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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1330993
審判番号 不服2016-12282  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-08-12 
確定日 2017-08-29 
事件の表示 特願2014-501419「フレームの確認に用いられている方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月 4日国際公開、WO2012/130094、平成26年 5月 1日国内公表、特表2014-511078、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)3月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年3月31日 中華人民共和国、2011年5月19日 中華人民共和国、2011年7月6日 中華人民共和国、2012年2月8日 中華人民共和国、2012年3月2日 中華人民共和国)を国際出願日とする出願であって、平成27年12月15日付けで拒絶理由が通知され、平成28年3月17日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成28年4月7日付けで拒絶査定されたところ、同年8月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1-15に係る発明は、平成28年3月17日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-15に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明は以下のとおりである(以下、請求項1に係る発明を、「本願発明」という。)。

「【請求項1】
フレーム確認に用いられている方法であって、その特徴は、
即時確認指示をデータフレームの中にキャリーし、前記即時確認指示は、フレーム確認レスポンスを次の時間周期にリターンすることを指示することに用いられ、前記次の時間周期は、上行物理フレーム周期が下行物理フレーム周期と対応し、または下行物理フレーム周期が上行物理フレーム周期と対応し、
前記即時確認指示を持っているデータフレームを送信する。」

第3 原査定の理由の概要
原査定の理由の概要は以下のとおりである。

(進歩性)この出願の請求項1-15に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された引用文献1-4に記載された発明及び引用文献5-6に記載された周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

〈引用文献等一覧〉
1:米国特許出願公開第2005/0111452号明細書
2:米国特許第05528605号明細書
3:米国特許出願公開第2006/0195629号明細書
4:米国特許出願公開第2004/0223506号明細書
5:特開2008-054347号公報(周知技術を示す文献)
6:国際公開第2010/099496号(周知技術を示す文献)

第4 当審の判断
1 引用文献の記載事項、引用発明及び周知技術
(1)米国特許出願公開第2006/0195629号明細書の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された米国特許出願公開第2006/0195629号明細書(原査定の引用文献3。以下、「引用例」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審において付したものである。)。

ア 「[0028] Each frame 200 is preferably made up of a series of wavelets (or radio symbols), with information in the frame 200 being represented by the wavelets or groups of wavelets. As shown in FIG.2, the frame 200 may include a preamble 210, a header 220, and a payload 230. The header 320 can include a source address 240, a destination address 250, acknowledgement policy indicator 260, and other header data 270. 」
(当審訳:「[0028]各フレーム200は、一連のウェーブレット(または無線シンボル)から構成され、フレーム200の情報が、ウェーブレット又はウェーブレットのグループを表すことが好ましい。図2に示すように、フレーム200は、プリアンブル210、ヘッダ220及びペイロード230とを含むことができる。ヘッダ320には、送信元アドレス240、宛先アドレス250、確認ポリシーインジケータ260及び他のヘッダデータ270を含むことができる。」)

イ 「[0032] The acknowledgement policy indicator 260 identifies the acknowledgement policy that will be employed for data frame transmission. This could be a policy of immediate acknowledgement (immediate-ACK), a policy of no acknowledgement (no-ACK), or a policy of delayed acknowledgement (delayed-ACK). In some alternate embodiments delayed acknowledgement is referred to as block-ACK, burst-ACK, or group-ACK.
[0033] When using an immediate-ACK policy, the destination device sends an immediate acknowledgement frame upon successful receipt of a data frame.(以下、略)」
(当審訳:「[0032]確認ポリシーインジケータ260は、データフレーム送信のために使用される確認ポリシーを識別する。即時肯定応答ポリシー(immediate-ACK)、否定応答ポリシー(no-ACK)又は遅延肯定応答ポリシー(delayed-ACK)とすることができる。いくつかの代替実施形態では、遅延肯定応答は、ブロックACK、バーストACK又はグループACKとして表現される。
[0033]即時肯定応答ポリシーを使用する場合、宛先デバイスはデータフレームの受信に成功すると即時肯定応答フレームを送信する。(以下、略)」)

