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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H03M
管理番号 1331014
審判番号 不服2016-7749  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-26 
確定日 2017-08-09 
事件の表示 特願2013-223339「ターボ符号を実装する場合に使用するパリティビットのストリームにおける問題のあるパンクチャパターンの検出,回避および/または訂正」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 1月30日出願公開,特開2014- 17883〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は,2003年12月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2002年12月16日 米国,2003年1月30日 米国,2003年5月15日 米国,2003年8月11日 米国)を国際出願日とする出願である特願2005-508547号の一部を,平成21年7月22日に新たな特許出願としたものである特願2009-171342号の一部を,平成22年5月27日に新たな特許出願としたものである特願2010-121336号の一部を,平成25年10月28日に更に新たな特許出願としたものであって,平成26年10月16日付けで拒絶理由が通知され,平成27年1月28日付けで手続補正がされ,同年3月16日付けで最後の拒絶理由が通知され,同年6月24日付けで意見書が提出され,同年8月7日付けで最後の拒絶理由が通知され,同年11月18日付けで手続補正がされたが,平成28年1月21日付けで補正の却下の決定がされ,同日付けで拒絶査定がされ,これに対し,同年5月26日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。


2 本願発明
本願の請求項1-6に係る発明は,平成27年1月28日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定されるところ,請求項1は次のとおりである。
「無線通信において使用する装置であって,
系統的なビットをインタリーブするように構成された第1のインターリーバと,
第1のパリティビットストリームをインタリーブするように構成された第2のインターリーバと,
第2のパリティビットストリームをインタリーブするように構成された第3のインターリーバと,
前記インタリーブされた系統的なビット,前記インタリーブされた第1のパリティビットストリーム,および前記インタリーブされた第2のパリティビットストリームを,バッファリングするように構成されたバッファと,
複数の冗長型に基づいて,送信のためのビットを選択するように構成されたレートマッチングユニットであって,前記複数の冗長型のうちの少なくとも1つは,第1および第2のパリティビットについて系統的なビットを選択し,前記複数の冗長型のうちの少なくとも1つは,系統的なビットについて第1および第2のパリティビットを選択する,レートマッチングユニットと,
を備える装置。」

ここで,レートマッチングユニットについての「前記複数の冗長型のうちの少なくとも1つは,第1および第2のパリティビットについて系統的なビットを選択し,前記複数の冗長型のうちの少なくとも1つは,系統的なビットについて第1および第2のパリティビットを選択する」なる記載は,日本語として技術的内容が不明確であり,また,発明の詳細な説明には当該記載は存在しない。
しかしながら,平成27年1月28日付け及び平成27年6月24日付け意見書において,当該記載の根拠は本願明細書の段落0165,0166,0175?0179,表1であると釈明されており,平成28年7月7日付けで手続補正された審判請求書の請求の理由において「すなわち,本願請求項1における「複数の冗長型に基づいて,送信のためのビットを選択するように構成されたレートマッチングユニットであって,前記複数の冗長型のうちの少なくとも1つは,第1および第2のパリティビットについて系統的なビットを選択し,前記複数の冗長型のうちの少なくとも1つは,系統的なビットについて第1および第2のパリティビットを選択する,レートマッチングユニット」の記載は,「複数の冗長型に基づいて,送信のためのビットを選択するように構成されたレートマッチングユニットであって,前記複数の冗長型のうちの少なくとも1つは,第1および第2のパリティビットよりも優先して系統的なビットを選択し,前記複数の冗長型のうちの少なくとも1つは,系統的なビットよりも優先して第1および第2のパリティビットを選択する,レートマッチングユニット」ということもできるものです。現在の記載においてもこのような解釈は支持されているものと考えますが,もしこの記載では不明確とのご判断であれば,出願人は上記のように補正を行う用意もございます。」と主張されており,本願明細書の当該箇所の開示内容及び上記主張を考慮すると,請求項1の上記記載は,「前記複数の冗長型のうちの少なくとも1つは,第1および第2のパリティビットよりも優先して系統的なビットを選択し,前記複数の冗長型のうちの少なくとも1つは,系統的なビットよりも優先して第1および第2のパリティビットを選択する」の誤記,或いは少なくとも「前記複数の冗長型のうちの少なくとも1つは,第1および第2のパリティビットよりも優先して系統的なビットを選択し,前記複数の冗長型のうちの少なくとも1つは,系統的なビットよりも優先して第1および第2のパリティビットを選択する」ことを含むと解するのが相当である。

