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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B32B
管理番号 1331217
異議申立番号 異議2016-701137  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-12-13 
確定日 2017-07-27 
異議申立件数
事件の表示 特許第5939449号発明「ハードコートフィルム及び情報表示装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5939449号の請求項1?7に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5939449号の請求項1?7に係る特許についての出願は、平成26年12月9日(優先権主張 平成25年12月24日 日本国)を国際出願日とする出願であって、平成28年5月27日にその特許権の設定登録がされ、その後、請求項1?7に係る特許について、特許異議申立人角田朗により特許異議の申立てがされ、当審において平成29年3月8日付けで取消理由を通知し、その指定期間内である平成29年5月11日に意見書が提出されたものである。

2.本件発明
本件特許の請求項1?7に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明7」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
厚さ50μm?130μmの透明基材の少なくとも一方の面に、反応性シリカ及び非反応性シリカを含むフィラーを含有する第一のハードコート層(A)と、フッ素原子及びケイ素原子を有する活性エネルギー線硬化性化合物(b1)を含有するハードコート剤(b2)を用いて形成された第二のハードコート層(B)とが順に積層されたものであることを特徴とするハードコートフィルム。
【請求項2】
前記第一のハードコート層(A)が、ウレタン(メタ)アクリレートと、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートと、フィラーとを含有するハードコート剤(a1)を用いて形成された層であり、前記フィラーが、前記ウレタン(メタ)アクリレートと前記多官能(メタ)アクリレートとの合計100質量部に対して100質量部?300質量部含まれるものである請求項1に記載のハードコートフィルム。
【請求項3】
前記第一のハードコート層(A)の厚さが10μm?25μmであり、前記第二のハードコート層(B)の厚さが1μm?10μmである請求項1または2に記載のハードコートフィルム。
【請求項4】
前記反応性シリカと非反応性シリカとの質量割合が、[反応性シリカ/非反応性シリカ]=0.5?1.5である請求項1?3のいずれか1項に記載のハードコートフィルム。
【請求項5】
前記第二のハードコート層(B)の表面の水接触角が95°以上である請求項1?4のいずれか1項に記載のハードコートフィルム。
【請求項6】
前記透明基材の他方の面(前記第一のハードコート層(A)及び第二のハードコート層(B)が積層された面の反対側の面)に、第三のハードコート層を有するものであって、前記第三のハードコート層の厚さが、前記第一のハードコート層(A)及び第二のハードコート層(B)の厚さの合計に対して±50%の範囲の厚さである請求項1?5のいずれか1項に記載のハードコートフィルム。
【請求項7】
請求項1?6のいずれか1項に記載のハードコートフィルムが、情報表示部の保護に使用された情報表示装置。」

3.取消理由の概要
当審において、本件発明1?7に係る特許に対して、通知した上記取消理由の要旨は、次のとおりである。
以下、各甲号証を「甲1」等という。また、各甲号証に記載された発明及び事項を、「甲1発明」、「甲2事項」等という。
なお、当該取消理由の通知により、本件特許異議申立ての全ての理由が通知された。

[理由1]
本件特許の下記の請求項に係る発明は、その優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

甲1:特開2009-255544公報
甲2:特開2013-185078号公報
甲3:特開2010-285501号公報
甲4:特開2005-111756号公報
甲5:特開2006-328364号公報
甲6:特開2013-216732号公報

