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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01N
管理番号 1331011
審判番号 不服2016-6464  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-28 
確定日 2017-08-09 
事件の表示 特願2011-159592「反応性加熱システムを備える排気システム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 2月 9日出願公開、特開2012- 26447〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本件出願は、平成23年7月21日(パリ条約による優先権主張2010年7月22日、ドイツ連邦共和国)の出願であって、平成27年4月28日付けで拒絶理由が通知され、平成27年8月26日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成28年1月19日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成28年4月28日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されたものである。

2 本願発明
本件出願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、願書に最初に添付された明細書及び図面並びに平成28年4月28日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載によれば、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。
なお、本件出願の特許請求の範囲の請求項1は、上記平成28年4月28日に提出された手続補正書によって記載事項は変更されておらず、平成27年8月26日に提出された手続補正書により補正された記載事項のままである。

「 【請求項1】
動力車両における内燃機関用の排気システムのシステムコンポーネントであって、
閉じられた空洞構造(2)を備えており、
前記閉じられた空洞構造(2)の壁は反応チャンバー(5)を囲んでおり、
前記反応チャンバー(5)内には、該反応チャンバー内で反応熱の放出のための発熱反応として互いに反応する固定性システムコンポーネント及び可動性システムコンポーネントを含む反応性加熱システムにおける少なくとも一つの固定性システムコンポーネント(6)が配置されており、
前記閉じられた空洞構造(2)の壁は、波形構造である安定化構造(10)を含む、
ことを特徴とするシステムコンポーネント。」

3 引用刊行物
(1)引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物であって、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である実願平3-89311号(実開平5-38314号)のCD-ROM(以下、「引用刊行物」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【産業上の利用分野】
この考案は、自動車エンジンの排気経路に設けられる触媒を早期に活性化する触媒の早期活性化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガソリン・エンジンを燃焼して走行する自動車の排気ガスは、HCとCOの酸化還元反応を3元触媒によって行うことによってエミッションを低減している。しかし、3元触媒は高温度域で活性化して触媒としての働きを行うために、冷間始動時にはその役目を果たさない。
【0003】
すなわち、エンジンの停止中は3元触媒は常温であり、触媒としての働きをしないが、エンジンを始動すると、エンジンから排気される排気ガスによって触媒が加熱され、約350℃に達すると、触媒がHCとCOの酸化還元反応を行うが、その温度まで上昇するのに約3分の時間が必要である。
【0004】
したがって、エンジンを始動後、触媒の温度が上昇するまでに多くのHC,COが大気中に放出されてしまうという問題があり、触媒の早期活性化が要望されている。
・・・略・・・
【0009】
【考案が解決しようとする課題】
このように水素吸蔵合金の反応熱を利用することにより、電力を使用することなく、エンジンの冷却水、オイルあるいは吸気等を加熱する加熱装置は公知であるが、エンジンを始動後、触媒の温度が上昇するまでに多くのHC,COが大気中に放出されてしまうという問題を解決したものはないのが現状である。
【0010】
この考案は、前記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、エンジンを始動後、触媒の温度を早期に上昇させ、触媒の活性化を図ることができる触媒の早期活性化装置を提供することにある。」(段落【0001】ないし【0010】)

イ 「【0011】
【課題を解決するための手段】
この考案は、前記目的を達成するために、請求項1は、エンジンの排気経路に設けられ内部に触媒を収容した内筒と、この内筒を覆うように設けられ内部に前記触媒を加熱する水素吸蔵合金を収容した外筒との二重構造とし、この外筒の軸方向両端側に、一端が前記内筒に固定され他端が外筒に固定され、内筒および外筒の軸方向に伸縮自在なベローズを設け、さらに前記水素吸蔵合金に水素を供給し、この水素吸蔵合金に水素反応を起こして反応熱を発生させて前記触媒を活性化する水素ガス供給手段とを備える。
【0012】
請求項2は、エンジンの排気経路に設けられ内部に触媒を収容した内筒と、この内筒を覆うように設けられ内部に前記触媒を加熱する低温活性形と高温活性形の少なくとも2種類の水素吸蔵合金および水素ガスを収容した外筒との二重構造とし、この外筒に前記低温活性形の水素吸蔵合金を加熱する電気ヒータを設ける。さらに、この外筒の軸方向両端側に、一端が前記内筒に固定され他端が外筒に固定され、内筒および外筒の軸方向に伸縮自在なベローズを備える。
【0013】
【作用】
請求項1は、エンジンの始動信号等によって水素を水素吸蔵合金に供給すると、水素吸蔵合金は化学変化し、その際に反応熱を発生する。この反応熱によって触媒が加熱され、早期に活性化される。また、水素吸蔵合金が発熱すると、内筒および外筒が熱膨張するが、その膨張をベローズによって吸収し、熱歪を防止する。」(段落【0011】ないし【0013】)