以上の解釈に基づき,本願発明は,以下のとおりのものと認める。
「無線通信において使用する装置であって,
系統的なビットをインタリーブするように構成された第1のインターリーバと,
第1のパリティビットストリームをインタリーブするように構成された第2のインターリーバと,
第2のパリティビットストリームをインタリーブするように構成された第3のインターリーバと,
前記インタリーブされた系統的なビット,前記インタリーブされた第1のパリティビットストリーム,および前記インタリーブされた第2のパリティビットストリームを,バッファリングするように構成されたバッファと,
複数の冗長型に基づいて,送信のためのビットを選択するように構成されたレートマッチングユニットであって,前記複数の冗長型のうちの少なくとも1つは,第1および第2のパリティビットよりも優先して系統的なビットを選択し,前記複数の冗長型のうちの少なくとも1つは,系統的なビットよりも優先して第1および第2のパリティビットを選択する,レートマッチングユニットと,
を備える装置。」


3 引用発明及び周知技術
原査定の拒絶理由に引用されたTechnical Specification Group Radio Access Network; High Speed Downlink Packet Access: Physical Layer Aspects(Release 5)([当審仮訳]:技術仕様グループ無線アクセスネットワーク;高速ダウンリンクパケットアクセス:物理層の側面(リリース5)),3GPP TR 25.858,3GPP,2002年3月,V5.0.0(以下,「引用例」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(1)「

」(8?9ページ)
([当審仮訳]:
5.5 物理レイヤハイブリッドARQの機能
物理層ハイブリッドARQの機能は,リリース99のレートマッチングを拡張したものである。ハイブリッドARQの機能は,チャネル(ターボ)符号器の出力におけるビット数をHS-DSCH物理チャネルの総ビット数に合わせる。ハイブリッドARQの機能は,パラメータRV(冗長バージョン)によって制御される。すなわち,物理層ハイブリッドARQの機能の出力における正確なビットのセットは,入力ビット数,出力ビット数及びRVパラメータに依存する。
図2に示すように,物理層ハイブリッドARQの機能は,2つのレートマッチング段階から構成される。
第1レートマッチング段階は,出力ビット数がHS-DSCH TTIにおいて利用可能な物理チャネルのビット数に一致しないことを除いては,リリース99のレートマッチング機能と同一である。代わりに,出力ビット数を利用可能なUEのソフトバッファリング能力に合わせて,それについての情報が高位レイヤによって供給される。ここで,入力ビット数がUEのソフトバッファリング能力を超えない場合には,第1レートマッチング段階は透過的であることに留意されたい。
第2レートマッチング段階は,第1レートマッチング後のビットの数を,HS-DSCH TTIにおいて利用可能な物理チャネルのビット数に合わせる。第2レートマッチングもまた,リリース99のレートマッチングアルゴリズムを使用する。しかし,レートマッチングは,第1レートマッチング段階によってパンクチャされなかったビットのみを考慮し,特定の送信に使用されるレートマッチングパラメータは,冗長バージョン(RV)のパラメータによって制御される。

(図2は省略。)

5.5.1 第1レートマッチング段階のパラメータ(UEバッファレートマッチング)
第1レートマッチング段階のパラメータは,以下に詳述するようにパラメータの変更により[2]の4.2.7.2.2.3節と同様に決定される。
HARQチャネルnのソフト合成のためにUEで利用可能なソフトビットの数をN_(UE,n)とし,転送フォーマットlのTrChiにおけるレートマッチング前の1TTI内の符号化ビットの数をN_(i, l)^(TTI)とする。
N_(UE,n)がN_(i, l)^(TTI)より大きいか又は等しい場合,すなわち,TTIの全てのターボ符号化されたビットを格納することができる場合,第1レートマッチング段階は透過的となる。これは,例えば,e_(minus)=0と設定することによって達成することができる。反復が実行されないことに留意されたい。
N_(UE,n)がN_(i, l)^(TTI)より小さい場合には,パリティビットストリームは,TTIあたりのパンクチャされるビットの総数を次式のように設定することによって,[2]の4.2.7.2.2.3節と同様にパンクチャされる。
ΔN_(il)^(TTI) = N_(UE,n) - N_(i, l)^(TTI) )

