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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08L
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08L
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
管理番号 1331199
異議申立番号 異議2016-700851  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-09-12 
確定日 2017-07-11 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5885485号発明「ポリアミド樹脂組成物及び成形品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5885485号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 特許第5885485号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5885485号の請求項1?6に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成23年12月6日に出願され、平成28年2月19日にその特許権の設定登録がされ、同年3月15日にその特許公報が発行され、その後同年9月12日に東レ株式会社(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
その後の手続の経緯は次のとおりである。
平成28年 9月12日 特許異議申立書
同年11月14日付け 取消理由通知
同年 同月30日 上申書(特許異議申立人)
平成29年 1月16日 意見書・訂正請求書(特許権者)
同年 同月24日付け 通知書
同年 2月22日 意見書(特許異議申立人)
同年 3月23日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年 5月26日 意見書(特許権者)

第2 訂正の適否
特許権者は、特許法第120条の5第1項の規定により審判長が指定した期間内である平成29年1月16日に訂正請求書を提出し、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?6について訂正することを求めた(以下「本件訂正」という。)。

1 訂正の内容
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
を、含むポリアミドであって、
当該ポリアミドが、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミドであり、」とあるのを、
「(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
からなるポリアミドであって、」に訂正する。

(2)訂正事項2
明細書の段落【0013】に
「〔1〕
(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
を、含むポリアミドであって、」とあるのを、
「〔1〕
(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
からなるポリアミドであって、」に訂正する。

(3)訂正事項3
明細書の段落【0112】に記載した表1に


」とあるのを、


」に訂正する。

2 本件訂正の適否
(1)一群の請求項について
訂正事項1は、請求項1を訂正するものであるところ、本件訂正前の請求項2?6はいずれも請求項1を引用するものであるから、請求項1?6は特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。そして、本件訂正の請求は、請求項1?6についてされているから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。

(2)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、本件訂正前にポリアミドが
「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミド」であって、
「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド」であったものを、
「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド」
に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

新規事項の追加、特許請求の範囲の実質上の拡張・変更について
訂正事項1により特定された「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド」は本件訂正前の請求項1にポリアミドの選択肢の1つとして記載されているから、新規事項の追加はなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。したがって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(3)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、明細書の段落【0013】の記載について、上記訂正事項1により訂正される請求項1の記載との整合を図るものであり、本件訂正後において請求項1と同様の記載とする訂正を行うものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

新規事項の追加、特許請求の範囲の実質上の拡張・変更について
訂正事項2は、明細書の段落【0013】の記載を訂正事項1により訂正される請求項1の記載と同様の記載とするものであるから、上記(2)イで述べたのと同様の理由により、新規事項の追加はなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。したがって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

ウ 明細書の訂正と関係する請求項について
訂正事項2は、特許請求の範囲の全ての請求項と関係しているところ、本件訂正の請求は、全ての請求項について訂正を請求している。したがって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合する。

(4)訂正事項3について
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、明細書の段落【0112】に記載した表1における「(B)安定剤とその配合割合」の欄の「種類」と「質量部」の記載位置を互いに入れ替えるものであるところ、本件訂正前に、実施例1?16について「種類」の欄には数値が、「質量部」の欄にはB1?B5(なお、B1?B5はそれぞれ明細書の段落【0104】に記載された特定の安定剤である)が記載されており、当該記載に誤りがあることは明らかである。訂正事項3は、その誤りを正し、「種類」の欄に特定の安定剤を、質量部の欄に数値を記載するようにするものである。また、訂正事項3は、表1の欄外に「種類」との記載を追加するものであるところ、かかる記載は、表1の欄外の記載であって、特に技術的意味を有するものではない。したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものである。

新規事項の追加について
明細書の段落【0104】?【0111】には、
「〔安定剤(B)〕
(B1)フェノール系安定剤
N,N’-へキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)] チバ・ジャパン製 商品名 IRGANOX(登録商標)1098
(B2)ホスファイト系安定剤
ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト ADEKA製 商品名 アデカスタブ(登録商標)PEP-36
(B3)ヒンダードアミン系安定剤
ビス-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-セバケート チバ・ジャパン製 商品名 サノール(登録商標)770
(B4)トリアジン系安定剤
2-(2’-ヒドロキシ-4’-ヘキシルオキシフェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン チバ・ジャパン製 商品名 TINUBIN(登録商標)167FF
(B5)無機リン系安定剤
次亜リン酸ナトリウム 和光純薬製 商品名 ジ亜リン酸ナトリウム
・・・
〔実施例1〕
製造例1で作製したポリアミド(A1)100質量部と安定剤(B1)0.1質量部とを、・・・ポリアミド樹脂組成物を得た。
・・・
〔実施例2?14、比較例1?7〕
(A)ポリアミドの種類、(B)安定剤の種類、配合量を、それぞれ下記表1及び表2に示すように変更した。その他の条件は、実施例1と同様の方法により、ペレット状のポリアミド樹脂組成物を得た。
・・・
〔実施例15〕
ポリアミド(A1)67質量部と安定剤(B1)0.3質量部とを、・・・ポリアミド樹脂組成物を得た。
・・・
〔実施例16〕
ポリアミド(A1)50質量部と安定剤(B1)0.3質量部とを、・・・ポリアミド樹脂組成物を得た。
・・・
〔比較例8〕
ポリアミド(A17)100質量部と安定剤(B1)0.3質量部とを、・・・溶融混練を行った。・・・
〔比較例9〕
ポリアミド(A12)67質量部と安定剤(B1)0.3質量部とを、・・・ポリアミド樹脂組成物を得た。」
と記載されており、また、明細書の段落【0113】に表2として


」との記載があるところ、実施例1、15、16、比較例8、9ではいずれも安定剤の種類としてB1が用いられ、その量が実施例1では0.1質量部、実施例15、16、比較例8、9では0.3質量部であって、安定剤の種類及び量は、本件訂正後の表1の記載及び表2(表2は訂正されていない)の記載と合致するものであり、また、上記アで述べたとおり、表1について、本件訂正前に、「(B)安定剤とその配合割合」の欄の「種類」と「質量部」の記載に誤りがあることは明らかであるから、実施例1、15、16と同様に、実施例2?14についても、表1には「(B)安定剤とその配合割合」の欄について、「種類」と「質量部」の欄に互いに逆のものが本件訂正前に記載されていたということができる。
また、表1の欄外に「種類」との記載を追加する点についても、この記載は特に技術的意味を有するものではなく、表1には「種類」との記載が存在する。
してみると、訂正事項3は出願当初の明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、新規事項を追加するものではない。したがって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の実質上の拡張・変更について
訂正事項3が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するとする理由はない。したがって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

エ 明細書の訂正と関係する請求項について
訂正事項3は、特許請求の範囲の全ての請求項と関係しているところ、本件訂正の請求は、全ての請求項について訂正を請求している。したがって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合する。

(5)まとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第第120条の5第2項ただし書第1号、第2号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項で準用する特許法第126条第4項から第6項までの規定に適合する。
したがって、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?6について訂正することを認める。

第3 本件発明
上記第2で述べたとおり、本件訂正後の請求項1?6について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1?6に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件発明1」?「本件発明6」ともいう。)である。
「【請求項1】
(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
からなるポリアミドであって、
当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、
かつ、下記式(1)で示される(Y)が、-0.3≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミドと、
(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1)
(前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。
(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2))
(B):耐熱安定剤及び耐光安定剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の(B)安定剤と、
を、含有するポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
前記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)安定剤が、フェノール系安定剤、ホスファイト系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤、トリアジン系安定剤、イオウ系安定剤、及び無機リン系安定剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項1又は2に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)安定剤の含有量が、前記ポリアミド100質量部に対して0.01?5質量部である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A)ポリアミド30?95質量部に対して、(C)無機充填材5?70質量部を、さらに含有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物を含む成形品。」

第4 取消理由通知の概要
当審が取消理由で通知した取消理由は、理由1?理由3であり、その概要は次に示すとおりである。
なお、取消理由通知において通知した理由2(1)は、取消理由通知(決定の予告)と同趣旨であるので、以下には、取消理由通知(決定の予告)で示した事項を記載した。

[理由1]本件特許の請求項1、3?6に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、上記請求項に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

提示した刊行物及び参考資料は次のとおりである。

刊行物1:特開2007-182071号公報(特許異議申立人が提示した甲第1号証)
刊行物2:特開2003-277605号公報(特許異議申立人が提示した甲第3号証)
刊行物3:福本修編、「ポリアミド樹脂ハンドブック」、日刊工業新聞社、昭和63年1月30日初版1刷発行、111?116頁(特許異議申立人が提示した甲第4号証)
参考資料:実験報告書、報告者:東レ株式会社 樹脂技術部 樹脂開発第1室長 高村 元(特許異議申立人が提示した甲第2号証)

[理由2]本件の請求項1?6に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさない。
よって、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

具体的な理由の概要は次のとおりである。

(1)どのような方法によってYの値を制御するかは発明の詳細な説明の記載をみても不明であるといわざるを得ず、当該Yの値が-0.3≦(Y)≦0.8であることを発明特定事項とする本件発明1について、その全範囲にわたって、発明の詳細な説明は、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるということはできない。
本件発明2?6についても同様である。

(2)本件特許明細書の段落【0112】に記載の表1における(B)安定剤とその配合割合の欄の「種類」と「質量部」が逆に記載されている不備がある。

[理由3]本件の請求項1?6に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で特許法第36条第6項第1号に適合しない。
よって、本件特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

具体的な理由の概要は次のとおりである。

本件発明1?5の発明が解決しようとする課題は、過酷な成形条件下において成形した場合においても、成形品の表面外観の安定性が良好で、耐衝撃特性に優れ、かつ、日光等に曝露させた場合でも色調変化等の物性変化が少ない耐候性に優れるポリアミド樹脂組成物を提供することであり、本件発明6の発明が解決しようとする課題は、前記ポリアミド樹脂組成物を含む成形品を提供することであると認められ、本件発明1は、(A)のポリアミドが、(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド(以下「ポリアミド1」という。)であるか、又は(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド(以下「ポリアミド2」という。)であるところ、ポリアミド2を含有するポリアミド樹脂組成物について、発明の詳細な説明に具体的に記載されているのは、製造例9で製造されたポリアミドA9を用いた実施例14のみであり、本件発明1の全範囲にわたって、当業者が、発明の詳細な説明の記載から上記課題を解決することができると認識できるとはいえないから、本件発明1は発明の詳細な説明に記載したものということはできない。
本件発明2?6についても同様である。

第5 当審の判断
1 取消理由通知に記載した取消理由について
(1)取消理由1(特許法第29条第2項)について

ア 各刊行物及び参考資料の記載事項並びに引用発明

(ア)各刊行物及び参考資料の記載事項
刊行物1:
1a)「【請求項2】
アンモニア、ヒドラジン、及び水溶性アミン化合物から選択される1種以上の水溶液に浸漬する工程を経て電子顕微鏡観察で数平均内径10?80nmの凹部で表面が覆われたアルミニウム合金部品と、
前記アルミニウム合金部品の前記表面に射出成形で固着され、脂肪族ポリアミド樹脂と芳香族ポリアミド樹脂が単純混合されたもの、及び/又は、前記脂肪族ポリアミド樹脂と前記芳香族ポリアミド樹脂が分子的に結合されたものが主な樹脂分組成である熱可塑性合成樹脂組成物部品と
からなる金属樹脂複合体。」

1b)「【請求項9】
請求項1?8から選択される1項に記載の金属樹脂複合体において、
前記熱可塑性合成樹脂組成物が、樹脂分組成100質量部に対して充填材1?200質量部が含まれていることを特徴とする金属樹脂複合体。
【請求項10】
請求項9に記載の金属樹脂複合体において、
前記充填材が、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、タルク、粘土、及びガラス粉から選ばれる1種以上の充填材であることを特徴とする金属樹脂複合体。」

1c)「【0064】
好ましい共重合ナイロンとしては、・・・ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、・・・ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン66/6I/6)が挙げられる。
【0065】
好ましい共重合ナイロンは6Iナイロン成分が入ったものであり、特に好ましい共重合ナイロンは、ヘキサメチレンアジパミド成分(ナイロン66成分)、ヘキサメチレンイソフタラミド成分(ナイロン6I成分)、およびカプロアミド成分(ナイロン6成分)からなる3元共重合体(ナイロン66/6I/6樹脂)であり、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の当モル塩、ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸の当モル塩、およびεカプロラクタムを重合缶内で加熱、重合することで得られる。その共重合比率は、配合原料の比率である。好ましい各繰返し構造単位の共重合割合は、ナイロン66成分が65?90質量%、ナイロン6I成分が5?30質量%、ナイロン6成分が1?14質量%さらに好ましくは2?12質量%であり、ナイロン6I成分/ナイロン6成分の共重合比1.0以上を同時に満たすことが好ましい。これらの共重合比は共重合体を製造する際の原料の割合を調整することにより、達成される。」

