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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03F
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 G03F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G03F
管理番号 1331638
審判番号 不服2016-9207  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-21 
確定日 2017-08-17 
事件の表示 特願2012-539740「パターン形成方法及び感放射線性組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 4月26日国際公開、WO2012/053527〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年10月18日(優先権主張平成22年10月22日)を国際出願日とする出願であって、平成27年2月24日付けで拒絶の理由が通知され、同年4月21日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年8月17日付けで拒絶の理由が通知され、同年10月23日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成28年3月15日付けで平成27年10月23日付け手続補正書でした補正が却下されるとともに拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対して、同年6月21日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成28年6月21日付け手続補正についての補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
平成28年6月21日付け手続補正を却下する。

〔理由〕
1 本件補正の内容
(1)平成28年6月21日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするものであって、願書に最初に添付された特許請求の範囲(以下「当初特許請求の範囲」といい、同じく、願書に最初に添付された明細書を「当初明細書」という。)における本件補正前の請求項7に、
「(1)感放射線性組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程、
(2)上記レジスト膜を露光する工程、及び
(3)上記露光されたレジスト膜を現像する工程
を含むパターン形成方法に用いられる感放射線性組成物であって、
[A]酸解離性基を有する構造単位を含む重合体、
[B]感放射線性酸発生体、及び
[C]下記式(2)で表される化合物であって、露光により発生する酸が、露光により[B]感放射線性酸発生体から発生する酸より相対的に弱い化合物(但し、重合体を除く。)
を含有することを特徴とする感放射線性組成物。
【化3】

(式(2)中、R^(1)は、水素原子又は1価の有機基である。
A^(-)は、-COO^(-)、-O^(-)又は-SO_(3)^(-)である。但し、A^(-)が、-SO_(3)^(-)の場合、-SO_(3)^(-)がフッ素原子を有する炭素原子と直接結合する場合はない。
X^(+)は、オニウムカチオンである。)」とあったものを、

「(1)感放射線性組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程、
(2)上記レジスト膜を露光する工程、及び
(3)上記露光されたレジスト膜を現像する工程
を含むパターン形成方法に用いられる感放射線性組成物であって、
[A]酸解離性基を有する構造単位を含む重合体(但し、酸の作用により親水性が増大する酸分解性基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位と、-SO_(2)-含有環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位とを有する樹脂成分、及び酸の作用によりアルコール性水酸基を生じて親水性が増大する酸分解性基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位を有する樹脂成分を除く)、
[B]感放射線性酸発生体、及び
[C]下記式(2)で表される化合物であって、露光により発生する酸が、露光により[B]感放射線性酸発生体から発生する酸より相対的に弱い化合物(但し、重合体を除く。)
を含有することを特徴とする感放射線性組成物(但し、下記(i)?(v)を除く)。
【化5】

(式(2)中、R^(1)は、水素原子又は1価の有機基である。
A^(-)は、-COO^(-)、-O^(-)又は-SO_(3)^(-)である。但し、A^(-)が、-SO_(3)^(-)の場合、-SO_(3)^(-)がフッ素原子を有する炭素原子と直接結合する場合はなく、かつR^(1)は、水素原子の一部若しくは全部が置換されていてもよい炭素数1?20のアルキル基である。
X^(+)は、オニウムカチオンである。)
(i)酸の作用により分解してアルコール性ヒドロキシ基を生じる基を備えた繰り返し単位を含んだ樹脂と、活性光線又は放射線の作用によりpKa≧-1.5の酸を発生する化合物とを含有した感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
(ii)酸の作用により、極性が増大して有機溶剤を含む現像液に対する溶解性が減少する樹脂と、活性光線又は放射線の照射により下記一般式(I)で表されるスルホン酸を発生する少なくとも1種の化合物と、溶剤とを含有する化学増幅型レジスト組成物。
【化6】

