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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01N
管理番号 1331574
審判番号 不服2017-2228  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-02-16 
確定日 2017-09-05 
事件の表示 特願2013-134513「酸化態窒素濃度の測定方法及び測定装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月19日出願公開、特開2015- 10858、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年6月27日の出願であって、平成28年2月25日付けで拒絶理由が通知され、同年4月25日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年7月22日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年9月23日付けで意見書が提出され、同年11月16日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)されたところ、平成29年2月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

1.本願請求項1?11に係る発明は、以下の引用文献1?3に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2012-166171号公報
2.特開2002-153888号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2001-108610号公報

第3 本願発明
本願の請求項1?11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明11」という。)は、平成29年2月16日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定されるものと認められる。
そして、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
被測定対象中の、波長190?230nmにおいて吸収ピークを有する酸化態窒素の濃度を測定する酸化態窒素濃度の測定方法であって、
紫外線吸光光度法を用い、254nmを中心波長とした紫外線を照射し、上記酸化態窒素による該中心波長の紫外線の吸収によって酸化態窒素濃度を測定することを特徴とする酸化態窒素濃度の測定方法。」

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面と共に以下の事項が記載されている。(以下、下線は当審にて付した。)

(引1a)「【0024】
(実施形態1)
図1に示すように、本発明の実施形態1に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置1は、吸光度測定手段a2、吸光度測定手段b3、演算手段4より構成され、嫌気性アンモニア酸化処理槽5(以後、処理槽5とする)における亜硝酸性窒素濃度変化を監視する。
【0025】
吸光度測定手段a2は、アナモックス細菌による脱窒反応を行う処理槽5に被処理水を供給する供給配管6に設けられる。吸光度測定手段a2には、ポンプ7により供給配管6から被処理水がサンプリングされる。そして、この被処理水に波長353nmの光を照射して、この光に対する吸光度aが測定される。」

(引1b)「【0034】
図3に示すように、330?380nmの吸収領域において、硝酸性窒素及びアンモニア性窒素の吸収が存在せず、亜硝酸性窒素のみ吸収があることが確認できた。すなわち、波長330?380nmの光に対する吸光度を測定することにより、アンモニア性窒素及び硝酸性窒素の影響を受けずに亜硝酸性窒素を検出することが可能であることがわかる。
【0035】
また、図4に示すように、亜硝酸性窒素溶液の濃度と、その濃度における波長353nm付近の光(波長330?380nmの光)に対する吸光度との関係は直線関係にある。そこで、亜硝酸性窒素を含む溶液の吸光度を測定し、この直線関係(検量線)に基づいて、亜硝酸性窒素濃度を算出する。なお、亜硝酸性窒素濃度の検出範囲は特に限定されるものではないが、図4に示した検量線からは、少なくとも0?1000mg-N/Lの範囲での亜硝酸性窒素濃度の測定が可能であることがわかる。
【0036】
図5は、亜硝酸性窒素濃度監視装置1における、AX槽に流入する被処理水の波長353nmの光に対する吸光度a(すなわち、吸光度測定手段a2での測定値)と、AX槽で処理後の処理水の波長353nmの光に対する吸光度b(すなわち、吸光度測定手段b3での測定値)の測定結果である。」

(引1c)「【0061】
UV測定手段a20は、硝化細菌による部分亜硝酸化反応を行う処理槽22に被処理水を供給する供給配管23に設けられる。UV測定手段a20には、ポンプ24により供給配管23から被処理水がサンプリングされる。そして、この被処理水に波長254nmのUV光を照射して、このUV光に対する吸光度UVaが測定される。また、この被処理水に波長546nmのVIS光(可視光)を照射して、このVIS光に対する吸光度(VISa)が測定される。UV測定手段a20では、UVa(または、UVa-VISa)と有機成分とが相関関係を有することからCODなどの有機汚濁濃度を測定し、VISaと濁質成分とが相関関係を有することから濁度またはSSを測定する。そして、UV測定手段a20での測定結果は、演算手段4に送信される。また、UV測定手段a20で測定された後の被処理水は、吸光度測定手段a2に移送される。」

(引1d)【図3】


上記図3より、亜硝酸性窒素は330?380nmの領域に吸収ピークを有する点が見て取れる。

したがって、上記(引1a)、(引1b)及び(引1d)の記載より、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「亜硝酸性窒素濃度の算出方法であって
被処理水に波長353nmの光を照射して、この光に対する吸光度が測定され、
亜硝酸性窒素は、330?380nmの吸収領域において吸収ピークを有するものであり、
亜硝酸性窒素溶液の濃度と、その濃度における波長353nm付近の光(波長330?380nmの光)に対する吸光度との関係は直線関係にあり、
亜硝酸性窒素を含む溶液の吸光度を測定し、この直線関係(検量線)に基づいて、亜硝酸性窒素濃度を算出する、
亜硝酸性窒素濃度の算出方法」

2.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2012-166171号公報)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

(引3a)「【0023】図6はこの発明の光学分析計による硝酸溶液を計測したときの紫外線吸収特性曲線で、この結果からも明らかなように254nm付近に最大吸収があり、硝酸溶液の濃度測定が可能である。」