(1)本件発明1について
本件発明1は、甲1発明及び甲2?甲4事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本件発明2について
本件発明2は、甲1発明及び甲2?甲5事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)本件発明3について
本件発明3は、甲1発明及び甲2?甲6事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)本件発明4について
本件発明4は、甲1発明及び甲2?甲4事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)本件発明5について
本件発明5は、甲1発明、甲2、甲3及び甲6事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(6)本件発明6について
本件発明6は、甲1発明、甲2?甲4事項及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(7)本件発明7について
本件発明7は、甲1発明及び甲2?甲4事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.各甲号証の記載
(1)甲1(特開2009-255544公報)
甲1には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
フィルム基材上にハードコート層を備えるハードコートフィルムであって、
前記ハードコート層が前記フィルム基材側から順に第1ハードコート層と第2ハードコート層を順に備え、且つ、
前記第1ハードコート層は活性エネルギー線硬化型材料を硬化して形成されるハードコート層であり、且つ
前記第2ハードコート層は前記ハードコートフィルムの最外層に形成され、且つ、前記第2ハードコート層は活性エネルギー線硬化型材料と分子内に炭素-炭素不飽和二重結合を備えるフッ素系表面活性剤を硬化して形成されるハードコート層である
ことを特徴とするハードコートフィルム。」
「【0010】
そこで、本発明にあっては、耐擦傷性に優れるだけでなく、汚れが付着しにくく且つ付着した汚れが拭取りやすい防汚性を備え、さらには、防汚性が持続し、材料コストが低いハードコートフィルムを提供することを目的とする。」
「【0017】
上記構成のハードコートフィルムとすることにより、耐擦傷性に優れるだけでなく、汚れが付着しにくく且つ付着した汚れが拭取りやすい防汚性を備え、さらには、防汚性が持続し、材料コストが低いハードコートフィルムとすることができた。」
「【0022】
また、本発明のハードコートフィルムにあっては最外層となる第2ハードコート層が分子内に炭素-炭素不飽和結合を有するフッ素系表面活性剤を含むことを特徴とする。ハードコートフィルムの最外層を形成する第2ハードコート層にフッ素系表面活性剤を添加させることによりハードコート層表面に汚れが付着しにくく且つ付着した汚れが拭取りやすい防汚性を付与することができる。」
「【0026】
また、本発明のハードコートフィルムにあっては、第2ハードコートフィルムに用いられる分子内に炭素-炭素不飽和二重結合を備えるフッ素系表面活性剤はフッ素化アクリレート、フッ素化メタクリレート、フッ素化エポキシアクリレートを好適に用いることができる。フッ素化アクリレート、フッ素化メタクリレート、フッ素化エポキシアクリレートはアクリレート材料、メタクリレート材料の水素基をフッ素基に置換したものであり、高い防汚性示し、また、活性エネルギー線硬化型材料との相溶性がよいことから好適に用いることができる。」
「【0034】
本発明のハードコートフィルムに用いられるフィルム基材にあっては、ガラスやプラスチックフィルムなどを用いることができる。プラスチックフィルムとしては適度の透明性、機械強度を有していれば良い。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)等のフィルムを用いることができる。中でも、液晶ディスプレイの前面にハードコートフィルムを設ける場合、トリアセチルセルロース(TAC)は光学異方性がないため、好ましく用いられる。」
「【0048】
また、第1ハードコート層形成溶塗液にあっては、他の添加剤を加えることもできる。他の添加剤としては、帯電防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、屈折率調整剤、密着性向上剤、硬化剤、表面調整剤などを使用できる。また、第1ハードコート層形成溶塗液に粒子を含ませることによりハードコート層表面に凹凸を形成し、ハードコート層に防眩機能を付与してもよい。」
「【0062】
(実施例1)
フィルム基材としてフィルム厚80μmのトリアセチルセルロースフィルムを用意した。第1ハードコート層形成用塗液として(H-1)を用い、バーコーターによりトリアセチルセルロースフィルム上に第1ハードコート層形成用塗液を塗布し、乾燥、紫外線照射をおこない膜厚10μmの第1ハードコート層を形成した。次に、第2ハードコート層形成溶塗液として(H-4)を用い、バーコーターによりトリアセチルセルオロースフィルム上に第2ハードコート層形成用塗液を塗布し、乾燥、紫外線照射をおこない膜厚0.1μmの第2ハードコート層を形成し、(実施例1)のハードコートフィルムを作製した。」

甲1の上記記載事項(特に【0048】及び【0062】の実施例1)によれば、甲1には、以下の甲1発明が記載されている。
「厚さ80μmのフィルム基材の少なくとも一方の面に、粒子を含有する第1ハードコート層と、フッ素原子を有する活性エネルギー線硬化性化合物を含有する第2ハードコート層とが順に積層されたハードコートフィルム。」

