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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G01N
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G01N
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  G01N
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G01N
管理番号 1331185
異議申立番号 異議2016-700678  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-08-04 
確定日 2017-07-03 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5860922号発明「ビーズまたは他の捕捉物を用いた分子または粒子の超高感度検出」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5860922号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項10、〔11、12〕について訂正することを認める。 特許第5860922号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。 特許第5860922号の請求項10ないし12に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。  
理由 第1 手続の経緯

特許第5860922号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし12に係る特許についての出願は、2011年(平成23年)3月1日(パリ条約による優先権主張 2010年3月1日 米国、2010年3月24日 米国)を国際出願日として出願した特願2012-556164号の一部を、平成26年5月21日に新たに出願したものであって、平成27年12月25日にその特許権の設定登録がされ、その後、本件特許の請求項1ないし12に係る特許に対し、特許異議申立人内藤順子(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、平成28年12月9日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年3月15日に意見書の提出及び訂正請求がなされ、その訂正請求に対して申立人から同年4月12日付けで意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断

1 訂正の内容

平成29年3月15日付け訂正請求書による訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は下記(1)のとおりである。

(1) 訂正事項1

訂正前の特許請求の範囲の請求項10ないし12を削除する。

2 訂正の目的、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項10ないし12を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、この訂正は一群の請求項に対して請求されたものである。
そして、当該訂正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 むすび

以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項10、〔11、12〕について訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて

1 本件発明

本件訂正請求により訂正された請求項1ないし12に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」などという。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定された次のとおりのものである。

【請求項1】
流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の測度を決定するための方法であって、
各々が、少なくとも1つのアナライト分子もしくは粒子のいずれかと結びついたか、またはいかなるアナライト分子もしくは粒子からもフリーである複数のビーズを供給すること、ここで前記複数のビーズの各々が、捕捉成分を含み;
前記ビーズの少なくとも一部に個別にアドレスし、少なくとも1つのアナライト分子または粒子と結びついた前記ビーズの割合を決定すること;および
前記流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の測度を、前記アドレスするステップを経て少なくとも1つのアナライト分子または粒子と結びついたと決定された前記ビーズの割合に少なくとも部分的に基づいて決定すること
を含む、前記方法。

【請求項2】
複数のビーズの少なくとも一部を、複数の別々の区画に空間的に分別すること、をさらに含む、請求項1に記載の方法。

【請求項3】
複数種のアナライト分子または粒子の濃度の測度を決定するための方法であって、前記複数種には、少なくとも、流体試料中の第1種のアナライト分子または粒子と第2種のアナライト分子または粒子とが含まれ、前記方法が、
複数の第1種のビーズと複数の第2種のビーズとを供給すること、ここで前記第1種のビーズが、複数の第1種の捕捉成分を含み、かつ各々が、少なくとも1つの第1種のアナライト分子もしくは粒子と結びついたか、またはアナライト分子もしくは粒子からフリーであり、前記第2種のビーズが、複数の第2種の捕捉成分を含み、かつ各々が、少なくとも1つの第2種のアナライト分子もしくは粒子と結びついたか、またはアナライト分子もしくは粒子からフリーである;
前記ビーズの少なくとも一部に個別にアドレスし、少なくとも1つの第1種のアナライト分子または粒子と結びついた前記第1種のビーズの割合と、少なくとも1つの第2種のアナライト分子または粒子と結びついた前記第2種のビーズの割合とを決定すること;
前記流体試料中の第1種のアナライト分子または粒子の濃度の測度を、前記アドレスするステップを経て少なくとも1つの第1種のアナライト分子または粒子と結びついたと決定された前記第1種のビーズの割合に少なくとも部分的に基づいて決定すること;および
前記流体試料中の第2種のアナライト分子または粒子の濃度の測度を、前記アドレスするステップを経て少なくとも1つの第2種のアナライト分子または粒子と結びついたと決定された前記第2種のビーズの割合に少なくとも部分的に基づいて決定すること
を含む、前記方法。

