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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F24F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F24F
管理番号 1331111
審判番号 不服2015-17708  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-09-29 
確定日 2017-08-10 
事件の表示 特願2011-217598号「ドレンアップ配管ユニットおよびドレン配管構造」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月29日出願公開、特開2012-233675号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年9月30日(優先権主張 平成22年12月8日、平成23年4月20日)の出願であって、平成27年6月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月29日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がされた。
その後、当審において、平成28年9月5日付けの拒絶理由に対して、同年11月1日に意見書及び手続補正書が提出され、同年11月29日付けの最後の拒絶理由に対して、平成29年2月3日に意見書及び手続補正書が提出された。

第2 平成29年2月3日の手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年2月3日の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、補正前の
「断熱可撓管と、該断熱可撓管の両端に対してそれぞれ予め固定された一対の継手部材とを一体に備えて、一方の継手部材が空調装置のドレン口の側に接続されると共に、他方の継手部材が、前記ドレン口よりも高い位置に設置されたドレン配管の固定部分に接続されることにより、ドレンの逆流を防止可能な上方迂回部の少なくとも一部を構成し得るようにし、
更に、前記断熱可撓管が、決められた規格長さを有するものとされると共に、
前記一方の継手部材が、非発泡性樹脂の内部に発泡性樹脂を有する断熱継手とされており、
前記一方の継手部材は、前記断熱可撓管の内部へ差し込まれる差口部と、該差口部の周囲に設けられた周壁部と、前記差口部および周壁部の間に設けられて前記断熱可撓管が丁度入る大きさの凹部とを有することを特徴とするドレンアップ配管ユニット。」
から、
「断熱可撓管と、該断熱可撓管の両端に対してそれぞれ予め固定された一対の継手部材とを一体に備えて、一方の継手部材が空調装置のドレン口の側に接続されると共に、他方の継手部材が、前記ドレン口よりも高い位置に設置されたドレン配管の固定部分に接続されることにより、ドレンの逆流を防止可能な上方迂回部の少なくとも一部を構成し得るようにし、
更に、前記断熱可撓管が、決められた規格長さを有するものとされると共に、
前記一方の継手部材が、非発泡性樹脂の内部に発泡性樹脂を有するエルボ状の断熱継手とされており、
前記一方の継手部材は、前記断熱可撓管の内部へ差し込まれ、非発泡性樹脂で構成された差口部と、該差口部の周囲に設けられ、非発泡性樹脂で構成された周壁部と、前記差口部および周壁部の間に設けられて前記断熱可撓管が丁度入る大きさの凹部とを有することを特徴とするドレンアップ配管ユニット。」
へと変更する補正事項を含むものである(下線部は、補正箇所示す。)。

2 補正の目的
上記補正事項は、補正前の請求項1に係る発明を特定する事項である「一方の継手部材」について「エルボ状」であることに限定し、かつ、「差口部」及び「周壁部」について「非発泡性樹脂で形成され」るものであることに限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について検討する。

3 独立特許要件
(1)本願補正発明
本願補正発明は、本件補正後の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、平成29年2月3日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「第2 1 補正の内容」の補正後の請求項1参照。)により特定されたとおりのものと認める。

(2)引用文献の記載事項
当審における平成28年11月29日付けの最後の拒絶理由に引用され、本願優先日前に頒布された刊行物である特開2010-203521号公報(以下、「引用文献1」という。)、登録実用新案第3142119号公報(以下、「引用文献2」という。)、特開2004-305730号公報(以下、「引用文献3」という。)、特開2010-151239号公報(以下、「引用文献4」という。)、実公昭52-50407号公報(以下、「引用文献5」という。)には、それぞれ図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審にて付与した。)。
ア 引用文献1
(ア)「【0007】
帯状部材からなる漏水検知リボンを漏水検査箇所(パイプ同士の接続部)に設置するので、漏水検知リボンの上から漏水検査箇所に断熱部材を巻いても、漏水検知リボンの一部を断熱材の外側に配置することができる。従って、漏水検査においては、断熱材の外側に配置された漏水検知リボンに施されたマーキングの変化を目視で確認することによって、漏水しているかどうかを確認できる。つまり、断熱材を巻いた状態であっても、漏水検査ができる。従って、配管設備の施工における施工の自由度が増し、効率的な施工が可能となる。」

