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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1331120
審判番号 不服2016-7712  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-26 
確定日 2017-08-10 
事件の表示 特願2013-204737「光学シート、面光源装置、表示装置および光学シートの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月13日出願公開、特開2015- 69097〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成25年9月30日を出願日とする出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。

平成27年7月16日付け:拒絶理由通知書(同年同月21日発送)
平成27年9月24日提出:意見書
平成27年9月24日提出:手続補正書
平成28年2月23日付け:拒絶査定(同年同月26日発送)
平成28年5月26日提出:審判請求書

第2 原査定の理由

原査定の理由は、概略、「この出願の請求項1?12に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2013-171056号公報
引用文献2:特開2012-83740号公報
引用文献3:特開2008-304524号公報
引用文献4:特開2012-73372号公報
引用文献5:国際公開第2009/028439号
引用文献6:特開2008-203839号公報」というものである。

第3 本願発明
平成27年9月24日提出の手続補正書により補正された本件出願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のものである。

「対向する一対の表面を有する光学シートであって、
シート状の基材層と、
拡散成分およびバインダー樹脂を含み、前記基材層の一方の側に設けられたマット層と、
一方向に配列された複数の単位プリズムであって、各々が前記一方向と交差する方向に線状に延びる、複数の単位プリズムを含み、前記基材層の他方の側に設けられたプリズム層と、を備え、
前記一対の表面のうちの一方が、前記マット層によるマット面として形成され、
前記一対の表面のうちの他方が、前記プリズム層の前記単位プリズムによるプリズム面として形成され、
JIS K5600-5-4(1999年)に準拠して測定(荷重1000g、速度1mm/s)された前記プリズム面の鉛筆硬度Hpおよび前記マット面の鉛筆硬度Hmが、次の条件(a)、(b)及び(c)を満たし、
Hp ≦ Hm ・・・(a)
2B ≦ Hp ≦ HB ・・・(b)
HB ≦ Hm ≦ H ・・・(c)
前記マット層は、前記マット面と、前記マット面とは反対側の面であって前記基材層に対面する内側面と、前記内側面と前記マット面との間の端面と、を含み、
前記端面は、前記光学シートの法線方向に沿った断面において、前記マット面と交わる外側端部よりも前記内側面と交わる内側端部において、前記法線方向に直交する方向に沿った外方に位置し、
前記光学シートの法線方向及び前記一方向の両方に平行な主切断面において、前記単位プリズムは、前記基材層上に一辺が位置し且つ当該一辺に対向する頂角の角度が90°未満となっている三角形形状の断面を有する、
光学シート。」

第4 引用例及びその記載事項
(1) 引用例1の記載
本件出願の出願前日本国内において頒布され、原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用された刊行物である、特開2012-83740号公報には、以下の事項が記載されている(下線は、当合議体が付したものである。以下同じ。)。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、光の進行方向を変化させる光学シートと、それを用いた光学部材、面光源装置、該面光源装置を用いた液晶表示装置に関する。
特に、柱状プリズム等による光学要素面の反対側を、最外面が粗面の凹凸塗膜や表面が平滑の平滑塗膜とした光学シートであって、しかも光学シートを2枚重ねで使用したり、ロールにして保管や運搬したりして光学シート同士で表裏が接触したり、或いは他の部材と接触したりしても、光学シート自体の表裏面が傷付き難く耐擦傷性に優れる光学シートに関する。また、本発明は、それを用いた光学部材、面光源装置、及び該面光源装置を用いた液晶表示装置に関する。」

イ 「【背景技術】
【0002】
透過型液晶表示装置に於いて、背面光源の出光面上に配置してその出射光を集光し輝度を向上させる光学シートが知られている。
例えば、特許文献1では、単位光学要素として三角柱単位プリズム等を配列したプリズム面の反対側の面を、高さが光源光の波長以上且つ100μm以下の空隙形成用の微小な突起を多数有する粗面にした光学シートが開示されている。プリズム面の反対側面を単なる平滑面とせずに、この様な粗面とすることで、光学シートのプリズム面の反対側面に導光板を隣接して配置したときに、導光板との光学密着を防止し、該光学密着による輝度の面内不均一化、干渉縞等を効果的に防止することができる。
【0003】
また、この様な微小突起を表面に多数有する粗面は、熱エンボス法、紫外線又は電子線硬化性樹脂液と成形型を用いた成形法(2P法:フォトポリマー法)、微粒子を樹脂液中に含有させた塗料の塗膜表面に微粒子による凹凸を現出させて粗面とする塗膜法などで形成できる。なかでも、塗膜法は、樹脂に熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂も使用でき、微粒子も樹脂ビーズ等を使用でき、他の方法に比べて、簡便且つ安価に形成できる利点がある。
【0004】
ただ、粗面によって光学密着は防げるが、該粗面の微小突起や、或いは塗膜内部から脱落した微粒子等によって、光学シートの裏面側に隣接して配置された他の光学部材の表面が、傷付くことがあった。
そこで、特許文献2では、この様な隣接配置される他の光学部材の傷付を防止する為に、塗膜中に含有させる微粒子として粒子径分布の半値幅が1μm以下の単分散の球状ビーズを用いる技術を提案している。
【0005】
また、光学シートは、その存在によって輝度が低下しない様にすることも重要である。そこで、特許文献3では、片方をレンズ面とする光学シートにおいて、入光面となる他方の面に低屈折率層を設けて、入光面での無駄な光反射を防いで、正面方向の輝度を向上させた光学シートを提案している。」

ウ 「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、他の光学部材の傷付きが、特許文献2で提案された様な単分散の微粒子を用いて改善されたとしても、なお光学シート自身の傷付きも発生しており、その解消が望まれた。
即ち、光学シートが他の光学部材ではなく自分自身を傷付ける現象は、第1には、光学シートを面光源装置にアセンブリする前の段階で、製品として光学シートを出荷する際に発生する。光学シートは通常、生産性の点で帯状シートの形態で製造され、それをロール状に巻き取り保管、搬送し、必要なときに、用途に応じた形状及びサイズの枚葉シートに切断して出荷する。また、枚葉シートに切断した後の光学シートは、積み重ねて保管、搬送される。これらのロール状態、及び、積み重ね状態では、光学シートの表面(最外面)と、その上に重ねられた光学シートの裏面(対向する最外面)とが互いに接触している。この状態で、保管時や運搬時の振動等によって、互いに接触する表裏面が擦られ、これが原因となって、傷付きや脱落した微粒子による更なる傷付きが発生するのである。このような傷付きは、プリズム面およびプリズム面の反対側の塗膜面(表裏面)のいずれかにも発生する。
ところで、この様な、光学シート使用時までの表裏面の傷付きは、表裏面に保護フィルムを貼り付けておき、光学シートを面光源装置等にアセンブリするときに、該保護フィルムを剥離すれば、解決する。ただ、低コスト化及び省資源の観点から、最終的には不要となる保護フィルムは、なるべくならば省略できる様にするのが好ましい。
【0008】
次に、光学シートが他の光学部材ではなく自分自身を傷付ける現象は、第2には、光学シートを面光源装置等にアセンブリした後の段階で発生する。例えば、特公平1-37801号公報、特表平10-506500号公報等に記載の光学シートを2枚重ね合わせてアセンブリする場合に、この現象が生じる。なお、重ねられる二枚の光学シートの各々は、通常、配列方向に配列された単位光学要素として三角柱プリズムを一方の面に有し、且つ、この二枚の光学シートが、三角柱プリズムの配列方向が互いに直交するようにして、同じ向きで重ね合わされる。
この様に複数枚の光学シートを隣接して重ね合わせた構成を有する面光源装置、或いは該面光源装置を用いた液晶表示装置などの光学装置では、各光学シートがアセンブリされた後の状態でも、振動の影響で同様に光学シートの表裏面に傷付きが発生することがある。それは、光学装置に於いても、半製品、商品などとして保管、搬送するときに振動が加わることがあるからである。
また、光学シートを重ね合わせなくても、導光板や液晶パネル等の他の光学部材と光学シートとが隣接配置されると、他の光学部材との接触状態での保管、搬送等による振動によって、同様に光学シート自体の表裏面が傷付くことがある。
尚、プリズム等の単位光学要素の方は、比較的広い面積で外力を受けることが出来、又微粒子等の脱落し易い物を含まない。したがって、特開2009-37204号公報記載のような柔軟で復元性を有する樹脂で構成することによって、外力による傷付きを防止する設計も可能である。一方、凹凸塗膜の方は、比較的狭い面積に応力が集中することに加えて、脱落し易い微粒子も含有する為、塗膜に復元性を付与しても傷付き防止は、依然困難であった。
・・・(中略)・・・
【0011】
すなわち、本発明の課題は、プリズム等からなる光学要素面の反対側となる面を、光学密着を防ぐ為に粗面からなる塗膜面とするか、或いは、光学密着の防止は他の部材に任せて自身は平滑面からなる塗膜面とした構成の光学シートについて、光学シートを2枚重ねて使用したり、ロールにして保管や運搬したりして光学シート同士で表裏が接触しても、或いは他の部材と接触しても、光学シート自体の少なくとも塗膜面が傷付き難い耐擦傷性に優れ、しかも、輝度向上も可能となる光学シートを提供することである。
また、この様な光学シートを用いることで、該光学シート等の光学部材が傷付き難い、光学部材、面光源装置および液晶表示装置を提供することである。」

エ 「【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態を説明するための図であって、光学シートを示す斜視図である。
【図2】図2は、光学シートの表裏面の鉛筆硬度の好ましい関係を説明するためのグラフである。
・・・(中略)・・・
【図4】図4は、光学シートの他の実施の形態(2枚重ね合わせ形態)を示す断面図である。
・・・(中略)・・・
【図6】図6は、図1の光学シートを含んだ面光源装置および液晶表示装置を示す断面である。」

オ 「【発明を実施するための形態】
・・・(中略)・・・
【0021】
<〔A〕概要>
先ず、本発明による光学シートの一実施形態を、図1の斜視図で示す。同図に示す光学シート10は、シート状の本体部1の一方の面1p(図面では図面上方の面)に、単位光学要素2として断面三角形の単位柱状プリズムをその稜線方向を互い平行にして多数配列してなるプリズム群を有し、該本体部1の他方の面1qに、最外面が粗面をなす凹凸塗膜3を有する。この凹凸塗膜3は、一例としてバインダ樹脂中に微粒子を含有する塗料を本体部1に塗工することによって形成され、微粒子の存在によって最外面に微小突起が形成されることで最外面を粗面にしたものである。そして、この光学シート10は、単位光学要素2を有する側の最外面が光学要素面Peとなり、凹凸塗膜3を有する側の最外面が塗膜面Pmとなっている。
・・・(中略)・・・
【0025】
図1の実施形態に戻って、更に本実施形態では、配列された単位光学要素2で形成される光学要素面Peの硬度Heと、凹凸塗膜3又は平滑塗膜4(両者を総称して、単に「塗膜」或いは「塗膜3、4」とも呼称する)の表面からなる塗膜面Pmの硬度Hmと、をJIS K5600-5-4(1999年)に準拠して荷重1000g、速度1mm/sの条件で測定された鉛筆硬度で評価した場合、硬度HmがF以上となり、且つ、硬度Hm≧硬度He、つまり硬度Hmが硬度He以上となる。
【0026】
図2は、光学要素面Peの硬度Heを横軸(X軸)にとり、塗膜面Pmの硬度Hmを縦軸(Y軸)にとり、硬度Heと硬度Hmの好ましい領域を示すグラフである。同図に示す様に、硬度HmがF以上で且つ硬度Hm≧硬度Heを満たす領域が、領域Eaである。この領域Ea内に硬度Heと硬度Hmを設定することで、光学シート1自身の耐擦傷性を向上させることができる。なお、硬度Heについては、例えば「B」の如く「F」に比べて軟らかくても、外力が加わると変形し外力から開放されたときは弾性復元力で元の形状に戻ることで、傷付きを効果的に防止することができるので、塗膜面Pmの硬度Hmの様に、特にF以上にする必要はない。通常は、光学要素面の硬度Heは4B以上に設定する。
【0027】
更に好ましくは、硬度He+3≧硬度Hm≧硬度He+2とする領域Ebとすることで、光学シートの耐擦傷性を顕著に向上させることができ、とりわけ光学シート同士を重ね合わせた際に、傷の発生を極めて効果的に防止することが可能となる。特に、2枚の光学シート10が図4、5の如く、光学要素面Peと裏側面Pmとが互いに接触し且つ相互に強く摩擦が加わった場合、硬度Hm-硬度He>3となる場合には塗膜面Pmと比較して光学要素面Peが軟らか過ぎて、光学要素面Peが傷付いてしまう可能性がある。逆に、硬度Hm-硬度He<1となる場合には塗膜面Pmに対して光学要素面Peが硬過ぎ(脆くなり)、光学要素面Peが傷付いてしまう可能性があり、また、硬い光学要素面Peによって塗膜面Pmが傷付けられてしまう可能性もある。」