【請求項4】
複数の第1種のビーズと複数の第2種のビーズとの少なくとも一部を、複数の別々の区画に空間的に分別すること、をさらに含む、請求項3に記載の方法。

【請求項5】
流体試料中の第1種のアナライト分子または粒子と第2種のアナライト分子または粒子との濃度が、各々、約50×10^(-15)M未満である、請求項3または4に記載の方法。

【請求項6】
流体試料中の第1種のアナライト分子または粒子と第2種のアナライト分子または粒子の濃度の測度が、測定されたパラメータと校正標準との比較によって、少なくとも部分的に決定される、請求項3?5のいずれか一項に記載の方法。

【請求項7】
複数の別々の区画が、複数の反応器を含む、請求項2および4?6のいずれか一項に記載の方法。

【請求項8】
複数の反応器の各々の容積が、約10アトリットルと約100ピコリットルとの間である、請求項7に記載の方法。

【請求項9】
アナライト分子または粒子が、タンパク質または核酸である、請求項1?8のいずれか一項に記載の方法。

【請求項10】削除
【請求項11】削除
【請求項12】削除

2 取消理由の概要

訂正前の請求項1ないし12に係る特許に対して平成28年12月9日付けで特許権者に通知した取消理由は次の通りである。

本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備があり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたため、特許法第113条第4号の規定に該当し、取り消すべきものである。

(1) 請求項1ないし12について
請求項1において、「個別にアドレスし」との記載、及び、「前記アドレスするステップ」との記載があるが、動詞としての「address」には、複数の意味があり、請求項1における「アドレス」が何を表すかを明確に特定できないことから、請求項1に係る発明は明確でない。
請求項3においても同様の記載があることから、請求項3に係る発明も、上記と同様である。
また、請求項1又は請求項3の記載を直接または間接的に引用する請求項2、4ないし12に係る発明についても同様である。

(2) 請求項10ないし12について
(2-1) 請求項10には「請求項1?9のいずれか一項に記載の方法を使用して流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の測度を決定するためのシステム。」と、物のカテゴリーに属する発明が記載されているが、「請求項1?9のいずれか一項に記載の方法を使用して」との規定は、物の発明の特定事項としては不適切であり、請求項10に係る発明は明確でない。
(2-2) 請求項10の「アナライト分子または粒子の濃度の測度を決定するためのシステム」とは、構成要素としていかなるものまで含まれるのか複数通りに解釈でき、請求項10に係る発明は明確でない。
(2-3) 請求項11の「請求項1?9のいずれか一項に記載の方法を使用して」との規定は、「物品またはキット」という物の発明の特定事項としては不適切であり、どのような物が特定されているか不明であり、請求項11に係る発明は明確でない。
請求項11の記載を引用する請求項12に係る発明も同様である。

(3) 請求項11及び12について
請求項11において、「複数の反応器を含む複数のビーズ」とあるが、この記載では、「複数のビーズ」が「複数の反応器」を含むことになり、記載の意味が不明である。
よって、請求項11に係る発明は明確でない。
請求項11の記載を引用する請求項12に係る発明ついても同様である。

3 取消理由の判断

(1) 取消理由(1)について
動詞としての「address」には、「(人に)話しかける」、「(人を)<・・・と>呼ぶ」、「申し込む,提出する」、「(・・・に)向けて言う」、「本気で取りかかる」、「(問題などを)扱う,処理する」、「(情報)をアドレス指定する」、「(球に)ねらいをつける」等の意味があるが、当該技術分野において明らかに適切ではない意味は、当然に排除されるべきである。したがって、「(人に)話しかける」、「(人を)<・・・と>呼ぶ」、「申し込む,提出する」、「(・・・に)向けて言う」、「本気で取りかかる」等の意味が適切でないことは当業者にとって明らかである。また、「(問題などを)扱う,処理する」の訳語も、その対象が「問題など」であり、形状を有さない概念であることを勘案すると、「問題など」を対象とした「扱う,処理する」の意味を、形状を有する物体であるビーズに適用することが適切であるとはいえない。
そこで、「アドレスする」の意味として、「アドレス指定する」、換言すれば「位置付ける」という意味で解釈すべきか、「ねらいをつける」という意味で解釈すべきかを以下に検討する。

