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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08L
管理番号 1331102
審判番号 不服2015-22528  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-22 
確定日 2017-08-09 
事件の表示 特願2013-525988「リサイクル樹脂組成物及びそれから製造される使い捨て医療機器」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 2月23日国際公開、WO2012/024413、平成25年10月17日国内公表、特表2013-538894〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年8月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年8月20日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成27年1月29日付けで拒絶理由が通知され、同年4月30日に手続補正書と意見書が提出されたが、同年8月19日付け(発送日:同年8月25日)で拒絶査定された。これに対し、同年12月22日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正書が提出されたが、平成28年2月12日付けで前置報告書が作成され、同年5月6日に上申書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし26に係る発明は、平成27年12月22日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし26に記載された事項により特定されるものであって、そのうち、本願の請求項12に係る発明は、次のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。

「【請求項12】
医療機器を成形するための組成物であって、
追跡可能な供給源から供給されたリサイクルの樹脂、及び
抗酸化剤成分、スリップ添加剤成分、静電気防止成分、衝撃改質剤成分、着色剤成分、酸捕捉剤成分、X線蛍光剤成分、放射線不透過充填剤成分、表面改質剤成分、加工助剤成分、溶融安定剤成分、清澄剤成分、核形成剤、及び補強剤成分の1つ以上を含み、
当該組成物は、50?99重量%の、脱工業化リサイクル樹脂、使用済みのリサイクル樹脂及びこれらの組み合わせの一つを含み、生体適合性であり、滅菌安定性である組成物。 」

第3 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、要するに、「本願発明は、その優先日前に日本国内において頒布された下記引用文献2及び3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
引用文献2:特開平11-291247号公報
引用文献3:特開2000-5283号公報」
というものを含むものである。

第4 当審の判断
1 刊行物の記載事項
(1)引用文献2には、「脂環式構造含有重合体樹脂成形体の再利用方法」に関して、次の記載がある。

ア「脂環式構造含有重合体樹脂成形体の再利用方法であって、該成形体の溶融状態又は溶液状態で異物を除去する工程を含むことを特徴とする、脂環式構造含有重合体樹脂成形体の再利用方法。」(特許請求の範囲 請求項1)

イ「本発明の目的は、透明性に優れた成形体を与えることができる脂環式構造含有重合体樹脂成形体の再利用方法を提供することである。本発明の他の目的は、表面の平滑性に優れた成形体を与えることができる脂環式構造含有重合体樹脂成形体の再利用方法を提供することである。」(段落【0003】)

ウ「再利用に供する成形体としては、レンズ、プリズム、光学フィルム、光学シート、光ディスク基板、導光板、ライトガイド、光ファイバー、ミラー等の光学用途の成形体;ディスポーザブルシリンジ、薬液バイヤル、薬品包装用フィルム、検査セル、検査容器、輸液バッグ、シリンジ用ロッド等の医療用の成形体;電線被覆、ウェハーシッパー、コンデンサーフィルム、回路基板、コネクターなどのシート、フィルム、板材、容器、絶縁材等の電気又は電子用途の成形体;板材、パイプ、丸棒、ボトル、建材、文具等が挙げられる。
また、上記の成形体を射出成形法で得る場合に廃材として発生する成形体であるスプルーやランナー、押出成形や溶液流延成形後に所望の形状を切り取ったあとの廃材として発生する成形体等も本発明の再利用方法において好ましく使用することができる。」(段落【0026】?【0027】)

エ「本発明は異物を除去する工程を含むことを特徴とする。異物を除去するためには成形体を溶液状態(溶液法)または溶融状態(溶融法)にし、流動化させてそれぞれ適当なフィルターを通過させることにより行う。」(段落【0051】)

オ「濾過後の溶液は、そのまま再利用することもできるが、例えば、外部環境から異物が混入しないように密閉系で、揮発成分の除去を行い、クリーンルーム内等のクリーン度の高い環境下、クリーン度をクラス1000以下、好ましくはクラス100以下に厳重に管理した環境でペレット化して用いることができる。
」(段落【0060】)

