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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 E02F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E02F |
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管理番号 | 1331104 |
審判番号 | 不服2016-2213 |
総通号数 | 213 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-09-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-02-15 |
確定日 | 2017-08-09 |
事件の表示 | 特願2014-527134「掘削歯の摩耗インジケータ及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月 7日国際公開、WO2013/032420、平成26年10月 9日国内公表、特表2014-527133〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 平成23年 8月26日 国際出願 平成27年 2月19日 拒絶理由通知(同年2月24日発送) 平成27年 6月22日 意見書・手続補正書 平成27年 10月 6日 拒絶査定(同年10月13日送達) 平成28年 2月15日 審判請求書 2 本願発明 本願の請求項1ないし21に係る発明は、平成27年6月22日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし21に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。 「建設機械用の掘削歯であって、 作業端部と取付端部を備えた掘削歯であり、 前記取付端部は、作業工具に取り付けられたアダプターを受容する手段を規定し、 前記作業端部は、穴を規定し、 前記作業端部上に設けられた摩耗インジケータを備えており、前記摩耗インジケータは、穴の中に位置し、 前記作業端部の未摩耗長さよりも短く、前記作業端部の摩耗長さ以上の長さと、 前記作業端部の色と目に見えて対照的な色を備えている、 掘削歯。」 3 刊行物 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の国際出願前に頒布された刊行物である、実願昭55-165651号(実開昭57-91870号)のマイクロフィルム(以下「刊行物」という。)には、図面とともに次の記載がある(下線は審決にて付した。以下同様。)。 ア 「本考案は、例えば油圧ショベル等の建設機械に用いられて最適なバケットに関し、特に作業部となる爪の脱落防止を図ると共に、該爪が摩耗した際該爪の交換時期を適確に把握しうるようにしたバケットに関するものである。」(明細書1頁20行?2頁4行) イ 「従来、建設機械用のバケットとして第1?2図に示すものが知られている。・・・バケット本体1には第2図に詳細に示すようにアダプタ2が溶接、圧入等の手段で固着して設けられ、該アダプタ2には爪3が取付けられ、該爪3はアダプタ2に対してピンロックラバー4、ロッキングピン5を介して固定されている。即ち、アダプタ2と爪3との間に設けられたピンロックラバー4に対してロッキングピン5を打ち込む際、該ロッキングピン5はピンロックラバー4が変形することによって挿入され、その後はピンロックラバー4によってロッキングピン5がアダプタ2側に押し付けられ抜け止めされている。 このように構成されるバケットにおいては、・・・爪3の摩耗を気づかずバケットを長期間使用すると、アダプタ2まで摩耗して爪3が脱落してしまうばかりでなく、該アダプタ2が摩耗してしまい修理が非常に困難となってしまう欠点があった。」(明細書2頁5行?3頁10行) ウ 「図面において、第2図と同一構成要素には同一符号を付すものとするに、図中6は爪3の先端からピンロックラバー4、ロッキングピン5を介してアダプタ2に至る穴で、該穴6はロッキングピン5の打ち込み方向とほぼ直交する方向に穿設されている。そして、前記穴6にはロッキングピン抜け止め用の固定ピン7が螺入され、該固定ピン7の強度によってロッキングピン5の抜け止めを行なっている。8は固定ピン7の動きを固定するため固定ピン7前面に設けられた固定ピンロック用の栓、9は穴6に爪3の開口から打ち込まれた打込みピンで、該打込みピン9は穴6に対して十分な締代をもって打ち込み、固定されている。ここで、打込みピン9は爪3の摩耗限界だけの長さとされ、該打込みピン9の背面と栓8との間には爪摩耗検知用の空間10が形成されている。従って、打込みピン9が摩耗し、空間10が現われれば、爪3が摩耗限界であることを知らせる。 ・・・ また、バケットを油圧ショベル等に取付けて長期間使用すると、爪3と共に打込みピン9が摩耗し、空間10が現われれば摩耗限界となったことを知らせることになる。即ち、空間10が爪3の摩耗量を告知することになる。従って、この時点で栓8、固定ピン7、ロッキングピン5を順次抜き取り、爪3をアダプタ2から外し、新たな爪3と交換すればよい。 