ウ 「[0048] In a first example 301, a data frame is successfully received after an initial transmission using an immediate-ACK policy. 301. In this example, a source device sends a first data frame to a destination device a first time 310_(1), and this data frame is successfully received.
[0049] After an ACK time out period 340 elapses after sending the first data frame the first time 310_(1), the source device receives an acknowledgement frame 320 from the destination device acknowledging receipt of the first data frame. Then after waiting for a next packet delay period 355, the source device sends a second data frame 330 to the destination device.」
(当審訳:「[0048]第1の例301では、データフレームは、即時肯定応答ポリシーを使用して最初の送信後に受信に成功している。301. この例では、送信元デバイスは、宛先デバイスに第1のデータフレーム第1時刻310_(1)を送信し、このデータフレームが正常に受信される。
[0049]第1のデータフレーム第1時刻310_(1)を送信した後に経過したACKタイムアウト期間340の後に、送信元デバイスは、宛先デバイスから第1のデータフレームの受信を確認する肯定応答フレーム320を受信する。そして次のパケット遅延期間355を待って、送信元デバイスは、第2のデータフレーム330を宛先デバイスに送信する。」)

エ 「[0061] In the IEEE 802.15.3 standard, the ACK time out period 340 and the next packet delay period 355 are both set to be a short inter-frame space (SIFS) of about 10 microseconds; the retry wait time 350 is set to be a retry inter-frame space (RIFS) of about 28 microseconds; the minimum wait time 360 is set to be a minimum inter-frame space (MIFS) of about 2 microseconds; and the ACK duration 345 is about 20 microseconds. This makes the immediate ACK time 370 that is allocated for the acknowledgement in an immediate ACK policy equal to about 20 microseconds.」
(当審訳:「[0061]IEEE802.15.3規格では、ACKのタイムアウト期間340と次のパケット遅延期間355は、いずれも約10マイクロ秒のショートインターフレームスペース(SIFS)に設定され、リトライ待機時間350は約28マイクロ秒のリトライインターフレームスペース(RIFS)に設定され、最短待機時間360は約2マイクロ秒の最小インターフレームスペース(MIFS)に設定され、ACK持続時間345は約20マイクロ秒である。これにより、即時肯定応答ポリシーの肯定応答に割り当てられる即時肯定応答時間370は、約20マイクロ秒に等しい。」)

オ 図2及び図3は、下記のとおりである。
図2


図3


(2)引用発明
上記(1)の記載及び各図面並びに当該技術分野の技術常識を考慮すると、以下のことがいえる。

ア 上記(1)ア、イ、ウ、図2及び図3によれば、
(ア)フレーム200は、プリアンブル210、ヘッダ220及びペイロード230とを含み、
(イ)ヘッダ220は、データフレーム送信のために使用される確認ポリシーを識別するための確認ポリシーインジケータ260を含み、
(ウ)確認ポリシーインジケータ260は、即時肯定応答ポリシー(immediate-ACK)とすることができ、
(エ)第1の例301では、データフレームは、即時肯定応答ポリシーを使用して最初の送信後に受信に成功している。
そうすると、引用例には、「即時肯定応答ポリシー(immediate-ACK)をデータフレームに含み」、「即時肯定応答ポリシー(immediate-ACK)を含むデータフレームを送信する」ことが記載されているといえる。

イ 上記(1)イ、ウ及び図3によれば、
(ア)確認ポリシーインジケータ260に即時肯定応答ポリシー(immediate-ACK)を使用する場合、宛先デバイスはデータフレームの受信に成功すると即時肯定応答フレームを送信し、
(イ)第1の例301において、送信元デバイスは、宛先デバイスに、即時肯定応答ポリシー(immediate-ACK)を使用してデータフレームを送信し、
(ウ)宛先デバイスからデータフレームの受信を確認する肯定応答フレーム320を受信する。
また、上記(1)エも参照すれば、上記第1の例は、IEEE802.15.3規格に基づいて、データフレームの受信確認を行う例ということができる。
そうすると、上記「即時肯定応答ポリシー(immediate-ACK)」は、宛先デバイスに、データフレームの受信を確認するための「即時肯定応答フレームを送信することを指示することに用いられる」確認ポリシーインジケータであるといえる。
よって、引用例には、「IEEE802.15.3規格に基づくデータフレームの受信確認に用いられる方法」であって、「即時肯定応答ポリシー(immediate-ACK)は、即時肯定応答フレームを送信することを指示することに用いられ」ることが記載されているといえる。

