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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K |
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管理番号 | 1331046 |
審判番号 | 不服2015-6769 |
総通号数 | 213 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-09-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-04-09 |
確定日 | 2017-08-08 |
事件の表示 | 特願2008-317547「疎水性フィルム形成ポリマー、顔料および揮発性溶媒を含む組成物を用いる毛髪の染色方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年7月2日出願公開、特開2009-143919〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、平成20年12月12日(パリ条約による優先権主張 2007年12月13日(フランス))の出願であって、平成26年12月3日付けで拒絶査定がなされたのに対して、平成27年4月9日に拒絶査定不服の審判請求がなされ、それと同時に手続補正書が提出され、平成28年6月23日付けで当審からの拒絶理由が通知され、同年12月27日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 2 本願発明 本願の請求項1-11に係る発明は、平成28年12月27日提出の手続補正書により補正された、特許請求の範囲の請求項1-11に記載されたとおりのものであって、そのうち、本願請求項8に係る発明(以下、「本願発明8」という。)は、次のとおりである。 「1種または複数の疎水性フィルム形成ポリマー、1種または複数の顔料および揮発性溶媒を含む、毛髪に適用し、その後、組成物により覆われた毛髪を40℃を超える温度に加熱する工程により染色するための組成物であって、前記疎水性フィルム形成ポリマーが、ポリアクリレートのポリマーまたはコポリマーから選択される、組成物。」 3 当審からの拒絶理由 平成28年6月23日付けの拒絶理由通知による拒絶の理由は、概要以下のとおりのものを含む。 この出願の請求項8に係る発明は、その出願前に日本国内において頒布された下記の刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 〔刊行物〕 1 特表平10-502945号公報 4 当審の判断 (1)刊行物1の記載事項 本願出願日(優先日)前に頒布された刊行物1には、以下の記載がある。 a「1. (a) 少なくとも部分的に中和した、またはしていないフリーの形態の、少なくとも1つの酸性官能基を含有する皮膜形成ポリマー粒子の水性分散体と、 (b) 該分散体の連続相に分散し、インドール化合物の酸化重合により得られたものではない、少なくとも1つの顔料、 とを少なくとも含有する組成物の、ヘアもしくは動物の体毛の一時的染色のための使用。 2. 皮膜形成ポリマーが、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸、またはそれらの混合物からなるグループから選択される、少なくとも部分的に中和した、またはしていないフリーの酸性官能基を含有することを特徴とする請求項1に記載の使用。 … 4. 皮膜形成ポリマーが、次の式: [nは、0?10の整数であり;Aは、nが1より大きい場合は、芳香環またはヘテロ原子を介して隣接するメチレン基に、または不飽和基の炭素原子に連結していてもよいメチレン基を示し;R_(1)は、水素原子、またはフェニルまたはベンジル基を示し;R_(2)は、水素原子、または低級アルキル、またはカルボキシル基を示し;R_(3)は、水素原子、低級アルキル基、または-CH_(2)-COOH、フェニルまたはベンジル基を示す] で表される少なくとも1つのモノマーにより提供される少なくとも1つのカルボン酸官能基を含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の使用。 5. カルボン酸官能基を含有する皮膜形成ポリマーが: A) (メタ)アクリル酸と、少なくとも1つの直鎖状、分枝状または環状の(メタ)アクリル酸エステル、および/または少なくとも1つの直鎖状、分枝状または環状で、1分子内に1個または2個の置換基を有する(メタ)アクリル酸アクリルアミドのコポリマー; B) スチレン、α-メチルスチレン、または置換されたスチレンとの共重合の結果得られたグループをさらに含有していてもよい、少なくとも1つの、直鎖状、分枝状または環状のビニルエステルと、(メタ)アクリル酸のコポリマー; C) ビニルの一酸および/またはアリル酸の一酸のコポリマー; D) ビニルエステル類、ビニルエーテル類、ビニルハロゲン化物、フェニルビニル誘導体、(メタ)アクリル酸またはそれらのエステル類、(メタ)アリルエステル類からなるグループから選択される少なくとも1つのモノマーと、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、またはイタコン酸、または無水物のコポリマー;並びにこれらのコポリマーのモノエステル類またはモノアミド類; からなるグループから選択されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の使用。 … 7. グループ(A)のポリマーとしての皮膜形成ポリマーが: -アクリル酸/アクリル酸エチル/N-tert-ブチルアクリルアミドのターポリマー; -(メタ)アクリル酸/tert-ブチル(メタ)アクリラート、および/またはイソブチル(メタ)アクリラート/C_(1)-C_(4)のアルキル(メタ)アクリラートのコポリマー; -(メタ)アクリル酸/アクリル酸エチル/メタクリル酸メチルのターポリマー、またはテトラポリマー; -メタクリル酸メチル/アクリル酸エチルまたはブチル/2-ヒドロキシプロピルまたはヒドロキシエチルの(メタ)アクリラート/(メタ)アクリル酸のテトラポリマー; -アクリル酸/C_(1)-C_(4)のアルキルメタクリラートとのコポリマー; -アクリル酸/ビニルピロリドン/C_(1-20)のアルキルメタクリラートのターポリマー; -N-オクチルアクリルアミド/メタクリル酸メチル/メタクリル酸ヒドロキシプロピル/アクリル酸/tert-ブチルアミノエチル-メタクリラートのコポリマー; -スチレン、α-メチルスチレン、または置換されたスチレンの共重合の結果得られたグループをさらに含有していてもよい、少なくとも1つの、直鎖状、分枝状または環状のビニルエステルモノマーを含有する(メタ)アクリル酸エステル類またはアミド類と、(メタ)アクリル酸のコポリマー; からなるグループから選択されることを特徴とする請求項5に記載の使用。 8. グループ(C)の皮膜形成ポリマーが: それらの鎖の中に、酢酸ビニルおよびプロピオン酸ビニルからなるグループから選択される少なくとも1つのモノマーを有するクロトン酸のコポリマーから選択され、該コポリマーが、少なくとも5つの炭素原子を有する、飽和した直鎖状または分枝状のカルボン酸のビニルエステル類、ビニルエーテル類、(メタ)アリルエステル類、α-もしくはβ-環状カルボン酸のビニルもしくは(メタ)アリルのエステル類からなるグループ、および/またはスチレン、α-メチルスチレン、または置換されたスチレンと共重合の結果得られたクループから選択される少なくとも1つのモノマーをさらに含有していてもよいことを特徴とする請求項5に記載の使用。」(特許請求の範囲) b「カルボン酸基を含有する本発明の皮膜形成ポリマーは、好ましくは、次に示すものからなるグループから選択される。 A) (メタ)アクリル酸と、少なくとも1つの直鎖状、分枝状または環状(環状脂肪族または芳香族)の(メタ)アクリル酸エステルモノマー、および/または少なくとも1つの直鎖状、分枝状または環状(環状脂肪族または芳香族)で、1分子内に1個または2個の置換基を有する(メタ)アクリル酸アミドモノマーのコポリマー。 … C) ビニルの一酸、例えばクロトン酸、およびビニル安息香酸、および/またはアリル酸の一酸、例えばアリルオキシ酢酸のコポリマー。 … ポリマーの水性分散体としては、ラテックスまたは擬似ラテックスを挙げることができる。それらが、好ましくは少なくとも部分的に中和している、ラテックスの形態である場合、よく知られている乳化重合の技術により、直接ポリマーを合成することができる。中和度は、ポリマーがラテックスの形態のままで、水に溶解しない程度である。 また、擬似ラテックスの形態であってもよい。この場合は、ポリマーは既に調製されたものであり、ついで、これを水に分散させる。水との分散体は、ポリマーに担持されている少なくとも部分的に中和した酸性基により、自己安定している。 よって、酸性官能基を含有する皮膜形成ポリマーの中和度は、それらが水に不溶のままであり、同時に、存在可能な有機溶媒または溶媒類に可溶であるように決定すべきである。 ポリマーが、水に不溶のままであるための、超えるべきでない中和度の上限は、酸性官能基を含有する各々の皮膜形成ポリマーの性質に依存することは言うまでもない。」(11頁16行-18頁16行) c「本発明の顔料は、インドール化合物の酸化重合により得られたものではない、任意の化粧品的または皮膚科学的に許容可能な有機または無機顔料から選択される。 … また、特に白色真珠光沢顔料、例えば酸化チタンまたは酸化ビスマスで被覆されたマイカ;有色真珠光沢顔料、例えば酸化鉄を有する雲母チタン、フェリックブルーまたは酸化クロムを有する雲母チタン、沈降型の有機顔料を有する雲母チタン、並びに、オキシ塩化ビスマスをベースとしたものから選択される真珠光沢顔料を使用することもできる。」(20頁21行-21頁18行) d「一時的染色に使用することを意図した本発明の組成物は、体毛用組成物に通常使用されている、種々のアジュバントをさらに含有してもよい。