カ 「【0028】
<〔B〕用語の定義>
次に、本発明において用いる主要な用語について、その定義をここで説明しておく。
【0029】
本体部1の「一方の面1p」は、本体部1の単位光学要素2が配列される側の面である。また、光学シート10の「一方の面1p」の側を「光学要素側」と呼ぶ。「一方の面1p」は、単位光学要素2が隙間なく埋め尽くして配列されて光学要素群を構成するときは、本体部1自体には最外面乃至界面となる面としては実在しない仮想的な面となる。また、単位光学要素2が隙間を空けて配列され光学要素群を構成するときは、本体部の「一方の面1p」は、単位光学要素2の間に露出した実在の面を含む。
「光学要素面Pe」は、本体部1の一方の面1pが、隙間なく配列された単位光学要素2によって埋め尽くされる場合、隙間無く配列された単位光学要素2のみからなる面となる。また、単位光学要素2が本体部1の一方の面1pに隙間を空けて配列される場合、光学要素面Peは、隙間を空けて配列された単位光学要素2の表面と、単位光学要素2間に露出した本体部1の一方の面1pと、を含んで構成される。
・・・(中略)・・・
【0030】
「主切断面」とは、単位光学要素2が単位柱状プリズムなど柱状形状である場合において、本体部1の「一方の面1p」に立てた法線nd(図1参照)に平行な断面のうち、単位光学要素2の配列方向にも平行な断面のことを言う。言い換えると、該法線ndに平行で且つ単位光学要素2(単位柱状プリズム)の稜線に直交する断面である。尚、図1に於いては、Z軸が該法線ndと平行方向となっている。
・・・(中略)・・・
「粗面」とは、上記「平滑」の条件を満たさない凹凸面を意味する。即ち、或る表面(最外面)の十点平均粗さRz値が0.38μm以上であれば、一応粗面と言える。但し、光学密着防止効果、光拡散効果等の粗面の光学的効果を可視光波長の全帯域に亙って十分に奏する為には、表面の十点平均粗さRz値が、最長の可視光0.78μmを超過することが好ましい。通常は、粗面の十点平均粗さRz値は1?10μm程度とする。」

キ 「【0031】
<〔C〕光学シート>
以下、光学シートについて、各層について更に説明する。
【0032】
〔本体部〕
本体部1としては、ポリリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、・・・(中略)・・・等の透明無機材料を用いることができる。
本体部1は「シート状」であるが、ここで「シート」とは、「フィルム」、「板」の概念も含むものであり、これらの用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。つまり、厚みや剛性によって区別されるものではない。例えば、本体部1の厚さは、25μm?5mm等である。
但し、生産性に優れる点では、光学シートはロールに巻き取れる可撓性を有することが好ましく、この点では、剛直な所謂板乃至は基板と呼ばれるものではない方が好ましい。この点を考慮すると、本体部1の厚さは、25μ?500μm程度が好ましい。
・・・(中略)・・・
【0033】
(本体部と単位光学要素の形成)
・・・(中略)・・・
【0034】
〔単位光学要素〕
・・・(中略)・・・
【0035】
(単位柱状プリズム)
単位柱状プリズムは、代表的には主切断面の形状が、本体部1側を底辺とする三角形形状の単位プリズムである。・・・(中略)・・・
【0037】
(寸法及び分布の具体例)
ここで、単位柱状プリズム及びそれからなる光学要素群(プリズム群)の寸法の具体例を示せば、単位柱状プリズムの底面の幅(プリズム配列方向での寸法)は10?500μm、稜線を形成する頂部の高さは5?250μm、主切断面形状は二等辺三角形状のとき稜線を形成する頂角は80?110°好ましくは90°である。
・・・(中略)・・・
【0040】
〔凹凸塗膜〕
塗膜のうち凹凸塗膜3の形態は、少なくともバインダ樹脂を含み、外部(周囲の雰囲気等)に露出した最外面が粗面となった透明な層である。凹凸塗膜3は、微粒子を含まない構成であって、成形型によって塗膜表面に凹凸(粗面)を形成したものでも良いし、或はバインダ樹脂と微粒子とを含む構成とし、微粒子の塗膜表面への突出によって凹凸を形成しても良い。以下、特に、バインダ樹脂に微粒子を含む形態について詳述する。
この様な形態の場合、凹凸塗膜3は、バインダ樹脂と微粒子を必須成分とし、更に必要に応じて、各種添加剤、溶剤等を含む樹脂組成物(塗液、塗料)を塗布することによって形成される得る。・・・(中略)・・・
【0041】
上記バインダ樹脂としては、第1には、微粒子をバインダ樹脂マトリック中に強固に固定し、凹凸塗膜3自体の本体部1からの剥離を防ぐ観点から、本体部1及び微粒子との密着性が強い透明な樹脂を適宜採用すると良い。
この様なバインダ樹脂としては、熱可塑性樹脂、或いは、熱硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂等の硬化性樹脂などの透明な樹脂を使用できる。例えば、・・・(中略)・・・電離放射線硬化性樹脂は紫外線や電子線等の電離放射線の照射で硬化する、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂等である。なお、硬化性樹脂の場合は、硬化剤、重合開示剤などが該樹脂成分の一部として含み得る。
上記各種バインダ樹脂のなかでも、特に電離放射線硬化性樹脂は、硬化が迅速で生産性に優れる上、形成される凹凸塗膜3の塗膜強度を強くでき耐擦傷性を優れたものに出来る点で好ましい。
【0042】
該電離放射線硬化性樹脂としては、電離放射線で架橋等の反応により重合硬化するモノマー及び/又はプレポリマーが用いられる。
上記モノマー(単量体)としては、ラジカル重合性モノマーとして、例えば、・・・(中略)・・・ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート・・・(中略)・・・等の各種(メタ)アクリレートが挙げられる。・・・(中略)・・・
【0045】
((屈折率))
・・・(中略)・・・
【0047】
また、バインダ樹脂は、各種物性を調整する為に2種以上を併用しても良いが、そのなかでも屈折率を調整し低下させる為の好ましい樹脂の一種として、公知の低屈折率樹脂を併用しても良く、或いは、低屈折率樹脂を単独使用しても良い。低屈折率樹脂としては、例えば、フッ素原子含有ポリマーを用いることができる。フッ素原子含有ポリマーは単独使用でも良いが、密着性などの物性調整の為に、フッ素原子は含有していないフッ素原子非含有ポリマーを併用することもできる。・・・(中略)・・・
フッ素原子含有ポリマーとしては、塗膜強度や硬化が迅速な点で電離放射線硬化性のものを好ましく用いることができる。例えば、フッ素原子含有アクリレート系電離放射線硬化性樹脂である。フッ素原子含有ポリマーによれば、屈折率Nmを1.45以下にすることが可能である。また、フッ素原子含有アクリレート系電離放射線硬化性樹脂は、フッ素原子を含有していないフッ素原子非含有アクリレート系電離放射線硬化性樹脂を併用しても良い。例えば、多官能アクリレート系モノマーの併用などである。
【0048】
また、フッ素原子含有ポリマーとしては、市販品を用いることもできる。例えば、JSR社製の・・・(中略)・・・オプスターJN35・・・(中略)・・・等が挙げられる。
・・・(中略)・・・
【0051】
なお、この微粒子の屈折率は、通常は、低屈折率材料と兼用はさせない為、バインダ樹脂の屈折率になるべく近い屈折率のものを用いることが、微粒子とバインダ樹脂との界面で光を拡散させない点で好ましい。但し、光拡散機能を意識的に光学シートに付与したい場合には、この限りではない。
ところで、この表面凹凸形成用の微粒子を、前記した低屈折率剤と兼用させることも出来る。但しその為には、低屈折率化効果の点で、バインダ樹脂に対して50?200wt%程度などと、同レベルで含有させる必要がある。しかし、こうすると、表面凹凸形成用の微粒子の方はバインダ樹脂に対して通常最大でも5wt%以下で含有させるのが好ましいので、該微粒子によって、表面凹凸を意図した様に形成することが難しくなり、且つ光拡散性が必要以上に強くなり過ぎる。従って、表面凹凸形成用の微粒子は、光学密着防止用の可視光線波長以上(Rz≧0.78μm)の微小突起を形成するのに足る1?10μm程度の粒径で、且つバインダ樹脂と極力屈折率が近い物とし、一方、低屈折率剤としての無機微粒子や中空状微粒は、不要な光拡散発現を回避する為に、可視光線の最小波長未満である0.01?0.2μm程度の粒径で、且つ屈折率もNm=(Ns)^(1/2)の関係を極力満たす物とし、各々にその機能を分担させ併用するのが好ましい。
・・・(中略)・・・
【0054】
また、球状粒子の(個々の粒子の)最大径が10μmを超えると光の進路変更作用が増加する。この為、光学シート10を輝度向上シートとして使用するときに、光学シート10の光学要素面Peで機能させる集光作用が低下しその光学機能が損なわれ始める。従って、極力10μm超の粒子は避けるのが好ましい。
もっとも、あえて、粒子径の大きいものを採用して、適度に拡散させる機能を付与する形態を排除するものではない。一方、球状粒子の(個々の粒子の)最小径が1μm未満となると、凹凸塗膜3を形成する塗料組成物での球状粒子の分散に高度の技術が必要になるとともに、粗面の凹凸の突起高さ(十点平均粗さRzで評価)を必要とされる0.78μm以上確保することが難しくなり、また材料自体が高価となる等の点で好ましくない。
なお、球状粒子など微粒子の含有量は、バインダ樹脂に対して、例えば2?15質量%とする。微粒子の含有量を調整することで、微小突起の面密度を調整することができる。
【0055】
なお、凹凸塗膜3に、光を拡散させる光拡散機能を積極的に付与してもよい。例えば、凹凸塗膜3が含有する微粒子を光拡散剤として機能させることによって、光拡散機能が付与され得る。微粒子を光拡散剤として機能させるには、微粒子とバインダ樹脂との屈折率差の大きい材料を用いると良い。この場合、微粒子とバインダ樹脂との屈折率の差は0.1以上とすることができ、好ましくは0.15以上とすることができる。
・・・(中略)・・・
【0061】
〔表裏面の硬度〕
本発明では、光学シート10の表面側、即ち、単位光学要素2側の最外面である光学要素面Peの硬度Heと、光学シート10の裏側面、即ち、凹凸塗膜3側の粗面を成す最外面、或いは平滑塗膜4側の平滑面を成す最外面、であるところの塗膜面Pmの硬度Hmは、鉛筆硬度で特定された硬度とする。
【0062】
(鉛筆硬度)
ここで、硬度He及び硬度Hmに関する鉛筆硬度とは、JIS K5600-5-4(1999年版)に準拠して荷重1000g、速度1mm/sの条件で測定された鉛筆硬度のことを意味する。そして、凹凸塗膜3又は平滑塗膜4の塗膜面Pmの硬度Hmを鉛筆硬度でF以上とし、且つ、該硬度Hmが、反対側の面の光学要素面Peの鉛筆硬度による硬度He以上(Hm≧He)となっていることが好ましい。図2のグラフで示せば、光学シート10について測定された硬度Hm及び硬度Heは、領域Ea内に位置していることが好ましい。
【0063】
なお、硬度Hmを硬度He以上とするのは、塗膜面Pmの硬度Hmを光学要素面Peの方の硬度He以上にしないと、塗膜面Pmが、傷付き易いからである。一方、光学要素面Peは外力が加えられた時は変形し外力から開放された時は元に戻る様に軟らかくすることによって、光学要素面Peの傷付きを防ぐことができる。この点について、塗膜面Pmは、特に、粗面を有する凹凸塗膜3の場合は、逆に、外力が加えられた時でも光学密着を防止する為に相応に変形せずに耐えて形状を維持させる必要がある。加えて、凹凸塗膜3における凹凸の点状突出部には、光学要素面Peに比べて、応力が集中し、これに耐える必要も有る。その為、硬度Hmは硬度He以上とするのが好ましい。
・・・(中略)・・・
【0065】
この様な硬度及び硬度関係にすることによって、光学シートの表裏面同士の(光学要素面Peと塗膜面Pmとの間の)接触、或いは光学シートと接触面が粗面の他の光学部材との接触が生じても、光学シートの光学要素面Peや塗膜面Pmが削られる様な傷付きを効果的に防ぐことができる。
【0066】
更に、好ましくは、硬度Heと硬度Hmとの関係は、鉛筆硬度のスケール上で1単位硬い硬度を+1としたときに、硬度He+3≧硬度Hm≧硬度He+2とするのが良い。すなわち、塗膜面Pmの硬度Hmは、光学要素面Peの硬度Heの硬度よりも、最低限、鉛筆硬度のスケール上で+2単位以上硬くすることが好ましい。但し、最大でも、塗膜面Pmの硬度Hmは、光学要素面Peの硬度Heに対して、鉛筆硬度のスケール上で+3単位までは硬くして良いが、3単位を超過して硬くないことが好ましい。単純に考えれば鉛筆硬度は硬くするほど傷付き難くなると考えられるが、実際には硬過ぎても光学シート10の表裏面を重ね合わせた際に、逆に、光学要素面Peの方が傷付くため、上記の様な範囲関係とするのが良い事が判明した。
又、塗膜面の硬度Hm及び光学要素面Heを上記の如く規定すること、特に塗膜面の硬度に上限He+3を設けることは、塗膜3、4による光学シート10と隣接して配置される他の光学部材に対する傷付きを解消する上でも有效である。
・・・(中略)・・・
【0067】
この様な硬度及び硬度関係にすることによって、光学シート同士の表裏面の接触、或いは光学シートと他の部材との接触(とりわけ、平滑塗膜4の場合は接触面が粗面を成す部材との接触)が生じても、光学シートの光学要素面Peや塗膜面Pmが削られる様なことをより確実に防ぐことができる(表1、表3および表4参照)。
・・・(中略)・・・
【0073】
〔2枚重ね形態〕
本発明による光学シート10は、図4及び図5の断面図で概念的に示す様に、2枚重ね合わせた状態の光学シート(光学部材)10Aとしても良い。この2枚重ね合わせた状態とは、上下の光学シート10a,10b同士が間に空間を空けて配置されることではなく、互いに接触しており隣接配置されることを意味する。・・・(中略)・・・
【0074】
なお、図4及び図5に示された光学部材10Aでは、上下の光学シート10a,10bは、光学要素面Peが同じ側を向くようにして重ねられた形態であるが、互いに異なる側を向くようにして重ねられる形態を本発明は排除しない。・・・(中略)・・・
【0075】
そして、このような光学シート(光学部材)10Aが面光源装置等に組み込まれた場合、互いの接触に起因した光学シート10a,10bの塗膜面Pm及び光学要素面Peの削れ等が生じ難い耐擦傷性が得られる。また、屈折率Nm,Nmが調節された光学シート(光学部材)10Aによれば、輝度を向上させることもできる。
・・・(中略)・・・
【0079】
例えば、図6で例示の面光源装置30では、光源31と、該光源31を側面に備えた導光板32と、該導光板32の出光面上に隣接配置された光学シート10と、を備えている。光源31、導光板32、或いは、必要に応じて設けられるその他光学部材(図示せず)は、公知のものを適宜採用することができる。なお、図6に示された面光源装置30に於いては、光学シート10は、その光学要素面Peを図面上方の出光面側とする向きで配置されている。
一方、光学シート10の塗膜面Pmは導光板32側であり、塗膜面Pmは、光学シート10と接触する他の光学部材である導光板32の出光面に接触している。しかし、同図の形態では、光学シート10の塗膜面Pmは凹凸塗膜3によって粗面として形成されている。したがって、凹凸塗膜3によって導光板32との光学密着が防止され、該光学密着による輝度の面内不均一化、干渉縞等を効果的に防げる構成となっている。更に、塗膜面Pmの耐擦傷性が向上しているので、光学シート自身の傷付き、図示された面光源装置内における導光板32の出光面との接触による傷付きを、効果的に防止することができる。
・・・(中略)・・・
【0084】
<〔F〕作用効果>
(1)上述した光学シートでは、最外面が粗面の凹凸塗膜又は最外面平滑な平滑塗膜を設けてあるにも係わらず、光学シートの表裏面の各々の鉛筆硬度及び両者の関係を特定したことで、2枚重ね合わせたときの自身を含めて光学部材に隣接配置して使用したときの、光学シート自体の表裏面の耐擦傷性が向上し、傷付きを効果的に防止することができる。
とりわけ、光学シートがロール状態での保管、運搬等で振動を受けても表裏面の傷付きを防げ、外観不良等で品質が低下しない。その結果、光学シートの表裏両面に通常は使用時まで一時的に貼り付けておく保護フィルムが不要とすることも可能となるので、省資源および低コスト化を図ることができる。
さらに、塗膜と本体部との屈折率関係を規定したことで、耐擦傷性向上の為の塗膜を設ける一方、輝度がその分低下することもなく、塗膜を設けたことによって層数が増えても輝度が低下することがない。すなわち、耐擦傷性を確保した上で輝度も向上できる。
(2)また、上述した面光源装置及び液晶表示装置では、上述した効果の様に光学シートの表裏面の耐擦傷性が向上しているので、装置が、保管や運搬等で振動を受けても組み込まれた光学シートの表裏面の傷付きを効果的に防止することができる。」