ウ 「【0016】
図1?図4は第1の実施例を示し、1は自動車のガソリン・エンジンであり、2はエンジン1から排気される排気ガスを排出する排気経路としての排気管である。排気管2の途中には内筒3が設けられ、この内筒3の内部には3元触媒4が設けられている。さらに、この内筒3の外側にはZr・Ti・Fe・V・Cr系の水素吸蔵合金5が設けられている。
【0017】
また、6は水素供給手段としての水素ボンベであり、この水素ボンベ6は水素配管7を介して前記水素吸蔵合金5に連通している。水素配管7の途中には電磁開閉弁8が設けられ、この電磁開閉弁8は自動車の運転席に設けられるエンジンキー9を介してバッテリー10に電気的に接続されている。
【0018】
前記エンジンキー9はOFF,ACC,ON,IGNの端子を有しており、可動接点9aが前記ON端子9bに接したとき、つまりIGNスイッチがONする前に電磁開閉弁8に開弁信号が入力されるようになっている。
【0019】
前記内筒3にはこれを覆うように外筒11が設けられ、内筒3と外筒11との間に環状空間部12が形成されている。この環状空間部12の両端部には開口を閉塞するためのバックアップリング13が設けられている。
【0020】
このバックアップリング13は金属板で、その表面には水素ガスを透過しにくい材料のコーティング膜が施されている。さらに、バックアップリング13の外周縁および内周縁には熱膨張率の高い銅材料のガスケット14,14が装着され、前記内筒3と外筒11との間を密封している。
【0021】
前記バックアップリング13の外側には前記内筒3の外周部の全周に亘ってベローズ15が設けられている。このベローズ15の一端部は前記内筒3の外周面に溶接され、他端部は前記外筒11の内周面に溶接されている。このベローズ15は内筒3および外筒11の軸方向に伸縮自在であり、内筒3および外筒11の熱膨張を吸収するとともに、排気ガス圧の変動による3元触媒4の振動を吸収する役目をしている。
【0022】
さらに、前記バックアップリング13とベローズ15との間にはシム15aが介在されている。このように内筒3の外周には外筒11とバックアップリング13によって密封された環状空間部12が形成され、この環状空間部12の内部には前記水素吸蔵合金5が収容されている。
【0023】
さらに、前記環状空間部12の内部には複数本のパイプ16が貫通して設けられ、これらパイプ16には透孔16aが穿設されている。そして、このパイプ16の基端部が前記水素配管7と接続されている。
【0024】
次に、前述のように構成された触媒の早期活性化装置の作用について説明する。まず、エンジンの停止中においては、3元触媒4の温度が図4に示すように、Taであるとすると、水素吸蔵合金5が水素を吸蔵するのに必要な最低圧力がPaとなる。ここで、エンジン1を始動するためにエンジンキー9を入力し、可動接点9aがON端子9bに接触すると、電磁開閉弁8が開弁する。
【0025】
電磁開閉弁8が開弁すると、水素ボンベ6から圧力がPa以上に加圧された水素ガスが水素配管7を介して環状空間部12の内部の水素吸蔵合金5に供給される。
【0026】
水素吸蔵合金5に水素ガスが供給されると、図1に示すように、水素吸蔵合金5は水素ガスを取り込んで化学変化し、その際に反応熱を発生する。この反応熱は内筒3を介して3元触媒4が加熱されて触媒が早期に活性化される。
【0027】
ここで、水素吸蔵合金5が、Zr・Ti・Fe・V・Cr系の場合、7.6kcal/molH2 であり、3元触媒4が活性化する温度350℃まで上昇するために必要な熱量30kcalは約20gの合金反応で賄うことができる。
【0028】
3元触媒4が活性化し、エンジン1等の暖気が終了して定常運転が可能になると、図2に示すように、今度はエンジン1から排気される排気ガスの熱によって触媒温度はTbとなり、水素吸蔵合金5内に吸蔵された水素ガスがPbの圧力になるまで放出され、水素配管7を介して水素ボンベ6に戻る。
【0029】
ここで、電磁開閉弁8を閉弁すると、水素ボンベ6の内部には次に水素吸蔵合金5に反応を行わせるのに十分な圧力を持った水素ガスが貯蔵される。したがって、ヒータや高周波を用いることなく、水素吸蔵合金5の反応熱によって3元触媒4を早期に活性化できる。
【0030】
また、水素吸蔵合金5が化学変化を起こし、その反応熱によって内筒3および外筒11が加熱され、熱膨張を起こし、熱膨張率の違いにより、熱応力が発生するが、内筒3と外筒11とはベローズ15によって連結されているため、ベローズ15が伸縮して熱膨張を吸収し、熱歪の発生を防止できる。」(段落【0016】ないし【0030】)