1d)「【0071】
[熱可塑性合成樹脂組成物/充填材]
また、本発明の複合体は、アルミニウム合金部品と樹脂組成物部品の線膨張率差の調整、及び樹脂組成物部品の機械的強度を向上することを目的として、樹脂分合計100質量部に対し、更に充填剤1?200質量部、より好ましくは10?150質量部を含んでなる樹脂組成物部品であることが好ましい。
【0072】
この充填剤としては繊維状充填剤、粒状充填剤、板状充填剤等の充填剤を挙げることができ、該繊維状充填剤としては、例えばガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等が挙げられ、ガラス繊維の具体的な例示としては、平均繊維径が6?14μmのチョップドストランド等が挙げられる。また、該板状、粒状充填剤としては、例えば炭酸カルシウム、マイカ、ガラスフレーク、ガラスバルーン、炭酸マグネシウム、シリカ、タルク、粘土、炭素繊維やアラミド繊維の粉砕物等が挙げられる。
・・・
【0074】
フィラーの種類とその含有率を選べば樹脂の線膨張率はアルミニウム合金等に近い値にでき、例えば、ガラス繊維40?50%をナイロン66に含ませると線膨張率は2?3×10^(-5)℃^(-1)に下がる。」

1e)「【0079】
以下、本発明の実施例を実験例に代えて詳記する。実施例で使用した共重合ポリアミド(ブロックポリマー)の製造法と粘度数の測定方法は以下のとおりである。
〔参考例1 共重合ポリアミド(ブロックポリマー)の製造方法〕
それぞれの共重合ポリアミドの原料となるジアミンと酸の等モル塩などの原料をそれぞれの質量比で反応器に投入し、投入した樹脂分全量と同量の純水を加え、重合缶内をN_(2)で置換した後、攪拌しながら加熱を開始し、缶内圧力を最大20kg/cm^(2)に調整しながら最終到達温度を270℃とし反応させた。水浴中に吐出したポリマーをストランドカッターでペレタイズした。得られたペレットは95℃熱水中で20時間処理し、未反応モノマーや低重合物を抽出除去した。抽出後のペレットは80℃で50時間以上乾燥した。
〔参考例2 粘度数の測定方法〕
ISO307標準方法に従って96%硫酸での粘度数測定を行った。
【0080】
[実施例1]
市販の1.6mm厚のA5052アルミニウム合金板を購入した。18mm×45mmの長方形片多数に切断した。このアルミ合金片の端部に直径2mmφの穴をプレス機で開けた。塩ビ樹脂カバーの銅線を用意した。合金片10個の穴に銅線を通しつつ途中を曲げ、合金片同士がべったりとは接触せぬようにしつつ10個をぶら下げられるようにした。アルミ用脱脂材「NE-6(日本国東京都、メルテックス株式会社製)」15%を含む槽を用意し液温を75℃とした。この脱脂材水溶液に5分浸漬し、水洗した。続いて別の槽に1%濃度の塩酸水溶液を用意し液温を40℃とした。ここへ先ほどのアルミニウム合金片を1分間浸漬し水洗した。
【0081】
続いて別の槽に1%苛性ソーダ水溶液を用意し、液温を40℃とした。ここへ先ほどの合金片を1分間浸漬し水洗した。続いて別の槽に1%塩酸水溶液を用意し、液温を40℃とした。ここへ先ほどの合金片を1分間浸漬し推薦した。続いて3.5%量の一水和ヒドラジン水溶液を60℃とした中に先ほどの合金片を1分間浸漬し、水洗し60℃×20分間温風乾燥機で乾燥した。アルミニウム合金片を銅線から外し、アルミ箔で包み、これをポリエチ袋に入れて封じた。翌日、電子顕微鏡「S-4800(日本国東京都、株式会社日立製作所製)」で、10万倍率で観察したところ20?40nm径、数平均内径で25nmの凹部で表面全面が覆われていることを確認した。
【0082】
一方、アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからナイロン66成分として77質量%、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとから6Iナイロン成分として17質量%、ナイロン6成分として6質量%から成るブロックポリマーを参考例1の方法で合成した。得られた合成樹脂の参考例2記載の方法で測定した粘度数は85ml/gであり、溶融粘度は、フローテスター「CFT-500(日本国京都府、株式会社島津製作所製)にての温度270℃、荷重98.1N(10kgf)の条件下にて380ポイズであった。二軸押出機「TEM-35B(東芝機械株式会社製)」にて、ガラス繊維「RES03-TP91(日本板硝子株式会社製)」をサイドフィーダーから添加量が50質量%となるように供給しながら、シリンダー温度280℃で溶融混練してペレット化したポリアミド系樹脂組成物を得た。
【0083】
アルミニウム合金片を保管して2日後、合金片を取り出し、油分等が付着せぬよう手袋で摘まんで射出成形金型にインサートした。射出成形金型の構造図を図1に示したが、図内で1はアルミニウム合金片、2は可動側型板、3は固定側型板、4は樹脂が射出されるキャビティー部、5はピンポイントゲート、6は接合面を示した。射出接合が為されると図2で示す一体化物が得られる。図2で1はアルミニウム合金片(1.6mm×45.0mm×18.0mm)、4は樹脂部(3mm×50mm×10mm)、5はピンポイントゲート、6は接合面(5mm×10mm)である。接合面の面積は0.5cm^(2)であった。金型を閉め、ガラス繊維50%含有の前記ナイロン系樹脂組成物を射出し、図2で示す一体化品を得た。
【0084】
射出温度は260℃であり、金型温度は140℃であった。射出接合した約2時間後に150℃とした熱風乾燥機に入れて1時間置き、放冷した。その2日後に引っ張り試験機で10個のサンプル全てを引っ張り破断試験した。この試験ではせん断破断力が測定できる。その結果、平均したせん断破断力は26.0MPa(265kgf/cm^(2))であった。」

刊行物2:
2a)「【請求項1】 (A)ポリアミド樹脂100重量部に対し、(B)ガラス繊維を15?150重量部、(C)フェノール系熱安定剤を0.05?1.0重量部、および(D)銅化合物を銅化合物中の銅を基準として(A)に対して10?5000ppm含み、水と接触する成形品に用いられることを特徴とする樹脂組成物。」

2b)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、引張強度、曲げ弾性率等の機械的特性に優れ、更に、耐熱エージング性、耐加水分解性に優れた水と接触する成形品に用いられる樹脂組成物および成形品を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ポリアミド樹脂、ガラス繊維からなる組成物に銅化合物とフェノール系安定剤を添加することにより、引張強度、曲げ弾性率等の機械的特性に優れ、更に、耐熱エージング性、耐加水分解性に優れた水と接触する成形品に用いられる組成物および成形体を得ることが可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。」

2c)「【0019】本発明に用いる(B)ガラス繊維の配合量は、ポリアミド樹脂100重量部に対して、15?150重量部であり、30?50重量部が成型加工性、成形品表面外観の観点から好ましい。ガラス繊維の配合量が15重量部未満であると強度、剛性、耐熱エージング性が不十分であり、150重量部を超えると成型加工性や外観が著しく悪化する。また、本発明の(C)成分であるフェノール系熱安定剤は、ヒンダードフェノール系安定剤を好適に用いることができ、例えば、N,N‘ヘキサメチレンビス3-(3,5-ジ・ターシャリ-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、トリエチレングリコールビス-3-(3-ターシャリ-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチル-フェニル)プロピオネート、1,6-ヘキサンジオール-ビス-[3-(3,5-ジ-ターシャリ-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジンを例示できる。
【0020】また、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジルフォスフォネート-ジエチルエステル、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン等を例示できる。本発明の(C)成分の配合割合は、ポリアミド樹脂100重量部に対して0.05?1.0重量部であり、(C)成分の配合量が0.05重量部未満であると、本発明の効果が得られないし、1.0重量部を超えると成形時にブリードし、成形品外観悪化や金型汚染等が発生しやすくなる。」

2d)「【0025】
【発明の実施の形態】以下の実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例に用いた原材料及び測定方法を以下に示す。
〔原材料〕
[1]ポリアミド樹脂
PA1:ポリアミド66、相対粘度2.5、アミノ末端基数45m当量/kg、Cu濃度100ppm、CuI/KI(ヨウ素を銅に対して20倍モル添加)
PA2:ポリアミド66/6コポリマー(ポリアミド6の割合は5重量%)、相対粘度2.5、アミノ末端基数45m当量/kg、Cu濃度100ppm、CuI/KI(ヨウ素を銅に対して20倍モル添加)
PA3:ポリアミド66/6I(ポリアミド6Iの割合は5重量%;ポリアミド6Iはポリヘキサメチレンイソフタラミド)、相対粘度2.0、アミノ末端基60m当量/kg、Cu濃度100ppm、CuI/KI(ヨウ素を銅に対して20倍モル添加)
PA4:ポリアミド66、相対粘度2.5、アミノ末端基50m当量/kg
[2]ガラス繊維
旭ファイバーガラス社製;CS03JAFT756K25
[3]フェノール系安定剤
PH1:チバ・スペシャリティーケミカルズ社性;Irganox1098
PH2:吉富製薬社性;ヨシノックスBB
[4]銅化合物
Cu1:和光純薬工業製;CuI/KI(ポリアミド重合時に添加)
Cu2:Bruggemann Product社製;Bruggolen H321(溶融混錬時に添加)
【0026】〔試験片の作成〕
1(注:○中1)引張強度試験片および曲げ試験片の作成
射出成形機(日精樹脂製:PS40E)を用い、金型温度80℃で、ASTMD638 TYPE Iおよび長さ5インチ×幅0.5インチ×厚さ1/8試験片を成形した。
2(注:○中2)エージング性試験片の作成
射出成形機(日精樹脂製:PS40E)を用い、金型温度80℃で、JIS3号ダンベル(3mm厚)を成形した。
【0027】[測定方法]
(I)引張強度
ASTM D638に準じて、試験片を引張試験機(東洋精機製:UTM25)で、23℃、クロスヘッドスピード5mm/minの条件で測定を行った。
(II)曲げ弾性率
ASTM D790に準じて、試験片を引張り試験機(東洋精機製:UTM25)で、23℃、クロスヘッドスピード5mm/min、スパン50mmの条件で測定を行った。
(III)温水抽出後のエージング試験
オートクレーブ(内容量3L)に蒸留水2Lを計量し、JIS3号ダンベル片を浸漬後、蓋を密閉し、130℃のオイルバス中に24時間オートクレーブごと浸漬した。冷却した後、試験片を取り出し、取り出した試験片を200℃のオーブン空気中で1000時間放置し、冷却後、引張り試験を上記(I)引張強度記載の方法に従って、試験した。尚、この際のクロスヘッド間の距離を50mmに設定し試験を行い、処理前の引張り試験の結果を100%とした時の保持率を求めた。
【0028】(IV)ブリードアウト試験
上記エージング試験片の作成の際に50ショット後の金型汚染の有無を調べた。
(V)銅析出試験
SUS製オートクレーブ(内容量3L)に、表1または表2に示した溶融混合した組成物ペレット200gを入れ、内温が290℃になってから3時間経過後、冷却し、ペレットが溶融した樹脂魁を取り出し、銅元素の定量分析をICP法により実施した。その際、銅濃度が初期のペレットの80%以上を保持しているものを○、80%未満のものを×として評価した。
【0029】
【実施例1?7、9、10】東芝機械(株)製TEM35BS、2軸押出機を用いてシリンダー設定温度290℃、スクリュウ回転数300rpm、トータルフィード量50kg/hrでトップフィード孔にガラス繊維以外の混合原料を供給、サイドフィード孔から溶融したポリアミド樹脂中にガラス繊維を表1の比率になるように供給し、紡孔より押し出されたストランドを冷却後、長さ3mm、直径3mmのペレット状に切断、乾燥して、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。得られたペレットを上述の方法でシリンダー温度290℃の条件で成形し、評価した。その結果を表1に示す。
【0030】
【実施例8】ポリアミドとして銅を含まないPA4を使用し、溶融混合の際にBruggolen H321をPA4ペレットやガラス繊維以外の副原料として銅濃度が表1の割合になるように混合した以外は、実施例1と同様に溶融混合し、成形、評価を実施した。」

2e)「【0032】
【表1】



刊行物3:
3a)「2.5.2 耐熱性の向上
実用的に重要なのは,ナイロンの融点以下の温度における酸素存在下の劣化を防止することである.その理由は熱酸化劣化がナイロンの長期サービスライフを保証する温度と密接に関係するからである.・・・
ナイロンの耐熱剤について,多数の特許や文献などが発表されてきたが,実用的で有効な耐熱剤はほぼ表2.64の化合物に絞られる^(149)).銅化合物はナイロン6の熱酸化劣化防止剤として表2.65に示すように,とくに高温領域で大き

な効果を発揮する^(149)).・・・.ヒンダードフェノール,芳香族アミンは,ラジカル連鎖成長の防止剤として作用する.ヒンダードフェノール化合物の耐熱剤としての効果の一例を図2.91に示す^(149)).」(111頁下から3行?113頁、図2.92の上4行)

3b)「

」(113頁、図2.91)

3c)「2.5.3 耐候性の向上
光酸化劣化は機構的には熱酸化と同じである.・・・.リンオキシ酸のマンガン塩などのマンガン化合物も古くから知られ,今なお実用化されている耐候剤の一つである.有機系耐候剤(いわゆる紫外線吸収剤)としては,ベン

ゾフェノン系,トリアゾール系,イミダゾール系,オキサゾール系,ヒンダードアミン系(HALS)などの各種化合物が提案されている149)150).」(115頁、図2.94、2.95の下3行?116頁2行)

参考資料:
「1.実験の目的
特開2007-182071号公報の実施例1に記載の合成樹脂(共重合ポリアミド樹脂)が、特許第5885485号の請求項1に記載の(A)ポリアミドであるか否かを確認する。
・・・
3.実験担当者
下記の者が実験を担当した。
東レ株式会社 樹脂技術部 服部恵一、滝口育美

