)が通知され,同年12月21日に意見書が提出されるとともに特許請求の範囲が補正されたものである。

第2 本願発明について
本願の請求項1?9に係る発明は,平成28年12月21日に補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載されている事項により特定されるとおりのものであると認められ,そのうち,請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)及び請求項3に係る発明(同「本願発明3」)は,それぞれ次のとおりである。
「【請求項1】
化粧品の組成物のための処理された顔料であって,
当該処理された顔料がホホバワックスでコートされたものである,処理された顔料。
【請求項3】
化粧品の組成物へと処方された請求項1に記載の処理された顔料が具備された化粧品の組成物であって,
当該化粧品の組成物は,口紅,ルース又はプレスされた粉末,ファンデーション,クリーム又はローションからなる群より選択された,化粧品の組成物。」

第3 本件拒絶理由の概要
本件拒絶理由は,要するに,本願発明1及び3は,本願の優先日前に頒布された刊行物である下記引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,という理由を含むものである。
引用文献1: 特開2002-284643号公報

第4 合議体の認定,判断
1 引用発明
(1) 上記引用文献1には,次の記載がある。(下線は審決で付記。以下同じ。)
・「【請求項1】 実質的に油分を含まない液状の基剤中に,油脂でコーティングした顔料粉末と,キサンタンガムとを分散配合したことを特徴とする液状分散ファンデーション。」
・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,液状ファンデーションに関するものであり,特に基剤中に油分を配合する必要のない液状分散ファンデーションに関する。」
・「【0004】
【発明が解決しようとする課題】これら従来の乳化ファンデーションは,油分が基剤に配合されているため,のびが良くて好まれる反面,べたつき感があり,粘度が低いために顔料粉末や油分が分離するなど安定性が悪いという問題がある。
【0005】本発明は,このような従来の事情に鑑み,液状であって,油分などによるべたつき感が少なく,顔料粉末などの分散性が良く,長期の安定性に優れた液状分散ファンデーションを提供することを目的とする。」
・「【0009】本発明で用いる顔料は,化粧品に一般的に用いられるものであれば特に制限はなく,例えば,酸化チタン,セリサイト,カオリン,ベンガラ,黄酸化鉄,黒酸化鉄,マイカ,亜鉛華,タルク,雲母チタン,炭酸カルシウム,ケイ酸マグネシウム,群青,酸化クロム,酸化コバルト等が挙げられ,その中でもセリサイト,酸化チタン,酸化鉄などが好ましい。…」
・「【0010】顔料粉末をコーティングする油脂としては,ホホバ油,トリ2-エチルヘキサングリセリン,流動パラフィン,トリ(カプリン酸,カプリン酸)グリセリル,マイクロクリスタリンワックス,シリコ-ン油,メチルポリシロキサン,ジカプリン酸ネオペンチルグリコール,シアバター,スクワラン等を挙げることができ,油脂として通常使用されているものであれば特に制限はない。中でも,メチルポリシロキサンなどの低級アルキルシロキサン,ネオペンチルグリコールなどの脂肪酸グリコールエステル,ホホバ油,トリ2-エチルヘキサングリセリン,流動パラフィン,トリ(カプリン酸,カプリン酸)グリセリル,マイクロクリスタリンワックスなどが好ましい。」
・「【0030】
【発明の効果】本発明によれば,油脂でコーティングした顔料粉末を用いることで基剤に油分を配合する必要がなくなり,べたつき感のない優れた使用感が得られると共に化粧効果にも優れるうえ,更にキサンタンガムの添加によって,顔料粉末などの分離沈殿がなく,長期の安定性に優れた液状分散ファンデーションを提供することができる。」

(2) 上記(1)での摘記,特に請求項1の記載から,引用文献1には次の2つの発明が記載されていると認められる。
「液状分散ファンデーションの実質的に油分を含まない液状の基剤中に,キサンタンガムとともに分散配合される顔料粉末であって,当該顔料粉末が油脂でコーティングされたものである,顔料粉末。」(以下「引用発明1」という。)
「実質的に油分を含まない液状の基剤中に,油脂でコーティングした顔料粉末と,キサンタンガムとを分散配合したことを特徴とする液状分散ファンデーション。」(同「引用発明3」。なお,当該引用発明3は,引用文献1の請求項1の記載をそのまま認定したものである。)