(2)甲2(特開2013-185078号公報)
甲2には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
分子中にビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基及びエポキシ基から選ばれる少なくとも一種を有する多官能化合物(A)と
表面に反応性官能基を有さない無機粒子(B)と
表面に反応性官能基を有する反応性無機粒子(C)と
を含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
表面に反応性官能基を有さない無機粒子(B)が、シリカであり、
表面に反応性官能基を有する反応性無機粒子(C)が、表面に(メタ)アクリロイル基を有する反応性シリカであることを特徴とする請求項1記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。」
「【0009】
本発明は、このような状況下で、加飾成形品に優れた高硬度性および耐スクラッチ性を付与すると同時に、より形状が複雑な成形品を得られる成形性を付与する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物および該活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いた加飾シート、該加飾シートを用いた射出成形品を提供することを課題とする。
【0010】
本発明者等は、前記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、下記の発明により当該課題を解決できることを見出した。すなわち本発明は、多官能化合物と表面に反応性官能基を有さない無機粒子および、表面に反応性官能基を有する反応性無機粒子とを含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、該活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いた加飾シート、これを用いた射出成形品を提供するものであり、射出成形品に優れた高硬度性および耐スクラッチ性を付与することを見出した。」
「【0012】
さらに、本発明の第2の発明は、表面に反応性官能基を有さない無機粒子(B)が、シリカであり、表面に反応性官能基を有する反応性無機粒子(C)が、シリカ表面に(メタ)アクリロイル基を有する反応性シリカであることを特徴とする第1の発明記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関するものである。」
「【0032】
また、表面に反応性官能基を有さない無機粒子(B)の重量が、表面に反応性官能基を有する反応性無機粒子(C)の重量に対して、60?200重量%であることが好ましく、該範囲内であれば、硬化収縮を抑制することによる優れた密着性を得ることができ、かつ、優れた高硬度性および耐擦傷性とのバランスが得られる。」
「【0034】
本発明の加飾シートとしては、基材の片面に少なくとも離型層とハードコート層形成層とを順に有しており、該ハードコート層形成層が本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いてなるものである。以下、本発明の加飾シートを、図1および図2を参照しながら説明する。図1は、本発明の加飾シートの好ましい一態様についての断面を示す模式図である。」
「【0040】
(ハードコート層)
ハードコート層13は、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いてなる層であり、加飾成形品の最外層となり、磨耗や光、薬品などから成形品や絵柄層を保護するための層である。よって、ハードコート層13は、硬化することで、優れた高硬度性と耐スクラッチ性と成形性はもちろんのこと、耐薬品性や耐汚染性などの表面物性に優れるという性能を有する層であることを要し、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用い
ることで、ハードコート層13に該性能を付与することを可能としている。」

(3)甲3(特開2010-285501号公報)
甲3には、以下の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、光硬化可能なパーフルオロポリエーテル基を有するアクリレート化合物に関し、詳細には環状シロキサン構造を備え、非フッ素系溶媒との相溶性に優れるパーフルオロポリエーテル基を有するアクリレート化合物(以下、「含フッ素アクリレート」という)に関する。」
「【0045】
得られる本発明の化合物は、非フッ素系のハードコート組成物に添加し、ハードコート層表面に防汚性、耐指紋性、撥水性、撥油性を付与するハードコート組成物を提供することができる。・・・
【0046】
非フッ素系のハードコート組成物としては、本発明の化合物と混合、硬化可能であれば、いかなるものであっても使用することができるが、主剤がウレタンアクリレートであるものが好適である。該ウレタンアクリレートとしては、ポリイソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得られるもの、ポリイソシアネートと末端ジオールのポリエステルに水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得られるもの、・・・を含むものが好ましい。
【0047】
また他のハードコート組成物としては、主剤が、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、・・・ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、・・・を含むものが挙げられる。」

