ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正する C08L 審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正する C08L 審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する C08L 審判 訂正 特許請求の範囲の実質的変更 訂正する C08L 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する C08L |
---|---|
管理番号 | 1331535 |
審判番号 | 訂正2017-390027 |
総通号数 | 214 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-10-27 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2017-04-07 |
確定日 | 2017-08-10 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6074830号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第6074830号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6074830号に係る出願は、2014年7月2日を国際出願日とする特許出願であって、平成28年9月29日に早期審査に関する事情説明書及び手続補正書が提出され、同年11月7日付けで拒絶理由が通知され、同年12月1日に意見書及び手続補正書が提出され、平成29年1月20日にその特許権の設定登録がされたものであって、同年4月7日付け(受理日:同年4月10日)で本件訂正審判が請求されたものである。 その後、当審において、平成29年5月16日付けで訂正拒絶理由を通知し、同年6月16日付け(受理日:同年6月19日)で意見書が提出されたものである。 第2 請求の趣旨及び訂正の内容 1 請求の趣旨 本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第6074830号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものである。 2 訂正の内容 本件訂正審判による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。 特許請求の範囲の請求項1に「(ii)ポリアミド(A)は、側鎖にフェノール性水酸基を含み、質量平均分子量が3,000?1,000,000であるポリアミド(a-1)」とあるのを、「(ii)ポリアミド(A)は、側鎖にフェノール性水酸基を含み、質量平均分子量が500?30,000であるポリアミド(a-1)」に訂正する。 併せて、請求項1を引用する請求項2ないし10についても同様の訂正をする。 第3 訂正の適否 1 訂正の目的 請求人は、本件審判請求書及び平成29年6月16日付け(受理日:同年6月19日)の意見書において、本件訂正の目的が誤記の訂正である旨主張するので、本件訂正が誤記の訂正を目的とするものであるかどうかについて検討する。 (1)誤記の訂正の要件 誤記の訂正が認められるためには、特許がされた明細書、特許請求の範囲又は図面中に誤記が存在することが必要である(審判便覧(第16版)(特許庁HP掲載)38-03参照。)。 「誤記の訂正」とは、本来その意であることが、明細書、特許請求の範囲又は図面の記載などから明らかな内容の字句、語句に正すこといい、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものをいう。 (2)本件訂正が誤記の訂正の要件を満たしているかどうかについて そこで、本件訂正が誤記の訂正を目的とするものであるかどうかについて検討する。 ア 特許第6074830号(以下、「本件特許」という。)の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲(以下、それぞれ「本件明細書」及び「本件特許請求の範囲」という。)の記載等 (ア)本件訂正前の特許請求の範囲、すなわち本件特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 多塩基酸単量体とポリアミン単量体とを重合してなり、側鎖にフェノール性水酸基を有し、フェノール性水酸基価が1?80mgKOH/gであるポリアミド(A)と、前記フェノール性水酸基と反応し得る3官能以上の化合物(B)と、有機溶剤とを含有する熱硬化性樹脂組成物であって、 ポリアミド(A)は、以下の(i)、(iii)、(vi)を満たすポリアミド、および(ii)、(iv)?(vi)を満たすポリアミド、の少なくとも一方であり、 化合物(B)は以下の(vii)を満足し、 ポリアミド(A)を構成する全単量体100mol%中に、炭素数20?60の炭化水素基を具備する単量体を10?95mol%含む熱硬化性樹脂組成物。 (i)ポリアミド(A)は、前記フェノール性水酸基および炭素数20?60の炭化水素基(但し、前記フェノール性水酸基が結合する芳香環は含まない)が同一ポリマー内に含まれる、質量平均分子量が3,000?1,000,000であるポリアミド(A-1)である。 (ii)ポリアミド(A)は、側鎖にフェノール性水酸基を含み、質量平均分子量が3,000?1,000,000であるポリアミド(a-1)と、炭素数20?60の炭化水素基を含み、質量平均分子量が3,000?1,000,000であるポリアミド(a-2)とを混合したポリアミド(A-3)である。 (iii)ポリアミド(A-1)を構成する単量体として、フェノール性水酸基を具備する単量体および炭素数20?60の炭化水素基を具備する単量体を含む。 (iv)ポリアミド(a-1)を構成する前記多塩基酸単量体または/および前記ポリアミン単量体に、フェノール性水酸基を具備する単量体を含み、且つ前記多塩基酸単量体および前記ポリアミン単量体に、炭素数20?60の炭化水素基を具備する単量体を含まない。 (v)ポリアミド(a-2)を構成する前記多塩基酸単量体または/および前記ポリアミン単量体に、炭素数20?60の炭化水素基を具備する単量体を含み、且つ前記多塩基酸単量体および前記ポリアミン単量体に、フェノール性水酸基を具備する単量体を含まない。 (vi)炭素数20?60の炭化水素基を具備する単量体の少なくとも一部が、炭素数5?10の環状構造を具備する化合物を含む。 (vii)化合物(B)が、エポキシ基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、金属キレート、金属アルコキシドおよび金属アシレートからなる群より選ばれる少なくとも1種である。」 (イ)本件明細書の発明の詳細な説明には、次の記載がある。なお、下線は当審で付したものである。 ・「【0067】 [質量平均分子量] フェノール性水酸基有ポリアミド(A)のうち、ポリアミド(A-1)の質量平均分子量は、取扱い性および熱硬化性樹脂組成物にした際の接着性、耐熱性の点から3,000?1,000,000であることが好ましく、5,000?550,000であることがより好ましく、10,000?300,000であることがさらに好ましい。 フェノール性水酸基含有ポリアミド(A)のうち、ポリアミド(a-1)の質量平均分子量は、後述する汎用性溶剤への溶解性の点から500?30,000であることが好ましく、1000?20,000であることがより好ましく、1,000?10,000であることがさらに好ましい。 また、フェノール性水酸基含有ポリアミド(A)のうち、ポリアミド(a-2)の質量平均分子量は、ポリアミド(A-1)の場合と同様の範囲であることが好ましい。」 ・「【0120】 [合成例24] 撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、導入管、温度計を備えた4口フラスコに、その他の多塩基酸化合物としてドデカン二酸を48.6g(0.21mol)、フェノール性水酸基を有するポリアミン化合物として4,4’-ジアミノー3,3’?ジヒドロキシビフェニルを6.9g(0.03mol)、その他のアミン化合物としてワンダミンHMを87.6g(0.42mol)、イオン交換水を100g仕込み、発熱の温度が一定になるまで撹拌した。温度が安定したら110℃まで昇温し、水の流出を確認してから、30分後に温度を120℃に昇温し、その後、30分ごとに10℃ずつ昇温しながら脱水反応を続けた。温度が230℃になったら、そのままの温度で3時間反応を続け、約2kPaの真空下で1時間保持し、温度を低下させた。最後に、酸化防止剤を添加し、質量平均分子量2800、酸価0.5mgKOH/g、アミン価185.8mgKOH/g、フェノール性水酸基価25.1mgKOH/g、ガラス転移温度140℃のフェノール性水酸基含有ポリアミド(a-1)を得た。」 (ウ)平成28年9月29日に提出された早期審査に関する事情説明書には、次の記載がある。なお、「2-1.補正の根拠の説明」中の下線は当審で付したものである。 ・「1.事情 ・・・(略)・・・ なお、本早期審査に関する事情説明書と同日付で、手続補正書を提出しております。 2.本願発明の説明 2-1.補正の根拠の説明 本願の補正後の請求項1は、後述する文献12,13との差異が明確となるように、旧請求項3、7?9の特定事項を加え、且つ有機溶剤を含む点を特定しました。補正の根拠は、[0003]、[0010]、[0053]、[0067]、[0071]、[0101]等です。また、国際調査機関の見解書のVIII欄のご指摘を踏まえ、ポリアミド(A)は、(i)、(iii)、(vi)を満たすポリアミド、および(ii)、(iv)?(vi)を満たすポリアミド、の少なくとも一方である点が明確となるように補正を行いました。補正の根拠は[0020]?[0049]、[0054]?[0061]等です。これらの補正に伴い、旧請求項3、7?9を削除し、旧請求項4以降の繰り上げおよび従属請求項の変更を行いました。」 (エ)早期審査に関する事情説明書と同日(平成28年9月29日)に提出された手続補正書には、次の記載がある。なお、下線は当審で付したものである。 ・「【請求項1】 多塩基酸単量体とポリアミン単量体とを重合してなり、側鎖にフェノール性水酸基を有し、フェノール性水酸基価が1?80mgKOH/gであるポリアミド(A)と、前記フェノール性水酸基と反応し得る3官能以上の化合物(B)と、有機溶剤とを含有する熱硬化性樹脂組成物であって、 ポリアミド(A)は、以下の(i)、(iii)、(vi)を満たすポリアミド、および(ii)、(iv)?(vi)を満たすポリアミド、の少なくとも一方であり、 化合物(B)は以下の(vii)を満足する熱硬化性樹脂組成物。 (i)ポリアミド(A)は、前記フェノール性水酸基および炭素数20?60の炭化水素基(但し、前記フェノール性水酸基が結合する芳香環は含まない)が同一ポリマー内に含まれる、質量平均分子量が3,000?1,000,000であるポリアミド(A-1)である。 (ii)ポリアミド(A)は、側鎖にフェノール性水酸基を含み、質量平均分子量が3,000?1,000,000であるポリアミド(a-1)と、炭素数20?60の炭化水素基を含み、質量平均分子量が3,000?1,000,000であるポリアミド(a-2)とを混合したポリアミド(A-3)である。 (iii)ポリアミド(A-1)を構成する単量体として、フェノール性水酸基を具備する単量体および炭素数20?60の炭化水素基を具備する単量体を含む。 (iv)ポリアミド(a-1)を構成する前記多塩基酸単量体または/および前記ポリアミン単量体に、フェノール性水酸基を具備する単量体を含み、且つ前記多塩基酸単量体および前記ポリアミン単量体に、炭素数20?60の炭化水素基を具備する単量体を含まない。 (v)ポリアミド(a-2)を構成する前記多塩基酸単量体または/および前記ポリアミン単量体に、炭素数20?60の炭化水素基を具備する単量体を含み、且つ前記多塩基酸単量体および前記ポリアミン単量体に、フェノール性水酸基を具備する単量体を含まない。 (vi)炭素数20?60の炭化水素基を具備する単量体の少なくとも一部が、炭素数5?10の環状構造を具備する化合物を含む。 (vii)化合物(B)が、エポキシ基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、金属キレート、金属アルコキシドおよび金属アシレートからなる群より選ばれる少なくとも1種である。」 (オ)本件特許の国際出願時の特許請求の範囲には、次の記載がある。なお、下線は当審で付したものである。 ・「【請求項1】 多塩基酸単量体とポリアミン単量体とを重合してなり、側鎖にフェノール性水酸基を有するポリアミド(A)と、前記フェノール性水酸基と反応し得る3官能以上の化合物(B)とを含有する熱硬化性樹脂組成物であって、 ポリアミド(A)は、以下の(i)および/または(ii)であり、更に、 (iii)?(vi)を満足し、 化合物(B)は以下の(vii)を満足する熱硬化性樹脂組成物。 (i)ポリアミド(A)は、前記フェノール性水酸基および炭素数20?60の炭化水素基(但し、前記フェノール性水酸基が結合する芳香環は含まない)が同一ポリマー内に含まれるポリアミド(A-1)である。 (ii)ポリアミド(A)は、側鎖にフェノール性水酸基を含むポリアミド(a-1)と、炭素数20?60の炭化水素基を含むポリアミド(a-2)とを混合したポリアミド(A-3)である。 (iii)ポリアミド(A-1)を構成する単量体として、フェノール性水酸基を具備する単量体および炭素数20?60の炭化水素基を具備する単量体を含む。 (iv)ポリアミド(a-1)を構成する前記多塩基酸単量体または/および前記ポリアミン単量体に、フェノール性水酸基を具備する単量体を含み、且つ前記多塩基酸単量体および前記ポリアミン単量体に、炭素数20?60の炭化水素基を具備する単量体を含まない。 (v)ポリアミド(a-2)を構成する前記多塩基酸単量体または/および前記ポリアミン単量体に、炭素数20?60の炭化水素基を具備する単量体を含み、且つ前記多塩基酸単量体および前記ポリアミン単量体に、フェノール性水酸基を具備する単量体を含まない。 (vi)炭素数20?60の炭化水素基を具備する単量体の少なくとも一部が、炭素数5?10の環状構造を具備する化合物を含む。 (vii)化合物(B)が、エポキシ基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、金属キレート、金属アルコキシドおよび金属アシレートからなる群より選ばれる少なくとも1種である。 ・・・(略)・・・ 【請求項3】 ポリアミド(A)のフェノール性水酸基価が、1?80mgKOH/gである、請求項1または2記載の熱硬化性樹脂組成物。 ・・・(略)・・・ 【請求項7】 ポリアミド(A-1)の質量平均分子量が3,000?1,000,000である請求項1?6いずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。 