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審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  E01F
審判 一部申し立て 2項進歩性  E01F
管理番号 1331225
異議申立番号 異議2017-700389  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-04-19 
確定日 2017-08-04 
異議申立件数
事件の表示 特許第6021545号発明「プラットホームドア固定構造及びプラットホームドア固定方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6021545号の請求項1ないし4、9、10に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6021545号の請求項1ないし4、9、10に係る特許についての出願は、平成24年9月21日に特許出願され、平成28年10月14日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人松波敏明(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

2 本件発明
特許第6021545号の請求項1ないし4、9、10の特許に係る発明(以下「本件特許発明1」等という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし4、9、10に記載された事項により特定されるとおりのものである。

3 申立理由の概要
申立人は、本件特許発明1、2、9は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号違反に該当し、また、本件特許発明1、2、9は、当業者が、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基いて、容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明3、4、10は、当業者が、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証に記載された発明に基いて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項違反に該当するから、取り消すべきものである旨、主張している。

甲第1号証:立花信夫他、盛土式ホームにおける可動式ホーム柵基礎の施工方法、平成23年9月7日開催の土木学会第66回年次学術講演会(平成23年度)資料、155-156頁
甲第2号証:立花信雄他、可動式ホーム柵新設のための盛土式ホーム部改良方法の検討について、平成22年3月13日開催の第37回土木学会関東支部技術研究発表会資料
甲第3号証:特開2008-57113号公報
甲第4号証:特開2008-150935号公報

4 刊行物の記載事項
(1)甲第1号証において、(図-1)を参照すると、鋼管杭の長さが4.0mであって、鋼管杭の先端は、盛土内部を超えて、盛土の線路側に設けられたブロックの下端よりも、相当深いところに位置すること、及びPC版は盛土上面に設置されていることが看取できる。
また、鋼管杭の機能からみて、鋼管杭とPC版は接続されていることは自明である。
よって、甲第1号証には、
「盛土式ホームの盛土上面に設置され、一側に可動式ホーム柵が載置されるPC版と、
前記PC版の前記一側とは反対側の前記PC版の他側において、前記盛土内部を超えて、盛土の線路側に設けられたブロックの下端よりも、相当深いところまで貫入されて前記PC版と接続される、長さ4.0mの回転圧入鋼管杭と、を備えることにより、
支持杭打設時に、建柱車によるオーガー掘削による排土処理や、先端根固め用のモルタルプラントが不要となる、盛土式ホームにおける可動式ホーム柵基礎の構造。」の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。

(2)甲第2号証において、図3を参照すると、杭の先端は、盛土内部を超えて、既設の石積みの下端よりも、相当深いところに位置すること、及びPC板は盛土上面に設置されていることが看取できる。
また、杭の機能からみて、杭とPC板は接続されていることは自明である。
よって、甲第2号証には、
「盛土式ホームの盛土上面に設置され、一側に可動式ホーム柵が載置されるPC板と、
前記PC板の前記一側とは反対側の前記PC板の他側において、前記盛土内部を超えて、既設の石積みの下端よりも、相当深いところまで貫入されて前記PC板と接続されるEAZET杭工法により打設された既成杭と、を備えることにより、
排土が無く、根固めモルタル等のプラント設備が不要となる、可動式ホーム柵新設のための盛り土式ホーム部改良構造。」の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。

(3)甲第3号証には、「・・・下部定着長部11の周壁には第2のピッチ(図では600mm)で逆止弁機構付きグラウト材吐出孔11cが形成され、・・・」(段落【0007】)、「定着長部全体をグラウトすることによって、周面摩擦力を増大させて支持力をアップするもので、これによって地盤の支持層に到達しない短い杭でも支持力をアップすることができる。」(段落【0009】)、と記載されている。

(4)甲第4号証(段落【0047】、【0048】及び【図12】)には、盛土構造構成用の擁壁ブロックにおいて、垂直壁部13のカウンターウエイトとして機能し得る連結部材69を設けることが記載されている。

5 判断
(1)本件特許発明1について
ア 対比・判断
本件特許発明1と、甲1発明又は甲2発明を対比すると、少なくとも、支持部に関し、本件特許発明1は、前記盛土内部へ貫入されて前記板状部材と接続される棒状部材と、貫入された前記棒状部材の周囲に注入されるグラウトとを有し、前記盛土に対して前記板状部材を固定する支持部であるのに対し、甲1発明又は甲2発明は、盛土内部からさらに下方へ貫入されて前記PC版又はPC板と接続される回転圧入鋼管杭又は既成杭であって、周囲にグラウトを注入していない点(以下「相違点1」という。)で相違している。
そして、上記相違点1に係る構成は、甲第3号証にも記載されておらず、自明な事項とも認められない。