したがって、引用例には、以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「IEEE802.15.3規格に基づくデータフレームの受信確認に用いられる方法であって、
即時肯定応答ポリシー(immediate-ACK)をデータフレームに含み、
即時肯定応答ポリシー(immediate-ACK)は、即時肯定応答フレームを送信することを指示することに用いられ、
即時肯定応答ポリシー(immediate-ACK)を含むデータフレームを送信する、方法」

(3)特開2008-054347号公報の記載事項
特開2008-054347号公報(原査定の引用文献5。以下、「周知例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審において付したものである。)。

「【0077】
IEEE802.11eで規定されているブロックACKによるフレームシーケンスは、図22のように示される。図22のフレームシーケンスの例は、即時型ブロックACKの場合である。ブロックACKの手順には、2通りの方式が存在し、送信側がブロックACK要求(Block ACK request)を送信してから、受信側が直ちに応答(ブロックACK)を返す即時型タイプと、送信側がブロックACK要求を送信し、受信側がしばらくしてから応答(ブロックACK)を返す遅延型が存在する。本発明における実施形態では、両者いずれの場合にも適応可能である。」

(4)国際公開第2010/099496号の記載事項
国際公開第2010/099496号(原査定の引用文献6。以下、「周知例2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審において付したものである。)。

ア 「[0050] In a Spatial Division Multiple Access (SDMA) scheme, uplink (UL) transmissions from multiple stations (STA) to an access point (AP) should be synchronized. UL transmissions should be synchronized in terms of arrival time at the AP, frequency, received power length of packets, and allocation of spatial streams.
PIGGYBACKING INFORMATION IN TRANSMIT OPPORTUNITIES (TXOPs)
[0051] According to certain aspects of the present disclosure, stations with data to send may send requests for uplink resources. For example, stations may send Allocation Indication (AI) frames to an Access Point (AP) to request spatial streams in an uplink SDMA Transmit Opportunity (TXOP). The AI frames may indicate the requested number of spatial streams in an uplink SDMA TXOP. The AP may respond to the AI frames with Allocation Response (AR) frames, which may specify the granted number of spatial streams.」
(当審訳(特表2012-519426号公報の対応部分を援用):「【0040】
空間分割多元接続(SDMA)方式において、複数の局(STA)からアクセス・ポイント(AP)へのアップリンク(UL)送信は、同期されるべきである。UL送信は、APにおける到着時間、周波数、受信されたパケットの電力長、および空間ストリームの割当ての観点から同期されるべきである。
【0041】
送信機会(TXOP)において情報をピギーバックすること
本開示のある態様にしたがって、送信するためのデータをともなう局は、アップリンク・リソースの要求を送ることができる。例えば、アップリンクSDMA送信機会(TXOP)において空間ストリームを要求するためにアクセス・ポイント(AP)に割当て表示(AI:Allocation Indication)フレームを送信することができる。AIフレームは、アップリンクSDMA TXOPにおいて空間ストリームの要求数を示すことができる。APは、割当て応答(AR)フレームによりAIフレームに応答することができる。これは、空間ストリームの認可された数を指定することができる。」)