【請求項8】 ポリアミド(a-2)の質量平均分子量が3,000?1,000,000である請求項1?7いずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。 【請求項9】 ポリアミド(a-1)の質量平均分子量が500?30,000である請求項1?8いずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。」 イ 判断 (ア)平成28年9月29日に提出された提出された手続補正書について 早期審査に関する事情説明書(第3 1(2)ア(ウ))の「本願の補正後の請求項1は、後述する文献12,13との差異が明確となるように、旧請求項3、7?9の特定事項を加え、且つ有機溶剤を含む点を特定しました。」によると、平成28年9月29日に提出された手続補正書の請求項1は、国際出願時の特許請求の範囲の請求項1に請求項9の特定事項を加えたものであるから、本件特許の国際出願時の特許請求の範囲(第3 1(2)ア(オ))によると、平成28年9月29日に提出された提出された手続補正書の請求項1においては、「(ii)ポリアミド(A)は、側鎖にフェノール性水酸基を含み、質量平均分子量が500?30,000であるポリアミド(a-1)」と記載されるはずであるが、実際には、第3 1(2)ア(エ)のとおり、「(ii)ポリアミド(A)は、側鎖にフェノール性水酸基を含み、質量平均分子量が3,000?1,000,000であるポリアミド(a-1)」と記載されている。 したがって、上記出願経過に照らせば、平成28年9月29日に提出された手続補正書の「(ii)ポリアミド(A)は、側鎖にフェノール性水酸基を含み、質量平均分子量が3,000?1,000,000であるポリアミド(a-1)」という記載は、本件特許の出願人である請求人が、早期審査に関する事情説明書の記載内容と整合していることの確認を怠ったことによる本来あってはならない誤りというべきであるが、請求人が意図したものではなく、請求人の過誤(表示上の錯誤)によるものと認められる。 (イ)本件特許請求の範囲に誤記が存在することについて 本件特許請求の範囲の請求項1の「(ii)ポリアミド(A)は、側鎖にフェノール性水酸基を含み、質量平均分子量が3,000?1,000,000であるポリアミド(a-1)」という記載は、本件明細書中に対応する記載がないことから、誤記であると認める。 (ウ)「誤記の訂正」に該当することについて 本件明細書には、「ポリアミド(a-1)」の質量平均分子量について、「500?30,000であることが好ましく、1000?20,000であることがより好ましく、1,000?10,000であることがさらに好ましい。」と記載され、「ポリアミド(a-1)」として、質量平均分子量が2800のものが唯一の実施例として記載されている(第3 1(2)ア(イ))。 また、第3 1(2)イ(ア)によると、平成28年9月29日に提出された手続補正書の「(ii)ポリアミド(A)は、側鎖にフェノール性水酸基を含み、質量平均分子量が3,000?1,000,000であるポリアミド(a-1)」という記載は、請求人の過誤(表示上の錯誤)によるものであり、正しい記載は、「(ii)ポリアミド(A)は、側鎖にフェノール性水酸基を含み、質量平均分子量が500?30,000であるポリアミド(a-1)」である。 そうすると、あえて唯一の実施例が含まれない範囲に補正することは通常選択する合理的な行為から解離するものであることを併せ考えると、本件特許請求の範囲の請求項1の「(ii)ポリアミド(A)は、側鎖にフェノール性水酸基を含み、質量平均分子量が3,000?1,000,000であるポリアミド(a-1)」という記載は、本来、「(ii)ポリアミド(A)は、側鎖にフェノール性水酸基を含み、質量平均分子量が500?30,000であるポリアミド(a-1)」の意であることが、本件明細書及び本件特許請求の範囲の記載並びに本件特許の出願経過(第3 1(2)イ(ア))から、明らかである。 そして、本件明細書及び本件特許請求の範囲の記載並びに本件特許の出願経過(第3 1(2)イ(ア))から、本件訂正前の「(ii)ポリアミド(A)は、側鎖にフェノール性水酸基を含み、質量平均分子量が3,000?1,000,000であるポリアミド(a-1)」は、本件訂正後の「(ii)ポリアミド(A)は、側鎖にフェノール性水酸基を含み、質量平均分子量が500?30,000であるポリアミド(a-1)」に明らかに対応し、かつこれに根拠があると解するのが相当であるから、本件訂正前の「(ii)ポリアミド(A)は、側鎖にフェノール性水酸基を含み、質量平均分子量が3,000?1,000,000であるポリアミド(a-1)」との記載は、当然に本件訂正後の「(ii)ポリアミド(A)は、側鎖にフェノール性水酸基を含み、質量平均分子量が500?30,000であるポリアミド(a-1)」との記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められる。 