(イ)「【0010】
本実施の形態においては、天井隠蔽型及び天井カセット型エアコンのドレンアップ配管の施工について説明する。ドレンアップ配管の施工においては、複数の管(パイプ)、即ち、横引き管21と接続用縦管22とドレンアップ管31とドレンホース32とを接続して、エアコンのドレン排水が流れる流路を形成する。符号1は、所謂、ビル用エアコンの天井隠蔽型及び天井埋込カセット型室内機(以下、室内機と記す)を示している。この室内機1内には、ドレンアップ用のポンプ1aが備えられている。
【0011】
先ず、図1に示すように、横引き配管系2の施工を行う。横引き配管系2は、横引き管21と接続用縦管22とを備えている。横引き管21は、水平方向に配設する。横引き管21は、一端側が接続用縦管22と接続され、他端側が、ビルの各階からのドレン排水をまとめて下に流す排水縦管と接続される。横引き管21は、一端側から他端側にかけて所定の下り勾配を有し、横引き管21の一端側から他端側にかけて水が流れるように配設する。尚、横引き管21は、複数本のパイプを接続して構成してもよいし、1本のパイプでもよい。横引き管21の一端は、継ぎ手23を介して接続用縦管22と接続する。接続用縦管22は、縦向きに配設する。 」

(ウ)「【0020】
次に、図示しない天井工事を行う。この天井工事は、ドレン配管系3及び横引き配管系2より下側に、天井板を配設する。そして、この天井工事の後に、ドレンアップテストを行う。ドレンアップテストは、室内機1のポンプ1aを作動させて、ドレン配管系3に水を通し、ドレン配管系3の通水及び漏水を確認する。ポンプ1aから出た水は、順に、ドレンホース32、継ぎ手35、ドレンアップ管31、継ぎ手34、接続用横管33、継ぎ手24、接続用縦管22、継ぎ手23、横引き管21と流れる。このとき、漏水検知リボン4の断熱材36よりも外側に配置されている部分に施されているインク材4bによるマーキングを目視により確認する。漏水検知リボン4のマーキングに視覚的に変化があれば、その部分は漏水しているということである。漏水の確認後、漏水していなければ、漏水検知リボン4を抜き取り、もしくは、漏水検知リボン4の断熱材36の外側に延出した部分を切断し、その部分の断熱材36の補修を行う。尚、ドレンアップテスト後も、漏水検知リボン4を取り付けたままとし、一定期間経過後に、漏水検知リボン4を抜き取り、もしくは、漏水検知リボン4の断熱材36の外側に延出した部分を切断し、その部分の断熱材36の補修を行ってもよい。」

(エ)「【0026】
尚、本実施の形態において、横引き配管系2における通水テストは、目視や触指によって行っているが、ドレン配管系3における通水テストと同様に漏水検知リボン4を使用してもよい。尚、本実施の形態において、漏水検知リボン4は、帯状のものを使用しているが、紐状でもよい。尚、マーキングは、帯状部材4aの断熱材の外側に配置される部分に施してあればよい。尚、上述した管としては、硬質塩化ビニル管、炭素鋼鋼管、保温付フレキシブルホースなどの公知の管を使用することができる。
【0027】
ここで、ドレン配管系3において、ドレンアップ管31とドレンホース32の代わりに、保温付フレキシブルホース41を使用する場合について説明する。保温付フレキシブルホース41は、可撓性を有し、断熱材がホースと一体に備えられている。従って、断熱施工は、保温付フレキシブルホース41の接続部のみでもよい。保温付フレキシブルホース41は、図7に示すように、保温付フレキシブルホース41の一方側端部を継ぎ手42を介して室内機1と接続する。また、保温付フレキシブルホース41の他方側端部は、継ぎ手43を介して接続用縦管22に接続する。
【0028】
次に、図8に示すように、保温付フレキシブルホース41と継ぎ手42,43との接続部に漏水検知リボン4を設置する。漏水検知リボン4は、保温付フレキシブルホース41の下側に設置する。そして、図9に示すように、保温付フレキシブルホース41の接続部の周囲に断熱材44を設置する。この断熱材44は、テープ状のものであり、漏水検知リボン4の上から接続部の周囲に巻きつける。また、漏水検知リボン4の一部は、断熱材44の端部から断熱材44の外側に延出させる。断熱材44を設置した後は、上述したように、天井工事及びドレンアップテストを行う。」