3.その他の文献について
また、原査定で引用された引用文献2には、図面と共にモノクロラミンの除去剤に関する事項が記載されている。

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

引用発明の「被処理水」及び「亜硝酸性窒素」は、それぞれ本願発明1の「被測定対象」及び「酸化態窒素」に相当し、引用発明の「亜硝酸性窒素」は、「330?380nm」において吸収ピークを有し、本願発明1は、「190?230nm」において吸収ピークを有し、「330?380nm」及び「190?230nm」のいずれも紫外領域であるから、引用発明の「亜硝酸性窒素」と本願発明1の「酸化態窒素」とは、紫外領域において吸収ピークを有する点で共通している。
また、引用発明の「亜硝酸性窒素濃度の算出方法」は、「被処理水に波長353nmの光を照射して、この光に対する吸光度」を測定し、この測定結果より亜硝酸性窒素濃度を算出する方法であり、ここで使用される「波長353nmの光」は、紫外線であるから、引用発明の「亜硝酸性窒素濃度の算出方法」は、紫外線吸光光度法を用いているといえる。
してみれば、引用発明の「被処理水に波長353nmの光を照射して、この光に対する吸光度が測定され」ると、本願発明1の「紫外線吸光光度法を用い、254nmを中心波長とした紫外線を照射し、上記酸化態窒素による該中心波長の紫外線の吸収によって酸化態窒素濃度を測定する」とは、「紫外線吸光光度法を用い、紫外線を照射し、上記酸化態窒素による該紫外線の吸収によって酸化態窒素濃度を測定する」点で共通している。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「被測定対象中の、紫外領域において吸収ピークを有する酸化態窒素の濃度を測定する酸化態窒素濃度の測定方法であって、
紫外線吸光光度法を用い、紫外線を照射し、上記酸化態窒素による該紫外線の吸収によって酸化態窒素濃度を測定する酸化態窒素濃度の測定方法。」

(相違点)
酸化態窒素濃度の測定について、本願発明1は、波長190?230nmにおいて吸収ピークを有する酸化態窒素の濃度を、254nmを中心波長とした紫外線を照射し、上記酸化態窒素による該中心波長の紫外線の吸収によって酸化態窒素濃度を測定するのに対し、引用発明は、330?380nmにおいて吸収ピークを有する亜硝酸性窒素に、353nmの紫外線を照射して測定している点。


(2)相違点についての判断
上記相違点について検討する。
引用文献1の摘記(引1c)には、「この被処理水に波長254nmのUV光を照射して、このUV光に対する吸光度UVaが測定される。」と、波長254nmのUV光を照射した点が記載されているが、このUV光によって測定されるものは、CODなどの有機汚濁濃度であって、波長190?230nmにおいて吸収ピークを有する酸化態窒素の濃度では無い。
また、引用文献3の摘記(引3a)には、「硝酸溶液は254nm付近に最大吸収があり、硝酸溶液の濃度測定が可能」である旨記載されているものの、254nm付近に吸収ピークを有する硝酸溶液の濃度を245nmの紫外光で測定するものであるから、波長190?230nmにおいて吸収ピークを有する酸化態窒素の濃度を、254nmを中心波長とした紫外線を照射して測定するものは記載されていない。
そして、原査定で引用された引用文献2には、波長190?230nmにおいて吸収ピークを有する酸化態窒素の濃度を、254nmを中心波長とした紫外線を照射して測定する構成は記載されていない。
本願発明は、「波長190?230nmにおいて吸収ピークを有する酸化態窒素」の濃度を測定する際に、その吸収ピークがある波長ではない(吸収ピークの波長からからずらした)「254nmを中心波長とした紫外線を照射し」て酸化態窒素濃度を測定するものであるところ、紫外線吸光光度法を用いて物質の濃度測定を行う場合には、その物質の(最大)吸収ピークのある波長の光を照射して、その吸収の度合いによる濃度を測定することが通常であり、物質の(最大)吸収ピークのある範囲の波長でない波長の光をあえて照射しその吸収の度合いによって濃度を測定するという技術常識が、本出願時にあったともいえない。
そうすると、本願発明は、引用発明や、引用文献2及び3に記載された発明から容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2?6について
本願発明2?6も、本願発明1の「波長190?230nmにおいて吸収ピークを有する酸化態窒素の濃度を、254nmを中心波長とした紫外線を照射し、上記酸化態窒素による該中心波長の紫外線の吸収によって酸化態窒素濃度を測定する」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明7?11について
本願発明7は、本願発明1に対応する装置の発明であり、本願発明1の「波長190?230nmにおいて吸収ピークを有する酸化態窒素の濃度を、254nmを中心波長とした紫外線を照射し、上記酸化態窒素による該中心波長の紫外線の吸収によって酸化態窒素濃度を測定する」に対応する構成を備えるものであり、そして、本願発明7を引用する本願発明8?11も、本願発明1の「波長190?230nmにおいて吸収ピークを有する酸化態窒素の濃度を、254nmを中心波長とした紫外線を照射し、上記酸化態窒素による該中心波長の紫外線の吸収によって酸化態窒素濃度を測定する」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、拒絶査定において引用された引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

4 小括
よって、本願発明1?11は、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1?3に基づいて、容易に発明できたものとはいえないことから、原査定の理由を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-08-22 
出願番号 特願2013-134513(P2013-134513)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 奥田 雄介深田 高義  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 ▲高▼見 重雄
福島 浩司
発明の名称 酸化態窒素濃度の測定方法及び測定装置  
代理人 林 一好  
代理人 正林 真之  

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