したがって、本件訂正は、本来その意であることが、明細書、特許請求の範囲又は図面の記載などから明らかな内容の字句、語句に正すものであり、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものといえ、「誤記の訂正」に該当する。 ウ まとめ よって、本件訂正は、誤記の訂正を目的とするものであり、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものである。 2 実質上特許請求の範囲の拡張・変更の存否(特許法第126条第6項) (1)「実質上特許請求の範囲を拡張する」とは、特許請求の範囲の記載自体を訂正することによって特許請求の範囲を拡張するもの(例えば、請求項に記載した事項をより広い意味を表す表現に入れ替える訂正)のほか、特許請求の範囲については何ら訂正することなく、ただ発明の詳細な説明又は図面の記載を訂正することによって特許請求の範囲を拡張するようなものをいう。 「実質上特許請求の範囲を変更する」とは、特許請求の範囲の記載自体を訂正することによって特許請求の範囲を変更するもの(例えば、請求項に記載した事項を別の意味を表す表現に入れ替えることによって特許請求の範囲をずらす訂正)や、発明の対象を変更する訂正のほか、特許請求の範囲については何ら訂正することなく、ただ発明の詳細な説明又は図面の記載を訂正することによって特許請求の範囲を変更するようなものをいう。 そして、請求項の誤記のうち、請求項中の記載が、それ自体で、又は特許がされた明細書の記載との関係で、誤りであることが明らかであり、かつ、特許がされた明細書、特許請求の範囲又は図面の記載全体から、正しい記載が自明な事項として定まるときにおいて、その誤りを正しい記載にする訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない(審判便覧(第16版)(特許庁HP掲載)38-03参照。)。 (2)上記のとおり、本件訂正は、誤記の訂正を目的とするものであり、本件明細書及び本件特許請求の範囲の記載全体から、「(ii)ポリアミド(A)は、側鎖にフェノール性水酸基を含み、質量平均分子量が500?30,000であるポリアミド(a-1)」が正しい記載であり、正しい記載が自明な事項として定まるものである。 そして、そのときにおいて、その誤りを正しい記載にする訂正であるから、実質上特許請求の範囲の拡張し、又は変更するものでなく、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 3 新規事項(特許法第126条第5項) 本件明細書の【0067】には、「フェノール性水酸基含有ポリアミド(A)のうち、ポリアミド(a-1)の質量平均分子量は、後述する汎用性溶剤への溶解性の点から500?30,000であることが好ましく、1000?20,000であることがより好ましく、1,000?10,000であることがさらに好ましい。」と記載されている(第3 1(2)ア(イ))ことから、本件訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で新たな技術的事項を導入しないものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 4 独立特許要件(特許法第126条第7項) 本件訂正後の請求項1ないし10に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとする理由はなく、本件訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合するものである。 第4 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書き第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法第126条第5ないし7項の規定に適合するものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 多塩基酸単量体とポリアミン単量体とを重合してなり、側鎖にフェノール性水酸基を有し、フェノール性水酸基価が1?80mgKOH/gであるポリアミド(A)と、前記フェノール性水酸基と反応し得る3官能以上の化合物(B)と、有機溶剤とを含有する熱硬化性樹脂組成物であって、 ポリアミド(A)は、以下の(i)、(iii)、(vi)を満たすポリアミド、および(ii)、(iv)?(vi)を満たすポリアミド、の少なくとも一方であり、 化合物(B)は以下の(vii)を満足し、 ポリアミド(A)を構成する全単量体100mol%中に、炭素数20?60の炭化水素基を具備する単量体を10?95mol%含む熱硬化性樹脂組成物。 (i)ポリアミド(A)は、前記フェノール性水酸基および炭素数20?60の炭化水素基(但し、前記フェノール性水酸基が結合する芳香環は含まない)が同一ポリマー内に含まれる、質量平均分子量が3,000?1,000,000であるポリアミド(A-1)である。 (ii)ポリアミド(A)は、側鎖にフェノール性水酸基を含み、質量平均分子量が500?30,000であるポリアミド(a-1)と、炭素数20?60の炭化水素基を含み、質量平均分子量が3,000?1,000,000であるポリアミド(a-2)とを混合したポリアミド(A-3)である。 (iii)ポリアミド(A-1)を構成する単量体として、フェノール性水酸基を具備する単量体および炭素数20?60の炭化水素基を具備する単量体を含む。 (iv)ポリアミド(a-1)を構成する前記多塩基酸単量体または/および前記ポリアミン単量体に、フェノール性水酸基を具備する単量体を含み、且つ前記多塩基酸単量体および前記ポリアミン単量体に、炭素数20?60の炭化水素基を具備する単量体を含まない。 (v)ポリアミド(a-2)を構成する前記多塩基酸単量体または/および前記ポリアミン単量体に、炭素数20?60の炭化水素基を具備する単量体を含み、且つ前記多塩基酸単量体および前記ポリアミン単量体に、フェノール性水酸基を具備する単量体を含まない。 (vi)炭素数20?60の炭化水素基を具備する単量体の少なくとも一部が、炭素数5?10の環状構造を具備する化合物を含む。 (vii)化合物(B)が、エポキシ基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、金属キレート、金属アルコキシドおよび金属アシレートからなる群より選ばれる少なくとも1種である。 【請求項2】 化合物(B)として、エポキシ基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、金属キレート、金属アルコキシドおよび金属アシレートからなる群より選ばれる少なくとも2種を組み合わせて用いることを特徴とする請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。 【請求項3】 前記炭素数20?60の炭化水素基を具備する単量体が、炭素数10?24の一塩基性不飽和脂肪酸から誘導されるダイマーを残基として含む単量体である、請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物。 【請求項4】 ポリアミド(A)のガラス転移温度が-40?120℃である、請求項1?3いずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。 【請求項5】 フェノール性水酸基と反応し得る3官能以上の化合物(B)として、 エポキシ基含有化合物と、 金属キレート、金属アルコキシドおよび金属アシレートからなる群より選ばれる少なくとも1つと、 を組み合わせて用いることを特徴とする請求項1?4いずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。 【請求項6】 ポリアミド(A)が、さらに(viii)?(ix)を満足する請求項1?5いずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。 (viii)ポリアミド(A-1)を構成する単量体として含まれる炭素数20?60の炭化水素基を具備する単量体の一部が、3官能以上の多塩基酸化合物および3官能以上のポリアミン化合物の少なくともいずれかである。 (ix)ポリアミド(a-2)を構成する単量体として含まれる炭素数20?60の炭化水素基を具備する単量体の一部が、3官能以上の多塩基酸化合物および3官能以上のポリアミン化合物の少なくともいずれかである。 【請求項7】 請求項1?6いずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物から形成されてなる接着性シート。 【請求項8】 請求項1?6いずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物を加熱により硬化させて得られる硬化物。 【請求項9】 ガラス転移温度が-40?150℃である、請求項8記載の硬化物。 【請求項10】 基材上に、請求項8または9記載の硬化物からなる層を有することを特徴とするプリント配線板。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2017-07-19 |
結審通知日 | 2017-07-21 |
審決日 | 2017-08-01 |
出願番号 | 特願2016-530677(P2016-530677) |
審決分類 |
P
1
41・
856-
Y
(C08L)
P 1 41・ 855- Y (C08L) P 1 41・ 852- Y (C08L) P 1 41・ 854- Y (C08L) P 1 41・ 841- Y (C08L) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 柴田 昌弘 |
特許庁審判長 |
小柳 健悟 |
特許庁審判官 |
加藤 友也 橋本 栄和 |
登録日 | 2017-01-20 |
登録番号 | 特許第6074830号(P6074830) |
発明の名称 | 熱硬化性樹脂組成物、接着性シート、硬化物およびプリント配線板 |
代理人 | 家入 健 |
代理人 | 家入 健 |
代理人 | 家入 健 |