「Figure 2」(図2)によれば,「physical-layer Hybrid ARQ functionality」(物理レイヤハイブリッドARQの機能)として,「Systematic bits」(系統的なビット),「Parity 1 bits」(パリティ1ビット),及び「Parity 2 bits」(パリティ2ビット)が「First Rate Matching」(第1レートマッチング)に入力され,そこで「Parity 1」(パリティ1ビット)「Parity 2」(パリティ2ビット)については「RM_P1_1」「RM_P2_1」で処理され,さらに「Virtual IR Buffer」(仮想IRバッファ)に入力され,その出力がさらに「Second Rate Matching」(第2レートマッチング)に入力されることがみてとれる。

(2)「

」(9?10ページ)
([当審仮訳]:
5.5.2 第2レートマッチング段階のパラメータ(チャネルレートマッチング)
HS-DSCHの転送チャネルのためのHARQの第2段階のレートマッチングは,以下の特定のパラメータでTS25.212の4.2.7.5に記述された一般的な方法で行われる。
第2レートマッチング段階のパラメータは,RVのパラメータsおよびrの値に依存する。パラメータsは,0または1の値をとり,自己復号可能なビット(s=1)と非自己復号可能なビット(s=0)とを区別することができる。パラメータr(範囲0?r_(max)-1)は,パンクチャリングの場合には初期誤り変数e_(ini)を変更する。反復する場合には,両方のパラメータrおよびsが,初期誤り変数e_(ini)を変更する。パラメータX,e_(plus)およびe_(minus)は,以下の表1のとおりに計算される。
第2レートマッチング前のビット数を,系統的なビットに対してはN_(sys),パリティ1のビットに対してはN_(p1),パリティ2のビットに対してはN_(p2)でそれぞれ表す。CCTrCHに使用される物理チャネルの数をPで表す。N_(data)は,1つの無線フレームにおけるCCTrCHに対して利用可能なビット数であり,N_(data)=P×3×N_(data1)と定義する。ここで,N_(data1)はTS25.212で定義される。レートマッチングのパラメータは以下のとおりに求められる。
N_(data)≦N_(sys)+N_(pl)+N_(p2)に対して,パンクチャリングは第2レートマッチング段階で実行される。再伝送において伝送される系統的なビットの数は,自己復号可能なタイプの伝送に対しては,N_(t,sys)=mim{N_(sys),N_(data)}であり,非自己復号可能の場合は,N_(t,sys)=max{N_(data)-(N_(p1)+N_(p2)),0}である。
N_(data)>N_(sys)+N_(pl)+N_(p2)に対して,第2レートマッチング段階において反復が行われる。すべてのビットストリームにおける同様の反復レートが,伝送される系統的なビットの数を,(N_(t,sys)についての数式は省略。)に設定することによって達成される。
伝送内のパリティビット数は,パリティ1およびパリティ2のビットに対して,それぞれ(N_(t,p1)についての数式及びN_(t,p2)についての数式は省略。)である。
下記の表1は,第2レートマッチング段階のためのパラメータ選択の結果の要約である。表中のパラメータαは,パリティ1に対してα=2,パリティ2に対してα=1を使用するよう選択される。

(表1は省略。)

レートマッチングのパラメータe_(ini)は,RVのパラメータrおよびsに応じて,各ビットストリームに対して,
パンクチャリング,すなわち,N_(data)≦N_(sys)+N_(pl)+N_(p2)の場合には,(e_(ini)(r)についての数式は省略。)を使用して計算し,および反復,すなわち,N_(data)>N_(sys)+N_(pl)+N_(p2)の場合には,(e_(ini)(r)についての数式は省略。)を使用して計算する。ただし,r∈{0,1,・・・,r_(max)-1}であり,およびr_(max)はrを変化させることによって可能となる冗長型の合計数である。ここで,r_(max)は変調モードに応じて変化することに留意されたい。
注:モジュロ演算に対して,以下の説明を加える。すなわち,(x mod y)の値は,厳密に0?y-1の範囲にある(すなわち,-1mod10=9)。 )