ク 「【実施例】
【0085】
以下、実施例及び比較例によって、本発明を更に説明する。
【0086】
<調査1>
まず、調査1として、図1の構成を有する光学シートにについて調査を行った。すなわち、調査1で対象とした光学シートは、凹凸塗膜からなる塗膜を有し、塗膜面が粗面として形成されているようにした。
【0087】
〔凹凸塗膜形成用塗料の準備〕
各種鉛筆硬度の凹凸塗膜を形成するために、次の各組成の塗料を準備した。
・・・(中略)・・・
【0089】
(組成A2:鉛筆硬度F用)
フッ素原子含有ウレタンアクリレート系 49.5質量部
紫外線硬化性樹脂
ペンタエリスリトールトリアクリレート 49.5質量部
微粒子(平均粒子径5μmで単分散の球形状の架橋アクリル 1質量部
系樹脂ビーズ)
(綜研化学株式会社製、MX-500H)
光開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン) 1質量部
(Irgacure(登録商標)184)
溶剤(メチルイソブチルケトン:シクロヘキサノン= 適量
1:1質量比)
・・・(中略)・・・
【0093】
〔実施例A1〕
単位光学要素2として単位柱状プリズムを採用した図1に示された光学シート10を作製した。
先ず、成形型として単位柱状プリズムからなるプリズム群とは逆凹凸形状の型面を有する金属製のシリンダ状の成形型を用意した。そして、この成形型に、下記単位光学要素形成用の樹脂組成の透明なアクリル系の紫外線硬化性樹脂液を塗布し、更にその上に、厚み188μmの透明な2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を重ねた状態で、高圧水銀灯からの紫外線照射によって該樹脂液を硬化させた。そして、単位光学要素2として単位柱状プリズムがその稜線を互いに平行に、シート状の本体部1の一方の面1pに配列して成るプリズム群を有する、プリズムシート部材を作製した。
【0094】
[単位光学要素形成用の樹脂組成]
プレポリマー(カプロラクトン変性ウレタンアクリ 11質量部
レート)
プレポリマー(トリレンジイソシアネート系ウレタ 8質量部
ンアクリレート)
2官能モノマー(ビスフェノールAジアクリレート) 47質量部
3官能モノマー(グリセリンエポキシトリアクリ 30質量部
レート)
開始剤(2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニル 2.5質量部
ホスフィンオキシド)
滑剤(リン酸エステル系滑剤) 1質量部
【0095】
なお、本体部1は上記PETフィルムと、該PETフィルムと成形型面上の凸部と間の上記紫外線硬化性樹脂液の硬化物層の厚みに該当する該硬化物層の一部から構成される。また、該硬化物層の残りの厚み部分が、多数の単位柱状プリズムを単位光学要素2とするプリズム群を構成する。また、単位柱状プリズムの形状は、主切断面形状が、頂角90°の直角二等辺三角形で底辺が50μm、高さは一定で25μm、配列周期は50μmである。また、この単位柱状プリズムからなる単位光学要素2は本体部1の一方の面1pを完全に被覆して、同一形状同一寸法同一周期で、単位光学要素を配列したプリズム構造が形成され、この最外面が光学要素面Peとなっている。
【0096】
次に、上記プリズムシート部材の裏面側である本体部1の他方の面1qに、前記組成A2の凹凸塗膜形成用塗料を塗布し加熱乾燥後、高圧水銀灯から紫外線照射して硬化させて厚み3μmの凹凸塗膜3を形成し、目的とする光学シートを作製した。
得られた光学シートの鉛筆硬度は、光学要素面Peの硬度HeがB、凹凸塗膜面Pmの硬度HmがFを示した。
・・・(中略)・・・
【0109】
〔性能評価〕
上記の実施例A1?A9及び比較例A1?A4の光学シートについて、鉛筆硬度と耐擦傷性を評価した。また、各実施例のマルテンス硬度と回復率を測定した。尚、光学要素面Peの鉛筆硬度試験は、鉛筆をプリズム稜線方向に移動させて行った。
【0110】
(1)鉛筆硬度は、JIS K5600-5-4(1999年)に準拠して、荷重1000g、速度1mm/sの条件で測定した。
(2)耐擦傷性は、次のようにして評価した。まず、透明なアクリル樹脂板上に、1辺の長さが5cmの正方形に裁断した10枚の光学シートを、重ねて配置した。10枚の光学シートは、各光学要素面を下側に向けて且つ各単位光学要素つまり単位柱状プリズムの配列方向を互いに平行にして、重ねた。重ねられた10枚の光学シートの上に、更に、前記と同じ透明なアクリル樹脂板を重ね、四辺周囲を粘着テープで固定した。10枚の光学シートを間に挟んだ一対のアクリル樹脂板を、振動試験機(アイデッスク株式会社製、BF-50UL)の水平な加振台の上に固定し、更にその上から荷重10gの重りを載せて固定した状態で、上下及び左右の3軸同時振動を加えた。振動は、加速度7.3G、周波数67Hzとした。
振動を加えた後の光学シートについて、その表面具合を倍率500倍の顕微鏡による目視観察で確認した。光学要素面Peについては単位柱状プリズムの稜線部分の長さ3mmに亘った領域を観察し、塗膜面Pmについては面積9mm^(2)の正方形の領域を観察して、傷の有無を確認した。
塗膜面(調査1においては、凹凸塗膜面)の耐擦傷性を評価するため、各実施例乃至比較例とも試験後の光学シート5枚について傷の有無の確認を行った。そして、5枚全部の光学シートの塗膜面に傷が発生していなかった場合、塗膜面の耐擦傷性を「優」と評価し、5枚全部の光学シートの塗膜面に傷が発生していた場合、塗膜面の耐擦傷性を「不良」と評価し、一部の光学シートの光学要素面に傷が発生していたが残りの光学シートの塗膜面面に傷が発生していなかった場合、塗膜面の耐擦傷性を「良」と評価した。
光学要素面についての耐擦傷性を評価するため、各実施例乃至比較例とも試験後の光学シート5枚について傷の有無の確認を行った。そして、5枚全部の光学シートの光学要素面に傷が発生していなかった場合、光学要素面の耐擦傷性を「優」と評価し、5枚全部の光学シートの光学要素面に傷が発生していた場合、光学要素面の耐擦傷性を「不良」と評価し、一部の光学シートの光学要素面に傷が発生していたが残りの光学シートの光学要素面に傷が発生していなかった場合、光学要素面の耐擦傷性を「良」と評価した。
・・・(中略)・・・
【0111】
〔性能比較〕
そして、実施例A1?A9及び比較例A1?A4の鉛筆硬度での硬度He及び硬度Hmと、耐擦傷性を表1および図2に示す。図2および表1において、総合評価として、塗膜面Pmおよび光学要素面Peの耐擦傷性の評価が「優」であった場合を○印を示し、塗膜面Pmの耐擦傷性の評価が「優」であり且つ光学要素面Peの耐擦傷性の評価が「良」であった場合を△印で示し、塗膜面Pmの耐擦傷性の評価が「良」または「不良」となり或いは光学要素面Peの耐擦傷性の評価が「不良」となった場合を×印で示している。また、これら○印、△印、及び×印の脇に沿えてあるアルファベットA?Hが、表1における「グラフ上の位置」に対応する記号である。例えば、点AのHe=BでHm=HBの座標(B,HB)は比較例A1に対応する。
【0112】
【表1】
・・・(中略)・・・
【0113】
表1及び図2に示すように、塗膜面Pmの硬度Hmが光学要素面Peの硬度Heよりも低くなった比較例A3及び比較例A4では、塗膜面Pmの耐擦傷性が「不良」となった。また、塗膜面Pmの硬度Hmが光学要素面Peの硬度He以上となっていても、塗膜面Pmの硬度Hmが「F」より低くなった比較例A1及び比較例A2では、塗膜面Pmの耐擦傷性が「優」にはならなかった。そして、硬度Hmが硬度He以上(硬度Hm≧硬度He)且つ硬度Hmが「F」以上(硬度Hm≧F)を満たす各実施例では、塗膜面Pmの耐擦傷性が「優」となり且つ光学要素面Peの耐擦傷性が「良」以上となり、塗膜面Pmでの耐擦傷性を重視した総合評価が良好な「○」又は「△」となった。
【0114】
ただし、「硬度Hm-硬度He>3」となった実施例A3、実施例A4、実施例A7では、実用上は問題無いとされる程度の傷が、1枚または2枚の光学シートの光学要素面Peに生じていた。また、「硬度Hm-硬度He」が「1」または「0」となった実施例A8、実施例A9においても、実用上は問題無いとされる程度の傷が、1枚または2枚の光学シートの光学要素面Peに生じていた。一方、硬度He+3≧硬度Hm≧硬度He+2を満たす実施例A1、実施例A2、実施例A5、実施例A6では、光学要素面Peおよび
塗膜面Pmの耐擦傷性が共に「優」となり、総合評価が「○」となった。
【0115】
次に、表2に、上記各実施例及び各比較例のうちの数例について、マルテンス硬さ試験に於ける回復率を、鉛筆硬度と共に示す。表2に示す様に、回復率が50%以上であると耐擦傷性が良いことが判り、41.6%(比較例A1)と50%未満であると耐擦傷性が悪いことが判る。
・・・(中略)・・・
【0116】
【表2】
・・・(中略)・・・
【0117】
<調査2>
調査2として、図1の構成を有する光学シートについて調査を行った。すなわち、調査2で対象とした光学シートは、凹凸塗膜からなる塗膜を有し、塗膜面が粗面として形成されているようにした。
【0118】
〔凹凸塗膜形成用塗料の準備〕
各種鉛筆硬度の凹凸塗膜を形成するために、次の各組成の塗料を準備した。