エ 「【0040】
【考案の効果】
以上説明したように、この考案の請求項1によれば、エンジンの排気経路に設けた触媒を加熱する水素吸蔵合金を設け、この水素吸蔵合金に水素を供給し、この水素吸蔵合金に水素反応を起こして反応熱を発生させて前記触媒を活性化することにより、ヒータや高周波を用いることなく、水素吸蔵合金の反応熱によって触媒を早期に活性化できる。したがって、エンジンを始動後、触媒の温度が上昇するまでに多くのHC,COが大気中に放出されてしまうという公害問題を解決することができる。また、水素吸蔵合金が化学変化を起こし、その反応熱によって内筒および外筒が加熱され、熱膨張を起こし、熱膨張率の違いにより、熱応力が発生するが、内筒と外筒とはベローズによって連結されているため、ベローズが伸縮して熱膨張を吸収し、熱歪の発生を防止できる。」(段落【0040】)

(2)上記(1)及び図面の記載から分かること
ア 上記(1)アないしエ並びに図1及び2の記載(特に、段落【0001】、【0002】、【0011】、【0016】及び【0040】並びに図1及び2の記載)によれば、引用刊行物には、自動車におけるエンジン用の排気システムの触媒の早期活性化装置が記載されていることが分かる。
ここで、引用刊行物の段落【0002】及び【0016】並びに図1及び2の記載によれば、自動車におけるエンジンから出た排気ガスは、排気管2の途中に設けられた内筒3の内部に収容された3元触媒4によってHCとCOの酸化還元反応が行われ、サイレンサーを通って、大気中に放出されるのであるから、自動車におけるエンジン用の排気システムが記載されているといえる。

イ 上記(1)ウ及び図1ないし3の記載(特に、段落【0019】及び【0022】並びに図1ないし3の記載)によれば、触媒の早期活性化装置において、密封された環状空間部12を備えていることが分かる。

ウ 上記(1)ウ及び図1ないし3の記載(特に、段落【0016】、【0019】、【0020】及び【0022】並びに図1ないし3の記載)によれば、触媒の早期活性化装置において、密封された環状空間部12を形成する内筒3、外筒11並びに外周縁及び内周縁にガスケット14が装着されたバックアップリング13は反応熱の発生のための室を囲んでいることが分かる。

エ 上記(1)イないしエ及び図1ないし3の記載(特に、段落【0011】、【0016】、【0019】、【0022】、【0023】、【0026】及び【0040】並びに図1ないし3の記載)によれば、触媒の早期活性化装置において、反応熱の発生のための室内には、該反応熱の発生のための室内で反応熱の発生のための発熱反応として互いに反応する水素吸蔵合金5及び水素ガスを含む加熱装置における少なくとも一つの水素吸蔵合金5が配置されていることが分かる。