2 本願発明1と引用発明1との対比
本願発明1と引用発明1を対比すると,引用発明1の油脂でコーティングされた「顔料粉末」は本願発明1の「処理された顔料」に,「液状分散ファンデーション」は「化粧品の組成物」にそれぞれ相当する。
また,引用発明1の「顔料粉末」は,液状分散ファンデーションに分散配合されるものであることからすれば,液状分散ファンデーション(化粧品の組成物)のためのものであることは明らかである。
さらに,元来,ワックスとは高級脂肪酸と高級アルコールとのエステルからなる融点の高い油脂状の物質をいうこと,また本願明細書にも「ホホバワックス,即ち,水素化されたホホバ油」(【0025】),「(水素化されたホホバ油であるものである)ホホバワックス」(【0026】)等の記載があることからすれば,本願発明1の「ホホバワックス」は,油脂である点で,引用発明1において顔料粉末をコーティングするとされる「油脂」に対応するものである。
そうすると,両発明の一致点,相違点はそれぞれ次のとおりと認めることができる。
・ 一致点
化粧品の組成物のための処理された顔料であって,当該処理された顔料が油脂でコートされたものである,処理された顔料である点。
・ 相違点1
顔料(顔料粉末)をコートする油脂について,本願発明1は「ホホバワックス」と特定しているのに対し,引用発明1はそのような特定事項を有しない点。

3 相違点1についての判断
(1) まず,本願発明1の「ホホバワックス」の技術的意味について考えてみるに,本願明細書の【0025】,【0026】の記載(上記2参照)から,本願発明1において「ホホバワックス」とは「水素化されたホホバ油」をいうと解される。また,ホホバワックス(水素化されたホホバ油)について,ホホバ油に対する水素添加の度合いにより,各種の水素化されたホホバ油が存在することは,本願優先日当時の技術常識である(例えば,審査官が平成25年9月11日付け拒絶理由通知書において引用文献6として引用した特開2002-53425号公報の【0008】?【0011】を参照することができる。)。
(2) そこで,上記(1)で述べたところを踏まえ相違点1について検討するに,引用発明1の顔料粉末をコーティングする「油脂」について,引用文献1には「ホホバ油」の例示があるところ(【0010】),この例示を踏まえて引用発明1の「油脂」としてホホバ油を採用すること,そしてホホバ油の採用にあたり,本願優先日当時に普通に知られているところの水素化されたホホバ油すなわち「ホホバワックス」を用いる程度のことは,当業者であれば想到容易である。
請求人は,本願発明1は「化粧品の組成物のための処理された顔料であって,当該処理された顔料がホホバワックスでコートされたものである」という技術的特徴を有するため,疎水性のものであると共に快い皮膚の感触及び良好な付着を有する処理された顔料及び該処理された顔料を具備する組成物を提供することができるという効果を奏する旨主張するが(平成28年12月21日付け意見書3頁),請求人が主張するような上記効果は,ホホバワックスといった高級脂肪酸と高級アルコールとのエステルからなる融点の高い油脂状の物質によってコーティングされたものが当然に奏する効果であって,何ら格別でない。上記効果は,油脂でコーティングされた顔料粉末である引用発明1も同様に奏するものと認められ,引用文献1ないしは当業者の技術常識から予測しうる範囲のものである。

4 本願発明3と引用発明3との対比
上記2で述べたところを踏まえ本願発明3と引用発明3とを対比すると,両発明の一致点,相違点はそれぞれ次のとおりと認めることができる。
・ 一致点
化粧品の組成物へと処方された,油脂でコートされたものである処理された顔料が具備された化粧品の組成物であって,当該化粧品の組成物がファンデーションである化粧品の組成物である点。
・ 相違点3
顔料(顔料粉末)をコートする油脂について,本願発明3は「ホホバワックス」と特定しているのに対し,引用発明3はそのような特定事項を有しない点。(なお,相違点3の内容は,相違点1と実質的に同じである。)

5 相違点3についての判断
上記4で述べたように,相違点3の内容は,相違点1と実質的に同じである。さすれば,相違点3についても,上記3で述べたことと同様の理由により,当業者であれば想到容易であるといえる。

6 小括
以上のとおり,本願発明1及び3は,引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。

第5 むすび
したがって,本願発明1及び3は,本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明を主たる引用発明として,この引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると,本願の他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-03 
結審通知日 2017-03-07 
審決日 2017-03-21 
出願番号 特願2011-504191(P2011-504191)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 橋本 憲一郎森井 隆信菅野 智子  
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 須藤 康洋
齊藤 光子
発明の名称 天然のエステル、ワックス、又は油で処理された顔料、それの生産のための工程、及びそれと共に作られた化粧品  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  
代理人 大貫 進介  

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