イ 申立人の主張について
申立人は、本件特許発明1は、甲第1号証ないし甲第2号証に開示されている、又は周囲にモルタルを注入することは、甲第3号証に記載されている、と主張する。
しかしながら、甲1発明は、建柱車によるオーガー掘削により打設された杭が備える根固めモルタルを不要としたものであり、また、甲2発明は、根固めコンクリートを不要としたものであるから、甲1発明又は甲2発明において、各杭にモルタルを注入する動機付けはない。
また、甲1発明の回転圧入鋼管杭及び甲2発明の既成杭は、前記盛土内部からさらに下方へ貫入され、甲1発明では4m、甲2発明でも甲第2号証に「杭長4.0mまでは、・・・」(2頁20行)と記載されていることからすると、盛土の高さと比較して相当長いものであるから、両杭は、盛土の下方の、例えば地盤等まで貫入し、杭の先端で大きな支持力を得ていると解される。
よって、仮に、甲第3号証に、杭の周囲にモルタルを注入することが記載されていたとしても、甲1発明の回転圧入鋼管杭又は甲2発明の既成杭の周囲に、グラウトを注入することは、上記の理由により、当業者が採用するとは認められない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明ではなく、当業者が甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1をさらに減縮したものであるから、上記(1)の判断と同様に理由により、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明ではなく、当業者が甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件特許発明3について
ア 対比・判断
本件特許発明3と、甲1発明又は甲2発明を対比すると、少なくとも、本件特許発明3は、前記板状部材の前記一側とは反対側の前記板状部材の他側において、前記盛土内部に設置されて前記板状部材と接続され、前記盛土に対して前記板状部材を固定するブロック部材を備えるのに対し、甲1発明又は甲2発明は、そのような位置にブロック部材を備えていない点(以下「相違点2」という。)で相違している。
そして、上記相違点2に係る構成は、甲第4号証に記載されておらず、自明な事項とも認められない。

イ 申立人の主張について
申立人は、甲第4号証に記載された連結部材69が、上記相違点2に係るブロック部材に相当する、と主張する。
しかしながら、甲第4号証に記載された連結部材69は、盛土構造に用いる擁壁ブロックにカウンターウエイトとして設けたものであるから、広くみて盛土の技術分野で共通するからといって、当該連結部材69を甲1発明又は甲2発明に適用する動機付けはない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、本件特許発明3は、当業者が甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件特許発明4について
本件特許発明4は、本件特許発明3をさらに減縮したものであるから、上記(3)の判断と同様に理由により、当業者が甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。

(5)本件特許発明9について
本件特許発明9と、甲1発明又は甲2発明を対比すると、少なくとも、本件特許発明9は、前記盛土内部へ棒状部材を貫入するステップと、貫入された前記棒状部材の周囲にグラウトを注入するステップ、を含むのに対し、
甲1発明又は甲2発明は、回転圧入鋼管杭又は既成杭を前記盛土内部からさらに下方へ貫入しており、周囲にグラウトを注入していない点(以下「相違点3」という。)で相違している。
そして、上記相違点3に係る構成は、甲第3号証に記載されておらず、自明な事項とも認められない。
よって、本件特許発明9は、甲第1号証または甲第2号証に記載された発明ではなく、当業者が甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。

(6)本件特許発明10について
本件特許発明10と、甲1発明又は甲2発明を対比すると、少なくとも、本件特許発明10は、板状部材の一側に相当する位置にブロック部材を設置するステップと、前記ブロック部材の上面にコンクリート製の板状部材を設置するステップと、前記ブロック部材を前記板状部材と接続するステップ、を含むのに対し、甲1発明又は甲2発明は、板状部材の一側に相当する位置にブロック部材を備えておらず、よって、そのようなブロック部材に関するステップを含んでいない点(以下「相違点4」という。)で相違している。
そして、上記相違点4に係る構成は、甲第4号証にも記載されておらず、自明な事項とも認められない。
よって、本件特許発明10は、当業者が甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。

6 むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし4、9、10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし4、9、10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-07-24 
出願番号 特願2012-208483(P2012-208483)
審決分類 P 1 652・ 121- Y (E01F)
P 1 652・ 113- Y (E01F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 石川 信也  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 前川 慎喜
住田 秀弘
登録日 2016-10-14 
登録番号 特許第6021545号(P6021545)
権利者 株式会社フジタ 三菱重工交通機器エンジニアリング株式会社
発明の名称 プラットホームドア固定構造及びプラットホームドア固定方法  
代理人 藤田 考晴  
代理人 上田 邦生  

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