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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N |
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管理番号 | 1331598 |
審判番号 | 不服2016-4006 |
総通号数 | 214 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-10-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-03-16 |
確定日 | 2017-08-14 |
事件の表示 | 特願2012-553803「ビデオ信号処理」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 8月25日国際公開、WO2011/102598、平成25年 5月30日国内公表、特表2013-520125〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願の手続の経緯の概要は、以下のとおりである。 国際出願日 :2010年12月13日 (パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年2月17日、米国) 手続補正 :平成24年10月 5日 拒絶理由通知:平成25年11月14日(起案日) 意見書 :平成26年 2月12日 手続補正 :平成26年 2月12日 拒絶理由通知:平成26年 7月10日(起案日) 意見書 :平成26年10月14日 拒絶理由通知:平成27年 3月12日(起案日) 意見書 :平成27年 6月 4日 手続補正 :平成27年 6月 4日 拒絶査定 :平成27年11月13日(起案日) 審判請求 :平成28年 3月16日 2.本願発明 本願の請求項1-21に係る発明は、平成27年6月4日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-21に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 なお、説明のために、AないしFの記号を当審において付与した。以下、「構成A」、「構成B」などと称することとする。 「 【請求項1】 A 第1の解像度に対応する入力ビデオ信号の一部を選択し、前記部分をパーティションに分割するように適合されたプリプロセッサと、 B 第1の領域から第2の領域に前記パーティションを変換するように適合された第1の変換器と、 C 出力符号化ビデオ信号に対応し前記第1の解像度より低い解像度である第2の解像度に従って、前記第2の領域のそれぞれの前記パーティションから周波数領域に基づく1つの代表的な値を選択し、他の値を廃棄するように適合されたセレクタと、 D 前記代表的な値を収集して代表的な値のグループを形成するように適合されたコレクタと、 E 前記代表的なグループを符号化し、前記出力符号化ビデオ信号を生成するように適合された第1の符号化ユニットと F を備えるビデオ信号エンコーダ。」 3.引用発明 原査定の拒絶理由に引用された特開2006-345433号公報(以下、「引用例1」という。)には、「階層的動画像符号化装置、階層的動画像復号装置、およびその方法」として、以下の事項が記載されている。 ア.「【0008】 この発明に係る階層的動画像符号化装置及び方法は、入力された画像データを所定のサイズの領域に分解し、それぞれの画像領域に対して処理を行うものであって、前記画像領域をさらに小さい階層化ブロックに分割し、それぞれの階層化ブロックに対して少なくとも1つの直流成分係数と少なくとも1つの交流成分係数に分解し、前記画像領域内のそれぞれの成分ごとに成分係数を成分ブロックとして出力する階層化変換を行うブロック階層化手段・ステップと、前記画像領域内の各成分ブロックを変換し変換係数を出力する変換手段・ステップと、前記変換係数をエントロピー符号化し、符号化データを出力するエントロピー符号化手段・ステップとを備えることを特徴とする。」 イ.「【0011】 実施の形態1. 以下、図面を参照して、この発明の実施の形態1における階層的動画像符号化装置について詳細に説明する。 図1は、この発明の実施の形態1に係る階層的動画像符号化装置100の構成を示すブロック図である。 