・・・(中略)・・・
【0120】
(組成B2:鉛筆硬度F用)
紫外線硬化型フッ素原子含有ポリマー(屈折率1.41) 80質量部
(オプスター(登録商標)JN35、JSR(株)製、
固形分15wt% 、溶媒メチルイソブチルケトン)
ペンタエリスリトールトリアクリレート(屈折率1.51) 19質量部
微粒子(平均粒子径5μmで単分散の球形状の架橋アクリ 1質量部
ル系樹脂ビーズ)
(綜研化学株式会社製、MX-500H)
光開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン) 1質量部
(Irgacure(登録商標)184)
溶剤(メチルイソブチルケトン:シクロヘキサノン= 適量
1:1質量比)
・・・(中略)・・・
【0124】
〔実施例B1〕
単位光学要素2として単位柱状プリズムを採用した図1に示された光学シート10を作製した。単位柱状プリズムの形状は、実施例A1と同様にした。実施例B1に於いて、凹凸塗膜形成用塗料を組成B2に変更した他は、実施例A1と同様にして光学シートを作製した。したがって、実施例B1において、単位光学要素形成用の樹脂組成物は、実施例A1と同様の単位光学要素形成用樹脂組成物を用いて、実施例A1と同様の形状を有した単位柱状プリズムを作製した。なお、単位光学要素形成用の樹脂組成物は、実施例A1と同様に、厚み188μmの透明な2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)とし、このPETフィルムの屈折率は1.65であった。
【0125】
塗膜面Pmの最外面のRz(JIS B0601(1994年版)規定)は3.26μmであった。得られた光学シートの鉛筆硬度は、光学要素面Peの硬度HeがB、塗膜面Pmの硬度HmがFを示した。また、本体部1の塗膜に対面する部分の屈折率Nsは1.65であり、凹凸塗膜3を成す樹脂の屈折率Nmは1.47であった。
・・・(中略)・・・
【0140】
〔性能評価〕
上記の実施例B1?B9及び比較例B1?B4の光学シートについて、鉛筆硬度と耐擦傷性を評価した。また、実施例B1?B7及び比較例B1,B2,D1,D2の光学シートについて、輝度を評価した。尚、光学要素面Peの鉛筆硬度試験は、鉛筆をプリズム稜線方向に移動させて行った。
【0141】
(1)鉛筆硬度は、上述した実施例A1?A9及び比較例A1?A4と同様に評価した。
(2)耐擦傷性は、上述した実施例A1?A9及び比較例A1?A4と同様に評価した。
(3)輝度は、三星電子社製の液晶テレビジョン受像装置(品番:UN40B6000VF)の画面側から液晶表示板および各種光学部材を除去して、エッジライト型面光源装置(最表面が導光板)を取り出し、該面光源装置の出光面上(導光板上)に実施例B1?B7及び比較例B1,B2,D1,D2の光学シートを、その塗膜面Pm側を導光板側に向けて載置して、該導光板の法線方向に於ける輝度を測定し、評価した。輝度は、輝度計(株式会社トプコン製、BM-7)を用いて計測した。評価の方法は、比較例B1及び実施例B1?B4は、塗膜を設けず単位光学要素2がこれらと同一樹脂の比較例D1の輝度を100%とした時の百分率で評価し、比較例B2及び実施例B5?B8は、塗膜を設けず単位光学要素2がこれらと同一樹脂の比較例D2の輝度を100%とした時の百分率で評価した。
【0142】
〔性能比較〕
そして、実施例B1?B9及び比較例B1?B4,D1,D2の鉛筆硬度での硬度He及び硬度Hmと、耐擦傷性と、塗膜屈折率と、正面方向の輝度を、表3に示す。
【0143】
【表3】


【0144】
実施例B1?B9及び比較例B1?B4について、塗膜面Pmの硬度Hmおよび光学要素面Heの硬度Peと耐擦傷性との関係は、図2に示された実施例A1?A9及び比較例A1?A4と同様になった。
【0145】
具体的には、表3及び図2に示すように、塗膜面Pmの硬度Hmが光学要素面Peの硬度Heよりも低くなった比較例B3及び比較例B4では、塗膜面Pmの耐擦傷性が「不良」となった。また、塗膜面Pmの硬度Hmが光学要素面Peの硬度He以上となっていても、塗膜面Pmの硬度Hmが「F」より低くなった比較例B1及び比較例B2では、塗膜面Pmの耐擦傷性が「優」にはならなかった。そして、硬度Hmが硬度He以上(硬度Hm≧硬度He)且つ硬度Hmが「F」以上(硬度Hm≧F)を満たす実施例B1?B9では、塗膜面Pmの耐擦傷性が「優」となり且つ光学要素面Peの耐擦傷性が「良」以上となり、塗膜面Pmでの耐擦傷性を重視した総合評価が良好な「○」又は「△」となった。
【0146】
ただし、「硬度Hm-硬度He>3」となった実施例B3、実施例B4、実施例B7では、実用上は問題無いとされる程度の傷が、1枚または2枚の光学シートの光学要素面Peに生じていた。また、「硬度Hm-硬度He」が「1」または「0」となった実施例B8、実施例B9においても、実用上は問題無いとされる程度の傷が、1枚または2枚の光学シートの光学要素面Peに生じていた。一方、硬度He+3≧硬度Hm≧硬度He+2を満たす実施例B1、実施例B2、実施例B5、実施例B6では、光学要素面Peおよび
塗膜面Pmの耐擦傷性が共に「優」となり、総合評価が「○」となった。」
(当合議体注:段落【0089】,【0094】及び【0120】の組成物一覧については、レイアウトが崩れないように、スペース等を調整した。)

ケ 「【図1】



コ 「【図2】



サ 「【図4】


シ 「【図6】



ス 上記クの段落【0117】によれば、「調査2で対象とした光学シートは、凹凸塗膜からなる塗膜を有し、塗膜面が粗面として形成されているようにした」ものである。
そうすると、「調査2で対象とした」〔実施例B1〕の「光学シート」は、「凹凸塗膜からなる塗膜を有し、塗膜面が粗面として形成され」たものである。

セ 上記クの段落【0124】によれば、〔実施例B1〕は、「単位光学要素2として単位柱状プリズムを採用した」「光学シート10」を作製したものである。また、「単位柱状プリズムの形状は、実施例A1と同様にし」、「凹凸塗膜形成用塗料を組成B2に変更した他は、実施例A1と同様にして光学シートを作製し」、「単位光学要素形成用の樹脂組成物は、実施例A1と同様の単位光学要素形成用樹脂組成物を用いて、実施例A1と同様の形状を有した単位柱状プリズムを作製し」たものである。
ここで、〔実施例B1〕において「同様にして光学シートを作製し」たとしている〔実施例A1〕は、上記クの段落【0093】?【0096】に記載された方法により作製したものである。
また、上記クの段落【0095】によれば、〔実施例A1〕の「プリズムシート部材」の「単位柱状プリズムの形状は、主切断面形状が、頂角90°の直角二等辺三角形で底辺が50μm、高さは一定で25μm、配列周期は50μmであ」る。
ここで、上記カの段落【0030】によれば、「主切断面」とは、「単位光学要素2が単位柱状プリズム」「である場合において」、「本体部1の一方の面1pに立てた法線ndに平行な断面のうち、単位光学要素2の配列方向にも平行な断面」と定義されるものである。
さらに、上記クの段落【0095】によれば、〔実施例A1〕においては、「この単位柱状プリズムからなる単位光学要素2は本体部1の一方の面1pを完全に被覆して、同一形状同一寸法同一周期で、単位光学要素を配列したプリズム構造が形成され、この最外面が光学要素面Peとなっている」ものである。

ソ 上記クの段落【0124】からみて、〔実施例B1〕において用いられる「凹凸塗膜形成用塗料」の組成は、段落【0120】に記載の(組成B2)である。

タ 上記クの段落【0125】によれば、〔実施例B1〕の「光学シート」の「塗膜面Pmの最外面のRz(JIS B0601(1994年版)規定)は3.26μmで」あり、「得られた光学シートの鉛筆硬度は、光学要素面Peの硬度HeがB、塗膜面Pmの硬度HmがF」である。
ここで、上記クの段落【0110】によれば、「鉛筆硬度は、JIS K5600-5-4(1999年)に準拠して、荷重1000g、速度1mm/sの条件で測定した」ものである。

チ なお、上記クの段落【0124】における「単位光学要素形成用の樹脂組成物は、実施例A1と同様に、厚み188μmの透明な2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)とし」という記載は、段落【0093】の記載を考慮すると、「単位光学要素形成用の樹脂組成物の上には、実施例A1と同様に、厚み188μmの透明な2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を重ね」ることを意味すると解するのが相当である。

ツ 以上ス?チより、引用例1には、〔実施例B1〕の「光学シート」として以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「成形型として単位柱状プリズムからなるプリズム群とは逆凹凸形状の型面を有する金属製のシリンダ状の成形型を用意し、
この成形型に、単位光学要素形成用の樹脂組成の透明なアクリル系の紫外線硬化性樹脂液を塗布し、
更にその上に、厚み188μmの透明な2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を重ねた状態で、高圧水銀灯からの紫外線照射によって該樹脂液を硬化させ、
単位光学要素2として単位柱状プリズムがその稜線を互いに平行に、シート状の本体部1の一方の面1pに配列して成るプリズム群を有する、プリズムシート部材を作製し、
本体部1は上記PETフィルムと、該PETフィルムと成形型面上の凸部と間の上記紫外線硬化性樹脂液の硬化物層の厚みに該当する該硬化物層の一部から構成され、該硬化物層の残りの厚み部分が、多数の単位柱状プリズムを単位光学要素2とするプリズム群を構成し、
上記プリズムシート部材の裏面側である本体部1の他方の面1qに、組成B2の凹凸塗膜形成用塗料を塗布し加熱乾燥後、高圧水銀灯から紫外線照射して硬化させて凹凸塗膜3を形成して作製された光学シートであって、
凹凸塗膜3からなる塗膜を有し、塗膜面が粗面として形成されており、
単位柱状プリズムの形状は、主切断面形状が、頂角90°の直角二等辺三角形で底辺が50μm、高さは一定で25μm、配列周期は50μmであり、主切断面とは、本体部1の一方の面1pに立てた法線ndに平行な断面のうち、単位光学要素2の配列方向にも平行な断面であり、
この単位柱状プリズムからなる単位光学要素2は本体部1の一方の面1pを完全に被覆して、同一形状同一寸法同一周期で、単位光学要素2を配列したプリズム構造が形成され、この最外面が光学要素面Peとなっており、
凹凸塗膜形成用塗料の組成B2は、
(組成B2:鉛筆硬度F用)
紫外線硬化型フッ素原子含有ポリマー(屈折率1.41) 80質量部
(オプスター(登録商標)JN35、JSR(株)製、
固形分15wt% 、溶媒メチルイソブチルケトン)
ペンタエリスリトールトリアクリレート(屈折率1.51) 19質量部
微粒子(平均粒子径5μmで単分散の球形状の架橋アクリ 1質量部
ル系樹脂ビーズ)
(綜研化学株式会社製、MX-500H)
光開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン) 1質量部
(Irgacure(登録商標)184)
溶剤(メチルイソブチルケトン:シクロヘキサノン= 適量
1:1質量比)
であり、
塗膜面Pmの最外面のRz(JIS B0601(1994年版)規定)は3.26μmであり、
JIS K5600-5-4(1999年)に準拠して、荷重1000g、速度1mm/sの条件で測定した鉛筆硬度は、光学要素面Peの硬度HeがB、塗膜面Pmの硬度HmがFである、
光学シート。」

