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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H01M |
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管理番号 | 1331227 |
異議申立番号 | 異議2017-700518 |
総通号数 | 213 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-09-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-05-26 |
確定日 | 2017-08-07 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6036880号発明「リチウムイオン電池用外装材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6036880号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6036880号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?9に係る特許についての出願は、平成23年3月23日に出願された特願2011-64267号の一部が平成27年3月5日に新たに特許出願されたものであって、平成28年11月11日にその特許権の設定登録がなされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人成田隆臣により特許異議の申立てがなされたものである。 第2 本件発明 特許第6036880号の請求項1?9に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」?「本件特許発明9」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 基材層の一方の面に、少なくとも金属箔層、腐食防止処理層、接着樹脂層、シーラント層が順次積層されたリチウムイオン電池用外装材において、 前記基材層が複数の二軸延伸フィルムが積層された積層フィルムからなり、 前記積層フィルムにおいて上下に隣接する互いの二軸延伸フィルムは、ドライラミネート用の接着剤を介して積層され、 前記ドライラミネート用の接着剤が、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール及びアクリルポリオールから選ばれる主剤に、硬化剤として芳香族系又は脂肪族系イソシアネートを作用させる2液硬化型のポリウレタン系接着剤であり、 前記二軸延伸フィルムは、0度方向と90度方向に二軸延伸され、 前記積層フィルムにおける隣接する二軸延伸フィルムが下記条件(1)を満たすことを特徴とするリチウムイオン電池用外装材。 (1)一方の二軸延伸フィルムの延伸方向に対する45度方向と135度方向のうち引張強度が大きい方向と、他方の二軸延伸フィルムの延伸方向に対する45度方向と135度方向のうち引張強度が小さい方向が揃うように積層されている。 【請求項2】 前記基材層が、二軸延伸ポリエステルフィルムと二軸延伸ポリアミドフィルムが積層された積層フィルムである請求項1に記載のリチウムイオン電池用外装材。 【請求項3】 前記基材層の最外層が二軸延伸ポリエステルフィルムである請求項1又は2に記載のリチウムイオン電池用外装材。 【請求項4】 前記基材層の厚さが6?40μmである請求項1?3のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用外装材。 【請求項5】 前記金属箔層と基材層の間に成型性を向上させる成型向上層が設けられている請求項1?4のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用外装材。 【請求項6】 前記金属箔層が、焼鈍処理を施した軟質アルミニウム箔からなる層である請求項1?5のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用外装材。 【請求項7】 前記腐食防止処理層が、平均粒径100nm以下の希土類元素系酸化物のゾルを用いる方法により形成された層である請求項1?6のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用外装材。 【請求項8】 前記腐食防止処理層が塗布型クロメート処理により形成された層である請求項1?6のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用外装材。 【請求項9】 前記接着樹脂層が無水マレイン酸変性ポリプロピレンを含有し、前記シーラント層がポリプロピレンフィルムからなる請求項1?8のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用外装材。」 第3 申立理由の概要 特許異議申立人成田隆臣は、主たる証拠として以下の甲第1号証を提出するとともに、従たる証拠として以下の甲第2号証?甲第7号証を提出した。以下において、甲第1号証?甲第7号証を、それぞれ、「甲1」?「甲7」という。 甲第1号証:特開2002-56824号公報 甲第2号証:特開2004-178952号公報 甲第3号証:特開2004-74419号公報 甲第4号証:特開平8-175552号公報 甲第5号証:特開昭59-109362号公報 甲第6号証:特開2002-187233号公報 甲第7号証:特開2008-77930号公報 そして、本件特許発明1?4、8、9は、甲1?甲5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明5、6は、甲1?甲6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明7は、甲1?甲7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるとして、本件特許の請求項1?9に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。 第4 甲1?甲7に開示された事項 1 甲1について (1) 甲1には、以下の事項が記載されている。