ア 複数の区画に空間的に分別する工程を有する態様に基づく検討
本件明細書の段落【0008】には、以下の記載がある。
「・・・混合ステップを経た捕捉物の少なくとも一部を、複数の区画に空間的に分別すること;空間的分別ステップを経た複数の区画の少なくとも一部にアドレスし、結合リガンドを含む区画の数を決定すること;および流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の測度を、結合リガンドを含むと決定された区画の数に少なくとも部分的に基づいて決定すること。」
上記の記載より、「流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の測度」を決定するためには、少なくとも以下の工程が含まれることが理解できる。

・「混合ステップを経た捕捉物の少なくとも一部を、複数の区画に空間的に分別すること」
・「空間的分別ステップを経た複数の区画の少なくとも一部にアドレスし、結合リガンドを含む区画の数を決定すること」
・「および流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の測度を、結合リガンドを含むと決定された区画の数に少なくとも部分的に基づいて決定すること」

そして、上記の工程のうち、ビーズを含む捕捉物の少なくとも一部を複数の区画に空間的に分別すること、換言すれば、各々の区画に位置付けることは、アドレスすることとは異なる工程に含まれるから、アドレスすることが、「空間的に分別し、各々の区画に位置付ける」という意味で使われているとは認められない。
一方、「複数の区画の少なくとも一部にアドレスし、結合リガンドを含む区画の数を決定」していることから、「区画の数を決定」するために、複数の区画の少なくとも一部にねらいをつけて調べることを意味する記載として用いていると解釈できる。

イ 捕捉物を空間的に分離できる複数の区画の使用を含まない態様に基づく検討
本件明細書を参照すると、段落【0063】には、「いくつかの態様において、少なくとも1種のアナライト分子に対する結合表面を含む複数の捕捉物の、および/または捕捉物を空間的に分離できる複数の区画の使用を含まない、アッセイ法を実施することができる。」と記載され、さらに、「例えば、ある態様による本発明のアッセイは、単一のアナライト分子を、および/または1または2以上のアナライト分子に結びついている捕捉物を、これらが検出用に個別にアドレスできるように分離することができる、任意の好適な方法を用いてよい。」「捕捉物の少なくとも一部に個別にアドレスして、アナライト分子または粒子と結びついた捕捉物の数を決定することができる。アナライト分子と結びついていると決定された捕捉物の数に少なくとも部分的に基づき、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の測度を決定することができる。」と記載されている(下線は当審で付与。以下同じ。)。したがって、複数の区画が用いられない場合でもアドレスが行われる点が理解できる。

また、段落【0066】及び、図4Cを参照すると、段落【0066】には、「さらに別の例として、図4Cは、単独のアナライト分子282が物体280に対して、捕捉成分274を介して結びついている態様を示す。さらにこの例において、固定化されたアナライト分子は、結合リガンド284と結びつく。液滴は、液滴をカラム287に供給して、各液滴が光検出システム(例えば光源286および検出器288を含む)の単一ファイルを通過するようにすることにより、光学的にインタロゲート可能である。各液滴は、光学シングル(当審注:「シグナル」の誤記と認められる。)の変化(例えば、液滴内に結合リガンドが存在することによる光学シグナルの変化)がある場合に、結合リガンドを含むと決定することができる。」と記載されており、図4Cを参照すると、液滴270、276中のビーズ272、278に光検出システム(光源286および検出器288)を作用させ、アナライト分子の検出を行う点が見て取れる。そして、段落【0066】に記載された事項は、段落【0063】に記載された事項の具体例として示されたものであるから、段落【0063】に記載された「検出用に個別にアドレス」することは、段落【0066】における「各液滴が光検出システム(例えば光源286および検出器288を含む)の単一ファイルを通過するようにすることにより、光学的にインタロゲート」することであると認められ、個別にアドレスすることは、個別に液滴に光検出システムを作用させることであり、アドレスすることを、「ねらいをつけて調べる」という意味で用いていると解釈することができる。