(2) 引用例2の記載
本件出願の出願前日本国内において頒布され、原査定の拒絶の理由に引用文献4として引用された刊行物である、特開2012-73372号公報には、以下の事項が記載されている。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、拡散粒子およびバインダー樹脂を含むマット層を有する光学シートに係り、とりわけ、マット層の剥離が生じにくい光学シート、並びに、この光学シートを含む面光源装置および表示装置に関する。
【0002】
また、本発明は、拡散粒子およびバインダー樹脂を含むマット層を有する光学シートの製造方法に係り、とりわけ、欠陥の発生を効果的に防止することができる光学シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
これまで、拡散粒子(光拡散性粒子を意味する。以下、単に拡散粒子とも略称する。)およびバインダー樹脂を含むマット層を有する光学シートが、種々の産業分野において広く用いられてきた(例えば、特許文献1)。一例として、この光学シートは、表示装置の表示面に貼合されて防眩機能を発揮するシートとして用いられ得る。また、別の例として、面状に光を発光する面光源装置に組み込まれて使用され得る。この面光源装置は、例えば、液晶表示パネルを背面側から照明するバックライトとして用いられ得る。
【0004】
このようなマット層を有した光学シートは、まずウェブ状(帯状)のシート材として形成され、このシート材から所望のサイズに切り出されるようになる。このような方法によれば、所望のサイズの枚葉状の光学シートを作製されていくことと比較して、光学シートの生産コストを低減することができる。
・・・(中略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ウェブ状のシート材からエンドミル等の工具を用いて光学シートを切り出す(切り取る)場合、切り子や削りかす(切り屑)が発生してしまう。切り子や削りかすが光学シートに付着すると、当該切り子や削りかすによって光学シートに入射する光の進行方向が変化させられる。このため、光学シートは、期待された光学機能を発揮することができなくなる。
【0007】
また、シート材から切り出された光学シートは、通常、積み重ねられた状態で搬送等の取り扱いを受けることになる。この際、光学シート間に介在する切り子や削りかすによって、光学シートの表面に傷が付いてしまうこともある。さらに、シート材から切り出された光学シートには切断ばりが形成され得り、一つの光学シートの切断ばりが、他の光学シートに傷を付けてしまうこともある。光学シートの表面に傷が付くと、当該傷によって光学シートに入射する光の進行方向が変化させられる。したがって、この場合にも、光学シートが期待された光学機能を発揮することができなくなる。
【0008】
エンドミル等の工具を用いてウェブ状のシート材から光学シートを切り出す(切り取る)場合には、以上のような不具合が生じる。このような不具合を回避するため、打ち抜きによって、ウェブ状のシート材から光学シートを抜き出すことも検討されている。しかしながら、打ち抜きによってシート材から光学シートを取り出す場合、切り子や削りかすは発生しないものの、光学シートを切り出す場合と同様の異物付着や傷付き等の不具合が生じ得ることが分かった。
【0009】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、欠陥の発生を効果的に防止することができる光学シートの製造方法を、提供することを目的とする。
【0010】
また、本件発明者は、光学シートの製造方法の改善を鋭意研究していく中で、マット層の剥離が生じにくい光学シートを発明するにいたった。すなわち、本発明は、マット層の剥離が生じにくい光学シート、並びに、この光学シートを含む面光源装置および表示装置を提供することも目的とする。」

イ 「【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態を説明するための図であって、光学シートの一例を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1のII-II線に沿った断面図である。
・・・(中略)・・・
【図7】図7は、図6の点線で囲まれた部分を拡大して示す断面図である。」

ウ 「【0028】
図1および図2に示された光学シート10は、基材層15と、基材層15の一方の側に設けられたマット層20と、を有している。基材層15は、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂製フィルムから形成され、マット層20を支持する層として機能する。
【0029】
マット層20は、拡散粒子21およびバインダー樹脂22を含んでいる。マット層20の拡散粒子21は、アクリル系樹脂やスチレン系樹脂等の有機高分子からなる粒子、アルミナやシリカ等の金属化合物からなる粒子、気体を含有した多孔質物性の粒子等、種々の既知の粒子を用いることができる。また、拡散粒子21は、図2に示された例のように球状である必要はなく、例えば回転楕円体形状や多面体形状等の種々の形状を有することができる。また、樹脂バインダー22としては、樹脂材料系として、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂等の樹脂系が用いられ、又硬化形態として、熱硬化型や電離放射線硬化型(これら硬化形態の樹脂は、熱硬化型樹脂や電離放射線硬化型樹脂とも呼称される)、或は熱可塑性樹脂からなる溶剤乾燥硬化型、加熱熔融冷却固化型等の硬化形態の既知の種々の樹脂材料が用いられ得る。
【0030】
マット層20は、光学シート10の一方の側の表面をなす外側面20aと、外側面20aとは反対側の面であって基材層15に対面する内側面20bと、内側面20bと外側面20aとの間の端面20cと、含んでいる。図2によく示されているように、マット層20の外側面20aは、拡散粒子21が存在する位置に対応して凸部が形成された凹凸面として、構成されている。すなわち、マット層20の外側面20aによって形成された光学シート10の一方の側の表面10aは、凹凸面として形成されており、光学シート10へ入射する光および光学シート10を透過する光を拡散させる光拡散機能を有している。」

ウ 「 【0071】
本件発明者は、打ち抜き加工で得られた光学シート10への異物付着や打ち抜き加工で得られた光学シート10の損傷の原因について、鋭意研究を重ねた結果として、次のことを知見した。
【0072】
まず、打ち抜き加工で得られた光学シート10に付着する異物の多くが、マット層20中のバインダー樹脂22や光拡散粒子21であった。そして、異物が付着している光学シート10や損傷を受けた光学シート10の打ち抜き加工によって形成された縁部の領域において、マット層20への割れ(クラック)の発生、或いは、マット層20の基材層15からの剥離が生じていた。すなわち、打ち抜き加工中にマット層20に割れや剥離が生じ、この結果、マット層20中のバインダー樹脂22が崩れ落ちて樹脂かすが発生し、また、マット層20中から拡散粒子21が脱落したものと予想される。
【0073】
そして、本件発明者は、このようなことを踏まえてさらに鋭意研究を続け、次の条件1および条件2を満たす場合に、上述した方法での打ち抜き加工中に、マット層20に割れが発生すること及びマット層20が剥離することを防止し得ることを確認した。
【0074】
〔条件1〕
マット層20によって形成された一方の側の表面10aを有するシート材11に対して、当該一方の側の表面10aから打ち抜き刃72が当該シート材11に接触し始めるようにして、打ち抜き加工を施す。なおこの際、JISのK5600-5-4(1999年)に準拠して測定された一方の側の表面10aについての鉛筆硬度が3B以上であることが好ましく、また、JISのK5600-5-4(1999年)に準拠して測定された一方の側の表面10aについての鉛筆硬度が3H以下であることが好ましい。
・・・(中略)・・・
【0077】
このような条件1および条件2のいずれかによって上述した不具合を解消し得る原因は、正確には不明であるが、以下の点が一因になっているものと推測される。ただし、本発明は、以下の推定に拘束されるものではない。
【0078】
打ち抜き加工を施す場合、打ち抜き刃72が、打ち抜き加工時における打ち抜き刃72の進行方向に対して打ち抜き刃72の両面が傾斜した両刃を用いようと、或いは、打ち抜き加工時における打ち抜き刃72の進行方向に対して打ち抜き刃72の片面だけが傾斜した片刃をいずれの向きで用いようと、シート材11には変形(歪み)が生じる。そして、打ち抜き加工によって得られた光学シート10を顕微鏡観察した結果からすると、当該変形(歪み)は、シート材11の打ち抜き刃72が入る側(接触し始める側)の表面よりも、シート材11の打ち抜き刃72が抜け出る側の表面において、大きくなっているようであった。すなわち、シート材11の変形量が、緩衝材11としても機能するベルト状部材79および定盤75に対面する側で大きくなっているようであった。
【0079】
このため、条件1のように、変形量が少なくなる打ち抜きヘッド71側にマット層20が位置するように、シート材11を配置すれば、打ち抜き加工中における、マット層20の変形量が低減され得る。結果として、条件1によれば、マット層20へ加わる応力が小さくなり、マット層20の割れやマット層20の剥離を効果的に防止することができるものと推測される。
【0080】
なお、マット層20の側から打ち抜き刃72を入れる場合であっても、マット層20の鉛筆硬度が4H以上であると、マット層20の弾性が著しく低下して、割れや剥離が生じた。一方、マット層20の鉛筆硬度が4B以下であると、硬度が低すぎ、実際の使用上、とりわけ、面光源装置に組み込まれる光学シートとしての実際の使用上、マット層20が有効に機能することができなくなる。これらの点から、条件1では、JISのK5600-5-4(1999年)に準拠して測定された一方の側の表面10aについての鉛筆硬度が3B以上3H以下であることが好ましい。」

エ 「【0083】
ここで、本件発明者が行った実験結果の一例を示しておく。以下に説明する実験では、上述した打ち抜き装置70を用いて、上述した構成のシート材11、すなわち、樹脂製フィルム16と、樹脂製フィルム16の一方の側に積層され一方の側の表面10aをなすマット層20と、樹脂製フィルム16の他方の側に積層され他方の側の表面10bをなす光学要素層30と、からなるシート材11を打ち抜き、図1および図2に示された上述の光学シート10を作製した。
【0084】
打ち抜き実験に先立ち、マット層に用いられる材料及びマット層の形成条件を調整することによって、マット層の硬度が互いに異なるサンプル1?9に係るシート材を作製した。一方、樹脂製フィルムおよび光学要素層はサンプル間で互いに同一とした。具体的には、樹脂製フィルムは、厚さ188μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート製フィルムを用いた。該樹脂製フィルム表面の鉛筆硬度はHBであった。光学要素層は、高さ25μmの直角二等辺三角形状からなる断面形状を有した単位光学要素を、直角の頂角が突出するようにして、50μmのピッチで配列してなる構成とした。
【0085】
サンプル1?9に係るシート材(光学シート)のマット層は、バインダー樹脂として、以下に示すように互いに異なる配合で調整された紫外線硬化型樹脂を用いて、形成した。紫外線硬化型樹脂を硬化させるための紫外線照射装置としては、各サンプルとも、フュージョンUVシステムズジャパン株式会社製の紫外線燈Hバルブを用いた。紫外線硬化型樹脂を硬化させるための硬化条件は、サンプル1?9の間で、照射量を100mJ/cm^(2)として同1条件にした。各サンプルのマット層は、下記サンプル1?9の材料(樹脂材料、拡散粒子、開始剤)を含んで成る塗料を、バーコータを用いて、固化状態での膜厚が3μmとなるように塗工、形成した。
【0086】
〔サンプル1:マット層の鉛筆硬度3B〕
○樹脂材料
・東亞合成製のM-215:99重量部
○拡散粒子
・平均粒径5μmの球状の架橋アクリル系樹脂ビーズ(綜研化学株式会社製、MX-500H):1重量部
○開始剤
・チバ・ジャパン(株)製の1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名イルガキュア184):1質量部
【0087】
〔サンプル2:マット層の鉛筆硬度2B〕
○樹脂材料
・東亞合成製のM-215:66重量部
・JSR株式会社製のオプスターJN35:33重量部
○拡散粒子
・平均粒径5μmの球状の架橋アクリル系樹脂ビーズ(綜研化学株式会社製、MX-500H):1重量部
○開始剤
・チバ・ジャパン(株)製の1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名イルガキュア184):1質量部
【0088】
〔サンプル3:マット層の鉛筆硬度B〕
○樹脂材料
・東亞合成製のM-215:33重量部
・JSR株式会社製のオプスターJN35:66重量部
○拡散粒子
・平均粒径5μmの球状の架橋アクリル系樹脂ビーズ(綜研化学株式会社製、MX-500H):1重量部
○開始剤
・チバ・ジャパン(株)製の1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名イルガキュア184):1質量部
【0089】
〔サンプル4:マット層の鉛筆硬度HB〕
○樹脂材料
・JSR株式会社製のオプスターJN35:99重量部
○拡散粒子
・綜研化学株式会社製のMX-500H(平均粒径5μmの球状の架橋アクリル系樹脂ビーズ):1重量%
○開始剤
・チバ・ジャパン(株)製の1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名イルガキュア184):1質量部
【0090】
〔サンプル5:マット層の鉛筆硬度F〕
○樹脂材料
・日本化薬株式会社製のペンタエリスリトールトリアクリレート:49.5重量部
・JSR株式会社製のオプスターJN35:49.5重量部
○拡散粒子
・綜研化学株式会社製のMX-500H(平均粒径5μmの球状の架橋アクリル系樹脂ビーズ):1重量%
○開始剤
・チバ・ジャパン(株)製の1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名イルガキュア184):1質量部
【0091】
〔サンプル6:マット層の鉛筆硬度H〕
○樹脂材料
・日本化薬株式会社製のペンタエリスリトールトリアクリレート:99重量部
○拡散粒子
・綜研化学株式会社製のMX-500H(平均粒径5μmの球状の架橋アクリル系樹脂ビーズ):1重量%
○開始剤
・チバ・ジャパン(株)製の1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名イルガキュア184):1質量部
【0092】
〔サンプル7:マット層の鉛筆硬度2H〕
○樹脂材料
・日本化薬株式会社製のジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:49.5重量部
・日本化薬株式会社製のペンタエリスリトールトリアクリレート:49.5重量部
○拡散粒子
・綜研化学株式会社製のMX-500H(平均粒径5μmの球状の架橋アクリル系樹脂ビーズ):1重量%
○開始剤
・チバ・ジャパン(株)製の1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名イルガキュア184):1質量部
【0093】
〔サンプル8:マット層の鉛筆硬度3H〕
○樹脂材料
・日本化薬株式会社製のジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:99重量部
○拡散粒子
・綜研化学株式会社製のMX-500H(平均粒径5μmの球状の架橋アクリル系樹脂ビーズ):1重量%
○開始剤
・チバ・ジャパン(株)製の1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名イルガキュア184):1質量部
【0094】
・・・(中略)・・・
【0095】
各シート材11について、マット層20の側(一方の表面10aの側)から打ち抜いた場合と、光学要素層30の側(他方の表面10bの側)から打ち抜いた場合とで、割れや剥離等の欠陥がマット層11に発生していたか否かについて調査を行った。欠陥の有無は、走査型電子顕微鏡で100倍?300倍の倍率で光学シートを観察することによって、確認した。確認結果を表1に示す。表1において、欠陥の存在が確認されたサンプルに○を付し、欠陥の存在が確認されなかったサンプルに×を付している。また、表1における「マット層」の欄に、マット層の側から各シート材を打ち抜いた場合における欠陥の有無を示しており、表1における「光学要素層」の欄に、マット層とは反対の側、すなわち光学要素層の側から各シート材を打ち抜いた場合における欠陥の有無を示しており、
【0096】
表1に示されているように、マット層20の側から打ち抜いた場合、JISのK5600-5-4(1999年)に準拠して測定されたマット層の硬度が3H以下のサンプルでは、欠陥は発見されなかった。一方、マット層20とは反対の側、すなわち光学要素層30の側から打ち抜いた場合、JISのK5600-5-4(1999年)に準拠して測定されたマット層の硬度がB以下のサンプルでは、欠陥は発見されなかった。
【表1】