カ「6.配合剤等の添加
上記の方法で異物を除去した脂環式構造含有重合体樹脂を再利用する方法は特に限定されない。異物を除去した脂環式構造含有重合体樹脂には、必要に応じて上記の他のポリマー、配合剤および充填剤(以下配合剤等という)を、混合して使用することもできる。
配合剤等を混合する方法は特に限定されない。溶融法で異物を除去した場合は、異物除去に引き続いて、または異物除去後のペレットを再度溶融して、混練して必要な配合剤等を添加することができるし、溶液にして添加してから必要に応じて溶媒を乾燥しても良い。
溶液法で異物を除去した場合は、その溶液に必要な配合剤等を添加し混合してから必要に応じて溶媒を乾燥しても良いし、溶液から溶媒を乾燥して除去してから溶融混練して添加しても良い。
・・・
溶融混練後は、溶融状態で棒状に押し出し、ストランドカッターで適当な長さに切り、ペレット状成形体とすることが好ましい。ペレット状成形体は、その後に射出成形や押出成形をするための材料として取り扱いやすく好ましい。」(段落【0092】?【0096】)

キ「7.再利用する方法
必要に応じて配合剤を加えた上記の成分を再利用する方法は特に限定されない。適当な大きさの例えばペレット状にしたものを溶融成形しても良いし、ペレットを溶液にして使用して溶液成形しても良いし、またはこれらの溶液をそのまま使用することもできる。」(段落【0097】)

ク「7.4.添加剤
再利用時に、前述の(脂環式構造含有重合体樹脂からなる成形体に含んでいても良い)配合剤等を単独で、あるいは2種以上を更に添加して用いても良い。
その他のポリマー
再利用時に使用することができるその他のポリマーとしては、前述のその他のポリマーを挙げることができる。これらのその他のポリマーはそれぞれ単独で、あるいは2種以上混合して用いることができる。また、その割合は、本発明の目的を損なわれない範囲で適宜選択される。
・・・
配合剤
再利用時に必要に応じて配合剤を添加することができる。配合剤としては、熱可塑性樹脂材料で通常用いられているものであれば格別な制限はなく、例えば、前述の成形体に含まれる酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、近赤外線吸収剤、染料や顔料などの着色剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、蛍光増白剤などの配合剤が挙げられる。
・・・
これらの配合剤は単独、または2種以上を混合して用いることができ、その割合は、再利用の目的を損なわれない範囲で適宜選択される。配合量は、再利用の目的を損なわれない範囲で適宜選択されるが、ポリマー成分100重量部に対して通常0.001?5重量部、好ましくは0.01?1重量部の範囲である。」(段落【0113】?【0119】)

ケ「8.再利用に係る成形体等
本発明の再利用法により、レンズ、プリズム、偏向フィルム、導光板、光ディスク基板等の光学用途の成形体;プレススルーパッケージ、ディスポーザブルシリンジ、薬液バイヤル、輸液バッグ等の医療用途の成形体;電線被覆、ウェハーシッパー、ハードディスク基板等の電気又は電子材料用途の成形体;カーポート、グレージング等の建材;ルームミラー、インナーレンズ、ランプリフレクタ等の自動車部品;ラップフィルム、ストレッチフィルム、シュリンクフィルム、ブリスターパック等の包装フィルム;ボールペン芯等の文具等を好適に得ることができる。」(段落【0122】)