(当審注:下線は当審で付与した。「・・・」により記載の省略を示す。丸数字は「○1」等により表す。以下同様である。) 「【特許請求の範囲】 【請求項1】電池の外装材に用いられる積層フィルムであって、該積層フィルムが、少なくとも外側から、2軸延伸ポリエステルフィルム層、2軸延伸ナイロンフィルム層、金属箔層、熱接着性樹脂層が順に積層された積層体で形成されていることを特徴とする電池用積層フィルム。 【請求項2】前記金属箔層が、アルミニウム箔であって、且つ、少なくともその内側の面がクロメート処理されていることを特徴とする請求項1記載の電池用積層フィルム。 【請求項3】前記2軸延伸ポリエステルフィルム層の厚さが6?12μmであって、該2軸延伸ポリエステルフィルム層の外側の面が、シリコーン処理により、動摩擦係数0.3以下に維持されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電池用積層フィルム。 【請求項4】内部に電池の構成材料を収納し、電池を形成するために用いる電池用容器であって、該容器が、前記請求項1乃至3のいずれかに記載の電池用積層フィルムで形成されていることを特徴とする電池用容器。 【請求項5】前記容器が、プレス成形により形成されたフランジ付きトレー状容器に蓋材を重ねて、そのフランジ部で熱接着する形式、または、前記フランジ付きトレー状容器を、その内面同士が対向するように上下に重ねてフランジ部で熱接着する形式のいずれかであることを特徴とする請求項4に記載の電池用容器。」 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、電池の外装材に使用する積層フィルム、およびそれを用いた電池用容器に関し、更に詳しくは、薄型化と軽量化に対するニーズの大きいリチウムポリマー電池などの外装材にも好適に使用できるよう、薄くて軽く、高度の水蒸気その他のバリヤー性を有し、また、電解液や酸などに対する耐性、ヒートシール時などの熱に対する耐熱性に優れると共に、トレー状容器などへの成形性も備えた電池用積層フィルム、およびそれを用いてなる電池用容器に関する。」 「【0026】そして、金属箔層は、積層フィルムに高度の水蒸気その他のバリヤー性を付与するために設けるものであり、この金属箔層には、先に説明したように、アルミニウム箔を好適に使用することができる。そして、少なくともその内側の面(熱接着性樹脂層が積層される側の面)には、前記フッ化水素などに対する耐性、即ち、防食性を向上させるために、化成処理、具体的には前述のクロメート処理を施すことが好ましい。このクロメート処理はアルミニウム箔の両面に施すことが更に好ましい。上記クロメート処理を施した場合、アルミニウム箔の防食性が向上されるだけでなく、2軸延伸ナイロンフィルムや熱接着性樹脂層をラミネートした時、その耐熱接着強度も強くすることができる。」 「【0027】尚、2軸延伸ポリエステルフィルム層と2軸延伸ナイロンフィルム層とのラミネート、および2軸延伸ナイロンフィルム層と金属箔層とのラミネートは、公知のドライラミネーション法により、ポリウレタン系などの2液硬化型接着剤を用いて容易に行うことができる。上記各層の積層面には、必要に応じて、コロナ放電処理、オゾン処理などの易接着性処理を施して接着性を向上させることができる。」 「【0028】そして、積層フィルムの最内層となる熱接着性樹脂層は、熱接着性のほか、耐内容物性、即ち、電解質を含む電解液に対する耐性や、積層フィルムをトレー状容器に成形して用いる場合は、その成形性なども必要である。このような熱接着性樹脂層には、各種のポリオレフィン系樹脂を使用することができるが、なかでも直鎖状低密度ポリエチレン(L・LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、ポリプロピレン、酸変性ポリプロピレンなどを好適に使用することができる。これらは単独で用いてもよく、ブレンドして用いることもできる。また、二種以上の層を積層し、多層化して用いることもできる。 【0029】上記酸変性ポリプロピレンとしては、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸、または、その無水物でグラフト重合変性したポリプロピレン、或いは、前記酸成分が共重合されたポリオレフィン樹脂をブレンドしたポリプロピレンなどを使用することができる。これらは単独で用いてもよく、また、二種以上をブレンドして用いてもよい。酸変性ポリプロピレンは、自己同士の熱接着性のほか、金属に対する熱接着性にも優れているので、例えば、電池用容器の内部から外側に延長して設けられる電極端子の表面が裸の金属の場合でも、容器のフランジ部など端縁部において、それと良好に熱接着し密封することができる。 【0030】このような熱接着性樹脂層を金属箔層の内側の面に積層する方法は、 ○1予めフィルム状に製膜された熱接着性樹脂層のフィルムを、2液硬化型のドライラミネート用接着剤を用いて、ドライラミネーション法で積層する方法。 ○2予めフィルム状に製膜された熱接着性樹脂層のフィルムを、熱ラミネーション法と呼ばれる方法で、加熱加圧のみで積層する方法、但し、この場合、金属箔層の積層面に、一種のプライマーコートとして、酸変性ポリプロピレンなどの塗膜層を形成しておくことが好ましい。 ○3予めフィルム状に製膜された熱接着性樹脂層のフィルムを、押し出しラミネーション法(通称、サンドイッチラミネーション法)で、金属箔層と熱接着性樹脂層のフィルムとの間に、酸変性ポリプロピレン、L・LDPEなどの熱接着性樹脂を膜状に押し出して、両側から加圧し、密着させて積層する方法。この場合、必要に応じて、金属箔の積層面に、プライマーコートを施し、或いは、オゾン処理を施しながら積層することにより接着性を向上させることができる。 ○4金属箔層の積層面に、○2と同様、一種のプライマーコートとして、酸変性ポリプロピレンなどの塗膜層を形成しておいて、その上に直接、熱接着性樹脂層の樹脂を押し出しコートする方法、または、○3のように、金属箔層の積層面にオゾン処理を施しながら、その上に直接、熱接着性樹脂層の樹脂を押し出しコートする方法などがあり、積層フィルムの使用条件などに応じて、適する方法を適宜選択して使用することができる。」 