イ 「PIGGYBACKING ALLOCATION INDICATION (AI) AND ALLOCATION RESPONSE (AR) FRAMES IN TRANSMIT OPPORTUNITIES (TXOPs)
[0055] Various types of information may be piggybacked in uplink or downlink TXOPs. For example, in the following description, various types of frames may be piggypbacked in existing TXOPs rather than these frames being sent in separate TXOPs. Examples of such frames include, but are not limited to, allocation indication (AI), allocation response (AR), demarcation indication (DI), block acknowledgement (BA), and block acknowledgement request (BAR) frames. As will be described in greater detail below, a wide variety of different combinations of frames may be piggybacked in uplink transmissions, downlink transmissions, or a combination of piggybacked uplink and downlink transmissions.
[0056] FIG. 4 illustrates example operations 400 that may be performed by an AP and station utilizing piggybacked information in TXOPs, in accordance with certain aspects of the present disclosure. As illustrated, operations 402-406 may be performed by an AP, while the operations 408-412 may be performed by one or more stations in parallel.
[0057] At 402, the AP may transmit a Demarcation Indication (DI) frame to one or more stations. As described above, the DI may indicate the start of an uplink SDMA TXOP. The DI may contain information about the uplink SDMA TXOP such as which stations may be involved in the TXOP, the number of spatial streams each station may use, and the like. The DI may be sent as a separate frame in a dedicated downlink TXOP or piggybacked onto a downlink TXOP.
[0058] At 408, a station receives the DI, indicating a start of an uplink TXOP. At 410, the station transmits uplink (UL) data during the uplink TXOP indicated by the DI, with an Allocation Indication (AI) frame piggybacked with the UL data in the TXOP.
[0059] At 404, the AP receives the UL data and a request for one or more uplink streams in a second uplink transmit oppurtunity. For example, a station may send the request as an AI "piggybacked" with UL data send in the first uplink transmit opportunity. In this manner, the station may request (during the first transmit opportunity) resources for transmissions in the second (subsequent) transmit opportunity which may help conserve bandwidth, for example, by avoiding an additional SIFs that might otherwise occur if the reqeuest were not piggybacked.
[0060] At 406, the AP transmits a data acknowledgement (e.g., a block acknowledgement or BA) with a piggybacked Allocation Response (AR). At 412, the station(s) receive the acknowledgements.
[0061] FIG. 5 illustrates an example frame exchange sequence with piggybacked AI and AR frames, in accordance with the operations of FIG. 4. As illustrated, an AP transmits a DI frame 502 (or simply DI) after a backoff period, indicating the start of an upcoming uplink SDMA TXOP. As illustrated, the DI 502 may be used to set the NAV duration sufficient to cover subsequent UL and DL transmissions.
[0062] In the illustrated example, the DI 502 may specify that stations 1 through 4 may transmit during the uplink SDMA TXOP. During the uplink SDMA TXOP, the stations 1 through 4 may send uplink A-MPDUs 504 with data frames and piggybacked AI frames. Each AI frame may specify a new request for an uplink TXOP by the corresponding transmitting station.
[0063] After the end of the uplink SDMA TXOP, the AP may transmit (using SDMA) an A-MPDU 506 to each station containing a Block Acknowledgement (BA) of the UL data and an AR frame in response to the AI sent with the UL data. The type of BA used to acknowledge data in the uplink direction may be High Throughput (HT)- immediate Blok ACK. The ACK policy on uplink frames may serve as an implicit Block ACK Request (Implicit BAR), prompting the AP to respond with a BA even though no explicit BAR is included with the UL data.
[0064] FIG. 6 illustrates another example frame exchange sequence. The illustrated exchange may be derived from the frame exchange sequence in FIG. 5. As illustrated in FIG. 6, the AP may transmit downlink data to stations 1 through 4 by means of a downlink SDMA transmission. Downlink A-MPDUs 610 may aggregate a Block ACK request (BAR) along with downlink (DL) data to each station. The ACK policy on the Data MPDUs may be set to Block ACK, and the ACK policy on the BAR frame may be set to No ACK. The type of Block ACK used in the downlink direction may be High Throughput (HT)-delayed Block ACK, indicating that a BA may be transmitted after some delay.
[0065] Thus, UL A-MPDUs 604 transmitted by the stations may contain BAs as requested by the AP in the previous downlink SDMA transmission. The ACK policy on the uplink data transmissions may be Implicit BAR, indicating that the AP may transmit BAs piggybacked with ARs in downlink transmission 606, following a Short Inter- frame Space (SIFS) after the uplink transmission. The type of Block ACK used in the uplink direction may be HT-immediate Block ACK, indicating the AP may respond with a BA after a SIFS.