このようなアジュバントとしては、パウダー、樹脂、ガム、または油の形態の、揮発性または非揮発性、不溶性または溶解性のシリコーン類、…を挙げることができる。」(25頁10-18行) e「実施例1: -ヘキスト社からカルミン・コスメニル(CI 12790)の名称で販売されている有機顔料 2.5g -仏国特許出願第2697160号に記載さ れている方法で調製された、酢酸ビニル/ クロトン酸/4-t-ブチル安息香酸ビニ ル(65/10/25)のコポリマーの擬 似ラテックス 15g(活性物質) -アジピン酸ジイソプロピル(可塑剤) 3.75g -2-アミノ-2-メチル-1-プロパノー ル(ポリマーを中和するための薬剤) 0.495g -水 全体を100gとする量 染色用組成物を乾燥した髪に、髪3gに対して4gの量を適用する。放置して、室温で乾燥させる。 赤い着色が得られる。髪は柔軟で粘着質ではない感触である。乾燥または湿った髪での色落ちもない。」(25頁25行-26頁12行) (2)対比・判断 刊行物1には、「ヘア」すなわち毛髪の染色のための組成物に関し、上記(1)aの記載からみて、以下の引用発明1が記載されているものと認められる。 「皮膜形成ポリマー、顔料および水を含む毛髪を染色するための組成物。」 そして、引用発明1における「皮膜形成ポリマー」は本願発明8の「フィルム形成ポリマー」に、「水」は本願【0167】-【0168】の記載「本発明によれば、毛髪に付けられる組成物は、少なくとも1種の揮発性溶媒含む。…この揮発性溶媒は、水…であり得る。」からみて本願発明8の「揮発性溶媒」に、それぞれ相当し、該皮膜形成ポリマーとして、(メタ)アクリル酸エステル類とアクリル酸のコポリマー(上記(1)a)が記載されており、これは本願発明8でいう「ポリアクリレートのコポリマー」に相当する。 そうすると、本願発明8と引用発明1とは、 「1種または複数のフィルム形成ポリマー、1種または複数の顔料および揮発性溶媒を含む、毛髪に適用し、その後、組成物により覆われた毛髪を染色するための組成物であって、前記フィルム形成ポリマーが、ポリアクリレートのポリマーまたはコポリマーから選択される、組成物。」で共通し、以下の点で相違するように見受けられる。 <一応の相違点1> 本願発明8のフィルム形成ポリマーは「疎水性」であるのに対し、引用発明1のそれは明らかでない点。 <一応の相違点2> 毛髪に適用し、その後、組成物により覆われた毛髪を染色するための組成物に関し、本願発明8では、毛髪に適用し、その後、組成物により覆われた毛髪を「40℃を超える温度に加熱する工程により」染色すると規定されるのに対し、引用発明1では、それは明らかでない点。 上記一応の相違点について検討する。 <一応の相違点1> 引用発明1の皮膜形成ポリマーに関し、刊行物1には、「ポリマーの水性分散体…。それらが、好ましくは少なくとも部分的に中和している…、直接ポリマーを合成することができる。中和度は、ポリマーがラテックスの形態のままで、水に溶解しない程度である。」、「よって、酸性官能基を含有する皮膜形成ポリマーの中和度は、それらが水に不溶のままであり、同時に、存在可能な有機溶媒または溶媒類に可溶であるように決定すべきである。」、「ポリマーが、水に不溶のままであるための、超えるべきでない中和度の上限は、酸性官能基を含有する各々の皮膜形成ポリマーの性質に依存することは言うまでもない。」(上記(1)b)と記載されており、これらは、引用発明1の皮膜形成ポリマーが水に溶解しない、すなわち疎水性であることを意味するものと認められる。 このため、上記一応の相違点1は相違点であるとはいえない。 <一応の相違点2> 引用発明1は、組成物について、「40℃を超える温度に加熱する工程により」染色するためのものであることを特定するものではないが、物の発明である本願発明8において、染色時の加熱工程といった使用の態様を特定することは、引用発明1との対比において何ら意味を持たない。 このため、上記一応の相違点2は相違点であるとはいえない。 よって、本願発明8と引用発明1とは同一である。 5 まとめ 以上のとおり、本願の特許請求の範囲の請求項8に係る発明は、その出願日前に日本国内において頒布された刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-03-14 |
結審通知日 | 2017-03-17 |
審決日 | 2017-03-28 |
出願番号 | 特願2008-317547(P2008-317547) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WZ
(A61K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 松本 直子 |
特許庁審判長 |
大熊 幸治 |
特許庁審判官 |
関 美祝 齊藤 光子 |
発明の名称 | 疎水性フィルム形成ポリマー、顔料および揮発性溶媒を含む組成物を用いる毛髪の染色方法 |
代理人 | 実広 信哉 |
代理人 | 阿部 達彦 |
代理人 | 村山 靖彦 |