上記ア及びイを総合すると、本件明細書において用いられる「アドレス」するとは、「ねらいをつけて調べる」ことを意味していると考えるのが相当である。
そして、上記した動詞としての「address」の他の訳語は、本件明細書を総合的に参酌する限り、適切なものとは認められない。
したがって、本件明細書を全体としてみると、「アドレス」するとは、「ねらいをつけて調べる」ことを指すと一義的に解釈でき、その解釈により、本件明細書中の記載事項が、概ね矛盾無く説明できることから、 請求項1における、「個別にアドレスし」との記載、及び、「前記アドレスするステップ」の記載は、当業者にとって理解できるものであり、明確でないとまではいえない。
同様のことは、請求項3の記載についてもいえる。
また、請求項1又は請求項3を直接又は間接的に引用する請求項2、請求項4ないし9の記載についても同様である。
よって、取消理由通知における取消理由(1)によっては、本件特許を取り消すことはできない。

(2) 取消理由(2)及び(3)について
上記「第2 訂正の適否についての判断」 のとおり本件訂正が認められ、請求項10ないし12は訂正の結果削除されたため、取消理由(2)及び(3)の対象となる請求項が存在しないものとなった。

4 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由の概要

(1) 特許法第29条第1項第3号及び同法第29条第2項について

申立人は、証拠方法として下記の甲第1号証ないし甲第3号証及び添付資料1を提出している。

甲第1号証:特表2007-527214号公報
甲第2号証:国際公開第2009/029073号
甲第3号証:特表2001-524208号公報
添付資料1:特表2010-538260号公報(甲第2号証の翻訳文として提示)

なお、申立人から提出された甲各号証を、以下、甲1などと、また、添付資料1を、資料1と省略して表記する。
そして、以下の点を主張している。

ア 請求項1、2、7ないし11に係る発明は、甲1又は甲2に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、その発明に係る特許は同法同条の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。

イ 請求項3ないし6、12に係る発明は、甲1ないし甲3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、その発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。

(2) 特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第1号について

ア 請求項1、3、5ないし12に係る発明は、ビーズの区画化を行わずに一分子検出を行う方法を包含するものであるが、いかにして区画化せず一分子検出を行うのか具体的な記載がなく、当業者が過度の試行錯誤無く実施することができない。また、区画化しない検出方法に係る範囲まで、発明の詳細な説明に開示された「区画化による検出方法」から拡張できるとはいえない。

イ 請求項1ないし12に係る発明は、アナライト分子としての「粒子」には、細胞やウィルスなどが含まれると考えられるが、発明の詳細な説明には、このような粒子を検出するための具体的な記載が一切無く、当業者が過度の試行錯誤無く実施することができない。また、このような粒子の検出に係る範囲まで発明の詳細な説明に記載された内容から拡張できるとはいえない。

ウ 請求項3ないし12に係る発明は、2種以上のアナライトを同時に検出するものであるが、発明の詳細な説明には、2種以上のアナライトを同時に検出するための具体的な記載が一切無く、当業者が過度の試行錯誤無く実施することができない。また、2種以上のアナライトを同時に検出する範囲まで、発明の詳細な説明に記載された内容から拡張できるとはいえない。

5 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由の判断

(1) 特許法第29条第1項第3号及び同法第29条第2項について

ア 甲各号証の記載事項

(ア) 甲1の記載事項及び甲1発明
甲1には、以下の記載がある。
「【請求項35】
以下の段階を含む、ヌクレオチド配列変異を分析するための方法:
分析物DNA分子の1つまたは複数の種を含むマイクロエマルジョンを形成する段階;
試薬ビーズの存在下においてマイクロエマルジョンにおける分析物DNA分子を増幅する段階であって、試薬ビーズが、分析物DNA分子を増幅するためのプライマーの複数の分子に結合しており、分析物DNA分子の1つの種の複数のコピーに結合している生成物ビーズが形成される、段階;
生成物ビーズを、生成物ビーズに結合していない分析物DNA分子から分離する段階;
生成物ビーズに結合している分析物DNA分子の1つの種の配列特徴を決定する段階。」
「【請求項36】
分析物DNA分子の第一種の複数のコピーに結合している生成物ビーズを、分析物DNA分子の第二種の複数のコピーに結合している生成物ビーズから単離する段階をさらに含む、請求項35記載の方法。」
「【0010】
・・・分析物DNA分子の単一種の複数のコピーに結合している生成物ビーズが、形成される。生成物ビーズは、生成物ビーズに結合していない分析物DNA分子から分離される。・・・。」
「【0030】
・・・。第二に、得られたデータは、変異体がDNA分子の特定の集団に存在することを実証するためだけでなく、その集団における変異体DNA分子の画分を定量するためにも用いられうる(図5A)。・・・。」