「【0032】 【実施例】 ・・・ 【0034】上記の構成において、2軸延伸ポリエステルフィルム層1は、先に説明したように、その下層の2軸延伸ナイロンフィルム層2の弱点である電解液に対する耐性およびヒートシール時の熱に対する耐熱性をカバーするために設けたものであり、そのためには、先に説明したように、厚さが6?12μmであることが好ましい。そして、2軸延伸ナイロンフィルム層2の厚さは、積層フィルム50を、四方シール形式などの袋状の電池用容器に加工して用いる場合は、15μm程度の厚さでもよいが、例えば、深さが3?5mm程度のフランジ付きトレー状容器に成形して用いる場合は、25μm程度の厚さが好ましい。 ・・・ 【0036】上記2軸延伸ポリエステルフィルム層1と2軸延伸ナイロンフィルム層2との積層、および2軸延伸ナイロンフィルム層2と金属箔層3との積層は、公知のドライラミネーション法により、ポリウレタン系などの2液硬化型接着剤を用いて行うことが、接着性能に優れる点で好ましい。また、金属箔層3の内側の面に、熱接着性樹脂層4を積層する方法に関しては、先に○1ドライラミネーション法、○2熱ラミネーション法、○3押し出しラミネーション法、○4押し出しコート法の4種類の方法を詳しく説明しており、積層フィルム50をどのような種類の電池の容器として使用するかにより、適宜選択して使用することができる。特に、リチウムポリマー電池の容器として、積層フィルム50を使用する場合は、前記フッ化水素に対する耐性の問題があるため、その耐性に優れた○2の熱ラミネーション法を採ることが好ましい。」 「【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の電池用積層フィルムの一実施例の構成を示す模式断面図である。 【図2】本発明の電池用積層フィルムを用いて作製される電池用容器の第1の実施例の構成を示す模式平面図である。 【図3】本発明の電池用積層フィルムを用いて作製される電池用容器の第2の実施例の構成を示す模式断面図である。 【図4】本発明の電池用積層フィルムを用いて作製される電池用容器の第3の実施例の構成を示す模式断面図である。 【図5】本発明の電池用容器を用いて作製される電池の一例の構成を示す斜視図である。 【符号の説明】 1 2軸延伸ポリエステルフィルム層 2 2軸延伸ナイロンフィルム層 3 金属箔層 4 熱接着性樹脂層 5 フランジ付きトレー状容器 6 フランジ部 7 蓋材 8 熱接着部 9 開口部 10a 、10b 電極端子 50 電池用積層フィルム 100、200、300 電池用容器 500 電池」 「【図1】 」 「【図3】 」 (2) 上記(1)に摘示した各記載によれば、甲1には、以下の技術的事項が開示されている。 ア 甲1の請求項1及び図1によると、電池の外装材に用いられる積層フィルムであって、2軸延伸ポリエステルフィルム層、2軸延伸ナイロンフィルム層、金属箔層、熱接着性樹脂層が順に積層された積層フィルムが把握できる。 イ 甲1の段落【0001】によると、前記アに指摘した前記積層フィルムは、リチウムポリマー電池の外装材に好適に使用できる。 ウ 甲1の請求項2及び段落【0026】によると、前記アに指摘した前記積層フィルムにおいて、前記金属箔層の表面であって前記熱接着性樹脂層の側には、防食性を向上させるためのクロメート処理が施される。 ここで、前記クロメート処理により、前記金属箔層の表面には層が形成されることになるものと認められるから、前記金属箔層の表面には、防食性を向上させるためのクロメート処理層が形成されているということができる。 エ 甲1の段落【0027】によると、前記アに指摘した前記積層フィルムにおいて、前記2軸延伸ポリエステルフィルム層と前記2軸延伸ナイロンフィルム層とのラミネートは、公知のドライラミネーション法により、ポリウレタン系の2液硬化型接着剤を用いて行われる。 オ 甲1の段落【0030】によると、前記アに指摘した前記積層フィルムにおいて、前記熱接着性樹脂層と前記金属箔層とが熱ラミネーション法で積層される場合は、前記金属箔層の積層面に、プライマーコートとして酸変性ポリプロピレンの塗膜層が形成される。 そして、上記ウに指摘したとおり、前記金属箔層の表面であって前記熱接着性樹脂層の側にクロメート処理が施された場合は、前記クロメート処理層上に前記プライマーコートが配置されることとなる。 カ 甲1の段落【0028】によると、前記アに指摘した前記積層フィルムにおいて、前記熱接着性樹脂層は、当該積層フィルムの最内層となるものである。 (3) 上記(2)を踏まえれば、甲1には、以下の発明(「甲1発明」という)が記載されていると認められる。 「リチウムポリマー電池の外装材に用いられる積層フィルムであって、2軸延伸ポリエステルフィルム層、2軸延伸ナイロンフィルム層、金属箔層、防食性を向上させるためのクロメート処理層、プライマーコートとしての酸変性ポリプロピレンの塗膜層、積層フィルムの最内層としての熱接着性樹脂層が順に積層されており、 前記2軸延伸ポリエステルフィルム層と前記2軸延伸ナイロンフィルム層とのラミネートは、公知のドライラミネーション法により、ポリウレタン系の2液硬化型接着剤を用いて行われる。」 2 甲2には、以下の事項が記載されている。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 少なくとも、最外層/アンカーコート層(1)/サンド樹脂層/アンカーコート層(2)/アルミ箔層/アンカーコート層(2)/シーラント層の構成からなるリチウム電池用包材の製造方法において、両面に熱水変性処理を施しアルミ箔層のその一方の面にアンカーコート層(2)を設けたアルミ箔層と、最外層のその一方の面にアンカーコート層(1)を設けた最外層とを、アルミ箔層のアンカーコート層(2)面と最外層のアンカーコート層(1)面の間に押出ラミネート法によるサンド樹脂層を形成によりサンドイッチラミネートした後、該ラミネート体のその一方の熱水変性処理したアルミ箔層面にアンカーコート層(2)を設けた前記ラミネート体と、シーラント層とを押出ラミネート法により積層することを特徴とするリチウム電池用包材の製造方法。」 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、リチウム電池に用いることが可能な包材の製造方法に関し、詳細には、リチウム電池の電解液を包材中に入れて保存してもアルミ箔層とシーラント層間のラミネート強度が低下せず、深絞り成形を行っても最外層とアルミ箔層の剥離がみられないリチウム電池用包材の製造方法に関する。」 