【0097】
ところで、本件発明者は、打ち抜き加工の加工条件を最適化する研究を行う過程の中で、得られた光学シートのその後の取り扱い中や使用中に、マット層20が基材層15から剥離してしまうことを効果的に防止し得る光学シート10を見出すにいたった。以下、この光学シート10の構成について、主として図6および図7を参照しながら説明する。なお、以下に説明する図6および図7中の光学シート10は、上述した条件1を採用し、加工条件を通常用いられる範囲内で適宜調整することによって、作製され得る。
【0098】
・・・(中略)・・・
【0103】
また、図7は、光学シート10の法線方向ndに沿った断面において、当該光学シート10のマット層20端面20cを示している。とりわけ図7は、図6の点線で囲まれた領域を拡大して示している。
【0104】
図7に示すように、マット層20の端面20cは、光学シート10の法線方向ndに沿った断面において、外側面20aと交わる外側端部20caよりも内側面20bと交わる内側端部20cbにおいて、法線方向ndに直交する方向pdに沿った外方に位置する。言い換えると、端面20cは、法線方向ndに沿った断面において、外側端部20caよりも内側端部20cbにおいて、光学シート10のシート面と平行な方向pdに沿って、外方に、すなわち、光学シート10の中央から離間する側に位置している。
【0105】
このような態様によれば、マット層20の剥離の起点となりやすいマット層20の内側端部20cbに、マット層20を基材層15から剥離させようとする力が、マット層20の端面20cを介して、加えられ辛くすることができる。この結果、このような光学シート10によれば、搬送等の取り扱い中や使用中等に、例えば他の部材と法線方向ndに擦り付けられることに起因して、マット層20が基材層15から剥離することが効果的に防止され、安定した品質を維持し続けることができる。
【0106】
さらに、図7に示すように、光学シート10の法線方向ndに沿った断面におけるマット層20の端面20cの外輪郭は、外側端部20caから内側端部20cbに向かうにつれて、法線方向ndに直交する方向においてしだいに外方にずれていっている。すなわち、法線方向ndに沿った断面における端面20cの外輪郭は、外側端部20caから内側端部20cbに向かうにつれて、光学シート10のシート面と平行な方向pdに沿って、外方に、すなわち、光学シート10の中央から離間する側にずれていっている。
【0107】
なお、ここでいう、マット層20の端面20cの外輪郭が法線方向ndに直交する方向pdにおいてしだいに外方にずれていっているとは、マット層20の端面20cの外輪郭が常に法線方向ndに直交する方向pdに沿って外方にずれ続けることのみを意味するのではなく、端面20cの外輪郭が、一部の区域において、法線方向ndと平行になっていてもよい。すなわち、法線方向ndに沿った断面におけるマット層20の端面20cの外輪郭は、法線方向ndに対して傾斜した直線、曲線、または、法線方向ndに対して傾斜した直線と曲線との組み合わせ、或いは、これらと法線方向ndに平行な直線との組み合わせとして、画成される。
【0108】
このような光学シート10によっても、マット層20の剥離の起点となりやすいマット層20の内側端部20cbに、マット層20を基材層15から剥離させようとする力が、マット層20の端面20cを介して、加えられ辛くすることができる。この結果、このような光学シート10によれば、搬送等の取り扱い中や使用中等に、例えば他の部材と法線方向ndに擦り付けられることに起因して、マット層20が基材層15から剥離することが効果的に防止され、安定した品質を維持し続けることができる。
【0109】
とりわけ、図7に示された例では、光学シート10の法線方向ndに沿った断面におけるマット層20の端面20cの外輪郭は、外側端部20caから内側端部20cbに向かうにつれて、法線方向ndに直交する方向pdにおいて外方にずれ続けていく。このような態様によれば、上述した作用効果がより顕著に発揮されて、マット層20の剥離が極めて効果的に防止され得る。
【0110】
以上のような本実施の形態によれば、異物付着や傷付き等の欠陥の発生を効果的に防止しながら光学シート10を製造することができる。また、以上のような本実施の形態によれば、光学シート10からマット層20が剥離しにくくすることができる。」
・・・(中略)・・・
【0118】
さらに、上述した実施の形態では、光学シートの製造方法に、シート材11を作製する工程が含まれている例、すなわち、あたかも、シート材11が連続的に作製され、作製されてくシート材11に対して打ち抜き加工が実施されていくような例を示した。しかしながら、打ち抜き工程へのシート材11の供給にあわせて、都度、シート材11を作製する必要はない。まとめて作製しておいたシート材または別の場所で作製されて搬送されてきたシート材(例えばロール状に巻き取られて貯め置きされていたシート材)を、必要量だけ、打ち抜き装置70に供給するようにしてもよい。」

オ 「【図1】



カ 「【図2】



キ 「【図7】



第5 対比・判断
(1) 本願発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりとなる。
ア 「シート状の基材層」について
引用発明における「厚み188μmの透明な2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)」は、本願発明の「シート状の基材層」に相当する(引用例1の段落【0032】の記載からも確認できる事項である。)。

イ 「マット層」について
引用発明の「凹凸塗膜3」に含まれる「紫外線硬化型フッ素原子含有ポリマー」及び「ペンタエリスリトールトリアクリレート」由来の樹脂は、技術的にみて、引用発明の「微粒子」を樹脂マトリクス中に固定するものであるから、本願発明の「バインダー樹脂」に相当するといえる。また、引用発明の「本体部1」は、「一方の面1p」及び「他方の面1q」を具備するところ、「他方の面1q」の側を本願発明の「基材層」の「一方の側」に対応づけることは任意である。
そうしてみると、引用発明の「凹凸塗膜3」は、本願発明の「マット層」に相当するとともに、両者は、「バインダー樹脂を含み、前記基材層の一方の側に設けられたマット層」の点で共通する。

ウ 「プリズム層」について
引用発明の「プリズムシート部材」は、その名のとおり「柱状」である「単位柱状プリズム」が「その稜線を互いに平行に・・・配列して成るプリズム群」であるから、稜線と交差する方向に配列された複数の単位柱状プリズムであって、各々が稜線方向に線状に延びる複数の単位柱状プリズムを含むものといえる。したがって、引用発明の「単位柱状プリズム」、「稜線」方向、及び「稜線」と交差する方向は、それぞれ、本願発明の「単位プリズム」、「前記一方向と交差する方向」、及び「一方向」に相当する。また、前記イにおいて、引用発明の「他方の面1q」の側を、本願発明の「一方の側」に対応付けたから、引用発明の「一方の面1p」の側が、本願発明の「他方の側」となる。
そうしてみると、引用発明の「プリズムシート部材」は、本願発明の「一方向に配列された複数の単位プリズムであって、各々が前記一方向と交差する方向に線状に延びる、複数の単位プリズムを含み、前記基材層の他方の側に設けられたプリズム層」の点で共通する。

エ 「マット面」及び「プリズム面」について
前記ア?ウの対比結果を踏まえると、引用発明の「光学シート」における、「他方の面1q」の側の表面、「一方の面1p」の側の表面、及び「光学シート」は、それぞれ、本願発明の「一対の表面のうちの一方」、「一対の表面のうちの他方」及び「光学シート」に相当する。また、引用発明の「光学シート」は、本願発明の「対向する一対の表面を有する」、「前記一対の表面のうちの一方が、前記マット層によるマット面として形成され」及び「前記一対の表面のうちの他方が、前記プリズム層の前記単位プリズムによるプリズム面として形成され」という構成を具備する。

オ 「マット面」及び「プリズム面」の「鉛筆硬度」について
(ア) 引用発明の「鉛筆硬度」と本願発明の「鉛筆硬度」とは、その準拠するJIS規格や荷重(1000g)、速度(1mm/s)の測定条件が同じである。
そうすると、引用発明における「鉛筆硬度」は、本願発明における「鉛筆硬度」に相当する。

(イ) 上記アとエによれば、引用発明の「光学要素面Peの硬度He」及び「塗膜面Pmの硬度Hm」は、それぞれ、本願発明の「プリズム面の鉛筆硬度Hp」及び「マット面の鉛筆硬度Hm」に相当する。

(ウ) 引用発明においては、「光学要素面Peの硬度He」が「B」、「塗膜面Pmの硬度Hm」が「F」である。
してみると、引用発明は、本願発明の条件(a)「Hp ≦ Hm」、(b)「2B ≦ Hp ≦ HB」及び(c)「HB ≦ Hm ≦ H」を満たしている。

カ 「単位プリズム」の形状について
(ア) 引用発明の「主切断面」は、「本体部1の一方の面1pに立てた法線ndに平行な断面のうち、単位光学要素2の配列方向にも平行な断面」である。
この「主切断面」は、「本体部1の一方の面1pに立てた法線nd」の方向及び「単位柱状プリズムの配列方向」の両方に「平行な断面」と言い換えることができる。
また、引用発明の「本体部1の一方の面1pに立てた法線nd」の方向は、「光学シート」の「法線」方向とは同じである。
上記ウより、引用発明の「単位柱状プリズムの配列方向」は、本願発明の「前記一方向」に相当する。
してみると、引用発明の「主切断面」は、本願発明の「主切断面」に相当する。

(イ) 引用発明においては、「単位柱状プリズムの形状」は、「主切断面」「形状」が、「頂角90°の直角二等辺三角形」で「底辺が50μm」である。
また、「直角二等辺三角形」の「底辺」が、「PETフィルム」上に位置することは明らかである。
加えて、引用発明における「底辺」は、本願発明の「一辺」相当する。
そうすると、上記アとウによれば、引用発明と本願発明は、「前記光学シートの法線方向及び前記一方向の両方に平行な主切断面において、前記単位プリズムは、前記基材層上に一辺が位置し」「ている三角形形状の断面を有する」という構成で共通する。

キ 以上、ア?カを勘案すると、引用発明の「光学シート」は、本願発明の「光学シート」に相当する。

(2) 一致点
本願発明と引用発明とは、以下の点で一致する。

「対向する一対の表面を有する光学シートであって、
シート状の基材層と、
バインダー樹脂を含み、前記基材層の一方の側に設けられたマット層と、
一方向に配列された複数の単位プリズムであって、各々が前記一方向と交差する方向に線状に延びる、複数の単位プリズムを含み、前記基材層の他方の側に設けられたプリズム層と、を備え、
前記一対の表面のうちの一方が、前記マット層によるマット面として形成され、
前記一対の表面のうちの他方が、前記プリズム層の前記単位プリズムによるプリズム面として形成され、
JIS K5600-5-4(1999年)に準拠して測定(荷重1000g、速度1mm/s)された前記プリズム面の鉛筆硬度Hpおよび前記マット面の鉛筆硬度Hmが、次の条件(a)、(b)及び(c)を満たし、
Hp ≦ Hm ・・・(a)
2B ≦ Hp ≦ HB ・・・(b)
HB ≦ Hm ≦ H ・・・(c)
前記光学シートの法線方向及び前記一方向の両方に平行な主切断面において、前記単位プリズムは、前記基材層上に一辺が位置する三角形形状の断面を有する、
光学シート。」