上記の摘記事項を総合すると、甲1には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。

「試薬ビーズが、分析物DNA分子を増幅するためのプライマーの複数の分子に結合しており、分析物DNA分子の1つの種の複数のコピーに結合している生成物ビーズが形成される、段階;
生成物ビーズを、生成物ビーズに結合していない分析物DNA分子から分離する段階;
分析物DNA分子の第一種の複数のコピーに結合している生成物ビーズを、分析物DNA分子の第二種の複数のコピーに結合している生成物ビーズから単離する段階を含む、
変異体DNA分子の画分を定量する
ヌクレオチド配列変異を分析するための方法。」

(イ) 甲2の記載事項及び甲2発明
甲2には、以下の記載がある。なお、甲2の記載事項の認定には、申立人が甲2の翻訳文として提示した資料1を採用した。

「【請求項1】
試験すべき流体サンプル中の分析物の濃度を決定する方法であって、次のステップ:
(a)流体サンプル中の分析物分子の少なくとも一部を、複数の反応容器にわたって分配して、反応容器の統計的に有意なフラクションが分析物を含有し、反応容器の統計的に有意なフラクションが分析物を含有しないようにすること;
(b)各々の反応容器中の分析物の存在または不在を決定して、分析物を含有する反応容器の数を同定すること、および/または、分析物を含有しない反応容器の数を同定すること;および
(c)前記分析物を含有する反応容器の数から、前記流体サンプル中の分析物の濃度を決定すること;
を含む、前記方法。」
「【0004】
・・・本明細書に記載の発明は、分析されるサンプルを、統計的に1つのみの分析物分子が存在するか、あるいは全く存在しないような、少量のサンプルに分配する。次にこれらの分析物分子を、デジタル化様式で検出およびカウントして、分析物濃度を決定する。」
「【0033】
・・・本発明の1つの態様にしたがって、反応容器は約10アトリットル?約50ピコリットルの範囲の容積を有する。代替的に、反応容器のサイズは、約1ピコリットル?約50ピコリットルの範囲である。さらなる代替案において、反応容器のサイズは、約1フェムトリットル?約1ピコリットルの範囲である。さらなる代替案において、反応容器のサイズは、約30フェムトリットル?約60フェムトリットルの範囲である。」
「【0038】
個々の反応容器は、結合表面を含んでよい。結合表面は、反応容器の内部表面の全てまたは一部であってよく、または、反応容器内に封じこめられた何かの表面、例えばビーズ、または粒子(例えば微粒子またはナノ粒子)の表面であってもよい。」
「【0064】
マイクロウェル10内の捕捉成分の例を、図1e?1gに示す。捕捉成分16は、任意のシール38を含んでよいマイクロウェル10の表面上に局在化してよく(図1e)、任意のシール38を含んでよいマイクロウェル10内に含まれる微粒子34上に局在化してよく(図1f)、および/または、マイクロウェル10のシール36上に局在化してよい(図1g)。」
「図1F



上記の摘記事項を総合すると、甲2には、以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。

「(a)流体サンプル中の分析物分子の少なくとも一部を、統計的に1つのみの分析物分子が存在するか、あるいは全く存在しないような少量のサンプルとし、表面が結合表面であるビーズが封じこめられた複数の反応容器にわたって分配すること;
(b)各々の反応容器中の分析物の存在または不在を決定して、分析物を含有する反応容器の数を同定すること、および/または、分析物を含有しない反応容器の数を同定すること;および
(c)前記分析物を含有する反応容器の数から、前記流体サンプル中の分析物の濃度を決定すること;
を含む
試験すべき流体サンプル中の分析物の濃度を決定する方法。」