「【0016】 本発明のリチウム電池用包材のアンカーコート層(1)41としては、通常汎用的に用いられている2液硬化型ウレタン系接着剤が使用でき、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオールなどのジオール成分に、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートなど各種ジイソシアネート系モノマー、あるいは、これらのジイソシアネートモノマーを、トリメチロールプロパンやグリセロールなどの3官能の活性水素含有化合物と反応させたアダクトタイプや、水と反応させたビューレットタイプや、イソシアネート基の自己重合を利用したトリマー(イソシアヌレート)タイプなど3官能性の誘導体やそれ以上の多官能性の誘導体を作用させて得られる接着剤が使用できる。」 3 甲3には、以下の事項が記載されている。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 外層、アルミニウム箔、内層からなると共に前記アルミニウム箔の前記内層側の面に少なくとも化成処理層を設けた積層体において、前記内層の前記化成処理層面と当接する樹脂層が酸変性オレフィン樹脂からなると共に前記化成処理層面と前記酸変性オレフィン樹脂の単層フィルムないし前記酸変性オレフィン樹脂と1以上のオレフィン樹脂との共押出しフィルムをサーマルラミネーション法で貼合したことを特徴とする積層体。」 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、二次電池、特に電解質(液体や固体電解質)を有するリチウム電池の外装体として使用される密封性、防湿性、耐内容物性に優れた積層体及びその製造方法に関するものである。」 「【0025】 また、前記アルミニウム箔30は冷間圧延で製造されるが、焼きなまし(いわゆる焼鈍処理)条件でその柔軟性、腰の強さ、硬さが変化するが、本発明に用いるアルミニウム箔は焼きなましをしていない硬質処理品よりも多少ないし完全に焼きなまし処理をした軟質傾向にあるアルミニウム箔がよい。また、柔軟性、腰の強さ、硬さを決めるアルミニウム箔の焼きなまし条件は、包装体(袋タイプやエンボスタイプ)のタイプにより適宜決めればよいものである。」 「【0031】 また、前記接着層40としては、ポリオール成分とイソシアネート成分からなる2液硬化型ポリウレタン系接着剤を用いて周知のドライラミネーション法で形成すればよい。前記ポリオール成分としては、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオール等を挙げることができ、イソシアネート成分としては、TDI、MDI、HDI、PIDI、XDI等のジイソシアネートおよびこれらを出発原料とする変性体を挙げることができ、その厚さとしては2?5μm、好ましくは3?4μmである。」 4 甲4には、以下の事項が記載されている。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】二軸延伸合成樹脂フィルム2枚をそれぞれの配向軸が互いに反対方向になるように積層し、且つその片面に熱接着材層を積層した積層体を、熱接着材層が内側になるように折り畳み、所要縁部を熱接着してなる引き裂き性の良い包装袋。」 「【0002】 【従来の技術】ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレンなどの二軸延伸した合成樹脂フィルムを用いて包装袋を製造することは従来から行なわれている。二軸延伸フィルムは、Tダイスやキャスチング方法によって製膜した一定の幅の長尺の合成樹脂フィルムを、テンター式などによって機械方向(長手方向)及び幅方向に延伸して製造している。この二軸延伸合成樹脂フィルムは、延伸時に幅方向の中央部よりその両端縁部に移行するに従って大なる延伸力が作用する結果、両側縁部は中央部に比し熱収縮率が大きくなるのみならず、任意の点における機械的方向に対する左右各45°の二方向の熱収縮率の差(機械方向に対し45°の方向の熱収縮率と機械方向に対し右45°の方向の熱収縮率の差。以下、単に斜め二方向の熱収縮率の差ともいう。)も中央部より両側縁部に移行するにしたがって大きくなる現象(いわゆる、ボーイング現象)を示す。」 「【0008】本発明で用いる2枚の二軸延伸合成樹脂フィルムは、例えば、図2の二軸延伸合成樹脂フィルム生地6の両側縁部のフィルムである。図2において、向かって左側の縁部は配向軸が機械方向に対し斜め右方向になっており、右側の縁部は配向軸が機械方向に対し斜め左方向になっている。本発明では、この配向軸をもつ2枚の二軸延伸合成樹脂フィルムをそれぞれの配向軸が互いに反対方向になるように積層する。例えば、図2における二軸延伸合成樹脂フィルムの左側縁部分(A)を切取り、また二軸延伸合成樹脂フィルムの右側縁部(B)を切取って、左側縁部分(A)の上に、二軸延伸合成樹脂フィルムの右側縁部(B)を左に移動させた状態で重ね合わせ、接着剤で接着する。図1において、2はこの二軸延伸合成樹脂フィルムの左側縁部(A)であり、また3は二軸延伸合成樹脂フィルムの右側縁部(B)である。4は接着剤である。この2と3とは勿論逆であってもよい。」 「【0009】図3は、上記の切り取った各フィルムの配向軸の方向を実線で模式的に示した平面図である。図4は両フィルムを重ね合わせて接着積層したときの各フィルムの配向軸の方向を実線で模式的に示したものである。二軸延伸合成樹脂フィルム2、3を積層するときの接着剤4としてはイソシアネート系の接着剤が用いられる。この2層の二軸延伸合成樹脂フィルムは該フィルム同士を直接接着剤を介して接着積層するのが好ましいが、この2層の二軸延伸合成樹脂フィルム間に他の積層材料を介在させてもよい。また、上記では二枚のフィルムを切り取って積層したが、例えば、二軸延伸合成樹脂フィルムの左側縁部(A)から一枚の所定の大きさのフィルムを切取り、これを二つ折りして、内側同士を接着剤で接着して積層してもよい。」 「【0012】 【作用】 ・・・ 【0013】本発明の包装袋は、二軸延伸合成樹脂フィルム2枚をそれぞれの配向軸が互いに反対方向になるように積層し、且つ片面に熱接着材層を積層した積層体を、二つ折り或いは三つ折りにし、その所要縁部を熱接着して製袋したものであるから、本発明の包装袋を引き裂き口をつまんで引き裂きときには、配向軸の方向を異にする二軸延伸合成樹脂フィルムの4枚を引き裂くことになり、したがって、引き裂き方向に対する各フィルムの配向軸の影響が緩和され、表側、裏側の二軸延伸合成樹脂フィルムの配向軸の方向性の影響がなくなり、引き裂き口を両手でつまんで引き裂く際に、上述の従来の包装袋を引き裂く場合のように表側の二軸延伸合成樹脂フィルムの配向軸の方向を考えて引き裂き方を決める必要はなく、右側を手前方向に、左側を後方向に引っ張っても、或いは左側を手前方向に、右側を後方向に引っ張っても、常に引き裂き口から直線的に容易に引き裂くことができる。