上記(1),(2)の記載及び図面並びに当業者の技術常識を考慮すると,
a 引用例は3GPPの技術仕様グループ無線アクセスネットワーク;高速ダウンリンクパケットアクセス:物理層の側面(リリース5)に関する技術レポートであり,無線通信において使用する装置に関する技術仕様が記載されていることは当業者に明らかである。

b 上記(1)の記載によれば,図2の仮想IRバッファは,複数の系統的なビット,複数の第1のパリティビット,および複数の第2のパリティビットを,バッファリングするように構成されたバッファといえる。

c 上記(2)には,第2レートマッチング段階において,N_(data)≦N_(sys)+N_(pl)+N_(p2)ではRVのパラメータsに基づいてパンクチャリングが実行され,N_(data)>N_(sys)+N_(pl)+N_(p2)では反復が行われることが記載されており,無線通信において使用する装置がそのようなレートマッチングを行う手段を有していることは自明である。
そして,上記(2)の記載によれば,第2レートマッチング段階におけるパンクチャリングでは,再伝送において伝送される系統的なビットの数は,自己復号可能なタイプ(s=1)の伝送に対しては,N_(t,sys)=mim{N_(sys),N_(data)}であり,非自己復号可能の場合(s=0)は,N_(t,sys)=max{N_(data)-(N_(p1)+N_(p2)),0}である。
してみると,引用例には,「パラメータs(s=0,1)を含むRVのパラメータに基づいて,送信のためのレートマッチングを行う手段であって,前記sが1では,再伝送において伝送される系統的なビットの数がN_(t,sys)=mim{N_(sys),N_(data)}となるようにパンクチャリングを行い,前記sが0では,再伝送において伝送される系統的なビットの数がN_(t,sys)=max{N_(data)-(N_(p1)+N_(p2)),0}となるようにパンクチャリングを行う,レートマッチングを行う手段」が記載されていると認められる。

以上を総合すると,引用例には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「無線通信において使用する装置であって,
複数の系統的なビット,複数の第1のパリティビット,および複数の第2のパリティビットを,バッファリングするように構成された仮想IRバッファと,
パラメータs(s=0,1)を含むRVのパラメータに基づいて,送信のためのレートマッチングを行う手段であって,前記sが1では,再伝送において伝送される系統的なビットの数がN_(t,sys)=mim{N_(sys),N_(data)}となるようにパンクチャリングを行い,前記sが0では,再伝送において伝送される系統的なビットの数がN_(t,sys)=max{N_(data)-(N_(p1)+N_(p2)),0}となるようにパンクチャリングを行う,レートマッチングを行う手段と,
を備える装置。」


同じく原査定の拒絶理由に引用された特開2001-57521号公報(以下,「周知例1」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(3)「




同じく原査定の拒絶理由に引用されたNortel Networks,Proposal for rate matching for Turbo Codes,3GPP R1-99467,1999年5月12日(利用可能日),URL http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/wg1_rl1/TSGR1_04/Docs/Pdfs/(以下,「周知例2」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(4)「

」(3ページ)

上記(3)の図5,(4)のFIGURE 1及び当業者の技術常識を考慮すると,「ターボ符号器の出力である系統的なビットに対するチャネルインターリーバ,第1のパリティビットに対するチャネルインターリーバ,および第2のパリティビットストリームに対するチャネルインターリーバを備え,それぞれインタリーブした後に,レートマッチングを行うこと。」は周知である(以下,「周知事項1」という。)。


4 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると,
a 引用発明の「複数の系統的なビット」,「複数の第1のパリティビット」,「複数の第2のパリティビット」,「レートマッチングを行う手段」を,それぞれ「系統的なビット」,「第1のパリティビットストリーム」,「第2のパリティビットストリーム」,「レートマッチングユニット」と称することは任意である。

b 本願発明の「前記インタリーブされた系統的なビット,前記インタリーブされた第1のパリティビットストリーム,および前記インタリーブされた第2のパリティビットストリームを,バッファリングするように構成されたバッファ」は,明らかに本願の図10の「仮想のIRのバッファ615」を含むものである。
一方,引用発明は,「複数の系統的なビット,複数の第1のパリティビット,および複数の第2のパリティビットを,バッファリングするように構成された仮想IRバッファ」を備えるものである。
したがって,両者は,下記の相違点は別として,「系統的なビット,第1のパリティビットストリーム,および第2のパリティビットストリームを,バッファリングするように構成されたバッファ」を備える点で一致している。