(4)甲4(特開2005-111756号公報)
甲4には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
基材上に少なくとも1層のハードコート層を有するハードコート処理物品であって、基材から最も離れた最表層にあるハードコート層が、ケイ素含有率が23?32質量%である活性エネルギー線硬化型シリコーン樹脂を含む硬化性組成物を塗布、硬化して形成した硬化皮膜からなり、前記シリコーン樹脂の塗布量が0.4?45mg/m^(2)であることを特徴とするハードコート処理物品。」
「【0005】
本発明の目的は、表面硬度が高くかつ耐擦傷性に優れ、防汚性が持続するハードコート処理物品を提供することにある。また、本発明の目的は、表面硬度が高くかつ耐擦傷性に優れ、防汚性が持続する防汚性ハードコート層を得ることのできる硬化性組成物を提供することを目的とする。
さらに、本発明の他の目的は、耐擦傷性や防汚性を有し、記録読み取り特性の持続性の良い光情報記録担体を提供することにある。」
「【0017】
本発明のハードコート処理物品は、基材から最も離れた最表層に、ケイ素含有率が23?32質量%である活性エネルギー線硬化型シリコーン樹脂を含む硬化性組成物から形成された硬化皮膜からなるハードコート層を有する。本発明者らにより、上記特定のケイ素含有率の活性エネルギー線硬化型シリコーン樹脂を用いることにより、シリコーン含有樹脂以外の硬化型樹脂との親和性が高まり、ハードコート層の防汚性が持続することが見出された。
【0018】
防汚性の観点からハードコート層表面の水に対する接触角を90度以上、あるいは97度以上とすることが好ましい。従来、ハードコート層表面の水に対する接触角を上記範囲とするために、ハードコート層を形成するための硬化性組成物にフッ素原子および/またはケイ素原子を含有させることが行われていた。・・・」
「【0107】
・・・本発明においては、ハードコート層が複数層ある場合、基材から最も離れた最表層のハードコート層に、防汚剤として前述した特定のケイ素含有率の活性エネルギー線硬化型シリコーン樹脂を用いる。・・・」

(5)甲5(特開2006-328364号公報)
甲5には、以下の事項が記載されている。
「【0010】
本発明が解決しようとする課題は、紫外線などの活性エネルギー線の照射により硬化した際、硬化収縮が小さく、かつ高い硬度、高い耐擦傷性の硬化被膜を得ることができる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、その硬化被膜からなる保護層を有する物品、及び該樹脂組成物の硬化物からなる成形体を提供することである。」
「【0039】
また、前記ラジカル重合性単量体類(C)の中でも、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートは、硬度を高める効果があるため好ましい。このような多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を併用しても良い。」
「【0050】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化被膜は、発生する硬化収縮が小さく、かつ高い硬度、高い耐擦傷性を有するため、硬化収縮に起因する影響を物品に与えることなく保護できる。このため、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化被膜は各種物品の保護層を形成するハードコート材として有用である。・・・」

(6)甲6(特開2013-216732号公報)
甲6には、以下の事項が記載されている。
「【0080】
本発明のハードコート組成物を、上記物品の外面に塗布し、紫外線硬化することによってハードコート塗膜(硬化膜)が形成される。
塗布方法としては、スピンコート、ディップ塗工、刷毛塗り等が例示される。
なお、紫外線硬化条件としては、波長100?400nm、好ましくは200?400nm程度の紫外線を、照射量200?2,000mJ/cm^(2)、好ましくは400?1,600mJ/cm^(2)程度照射することによって硬化することができる。
【0081】
なお、ハードコート硬化膜の厚さは、通常、0.1?30μm、好ましくは1?10μm程度であればよい。」
「【0096】



5.判断
理由1(29条)
(1)本件発明1について
本件発明1と甲1発明を対比すると、甲1発明の「第1ハードコート層」は、本件発明1の「第一のハードコート層(A)」に相当する。
甲1発明の「第二のハードコート層」は、本件発明1の「第2ハードコート層(B)」に相当する。
甲1発明の「厚さ80μmのフィルム基材」は、本件発明1の「厚さ50μm?130μmの透明基材透明基材」に相当する。
甲1発明の「粒子」は、本件発明の「フィラー」に相当する。
甲1発明の「活性エネルギー線硬化性化合物」は、本件発明1の「活性エネルギー線硬化性化合物(b1)」に相当する。
そうすると、両者は、少なくとも、以下の相違点1及び相違点2で相違する。

<相違点1>第一のハードコート層(A)のフィラーが、本件発明1では、反応性シリカ及び非反応性シリカを含むのに対し、甲1発明の粒子が、そのようなものを含むのかどうか不明である点。
<相違点2>第二のハードコート層(B)の活性エネルギー線硬化性化合物(b1)が、本件発明1では、フッ素原子及びケイ素原子を有するのに対し、甲1発明の活性エネルギー線硬化性化合物は、フッ素原子を有するものであるが、ケイ素原子を有するかどうか不明である点。