なお、本考案の実施例においては、打込みピン9の背面と栓8との間に空間10を形成するものとして述べたが、該空間10は爪3の摩耗量を知らせるものであるから、此部が必ずしも空間である必要はなく、空間10に代えて此部に着色を施こした合成樹脂材等を挿入しておいてもよく、また途中まで着色した固定ピン7または打込みピン9で空間10を埋めるように延出させてもよいものである。さらに、栓8は固定ピン7ロック用の栓であるから、必ずしも必要とするものではないことは勿論である。」(明細書3頁13行?5頁15行) エ 「アダプタを摩耗によって損傷させることがないから爪の交換作業を容易に行なうことができる。」(明細書6頁11、12行) オ これらアないしエの事項を総合すると、刊行物には、次の発明(以下「刊行物発明」という。)が開示されていると認められる。 「建設機械用のバケットにおいて、バケット本体1に固着して設けられたアダプタ2に対してピンロックラバー4、ロッキングピン5を介して固定された爪3であって、 爪3の先端からピンロックラバー4、ロッキングピン5を介してアダプタ2に至る穴6が設けられ、 穴6にはロッキングピン抜け止め用の固定ピン7が螺入され、 固定ピン7の前面に、固定ピン7の動きを固定する固定ピンロック用の栓8が設けられ、 穴6に爪3の開口から打込みピン9が打ち込まれ、 打込みピン9は爪3の摩耗限界だけの長さとされ、該打込みピン9の背面と栓8との間に形成された爪摩耗検知用の空間10に着色を施こした合成樹脂材を挿入し、打込みピン9が摩耗し、合成樹脂材が現れれば、爪が摩耗限界であることを知らせ、該爪の交換時期を的確に把握しうるようにした、建設機械用バケットの爪3。」 4 対比 本願発明と刊行物発明とを対比する。 (1)刊行物発明の「建設機械用のバケットにおいて、バケット本体1に固着して設けられたアダプタ2に対して」「固定された爪3」、「バケット本体1(バケット)」、「アダプタ2」、「穴6」は、それぞれ本願発明の「建設機械用の掘削歯」、「作業工具」、「アダプター」、「穴」に相当する。 刊行物発明の「空間10」に「挿入」された「着色を施こした合成樹脂材」は、「打込みピン9が摩耗し、合成樹脂材が現れれば、爪が摩耗限界であることを知らせ」るものであるから、本願発明の「摩耗インジケータ」に相当する。 (2)刊行物発明の「バケット本体1に固着して設けられたアダプタ2に対して」「固定された爪3」のうち、「アダプタ2」に対して固定される部分が「取付端部」といえ、また、「取付端部」とは反対側、つまり先端側が「作業端部」といえるから、刊行物発明の「爪3」は、本願発明の「掘削歯」と同様に、「作業端部と取付端部を備え」ている。 (3)上記(2)からみて、刊行物発明の「爪3」が「バケット本体1に固着して設けられたアダプタ2に対して」「固定され」ることは、本願発明の「取付端部は、作業工具に取り付けられたアダプターを受容する手段を規定」することに相当し、以下同様に、「爪3の先端からピンロックラバー4、ロッキングピン5を介してアダプタ2に至る孔6」は、本願発明の「作業端部は、穴を規定」することに、「穴6に爪3の開口から」「打ち込まれ」た「該打込みピン9の背面と」、「穴6」に「螺入され」た「固定ピン7の前面に」「設けられ」た「固定ピンロック用の栓8との間に形成された爪摩耗検知用の空間10に着色を施こした合成樹脂材を挿入し」たことは、「作業端部上に設けられた摩耗インジケータを備えており、摩耗インジケータは、穴の中に位置」することに、それぞれ相当する。 (4)刊行物発明の「合成樹脂材」に「着色を施した」ことと,本願発明の「摩耗インジケータ」が「作業端部の色と目に見えて対照的な色を備えている」こととは、「摩耗インジケータ」が「色を備えている」ことで共通する。 (5)上記(1)ないし(4)からみて、本願発明と刊行物発明とは、 「建設機械用の掘削歯であって、作業端部と取付端部を備えた掘削歯であり、前記取付端部は、作業工具に取り付けられたアダプターを受容する手段を規定し、前記作業端部は、穴を規定し、前記作業端部上に設けられた摩耗インジケータを備えており、前記摩耗インジケータは、穴の中に位置し、色を備えている、掘削歯。」で一致し、以下の点で相違する。 (相違点) 摩耗インジケータに関し、 本願発明は、前記作業端部の未摩耗長さよりも短く、前記作業端部の摩耗長さ以上の長さと、前記作業端部の色と目に見えて対照的な色を備えているのに対し、 刊行物発明は、長さ及び色についての特定がない点。 5 判断 (1) 相違点について ア 本願発明において、「摩耗インジケータ」の長さの特定の基準となる「未摩耗長さ」及び「摩耗長さ」について、発明の詳細な説明の記載を確認すると、「未摩耗長さ」及び「摩耗長さ」自体を説明する記載はない。 また、【図4】及び【図5】を参照すると、「未摩耗長さ28a」は、アダプター21先端から未摩耗時の掘削歯25の先端までの長さと略等しいこと、及び「摩耗長さ28b」は、摩耗インジケータ50の長さと略等しいことが見てとれるものの、これら図面から読み取れる長さからは、「未摩耗長さ」や「摩耗長さ」の定義は明らかではない。 イ そこで、本願発明において、「摩耗インジケータ50」を、発明の詳細な説明の記載からその機能から確認すると、「【0035】・・・図4では、摩耗インジケータ50が、歯25の作業端部28の未摩耗長さ28aよりも短い長さ51を備えている。