このように、本発明は、配向軸を有する二軸延伸合成樹脂フィルム、例えば二軸延伸フィルム生地の幅方向両側縁部のフィルムを素材に用いた包装袋に有用である。二軸延伸フィルム生地の幅方向中央部付近のフィルムはほぼ均一に配向され、配向歪を有しないので、この幅方向中央部付近フィルムを素材にして包装袋を製造するときは、殊更に本発明の技術を適用しなくても、引き裂き口から直線的に容易に引き裂くことのできる包装袋が得られる。」 「【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の包装袋を構成する積層体の断面図 【図2】二軸延伸合成樹脂フィルムの配向歪みを示す模式図 【図3】本発明の包装袋に用いる二軸延伸合成樹脂フィルムの配向歪みを示した模式図 【図4】本発明の包装袋に用いる二軸延伸合成樹脂フィルムを2枚積層したものの配向歪みを示した模式図 【符号の説明】 1 本発明の包装袋を構成する積層体、2 二軸延伸合成樹脂フィルム、3 二軸延伸合成樹脂フィルム、4 接着剤、 5 熱接着材、6 二軸延伸合成樹脂フィルム生地」 「【図1】 」 「【図2】 」 「【図3】 」 「【図4】 」 5 甲5には、以下の事項が記載されている。 「【特許請求の範囲】 (1)2枚のポリエステルフイルムを積層した複合フイルムにおいて、配向主軸のフイルム幅方向の分布が幅方向の中心線に対して実質的に対称である2枚のポリエステルフイルムを、フイルム端部において配向主軸が互に異る方向となるように貼合せてなる線膨張率が等方性を呈することを特徴とするポリエステルフイルム。 (2)二軸配向した実質的に同質な2枚のポリエステルフイルムを、その製膜時の槻械方向が同一でありかつ走行方向が相互に逆となるように貼合せてなる特許請求の範囲第1項記載のポリエステルフイルム。」 「本発明は複合フイルムに関する。更に詳しくは、フイルムの幅方向において配向主軸の方向が変化しているフイルムを少くとも2枚積層して、配向主軸の方向のずれに基づく異方性効果を相殺せしめ、フイルム製造時に発生したボーイング現象を矯正して、複合フイルムとして光学的異方性が殆どなく、温度膨張率及び湿度膨張率がフイルムの任意の位置において任意の方向で殆ど同一となる均一性フイルムに関するものである。」(第1頁右側欄第7行?第16行) 「二軸延伸フイルムは種々の工業用途に供せられているが、なかでもフレキシブル液晶パネル、写真、製図、磁気デイスク等の用途では縦、横、斜めいずれの方向においても物性、殊に温度膨張率、湿度膨張率又は熱収縮率、がバランスしていることが望まれる。しかるに、通常の逐次二軸延伸法、すなわち縦延伸につづいてテンターにより横延伸を施す方法では、製品フイルムの幅方向の物性を均一にすることは極めて困難であつた。この理由は、ステンター内においてフイルムは両側端部が把持されているから、横延伸および熱固定に伴う縦方向の収縮応力はクリツプ等によつて拘束されているもののフイルム中央部は側端部に較べると比較的拘束力が弱い。また熱固定部に至るまでのフイルムは捲取側に近い位置(下流側)程高温となりフイルムを構成している分子は動き易くなっている。この結果として走行時のフイルムは上記の収縮応力によつて中央部が位置的に遅れて進み、フイルムの両側端附近は速やかに配向化結晶化が進む。もし、横延伸の前にフイルム面上に幅方向に沿つた直線を仮想的に描いたとすれば、横延伸とそれにつづく緊張熱処理の間にこの直線はフイルムの進行方向に向つて凹形の曲線となる。」(第1頁右側欄第17行?第2頁左上欄末行) 「この現象はボーイングと称されるものであつて、このボーイングによつてフイルムは幅方向において中央部分と両側部とに物性差、殊に温度膨張率及び湿度膨張率の不均一性を生ずる原因となつている。フイルム中央部の縦横配向をバランスさせた場合、フイルム側端部ではボーイング線に対して更に縦方向に傾斜した配向主軸を持ち、この配向主軸方向の温度膨張率又は湿度膨張率は小さくなり、配向主軸と直角方向のこれら物性値は大きくなる。」(第2頁右上欄第1行?第10行) 「本発明者は二軸配向したフイルムを一枚は製膜時の走行方向に、他の一枚は製膜の際の走行方向と逆方向に配置して互いに貼合すと、この複合フイルムは上記ボーイング現象による線膨張率の異方性を解消し得ることを知見して本発明に到達したものである。 即ち、本発明はフイルムの延伸熱処理に伴う配向主軸の幅方向分布が、実質的に幅方向の中心線に対して対称である2枚のポリエステルフイルムの全幅または分割された幅同志をフイルム端部の配向主軸が互に異方向になるように貼合せてなる線膨張率の等方向なポリエステルフイルムである。」(第2頁左下欄第1行?第13行) 「本発明の線膨張率の等方向なフイルムは特に磁気デイスクベースとして優れた材料になる。」(第3頁左下欄第7行?第8行) 6 甲6には、以下の事項が記載されている。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 外層から順に、耐熱性樹脂延伸フィルム層、アルミニウム箔層および熱可塑性樹脂未延伸フィルム層を必須とする電子部品ケース用包材において、アルミニウム箔層と未延伸フィルム層の間にアクリル系ポリマー層を設けてなる電子部品ケース用包材。」 「【0018】これらのアルミニウム箔は、耐薬品性を向上させることおよび樹脂フィルムとの接着性を改善する目的でクロム系、ノンクロム系(たとえばジルコニウム系)の表面処理を行うことが好ましい。なおこのアルミニウム箔には、樹脂フィルムとのラミネート接着性能を向上させる目的で、さらにシランカップリング剤、チタンカップリング剤等のアンダーコート、あるいはコロナ放電処理等の前処理を行ってもよい。」 7 甲7には、以下の事項が記載されている。