(オ)図9には、保温付フレキシブルホース41が室内機1から上方に伸びて高い位置に配設された接続用縦管22に接続されていることが記載されている。

(カ)上記(ア)ないし(オ)の記載事項から、引用文献1には、「保温付フレキシブルホースと、該保温付フレキシブルホースの両端にそれぞれ接続される一対の継ぎ手を備えて、保温付フレキシブルホースの一方側端部を継ぎ手を介して室内機と接続し、保温付フレキシブルホースが室内機から上方に向けて伸びて、他方側端部は、継ぎ手を介して高い位置に配設された接続用縦管に接続し、
更に、保温付フレキシブルホースの接続部の周囲に断熱材を設置するドレンアップ配管系」の発明が記載されている(以下、「引用発明」という。)。

イ 引用文献2
(ア)「【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】
空調機のドレン管から排出されるドレンを排水管に流すホース本体と、
上記ホース本体の両端に設けられ、上記ホース本体を上記ドレン管及び上記排水管に接続する管状の第1及び第2の接続具と、
上記第1及び第2の接続具がそれぞれ上記ドレン管及び上記排水管に差し込まれた状態において上記第1及び第2の接続具を上記ドレン管及び上記排水管に締め付ける第1及び第2の締付け金具と
を具え、
上記第1及び第2の接続具は、透明なゴム材料によって構成されることによって、上記ドレン管及び上記排水管に差し込まれたとき上記ドレン管及び上記排水管の差込み状態を外部から目視確認できるように構成され、
上記第1及び第2の締付け金具は、バンド部材と、上記バンド部材を筐体に引き込むことにより締め付け動作をする締付け動作部材と、上記バンド部材の長手方向の所定位置に設けられた締付け確認用表示部とを有し、
上記第1又は第2の締付け金具において、締付け確認用表示部は、上記バンド部材が上記締付け動作部材によって引き込まれることにより当該締付け確認用表示部が上記締付け動作部材に対して所定位置に来たとき、上記第1又は第2の締付け金具の締付け作業を終了すべきことを示す
ことを特徴とする接続ホース。」

(イ)「【考案の効果】
【0008】
本考案によれば、接続具を透明なゴム材料によって構成すると共に、締付け確認用表示部を設けたバンド部材を締付け動作部材によって引き込むことにより締付け確認用表示部が所定位置に近づいたとき締付け金具の締め付け作業を終了すべきことを示すようにしたことによって、安全かつ確実に、接続具を両端に設けたホース本体を空調機のドレン管及び排水管に接続することができる。」

(ウ)「【0010】
図1において、1は全体として接続ホースを示し、柔軟な合成樹脂材料で構成されたホース本体2の一端にエルボ型接続具3が設けられていると共に、他端にストレート型接続具4が設けられている。」

(エ)「【0012】
エルボ型接続具3は、透明ゴム材料によって断面円環状に成形されており、図2に示すように、先端直管部15と、これに連接する中間曲管部16と、これに連接する内側直管部17とを有し、各部の内部空間によってほぼ直角に曲がるドレン通路18が形成されている。」

(オ)「【0024】
ストレート型接続具4は、図5に示すようにエルボ型接続具3と同様に、透明ゴム材料を断面円環状に成形してなる直管部45を有し、その内部空間45Aに先端側から排水管11を差込むことができるようになされている。」

(カ)「【0031】
ドレン管10にエルボ型接続具3を接続する作業において、ユーザは、図7(A)に示すように、ドレン管10の先端にエルボ型接続具3の先端直管部15を差込んだ後、締付け金具25を締付け動作することによりドレン管10にエルボ型接続具3を接続する。」

(キ)「【0039】
以上の構成によれば、空調機のドレン管10から配設されるドレンを建屋に敷設された排水管11に排水させる接続ホース1を接続作業するにつき、エルボ型接続具3及びストレート型接続具4を透明材料で構成するようにしたことにより、エルボ型接続具3及びストレート型接続具4のドレン管10及び排水管11への接続作業を、接続状態を作業員が目視確認しながら行うことができると共に、これらのエルボ型接続具3及びストレート型接続具4のドレン管10及び排水管11への締付け作業を締付け確認用表示部40を設けたバンド部材31を用いて当該締付け確認用表示部40が締付け動作部材33に対して所定の位置に来るまで締付け具合を確認しながら締付けることができるようにしたことにより、ドレン管10及び排水管11に対して接続ホースを安全かつ確実に接続することできる。」