図5に示すように、摩耗インジケータ50の長さ51は、作業端部の摩耗長さ28b以上の長さである。長所として、図4及び5の比較で示すように、作業端部28がアブレシブ摩耗によってすり減ると、作業端部28の未摩耗長さ28aが摩耗長さ28bまで減少し、摩耗インジケータ50が見えるようになる。長所として、摩耗インジケータ50は、作業端部28の色と対照的な色を備えている。従って、目に見えた時点で、摩耗インジケータ50は、例えば、掘削歯25を交換すべきであるという明確な視覚的指標を作業員に提示する。長所として、視覚的指標は、掘削歯25の作業端部28の摩耗によってアダプター21への損傷が発生し得る前に現れる。」と記載されていることからみて、本願発明の「摩耗インジケータ」は、「作業端部28がアブレシブ摩耗によってすり減ると、作業端部28の未摩耗長さ28aが摩耗長さ28bまで減少し」て「見えるようになる」ところ、「掘削歯25の作業端部28の摩耗によってアダプター21への損傷が発生し得る前に現れる」ことで、「目に見えた時点で、」「掘削歯25を交換すべきであるという明確な視覚的指標を作業員に提示」するとの機能を有しているから、摩耗インジケータは、当該機能が発揮できる長さを備えているといえる。 ウ これに対し、刊行物発明において、「合成樹脂材」は、「爪3の摩耗限界だけの長さとされ」る「打ち込みピン9が摩耗し、合成樹脂材が現れれば、爪が摩耗限界であることを知らせ、該爪の交換時期を的確に把握しうるようにした」機能を有しているから、「合成樹脂材」は、当該機能を発揮できる長さを備えているといえる。 エ そうすると、本願発明の「摩耗インジケータ50」、及び刊行物発明の「合成樹脂材」は、共に、同様の機能を発揮することができる長さを備えている。 よって、刊行物発明の「合成樹脂材」は、本願発明の「前記作業端部の未摩耗長さより短く、前記作業端部の摩耗長さ以上の長さ」と特定された「摩耗インジケータ」と何ら差異はないというべきである。 オ そして、刊行物発明の「合成樹脂材」は、爪が摩耗限界であることを知らせるものであるから、その着色を目立つものにすることは、当然採用されるべき設計的事項に過ぎないから、刊行物発明の「合成樹脂材」も、作業端部の色と目に見えて対照的な色を備えているといえる。 カ 請求人は、審判請求書において、「空間10が見えた時点で、空間10が合成樹脂によって占有されていれば、空間10は確かに本発明1の『摩耗インジケータ』に相当するものであるが、空間10は、本発明1の如く前記残りの摩耗長さ以上の長さの長さBを備えるものではありません。空間10は歯の交換を一次的に指示することができますが、オペレータが空間10の出現を見落とすと、空間10が見えなくなるまで歯はさらに摩耗され、いかなる手段によっても視覚による歯の交換指示を行うことはできません。」と主張する。 しかしながら、本願発明において、上記アで検討したとおり、「摩耗インジケータ」の長さの特定の基準となる「未摩耗長さ」及び「摩耗長さ」の定義は不明であるところ、本願発明の「摩耗インジケータ」は、「交換すべきであるという明確な視覚的指標を作業員に提示する」ために、「見えるようになる」ことや「目に見えた時点」が重要であって、「摩耗インジケータ」の「アダプター」側は、その視覚的指標として重要とはいえないから、請求人が主張するように、刊行物発明の空間10の出現を見落とすかどうかにおいて、本願発明の構成と差異はない。 また、掘削歯の摩耗は、掘削歯の先端から、まっすぐではなく、斜めに摩耗するものであり、しかも、どの程度の摩耗で摩耗インジケータが「見えるようになる」かは、施工状況によるところが大きいから、本願発明の「摩耗インジケータ」と刊行物発明の「合成樹脂材」の長さの対比は重要とはいえない。 よって、請求人の主張は採用することができない。 キ 以上のとおり、本願発明と刊行物発明とは実質的に同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。 6 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は特許を受けることができないものであるから、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-03-08 |
結審通知日 | 2017-03-14 |
審決日 | 2017-03-28 |
出願番号 | 特願2014-527134(P2014-527134) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(E02F)
P 1 8・ 113- Z (E02F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鷲崎 亮、桐山 愛世 |
特許庁審判長 |
赤木 啓二 |
特許庁審判官 |
小野 忠悦 住田 秀弘 |
発明の名称 | 掘削歯の摩耗インジケータ及び方法 |
代理人 | 林 道広 |
代理人 | 堅田 多恵子 |
代理人 | 清水 英雄 |
代理人 | 秋庭 英樹 |
代理人 | 天坂 康種 |
代理人 | 溝渕 良一 |
代理人 | 石川 好文 |
代理人 | 重信 和男 |