4.実験実施年月日
平成26年11月1日?12月16日

5.実験方法
特開2007-182071号公報の明細書(以下、「同明細書」ということがある)の記載に従い、同明細書の実施例1に記載の共重合ポリアミド樹脂を同明細書の参考例1に記載の方法で合成した。また、得られた共重合ポリアミド樹脂の粘度数を同明細書の参考例2に記載の方法で測定し、また、溶融粘度をフローテスターで測定した。
5.1 共重合ポリアミド樹脂(ブロックポリマー)の合成
同明細書の【0082】(実施例1)に記載のとおり、アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからナイロン66成分として77質量%、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとから6Iナイロン成分として17質量%、ナイロン6成分として6質量%から成るブロックポリマーを以下に記す参考例1の方法で合成した。
参考例1:同明細書の【0079】(〔参考例1 共重合ポリアミド(ブロックポリマー)の製造方法〕)に記載のとおり、それぞれの共重合ポリアミドの原料となるジアミンと酸の等モル塩などの原料をそれぞれの質量比で反応器に投入し、投入した樹脂分全量と同量の純水を加え、重合缶内をN_(2)で置換した後、攪拌しながら加熱を開始し、缶内圧力を最大20kg/cm^(2)に調整しながら最終到達温度を270℃とし反応させた。水浴中に吐出したポリマーをストランドカッターでペレタイズした。得られたペレットは95℃熱水中で20時間処理し、未反応モノマーや低重合物を抽出除去した。抽出後のペレットは80℃で50時間以上乾燥した。

5.2 評価
(1)5.1で得られた共重合ポリアミド樹脂を同明細書の参考例2記載の方法で粘度数を測定した。結果を表1に示す。
〔参考例2 粘度数の測定方法〕
ISO307標準方法に従って96%硫酸での粘度数測定を行った。

(2)また、5.1で得られた共重合ポリアミド樹脂をフローテスター「CFT-500(日本国京都府、株式会社島津製作所製)にて、温度270℃、荷重98.1N(10kgf)の条件下にて、溶融粘度を測定した。結果を表1に示す。

(3)5.1で得られた共重合ポリアミド樹脂の粘度数および溶融粘度は、同明細書の実施例1に記載の合成樹脂(共重合ポリアミド樹脂)の粘度数および溶融粘度(【0082】)に同じであった。
したがって、5.1で得られた共重合ポリアミド樹脂は、同明細書の実施例1に記載の合成樹脂(共重合ポリアミド樹脂)と同一の樹脂であった。

5.3 全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)の定量、及びパラメータ(Y)の算出
5.1で得られた共重合ポリアミド樹脂(同明細書の実施例1に記載の合成樹脂(共重合ポリアミド樹脂))が、特許第5885485号の請求項1に記載の(A)ポリアミドであるか否かを確認するために、特許第5885485号公報の記載に従い、全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)の定量、及びパラメータ(Y)の算出を行った。
すなわち、特許第5885485号公報の【0082】の記載に従い、以下のとおりに測定・算出した。
5.1で得られた共重合ポリアミドを用いて、^(1)H-NMRにより求めた。
溶媒として重硫酸を用いた。
装置は日本電子製、「ECA400型」を用いた。
繰返時間は12秒、積算回数は64回で測定した。
各成分の特性シグナルの積分値より、イソフタル酸成分量、イソフタル酸末端基量、その他のカルボキシ末端基(例えばアジピン酸末端基)量を算出し、これらの値から、全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、及び下記式(1)のパラメータ(Y)をさらに算出した。結果を表2に示す。
(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1)
(前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。
(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2))


6.まとめ
特許5885485号公報に記載の方法により、5.1で得られた共重合ポリアミド樹脂(特開2007-182071号公報の実施例1に記載の共重合ポリアミド樹脂)の(x)、(Y)を算出した結果、(x)は0.18、(Y)は-0.2となり、特許5885485号公報の請求項1に記載の(A)ポリアミドに該当するものであることがわかった。」(2?5頁)

(イ)刊行物1に記載された発明
上記摘示1a?1e、特に1eの実施例1の記載からみて、刊行物1には、
「アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからナイロン66成分として77質量%、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとから6Iナイロン成分として17質量%、ナイロン6成分として6質量%から成るブロックポリマーである合成樹脂に、二軸押出機「TEM-35B(東芝機械株式会社製)」にて、ガラス繊維「RES03-TP91(日本板硝子株式会社製)」をサイドフィーダーから添加量が50質量%となるように供給しながら、シリンダー温度280℃で溶融混練してペレット化したポリアミド系樹脂組成物」の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されている。

イ 本件発明1について
刊行物1発明に係る合成樹脂は、ナイロン66成分、6Iナイロン成分、ナイロン6成分からなるブロックポリマーであるところ、摘示1cからみて、該樹脂は、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の当モル塩、ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸の当モル塩、およびεカプロラクタムを重合缶内で加熱、重合することで得られるものであるから、アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミドであるといえ、本件発明1とは、アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を構成成分とするポリアミドである点で一致する。また、刊行物1発明のポリアミド系樹脂組成物は、本件発明1のポリアミド樹脂組成物に相当する。
したがって、本件発明1と刊行物1発明との一致点・相違点は次のとおりである。

一致点
「(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
を構成単位とするポリアミドを含有するポリアミド樹脂組成物。」である点

相違点1:ポリアミドについて、本件発明1が、(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位とからなるとしているのに対し、刊行物1発明では、アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからナイロン66成分として77質量%、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとから6Iナイロン成分として17質量%、ナイロン6成分として6質量%から成る、すなわち、アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位以外にナイロン6成分を構成単位とする点

相違点2:本件発明1が、ポリアミドについて「当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、かつ、下記式(1)で示される(Y)が、-0.3≦(Y)≦0.8である」及び「(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1)(前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2))」と特定しているのに対し、引用発明ではそのような特定がない点

相違点3:本件発明1がポリアミド樹脂組成物が「(B):耐熱安定剤及び耐光安定剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の(B)安定剤と」を含有することを特定しているのに対し、引用発明のポリアミド系樹脂組成物は安定剤を含有しない点

上記相違点について、相違点1はポリアミドの組成に関するものであるところ、相違点2もポリアミドの組成に関連するものであるから、相違点1及び相違点2を併せて検討する。

<相違点1、2について>
上記参考資料である実験報告書に記載の実験方法は、刊行物1に記載の参考例1、実施例1に記載された方法と同様の方法であり、その粘度数、溶融粘度の評価方法は刊行物1に記載の方法であって、それらの値が刊行物1に記載のものと同一であるから、実験報告書に記載の実験方法により得られた共重合ポリアミド樹脂は刊行物1発明の合成樹脂と同じものであるといえる。そして、同実験報告書には、当該共重合ポリアミド樹脂について、本件発明1で特定される(x)、(Y)を本件特許明細書に記載の方法により算出した値が0.18、-0.2であることが記載されており、それらの値は本件発明1で特定される範囲内の値である。
しかし、上記(x)、(Y)の値は、ポリアミドの構成成分によって変動することはその定義から明らかである。
したがって、刊行物1には、ポリアミド樹脂の具体的な例として、刊行物1発明のポリアミドに相当するポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン66/6I/6)と共に、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)が例示されている(摘示1c)から、当業者が、刊行物1発明のポリアミドに代えて、ナイロン66/6Iを採用することに格別の創意を要したとはいえないといえたとしても、その際に上記相違点2に係る(x)、(Y)の値がどのような値になるかは不明であり、それらが本件発明1の範囲内にあるとはいえない。
また、刊行物1?3のいずれにも、ナイロン66/6Iであるポリアミドについて、相違点2に係る「当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、かつ、下記式(1)で示される(Y)が、-0.3≦(Y)≦0.8である」及び「(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1)(前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2))」とすることは記載も示唆もない。
してみると、相違点1、2に係る技術的事項を併せて採用することは当業者が容易になし得た事項であるということはできない。

したがって、相違点3について検討するまでもなく、本件発明1は刊行物1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

ウ 本件発明3?6について
本件発明3?5は本件発明1を引用し、さらに特定するものであり、本件発明6は本件発明1乃至5のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物を含む成形品であるところ(なお、本件発明2は本件発明1を引用し、さらに特定するものである)、上記イで述べたとおり、本件発明1が刊行物1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたということはできないのであるから、同様の理由により本件発明3?6も本件発明1が刊行物1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

エ まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1、3?6は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないということはできず、よって、請求項1、3?6に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである、ということはできない。

(2)取消理由2(特許法第36条第4項第1号)について
ア 特許権者が提出した参考文献及びその記載事項
平成29年5月26日付けで特許権者が提出した意見書に添付された参考文献1?7は次のとおりである。
参考文献1:特開2010-150445号公報
参考文献2:特開2011-111576号公報
参考文献3:特開2006-124669号公報
参考文献4:特開2002-194210号公報
参考文献5:特開平11-92657号公報
参考文献6:特開平3-76755号公報
参考文献7:特開2011-219635号公報

また、各文献の記載事項は次のとおりである。

参考文献1:
「【0041】
あらかじめ塩調製する場合には、ペンタメチレンジアミンとテレフタル酸の塩、炭素数7以上のジアミンとテレフタル酸の塩の混合比を変化させることによって、塩調製しない場合には、各原料の仕込み比を変化させることによってポリアミド樹脂の共重合組成比を変化させることができる。」

参考文献2:
「【0042】
・・・原料モノマーの仕込み比率を調整することにより、合成される共重合ポリアミド中の各構成単位の割合を制御することができる。」

参考文献3:
「【0035】
次に、本発明で用いられるポリアミド系樹脂(B)について説明する。
・・・本発明では、カルボキシル基やアミノ基で末端が調整されたポリアミド系樹脂が好適に用いられる。
【0036】
かかる末端が調整されたポリアミド系樹脂(B)としては、カプロアミドを主たる構成単位とし、末端調整剤を使用して末端カルボキシル基含有量[X]および末端アミノ基含有量[Y]が、{(100×[Y])/([X]+[Y])}≧5(ただし、[X],[Y]の単位はμeq/g・ポリマー)を満足するように調整したポリアミド系樹脂(B)が用いられる。
【0037】
上記における末端調節剤としては、炭素数2?23のカルボン酸、炭素数2?20のジアミンが用いられる。ここで炭素数2?23のモノカルボン酸としては、・・・
【0038】
・・・
【0039】
また、上記のモノカルボン酸のほかに、脂肪族ジカルボン酸(・・・アジピン酸・・・などのジカルボン酸類を使用したり併用したりすることもできる。」

参考文献4:
「【0022】前記カルボキシル末端基とアミノ末端基の比率や、アミノ末端基濃度、カルボキシル末端基濃度は、重合時に添加する末端調整剤(例えば、モノアミン、ジアミン、一塩基酸、二塩基酸など)の量を調節したり、ジアミンとジカルボン酸との重縮合によりポリアミドを製造する場合には、該ジアミンとジカルボン酸のモル比を変化させることによりコントロールできる。例えば、末端調整剤としてモノアミンを使用するとカルボキシル末端基が減少し、ジアミンを用いるとカルボキシル末端基が減少するとともにアミノ末端基が増加する。また、末端調整剤として一塩基酸を用いるとアミノ末端基が減少し、二塩基酸を用いるとアミノ末端基が減少するとともにカルボキシル末端基が増大する。」

参考文献5:
「【0009】ポリアミド樹脂の末端調整は、慣用の方法、例えば、末端調整剤の存在下でモノマーを重合させたり、重合して得られたポリアミド樹脂と末端調整剤とを加熱して反応させることにより行うことができる。ポリアミド樹脂の末端カルボキシル基及びアミノ基の濃度は、末端調整剤の種類及び使用量を選択することにより調整できる。なお、ポリアミド樹脂の末端調整は、分子量分布の調整と併せて行うことができる点で、モノマーの重合時に行うのが好ましい。前記末端調整剤として、例えば、カルボン酸、アミン、ラクトンなどを使用できる。ポリアミド樹脂の末端アミノ基は、例えばカルボン酸又はラクトンにより封止でき、末端カルボキシル基は、例えばアミンにより封止できる。
【0010】上記カルボン酸としては、・・・アジピン酸・・・などの飽和脂肪族ジカルボン酸;・・・などが含まれる。」

参考文献6:
「また、ポリアミド樹脂はその末端基がモノカルボン酸化合物および/またはジカルボン酸化合物あるいはモノアミン化合物および/またはジアミン化合物の1種以上を任意の段階でポリアミドに添加することにより末端基濃度が調節されていてもよい。」(3頁右下欄9?15行)



」(8頁第1表)

参考文献7:
「【0019】
ポリアミド樹脂の末端調整は、慣用の方法、例えば、末端調整剤の存在下で、溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法で重合、又は共重合する事により製造される。あるいは、重合後、末端調整剤の存在下に、溶融混練することにより製造される。あるいは、重合後、末端調整剤の存在下に、溶融混練することにより製造される。このように、末端調整剤は、重合時の任意の段階、あるいは、重合後、溶融混練時の任意の段階において添加できるが、金属粉体複合成形品成形時のポリアミド樹脂の流動性、成形性を考慮した場合、重合時の段階で添加することが好ましい。
【0020】
ポリアミド樹脂の末端調整に際しては、モノアミン、ジアミン、モノカルボン酸、ジカルボン酸のうちの1種あるいは2種以上を適宜組合せて添加することができる。例えば、・・・アジピン酸・・・が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これら末端調節剤の使用量は末端調節剤の反応性や重合条件により異なるが、最終的に得ようとするポリアミド樹脂の相対粘度と末端カルボキシル基濃度、末端アミノ基濃度が前記の範囲になるように適宜決められる。」