(ク)また、上記(ウ)ないし(キ)の記載事項及び図1の記載より、引用文献2には、「空調機のドレン管10から排出されるドレンを建屋に敷設された排水管11に排水させる接続ホース1を接続する作業の際、ホース本体の両端に予め接続具が固定されている」ことが記載されていると認められる。

(ケ)また、上記(ウ)及び(カ)並びに図1、図7(A)及び図(B)の記載より、「エルボ型接続部3」は、エルボ型の形状を有しているといえる。

ウ 引用文献3
(ア)「【0006】
ところが、機体の設置位置によっては給水ホースおよび排水ホースが長すぎて流し台上に余ってしまうことがある。この様な場合、排水ホースは切断することによって長さを自由に調節することが可能であるが、給水ホースは給水源と直結して主に水道の一次圧がかかる状態で使用する部材であるため切断による長さ調節が不可能である。したがって、給水ホースの余った部分を屈曲させて設置せざるを得ないため、キッチンの美観を損ねるばかりでなく、給水ホースの折れ曲がりが発生し易くなり正常に運転できなくなるといった問題があった。さらに、キッチンの美観を損ねないように、余った給水ホースを食器洗い機で隠蔽しようとすると、食器洗い機を壁に密着させた状態で設置できなくなり、設置性が悪化するといった問題があった。」

(イ)「【0027】
以上のように、給水ホース109を引き出したり押し込んだりすることで、機外に露出する給水ホース109を最適な長さに調節することが可能となり、食器洗い機をどのように設置しても、キッチンの美観を損なうことを極力低減することができる。また、余った給水ホースを本体内部に隠蔽することによって、汚れの付着を防止でき、食器洗い機周りの清掃性が向上する。さらに、余った給水ホースの収納による、設置性の悪化や折れ曲がりによる動作不良を防止することができる。現在主流となっているコンパクトタイプの食器洗い機においては給水ホースの標準長さは1300mmであり、別売品として短尺タイプのものがあり、最短のもので800mmとなっている。したがって、本実施例中の寸法をL1=250mm、L2=800mmとすれば、L3=L2+2×L1=1300mmとなり、給水ホース109の長さを800mm?1300mmの幅で自由に調整することができる。」

(ウ)引用文献3の「排水ホースは切断することによって長さを自由に調節することが可能であるが、給水ホースは給水源と直結して主に水道の一次圧がかかる状態で使用する部材であるため切断による長さ調節が不可能である。」(【0006】)の記載、図2の給水ホースの両端に継手の記載があることから、引用文献3記載の給水ホースは、標準長さを備えたホースの両端に継手が設けられているものと認められる。