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 基材層の一方の面に、接着剤層、アルミニウム箔層、コーティング層、接着樹脂層、シーラント層が順次積層したリチウム電池用包材であって、 前記コーティング層が、希土類元素系酸化物ゾルを含有し、 前記シーラント層の静摩擦係数比(S:μs-B)/(S:μs-M)が1?3、動摩擦係数比(S:μk-B)/(S:μk-M)が1?3であり、 前記基材層の静摩擦係数比(O:μs-B)/(O:μs-M)が1?3、動摩擦係数比(O:μk-B)/(O:μk-M)が1?3であることを特徴とするリチウム電池用包材。 ただし、 (S:μs-B):リチウム電池用包材としてのシーラント層の静摩擦係数 (S:μk-B):リチウム電池用包材としてのシーラント層の動摩擦係数 (S:μs-M):シーラント層単品の場合の静摩擦係数 (S:μk-M):シーラント層単品の場合の動摩擦係数 (O:μs-B):リチウム電池用包材としての基材層の静摩擦係数 (O:μk-B):リチウム電池用包材としての基材層の動摩擦係数 (O:μs-M):基材層単品の場合の静摩擦係数 (O:μk-M):基材層単品の場合の動摩擦係数 とする。」 「【技術分野】 【0001】 本発明は、リチウム電池用包材に関する。」 「【0026】 ・・・ しかしながら、前記コーティング層14はアルミニウム箔を腐食から守る機能は持たない。そこで、本発明者らはアルミニウム箔の腐食に関しさらに鋭意検討を行った結果、クロメート処理などと同様にアルミニウム箔の腐食防止効果(インヒビター効果)を有し、かつ、環境面的にも好適な材料として希土類元素系酸化物ゾルを用いるに至った。 【0027】 (希土類元素系酸化物ゾル) 希土類元素系酸化物としては、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ネオジム、酸化ランタンが好ましく、アルミニウム箔の腐食防止に有効である。これらの酸化物をカチオン性ポリマーに配合する際には、酸化物を平均粒径100nm以下のゾルとして用いる。これにより、従来の方法では条件的に過酷(高温・長時間など)だったものが、一般的なコーティング方法で酸化物の皮膜を含むコーティング層14をアルミニウム箔層13に設けることができるようになり、アルミニウム箔などの金属箔腐食防止効果を付与させることが可能となる。・・・」 第5 判断 1 本件特許発明1について (1) 本件特許発明1と、甲1発明とを対比する。 ア 甲1発明は「リチウムポリマー電池の外装材に用いられる積層フィルム」を特定したものである。ここで、「リチウムポリマー電池」はリチウムイオン電池の一種であること、及び、本件特許発明1の「リチウムイオン電池用外装材」は「基材層の一方の面」に各種の「層」が「順次積層された」ものであり、積層体であること、の両者を踏まえると、甲1発明における「リチウムポリマー電池の外装材に用いられる積層フィルム」は、本件特許発明1における「リチウムイオン電池用外装材」に相当する。 イ 甲1発明においては、「2軸延伸ポリエステルフィルム層」と「2軸延伸ナイロンフィルム層」が「順に積層され」るとともに、その上に「金属箔層、防食性を向上させるためのクロメート処理層、プライマーコートとしての酸変性ポリプロピレンの塗膜層、積層フィルムの最内層としての熱接着性樹脂層」が「順に積層され」ているから、前記「2軸延伸ポリエステルフィルム層」と前記「2軸延伸ナイロンフィルム層」とが積層されてなる部分が、他の各「層」の基材となっているといえる。したがって、甲1発明における「2軸延伸ポリエステルフィルム層」と「2軸延伸ナイロンフィルム層」とが積層されてなる部分が、本件特許発明1の「基材層」に相当すると認められる。また、甲1発明における当該部分は、複数の2軸延伸フィルム層が積層されているから、本件特許発明1における「複数の二軸延伸フィルムが積層された積層フィルムからな」る「前記基材層」にも相当する。 ウ 甲1発明における「クロメート処理層」は、「防食性を向上させるための」ものであるところ、「防食性」とは、腐食を防止する性質であると認められるから、甲1発明における「防食性を向上させるためのクロメート処理層」は、本件特許発明1における「腐食防止処理層」に相当する。 エ 甲1発明における「プライマーコートとしての酸変性ポリプロピレンの塗膜層」が有する機能は、甲1においては明らかにされていないが、甲1発明が属する積層フィルムの技術分野における技術常識によれば、「プライマーコート」は、積層される他の層に対する接着性を向上させるための下塗り層を意味する用語として慣用されるものであるから、甲1発明における「プライマーコート」も、接着の機能を有していると解される。また、前記「酸変性ポリプロピレンの塗膜層」は、「酸変性ポリプロピレン」が樹脂であることから、樹脂層であると解される。これらを踏まえると、甲1発明における「プライマーコートとしての酸変性ポリプロピレンの塗膜層」は、本件特許発明1における「接着樹脂層」に相当する。 オ 本件特許発明1における「シーラント層」について、本件特許明細書の段落【0034】によれば、外装材の内層であり、電池組み立て時に熱溶着される層であるから、甲1発明における「積層フィルムの最内層としての熱接着性樹脂層」は、本件特許発明1における「シーラント層」に相当する。 カ 上記イ?オを踏まえると、甲1発明における「2軸延伸ポリエステルフィルム層、2軸延伸ナイロンフィルム層、金属箔層、防食性を向上させるためのクロメート処理層、プライマーコートとしての酸変性ポリプロピレンの塗膜層、積層フィルムの最内層としての熱接着性樹脂層が順に積層され」ていることは、本件特許発明1の「基材層の一方の面に、少なくとも金属箔層、腐食防止処理層、接着樹脂層、シーラント層が順次積層された」ことに相当する。 キ 甲1発明において「前記2軸延伸ポリエステルフィルム層と前記2軸延伸ナイロンフィルム層とのラミネートは、公知のドライラミネーション法により、ポリウレタン系の2液硬化型接着剤を用いて行われる」ことが、本件特許発明1において「前記積層フィルムにおいて上下に隣接する互いの二軸延伸フィルムは、ドライラミネート用の接着剤を介して積層され」ることに相当する。 そして、甲1発明における「接着剤」は、「ドライラミネーション法」で用いられる「ポリウレタン系の2液硬化型接着剤」であるのに対し、本件特許発明1における「接着剤」は、「ドライラミネート用の接着剤」であって、「ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール及びアクリルポリオールから選ばれる主剤に、硬化剤として芳香族系又は脂肪族系イソシアネートを作用させる2液硬化型のポリウレタン系接着剤」であり、両発明の「接着剤」は、「ドライラミネート用の接着剤」であって、「2液硬化型のポリウレタン系接着剤」である点で共通している。 