イ 判断
(ア)理由2の(1)について
本件発明1は、「当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、
かつ、下記式(1)で示される(Y)が、-0.3≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド」及び
「(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1)
(前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。
(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2))」と特定するものである。
この(x)及び(Y)の制御について、発明の詳細な説明には、
「【0038】
((A)ポリアミドの製造方法)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物を構成する(A)ポリアミドの製造方法としては、上述したようにその他の共重合成分を有するポリアミド共重合体である場合を含めて、前記全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が0.05≦(x)≦0.5であり、上記式(1)におけるブロック化比率の指標である(Y)の範囲が-0.3≦(Y)≦0.8、好ましくは0.05≦(Y)≦0.8となるようなポリアミド(又はポリアミド共重合体)が得られればよい。
ポリアミドの製造方法としては、例えば、アジピン酸、イソフタル酸、ヘキサメチレンジアミン、及び必要に応じてその他の成分の混合物の水溶液、又は水の懸濁液を加熱し、溶融状態を維持したまま重合させる方法(熱溶融重合法);熱溶融重合法で得られたポリアミドを融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(熱溶融重合・固相重合法);アジピン酸、イソフタル酸、ヘキサメチレンジアミン、及び必要に応じてその他の成分の混合物の水溶液、又は水の懸濁液を加熱し、析出したプレポリマーをさらにニーダー等の押出機で再び溶融させて重合度を上昇させる方法(プレポリマー・押出重合法);アジピン酸、イソフタル酸、ヘキサメチレンジアミン、及び必要に応じてその他の成分の混合物、固体塩又は重縮合物を、固体状態を維持したまま重合(固相重合法)させる方法等が挙げられる。
全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)を上記数値範囲内に制御するための方法としては、原料の仕込み量の調整、重合条件の調整が有効である。
上記式(1)におけるブロック化比率の指標となる(Y)を上記数値範囲内に制御するためには、イソフタル酸成分のブロック化を制御することが必要である。具体的には、重合系内で、溶融状態を維持しながら、圧力を適宜調整し、重合温度を好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは170℃以上としながら、均一混合下において重縮合反応を進め、最終重合内部温度が好ましくは250℃以上、より好ましくは260℃以上になるような条件下で重合させる熱溶融重合法を用いることにより制御することができる。
【0039】
重合形態としては、特に限定されず、バッチ式、連続式のいずれでもよい。
また、重合装置も特に限定されず、公知の装置、例えば、オートクレーブ型の反応器、タンブラー型反応器、ニーダー等の押出機型反応器等を用いることができる。
【0040】
上述したように、(Y)が-0.3≦(Y)≦0.8の範囲となるようにするには、熱溶融重合法によりポリアミドを作製することが好ましく、バッチ式の熱溶融重合法によりポリアミドを作製することがより好ましい。
バッチ式の熱溶融重合法の一例について以下に説明する。
重合温度条件については特に限定されないが、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは170℃以上である。
例えば、アジピン酸、イソフタル酸、及びヘキサメチレンジアミンとの混合物、固体塩又は水溶液を110?200℃の温度下で攪拌し、約60?90%まで水蒸気を徐々に抜いて加熱濃縮する。
その後、内部圧力を約1.5?5.0MPa(ゲージ圧)になるまで加熱を続ける。
その後、水及び/又はガス成分を除きながら、圧力を約1.5?5.0MPa(ゲージ圧)に保ち、内部温度が好ましくは240℃以上、より好ましくは245℃以上に達した時点で、水及び/又はガス成分を除きながら圧力を徐々に抜き、最終内部温度が好ましくは250℃以上、より好ましくは260℃以上になるように、常圧で又は減圧して重縮合を行う。
さらには、アジピン酸、イソフタル酸、及びヘキサメチレンジアミンとの混合物、固体塩又は重縮合物を融点以下の温度で熱重縮合させる固相重合法等も用いることができる。これらの方法は必要に応じて組み合わせてもよい。」との記載がある。
すなわち、発明の詳細な説明には、ポリアミドの製造方法として、熱溶融重合法、熱溶融重合法・固相重合法、押出重合法、固相重合法が記載され、(x)を上記数値範囲内に制御するための方法として、原料の仕込み量の調整、重合条件の調整が有効であることが記載され、(Y)を上記数値範囲内に制御するためには、イソフタル酸成分のブロック化を制御することが必要であり、具体的には、重合系内で、溶融状態を維持しながら、圧力を適宜調整し、重合温度を好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは170℃以上としながら、均一混合下において重縮合反応を進め、最終重合内部温度が好ましくは250℃以上、より好ましくは260℃以上になるような条件下で重合させる熱溶融重合法を用いることにより制御することができ、さらに、バッチ式の熱溶融重合法の一例について記載されている。
さらに、発明の詳細な説明には、実施例1?13、15、16として、(x)及び(Y)が上記範囲内にあるポリアミド樹脂組成物の例(なお、実施例14のポリアミドはその構成成分が本件発明1?6とは異なる。)、比較例1?9として、(x)及び(Y)が上記範囲内にないポリアミド樹脂組成物の例、比較例10として、(x)及び(Y)が上記範囲内にあるが、耐熱安定剤、耐光安定剤を配合していないポリアミド樹脂組成物の例が記載されている。
ここで、(x)の制御については、(x)がポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率であり、本件発明1のポリアミドは酸としてアジピン酸及びイソフタル酸を、アミンとしてヘキサメチレンジアミンを用いること、原料の仕込み比を変化させることによってポリアミド樹脂の共重合組成比を変化させることができることは周知であること(参考文献1、2)から、原料として用いる全カルボン酸中のイソフタル酸の比率に関連することは当業者が容易に理解できる事項である。実際に実施例1?13、15、16においては、(x)の値と原料として用いる全カルボン酸中のイソフタル酸の比率とは完全ではないものの相当程度に一致する。してみれば、重合条件の調整が具体的にどのようなものであるかは必ずしも明らかではないものの、少なくとも原料として用いる全カルボン酸中のイソフタル酸の比率を調整することで(x)の値を制御できることは当業者が理解することができるといえる。
また、(Y)の制御について、(Y)は(EG)と(x)の関数であり、(EG)はイソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量であるところ、実施例1?13、15、16において、(EG)の値は、0.45?0.68の間で変化している。そして、ポリアミドの末端基調整をカルボン酸、アミンにより行うことが周知であること(参考文献3?7)、過剰のアジピン酸の添加を行う実施例1?9及び12、13、15、16によるポリアミドと該添加を行わない実施例10及び11によるポリアミドとの比較において、前者がより低い(EG)を有することを考慮すれば、イソフタル酸以外の酸であり本件発明1の必須のカルボン酸であるアジピン酸を過剰に添加することによって(EG)の値を制御できることは当業者が理解できるものと解される。
そして、上述のとおり、(Y)は(EG)と(x)の関数であって、(x)及び(EG)の制御方法を当業者が理解できるのであるから、発明の詳細な説明の段落0038?0040の記載、発明の詳細な説明に記載の実施例、比較例におけるポリアミド製造時の設定条件を参照しつつ、(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、かつ、(Y)が、-0.3≦(Y)≦0.8である範囲について当業者が実施することができるものと認められる。
したがって、発明の詳細な説明は、本件発明1について、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではないとはいえない。
本件発明2?6についても同様である。

(イ)理由2の(2)について
この理由は、本件特許明細書の段落【0112】に記載の表1における(B)安定剤とその配合割合の欄の「種類」と「質量部」が逆に記載されている不備があるというものであるところ、上記本件訂正の訂正事項3によって、上記「種類」と「質量部」が正しい位置に訂正されたから、当該不備はない。
したがって、発明の詳細な説明は、本件発明1?6について、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではないとはいえない。

ウ まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1?6に係る特許は、上記理由2の(1)及び(2)の点で、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさないということはできず、よって、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである、ということはできない。

(3)理由3(特許法第36条第6項第1号)について
上記取消理由で特許法第36条第6項第1号に適合しないとされたのは、上記本件訂正前の(A)のポリアミドが、(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミドについての発明であり、当該発明は本件訂正により削除されているから、本件訂正後に当該理由は存在しない。したがって、上記取消理由に記載した理由3について、本件発明1?6に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合しないということはできず、よって、本件特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである、ということはできない。

2 取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由について
(1)特許法第29条第1項第3号について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、本件訂正前の請求項1、5及び6に係る発明(それぞれ、本件発明1、5、6に対応する。)について、甲第2号証を援用して、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当するというものであると主張する(なお、甲第1号証は、上記刊行物1であり、甲第2号証は上記参考資料である。)。
しかし、上記1(1)イで述べたとおり、本件発明1は刊行物1に記載された発明とは相違点を有するものであり、相違点の全てが実質的な相違点でないとはいえないから、刊行物1に記載された発明であるとはいえず、本件発明5は本件発明1を技術的にさらに特定するものであり、本件発明6は本件発明1の組成物を含む成形品であるから、本件発明1と同様に、刊行物1に記載された発明であるとはいえない。
したがって、上記主張を採用することはできない。