(エ)上記(ア)ないし(ウ)の記載事項から、引用文献3には、「給水ホースの両端に継手を設けるとともに、給水ホースは標準的な長さを採用する」ことが記載されている。

エ 引用文献4
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の空調配管に用いられる空調設備のドレイン配管のキャップ構造で、特に、結露対策が施された空調設備のドレイン配管のキャップ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図10又は、図11に示すような断熱層付きの管路部材1が知られている(例えば、特許文献1等参照。)。
【0003】
まず、構成から説明すると、この従来のドレイン配管では、直線状の塩ビ配管の端部同士を接続するエルボ管継手1の肉厚内部には、射出成型時に、発泡充填された発泡樹脂2からなる断熱層3が形成されている。
【0004】
このような従来のドレイン配管では、図示省略の塩ビで構成されるエアコンドレイン配管本体内部にも、前記エルボ管継手1と略同様に発泡樹脂2からなる断熱層3が肉厚内に形成されていて、ドレイン配管本体の各端部を、前記エルボ管継手1の両端部に管軸方向を直交させるように設けられた受口部4,4に接着する。
【0005】
そして、これらの各ドレイン配管本体及び、前記エルボ管継手1により、形成されるドレイン管路が、図示省略の空調ユニットに接続されて、この空調ユニットからの排水が、これらのドレイン管路を介して、流下排水されるように構成されている。
【0006】
次に、この従来例のドレイン配管を用いたドレイン管路の作用効果について説明する。
【0007】
このように構成された従来例のドレイン配管を用いたドレイン管路では、各ドレイン配管本体及び、前記エルボ管継手1の内部には、射出成型時に、発泡充填された発泡樹脂2からなる断熱層3が形成されている。
【0008】
このため、管内の管路を流下する低温の排水の温度は、ドレイン配管本体及び、前記エルボ管継手1の外表面に伝わりにくく、断熱されることにより、このドレイン配管本体及び、前記エルボ管継手1の外表面に結露を発生させにくい。
【0009】
また、このような従来のドレイン配管では、清掃等のメンテナンス用の開口部が、ドレイン配管路中のリフトアップ部分に、設けられることが知られている。
【0010】
このメンテナンス用の開口部は、通常使用時に、非発泡溶融樹脂によって構成されたキャップ部材によって、閉塞されていると共に、メンテナンス時には、このキャップ部材を、取り外して、清掃等を行うように構成されている。」

(イ)「【0026】
次に、図1乃至図9に示す図面に基づいて、この発明を実施するための最良の実施の形態の空調設備のドレイン配管のキャップ構造について説明する。
【0027】
なお、前記従来例と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0028】
この実施の形態の空調設備のドレイン配管のキャップ構造では、図3に示すように、建物5内に設けられた天井裏空間6には、空調ユニット7が、設置されている。
【0029】
この空調ユニット7からは、排水を挿通するドレイン管路8が、延設されている。
【0030】
このドレイン管路8は、主に、ホース状の管路体が、ゴムブーツ部材9aによって覆われて、前記空調ユニット7の外側面7aに、一端部9bが接続されるユニット接続部材9と、図2に示すように、このユニット接続部材9の他端部9cを、断熱層付き下側エルボ継手10に接続するアダプタ部材11とを有している。
【0031】
また、このドレイン管路8には、リフトアップ部12が設けられている。
【0032】
このリフトアップ部12は、主に、前記下側エルボ継手10に接続される縦管部を構成する断熱層付き直管部材13と、この断熱層付き直管部材13に、断熱層付き上側エルボ継手14を介して接続される上部水平配管部を構成する断熱層付き直管部材15とを有している。」

(ウ)「【0040】
また、図4に示すように、前記断熱層付き直管部材15には、側面視T字形状を呈して、前記下階へ向けて延設される断熱層付き直管部材17を、直交させて接続するキャップ付きチーズ継手30が、設けられている。
【0041】
このキャップ付きチーズ継手30は、前記断熱層付き直管部材15,17の各端部15a及び17aを対向させて、約90度の角度を設けて接続する受口部30a,30aを、図5に示すように、一対有すると共に、筒状の外壁面部30bを構成する非発泡樹脂材料の内部には、発泡樹脂材料で構成される断熱層30cが、断面略C字状で、平板帯状を呈して、内包されている。」

(エ)上記(ア)及び(ウ)の記載事項及び図10の記載から、引用文献4には、結露を防止するために、「ドレイン配管に用いられるエルボ管継手が非発泡性樹脂材料の内部に発泡樹脂材料で構成される断熱層が内包されている」ことが記載されている。

(オ)上記「断熱層付き下側エルボ継手10」(【0030】)は、図4の記載から、エルボ型の形状を有しているといえる。

オ 引用文献5
(ア)「考案の詳細な説明
クーラーの冷却水などを排出するときには、通常断熱ホースが使用されて、ホース内外面の温度差により露滴を生じてこれがクーラー内或は室内に滴下したりするのを防止するようにされているところで一般に断熱ホースを被接合体と連結する場合、例えばクーラーのドレン口に連結するとき或は(中略)クーラーに錆を発生させたりまた室内を不衛生としたりするなどの欠陥を有している。」
(公報第1ページ第1欄第21行ないし第37行)

(イ)「1は雌型の継手で一側が二重壁1a,1bとされてこの各壁間に断熱ホースaが挿入一体化されている。しかして本考案は上記のような継手1の二重壁とは反対側の面に、円周方向に連続するひだ片2を同心状に数重として突出形成し、これの最外周に位置されるもの2aを他のひだ片より長くして外側方へ突出させたものである。」
(公報第1ページ第2欄第8行ないし第14行)