c 本願発明の「複数の冗長型に基づいて,送信のためのビットを選択するように構成されたレートマッチングユニットであって,前記複数の冗長型のうちの少なくとも1つは,第1および第2のパリティビットよりも優先して系統的なビットを選択し,前記複数の冗長型のうちの少なくとも1つは,系統的なビットよりも優先して第1および第2のパリティビットを選択する,レートマッチングユニット」は,請求人の主張もそうであるように,本願明細書の【0141】,【0165】?【0179】,表1の記載を根拠とするものと認められる。
すなわち,本願発明の「複数の冗長型」は,冗長型(RV)のパラメータsが0,1の場合を含むものである。そして,「前記複数の冗長型のうちの少なくとも1つは,第1および第2のパリティビットよりも優先して系統的なビットを選択し,前記複数の冗長型のうちの少なくとも1つは,系統的なビットよりも優先して第1および第2のパリティビットを選択する」は,特に,【0165】の「第2レートマッチング段階のパラメータは,RVのパラメータsおよびrの値に依存する。パラメータsは,0または1の値をとり,系統的なビット(s=1)に優先順位をつける伝送と系統的ではないビット(s=0)に優先順位をつける伝送とを区別することができる。」,【0167】の「N_(data)≦N_(sys)+N_(pl)+N_(p2)に対して,パンクチャリングは第2レートマッチング段階で実行される。伝送において伝送される系統的なビットの数は,系統的なビットを優先する伝送に対しては,N_(t,sys)=min{N_(sys),N_(data)}であり,系統的ではないビットを優先させる伝送に対しては,N_(t,sys)=max{N_(data)-(N_(p1)+N_(p2)),0}である。」の記載に対応するものと認められる。

一方,引用例には,当該記載とほぼ同内容の以下の記載(上記3(2)参照。)がある。
「第2レートマッチング段階のパラメータは,RVのパラメータsおよびrの値に依存する。パラメータsは,0または1の値をとり,自己復号可能なビット(s=1)と非自己復号可能なビット(s=0)とを区別することができる。」,「N_(data)≦N_(sys)+N_(pl)+N_(p2)に対して,パンクチャリングは第2レートマッチング段階で実行される。再伝送において伝送される系統的なビットの数は,自己復号可能なタイプの伝送に対しては,N_(t,sys)=mim{N_(sys),N_(data)}であり,非自己復号可能の場合は,N_(t,sys)=max{N_(data)-(N_(p1)+N_(p2)),0}である。」

これらに記載中の「N_(data)≦N_(sys)+N_(pl)+N_(p2)」とは,系統的なビットの数(N_(sys))と第1のパリティビットの数(N_(pl))と第2のパリティビットの数(N_(p2))の総和が,1つのTTI(すなわち,フレーム。)におけるHS-DSCH(すなわち,CCTrCH。)に対して利用可能なビット数(N_(data))よりも大きい場合(すなわち,パンクチャリングが行われる場合。)を意味していることは明らかである。
そして,N_(t,sys)=mim{N_(sys),N_(data)}は,N_(sys)とN_(data)のうちの小さい方がN_(t,sys) として送信される系統的なビットの数となることを示しているから,系統的なビットの数が利用可能なビット数以上の場合(N_(sys)≧N_(data))は,系統的なビットのみが送信されて第1,2のパリティビットは送信されず(N_(t,sys)=N_(data)),系統的なビットの数が利用可能なビット数より小さい場合(N_(sys)<N_(data))は,全ての系統的なビットの他に第1,2のパリティビットが(N_(data)-N_(sys))個送信されることが明らかである。すなわち,系統的なビットが第1,2のパリティビットよりも優先的に送信されるものである。
一方,N_(t,sys)=max{N_(data)-(N_(p1)+N_(p2)),0}は,N_(data)-(N_(p1)+N_(p2))と0のうちの大きい方がN_(t,sys) として送信される系統的なビットの数となることを示しているから,第1,2のパリティビットの数の和が利用可能なビット数以上の場合(N_(data)≦(N_(p1)+N_(p2)))は,系統的なビットは送信されず(N_(t,sys)=0),第1,2のパリティビットの数の和が利用可能なビット数より小さい場合(N_(data)>(N_(p1)+N_(p2)))は,第1,2のパリティビットの他に系統的なビットが(N_(data)-(N_(p1)+N_(p2)))個送信されることが明らかである。すなわち,第1,2のパリティビットが系統的なビットよりも優先的に送信されるものである。
また,系統的なビットは自己復号可能なビットといえ,系統的ではないビット(パリティビット)は非自己復号可能なビットといえることも,当業者に自明である。
してみると,引用発明の「RVのパラメータs(s=0,1)」も,本願発明の「冗長型」(冗長型(RV)のパラメータs)と同様に,「系統的なビット(s=1)に優先順位をつける伝送と系統的ではないビット(s=0)に優先順位をつける伝送とを区別する」ものといえる。