(2)特許法第29条第2項について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、本件訂正前の請求項2に係る発明(本件発明2に対応する。)について、甲第2号証を援用して、甲第1、3及び4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないという主張をする(なお、甲第1、3及び4号証は、順に、上記刊行物1、2及び3であり、甲第2号証は上記参考資料である。)。
そして、本件発明2は、本件発明1を技術的にさらに特定するものであるところ、上記1(1)イで述べたとおり、本件発明1が刊行物1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、同様に、本件発明2も刊行物1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、上記主張を採用することはできない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1?6に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件発明1?6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ポリアミド樹脂組成物及び成形品
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂組成物及び成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、成形加工性、機械物性、耐薬品性に優れていることから、従来から、衣料用、産業資材用、自動車用、電気・電子用又は工業用等の様々な部品材料として広く用いられている。
【0003】
近年、ポリアミド樹脂を用いた成形体は、生産性を向上させるために、成形温度を高くし、金型温度を下げて行うハイサイクル成形条件で成形する場合がある。
また、ポリアミド樹脂は自動車分野で広く採用されているが、このような用途では、使用環境が熱的、力学的に厳しく、特にドアミラー等に代表される自動車外装部品では衝撃特性と、表面外観性との両方に優れた特性を要求される場合が多く、さらには、日光等に曝露させた場合色調変化等の物性変化が少ないポリアミド樹脂材料が要求されているのが現状である。
【0004】
一方、高温条件下で成形を行うと、ポリアミド樹脂の分解が発生したり、流動性変化が生じたりすることにより安定して成形体が得られない場合があるという問題がある。
よって、特に、上述したようなハイサイクル成形時の成形品表面外観の安定性、さらには耐衝撃特性を向上させた、過酷な成形条件下においても物性変化が少ないポリアミド樹脂が要求されている。
【0005】
このような要求に応えるため、成形体の表面外観及び機械特性を向上させることができる材料として、イソフタル酸成分を導入したポリアミド66/6Iからなるポリアミドが開示されている(例えば、特許文献1乃至4参照。)。
また、耐衝撃性を改良することができる材料として、テレフタル酸成分と、イソフタル酸成分とを導入したポリアミド6T/6Iからなるポリアミド開示されている(例えば、特許文献5参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6-32976号公報
【特許文献2】特開平6-32980号公報
【特許文献3】特開平7-118522号公報
【特許文献4】特開2000-219808号公報
【特許文献5】特開2000-191771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1乃至4に開示された技術で製造されたポリアミドは、ポリアミド66/6I中の6I鎖単位が、ポリアミド鎖中でブロックに共重合されている比率が高いため、一般的な成形条件下での成形品の表面外観性は改良されるものの、ハイサイクル成形条件のような過酷な成形条件下では、成形表面の外観低下、及び安定性が低下してしまう場合がある。
また、ポリアミドに所定の材料を混合したポリアミド樹脂組成物の屋外での用途も近年増加しているが、従来のポリアミドを用いたポリアミド樹脂組成物では、日光等に曝露させた場合に色調変化等の物性変化が生じる場合がある。
【0008】
また、特許文献1乃至4に開示された技術で製造されたポリアミドは、弾性率等の機械特性は改良されるものの、前記の通り、ポリアミド66/6I中の6I鎖単位が、ポリアミド鎖中でブロックに共重合されている比率が高いため、そのポリマー構造起因により、すなわちポリアミド鎖中でブロックに共重合されている6I鎖単位の比率が高い構造を有していることにより、耐衝撃特性が低下してしまう問題がある。
【0009】
さらに、前記特許文献5に開示された製造技術で製造されたポリアミドは、耐衝撃特性は改良されるものの、成形表面外観性が低下する問題を有している。
【0010】
上述したように、従来技術で得られるポリアミド66/6Iでは、ポリアミド66/6I中の6I鎖単位が理想的なランダム共重合体に比べて、ブロックに共重合されている比率が高いため、機械特性のバランスを保持しつつ、成形品表面外観の安定性を維持し、耐衝撃特性を向上させることが困難であり、成形品表面外観の安定性、耐衝撃特性に優れ、かつ過酷な成形条件下で成形した場合においても物性変化が少ないポリアミドは未だ知られていないのが実情である。
また、ポリアミドの特徴である、機械特性のバランスを保持しつつ、成形品表面外観の安定性を維持することは困難であり、このようなポリアミドが要望されている。
【0011】
そこで本発明においては、上記事情に鑑み、過酷な成形条件下において成形した場合においても、成形品の表面外観の安定性が良好で、耐衝撃特性に優れ、かつ、日光等に曝露させた場合でも色調変化等の物性変化が少ない耐候性に優れるポリアミド樹脂組成物と、それを含む成形品とを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記ポリアミド66/6I特有の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位とを含むポリアミドにおいて、ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)の範囲を特定し、かつ、(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量としたときの、ポリアミド66/6I中の6I鎖単位がブロック化した指標である(Y)、{(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)]}の値の数値範囲を特定したポリアミド(A)を含有するポリアミド樹脂組成物が、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0013】
〔1〕
(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
からなるポリアミドであって、
当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、
かつ、下記式(1)で示される(Y)が、-0.3≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミドと、
(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1)
(前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。
(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2))
(B):耐熱安定剤及び耐光安定剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の(B)安定剤と、
を、含有するポリアミド樹脂組成物。
〔2〕
前記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である、前記〔1〕に記載のポリアミド樹脂組成物。
〔3〕
前記(B)安定剤が、フェノール系安定剤、ホスファイト系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤、トリアジン系安定剤、イオウ系安定剤、及び無機リン系安定剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、前記〔1〕又は〔2〕に記載のポリアミド樹脂組成物。
〔4〕
前記(B)安定剤の含有量が、前記ポリアミド100質量部に対して0.01?5質量部である、前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載のポリアミド樹脂組成物。
〔5〕
前記(A)ポリアミド30?95質量部に対して、(C)無機充填材5?70質量部を、さらに含有する、前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載のポリアミド樹脂組成物。
〔6〕
前記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一に記載のポリアミド樹脂組成物を含む成形品。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、過酷な成形条件下において成形した場合においても、表面外観が安定しており、かつ耐衝撃特性にも優れ、さらには、日光等に曝露させた場合でも色調変化等の物性変化が少ないポリアミ樹脂組成物及び成形品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ブロック化比率(Y)とポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)との関係を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について詳細に説明する。
なお、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0017】
〔ポリアミド樹脂組成物〕
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、
(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
を、含むポリアミドであって、
当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、
かつ、下記式(1)で示される(Y)が、-0.3≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミドと、
(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1)
(前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。
(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2))
(B):耐熱安定剤及び耐光安定剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の(B)安定剤と、
を、含有するポリアミド樹脂組成物。
以下、本実施形態のポリアミド樹脂組成物の構成成分について説明する。
【0018】
((A)ポリアミド)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物を構成するポリアミド(以下、(A)ポリアミド、ポリアミド(A)、又は単にポリアミドと記載する場合もある。)は、
(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
を、含む。
当該(A)ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)は、0.05≦(x)≦0.5であり、好ましくは0.05≦(x)≦0.4であり、さらに好ましくは0.05≦(x)≦0.3である。
ここで、(A)ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)とは、ポリアミド中に含まれる(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位の比率を示している。
前記イソフタル酸成分比率(x)が0.05以上であると、ポリアミドの融点、固化温度が抑制され、本実施形態のポリアミド樹脂組成物の成形品の表面外観性が安定的なものとなる。また、イソフタル酸成分比率(x)が0.5以下であるとポリアミドの結晶性の低下を抑制でき、本実施形態のポリアミド樹脂組成物の成形品において十分な機械的強度が得られる。
【0019】
前記(A)ポリアミドは、下記式(1)で示される(Y)が、-0.3≦(Y)≦0.8である。
(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1)
式(1)中、(x)は、上述したように、(A)ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率であり、ポリアミド中における(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位の比率を示す。
(EG)は、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。
(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2)
【0020】
前記式(1)において、(Y)は、全カルボキシル末端基において、イソフタル酸末端基がどれだけ選択的に存在しているかを表す指標である(以下、「ブロック化比率(Y)」とも表記する。)。
【0021】
(A)ポリアミド中における、全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)と、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)には相関性があり、すなわちブロック化比率(Y)は、ポリアミド66/6I中の6I鎖単位が理論値(x=EG)に対して、どれだけブロック化に移行、すなわちどれだけポリアミド中の6I鎖単位の比率が高くなっており、イソフタル酸末端基比率が高くなっているかを示す指標でもある。
【0022】
従って、前記式(1)の分母[1-(x)]は、(A)ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸末端基以外の末端基比率であり、前記式(1)の分子[(EG)-(x)]は、理論上のイソフタル酸末端基比率(=イソフタル酸成分比率)との差分イソフタル酸末端基比率、すなわち実際のイソフタル酸末端基比率と理論上のイソフタル酸末端基比率との差分となるため、前記式(1)により、ブロック化比率の指標である(Y)を求めることができる。
後述の実施例及び比較例に基づくポリアミドの、前記ブロック化比率(Y)とポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)との関係を表した図を図1に示す。
図1の説明を下記に示す。
横軸:全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)
縦軸:全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)
実線の四角形で囲まれた領域:二つの四角形全体により囲まれた領域が0.05≦(x)≦0.5であり、かつ-0.3≦(Y)≦0.8である領域。図1中上側の四角形のみに囲まれた領域が0.05≦(x)≦0.5であり、かつ0.05≦(Y)≦0.8である領域。
一点鎖線:(EG)=(x)
破線量矢印:[(EG)-(x)]と[1-(x)]の関係を示す。
◇:後述する実施例に用いたポリアミド
■:後述する比較例に用いたポリアミド
【0023】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物を構成する(A)ポリアミドにおいて、前記ブロック化比率(Y)は-0.3≦(Y)≦0.8であり、好ましくは0.05≦(Y)≦0.8であり、より好ましくは0.05≦(Y)≦0.7であり、さらに好ましくは0.1≦(Y)≦0.6の範囲である。
イソフタル酸成分比率(x)を上記範囲内とし、かつ前記(Y)の範囲を-0.3≦(Y)≦0.8とすることにより、本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、過酷な成形条件下における成形品の表面外観の安定性、耐衝撃特性が優れ、耐候性に優れたものとなる。
ポリアミド中のイソフタル酸成分比率(x)、イソフタル酸末端基量、及び全カルボキシル末端基量の定量方法は、特に制限されないが、核磁気共鳴法(NMR)により求めることができる。具体的には^(1)H-NMRにより求めることができる。
【0024】
<アジピン酸、イソフタル酸以外の共重合成分>
本実施形態のポリアミド樹脂組成物を構成する(A)ポリアミドには、本実施形態の目的を損なわない範囲で、アジピン酸、イソフタル酸以外の、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、及びヘキサメチレンジアミン以外の主鎖から分岐した置換基を持つジアミン、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン、重縮合可能なアミノ酸、ラクタム等を共重合成分として用いることができる。
【0025】
前記脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、2,2-ジメチルコハク酸、2,3-ジメチルグルタル酸、2,2-ジエチルコハク酸、2,3-ジエチルグルタル酸、グルタル酸、2,2-ジメチルグルタル酸、2-メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸、及びジグリコール酸等の炭素数3?20の直鎖又は分岐状飽和脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0026】
前記脂環族ジカルボン酸としては、例えば、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、及び1,3-シクロペンタンジカルボン酸等の、脂環構造の炭素数が3?10である、好ましくは炭素数が5?10である、脂環族ジカルボン酸等が挙げられる。
脂環族ジカルボン酸は、無置換でも置換基を有していてもよい。
【0027】
前記芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2-クロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、5-メチルイソフタル酸、及び5-ナトリウムスルホイソフタル酸等の、無置換又は種々の置換基で置換された炭素数8?20の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
種々の置換基としては、例えば、炭素数1?6のアルキル基、炭素数6?12のアリール基、炭素数7?20のアリールアルキル基、クロロ基及びブロモ基等のハロゲン基、炭素数3?10のアルキルシリル基、並びにスルホン酸基及びナトリウム塩等のその塩である基等が挙げられる。
【0028】
前記ヘキサメチレンジアミン以外の主鎖から分岐した置換基を持つジアミンとしては、例えば、2-メチルペンタメチレンジアミン(2-メチル-1,5-ジアミノペンタンとも記される。)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2-メチルオクタメチレンジアミン、及び2,4-ジメチルオクタメチレンジアミン等の炭素数3?20の分岐状飽和脂肪族ジアミン等が挙げられる。
【0029】
前記脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、及びトリデカメチレンジアミン等の炭素数2?20の直鎖飽和脂肪族ジアミン等が挙げられる。
【0030】
前記芳香族ジアミンとしては、例えば、メタキシリレンジアミン等が挙げられる。
【0031】
前記重縮合可能なアミノ酸としては、例えば、6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸等が挙げられる。
【0032】
前記ラクタムとしては、例えば、ブチルラクタム、ピバロラクタム、カプロラクタム、カプリルラクタム、エナントラクタム、ウンデカノラクタム、ドデカノラクタム等が挙げられる。
【0033】
上述したジカルボン酸成分、ジアミン成分、アミノ酸成分、及びラクタム成分は、それぞれ1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
【0034】
<末端封止剤>
本実施形態のポリアミド樹脂組成物を構成するポリアミド及びその他の共重合成分を重合させたポリアミド共重合体の原料として、分子量調節や耐熱水性向上のために、末端封止剤を、さらに添加することができる。
例えば、本実施形態のポリアミド、又は上述したポリアミド共重合体を重合する際に、公知の末端封止剤を更に添加することにより、重合量を制御することができる。
【0035】
前記末端封止剤としては、特に限定されないが、例えば、モノカルボン酸、モノアミン、無水フタル酸等の酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、及びモノアルコール類等が挙げられる。
それらの中でもモノカルボン酸及びモノアミンが好ましい。
これらの末端封止剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
前記末端封止剤として用いられるモノカルボン酸としては、アミノ基との反応性を有するモノカルボン酸であれば特に限定されないが、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、及びイソブチル酸等の脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、α-ナフタレンカルボン酸、β-ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、及びフェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸;等が挙げられる。
これらのモノカルボン酸は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
前記末端封止剤として用いられるモノアミンとしては、カルボキシル基との反応性を有するモノアミンであれば特に限定されないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン及びジブチルアミン等の脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン及びジシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン及びナフチルアミン等の芳香族モノアミン;等が挙げられる。
これらのモノアミンは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
((A)ポリアミドの製造方法)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物を構成する(A)ポリアミドの製造方法としては、上述したようにその他の共重合成分を有するポリアミド共重合体である場合を含めて、前記全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が0.05≦(x)≦0.5であり、上記式(1)におけるブロック化比率の指標である(Y)の範囲が-0.3≦(Y)≦0.8、好ましくは0.05≦(Y)≦0.8となるようなポリアミド(又はポリアミド共重合体)が得られればよい。
ポリアミドの製造方法としては、例えば、アジピン酸、イソフタル酸、ヘキサメチレンジアミン、及び必要に応じてその他の成分の混合物の水溶液、又は水の懸濁液を加熱し、溶融状態を維持したまま重合させる方法(熱溶融重合法);熱溶融重合法で得られたポリアミドを融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(熱溶融重合・固相重合法);アジピン酸、イソフタル酸、ヘキサメチレンジアミン、及び必要に応じてその他の成分の混合物の水溶液、又は水の懸濁液を加熱し、析出したプレポリマーをさらにニーダー等の押出機で再び溶融させて重合度を上昇させる方法(プレポリマー・押出重合法);アジピン酸、イソフタル酸、ヘキサメチレンジアミン、及び必要に応じてその他の成分の混合物、固体塩又は重縮合物を、固体状態を維持したまま重合(固相重合法)させる方法等が挙げられる。
全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)を上記数値範囲内に制御するための方法としては、原料の仕込み量の調整、重合条件の調整が有効である。
上記式(1)におけるブロック化比率の指標となる(Y)を上記数値範囲内に制御するためには、イソフタル酸成分のブロック化を制御することが必要である。具体的には、重合系内で、溶融状態を維持しながら、圧力を適宜調整し、重合温度を好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは170℃以上としながら、均一混合下において重縮合反応を進め、最終重合内部温度が好ましくは250℃以上、より好ましくは260℃以上になるような条件下で重合させる熱溶融重合法を用いることにより制御することができる。
【0039】
重合形態としては、特に限定されず、バッチ式、連続式のいずれでもよい。
また、重合装置も特に限定されず、公知の装置、例えば、オートクレーブ型の反応器、タンブラー型反応器、ニーダー等の押出機型反応器等を用いることができる。
【0040】
上述したように、(Y)が-0.3≦(Y)≦0.8の範囲となるようにするには、熱溶融重合法によりポリアミドを作製することが好ましく、バッチ式の熱溶融重合法によりポリアミドを作製することがより好ましい。
バッチ式の熱溶融重合法の一例について以下に説明する。
重合温度条件については特に限定されないが、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは170℃以上である。
例えば、アジピン酸、イソフタル酸、及びヘキサメチレンジアミンとの混合物、固体塩又は水溶液を110?200℃の温度下で攪拌し、約60?90%まで水蒸気を徐々に抜いて加熱濃縮する。
その後、内部圧力を約1.5?5.0MPa(ゲージ圧)になるまで加熱を続ける。
その後、水及び/又はガス成分を除きながら、圧力を約1.5?5.0MPa(ゲージ圧)に保ち、内部温度が好ましくは240℃以上、より好ましくは245℃以上に達した時点で、水及び/又はガス成分を除きながら圧力を徐々に抜き、最終内部温度が好ましくは250℃以上、より好ましくは260℃以上になるように、常圧で又は減圧して重縮合を行う。
さらには、アジピン酸、イソフタル酸、及びヘキサメチレンジアミンとの混合物、固体塩又は重縮合物を融点以下の温度で熱重縮合させる固相重合法等も用いることができる。これらの方法は必要に応じて組み合わせてもよい。
【0041】
ニーダー等の押出型反応機を用いる場合、押出の条件は、減圧度は0?0.07MPa程度が好ましい。
押出温度は、JIS-K7121に準じた示差走査熱量(DSC)測定で求められる融点よりも1?100℃程度高い温度が好ましい。
剪断速度は、100(sec^(-1))以上程度であることが好ましく、平均滞留時間は0.1?15分程度が好ましい。
上記押出条件とすることにより、着色や高分子量化できない等の問題の発生を効果的に抑制できる。
【0042】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物を構成する(A)ポリアミド(ポリアミド共重合体を含む、以下同じ。)の製造においては、所定の触媒を用いることが好ましい。
触媒としては、ポリアミドに用いられる公知のものであれば特に限定されず、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、オルト亜リン酸、ピロ亜リン酸、フェニルホスフィン酸、フェニルホスホン酸、2-メトキシフェニルホスホン酸、2-(2’-ピリジル)エチルホスホン酸、及びそれらの金属塩等が挙げられる。
金属塩の金属としては、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、バナジウム、カルシウム、亜鉛、コバルト、マンガン、錫、タングステン、ゲルマニウム、チタン、アンチモン等の金属塩やアンモニウム塩等が挙げられる。
また、エチルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、ヘキシルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、オクタデシルエステル、ステアリルエステル、フェニルエステル等のリン酸エステル類も用いることができる。
【0043】
((A)ポリアミドの物性)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物を構成する(A)ポリアミドは、蟻酸溶液粘度(JIS K 6816)が、好ましくは10?30である。
蟻酸溶液粘度が10以上であると、実用上十分な機械的特性を有する成形品が得られ、蟻酸溶液粘度が30以下であると、成形時の流動性が良好なものとなり、表面外観性に優れた成形品が得られる。
【0044】
((B)安定剤)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、上述した(A)ポリアミドと、(B)安定剤とを含有し、(B)安定剤としては、耐熱安定剤及び/又は耐光安定剤として用いられる化合物が挙げられる。
(B)安定剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
(B)安定剤は、フェノール系安定剤、ホスファイト系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤、トリアジン系安定剤、イオウ系安定剤、及び無機リン系安定剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0046】