(ウ) 甲3の記載事項
甲3には、特に第2頁第2行ないし第8行、第17頁第15ないし17行、第18頁第11行ないし第27行を参照すると、別々の亜母集団を含むビーズの母集団において、標的アナライトの存在下にビーズの光学的特性を変化させる化学的官能基を担持させ、各亜母集団のビーズは、亜母集団が担持する化学的官能基の記述によってコード化するようにした技術が記載されている。

イ 特許法第29条第1項第3号についての検討
(ア) 本件発明1、2、7ないし9と甲1発明との対比、判断
濃度とは、「(1)溶液や混合気体の一定量中に含まれる各成分の量を表すもの。濃さ。」[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]とされるものであり、本件発明1における「濃度」とは、「容積や体積に対する各成分の量」と理解される。
この理解は、本件明細書の「【0195】0(アナライト分子は検出されない)または1(1アナライト分子を検出)の応答の、多数の区画のアレイと組み合わせての使用は、試料中のアナライト分子のバルク濃度の決定を、区画に含まれて区分された試料の容積中に含まれた分子の実際の数を計測することにより、可能とする。」や「【0253】・・・前立腺全摘出術後の患者のPSAレベルを非常に低い濃度(<3fMまたは100fg/mL)で正確に定量する能力は、PSAレベルが増加した場合に再発の初期の兆候を提供することができる。・・・」との記載にも合致するものである。
そこで、本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明は、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の測度を決定するものではない。
すなわち、甲1発明は、生成物ビーズを用いる技術ではあるが、分析物DNA分子における、変異体DNA分子の画分を定量する方法であり、流体サンプル中の分析物の濃度を求めるものではない。
したがって、本件発明1と甲1発明は同一の発明とはいえない。
また、本件発明2、7ないし9は、本件発明1を減縮したものであり、本件発明1と同様の理由で、甲1発明と同一の発明とはいえない。

(イ) 本件発明1、2、7ないし9と甲2発明との対比、判断
本件発明1と甲2発明とを対比すると、甲2発明は、ビーズの少なくとも一部に個別にアドレスし、少なくとも1つのアナライト分子または粒子と結びついたビーズの割合を決定すること、及び、流体試料中のアナライト分子又は粒子の濃度の測度を、少なくとも1つのアナライト分子または粒子と結びついたと決定された前記ビーズの割合に少なくとも部分的に基づいて決定されることを発明特定事項としていない。
すなわち、甲2発明は、流体サンプルを、各反応容器に、統計的に一つのみの分析物分子が存在するか、あるいは全く存在しないよう、少量のサンプルとしたものである。したがって、ごく希に二つ以上の分析物分子が存在する反応容器が存在することはあり得るが、各反応容器の大部分は、1又は0個の分析物分子が存在するといえる。
また、各反応容器には、表面が結合表面であるビーズが封じ込められているが、このビーズが、各反応容器に一つずつ配置されていることは明記されていない。そして、各反応容器にビーズを一つずつ配置するためには技術的に困難が伴うこと、及び、当該反応容器に配分された分析物分子を、より確実に捕捉するのであれば、複数のビーズが封じ込められていると考えるのが自然であることを勘案すると、甲2発明は、各反応容器に、複数のビーズが配置されているものと認められる。
一方、本件発明1は、ビーズの少なくとも一部に個別にアドレスし、少なくとも1つのアナライト分子又は粒子と結びついたビーズの割合を決定するものであるが、甲2発明では、各反応容器に複数のビーズが配置され測定するものである以上、容器ごとにアドレスすることによってビーズに「個別にアドレス」されることはない。
したがって、本件発明1と甲2発明は同一の発明とはいえない。
また、本件発明2、7ないし9は、本件発明2を減縮したものであり、本件発明1と同様の理由で、甲2発明と同一の発明とはいえない。