(3) 相違点
本願発明と引用発明とは、以下の点で相違する。

(相違点1)
本願発明においては、「マット層」は、「拡散成分」を含んでいるのに対して、
引用発明においては、「凹凸塗膜3」(「マット層」)が、「拡散成分」を含んでいるのかどうか明らかでない点。

(相違点2)
本願発明においては、「前記マット層は、前記マット面と、前記マット面とは反対側の面であって前記基材層に対面する内側面と、前記内側面と前記マット面との間の端面と、を含み」、「前記端面は、前記光学シートの法線方向に沿った断面において、前記マット面と交わる外側端部よりも前記内側面と交わる内側端部において、前記法線方向に直交する方向に沿った外方に位置し」という構成を具備するのに対して、
引用発明においては、この構成を具備するか明らかでない点。

(相違点3)
本願発明の「単位プリズム」は、「当該一辺に対向する頂角の角度が90°未満となっている」のに対して、引用発明の「単位プリズム」は、この構成を具備しない点。

(4) 判断
上記相違点について検討する。
ア (相違点1)について
(ア)a 引用例1には、「粗面」に関し、「表面(最外面)の十点平均粗さRz値」が、最長の可視光0.78μmを超過すれば、光拡散効果等の粗面の光学的効果を可視光波長の全帯域に亙って十分に奏することができることが記載されている(上記第4(1)カの段落【0030】参照。)。
そうすると、引用発明においては、「凹凸塗膜3」の「粗面として形成されて」いる「塗膜面」は、「最外面のRz(JIS B0601(1994年版)規定)」が「3.26μm」であるから、引用発明の「凹凸塗膜3」の「粗面として形成されて」いる「塗膜面」は、光拡散効果を可視光波長の全帯域において十分に奏するものと認められる。

b 一方、本願明細書の段落【0030】,【0031】及び【0056】には、それぞれ「マット層20は、拡散成分21およびバインダー樹脂22を含んでいる。マット層20の拡散成分21は、アクリル系樹脂やスチレン系樹脂等の有機高分子からなる粒子、アルミナやシリカ等の金属化合物からなる粒子、気体を含有した多孔質物性の粒子等、種々の既知の粒子を用いることができる。」、「マット層20のマット面20aは、拡散成分21が存在する位置に対応して凸部が形成された凹凸面として、構成されている。すなわち、マット層20のマット面20aによって形成された光学シート10の一方の側の表面は、凹凸面として形成されており、光学シート10へ入射する光および光学シート10を透過する光を拡散させる光拡散機能を有している。」、及び「なお、最終的に形成されるべきマット層20のマット面20aによって、十分な光拡散機能を発揮し得る程度の凹凸面(マット面)が形成されるよう、拡散成分21の平均粒径や濃度等が設定される。」と記載されている。
そうしてみると、本願発明においては、マット層のマット面の光拡散機能は、「拡散成分が存在する位置に対応して凸部が形成された凹凸面」によって発揮されるものである。

c ここで、引用例1には、「この凹凸塗膜3は、一例としてバインダ樹脂中に微粒子を含有する塗料を本体部1に塗工することによって形成され、微粒子の存在によって最外面に微小突起が形成されることで最外面を粗面にしたものである。」及び「塗膜のうち凹凸塗膜3の形態は、少なくともバインダ樹脂を含み、外部(周囲の雰囲気等)に露出した最外面が粗面となった透明な層である。凹凸塗膜3は、・・・バインダ樹脂と微粒子とを含む構成とし、微粒子の塗膜表面への突出によって凹凸を形成しても良い。」と記載されている(上記第4(1)オの段落【0021】及びキの段落【0040】参照。)。
そうしてみると、引用発明において、「凹凸塗膜3」の「塗膜面」の、「Rz」が「3.26μm」の「粗面」、すなわち「凹凸」は、「微粒子(平均粒子径5μmで単分散の球形状の架橋アクリル系樹脂ビーズ)」の位置に対応して形成されたものである。
してみると、引用発明において、「凹凸塗膜3」の「粗面として形成されて」いる「塗膜面」の光拡散効果は、「微粒子(平均粒子径5μmで単分散の球形状の架橋アクリル系樹脂ビーズ)」の位置に対応して形成された「粗面」、すなわち「凹凸面」によって発揮されるということができる。

d 上記bとcより、引用発明の「微粒子(平均粒子径5μmで単分散の球形状の架橋アクリル系樹脂ビーズ)」は、本願発明の「拡散成分」に相当することから、引用発明の「凹凸塗膜3」(「マット層」)も「拡散成分」を含んでいるものと認められる。
よって、(相違点1)は実質的な相違点ではない。

(イ) 仮に上記(ア)のとおりでなく、(相違点1)が実質的な相違点であるとしても、引用例1には、光学シート・凹凸塗膜3に光拡散機能を付与してもよいことが記載されており(第4(1)キの段落【0051】の「光拡散機能を意識的に光学シートに付与したい場合には、・・・」や段落【0055】の「凹凸塗膜3に、光を拡散させる光拡散機能を積極的に付与してもよい」参照。)、引用例1の上記示唆に基づき、引用発明において、凹凸塗膜(マット層)に光拡散機能を付与することを目的として、引用例1の段落【0030】に記載された「光拡散機能」と「粗面」の「十点平均粗さRz値」の大きさとの関係に基づき、凹凸塗膜3(マット層)が、塗膜面(マット面)の十点平均粗さRzが光拡散効果を十分に奏する0.78μmを超過する値となる凹凸を形成できるような、大きさ・個数の「微粒子」を、「拡散粒子」として含む構成として、上記(相違点1)に係る本願発明の構成とすることは、当業者であれば容易になし得ることである。

(ウ) あるいは、引用例1には、球状粒子の(個々の粒子の)最大径が10μmを超えると光の進路変更作用が増加することを利用して、粒子径の大きい粒子を採用して、光学シートに適度に拡散させる機能を付与すること(第4(1)キの段落【0054】参照。)や、凹凸塗膜3に光を拡散させる光拡散機能を積極的に付与するために、例えば、微粒子とバインダ樹脂との屈折率差の大きい材料を用いて、微粒子を光拡散剤として機能させて、光学シートに光拡散機能を付与すること(第4(1)キの段落【0055】参照。)が記載されている。
引用発明において、光学シートに光拡散機能を付与するために、引用例1の上記の各記載に基づいて、「凹凸塗膜3」が、粒子径の大きい粒子、あるいは、バインダー樹脂との屈折率差の大きい材料の粒子を「拡散成分」として含む構成として、上記(相違点1)に係る本願発明の構成とすることは、当業者であれば容易になし得ることである。

イ (相違点2)について
(ア) 引用例2の段落【0071】?【0080】及び【0097】?【0110】(上記第4(2)ウ)の記載からみて、引用例2には、「マット層の割れやマット層の剥離を効果的に防止し、異物付着や傷つき等の欠陥の発生を防止するために、マット層によって形成された一方の側の表面と、光学要素層によって形成された他方の側の表面とを有するシート材に対して、マット層によって形成された一方の側の表面から打ち抜き刃を入れて、シート材を打ち抜くとともに、JISの5600-5-4(1999年)に準拠して測定されたマット層の表面の鉛筆硬度Hmを3B≦Hm≦3Hとした光学シートの製造方法」(以下、「引用例2記載技術1」という。)及び「この光学シートの製造方法(引用例2記載技術1)により得られた光学シートの後の搬送等の取り扱い中や使用中に、他の部材と擦り付けられることに起因して、マット層が基材層から剥離することを防止し、安定した品質を維持し続けるために、この光学シートの製造方法(引用例2記載技術1)における加工条件を適宜調整して、光学シートにおいて、マット層を、光学シートの一方の側の表面をなす外側面(マット面)と、外側面(マット面)とは反対側の面であって基材層に対面する内側面と、内側面と外側面(マット面)との間の端面と、を含み、前記端面は、光学シートの法線方向に沿った断面において、前記外側面(マット面)と交わる外側端部よりも前記内側面と交わる内側端部において、前記法線方向に直交する方向に沿った外方に位置する構成とする技術」(以下、「引用例2記載技術2」という。)が記載されている。

(イ) また、引用例2(上記第4(2)エの段落【0083】?【0096】、【表1】参照)には、「サンプル5」の「マット層表面での鉛筆硬度」が「F」のシート材について、光学要素層の側からシート材を打ち抜くと割れや剥離等の欠陥が確認され、マット層の側からシート材を打ち抜くと割れや剥離等の欠陥が確認されなかったことが記載されている。
そうすると、引用例2に接した当業者であれば、マット層表面の鉛筆硬度がFの光学シートを製造するに際し、光学要素層の側からシート材を打ち抜くと割れや剥離等の欠陥が生じるので好ましくなく、マット層の側からシート材を打ち抜く構成とすべきであると理解するはずである。

(ウ) また、引用発明の「光学シート」においても、枚葉シートの表裏面の傷つき防止が必要不可欠である(上記第4(1)ウの段落【0007】参照。)ところ、引用発明の「光学シート」のマット層のマット面の鉛筆硬度はFである。
そうしてみると、引用発明の「光学シート」を枚葉シートとするに際し、「引用例2記載技術1」の製造方法により「引用例2記載技術2」の構成を得、その結果、前記(相違点2)に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に発明できたことである。

ウ (相違点3)について
引用例1には、「主切断面形状は二等辺三角形状のとき稜線を形成する頂角は80?110°好ましくは90°である。」(上記第4(1)キの段落【0037】)と記載されており、頂角を、90°未満としても良いことが示唆されている。また、具体例においても、「単位柱状プリズムの頂角の角度が90°未満となっている三角形状の主切断面を有する光学シート」は、以下、a?g等に例示され、周知であったといえる(以下、「周知技術」という。)。
そうしてみると、引用発明において、頂角を90°未満のものとして、上記(相違点3)に係る本願発明の構成とすることは、引用発明の記載が示唆する範囲内の事項にすぎない。

a 国際公開第2009/028439号(原査定の拒絶の理由において引用された引用文献5、以下、「引用例3」という。)
「[0022] 本発明のプリズムシートのプリズム列を有する層は、頂角を有する断面形状が三角形のプリズムを配列したものであって、平行かつ等間隔に形成された稜を有するプリズム列を有することが好ましい。プリズム列の表面は、断面が同形の二等辺三角形である直線状の単位プリズムが並行に隙間無く配列した形状であることが好ましく、プリズム列の断面二等辺三角形の頂角は50°?80°が好ましく、60°?70°であることがさらに好ましい。断面を同形の二等辺三角形とすることによって、プリズム列の製造が容易となるとともに、プリズムシートを薄くしつつ、かつプリズム機能を確実に発揮させることができる。プリズムの頂角を50°以上、80°以下の範囲とすることにより、本発明のプリズムシートの、プリズム列の稜を導光板の出射面側へ向けて配置したとき、プリズム列斜面における全反射現象により、LCD正面方向への高い集光性が得られる。」
「[0036] 《基体への塗布・乾燥・硬化工程》
基体として、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用した。基体の一方の面に、紫外線硬化性樹脂組成物を、約80℃に加熱して粘度を下げ、ダイコート法により厚さ30μmに塗布した。紫外線硬化性樹脂組成物には、ユニディックRC27-637(不飽和ポリエステル、アクリレートモノマー、光開始剤、等の混合物、大日本インキ化学工業社製)を用いた。次に、プリズムピッチ:12.4μm、プリズム高さ:10μm、頂角64度のプリズム列の版が形成された平板状金型を、上記の未硬化樹脂層が形成された基体とともに、110℃2分間加熱した。基体上の未硬化樹脂層面を、金型面に重ね、基体の背面からローラーで軽く押し付けた。紫外線を基体の背面側から照射して、未硬化樹脂を硬化・固定した。紫外線ランプには高圧水銀ランプを使用し、照射エネルギーは積算値で600mJであった。金型、樹脂、基体の積層物を室温付近まで冷却し、基体を金型から剥離させたところ、所定のプリズムが基体表面に形成されたものが得られた。・・・」