オ 上記(1)イないしエ及び図1ないし3の記載(特に、段落【0011】、【0019】ないし【0022】、【0030】及び【0040】並びに図1ないし3の記載)によれば、触媒の早期活性化装置において、バックアップリング13の外側には、シム15aを介在させて、内筒3の外周部の全周に亘って、一端部は内筒3の外周面に溶接され、他端部は外筒11の内周面に溶接されているベローズ15が設けられていることが分かる。

(3)引用発明
上記(1)及び(2)を総合して、本願発明の表現に倣って整理すると、引用刊行物には、次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「自動車におけるエンジン用の排気システムの触媒の早期活性化装置であって、
密封された環状空間部12を備えており、
前記密封された環状空間部12を形成する内筒3、外筒11並びに外周縁及び内周縁にガスケット14が装着されたバックアップリング13は反応熱の発生のための室を囲んでおり、
前記反応熱の発生のための室内には、該反応熱の発生のための室内で反応熱の発生のための発熱反応として互いに反応する水素吸蔵合金5及び水素ガスを含む加熱装置における少なくとも一つの水素吸蔵合金5が配置されており、
前記バックアップリング13の外側には、シム15aを介在させて、前記内筒3の外周部の全周に亘って、一端部は前記内筒3の外周面に溶接され、他端部は前記外筒11の内周面に溶接されているベローズ15が設けられている、触媒の早期活性化装置。」

4 対比
本願発明(以下、「前者」ともいう。)と引用発明(以下、「後者」ともいう。)とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・後者における「自動車」は前者における「動力車両」に相当し、以下同様に、「エンジン」は「内燃機関」に、「排気システム」は「排気システム」に、「触媒の早期活性化装置」は「システムコンポーネント」に、「密封された」は「閉じられた」に、「環状空間部12」は「空洞構造(2)」に、「密封された環状空間部12を形成する内筒3、外筒11並びに外周縁及び内周縁にガスケット14が装着されたバックアップリング13」は「閉じられた空洞構造(2)の壁」に、「反応熱の発生のための室」は「反応チャンバー(5)」に、「発生」は「放出」に、「水素吸蔵合金5」は「固定性システムコンポーネント」に、「水素ガス」は「可動性システムコンポーネント」に、「加熱装置」は「反応性加熱システム」に、「ベローズ15」は「波形構造である安定化構造(10)」に、それぞれ相当する。

・後者における「前記バックアップリング13の外側には、シム15aを介在させて、前記内筒3の外周部の全周に亘って、一端部は前記内筒3の外周面に溶接され、他端部は前記外筒11の内周面に溶接されているベローズ15が設けられている」は、前者における「前記閉じられた空洞構造(2)の壁は、波形構造である安定化構造(10)を含む」に、「閉じられた空洞構造の壁の所定箇所に波形構造を有する安定化構造が設けられている」という限りにおいて一致する。

したがって、両者は、
「動力車両における内燃機関用の排気システムのシステムコンポーネントであって、
閉じられた空洞構造を備えており、
前記閉じられた空洞構造の壁は反応チャンバーを囲んでおり、
前記反応チャンバー内には、該反応チャンバー内で反応熱の放出のための発熱反応として互いに反応する固定性システムコンポーネント及び可動性システムコンポーネントを含む反応性加熱システムにおける少なくとも一つの固定性システムコンポーネントが配置されており、
閉じられた空洞構造の壁の所定箇所に波形構造を有する安定化構造が設けられている、システムコンポーネント。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
「閉じられた空洞構造の壁の所定箇所に波形構造を有する安定化構造が設けられている」ことに関し、本願発明においては、「前記閉じられた空洞構造(2)の壁は、波形構造である安定化構造(10)を含む」のに対して、引用発明においては、「前記バックアップリング13の外側には、シム15aを介在させて、前記内筒3の外周部の全周に亘って、一端部は前記内筒3の外周面に溶接され、他端部は前記外筒11の内周面に溶接されているベローズ15が設けられている」点(以下、「相違点」という。)。