前記フェノール系安定剤としては、例えば、ヒンダートフェノール化合物が挙げられる。
ヒンダードフェノール化合物としては、例えば、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)]、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9-ビス{2-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピニロキシ]-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサピロ[5,5]ウンデカン、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート-ジエチルエステル、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌル酸等が挙げられる。
【0047】
前記ホスファイト系安定剤としては、例えば、トリオクチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、トリスイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、フェニルジ(トリデシル)ホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニル(トリデシル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチル-5-メチルフェニル)ホスファイト、トリス(ブトキシエチル)ホスファイト、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル-テトラ-トリデシル)ジホスファイト、テトラ(C12?C15混合アルキル)-4,4’-イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、4,4’-イソプロピリデンビス(2-t-ブチルフェニル)・ジ(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ビフェニル)ホスファイト、テトラ(トリデシル)-1,1,3-トリス(2-メチル-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)ブタンジホスファイト、テトラ(トリデシル)-4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル)ジホスファイト、テトラ(C1?C15混合アルキル)-4,4’-イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、トリス(モノ、ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、4,4’-イソプロピリデンビス(2-t-ブチルフェニル)・ジ(ノニルフェニル)ホスファイト、9,10-ジ-ヒドロ-9-オキサ-9-オキサ-10-ホスファフェナンスレン-10-オキサイド、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)ホスファイト、水素化-4,4’-イソプロピリデンジフェニルポリホスファイト、ビス(オクチルフェニル)・ビス(4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル))・1,6-ヘキサノールジホスファイト、ヘキサトリデシル-1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ジホスファイト、トリス(4、4’-イソプロピリデンビス(2-t-ブチルフェニル))ホスファイト、トリス(1,3-ステアロイルオキシイソプロピル)ホスファイト、2、2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2-メチレンビス(3-メチル-4,6-ジ-t-ブチルフェニル)2-エチルヘキシルホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチル-5-メチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスファイト等が挙げられる。
【0048】
前記ホスファイト系安定剤としては、例えば、ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物を挙げられる。
ペンタエリストール型ホスファイト化合物としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル・フェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル・メチル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル・2-エチルヘキシル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル・イソデシル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル・ラウリル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル・イソトリデシル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル・ステアリル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル・シクロヘキシル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル・ベンジル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル・エチルセロソルブ・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル・ブチルカルビトール・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル・オクチルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル・ノニルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル・2,6-ジ-t-ブチルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル・2,4-ジ-t-ブチルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル・2,4-ジ-t-オクチルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル・2-シクロヘキシルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-t-アミル-4-メチルフェニル・フェニル・ペンタエリストリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-アミル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-オクチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
【0049】
前記ペンタエリストール型ホスファイト化合物としては、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-アミル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-オクチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が好ましく、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトがより好ましい。
【0050】
前記ヒンダードアミン系安定剤としては、例えば、4-アセトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ステアロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(フェニルアセトキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ステアリルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ベンジルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-フェノキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(エチルカルバモイルオキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(シクロヘキシルカルバモイルオキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(フェニルカルバモイルオキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-カーボネート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-オキサレート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-マロネート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-セバケート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-アジペート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-テレフタレート、1,2-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルオキシ)-エタン、α,α’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルオキシ)-p-キシレン、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルトリレン-2,4-ジカルバメート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-ヘキサメチレン-1,6-ジカルバメート、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-ベンゼン-1,3,5-トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-ベンゼン-1,3,4-トリカルボキシレート、1-[2-{3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}ブチル]-4-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、及び1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β’,β’-テトラメチル-3,9-[2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物等が挙げられる。
【0051】
前記トリアジン系安定剤としては、例えば、ヒドロキシフェニルトリアジン類が挙げられる。
ヒドロキシフェニルトリアジン類としては、例えば、2,4,6-トリス(2’-ヒドロキシ-4’-オクチルオキシ-フェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2’-ヒドロキシ-4’-ヘキシルオキシ-フェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、2-(2’-ヒドロキシ-4’-オクチルオキシフェニル)-4,6-ビス(2’,4’-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2’,4’-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス(2’,4’-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2’-ヒドロキシ-4’-プロピルオキシ-フェニル)-6-(2’,4’-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-4,6-ビス(4’-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2’-ヒドロキシ-4’-ドデシルオキシフェニル)-4,6-ビス(2’,4’-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2’-ヒドロキシ-4’-イソプロピルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2’-ヒドロキシ-4’-n-ヘキシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2’-ヒドロキシ-4’-エトキシカルボニルメトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
【0052】
前記イオウ系安定剤としては、例えば、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’-チオジプロピオネート等が挙げられる。
【0053】
前記無機リン系安定剤としては、例えば、リン酸類、亜リン酸類、次亜リン酸類、リン酸金属塩類、亜リン酸金属塩類、次亜リン酸金属塩類が挙げられる。
前記リン酸類、亜リン酸類、次亜リン酸類としては、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロ亜リン酸、二亜リン酸等が挙げられる。
前記リン酸金属塩類、亜リン酸金属塩類、次亜リン酸金属塩類としては、例えば、上記のリン酸等の化合物と周期律表第1族金属との塩が挙げられる。
前記無機リン系安定剤としては、可溶性化合物(水に対する可溶性を有する化合物)が好ましく、例えば、リン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、及び次亜リン酸ナトリウムが好ましく、より好ましくは亜リン酸ナトリウム、及び次亜リン酸ナトリウムであり、さらに好ましくは次亜リン酸ナトリウムである。無機リン系安定剤は、例えば、上述した化合物の水和物(好ましくは、ジ亜リン酸ナトリウムの水和物(NaH_(2)PO_(2)・nH_(2)O))であってもよい。
【0054】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物における(B)安定剤の含有量は、上述した(A)ポリアミド100質量部に対して、0.01?5質量部であることが好ましく、0.02?1質量部であることがより好ましく、0.1?1質量部であることがさらに好ましい。(B)安定剤の含有量を0.01質量部以上とすることにより、本実施形態のポリアミド樹脂組成物及び成形品の耐候性が一層向上する。また、(B)安定剤の含有量を5質量部以下とすることにより、ポリアミド樹脂組成物を成形した際の成形品表面へのシルバーの発生を一層抑制することができ、外観性及び機械物性に一層優れる成形品を得ることができる。
【0055】
(成形性改良剤)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、成形性改良剤を添加してもよい。
成形性改良剤としては、特に限定されないが、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸エステル、及び高級脂肪酸アミド等が挙げられる。
【0056】
前記高級脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、エルカ酸、オレイン酸、ラウリン酸、及びモンタン酸等の炭素数8?40の飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐状の脂肪族モノカルボン酸等が挙げられる。
これらの中でも、ステアリン酸及びモンタン酸が好ましい。
【0057】
前記高級脂肪酸金属塩とは、前記高級脂肪酸の金属塩である。
金属塩の金属元素としては、元素周期律表の第1,2,3族元素、亜鉛、及びアルミニウム等が好ましく、カルシウム、ナトリウム、カリウム、及びマグネシウム等の、第1,2族元素、並びにアルミニウム等がより好ましい。
前記高級脂肪酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸ナトリウム、パルミチン酸カルシウム等が挙げられる。
これらの中でも、モンタン酸の金属塩及びステアリン酸の金属塩が好ましい。
【0058】
前記高級脂肪酸エステルとは、前記高級脂肪酸とアルコールとのエステル化物である。
高級脂肪酸エステルとしては、炭素数8?40の脂肪族カルボン酸と炭素数8?40の脂肪族アルコールとのエステルが好ましい。
脂肪族アルコールとしては、例えば、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、及びラウリルアルコール等が挙げられる。
高級脂肪酸エステルとしては、例えば、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル等が挙げられる。
【0059】
前記高級脂肪酸アミドとは、前記高級脂肪酸のアミド化合物である。
高級脂肪酸アミドとしては、例えば、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、エチレンビスオレイルアミド、N-ステアリルステアリルアミド、N-ステアリルエルカ酸アミド等が挙げられる。
高級脂肪酸アミドとしては、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、及びN-ステアリルエルカ酸アミドが好ましく、エチレンビスステアリルアミド及びN-ステアリルエルカ酸アミドがより好ましい。
【0060】
成形性改良剤としての上述した高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸エステル、及び高級脂肪酸アミドは、それぞれ1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
【0061】
((C)無機充填材)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、上述した(A)ポリアミド、(B)安定剤に加え、さらに、(C)無機充填材を含有してもよい。
(C)無機充填材としては、特に限定されないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、タルク、マイカ、カオリン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、アパタイト、リン酸ナトリウム、蛍石、窒化珪素、チタン酸カリウム、及び二硫化モリブデン等が挙げられる。
これらの中でも、ポリアミド樹脂組成物及びその成形品の機械物性や、安全性、及び経済性の観点から、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、タルク、マイカ、カオリン、窒化ホウ素、チタン酸カリウム、アパタイトが好ましく用いられる。
【0062】
前記ガラス繊維、炭素繊維としては、特に限定されるものではないが、長繊維タイプ、短繊維タイプ、異型断面タイプ等、任意の形状のガラス繊維、及び炭素繊維が使用可能である。
前記ガラス繊維や炭素繊維は、ポリアミド樹脂組成物及び成形品において高い機械特性を発現できる観点から、数平均繊維径(D)は3?30μmが好ましく、重量平均繊維長(L)は100?750μmが好ましく、重量平均繊維長と数平均繊維径とのアスペクト比(L/D)が10?100のものが好ましい。
【0063】
前記ウォラストナイトは、本実施形態のポリアミド樹脂組成物及び成形品において高い機械特性を発現できる観点から、数平均繊維径(D)は3?30μmが好ましく、重量平均繊維長(L)は10?500μmが好ましく、前記アスペクト比(L/D)が3?100のものが好ましい。
特に、数平均繊維径(D)が3?30μm、重量平均繊維長(L)が10?500μm、前記アスペクト比(L/D)が3?100であるものがより好ましい。
【0064】
前記タルク、マイカ、カオリン、窒化珪素、チタン酸カリウムとしては、本実施形態のポリアミド樹脂組成物及び成形品において高い機械特性を発揮できる観点から、数平均繊維径(D)が0.1?3μmであるものが好ましい。
【0065】
上記(C)無機充填材の数平均繊維径(D)及び重量平均繊維長(L)は、顕微鏡法により測定することができる。
例えば、ペレット状のガラス繊維を含有するポリアミド樹脂組成物を、該ポリアミド樹脂組成物の分解温度以上で加熱し、残ったガラス繊維を、顕微鏡を用いて写真撮影し、ガラス繊維の径や長さを計測する方法により測定することができる。
顕微鏡法によって得られた測定値から、数平均繊維径(D)及び重量平均繊維長(L)を計算する方法としては、下記式(I)、式(II)が挙げられる。
数平均繊維径(D)=ガラス繊維径の合計/ガラス繊維の数 ・・・(I)
重量平均繊維長(L)=ガラス繊維長さの2乗和/ガラス繊維長さの合計・・・(II)
なお、数平均繊維径(L)及び重量平均繊維長(D)は、例えば、ポリアミド樹脂組成物を電気炉に入れて、含まれる有機物を焼却処理し、残渣分から、例えば100本以上のガラス繊維を任意に選択し、SEMで観察して繊維径を測定することにより数平均繊維径を測定でき、倍率1000倍でのSEM写真を用いて繊維長を計測することにより重量平均繊維長を求めることができる。
【0066】
(C)無機充填材は、本実施形態のポリアミド樹脂組成物及び成形品の機械強度向上の点から、表面処理されたものが好ましい。
表面処理としては、特に限定されないが、例えば、カップリング剤やフィルム形成剤を用いることができる。
【0067】
前記カップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤等が挙げられる。
【0068】
前記シラン系カップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、トリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(1,1-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピル-トリス(2-メトキシ-エトキシ)シラン、N-メチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ビニルベンジル-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、トリアミノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ヒドロイミダゾールプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、N,O-(ビストリメチルシリル)アミド、N,N-ビス(トリメチルシリル)ウレア等が挙げられる。
これらの中でも、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(1,1-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のアミノシラン及びエポキシシランが、経済性に優れ、取り扱い易いため、好ましく用いられる。
【0069】
前記チタン系カップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(1,1-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネートイソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N-アミドエチル、アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等が挙げられる。
【0070】
前記フィルム形成剤としては、特に限定されないが、例えば、ウレタン系ポリマー;アクリル酸系ポリマー;無水マレイン酸とエチレン、スチレン、α-メチルスチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3-ジクロロブタジエン、1,3-ペンタジエン、シクロオクタジエン等の不飽和単量体とのコポリマー;エポキシ系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、酢酸ビニル系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー等の重合体が挙げられる。
これらの中でも、経済性と性能が優れる観点から、ウレタン系ポリマー、アクリル酸系ポリマー、ブタジエン無水マレイン酸コポリマー、エチレン無水マレイン酸コポリマー、スチレン無水マレイン酸コポリマー、及びこれらの混合物が好ましい。
【0071】
上述したようなカップリング剤及びフィルム形成剤を用いて、(C)無機充填材の表面処理を行う方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
例えば、上記カップリング剤及びフィルム形成剤の有機溶媒溶液又は懸濁液を、いわゆるサイジング剤として表面に塗布するサイジング処理;ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、レーディミキサー、V型ブレンダー等を用いて塗布する乾式混合;スプレーにより塗布するスプレー法;インテグラルブレンド法;ドライコンセントレート法等が挙げられる。
また、これらの方法を組合せた方法(例えば、カップリング剤とフィルム形成剤の一部をサイジング処理により塗布した後、残りのフィルム形成剤をスプレーする方法等)も挙げられる。
これらの中でも、経済性に優れるという観点から、サイジング処理、乾式混合、スプレー法及びこれらを組合せた方法が好ましい。
【0072】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物における(C)無機充填材の含有割合は、上述した(A)ポリアミド30?95質量部に対して、5?70質量部が好ましく、より好ましくは5?60質量部であり、さらに好ましくは10?60質量部である。
(C)無機充填材の含有割合を上記範囲内にすることにより、優れた機械特性が得られ、かつ良好な押出性及び成形性が得られる。
(C)無機充填材は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
(劣化抑制剤)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物には、必要に応じて、本実施形態の目的を損なわない範囲で、熱劣化、耐熱エージング性の向上を目的として、劣化抑制剤を添加してもよい。
このような劣化抑制剤としては、特に限定されないが、例えば、酢酸銅及びヨウ化銅等の銅化合物が挙げられる。
これらの劣化抑制剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
【0074】
(着色剤)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物には、必要に応じて、本実施形態の目的を損なわない範囲で、着色剤を添加してもよい。
着色剤としては、特に限定されないが、例えば、ニグロシン等の染料、酸化チタン及びカーボンブラック等の顔料;アルミニウム、着色アルミニウム、ニッケル、スズ、銅、金、銀、白金、酸化鉄、ステンレス、及びチタン等の金属粒子;マイカ製パール顔料、カラーグラファイト、カラーガラス繊維、及びカラーガラスフレーク等のメタリック顔料等が挙げられる。
【0075】
(その他の樹脂)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物には、必要に応じて、本実施形態の目的を損なわない範囲で、その他の樹脂を添加してもよい。
このような樹脂としては、特に限定されるものではないが、後述する熱可塑性樹脂やゴム成分等が挙げられる。
【0076】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、アタクチックポリスチレン、アイソタクチックポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のポリスチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ナイロン6、66、612等の他のポリアミド(本実施形態のポリアミド以外のポリアミド);ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等のポリエーテル系樹脂;ポリフェニレンスルフィド、ポリオキシメチレン等の縮合系樹脂;ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の含ハロゲンビニル化合物系樹脂;フェノール樹脂;エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらの熱可塑性樹脂は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
【0077】