(ウ)上記(イ)の記載事項並びに第1図及び第2図の記載から、二重壁1a、1bは断熱ホースaが挿入可能な凹部を形成しているものと認められる。

(エ)上記(ア)ないし(ウ)の記載事項から、引用文献5には、「クーラーのドレン口に連結される断熱ホースの継手において、該継手は二重壁を備え該二重壁により断熱ホースが挿入可能な凹部を形成している」ことが記載されている。

(3)対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比すると、その機能及び作用からみて、引用発明の「保温付フレキシブルホース」、「継ぎ手」、「室内機」、「ドレンアップ配管系」は、本願補正発明の「断熱可撓管」、「継手部材」、「空調装置」、「ドレンアップ配管ユニット」にそれぞれ相当する。
また、引用発明の「保温付フレキシブルホースの一方側端部」の「継ぎ手」が接続される「室内機」の接続部は、本願補正発明の空調装置の「ドレン口」といえるから、引用発明の「保温付フレキシブルホースの一方側端部を継ぎ手を介して室内機と接続し」は、本願補正発明の「一方の継手部材が空調装置のドレン口の側に接続される」に相当する。
また、引用発明の「接続用縦管」は、「ドレン配管の固定部分」に相当し、引用発明の「保温付フレキシブルホース」の「他方側端部は、継ぎ手を介して高い位置に配設された接続用縦管に接続し」は、本願補正発明の「他方の継手部材が、前記ドレン口よりも高い位置に設置されたドレン配管の固定部分に接続される」に相当する。

また、ドレンアップ配管は、ドレンの逆流を防ぐために設けられることが技術常識であることを踏まえると、引用発明の「室内機から上方に向けて伸びて」、「高い位置に配設された接続用縦管に接続し」た「ドレンアップ配管系」は、本願補正発明の「ドレンの逆流を防止可能な上方迂回部の少なくとも一部を構成し得るようにし」たものに相当する。
また、引用発明の「保温付フレキシブルホースの接続部の周囲に断熱材を設置」された一方側端部の継ぎ手と、本願補正発明の「一方の継手部材が、非発泡性樹脂の内部に発泡性樹脂を有するエルボ状の断熱継手」とは、「断熱された継手部材」であることに限り一致する。
よって、本願補正発明と引用発明とは、
「断熱可撓管と、該断熱可撓管の両端に対してそれぞれ接続される一対の継手部材とを備えて、一方の継手部材が空調装置のドレン口の側に接続されると共に、他方の継手部材が、前記ドレン口よりも高い位置に設置されたドレン配管の固定部分に接続されることにより、ドレンの逆流を防止可能な上方迂回部の少なくとも一部を構成し得るようにし、
前記一方の継手部材が断熱された継手部材とされているドレンアップ配管ユニット。」で一致し、下記の点で相違する。

(相違点1)
本願補正発明は、「断熱可撓管の両端に対してそれぞれ予め固定された一対の継手部材とを一体に備えて」いるのに対して、引用発明は、保温付フレキシブルホースの両端にそれぞれ一対の継ぎ手が接続されるものの、継ぎ手が保温付フレキシブルホースに予め固定されて一体となっているか明らかでない点。

(相違点2)
本願補正発明は、「断熱可撓管が、決められた規格長さを有する」のに対して、引用発明は、保温付フレキシブルホースの長さについて明らかでない点。

(相違点3)
本願補正発明は、「一方の継手部材が、非発泡性樹脂の内部に発泡性樹脂を有するエルボ状の断熱継手」であるのに対して、引用発明は、接続部の周囲に断熱材を設置するものの、一方の継ぎ手は、周囲に断熱材が設置されているが、内部に発泡性樹脂を有するものではなく、形状についてもエルボ状と特定されていない点。

(相違点4)
本願補正発明は、「一方の継手部材は、前記断熱可撓管の内部へ差し込まれ、非発泡性樹脂で構成された差口部と、該差口部の周囲に設けられ、非発泡性樹脂で構成された周壁部と、前記差口部および周壁部の間に設けられて前記断熱可撓管が丁度入る大きさの凹部とを有」しているのに対して、引用発明は、一方の継ぎ手の構造がそのように特定されていない点。