ク 甲1発明において、「2軸延伸ポリエステルフィルム層」及び「2軸延伸ナイロンフィルム層」の延伸方向は特定されていないものの、2軸延伸フィルムの2つの延伸方向がなす角度は90度であることは自明であるといえるから、甲1発明における「2軸延伸ポリエステルフィルム層」及び「2軸延伸ナイロンフィルム層」は、本件特許発明1における「前記二軸延伸フィルムは、0度方向と90度方向に二軸延伸され」との発明特定事項を満たすものと認められる。 (2) 上記(1)を踏まえると、本件特許発明1と、甲1発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。 <一致点> 「基材層の一方の面に、少なくとも金属箔層、腐食防止処理層、接着樹脂層、シーラント層が順次積層されたリチウムイオン電池用外装材において、 前記基材層が複数の二軸延伸フィルムが積層された積層フィルムからなり、 前記積層フィルムにおいて上下に隣接する互いの二軸延伸フィルムは、ドライラミネート用の接着剤を介して積層され、 前記ドライラミネート用の接着剤が、2液硬化型のポリウレタン系接着剤であり、 前記二軸延伸フィルムは、0度方向と90度方向に二軸延伸される。」 <相違点> (相違点1) 「2液硬化型のポリウレタン系接着剤」が、本件特許発明1では「ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール及びアクリルポリオールから選ばれる主剤に、硬化剤として芳香族系又は脂肪族系イソシアネートを作用させる2液硬化型のポリウレタン系接着剤」であるのに対し、甲1発明では、どのような成分からなるのかが特定されていない点 (相違点2) 「積層」された「複数の二軸延伸フィルム」について、本件特許発明1では、「(1)一方の二軸延伸フィルムの延伸方向に対する45度方向と135度方向のうち引張強度が大きい方向と、他方の二軸延伸フィルムの延伸方向に対する45度方向と135度方向のうち引張強度が小さい方向が揃うように積層されている。」なる「条件(1)」が特定されているのに対し、甲1発明では、かかる「条件(1)」が特定されていない点 (3) まず、相違点2について検討する。 ア 「条件(1)」によって本件特許発明1が奏する効果について 本件特許明細書には、本件特許発明1が「条件(1)」を満たすことによって奏する効果について、下記のとおり記載がある。 「【0017】 二軸延伸フィルムは、方向によって機械強度に異なりが生じ、引張強度と伸びやすさに異方性がある。つまり、二軸延伸フィルムの延伸方向に対して0度、45度、90度、135度の4方向について引張強度を測定すると、通常それら4方向の引張強度は異なっている。本発明者らが詳細に検討したところ、特に45度方向と135度方向の引張強度の異方性が外装材の成型性に大きく影響していることがわかった。外装材1では、積層フィルムにおける隣接する第1の二軸延伸フィルム11Aと第2の二軸延伸フィルム11Bが、前記条件(1)を満たすように積層されることで、延伸方向に対する45度方向と135度方向の引張強度の異方性が緩和され、基材層11としての異方性が小さくなるため、優れた成型性が得られる。」 「【実施例】 【0064】 ・・・ [引張強度の測定] 本実施例におけるフィルムの引張強度は、JIS K7127に準拠し、Type5の抜き型を用いてサンプルを作製し、引張強度300mm/分の条件で測定した。 【0065】 [使用材料] 本実施例に使用した材料を以下に示す。 (基材層11) フィルムA-1:二軸延伸ポリアミドフィルム(厚さ25μm)。 フィルムA-2:二軸延伸PETフィルム(厚さ12μm)。 フィルムA-1とフィルムA-2における延伸方向に対する0度、45度、90度、135度の4方向の破断するまでの引張強度を測定した結果を表1に示す。 【0066】 【表1】 ・・・ 【0073】 [比較例1] フィルムA-1とフィルムA-2の積層を表2に示す条件(2)を満たすように行った以外は、実施例1と同様にして外装材を得た。 【0074】 [評価方法] 得られた外装材に対して以下の評価を行った。 (成型性評価) 得られた外装材に対し、絞り部分が80mm×100mmの冷間成型が可能な成型装置を使用し、絞り深さ6mmで冷間成型を行った。その後、冷間成型を行った部分の破断やピンホールを確認した。成型性の評価は以下の基準に従って行った。 ○:破断やピンホールが無かった。 ×:破断もしくはピンホールが発生した。 各例の評価結果を表2に示す。 【0075】 【表2】 【0076】 表2に示すように、フィルムA-1の45度方向とフィルムA-2の45度方向を揃えて積層した積層フィルム、すなわち各フィルムにおける45度方向と135度方向のうち引張強度の大きい方向と小さい方向が揃うように積層した積層フィルムを使用した実施例1のフィルムは、優れた成型性を有していた。一方、フィルムA-1の45度方向とフィルムA-2の135度方向を揃えて積層した積層フィルム、すなわち各フィルムにおける45度方向と135度方向のうち引張強度の大きい方向同士が揃うように積層した積層フィルムを使用した比較例1のフィルムは、実施例1に比べて成型性が劣っていた。 以上の結果は、比較例1の基材層11を形成する積層フィルムに比べて、実施例1における基材層11を形成する積層フィルムにおける異方性が緩和されて小さくなったためであると考えられる。」 これらの記載によれば、本件特許発明1は、「条件(1)」を満たすように「二軸延伸フィルム」が積層されることで、破断もしくはピンホールが発生せず、優れた成型性を有するという効果を奏するものである。 イ 甲1発明において、相違点2に係る構成である「条件(1)」が当業者によって想起され得るかについて 甲1?甲7のいずれにも、相違点2に係る構成である「条件(1)」は明示的に記載されておらず、「条件(1)」に相当する内容が実質的に記載されているといえる根拠も存在しない。 また、相違点2に係る構成である「条件(1)」が、甲1発明における「積層」された「複数の二軸延伸フィルム」についての単なる設計変更に該当するといえる根拠も存在しない。 さらに、上記アで検討したとおり、本件特許発明1は「条件(1)」を満たすように「二軸延伸フィルム」が積層されることで、破断もしくはピンホールが発生せず、優れた成型性を有するという効果を奏するものであり、そのような効果は甲1?