図1に示す階層的動画像符号化装置100は、入力映像を階層的動画像符号化し、その結果得られる符号化データを出力する装置であり、画像入力部101と、階層化部102と、差分データ生成部103と、変換部104と、エントロピー符号化部105と、逆変換部106と、成分加算部107と、成分復号データメモリ108と、成分予測部109から構成される。 【0012】 画像入力部101は、外部より入力される映像信号のフレーム内を分割してなるマクロブロック単位に所定の順次マクロブロック画像として出力する。ひとつの例として、ここでは、マクロブロック画像は、輝度信号に関しては16×16画素、色差信号に関しては8×8画素のサイズの領域であるとして説明する。もちろん、これらのサイズは説明を容易にするために用いているのであり、その他のサイズであっても、あるいは、マクロブロックごとに異なるサイズであっても同様の効果を得ることができる。 【0013】 階層化部102は、入力されたマクロブロックをさらに小さいサイズのマイクロブロックに分割し、それぞれのマイクロブロックに対して直流成分と交流成分を分離する階層化変換を行う。ここでのマイクロブロックのサイズとして、ここでは、一例として、2×2画素のサイズを用いて説明する。もちろん、このマイクロブロックのサイズについても、例えば4×4画素、8×8画素など、他のサイズでも同様の効果を得ることができる。 【0014】 直流成分と交流成分を分離する変換としては、例えばDiscrete Cosine Transform(DCT)やHaar変換などの直交変換がある。この発明は、直流成分と交流成分に分解できる変換であればいかなる変換でも有効であるが、ここでは、その1例として、式(1)に示す2行2列の変換を用いて説明する。」 ウ.「【0017】 すなわち、階層化部102は、図2に示すように、16×16画素サイズの輝度値信号のマクロブロックを2×2画素サイズのマイクロブロックに分割し、それぞれのマイクロブロックに対して式(1)を適用し、得られた成分ごとにそれぞれ8×8画素サイズの成分ブロックを形成し、出力する。同様に、8×8画素サイズの色差信号のマクロブロックを2×2画素サイズのマイクロブロックに分割し、それぞれのマイクロブロックに対して式(1)を適用し、得られた成分ごとにそれぞれ4×4画素サイズの成分ブロックを形成し、出力する。なお、これらの成分ブロックのうち、直流成分で構成される成分ブロックを直流成分ブロック、それ以外の成分ブロックを交流成分ブロックと呼ぶこととする。 【0018】 差分データ生成部103は、後述する成分予測部109より出力される前記各成分ブロックの各成分係数に対する予測値と各成分係数の差分演算を行い、差分データを出力する。 【0019】 変換部104は、前記差分データ生成部103より出力される差分データに対してたとえばDCTなどの変換を行う。ここでは、必ずしもDCTを行わなければならないわけではなく、例えばMPEG-4 AVCで採用されている整数変換や、Wavelet変換など、あらゆる変換を用いてもよい。また、変換のサイズは、成分ブロックサイズ以下であれば8×8画素サイズに対し行っても、8×8画素サイズをさらに分解し、例えば4つの4×4画素サイズに対して行ってもよい。例えば、ここでは、図3に示すように、4×4画素サイズに対して行うこととする。また、変換部104においては、変換係数に対して量子化処理を行い、それを最終的な変換係数としてもよい。量子化を行うことによって、より圧縮率を高めることができる。 【0020】 なお、図4に示すように、変換部104は、直流成分ブロックを変換し直流成分変換係数を出力する直流成分変換部1041と、交流成分ブロックを変換し交流成分変換係数を出力する交流成分変換部1042とを備えるよう構成することもできる。この際、直流成分変換部1041では、量子化処理で高周波成分係数が低周波成分係数に対してより粗い量子化を行うよう構成すれば、画質を保ったままより高い圧縮率で符号化できるという効果が得られる。また、交流成分変換部1042に対しては、直流成分変換部に比べてより粗い量子化を行うことにより、より高い圧縮率で符号化できるという効果が得られる。このようにして変換された直流成分係数および交流成分係数が変換係数として出力される。 【0021】 エントロピー符号化部105は、前記変換部104より出力される変換係数をエントロピー符号化し、符号化データとして出力する。エントロピー符号化としては、ハフマンテーブルを用いたハフマン符号化や、算術符号化などいかなる手段であってもよい。」 エ.「【0026】 次に、階層的動画像符号化装置100の動作について説明する。 図7は、階層的動画像符号化装置100の動作を示すフローチャートである。 まず、画像入力部101は、外部より映像信号を入力し、映像信号のフレーム内を分割してなるマクロブロック単位に所定の順次マクロブロック画像として出力する(ステップS10)。 