コ「[ポリマー1]8-メチルテトラシクロ[4.4.0.1^(2,5) .1^(7,10)]ドデカ-3-エン(慣用名:メチルテトラシクロドデセン(MTD))80部、トリシクロ[4.3.0.1^(2,5) ]デカ-3,7-ジエン20部(慣用名:ジシクロペンタジエン(DCP))の開環重合体水素化物
Mw:53,000(GPC分析によるポリイソプレン換算値;溶媒:シクロヘキサン)
Tg:140℃
水素化率:99.8%以上(^(1)H-NMRで水素化前後で比較して測定)
・・・
[成形例1]下記の条件で光ディスク基板を製造した。
材料: ポリマー1
射出成形品: 光ディスク基板,直径:130mm,厚み:1.2mm
成形機: 住友重機械工業製;DISC-5
ホッパー部に窒素を500cc/min で供給
成形条件: 樹脂温度:320℃,金型温度:110℃,成形サイクルタイム
:15sec
成形環境: クリーン度クラス1000のクリーンルーム内
・・・
実施例1
成形例1の光ディスク基板100部を通常の室内環境下で約5mm角にクラッシャーで破砕した。クリーン度クラス10000のクリーンブース内で、孔径5μmのステンレス製焼結フィルターを備えたポリマーフィルター(富士フィルター製)を連結した一軸押出機(田辺プラスチック機械社製、VS-40)により、シリンダー温度250℃、ポリマーフィルター温度250℃で、ホッパー部に窒素を500cc/min で供給しながら、破砕物をダイからストランド状に溶融押出し、ペレタイザーでカッティングして再生ペレット95部を得た。
・・・
実施例3
成形例1の光ディスク基板100部を実施例1と同様にクラッシャーで破砕した。破砕物を密閉タンク内でシクロヘキサン400部に溶解した。珪藻土(昭和化学社製、ラジオライト#500)を濾過助剤として加圧濾過機(フンダフィルター、石川島播磨重工社製)で圧力2.5kg/cm^(2) で濾過した後、金属ファイバー製フィルター(孔径0.2μm、ニチダイ社製)にて濾過して異物を除去した。溶液から、揮発成分であるシクロヘキサンを円筒型薄膜濃縮乾燥機(日立製作所製、コントロ)によつて、運転条件を第1ステップ:温度270℃、圧力100Torr、第2ステップ:温度270℃、圧力5Torrとして除去した。溶融状態でポリマーフィルター(富士フィルター製)を通して、クラス1000のクリーンルーム内でダイからストランド状に溶融押出し、ペレタイザーでカッティングして再生ペレット93部を得た。」(段落【0125】?【0131】)

(2)引用文献3には、「放射線滅菌法および滅菌した成形品」に関して、次の記載がある。
ア「脂環式構造含有炭化水素重合体樹脂を主成分とする成形材料からなる成形品を、放射線照射処理し、次いで40℃以上で、成形品のガラス転移点より低い温度において30分間以上熱処理することを特徴とする滅菌法。」(特許請求の範囲 請求項1)

イ「成形材料とその他の成分
本発明において成形材料として用いる上記の脂環式構造含有炭化水素重合体樹脂には、必要に応じて、その他の重合体、各種配合剤、充填剤を単独で、あるいは2種以上混合して用いることができる。
・・・
(2)配合剤
脂環式構造含有炭化水素重合体樹脂に必要に応じて添加される配合剤としては、熱可塑性樹脂材料で通常用いられているものであれば格別な制限はなく、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、近赤外線吸収剤、染料や顔料などの着色剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、蛍光増白剤などの配合剤が挙げられる。
・・・
これらの配合剤は単独、2種以上混合して用いることができ、その割合は、本発明の目的を損なわれない範囲で適宜選択される。配合量は、本発明の目的を損なわれない範囲で適宜選択されるが、脂環式構造含有炭化水素重合体樹脂100重量部に対して通常0.001?5重量部、好ましくは0.01?1重量部の範囲である。」(段落【0021】?【0039】)

ウ「本発明の放射線による滅菌法によれば、脂環式構造含有炭化水素重合体樹脂が本来有する良好な透明性、ガスバリア性、耐薬品性、低溶出性などの性質を具備し、保管、移送、使用する際の破損の危険性が少なく、滅菌による外観・色調の変化が少ないという特性を有する成形品を得ることができる。本発明の放射線による滅菌法は、特に、医薬品用および食品用容器、ならびに医療用および科学実験用器材などの滅菌処理に好適である。医薬品用容器の具体例としては、広口びん、狭口びん、バイヤルびん、プレフィルドシリンジ、アンプルおよびプレススルーパッケージなどが挙げられ、食品用容器の具体例としては、袋、トレイおよびシール容器などが挙げられる。医療用器材の具体例としては、注射器、外科用メス、採血管、血液バッグ、カテーテル、シャントなどが挙げられ、また、科学実験用器材の具体例としては、ビーカー、シャーレおよびフラスコなどが挙げられる。」(段落【0067】)