甲7のいずれからも予測し得たといえない。 これらのことから、当業者といえども、甲1発明において、相違点2に係る構成である「条件(1)」を想起することが容易であったとはいえない。 ウ 異議申立人は、甲4又は甲5の記載事項に基づき、相違点2に係る構成である「条件(1)」を当業者が容易に想起できる旨を主張しているから、特に甲4や甲5の記載を検討し、上記主張が採用し得るかどうかを検討する。 (ア) 甲4の「本発明で用いる2枚の二軸延伸合成樹脂フィルムは、例えば、図2の二軸延伸合成樹脂フィルム生地6の両側縁部のフィルムである。・・・この配向軸をもつ2枚の二軸延伸合成樹脂フィルムをそれぞれの配向軸が互いに反対方向になるように積層する」との記載(段落【0008】)等からは、特定の二軸延伸合成樹脂フィルムの積層体が把握できる。しかしながら、甲4においては、当該積層体を構成する各フィルムにおける、延伸方向に対する45度方向と135度方向の引張強度を測定するとの技術的事項は見当たらず、それらの引張強度は不明であるため、甲4に記載の前記積層体が、本件特許発明1で特定されている「条件(1)」を満たす積層フィルムとなっているということができる根拠は存在しない。 (イ) 同様に、甲5の「2枚のポリエステルフイルムを積層した複合フイルムにおいて、配向主軸のフイルム幅方向の分布が幅方向の中心線に対して実質的に対称である2枚のポリエステルフイルムを、フイルム端部において配向主軸が互に異る方向となるように貼合せてなる線膨張率が等方性を呈することを特徴とするポリエステルフイルム。」との記載(請求項1)等からは、特定の複合フイルムが把握できる。しかしながら、甲5においては、当該複合フイルムを構成する各ポリエステルフイルムにおける、延伸方向に対する45度方向と135度方向の引張強度を測定するとの技術的事項は見当たらず、それらの引張強度は不明であるため、甲5に記載の前記複合フイルムが、本件特許発明1で特定されている「条件(1)」を満たす積層フィルムとなっているということができる根拠は存在しない。 (ウ) 仮に、上記(ア)で指摘した甲4に記載の二軸延伸合成樹脂フィルムの積層体が、本件特許発明1における「条件(1)」を満たしていたとしても、甲4の請求項1にあるとおり、甲4に記載の前記積層体は「引き裂き性の良い包装袋」に用いられるものであるから、「リチウムポリマー電池の外装材に用いられる積層フィルム」に関する甲1発明とは、技術分野が全く異なっている。そればかりか、甲4に記載の「引き裂き性」という特性は、甲1発明である「リチウムポリマー電池の外装材に用いられる積層フィルム」においては全く必要のない特性である。 したがって、甲1発明とは技術分野が異なり、求められる特性も異なっている甲4の記載事項を、甲1発明に適用しようとする動機付けを見いだすことができない。 (エ) 同様に、仮に、上記(イ)で指摘した甲5に記載の複合フィルムが本件特許発明1における「条件(1)」を満たしていたとしても、甲5の第3頁左下欄第7行?第8行にあるとおり、甲5に記載の前記複合フィルムは、「磁気デイスクベースとして優れた材料になる」ものであるから、「リチウムポリマー電池の外装材に用いられる積層フィルム」に関する甲1発明とは、技術分野が全く異なっている。しかも、甲5に記載の前記複合フイルムは2枚のポリエステルフイルムを積層した構成であるのに対し、甲1発明は2軸延伸ポリエステルフィルム層と2軸延伸ナイロンフィルム層とを積層する構成であるから、具体的な材料においても、甲5に記載の前記複合フイルムは、甲1発明とは異なっている。 したがって、甲1発明とは技術分野が異なり、具体的な材料も異なっている甲5の記載事項を、甲1発明に適用しようとする動機付けを見いだすことができない。 (オ) 更に、上記アで検討したとおり、本件特許発明1は「条件(1)」を満たすように「二軸延伸フィルム」が積層されることで、破断もしくはピンホールが発生せず、優れた成型性を有するという効果を奏するものであって、そのような効果は、甲4及び甲5に加え、甲1?甲3、甲6及び甲7を参照したとしても、当業者が予測し得たとし得る合理的根拠は見当たらない。 (カ) 以上(ア)?(オ)において検討したとおり、甲4や甲5に記載の積層フィルムが本件特許発明1で特定されている「条件(1)」を満たすといえる根拠は見いだせず、仮に満たしていたとしても、甲4や甲5に記載された技術を甲1発明に適用する動機付けは存在せず、しかも、本件特許発明1は「条件(1)」により、甲1?甲7を参照したとしても、予測し得ない効果を奏するものである。 よって、上記ウに示した異議申立人の主張は採用し得ない。 (4) 以上のとおり、相違点2に係る構成である「条件(1)」は、当業者によって容易に想起され得たということはできないから、相違点1について検討するまでもなく、本件特許発明1は、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2 本件特許発明2?9について 本件特許発明2?9は、本件特許発明1をさらに減縮したものであるから、本件特許発明1に対する上記1の判断と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第6 むすび したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?9に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1?9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2017-07-28 |
出願番号 | 特願2015-43670(P2015-43670) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(H01M)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 小森 重樹 |
特許庁審判長 |
池渕 立 |
特許庁審判官 |
▲辻▼ 弘輔 小川 進 |
登録日 | 2016-11-11 |
登録番号 | 特許第6036880号(P6036880) |
権利者 | 凸版印刷株式会社 |
発明の名称 | リチウムイオン電池用外装材 |
代理人 | 鈴木 史朗 |
代理人 | 志賀 正武 |
代理人 | 高橋 詔男 |
代理人 | 伏見 俊介 |