b 特開2008-203839号公報(原査定の拒絶の理由において引用された引用文献6、以下、「引用例4」という。)
「【0069】
プリズム列411は、2つのプリズム面411a,411bからなる。これらのプリズム面は光学的に十分に平滑な面(鏡面)とされていてもよいし、或いは粗面とされていてもよい。本発明においては、プリズムシートによる所望の光学特性を維持する点から、プリズム面は鏡面とすることが好ましい。プリズム列411の頂角θは40?150゜の範囲内とすることが好ましい。一般的に、液晶表示装置のバックライトでは、プリズムシートをプリズム列形成面が液晶パネルに対向するように配置する場合には、プリズム列の頂角θは80?100゜程度の範囲であり、好ましくは85?95゜の範囲である。一方、上記実施形態のようにプリズムシート4をプリズム列形成面が導光体3に対向するように配置する場合には、プリズム列411の頂角θは40?75゜程度の範囲であり、好ましくは45?70゜の範囲である。」
「【0097】
(プリズム列の形成)
厚さ1.0mm,400mm×690mmのJIS黄銅3種の薄板の表面に、プリズム列形成面の形状に対応した形状の形状転写面を形成して、型部材を得た。ここで、目的とするプリズム列形成面の形状は、ピッチP=50μm、頂角θ=65゜のプリズム列411が多数並列して配置されたものであった。」

c 特開2013-3266号公報(以下、「引用例5」という。)
「【0069】
図8からわかるように、本実施形態では、単位プリズム122aは、本体部121の導光板111側の面が突出した二等辺三角形の断面を有している。つまり、本体部121のシート面と平行な方向の単位プリズム122aの幅は、本体部121の法線方向ndに沿って本体部121から離れるにつれて小さくなる。」
「【0071】
ここで、単位プリズム122aの寸法は特に限定されるものではないが、頂角θ4は60°?70°(図8参照)、底辺幅Wは50μm程度(図8参照)とすることにより適切な集光特性を得ることができることが多い。」

d 国際公開第2008/084744号(以下、「引用例6」という。)
「【0107】
こうして作製された基材シート71を図20に示す製造装置70に投入し、光拡散層18が設けられていない側の表面(表1では「裏面」という。)に光学要素16を形成する(図2を参照)。先ず、上記のようにして得られた基材シート71の巻取りロール72を用意した。他方、金属円筒表面に三角形状の単位プリズムの賦形型76が形成された賦形ロール73を用意し、これを中心軸の回りに回転させつつ、Tダイ型ノズル74から紫外線硬化型樹脂液80を賦形ロール面に供給し、単位プリズムの賦形型76に充填した。次いで、基材シート71を巻取りロール72から賦形ロール73の回転周速度と同期する速度で巻出して、押圧ロール81で基材シート71をその賦形ロール73上に、前記樹脂液80を間に介して積層密着させ、そのままの状態で紫外線照射装置82,82からの紫外線を基材シート71側から照射し、その賦形型76内で樹脂液80を架橋硬化させると同時に基材シート71と接着させた。次いで、剥離ロール83を用いて走行する基材シート71を、それに接着した光学要素16と共に剥離し、三角形状の単位プリズムが複数配列された図1に示す態様の光学シート10を得た。なお、単位プリズムの形状は、三角形状であり、詳しくは、ピッチ50μmで、単位プリズム形状断面が頂角85°の二等辺三角形で、稜線が互いに平行になるように隣接して配列された形状となるように形成した。また、この実施例1では、単位プリズムの稜線方向Gと、空隙部22の長軸方向とが平行になるように、賦形ロールを配置して光学要素16を形成した。」

e 特開2009-37204号公報(以下、「引用例7」という。)
「【0133】
1.実施例1-1
(1)シート状光学部材の作製
単位プリズムの賦形が形成されたレンズ型に、以下の表1-1に示す組成を有する樹脂1を滴下した後、ポリエチレンテレフタレート基材(PET,商品名:A4300 厚み:125μm 東洋紡績株式会社製)を重ね、ラミネーターでPET全面を上記樹脂1に圧着した。次に、780mJ/cm2で、上記樹脂1に対して紫外線照射を行い、多数の単位プリズムを有するレンズ部を硬化させ、ポリエチレンテレフタレート基材と一体化させた。その後、上記レンズ型を剥離することによって、本発明のシート状光学部材を得た。
ここで、上記単位プリズムの形状は三角形状とした。より詳しくは、ピッチ50μmで、単位プリズムの頂角が80°となる二等辺三角形状で、稜線が互いに平衡になるように複数の単位プリズムが隣接された形状とした。」

f 特開平10-39115号公報(以下、「引用例8」という。)
「【0009】
【発明の実施の形態】以下、図面等を参照して、本発明の実施の形態について、さらに詳しくに説明する。図1は、本実施形態に係るプリズムレンズシートを用いたバックライトシステムを示す図である。プリズムレンズシート10は、透光性基板11の一方の面に三角柱からなるプリズム形状の単位レンズ部12を長軸方向が互いに平行になるように多数形成したシートである。」
「【0011】この実施形態では、単位レンズ部12は、断面が二等辺三角形であって、その頂角αが80?87°となるように設定することが好ましい。また、単位レンズ部12のピッチは、用途にもよるが、ほぼ10?500μmが好ましい。」

g 特開平11-133214号公報(以下、「引用例9」という。)
「【0123】
【実施例】次に、本発明の実施例について説明する。
【0124】光学シート10は、透明な2軸延伸PETフィルム(膜厚125μm)上に、透明な接着層を約1μmになるように塗布し、この上に単位プリズムのパターンを形成させるエポキシアクリレートのプレポリマーを主成分とする紫外線硬化樹脂を塗布して、樹脂塗膜を硬化(固化)後に型を離形することにより、ピッチ30μmで、単位プリズム形状断面が頂角85°の二等辺三角形で、稜線14Aが互いに平行になるように、隣接して配列されたものを用いる。この、単位プリズム14が形成された透明基材シート12の、プリズム面16と反対側面(裏面)に、次のような要領で球状ビーズ20を配設した。」
「【0139】プリズムシート76は、透明な2軸延伸PETフィルム(膜厚125μm)上に、透明な接着層を約1μmになるように塗布し、この上に単位プリズムのパターンを形成させるエポキシアクリレートのプレポリマーを主成分とする紫外線硬化樹脂を塗布して、樹脂塗膜を硬化(固化)後に型を離形することにより、ピッチ30μmで、単位プリズム形状断面が頂角85°の二等辺三角形で、稜線14Aが互いに平行になるように、隣接して配列されたものを用いる。」

エ 審判請求書における請求人の主張について
(ア) 請求人は、審判請求書の「(3-1-1) 請求項1および4の特徴」において、請求項1に係る発明について、「請求項1・・・によれば、出願当初明細書の段落0025に記載されているように、マット層の剥離を生じにくくすることができます。」、「そして、この目的を実現するために、請求項1に係る発明は、次の特徴(A)、(B)及び(D)を有しています。」、「(A) JIS K5600-5-4(1999年)に準拠して測定(荷重1000g、速度1mm/s)された前記プリズム面の鉛筆硬度Hpおよび前記マット面の鉛筆硬度Hmが、次の条件(a)、(b)及び(c)を満たす。 Hp ≦ Hm ・・・(a) 2B ≦ Hp ≦ HB ・・・(b) HB ≦ Hm ≦ H ・・・(c)」、「(B) 前記端面は、前記光学シートの法線方向に沿った断面において、前記マット面と交わる外側端部よりも前記内側面と交わる内側端部において、前記法線方向に直交する方向に沿った外方に位置する。」、「(D) 前記光学シートの法線方向及び前記一方向の両方に平行な主切断面において、前記単位プリズムは、前記基材層上に一辺が位置し且つ当該一辺に対向する頂角の角度が90°未満となっている三角形形状の断面を有する。」、「特徴(A)及び(B)の組み合わせによれば、出願当初明細書の段落0101に記載されているように、光学シートにおいてマット層が基材層から剥離することが効果的に防止され、安定した品質を維持し続けることができます。」、「これらの効果は、出願当初明細書の段落0007に記載されているように、特徴(D)において特に顕著であった課題を解決しています。」、「すなわち、特徴(A),(B)及び(D)の組み合わせ・・・は、頂角が90°未満となる断面三角形形状の単位プリズムによって光学シートのプリズム層が形成されている場合でも、マット層が基材層から剥離すること防止することで、輝点や欠点といった欠陥が生じることを防止することができます。」旨主張している。

(イ) 請求人は、審判請求書の「(3-2) 本願発明と引用文献との対比」において、「一方、いずれの引用文献も、本願当初明細書の段落0008記載の如き課題(頂角90°未満の単位プリムを採用した場合に於ける打抜き加工時の打抜きカスの剥離・脱落、及びこれに起因する輝点や傷の発生)の解決手段として、特徴(A),(B)及び(D)の組み合わせ・・・を採用することも開示しておりません。」、「引用文献1には、光学要素面(本願のプリズム面に相当)の具体的な範囲については記載されておらず、凹凸塗膜面(本願のマット面に相当)の鉛筆硬度がHB以上5H以下であること(段落0053)、および、断面におけるプリズムの頂角が80?110°であること(段落0032)が記載されています。」、「引用文献2には、塗膜面(本願のマット面に相当)の鉛筆硬度がF以上であること、光学要素面(本願のプリズム面に相当)の鉛筆硬度が4B以上であること(段落0025、0026)、および、断面におけるプリズムの頂角が80?110°であること(段落0037)が記載されています。」、「引用文献3には、レンズ面(本願のプリズム面に相当)の鉛筆硬度の示唆はなく、裏面層(本願のマット面に相当)の鉛筆硬度がH以上であること(段落0049)、および、断面におけるプリズムの頂角が60?120°であること(段落0028)が記載されています。」、「引用文献4には、プリズム面の鉛筆硬度の示唆はなく、マット面の鉛筆硬度が3B以上3H以下であること(段落0074)、あるいは3B以上B以下であること(段落0076)、および、プリズムの断面が直角二等辺三角形(頂角90°)であることが記載されています。」、「引用文献5,6には断面におけるプリズムの頂角が50?80°(引用文献5の段落0022)、65°(引用文献6の段落0097)であることは記載されていますが、鉛筆硬度については示唆すらしておりません。」、「以上のようにいずれの引用文献も、特徴(A),(B)及び(D)の組み合わせ・・・も開示しておりません。」、「また、どの引用文献においても、頂角が90°未満となる断面三角形形状の単位プリズムによってシート材のプリズム層が形成されている場合に輝点や欠点といった欠陥が顕著に生じるという、本願の課題について、示唆すらしておりません。したがいまして、引用文献1?6から特徴(A),(B)及び(D)の組み合わせ・・・を想到することはあり得ず、その作用効果を発揮させることもできません。」旨主張している。

(ウ) しかしながら、(特徴(A)を有する)引用発明において、特徴(B)及び特徴(D)を有する構成とすることが、当業者にとって容易であることは、上記ア?ウにおいて述べたとおりである。

(エ) また、本願発明の作用・効果(本件出願の明細書段落【0025】,【0101】参照。)である、マット層の剥離を生じにくくできること、光学シートの割れの発生を効果的に予防できること、光学シートにおいてマット層が基材層から剥離することが効果的に防止され、安定した品質を維持し続けることができることについては、引用例1及び引用例2の記載に基づき、当業者にとって自明な、あるいは予測可能なことである。

(オ) さらに、請求人が主張する「頂角が90°未満となる断面三角形形状の単位プリズムによって光学シートのプリズム層が形成されている場合でも、マット層が基材層から剥離すること防止することで、輝点や欠点といった欠陥が生じることを防止することができます。」という作用・効果に関し、頂角が90°未満となる断面三角形形状の単位プリズムにおいて、プリズム層の表面やマット層の表面に割れが発生し、マット層等が基材層から剥離・脱落してしまうという課題・問題は、「プリズム面の側から」打ち抜き刃をシート材に入れる加工を行うという前提において生じる(本件出願の明細書段落【0005】、【0007】参照。)ものである。
すると、引用発明に、引用例2に記載された「マット層の側から」打ち抜き刃をシート材に入れる加工を前提とした技術、本件出願の出願前に周知の頂角が90°未満となる断面三角形形状の単位プリズムの構造を採用したことに伴って、「プリズム面の側から」打ち抜き刃をシート材に入れる加工を行うという前提において生じる、頂角が90°未満となる断面三角形形状の単位プリズムにおいて、プリズム層の表面やマット層の表面に割れが発生し、マット層等が基材層から剥離・脱落してしまうという課題・問題は当然に解決されることになる。
してみると、請求人が主張する上記の作用・効果は格別のものではない。

(カ) よって、請求人の審判請求書における上記(ア)及び(イ)の主張を採用することはできない。

(キ) よって、本願発明は、引用発明、引用例2に記載された事項及び本件出願の出願前に周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例2に記載された事項及び本件出願の出願前に周知の技術に基づいて、本件出願の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-06-09 
結審通知日 2017-06-13 
審決日 2017-06-29 
出願番号 特願2013-204737(P2013-204737)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 居島 一仁  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 河原 正
中田 誠
発明の名称 光学シート、面光源装置、表示装置および光学シートの製造方法  
代理人 堀田 幸裕  
代理人 永井 浩之  
代理人 朝倉 悟  
代理人 中村 行孝  
代理人 佐藤 泰和  

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