[0066] FIG. 7 illustrates another example bidirectional frame exchange sequence. The sequence in FIG. 7 may be created by moving the downlink data transmissions (shown in FIG. 6) to the stations in A-MPDUs 708 containing the downlink BA and AR response to after the uplink A-MPDUs 712. As illustrated, the downlink A-MPDUs 708 may also include BARs. The DL A-MPDUs 708 may follow UL A-MPDUs 712 from the stations that contain BAs, UL data, and AIs. In this example exchange, the BA inside the UL A-MPDUs 712 may acknowledge prior downlink data transmissions (not shown in FIG. 7).
[0067] FIG. 8 illustrates another example bidirectional frame exchange sequence. As illustrated, the sequence in FIG. 8 may begin with a DI 802, signaling a UL TXOP. The DI 802 may be used to set the Network Allocation Vector (NAV) protection time for subsequent UL and DL transmissions. During the UL TXOP, stations may send UL transmissions 804 containing UL data with piggybacked AIs. The UL transmissions 804 may be followed by DL transmissions 816 containing BAs, DL data to the stations, and ARs. The UL transmissions 804 may be followed by separate UL BAs 834 sent by the stations, acknowledging the DL data sent in the DL transmissions 816 (e.g., with an implicit BAR).」
(当審訳(特表2012-519426号公報の対応部分を援用):「
【0045】
送信機会(TXOP)において割当て表示(AI)および割当て応答(AR)フレームをピギーバッキングすること
様々なタイプの情報は、アップリンクまたはダウンリンクTXOPにおいてピギーバックされることができる。例えば、以下の説明において、様々なタイプのフレームは、これらのフレームが別個のTXOPにおいて送られるのではなく、既存のTXOPにおいてピギーバックされることができる。そのようなフレームの事例は、次のものには制限されないが、割当て表示(AI)、割当て応答(AR)、区分表示(DI)、ブロック・アックノレッジメント(BA:block acknowledgement)、およびブロック・アックノレッジメント要求(BAR:block acknowledgement request)フレームを含む。以下でより詳細に説明されるように、フレームの広く様々な異なる組み合わせは、アップリンク送信、ダウンリンク送信、またはピギーバックされたアップリンク送信およびダウンリンク送信の組み合わせにおいてピギーバックされることができる。
【0046】
図4は、本開示のある態様にしたがって、TXOPにおいてピギーバックされた情報を利用するAPおよび局によって行われることができるオペレーション400の一例を例示する。例示されるように、オペレーション402-406は、APによって行われることができるが、オペレーション408-412は、1つまたは複数の局によって並列に行われることができる。
【0047】
402において、APは、1つまたは複数の局に区分表示(DI)フレームを送信することができる。上で説明されたように、DIは、アップリンクSDMA TXOPの開始を示すことができる。DIは、TXOPにおいてどの局が必要であり得るか、各々の局が使用することができる空間ストリームの数などのようなアップリンクSDMA TXOPについての情報を含むことができる。DIは、ダウンリンクTXOPの上にピギーバックされたまたは専用のダウンリンクTXOPにおいて別個のフレームとして送られることができる。
【0048】
408において、局は、アップリンクTXOPの開始を示すDIを受信する。410において、局は、TXOPにおいてULデータとピギーバックされた割当て表示(AI)フレームにより、DIによって示されるアップリンクTXOPの間にアップリンク(UL)データを送信する。
【0049】
404において、APは、第2のアップリンク送信機会においてULデータおよび1つまたは複数のアップリンク・ストリームの要求を受信する。例えば、局は、第1のアップリンク送信機会において送信されるULデータと「ピギーバックされた(piggybacked)」AIとして要求を送ることができる。このようにして、局は、第2の(その後の)送信機会における送信のためのリソースを(第1の送信機会の間に)要求することができる。これは、例えば、要求がピギーバックされなかった場合に回避しなければ生じ得る追加のSIFを回避することにより帯域幅を保護することを助けることができる。
【0050】
406において、APは、ピギーバックされた割当て応答(AR)によりデータ・アックノレッジメント(例えば、ブロック・アックノレッジメントまたはBA)を送信する。412において、局は、アックノレッジメントを受信する。
【0051】
図5は、図4のオペレーションにしたがって、ピギーバックされたAIおよびARフレームをともなうフレーム交換シーケンスの一例を例示する。例示されるように、APは、バックオフ期間(backoff period)の後に、到来するアップリンクSDMA TXOPの開始を示すDIフレーム502(または、単にDI)を送信する。例示されるように、DI502は、その後のULおよびDL送信をカバーするのに十分なNAV持続時間を設定するために使用されることができる。
【0052】
例示された事例において、DI502は、局1乃至4がアップリンクSDMA TXOPの間に送信することを指定することができる。アップリンクSDMA TXOPの間に、局1乃至4は、データフレームおよびピギーバックされたAIフレームをともなうアップリンクA-MPDU504を送ることができる。各々のAIフレームは、対応する送信局によってアップリンクTXOPの新しい要求を指定することができる。
【0053】
アップリンクSDMA TXOPの終わりの後に、APは、ULデータとともに送られたAIに応答してARフレームおよびULデータのブロック・アックノレッジメント(BA)を含むA-MPDU506を各々の局へ(SDMAを使用して)送信することができる。アップリンク方向においてデータをアックノレッジするために使用されるBAのタイプは、高スループット(HT:High Throughput)-即時ブロックACKであり得る。アップリンク・フレーム上のACKポリシーは、ULデータに明示のBARが含まれていなくともBAにより応答するようAPに促す暗黙の(implicit)ブロックACK要求(暗黙のBAR)として役に立つことができる。
【0054】
図6は、フレーム交換シーケンスの他の一例を例示する。例示された交換は、図5におけるフレーム交換シーケンスから導き出されることができる。図6において例示されるように、APは、ダウンリンクSDMA送信の手段によって局1乃至4にダウンリンクデータを送信することができる。ダウンリンクA-MPDU610は、各々の局へダウンリンク(DL)データと共にブロックACK要求(BAR)を集めることができる。データMPDU上のACKポリシーは、ブロックACKに設定されることができ、BARフレーム上のACKポリシーは、NO ACKに設定されることができる。ダウンリンク方向において使用されるブロックACKのタイプは、BAが多少の遅延の後に送信されることができることを示す高スループット(HT)-遅延ブロックACKであり得る。
【0055】
したがって、局によって送信されるUL A-MPDU604は、以前のダウンリンクSDMA送信においてAPによって要求されるようにBAを含むことができる。アップリンクデータ送信上のACKポリシーは、アップリンク送信の後の短いインターフレーム・スペース(SIFS:Short Inter-frame Space)に続くダウンリンク送信606においてARとピギーバックされたBAをAPが送信することができることを示す暗黙のBARであり得る。アップPリンク方向において使用されるブロックACKのタイプは、APがSIFSの後にBAにより応答することができることを示すHT-即時ブロックACKであり得る。
【0056】
図7は、双方向フレーム交換シーケンスの他の一例を例示する。図7におけるシーケンスは、アップリンクA-MPDU712の後に応答するダウンリンクBAおよびARを含むA-MPDU708において局へダウンリンクデータ送信(図6において図示されている)を移動させることによって作成されることができる。例示されるように、ダウンリンクA-MPDU708はまた、BARを含むことができる。DL A-MPDU708は、BA、ULデータ、およびAIを含む局からのUL A-MPDU712に続いてもよい。この交換の事例において、UL A-MPDU712内のBAは、以前のダウンリンクデータ送信(図7において図示されていない)をアックノレッジすることができる。
【0057】
図8は、双方向フレーム交換シーケンスの他の一例を例示する。例示されるように、図8におけるシーケンスは、UL TXOPを知らせるDI802により始まってもよい。DI802は、それに続くUL送信およびDL送信のためのネットワーク割当てベクトル(NAV: Network Allocation Vector)保護時間を設定するために使用されることができる。UL TXOPの間に、局は、ピギーバックされたAIをともなうULデータを含むUL送信804を送ることができる。UL送信804の後に、BA、局へのDLデータ、およびARを含むDL送信816が続いてもよい。UL送信804の後に、DL送信816において(例えば、暗黙のBARにより)送られるDLデータをアックノレッジする、局によって送られる別個のUL BA834が続いてもよい。」)