2 引用文献2に記載された発明
引用文献2には、上記摘示第4 1(1)ア及びコにおける実施例3の記載から、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「8-メチルテトラシクロ[4.4.0.1^(2,5) .1^(7,10)]ドデカ-3-エン(慣用名:メチルテトラシクロドデセン(MTD))80部、トリシクロ[4.3.0.1^(2,5) ]デカ-3,7-ジエン20部(慣用名:ジシクロペンタジエン(DCP))の開環重合体水素化物からなるポリマー1を使用して製造した光ディスク基板100部を通常の室温環境下で約5mm角にクラッシャーで破砕し、破砕物を密閉タンク内でシクロヘキサン400部に溶解し、珪藻土(昭和化学社製、ラジオライト#500)を濾過助剤として加圧濾過機(フンダフィルター、石川島播磨重工社製)で圧力2.5kg/cm^(2) で濾過した後、金属ファイバー製フィルター(孔径0.2μm、ニチダイ社製)にて濾過して異物を除去し、溶液から、揮発成分であるシクロヘキサンを円筒型薄膜濃縮乾燥機(日立製作所製、コントロ)によつて、運転条件を第1ステップ:温度270℃、圧力100Torr、第2ステップ:温度270℃、圧力5Torrとして除去し、溶融状態でポリマーフィルター(富士フィルター製)を通して、クラス1000のクリーンルーム内でダイからストランド状に溶融押出し、ペレタイザーでカッティングして得た、再生樹脂ペレット。」

3 本願発明と引用発明との対比
引用発明の「再生樹脂ペレット」は、ポリマー1を使用して製造したディスク基板を処理して得たものであるから、本願発明の「リサイクルの樹脂」に相当する。
そうすると、本願発明と引用発明とは、

[一致点]
「リサイクルの樹脂。」
である点で一致し、

次の点で相違する。

[相違点1]
用途に関し、本願発明は「医療機器を成形するための組成物」と特定するのに対して、引用発明では用途の特定がなく、また「ペレット」である点。

[相違点2]
リサイクルの樹脂の供給に関し、本願発明は「追跡可能な供給源から供給」と特定するのに対して、引用発明ではそのような特定がない点。

[相違点3]
本願発明は「抗酸化剤成分、スリップ添加剤成分、静電気防止成分、衝撃改質剤成分、着色剤成分、酸捕捉剤成分、X線蛍光剤成分、放射線不透過充填剤成分、表面改質剤成分、加工助剤成分、溶融安定剤成分、清澄剤成分、核形成剤、及び補強剤成分の1つ以上を含み」と特定するのに対して、引用発明ではそのような特定がない点。

[相違点4]
リサイクルの樹脂に関し、本願発明は「脱工業化リサイクル樹脂、使用済みのリサイクル樹脂及びこれらの組み合わせの一つ」と特定するのに対して、引用発明ではそのような特定がない点。

[相違点5]
リサイクルの樹脂の配合割合に関し、本願発明は「50?99重量%」と特定するのに対して、引用発明ではそのような特定がない点。

[相違点6]
特性に関し、本願発明は「生体適合性であり、滅菌安定性」と特定するのに対して、引用発明ではそのような特定がない点。

4 相違点についての判断
(1)相違点1について
樹脂ペレットは成形のための材料として用いられるものであることは技術常識であって、樹脂ペレットを成形の目的に供する際には樹脂組成物の態様とされることは当業者に明らかな事項である。
そして、引用文献2には、上記摘示第4 1(1)ア、イ、カ及びキに樹脂成形体を再利用すること、上記摘示第4 1(1)イ、キ及びケに樹脂成形体を成形すること及び樹脂成形体を再利用して成形体を得ることが記載されており、さらに、上記摘示第4 1(1)ケには、成形体として各種の医療用途の成形体が記載されている。
また、引用文献3には、上記摘示第4 1(2)イ及びウに、本来、良好な透明性等を有する脂環式構造含有炭化水素重合体樹脂を用いて、プレフィルドシリンジ等の医療用容器、注射器等の医療用器材を成形することが記載されている。
そうすると、引用発明の「再生樹脂ペレット」を、引用文献2に記載される各種医療用途の成形体の成形のための材料として樹脂組成物とすること、あるいは、引用発明の脂環式構造含有炭化水素重合体樹脂を含む「再生樹脂ペレット」を、引用文献3に記載される医療用容器、医療用器具の成形材料として樹脂組成物とすることは、当業者にとり想到容易である。