(ウ) 小括
以上のことから、本件発明1、2、7ないし9は、甲1又は甲2に記載された発明と同一とはいえず、特許異議申立理由(1)アによっては、本件特許を取り消すことはできない。

ウ 特許法第29条第2項についての検討
本件発明3と甲1発明とを対比すると、両者は、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点>
本件発明3は、少なくとも1つの第1種のアナライト分子または粒子と結びついた第1種のビーズの割合と、少なくとも1つの第2種のアナライト分子または粒子と結びついた第2種のビーズの割合とを決定し、流体試料中の第1種のアナライト分子または粒子の濃度の測度を、前記第1種のビーズの割合に少なくとも部分的に基づいて決定すること、および、前記流体試料中の第2種のアナライト分子または粒子の濃度の測度を、前記第2種のビーズの割合に少なくとも部分的に基づいて決定することを含む、流体試料中の複数種のアナライト分子または粒子の濃度の測度を決定するための方法であるのに対して、甲1発明は、分析物DNA分子における、変異体DNA分子の画分を定量する方法であり、流体試料中の濃度の測度を決定するための方法ではない点。

上記相違点について検討するに、甲2には、試験すべき流体サンプル中の分析物の濃度を決定する方法が記載されてはいるが、甲2に記載された事項は、分析物が1種類であることが前提となっており、複数種のアナライト分子または粒子の濃度の測度を決定することに適用できるものではなく、甲1発明に、甲2に記載された事項を適用することは技術的に不可能である。
また、甲3には、別々の亜母集団を含むビーズの母集団において、標的アナライトの存在下にビーズの光学的特性を変化させる化学的官能基を担持させ、各亜母集団のビーズは、亜母集団が担持する化学的官能基の記述によってコード化する構成が記載されているが、流体試料中の濃度の測度を決定する点については何ら記載されていない。
したがって、甲1ないし甲3に接した当業者といえども、上記相違点に係る本件発明3の発明特定事項を想起することができない。
よって、本件発明3は、甲1ないし甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本件発明4ないし6は、本件発明3を減縮したものであり、本件発明3と同様の理由で、甲1ないし甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
以上のことから、本件発明3ないし6は、甲1ないし甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許異議申立理由(1)イによっては、本件特許を取り消すことはできない。

(2) 特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第1号について
ア 特許異議申立理由(2)アについて
本件明細書の段落【0063】ないし【0067】、図4Cに記載された実施例は、ビーズの区画化を行わずに一分子検出を行うものである。したがって、本件明細書には、区画化せず一分子検出を行うものの具体的な記載は存在し、その記載をもとに当業者が本件発明1、3、5ないし9を実施可能であると認められ、また、請求項1、3、5ないし9に係る発明は、本件明細書に記載された発明であるといえる。

よって、特許異議申立理由(2)アによっては、本件特許を取り消すことはできない。

イ 特許異議申立理由(2)イについて
本件明細書には、細胞やウィルス等をアナライトとした場合の具体的な記載は存在しないが、ビーズ等のサイズを、検出対象とするアナライトに合わせて最適化することによって、細胞、ウィルス等と結びついたビーズと、フリーであるビーズを区別可能とし、それらに基づき、細胞、ウィルス等と結びついたビーズの割合を決定することは、当業者であれば、実施可能であると認められる。
したがって、細胞やウィルスをアナライトとした場合等の具体的な記載は存在しなくても、本件明細書の記載に基づき、当業者が本件発明1ないし9を実施可能であり、特許異議申立理由(2)イによっては、本件特許を取り消すことはできない。

ウ 特許異議申立理由(2)ウについて
本件明細書の段落【0074】ないし【0078】には、2種以上のアナライトを同時に検出するための手法が記載されており、当該箇所の記載が、技術的に不可能なものとは認められず、また、当該箇所の記載に基づいて2種以上のアナライトを同時に検出することを当業者が実施するにあたって、当業者に過度な試行錯誤を強いるものとも認められないことから、本件明細書は、当業者が請求項3ないし9に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているといえ、また、請求項3ないし9に係る発明は、本件明細書に記載された発明であるといえる。
よって、特許異議申立理由(2)ウによっては、本件特許を取り消すことはできない。