(5)周知技術
上記周知例1には、IEEE802.11eで規定されているブロックACKによるフレームシーケンスであって、即時型ブロックACKの場合が開示されている。
また、上記周知例2には、APがアップリンクSDMA TXOP(Spatial Division Multiple Access transmission opportunity)を指定するものであって、アップリンク方向においてデータをアックノレッジするために使用されるBAのタイプは高スループット(HT:High Throughput)-即時ブロックACKであるものが開示されている。ここで、TXOPは、無線LANにおいて、端末がチャネルを使用できる期間である。
そうすると、上記周知例1及び2に開示された技術事項は、いずれも無線LANを前提としたものといえ、周知例1の「即時型ブロックACK」及び周知例2の「即時ブロックACK」は、いずれも即時確認応答といえる。
そして、上記周知例1及び2によれば、「無線LANにおいて、即時確認指示に対して、即時確認応答を返す技術」は、周知技術であるということができる。

2 本願発明と引用発明との対比
本願発明の「即時確認指示」は、「フレーム確認レスポンスを次の時間周期にリターンすることを指示することに用いられ、前記次の時間周期は、上行物理フレーム周期が下行物理フレーム周期と対応し、または下行物理フレーム周期が上行物理フレーム周期と対応」するとしているところ、本願発明にいう「上行物理フレーム周期」及び「下行物理フレーム周期」とは、ダウンリンク又はアップリンクの物理フレームが周期的に送受信される通信方式における「ダウンリンク物理フレーム」の周期及び「アップリンク物理フレーム」の周期と解することができる。
一方、引用発明は、IEEE802.15.3規格に基づくデータフレームの受信確認に用いられる方法であるところ、IEEE802.15.3規格は、ダウンリンク又はアップリンクの物理フレームが周期的に送受信される通信方式でないことは技術常識である。
そうすると、本願発明と引用発明とは、前提とする通信方式が相違するものの、引用発明の「データフレーム」、「即時肯定応答ポリシー(immediate-ACK)」及び「即時肯定応答フレーム」は、それぞれ本願発明の「データフレーム」、「即時確認指示」及び「フレーム確認レスポンス」に対応し、「即時確認指示をデータフレームの中にキャリーし、前記即時確認指示は、フレーム確認レスポンスをリターンすることを指示することに用いられ」る点で共通するといえる。