【0027】 次に、階層化部102により、入力されたマクロブロックはさらに小さいサイズのマイクロブロックに分割され、それぞれのマイクロブロックに対して直流成分と交流成分を分離する階層化変換が行われ、成分ブロックが出力される(ステップS11)。 【0028】 差分データ生成部103において、前記成分ブロックと前記各成分ブロックの各成分係数に対する予測値との差分演算が行われ、差分データが出力される(ステップS12)。 【0029】 前記差分データは、変換部104において変換され、変換係数が出力される(ステップS13)。 【0030】 前記変換係数は、エントロピー符号化部105においてエントロピー符号化され、符号化データが出力される(ステップS14)。」 オ.「【0036】 上述したように、実施の形態1によれば、入力された画像データを所定のサイズの領域に分解し、それぞれの画像領域をさらに小さい階層化ブロックに分割し、それぞれの階層化ブロックに対して少なくとも1つの直流成分係数と少なくとも1つの交流成分係数に分解し、前記画像領域内のそれぞれの成分ごとに成分係数を成分ブロックとして出力する階層化変換を行い、前記画像領域内の各成分ブロックを変換た変換係数をエントロピー符号化し、符号化データを出力することにより、符号化データの階層化を実現することができ、符号化データは直流成分と交流成分に分解されているため、直流成分のみを復号することにより低い解像度の再生画像を得ることができると同時に、交流成分も含めて復号すれば高い解像度の再生画像を得ることができるため、1つの符号化データから複数種類の解像度の再生を可能にし、異なる解像度であっても同じ内容のコンテンツであれば一元的に管理することができる。」 上記ア.?オ.の記載、並びにこの分野における技術常識を考慮し、以下で検討する。 (1)上記オ.の「直流成分のみを復号することにより低い解像度の再生画像を得ることができると同時に、交流成分も含めて復号すれば高い解像度の再生画像を得ることができる」という記載から、直流成分は、低い解像度の再生画像を得るために必要な成分といえる。 そうすると、上記ア.、オ.の記載から、引用例1には、入力された画像データを所定のサイズの領域に分解し、さらに小さい階層化ブロックに分割し、それぞれの階層化ブロックに対して少なくとも1つの直流成分係数と少なくとも1つの交流成分係数に分解し、前記画像領域内のそれぞれの成分ごとに成分係数を成分ブロックとして出力し、前記画像領域内の各成分ブロックを変換し変換係数を出力し、前記変換係数をエントロピー符号化し、低い解像度の再生画像を得るために必要な直流成分と、交流成分からなる符号化データを出力する階層的動画像符号化装置が記載されている。 (2)上記イ.の段落0012、エ.の段落0026の記載から、引用例1の階層的動画像符号化装置は、外部より入力される映像信号を16×16画素サイズのマクロブロック単位に分割して出力する画像入力部を備えるものである。 また、上記イ.の段落0014の「直流成分と交流成分を分離する変換としては、例えばDiscrete Cosine Transform(DCT)やHaar変換などの直交変換がある。この発明は、直流成分と交流成分に分解できる変換であればいかなる変換でも有効である」との記載から、直流成分と交流成分を分離する変換としてDCTを選択した場合について考えると、上記イ.の段落0013、0014、ウ.の段落0017、エ.の段落0027の記載から、引用例1の階層的動画像符号化装置は、 画像入力部より入力された16×16画素サイズのマクロブロックをさらに小さい2×2画素サイズのマイクロブロックに分割し、 それぞれのマイクロブロックに対して、DCTにより、直流成分と交流成分を分離し、 得られた成分ごとにそれぞれ8×8画素サイズの直流成分ブロックと交流成分ブロックを出力する階層化部を備えるものである。 ここで、「画像入力部より入力された16×16画素サイズのマクロブロックをさらに小さい2×2画素サイズのマイクロブロックに分割」の「画像入力部」は、「外部より入力される映像信号を16×16画素サイズのマクロブロック単位に分割して出力する画像入力部」を指すことから、引用例1の階層的動画像符号化装置は、 外部より入力される映像信号を分割した16×16画素サイズのマクロブロックを、さらに小さい2×2画素サイズのマイクロブロックに分割し、 それぞれのマイクロブロックに対して、DCTにより、直流成分と交流成分を分離し、 得られた成分毎にそれぞれ8×8画素サイズの直流成分ブロック及び交流成分ブロックを出力する階層化部を備えるものである。 (3)上記ウ.