また,第2レートマッチング段階にて反復が行われる場合における処理を示す数式(本願明細書の【数18】,【数19】)や,HARQの第2レートマッチングのためのパラメータ選択の結果等(本願明細書の【表1】,【数20】,【数21】)についても,本願明細書の記載と引用例の記載とは実質的に同じである。

以上を総合すると,引用例には「優先」なる表現は使われていないものの,第2レートマッチング段階における処理において,両者に差異が無いことは明らかである。すなわち,両者は,「複数の冗長型に基づいて,送信のためのビットを選択するように構成されたレートマッチングユニットであって,前記複数の冗長型のうちの少なくとも1つは,第1および第2のパリティビットよりも優先して系統的なビットを選択し,前記複数の冗長型のうちの少なくとも1つは,系統的なビットよりも優先して第1および第2のパリティビットを選択する,レートマッチングユニット」を備える点で共通するといえる。

したがって,本願発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,相違している。
(一致点)
「無線通信において使用する装置であって,
系統的なビット,第1のパリティビットストリーム,および第2のパリティビットストリームを,バッファリングするように構成されたバッファと,
複数の冗長型に基づいて,送信のためのビットを選択するように構成されたレートマッチングユニットであって,前記複数の冗長型のうちの少なくとも1つは,第1および第2のパリティビットよりも優先して系統的なビットを選択し,前記複数の冗長型のうちの少なくとも1つは,系統的なビットよりも優先して第1および第2のパリティビットを選択する,レートマッチングユニットと,
を備える装置。」

(相違点)
本願発明は,「系統的なビットをインタリーブするように構成された第1のインターリーバと,第1のパリティビットストリームをインタリーブするように構成された第2のインターリーバと,第2のパリティビットストリームをインタリーブするように構成された第3のインターリーバ」を備えているのに対し,引用発明はこれらのインターリーバが明らかにされていない点。
これに伴い,一致点のバッファにバッファリングされる「系統的なビット,第1のパリティビットストリーム,および第2のパリティビットストリーム」が,本願発明ではそれぞれインタリーブされたものであるのに対し,引用発明は当該事項が明らかでない点。

上記相違点について検討する。
引用発明は,引用例の記載(上記3(1)参照。)から明らかなように,チャネル(ターボ)符号器の出力に対してレートマッチングを行うものである。このように,ターボ符号器の出力にレートマッチングを行う構成において,「ターボ符号器の出力である系統的なビットに対するチャネルインターリーバ,第1のパリティビットに対するチャネルインターリーバ,および第2のパリティビットストリームに対するチャネルインターリーバを備え,それぞれインタリーブした後に,レートマッチングを行うこと。」は,周知事項1のとおり,従来より採用されてきた周知事項にすぎない。また,インタリーブは広く無線装置などの通信機器においてデータの欠損に対する耐性を持たせるために一般的に用いられている構成であることも技術常識である。
してみると,引用発明においても,レートマッチングを行う手段の前に第1?第3のインターリーバを備えることは,格別困難な事項ではなく,当業者が必要に応じて適宜なし得ることである。


5 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-06 
結審通知日 2017-03-07 
審決日 2017-03-24 
出願番号 特願2013-223339(P2013-223339)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H03M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡 裕之  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 菅原 道晴
山中 実
発明の名称 ターボ符号を実装する場合に使用するパリティビットのストリームにおける問題のあるパンクチャパターンの検出、回避および/または訂正  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  

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