前記ゴム成分としては、例えば、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ネオプレン、ポリスルフィドゴム、チオコールゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、スチレン-ブタジエンブロック共重合体(SBR)、水素添加スチレン-ブタジエンブロック共重合体(SEB)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、水素添加スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-イソプレンブロック共重合体(SIR)、水素添加スチレン-イソプレンブロック共重合体(SEP)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、水素添加スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-ブタジエンランダム共重合体、水素添加スチレン-ブタジエンランダム共重合体、スチレン-エチレン-プロピレンランダム共重合体、スチレン-エチレン-ブチレンランダム共重合体、エチレン-プロピレン共重合体(EPR)、エチレン-(1-ブテン)共重合体、エチレン-(1-ヘキセン)共重合体、エチレン-(1-オクテン)共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)や、ブタジエン-アクリロニトリル-スチレン-コアシェルゴム(ABS)、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン-コアシェルゴム(MBS)、メチルメタクリレート-ブチルアクリレート-スチレン-コアシェルゴム(MAS)、オクチルアクリレート-ブタジエン-スチレン-コアシェルゴム(MABS)、アルキルアクリレート-ブタジエン-アクリロニトリル-スチレンコアシェルゴム(AABS)、ブタジエン-スチレン-コアシェルゴム(SBR)、メチルメタクリレート-ブチルアクリレートシロキサンをはじめとするシロキサン含有コアシェルゴム等のコアシェルタイプ等が挙げられる。
これらのゴム成分は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
【0078】
〔ポリアミド樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、(A)ポリアミドに、上述した(B)安定剤、必要に応じて(C)無機充填材、劣化抑制剤、成形性改良剤、着色剤、その他の樹脂を配合することにより製造できる。
配合方法としては、公知の押出技術を用いることができる。
例えば、溶融混練温度は、樹脂温度にして250?350℃程度が好ましい。溶融混練時間は、1?30分程度が好ましい。
また、本実施形態のポリアミド樹脂組成物を構成する成分を溶融混練機に供給する方法は、すべての構成成分を同一の供給口に一度に供給してもよいし、構成成分をそれぞれ異なる供給口から供給してもよい。
具体的には、混合方法は、例えば、ポリアミドと無機充填材とをヘンシェルミキサー等を用いて混合し、溶融混練機に供給し、混練する方法や、減圧装置を備えた単軸又は2軸押出機で溶融状態にしたポリアミドに、サイドフィダーから無機充填材を配合する方法等が挙げられる。
【0079】
〔ポリアミド樹脂組成物の成形品〕
本実施形態のポリアミド樹脂組成物を成形することにより、所定の成形品が得られる。
成形品を得る方法としては、特に限定されず、公知の成形方法を用いることができる。
例えば、押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、射出圧縮成形、加飾成形、他材質成形、ガスアシスト射出成形、発砲射出成形、低圧成形、超薄肉射出成形(超高速射出成形)、及び金型内複合成形(インサート成形、アウトサート成形)等の成形方法が挙げられる。
【0080】
〔用途〕
本実施形態のポリアミド樹脂組成物の成形品は、過酷な成形条件下における成形品の表面外観の安定性、耐衝撃特性に優れ、様々な用途に用いることができる。
例えば、自動車分野、電気・電子分野、機械・工業分野、事務機器分野、航空・宇宙分野において、好適に用いることができる。
【実施例】
【0081】
以下、具体的な実施例と比較例を挙げて本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0082】
先ず、ポリアミドの構成要素、物性の測定方法、及び特性の評価方法を下記に示す。
〔測定方法〕
<ポリアミドのイソフタル酸成分比率、イソフタル酸末端基、及び全カルボキシル末端基の定量>
ポリアミドを用いて、^(1)H-NMRにより求めた。
溶媒として重硫酸を用いた。
装置は日本電子製、「ECA400型」を用いた。
繰返時間は12秒、積算回数は64回で測定した。
各成分の特性シグナルの積分値より、イソフタル酸成分量、イソフタル酸末端基量、その他のカルボキシ末端基(例えばアジピン酸末端基)量を算出し、これらの値から、全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、及び上記式(1)のパラメータ(Y)をさらに算出した。
【0083】
<蟻酸溶液粘度>
ポリアミドを蟻酸に溶解し、JIS K6810に準じて測定した。
【0084】
<ハイサイクル成形時の外観安定性/グロス値の評価>
装置は日精樹脂(株)製、「FN3000」を用いた。
シリンダー温度を320℃、金型温度を70℃に設定し、射出17秒、冷却20秒の射出成形条件で、ポリアミド樹脂組成物を用いて100ショットまで成形を行い、ISO試験片を得た。
得られた成形品(ISO試験片)の外観安定性は、堀場(株)製、ハンディ光沢度計「IG320」を用いてグロス値を測定し、下記方法により求めた。
外観安定性=((1):20?30ショットISO試験片のグロス平均値)-((2):90?100ショットISO試験片のグロス平均値)
上記の数値差が小さいほど、外観安定性に優れるものと判断した。
なお表1、2中、「(1)-(2)」とは、上記外観安定性の式により算出されるグロス値を示す。
【0085】
<衝撃特性 シャルピー衝撃強さの測定>
上記外観安定性試験で得られた20?25ショットISO試験片を用いて、ISO 179に準じてシャルピー衝撃強さ測定した。
測定値はn=6の平均値とした。
【0086】
<耐候性の評価>
上記外観安定性試験で得られた試験片を用いて、ISO4892-2に準じて、初期と1000時間後との色差(ΔE)を求めた。
耐候試験は、試験機としてATLA社製Ci4000(キセノンランプ)を用いて、雨有りの環境下で行った。具体的には、槽内温度40℃、ブラックパネル温度65℃、湿度50%の条件下において、120分サイクル中18分間で純水を試験片にスプレーし試験を行った。
日本電色社製色差計ND-300Aを用いて、初期試験片と、前記試験機により1000時間耐候試験を実施した後の試験片との色差(ΔE)を求めた。
測定は、試験片3枚について行い、試験片の中央部について1枚につき3回測定し、その平均値を評価結果とした。
【0087】
〔(A)ポリアミド〕
<製造例1:ポリアミド(A1)の製造>
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1237g、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩263g、及び全等モル塩成分に対して0.5モル%過剰のアジピン酸を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作製した。
この水溶液を、内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、窒素置換した。
110?150℃の温度下で前記水溶液を撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。
その後、オートクレーブの内部温度を220℃に昇温した。
このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。
そのまま1時間、オートクレーブの内部温度が245℃になるまで加熱し、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。
次に、1時間かけてオートクレーブ内の圧力を1MPaまで下げ、その後、オートクレーブ内を真空装置で650torrの減圧下に10分維持した。
このとき、重合の最終内部温度は265℃であった。
その後、オートクレーブ内を窒素で加圧し下部紡口(ノズル)から得られたポリマーをストランド状で排出し、水冷、カッティングを行いペレット状にして、100℃、窒素雰囲気下で12時間乾燥し、ポリアミドを得た。
得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表1に示す。
【0088】
<製造例2:ポリアミド(A2)の製造>
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1132g、及びイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩368gを用いた。
その他の条件は、製造例1と同様の方法によりポリアミドを得た。
得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表1に示す。
【0089】
<製造例3:ポリアミド(A3)の製造>
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1044g、及びイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩456gを用いた。
その他の条件は、製造例1と同様の方法によりポリアミドを得た。
得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表1に示す。
【0090】
<製造例4:ポリアミド(A4)の製造>
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩816g、及びイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩684gを用いた。
その他の条件は、製造例1と同様の方法によりポリアミドを得た。
得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表1に示す。
【0091】
<製造例5:ポリアミド(A5)の製造>
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1237g、及びイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩263gを用いた。全等モル塩成分に対して0.5モル%過剰のアジピン酸を添加しなかった。
その他の条件は、製造例1の方法によりポリアミドを得た。
得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表1に示す。
【0092】
<製造例6:ポリアミド(A6)の製造>
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1044g、及びイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩456gを用いた。全等モル塩成分に対して0.5モル%過剰のアジピン酸を添加しなかった。
その他の条件は、製造例1の方法によりポリアミドを得た。
得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表1に示す。
【0093】
<製造例7:ポリアミド(A7)の製造>
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1114g、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩386g、及び全等モル塩成分に対して0.5モル%過剰のアジピン酸を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作製した。
この水溶液を内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、窒素置換した。
110?150℃の温度下で前記水溶液を撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。
その後、オートクレーブの内部温度を220℃に昇温した。
このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。
そのまま1時間、オートクレーブの内部温度が245℃になるまで加熱し、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。
次に、1時間かけてオートクレーブ内の圧力を1MPaまで下げ、その後、オートクレーブ内を真空装置で400torrの減圧下に10分維持した。
このとき、重合の最終内部温度は265℃であった。
その後、オートクレーブ内を窒素で加圧し下部紡口(ノズル)から得られたポリマーをストランド状で排出し、水冷、カッティングを行いペレット状にして、100℃、窒素雰囲気下で12時間乾燥し、ポリアミドを得た。
得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表1に示す。
【0094】
<製造例8:ポリアミド(A8)の製造>
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1114g、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩368g、及び全等モル塩成分に対して0.5モル%過剰のアジピン酸を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作製した。
この水溶液を内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、窒素置換した。
110?150℃の温度下で前記水溶液を撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。
その後、オートクレーブの内部温度を220℃に昇温した。
このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。
そのまま1時間、オートクレーブの内部温度が245℃になるまで加熱し、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。
次に、1時間かけてオートクレーブ内の圧力を1MPaまで下げ、その後、オートクレーブ内を真空装置で650torrの減圧下に20分維持した。
このとき、重合の最終内部温度は270℃であった。
その後、オートクレーブ内を窒素で加圧し下部紡口(ノズル)から得られたポリマーをストランド状で排出し、水冷、カッティングを行いペレット状にして、100℃、窒素雰囲気下で12時間乾燥し、ポリアミドを得た。
得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表1に示す。
【0095】
<製造例9:ポリアミド(A9)の製造>
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1109g、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩368g、εカプロラクタム5g、及び全等モル塩成分に対して0.5モル%過剰のアジピン酸を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作製した。
この水溶液を内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、窒素置換した。
110?150℃の温度下で前記水溶液を撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。
その後、オートクレーブの内部温度を220℃に昇温した。
このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。
そのまま1時間、オートクレーブの内部温度が245℃になるまで加熱し、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。
次に、1時間かけてオートクレーブ内の圧力を1MPaまで下げ、その後、オートクレーブ内を真空装置で650torrの減圧下に10分維持した。
このとき、重合の最終内部温度は265℃であった。
その後、オートクレーブ内を窒素で加圧し下部紡口(ノズル)から得られたポリマーをストランド状で排出し、水冷、カッティングを行いペレット状にして、100℃、窒素雰囲気下で12時間乾燥し、ポリアミドを得た。
得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表1に示す。
【0096】
<製造例10:ポリアミド(A10)の製造>
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1500g、全等モル塩成分に対して0.5モル%過剰のアジピン酸を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作製した。
この水溶液を内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、窒素置換した。
110?150℃の温度下で前記水溶液を撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。
その後、オートクレーブの内部温度を220℃に昇温した。
このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。
そのまま1時間、オートクレーブの内部温度が260℃になるまで加熱し、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。
次に、1時間かけてオートクレーブ内の圧力を1MPaまで下げ、その後、オートクレーブ内を真空装置で650torrの減圧下に10分維持した。
このとき、重合の最終内部温度は290℃であった。
その後、オートクレーブ内を窒素で加圧し下部紡口(ノズル)から得られたポリマーをストランド状で排出し、水冷、カッティングを行いペレット状にして、100℃、窒素雰囲気下で12時間乾燥し、ポリアミドを得た。
得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表2に示す。
【0097】
<製造例11:ポリアミド(A11)の製造>
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1455g、及びイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンの等モル塩45gを用いた。
その他の条件は、製造例10と同様の方法によりポリアミドを得た。
得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表2に示す。
【0098】
<製造例12:ポリアミド(A12)の製造>
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1237g、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩263g、及び全等モル塩成分に対して0.5モル%過剰のアジピン酸を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作製した。
この水溶液を内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、窒素置換した。
110?150℃の温度下で前記水溶液を撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。
その後、オートクレーブの内部温度を220℃に昇温した。
このとき、オートクレーブは1,8MPaまで昇圧した。
そのまま1時間、オートクレーブの内部温度が260℃になるまで加熱し、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。
次にバルブを閉止し、ヒーターを切り、約8時間かけてオートクレーブの内部温度を常温まで冷却し、蟻酸溶液粘度7のポリアミドを得た。
得られたポリアミドを粉砕した後、内容積10Lのエバポレーターに入れ、窒素気流下、200℃で10時間固相重合した。
得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表2に示す。
【0099】
<製造例13:ポリアミド(A13)の製造>
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩816g、及びイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩684gを用いた。
その他の条件は、製造例12と同様の方法によりポリアミドを得た。
得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表2に示す。
【0100】
<製造例14:ポリアミド(A14)の製造>
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1220g、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩280g、及び全等モル塩成分に対して0.5モル%過剰のアジピン酸を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作製した。
この水溶液を、内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、窒素置換した。
110?150℃の温度下で前記水溶液を撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。
その後、オートクレーブの内部温度を220℃に昇温した。
このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。
そのまま2時間、オートクレーブの内部温度が260℃になるまで加熱し、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。
次に、1時間かけてオートクレーブ内の圧力を1MPaまで下げ、次にバルブを閉止し、ヒーターを切り、約8時間かけてオートクレーブの内部温度を常温まで冷却し、ポリアミドを得た。得られたポリアミドを粉砕した後、100℃、窒素雰囲気下で12時間乾燥し、ポリアミドを得た。
得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表2に示す。
【0101】
<製造例15:ポリアミド(A15)の製造>
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩570g、及びイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩930gを用いた。
その他の条件は、製造例1と同様の方法によりポリアミドを得た。
得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表2に示す。
【0102】
<製造例16:ポリアミド(A16)の製造>
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩570g、及びイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩930gを用いた。
全等モル塩成分に対して0.5モル%過剰のアジピン酸を添加しなかった。
その他の条件は、製造例1と同様の方法によりポリアミドを得た。
得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表2に示す。
【0103】
<製造例17:ポリアミド(A17)の製造>
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1237g、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩263g、及び全等モル塩成分に対して0.5モル%過剰のアジピン酸を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作製した。
この水溶液を内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、窒素置換した。
110?150℃の温度下で前記水溶液を撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。
その後、オートクレーブの内部温度を220℃に昇温した。
このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。
そのまま1時間、オートクレーブの内部温度が260℃になるまで加熱し、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1,8MPaに保ちながら1時間反応させた。
次にバルブを閉止し、ヒーターを切り、約8時間かけてオートクレーブの内部温度を常温まで冷却し、蟻酸溶液粘度7のポリアミドを得た。
得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表2に示す。
【0104】
〔安定剤(B)〕
(B1)フェノール系安定剤
N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)] チバ・ジャパン製 商品名 IRGANOX(登録商標)1098
(B2)ホスファイト系安定剤
ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト ADEKA製 商品名 アデカスタブ(登録商標)PEP-36
(B3)ヒンダードアミン系安定剤
ビス-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-セバケート チバ・ジャパン製 商品名 サノール(登録商標)770
(B4)トリアジン系安定剤
2-(2’-ヒドロキシ-4’-ヘキシルオキシフェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン チバ・ジャパン製 商品名 TINUBIN(登録商標)167FF
(B5)無機リン系安定剤
次亜リン酸ナトリウム 和光純薬製 商品名 ジ亜リン酸ナトリウム
【0105】
〔無機充填材(C)〕
ガラス繊維(C1) Chongqiung Polycomp International Corporation製 商品名:ECS301HP 平均繊維径:10μm、カット長:3mm
【0106】
〔実施例1〕
製造例1で作製したポリアミド(A1)100質量部と安定剤(B1)0.1質量部とを、東芝機械社製、TEM35mm 2軸押出機(設定温度:290℃、スクリュー回転数300rpm)にトップフィード口より供給した。紡口より押出された溶融混練物をストランド状で冷却し、ペレタイズしてペレット状のポリアミド樹脂組成物を得た。
また、得られたポリアミド樹脂組成物を用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、耐候性の評価を行った。評価結果を下記表1に示す。
【0107】
〔実施例2?14、比較例1?7〕
(A)ポリアミドの種類、(B)安定剤の種類、配合量を、それぞれ下記表1及び表2に示すように変更した。その他の条件は、実施例1と同様の方法により、ペレット状のポリアミド樹脂組成物を得た。
また、得られたポリアミド樹脂組成物を用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、耐候性の評価を行った。評価結果を下記表1及び表2に示す。
【0108】
〔実施例15〕
ポリアミド(A1)67質量部と安定剤(B1)0.3質量部とを、東芝機械社製、TEM35mm 2軸押出機(設定温度:290℃、スクリュー回転数300rpm)にフィードホッパーより供給した。
さらに、サイドフィード口より、前記ポリアミド(A1)67質量部に対して、ガラス繊維(C1)を33質量部の割合で供給し、溶融混練を行った。紡口より押出された溶融混練物をストランド状で冷却し、ペレタイズしてペレット状のポリアミド樹脂組成物を得た。
また、得られたポリアミド樹脂組成物を用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、耐候性の評価を行った。評価結果を下記表1に示す。
【0109】
〔実施例16〕
ポリアミド(A1)50質量部と安定剤(B1)0.3質量部とを、東芝機械社製、TEM35mm 2軸押出機(設定温度:290℃、スクリュー回転数300rpm)にフィードホッパーより供給した。
さらに、サイドフィード口より、前記ポリアミド(A1)50質量部に対して、ガラス繊維(C1)を50質量部の割合で供給し、溶融混練を行った。紡口より押出された溶融混練物をストランド状で冷却し、ペレタイズしてペレット状のポリアミド樹脂組成物を得た。
また、得られたポリアミド樹脂組成物を用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、耐候性の評価を行った。評価結果を下記表1に示す。
【0110】
〔比較例8〕
ポリアミド(A17)100質量部と安定剤(B1)0.3質量部とを、東芝機械社製、TEM35mm 2軸押出機(設定温度:290℃、スクリュー回転数300rpm)にトップフィード口より供給し溶融混練を行った。しかしながら溶融粘度が低いため、押出加工性が悪く、成形品を得ることができなかった。
【0111】
〔比較例9〕
ポリアミド(A12)67質量部と安定剤(B1)0.3質量部とを、東芝機械社製、TEM35mm 2軸押出機(設定温度:290℃、スクリュー回転数300rpm)にフィードホッパーより供給した。
さらに、サイドフィード口より、前記ポリアミド(A12)67質量部に対して、ガラス繊維(C1)を33質量部の割合で供給し、溶融混練を行った。紡口より押出された溶融混練物をストランド状で冷却し、ペレタイズしてペレット状のポリアミド樹脂組成物を得た。
また、得られたポリアミド樹脂組成物を用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、耐候性の評価を行った。評価結果を下記表2に示す。
【0112】
【表1】