5 判断
(1)上記相違点について検討する。
熱交換器の一般的な技術に関して、熱膨張による応力を低減するために、熱交換器を形成する空洞構造の長手方向の壁自体に波形構造である安定化構造を設けること(すなわち、熱交換器を形成する空洞構造の壁が、波形構造である安定化構造を含むようにすること)は、本件出願の優先日前にごく普通に行われていること(以下、「慣用手段」という。例えば、特開2006-105464号公報(特に、段落【0065】及び図2)、特開昭63-15001号公報(特に、2ページ左上欄7ないし9行及び第4図)及び実願昭58-132276号(実開昭60-43882号)のマイクロフィルム(特に、明細書1ページ19行ないし2ページ2行及び第1図)等参照。)である。
ここで、動力車両における排気システムの熱交換器において、熱膨張による応力を低減するために、熱交換器を形成する空洞構造の長手方向の壁自体に波形構造である安定化構造を設けた例は、本件出願の優先日前に周知(以下、「設計例」という。例えば、何れも前掲した慣用手段の例示文献である特開2006-105464号公報(特に、段落【0065】及び図2)及び実願昭58-132276号(実開昭60-43882号)のマイクロフィルム(特に、明細書1ページ19行ないし2ページ2行及び第1図)等参照。)である。
また、動力車両における排気システムの熱交換器において、熱交換器を形成する空間構造の長手方向の壁自体に波形構造を適用した例は、本件出願の優先日前に周知(以下、「適用例」という。例えば、前掲した設計例の例示文献のほか、特開2007-51576号公報(特に、段落【0001】及び【0026】ないし【0028】並びに図5)、特開2000-38964号公報(特に、請求項2、段落【0011】及び【0021】並びに図1)及び実願昭60-141927号(実開昭62-52771号)のマイクロフィルム(特に、明細書2ページ4ないし15行及び4ページ2ないし7行並びに第1図)等参照。)である。
ひるがえって、引用発明における「バックアップリング13の外側には、シム15aを介在させて、内筒3の外周部の全周に亘って、一端部は前記内筒3の外周面に溶接され、他端部は外筒11の内周面に溶接されているベローズ15が設けられている」という上記相違点に係る事項は、密封された環状空間部12を形成する内筒3、外筒11並びに外周縁及び内周縁にガスケット14が装着されたバックアップリング13のうち、密封された環状空間部12の長手方向に直交する方向にある外周縁及び内周縁にガスケット14が装着されたバックアップリング13の部分(以下、「前者の部分」という。)に安定化構造における波形構造を適用したものということができるところ、設計例及び適用例を考慮すると、慣用手段のように、熱交換器を形成する空洞構造の長手方向の壁の部分(以下、「後者の部分」)に安定化構造である波形構造を設けるように設計変更する、すなわち、安定化構造に関する波形構造の適用箇所を前者の部分から後者の部分に変更することに伴い安定化構造の具体的構成として慣用手段を採用することは、当業者であれば格別困難なくなし得ることである。
そうすると、引用発明において、設計例及び適用例を考慮して、慣用手段を適用することにより、外周縁及び内周縁にガスケット14が装着されたバックアップリング13、シム15a並びにベローズ15からなる構造に代えて、密封された環状空間部12の外筒11(閉じられた空洞構造の壁)が、波形構造である安定化構造を含むようにし、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

(2)そして、本願発明は、全体としてみても、引用発明、慣用手段、設計例及び適用例から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

(3)したがって、本願発明は、引用発明、慣用手段、設計例及び適用例に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本件出願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-07 
結審通知日 2017-03-14 
審決日 2017-03-28 
出願番号 特願2011-159592(P2011-159592)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石川 貴志菅家 裕輔谷川 啓亮  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 槙原 進
松下 聡
発明の名称 反応性加熱システムを備える排気システム  
代理人 井関 勝守  

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