したがって、本願発明と引用発明との一致点・相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「フレーム確認に用いられている方法であって、その特徴は、
即時確認指示をデータフレームの中にキャリーし、前記即時確認指示は、フレーム確認レスポンスをリターンすることを指示することに用いられ、
前記即時確認指示を持っているデータフレームを送信する。」

[相違点]
即時確認指示が、本願発明では、「フレーム確認レスポンスを次の時間周期にリターンすることを指示することに用いられ、前記次の時間周期は、上行物理フレーム周期が下行物理フレーム周期と対応し、または下行物理フレーム周期が上行物理フレーム周期と対応」するのに対し、引用発明では、そのような特定がない点。

3 判断
上記2(1)で述べたとおり、引用発明は、ダウンリンク又はアップリンクの物理フレームが周期的に送受信される通信方式を前提とするものではないから、引用発明において、上記相違点に係る構成を採用することが容易になし得るということはできない。

また、上記周知技術が前提とする無線LANが、ダウンリンク又はアップリンクの物理フレームが周期的に送受信される通信方式でないことは技術常識であり、引用発明に上記周知技術を適用したとしても、相違点に係る構成に至らないことは明らかである。

よって、本願発明は、当業者が、引用発明及び引用文献5-6に記載された周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものということはできない。

また、原査定の引用文献1、2及び4に記載された発明も、上記相違点に係る構成を有するものではないから、同様に、当業者が、引用発明及び引用文献5-6に記載された周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものということはできない。

したがって、本願発明は、当業者が、引用文献1-4に記載された発明及び引用文献5-6に記載された周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものということはできない。

本願の請求項5、請求項9及び請求項12に係る発明は、それぞれ「フレーム確認に用いられる装置」、「フレーム確認に用いられる方法」及び「フレーム確認に用いられる装置」であって、上記相違点に係る特定事項と同様の特定事項を含む発明であるから、請求項1に係る発明と同様、当業者が引用文献1-4に記載された発明及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものということはできない。

また、請求項2-4、請求項6-8、請求項10-11及び請求項13-15は、それぞれ請求項1、請求項5、請求項9及び請求項12をさらに限定したものであるので、同様に、当業者が引用文献1-4に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものということはできない。

第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1-15に係る発明は、いずれも、当業者が引用文献1-4に記載された発明及び引用文献5-6に記載された周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-08-15 
出願番号 特願2014-501419(P2014-501419)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04W)
最終処分 成立  
前審関与審査官 石田 昌敏  
特許庁審判長 近藤 聡
特許庁審判官 北岡 浩
山本 章裕
発明の名称 フレームの確認に用いられている方法及び装置  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  

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