第4 むすび

以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件特許の請求項10ないし12は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項10ないし12に対して申立人がした特許異議の申し立てについては、対象となる請求項が存在しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の測度を決定するための方法であって、
各々が、少なくとも1つのアナライト分子もしくは粒子のいずれかと結びついたか、またはいかなるアナライト分子もしくは粒子からもフリーである複数のビーズを供給すること、ここで前記複数のビーズの各々が、捕捉成分を含み;
前記ビーズの少なくとも一部に個別にアドレスし、少なくとも1つのアナライト分子または粒子と結びついた前記ビーズの割合を決定すること;および
前記流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の測度を、前記アドレスするステップを経て少なくとも1つのアナライト分子または粒子と結びついたと決定された前記ビーズの割合に少なくとも部分的に基づいて決定すること
を含む、前記方法。
【請求項2】
複数のビーズの少なくとも一部を、複数の別々の区画に空間的に分別すること、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複数種のアナライト分子または粒子の濃度の測度を決定するための方法であって、前記複数種には、少なくとも、流体試料中の第1種のアナライト分子または粒子と第2種のアナライト分子または粒子とが含まれ、前記方法が、
複数の第1種のビーズと複数の第2種のビーズとを供給すること、ここで前記第1種のビーズが、複数の第1種の捕捉成分を含み、かつ各々が、少なくとも1つの第1種のアナライト分子もしくは粒子と結びついたか、またはアナライト分子もしくは粒子からフリーであり、前記第2種のビーズが、複数の第2種の捕捉成分を含み、かつ各々が、少なくとも1つの第2種のアナライト分子もしくは粒子と結びついたか、またはアナライト分子もしくは粒子からフリーである;
前記ビーズの少なくとも一部に個別にアドレスし、少なくとも1つの第1種のアナライト分子または粒子と結びついた前記第1種のビーズの割合と、少なくとも1つの第2種のアナライト分子または粒子と結びついた前記第2種のビーズの割合とを決定すること;
前記流体試料中の第1種のアナライト分子または粒子の濃度の測度を、前記アドレスするステップを経て少なくとも1つの第1種のアナライト分子または粒子と結びついたと決定された前記第1種のビーズの割合に少なくとも部分的に基づいて決定すること;および
前記流体試料中の第2種のアナライト分子または粒子の濃度の測度を、前記アドレスするステップを経て少なくとも1つの第2種のアナライト分子または粒子と結びついたと決定された前記第2種のビーズの割合に少なくとも部分的に基づいて決定すること
を含む、前記方法。
【請求項4】
複数の第1種のビーズと複数の第2種のビーズとの少なくとも一部を、複数の別々の区画に空間的に分別すること、をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
流体試料中の第1種のアナライト分子または粒子と第2種のアナライト分子または粒子との濃度が、各々、約50×10^(-15)M未満である、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
流体試料中の第1種のアナライト分子または粒子と第2種のアナライト分子または粒子の濃度の測度が、測定されたパラメータと校正標準との比較によって、少なくとも部分的に決定される、請求項3?5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
複数の別々の区画が、複数の反応器を含む、請求項2および4?6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
複数の反応器の各々の容積が、約10アトリットルと約100ピコリットルとの間である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
アナライト分子または粒子が、タンパク質または核酸である、請求項1?8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】(削除)
【請求項11】(削除)
【請求項12】(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-06-22 
出願番号 特願2014-105431(P2014-105431)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (G01N)
P 1 651・ 536- YAA (G01N)
P 1 651・ 537- YAA (G01N)
P 1 651・ 121- YAA (G01N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 赤坂 祐樹  
特許庁審判長 郡山 順
特許庁審判官 ▲高▼橋 祐介
渡戸 正義
登録日 2015-12-25 
登録番号 特許第5860922号(P5860922)
権利者 クワンテリクス コーポレーション
発明の名称 ビーズまたは他の捕捉物を用いた分子または粒子の超高感度検出  
代理人 葛和 清司  
代理人 松浦 綾子  
代理人 葛和 清司  
代理人 松浦 綾子  
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