上記各相違点について検討する。
(ア)相違点1について
上記相違点1について検討すると、引用発明は、「配管設備の施工における施工の自由度が増し、効率的な施工が可能となる。」(【0007】)ことを目的とするものであるから、現場での配管設備の施工時に工数を減らしてより効率的に行うために、引用発明の保温付フレキシブルホースに、引用文献2に記載された「ホース本体に予め接続具が固定されている接続ホース」の技術を適用し、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易になし得たものである。

(イ)相違点2について
上記相違点2について検討すると、保温付フレキシブルホースに接続部を予め設けるためには、予め保温付フレキシブルホースの長さを決める必要があり、その長さを決める際に、引用文献3に記載されたホースに見られるように、標準長さを予め定めておくという技術的事項、すなわち規格長さを予め定めておくという技術的事項を採用し、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易になし得たものである。

(ウ)相違点3について
上記相違点3について検討すると、引用発明は、配管工事時において接続部の周囲に断熱材を設置するものであるが、配管設備の施工をより効率的に行うために、引用文献4に記載された継手のような、非発泡性樹脂の内部に発泡樹脂を有する継手を用い、相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易になし得たものである。
また、空気調和機において、ドレンアップを行うために、空気調和機のドレン管に接続されるホースの接続具の形状をエルボ状とすることは、例えば引用文献2及び4にみられるように周知技術であり(「第2 3 イ(ケ)」及び「第2 3エ(オ)」参照。)、引用発明において、ドレンアップを行うために、エルボ状の継手を採用することは、当業者が適宜選択し得る設計事項の範囲内である。

(エ)相違点4について
上記相違点4について検討すると、引用発明において、保温付フレキシブルホースと一方の継ぎ手との接続を良好なものとするために、引用文献5に記載された断熱ホースの継手のように二重壁により断熱ホースが挿入可能な凹部を形成する点を適用し、相違点4に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易になし得たものである。
そして、引用発明において、継ぎ手としての機能を果たすために、所定の強度を持たせること、すなわち、上記二重壁の部分を非発泡性樹脂にて形成することは、当業者であれば容易に想到し得たものである。
また、引用文献5記載の継手の凹部は断熱ホースが丁度入る大きさのものであると認められるし、例えその点が明らかでないとしても、断熱ホースと凹部との良好な接続を行うにあたり、当業者が適宜なし得る設計事項である。
そして、本願補正発明の奏する効果についてみても、引用発明、引用文献2ないし5記載の技術的事項並びに上記周知技術から当業者が予測できる範囲内のものである。
よって、本願補正発明は引用発明、引用文献2ないし5記載の技術的事項並びに上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)小括
したがって、本願補正発明は、引用発明、引用文献2ないし5記載の技術的事項並びに上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成28年11月1日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「第2 1 補正の内容」の補正前の請求項1参照。)により特定されるとおりのものと認める。

2 引用文献の記載事項
当審における平成28年11月29日付けの最後の拒絶理由に引用された引用文献及びその記載事項並びに引用発明は、前記「第2 3(2)引用文献の記載事項」に記載したとおりである。

3 対比・判断
(1) 本願発明と引用発明とを対比する。
本願発明は、本願補正発明から、「一方の継手部材」について「エルボ状」であること、かつ、「差口部」及び「周壁部」について「非発泡性樹脂で形成され」るものであることの限定を省いたものである(前記「第2 2」参照。)。
そうすると、本願発明を特定するための事項をすべて含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 3 (3)対比・判断」に記載したとおり引用発明、引用文献2ないし5記載の技術的事項並びに上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明、引用文献2ないし5記載の技術的事項並びに上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2ないし5記載の技術的事項並びに上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-06-15 
結審通知日 2017-06-20 
審決日 2017-06-29 
出願番号 特願2011-217598(P2011-217598)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F24F)
P 1 8・ 575- WZ (F24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邉 聡  
特許庁審判長 千壽 哲郎
特許庁審判官 鳥居 稔
莊司 英史
発明の名称 ドレンアップ配管ユニットおよびドレン配管構造  
代理人 弁護士法人クレオ国際法律特許事務所  

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