【0113】
【表2】

【0114】
前記表1に示すように、実施例1?16のポリアミド樹脂組成物の成形品は、いずれも極めて優れた外観安定性、衝撃特性、耐候性を有することが確認された。
一方、(Y)が、-0.3≦(Y)≦0.8の範囲外である比較例3、4、5、8、9のポリアミド樹脂組成物の成形品、及び(x)が0.05≦(x)≦0.5の範囲外である比較例1、2、6、7のポリアミド樹脂組成物の成形品は、表面外観の安定性が大きく低下した。
また、比較例9においては、無機充填材を配合したが、ポリアミドとして(A12)を用いたため、やはり表面外観の安定性に加え、衝撃特性も大きく低下した。
安定剤を配合しなかった比較例10においては、耐候性が大きく低下したことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明のポリアミド樹脂組成物及びこれを用いた成形品は、自動車分野、電気・電子分野、機械・工業分野、事務機器分野、航空・宇宙分野等において、産業上の利用可能性がある。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、
からなるポリアミドであって、
当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、
かつ、下記式(1)で示される(Y)が、-0.3≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミドと、
(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1)
(前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。
(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2))
(B):耐熱安定剤及び耐光安定剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の(B)安定剤と、
を、含有するポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
前記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)安定剤が、フェノール系安定剤、ホスファイト系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤、トリアジン系安定剤、イオウ系安定剤、及び無機リン系安定剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項1又は2に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)安定剤の含有量が、前記ポリアミド100質量部に対して0.01?5質量部である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A)ポリアミド30?95質量部に対して、(C)無機充填材5?70質量部を、さらに含有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物を含む成形品。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-06-30 
出願番号 特願2011-267115(P2011-267115)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (C08L)
P 1 651・ 121- YAA (C08L)
P 1 651・ 113- YAA (C08L)
P 1 651・ 536- YAA (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 渡辺 陽子  
特許庁審判長 井上 雅博
特許庁審判官 冨永 保
木村 敏康
登録日 2016-02-19 
登録番号 特許第5885485号(P5885485)
権利者 旭化成株式会社
発明の名称 ポリアミド樹脂組成物及び成形品  
代理人 大貫 敏史  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 秋山 祐子  
代理人 秋山 祐子  
代理人 内藤 和彦  
代理人 大貫 敏史  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 内藤 和彦  

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