の段落0018?0021、エ.の段落0028?0030の記載から、引用例1の階層的動画像符号化装置は、各成分ブロックの差分データを出力する差分データ生成部、差分データに対して直流成分ブロックを変換し直流成分変換係数を出力する直流成分変換部と交流成分ブロックを変換し交流成分変換係数を出力する交流成分変換部とを備える変換部、変換係数をエントロピー符号化するエントロピー符号化部を有するものである。 したがって、引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。 なお、説明のために、aないしcの記号を当審において付与した。以下、「構成a」、「構成b」などと称することとする。 「a-1 外部より入力される映像信号を分割した16×16画素サイズのマクロブロックを、さらに小さい2×2画素サイズのマイクロブロックに分割し、 a-2 それぞれのマイクロブロックに対して、DCTにより、直流成分と交流成分を分離し、 a-3 得られた成分ごとにそれぞれ8×8画素サイズの直流成分ブロック及び交流成分ブロックを出力する a-4 階層化部と、 b 各成分ブロックの差分データを出力する差分データ生成部、差分データに対して直流成分ブロックを変換し直流成分変換係数を出力する直流成分変換部と交流成分ブロックを変換し交流成分変換係数を出力する交流成分変換部とを備える変換部、変換係数をエントロピー符号化するエントロピー符号化部と c を備える階層的動画像符号化装置。」 4.対比 本願発明と引用発明を対比する。 (1)本願発明の構成Aと引用発明の構成a-1について 引用発明の構成a-1の「外部より入力される映像信号」は、本願発明の「入力ビデオ信号」に相当し、何らかの解像度を有するものであるから、本願発明のように「第1の解像度に対応する」と称することができ、「第1の解像度に対応する入力ビデオ信号」に相当する。 また、引用発明の「16×16画素サイズのマクロブロック」は、映像信号を分割したものであり、映像信号の一部といえるので、本願発明の「入力ビデオ信号の一部」に相当する。 さらに、「16×16画素サイズのマクロブロックを、さらに小さい2×2画素サイズのマイクロブロックに分割する」ことにおいては、映像信号から選択された映像信号の一部であるマクロブロックを、さらに細かく分割するものといえるので、本願発明の「入力ビデオ信号の一部を選択し、前記部分をパーティションに分割する」ことに相当する。 したがって、本願発明の構成Aと引用発明の構成a-1は、「第1の解像度に対応する入力ビデオ信号の一部を選択し、前記部分をパーティションに分割する」点で共通する。 しかし、引用発明は、部分をパーティションに分割することを「階層化部」で行うのに対し、本願発明は、「プリプロセッサ」で行う点で相違する。 (2)本願発明の構成Bと引用発明の構成a-2について 引用発明の構成a-2では、「それぞれのマイクロブロックに対して、DCTにより、直流成分と交流成分を分離」しており、DCTを行った場合、『空間領域から周波数領域にマイクロブロックを変換する』構成となることは技術常識である。 このとき、『空間領域』、『周波数領域』は、本願発明の「第1の領域」、「第2の領域」にそれぞれ相当する。 また、上記(1)で検討したように、引用発明の『マイクロブロック』は、本願発明の「パーティション」に相当する。 したがって、本願発明の構成Bと引用発明の構成a-2は、「第1の領域から第2の領域に前記パーティションを変換する」点で共通する。 しかし、引用発明は、パーティションを変換することを「階層化部」で行うのに対し、本願発明は、「第1の変換器」で行う点で相違する。 (3)本願発明の構成C、Dと引用発明の構成a-1、a-3について 引用発明の構成a-1より、外部より入力される映像信号を分割したマクロブロックは、16×16画素サイズであり、構成a-3より、直流成分ブロック及び交流成分ブロックは、8×8画素サイズであるから、「直流成分ブロック及び交流成分ブロック」は、「外部より入力される映像信号」よりも低い解像度である。 ここで、上記(1)のように、「外部より入力される映像信号」の解像度を、本願発明のように「第1の解像度」と称すると、「直流成分ブロック及び交流成分ブロック」の解像度は、「第1の解像度より低い解像度である第2の解像度」と称することができる。 さらに、「直流成分ブロック及び交流成分ブロック」は、構成bにより符号化されるので、符号化された直流成分ブロックと符号化された交流成分ブロックは、「第1の解像度より低い解像度である第2の解像度」に従うといえる。 また、『符号化された直流成分ブロック』、『符号化された交流成分ブロック』は、ともに、本願発明の「出力符号化ビデオ信号」に相当する。 