相違点1について検討する。
甲1の【0048】には、「また、第1ハードコート層形成溶塗液に粒子を含ませることによりハードコート層表面に凹凸を形成し、ハードコート層に防眩機能を付与してもよい。」と記載されており、それによれば、甲1発明の第1ハードコート層に粒子を含ませるのは、「ハードコート層表面に凹凸を形成し、ハードコート層に防眩機能を付与」するためである。
一方、甲2には、「分子中にビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基及びエポキシ基から選ばれる少なくとも一種を有する多官能化合物(A)と、表面に反応性官能基を有さない無機粒子(B)と、表面に反応性官能基を有する反応性無機粒子(C)とを含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。」(甲2【請求項1】)が記載されており、「表面に反応性官能基を有さない無機粒子(B)が、シリカであり、表面に反応性官能基を有する反応性無機粒子(C)が、表面に(メタ)アクリロイル基を有する反応性シリカであること」(甲2【請求項2】)も記載されている。甲2記載事項は、そのような構成を採用したことにより、「加飾成形品に優れた高硬度性および耐スクラッチ性を付与すると同時に、より形状が複雑な成形品を得られる成形性を付与する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物および該活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いた加飾シート、該加飾シートを用いた射出成形品を提供すること」(甲2【0009】)との課題を解決しようとするものである。しかしながら、甲2には、表面に反応性官能基を有さないシリカと、表面に反応性官能基を有する反応性シリカを含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が、加飾成形品に優れた高硬度性、耐スクラッチ性及び成形性を付与することが記載されているのみで、防眩機能の付与については、一切記載されていない。
そうすると、甲1に接した当業者が、防眩機能の付与のために、甲1発明の粒子を、課題の全く異なる、高硬度性、耐スクラッチ性及び成形性を付与する甲2事項の「表面に反応性官能基を有さないシリカ」と、「表面に反応性官能基を有する反応性シリカ」とを含有するものとすることの動機付けがない。
さらに、甲2の【0040】の「ハードコート層13は、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いてなる層であり、加飾成形品の最外層となり、磨耗や光、薬品などから成形品や絵柄層を保護するための層である。」との記載によれば、甲2事項の、表面に反応性官能基を有さないシリカと、表面に反応性官能基を有する反応性シリカを含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いて形成するハードコート層は、加飾シートの最外層を形成するハードコート層でなければならない。そうすると、甲1発明のフィルム基材と最外層のハードコート層(第2ハードコート層)に挟まれた中間に位置する第1ハードコート層として、上記甲2事項の該活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いて形成するものとすることの動機付けがない。
また、相違点1に係る構成である「反応性シリカ及び非反応性シリカを含むフィラーを含有する第一のハードコート層(A)」は、他の証拠(甲3?甲6)には、記載も示唆もない。
したがって、相違点1に係る発明特定事項は、当業者が容易に想到し得た事項とはいえない。

以上のとおりであるから、相違点2を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2事項?甲4事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2?7について
本件発明2?7は、本件発明1の特定事項の全てを含み、さらに限定したものであるから、本件発明2?7は、甲1発明とは、上記相違点1において相違する。
そして、上記「5.(1)」に示したとおり、本件発明1は、甲1発明及び甲2事項?甲4事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、さらに、甲5、甲6にも、相違点1に係る構成である「反応性シリカ及び非反応性シリカを含むフィラーを含有する第一のハードコート層(A)」は、記載も示唆もないから、本件発明2?7も、甲1発明及び甲2事項?甲6事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

6.むすび
以上のとおりであるから、本件特許異議申立ての全ての理由を含む、上記取消理由によっては、本件発明1?7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-07-19 
出願番号 特願2015-539313(P2015-539313)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B32B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 岸 進  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 蓮井 雅之
小野田 達志
登録日 2016-05-27 
登録番号 特許第5939449号(P5939449)
権利者 DIC株式会社
発明の名称 ハードコートフィルム及び情報表示装置  
代理人 河野 通洋  
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