(2)相違点2について
引用文献2には、上記摘示第4 1(1)ウに再利用に供する成形体の具体例として「光ディスク基板」が記載されており、引用発明の「再生樹脂ペレット」は、8-メチルテトラシクロ[4.4.0.1^(2,5) .1^(7,10)]ドデカ-3-エン(慣用名:メチルテトラシクロドデセン(MTD))80部、トリシクロ[4.3.0.1^(2,5) ]デカ-3,7-ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン(DCP))20部の開環重合体水素化物からなるポリマー1を使用して製造した光ディスク基板の破砕物から得たものである。
そうしてみると、引用発明の「再生樹脂ペレット」の供給源は、「8-メチルテトラシクロ[4.4.0.1^(2,5) .1^(7,10)]ドデカ-3-エン(慣用名:メチルテトラシクロドデセン(MTD))80部、トリシクロ[4.3.0.1^(2,5) ]デカ-3,7-ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン(DCP))20部の開環重合体水素化物からなるポリマー1を使用して製造した光ディスク基板」と特定できるのであるから、引用発明でも供給源は追跡可能であり、引用発明の「再生樹脂ペレット」も「追跡可能な供給源から供給」されているといえる。
よって、上記相違点2は、実質的な相違点ではない。
仮に、相違するとしても、上記相違点2に係る発明特定事項とすることは、当業者にとり想到容易である。

(3)相違点3について
引用文献2には、上記摘示第4 1(1)クに、本願発明の「抗酸化剤成分」に相当する酸化防止剤、本願発明の「着色剤成分」に相当する着色剤、本願発明の「スリップ添加剤成分」に相当する滑剤、本願発明の「加工助剤成分」に相当する可塑剤、本願発明の「静電気防止成分」に相当する帯電防止剤等の配合剤を再利用時に添加することが記載されているから、引用発明において再利用時に必要に応じてそれらの配合剤を添加することは、当業者にとり想到容易である。

(4)相違点4について
引用文献2には、上記摘示第4 1(1)ウに再利用に供する成形体の具体例が示され、それらの成形体を成形する際に「廃材」として発生する成形体も再利用の対象とすることが記載されている。
この点、本願発明の詳細な説明の段落【0026】に「適切な脱工業化リサイクルの樹脂及び使用済みのリサイクルの樹脂の例は、ポリプロピレン、・・・及びリサイクル可能な当該技術分野で知られている他の樹脂、並びにこれらの組み合わせを含む。当該リサイクル樹脂は、回収されていてもよく、さもなければ、製造工程中(使用される前)又は消費者が使用した後(使用済み)のいずれかの固体廃棄物流れ由来でもよい。」と記載されている。
そうすると、引用発明の「再生樹脂ペレット」は、「製造工程中(使用される前)」の「固体廃棄物流れ由来」と解するのが相当であるから、本願発明の「脱工業化リサイクル樹脂、使用済みのリサイクル樹脂及びこれらの組み合わせの一つ」に該当する。
よって、上記相違点4は、実質的な相違点ではない。
仮に、相違するとしても、上記相違点4に係る発明特定事項とすることは、当業者にとり想到容易である。

(5)相違点5について
引用文献2には、上記摘示第4 1(1)クに、成形体の再利用時に添加してもよい成分についての記載があり、そのうち配合剤については、「ポリマー成分100重量部に対して通常0.001?5重量部」を配合できることが記載されている。
そうすると、引用文献2には、成形体の再利用時に成形に供する材料として、再生樹脂ペレット100重量部に配合剤を5重量部程度配合するもの、すなわち、再生樹脂ペレットの配合量が、100/(100+5)≒95.2重量%のものも記載されているから、引用発明において成形体の再利用時に成形に供する材料を上記配合のものとすることは、当業者にとり想到容易である。

(6)相違点6について
医療機器が生体適合性、滅菌安定性を必要とすることは当業者に明らかな事項であり、滅菌に関しては、引用文献3には摘示第4 1(2)ア及びウに医療用容器、医療用器材を滅菌することが記載されている。
そして、医療機器を成形するための組成物とすることについては、上記相違点1について述べたとおりであるから、その結果、生体適合性、滅菌安定性である組成物とすることは、当業者にとり想到容易である。

(7) 相違点に係る効果について
本願発明で上記各相違点に係る発明特定事項としたことにより、予想外の格別顕著な効果を奏すると認めることができない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献2及び3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-13 
結審通知日 2017-03-14 
審決日 2017-03-27 
出願番号 特願2013-525988(P2013-525988)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C08L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内田 靖恵  
特許庁審判長 小柳 健悟
特許庁審判官 守安 智
上坊寺 宏枝
発明の名称 リサイクル樹脂組成物及びそれから製造される使い捨て医療機器  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  

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