したがって、引用発明においても、本願発明のように、「出力符号化ビデオ信号に対応し前記第1の解像度より低い解像度である第2の解像度に従」うものといえる。 構成a-3は、成分ごとに分けて該成分のみから形成される直流成分ブロック及び交流成分ブロックを出力するものであるから、『DCTにより分離された1つの直流成分と3つの交流成分から直流成分を選択し、直流成分を収集して、8×8画素サイズの1つの直流成分ブロックを形成し、交流成分を選択し、交流成分を収集して、8×8画素サイズの3つの交流成分ブロックを形成する』といえる。 ここで、引用発明における、低い解像度の再生画像を得るために必要な『直流成分』に着目すると、『DCTにより分離された1つの直流成分と3つの交流成分から直流成分を選択』することは、周波数領域におけるそれぞれのマイクロブロックから周波数領域に基づく1つの直流成分を選択することであるから、本願発明の構成Cの「前記第2の領域のそれぞれの前記パーティションから周波数領域に基づく1つの代表的な値を選択」することに相当する。 さらに、『直流成分を収集して、8×8画素サイズの1つの直流成分ブロックを形成』することは、本願発明の構成Dの「前記代表的な値を収集して代表的な値のグループを形成する」ことに相当する。 したがって、本願発明の構成C、Dと引用発明の構成a-3は、 「出力符号化ビデオ信号に対応し前記第1の解像度より低い解像度である第2の解像度に従って、前記第2の領域のそれぞれの前記パーティションから周波数領域に基づく1つの代表的な値を選択し、 前記代表的な値を収集して代表的な値のグループを形成する」 点で共通する。 しかし、引用発明は、1つの代表的な値を選択すること、代表的な値のグループを形成することを「階層化部」で行うのに対し、本願発明は、1つの代表的な値を選択することは「セレクタ」で行い、代表的な値のグループを形成することは「コレクタ」で行う点、1つの代表的な値を選択することに関して、引用発明は、本願発明のように、「他の値を廃棄する」のか否か不明である点で相違する。 (4)本願発明の構成Eと引用発明の構成bについて 引用発明の構成bの「各成分ブロックの差分データを出力する差分データ生成部、差分データに対して直流成分ブロックを変換し直流成分変換係数を出力する直流成分変換部と交流成分ブロックを変換し交流成分変換係数を出力する交流成分変換部とを備える変換部」は、「変換係数をエントロピー符号化する」際の「変換係数」を出力するために備えられている構成であるから、「エントロピー符号化」のための構成といえ、構成bは、各成分ブロックを符号化しているといえる。 また、エントロピー符号化して出力される信号は、「符号化された直流成分ブロック」及び「符号化された交流成分ブロック」であり、上記(3)と同様に、低い解像度の再生画像を得るために必要な「直流成分」に着目すると、引用発明は、『直流成分ブロックを符号化し、符号化された直流成分ブロックを生成する』ものである。 このとき、『直流成分ブロック』、『符号化された直流成分ブロック』は、本願発明の「代表的なグループ」、「出力符号化ビデオ信号」にそれぞれ相当する。 したがって、本願発明の構成Eと引用発明の構成bは、「前記代表的なグループを符号化し、前記出力符号化ビデオ信号を生成する」点で共通する。 しかし、符号化することに関して、引用発明は、「差分データ生成部」、「変換部」、「エントロピー符号化部」で行うのに対し、本願発明は、「第1の符号化ユニット」で行う点で相違する。 (5)本願発明の構成Fと引用発明の構成dについて 引用発明の構成dの「階層的動画像符号化装置」は、動画像を符号化する装置であるから、本願発明の構成Fの「ビデオ信号エンコーダ」に相当する。 (6)一致点・相違点 したがって、上記(1)?(5)により、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。 (一致点) 「第1の解像度に対応する入力ビデオ信号の一部を選択し、前記部分をパーティションに分割し、 第1の領域から第2の領域に前記パーティションを変換するようにし、 出力符号化ビデオ信号に対応し前記第1の解像度より低い解像度である第2の解像度に従って、前記第2の領域のそれぞれの前記パーティションから周波数領域に基づく1つの代表的な値を選択し、 前記代表的な値を収集して代表的な値のグループを形成するようにし、 前記代表的なグループを符号化し、前記出力符号化ビデオ信号を生成するようにした ビデオ信号エンコーダ。」 (相違点) <相違点1> 部分をパーティションに分割することに関して、本願発明は、「プリプロセッサ」で行うのに対し、引用発明は、「階層化部」で行う点。 <相違点2> パーティションを変換することに関して、本願発明は、「第1の変換器」で行うのに対し、引用発明は、「階層化部」で行う点。 <相違点3> 1つの代表的な値を選択すること、代表的な値のグループを形成することに関して、本願発明は、1つの代表的な値を選択することは「セレクタ」で行い、代表的な値のグループを形成することは「コレクタ」で行うのに対し、引用発明は、いずれも「階層化部」で行う点。 <相違点4> 1つの代表的な値を選択することに関して、本願発明は「他の値を廃棄する」構成であるのに対し、引用発明は、そのような構成を有するのか否か不明である点。 <相違点5> 符号化することに関して、本願発明は、「第1の符号化ユニット」で行うのに対し、引用発明は、「差分データ生成部」、「変換部」、「エントロピー符号化部」で行う点。 5.当審の判断 上記相違点について検討する。 (1)相違点1?3、5について 相違点1?3をまとめると、本願発明が、「プリプロセッサ」、「第1の変換器」、「セレクタ」、「コレクタ」で行うことを、引用発明は、いずれも「階層化部」で行う点で相違するものである。また、相違点5は、本願発明が、「第1の符号化ユニット」で行うことを、引用発明は、「差分データ生成部」、「変換部」、「エントロピー符号化部」で行う点で相違するものである。 データを処理する装置において、複数の異なる処理を行う場合、一つの処理部で行うことも、複数の処理部に分けて順に行うことも、いずれも周知技術であり、いずれの構成を採用するかについては、当業者が適宜なし得ることであるから、引用発明の「階層化部」で行う処理を複数の処理部で行うようにし、本願発明のように、「プリプロセッサ」、「第1の変換器」、「セレクタ」、「コレクタ」で行うようにし、引用発明の「差分データ生成部」、「変換部」、「エントロピー符号化部」で行う処理を1つの処理部にまとめ、本願発明のように、「第1の符号化ユニット」で行うようにすることは、当業者が容易に想到し得るものである。 したがって、相違点1?3、5については、格別のものではない。 (2)相違点4について 上記4.(3)で検討したように、引用発明の構成a-3は、『DCTにより分離された1つの直流成分と3つの交流成分から直流成分を選択し、直流成分を収集して、8×8画素サイズの1つの直流成分ブロックを形成し、交流成分を選択し、交流成分を収集して、8×8画素サイズの3つの交流成分ブロックを形成する』ものである。 ところで、引用発明の構成bの「変換部」は、「直流成分ブロックを変換し直流成分変換係数を出力する直流成分変換部と交流成分ブロックを変換し交流成分変換係数を出力する交流成分変換部とを備える」ものであり、直流成分と交流成分は、直流成分変換部と交流成分変換部という異なる変換部にて変換されるものである。 また、引用例1の段落0022及び0040、図5及び9の記載から、逆変換部においても、直流成分の変換係数と交流成分の変換係数は、直流成分逆変換部と交流成分逆変換部という異なる逆変換部にて変換されるものである。 すなわち、引用例1には、直流成分や交流成分を処理する際に、直流成分と交流成分を異なる処理部にて処理することが開示されているといえる。 そうすると、引用発明において、『1つの直流成分と3つの交流成分から』『直流成分を選択』することと、『交流成分を選択』することについても、直流成分を選択する選択部と交流成分を選択する選択部というようにそれぞれ異なる選択部を備えるように構成することは、当業者であれば、容易に想到し得るものであり、その際に、直流成分を選択する選択部においては、交流成分は使用されないので、選択されずに廃棄されることとなる。 したがって、相違点4については、格別のものではない。 そして、本願発明に関する作用・効果も、引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。 6.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-03-17 |
結審通知日 | 2017-03-21 |
審決日 | 2017-04-03 |
出願番号 | 特願2012-553803(P2012-553803) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 長谷川 素直、堀井 啓明 |
特許庁審判長 |
藤井 浩 |
特許庁審判官 |
小池 正彦 渡辺 努 |
発明の名称 | ビデオ信号処理 |
代理人 | 内藤 和彦 |
代理人 | 大貫 敏史 |
代理人 | 江口 昭彦 |
代理人 | 土屋 徹雄 |
代理人 | 稲葉 良幸 |