(上記一般式(I)中、X_(1)、X_(2)は、それぞれ独立して、フッ素原子、又はフルオロアルキル基を表す。
R_(1)、R_(2)は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、又は、環状構造を有する基を表す。R_(1)とR_(2)は互いに結合して環を形成していてもよい。但し、R_(1)とR_(2)は同時に水素原子を表さない。
Lは、2価の連結基を表す。Lが複数存在する場合、複数のLは同じであっても異なっていてもよい。mは、0以上の整数を表す。)
(iii)酸の作用により、有機溶剤を含む現像液に対する溶解度が減少する樹脂、活性光線又は放射線の作用により酸を発生する化合物、及び活性光線又は放射線の作用により塩基性が低下する、塩基性官能基と活性光線若しくは放射線の作用により酸性官能基を発生する基とを有する塩基性化合物を含有するレジスト組成物。
(iv)実質的にアルカリ不溶性である樹脂、活性光線又は放射線の作用により酸を発生する化合物、架橋剤、及び溶剤を含有するレジスト組成物。
(v)下記構造式(A)-20’で表される共重合体と、下記構造式(B)-2で表される化合物と、下記構造式(B)-3で表される化合物とを含有するレジスト組成物。
【化7】

」とする補正を含むものである(下線は当審で付した。以下同様。)。

(2)本件補正後の請求項7に係る上記(1)の補正は、次のアないしウの補正からなるものである。
ア 本件補正前の請求項7に係る発明を特定するために必要な事項である「[A]酸解離性基を有する構造単位を含む重合体」を「[A]酸解離性基を有する構造単位を含む重合体(但し、酸の作用により親水性が増大する酸分解性基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位と、-SO_(2)-含有環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位とを有する樹脂成分、及び酸の作用によりアルコール性水酸基を生じて親水性が増大する酸分解性基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位を有する樹脂成分を除く)」とする補正。
イ 本件補正前の請求項7に係る発明を特定するために必要な事項である「感放射線性組成物」を「感放射線性組成物(但し、下記(i)?(v)を除く)」「(i)酸の作用により分解してアルコール性ヒドロキシ基を生じる基を備えた繰り返し単位を含んだ樹脂と、活性光線又は放射線の作用によりpKa≧-1.5の酸を発生する化合物とを含有した感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
(ii)酸の作用により、極性が増大して有機溶剤を含む現像液に対する溶解性が減少する樹脂と、活性光線又は放射線の照射により下記一般式(I)で表されるスルホン酸を発生する少なくとも1種の化合物と、溶剤とを含有する化学増幅型レジスト組成物。
【化6】

(上記一般式(I)中、X_(1)、X_(2)は、それぞれ独立して、フッ素原子、又はフルオロアルキル基を表す。
R_(1)、R_(2)は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、又は、環状構造を有する基を表す。R_(1)とR_(2)は互いに結合して環を形成していてもよい。但し、R_(1)とR_(2)は同時に水素原子を表さない。
Lは、2価の連結基を表す。Lが複数存在する場合、複数のLは同じであっても異なっていてもよい。mは、0以上の整数を表す。)
(iii)酸の作用により、有機溶剤を含む現像液に対する溶解度が減少する樹脂、活性光線又は放射線の作用により酸を発生する化合物、及び活性光線又は放射線の作用により塩基性が低下する、塩基性官能基と活性光線若しくは放射線の作用により酸性官能基を発生する基とを有する塩基性化合物を含有するレジスト組成物。
(iv)実質的にアルカリ不溶性である樹脂、活性光線又は放射線の作用により酸を発生する化合物、架橋剤、及び溶剤を含有するレジスト組成物。
(v)下記構造式(A)-20’で表される共重合体と、下記構造式(B)-2で表される化合物と、下記構造式(B)-3で表される化合物とを含有するレジスト組成物。
【化7】

」とする補正。
ウ 本件補正前の請求項7に係る発明を特定するために必要な事項である「【化3】

(式(2)中、R^(1)は、水素原子又は1価の有機基である。
A^(-)は、-COO^(-)、-O^(-)又は-SO_(3)^(-)である。但し、A^(-)が、-SO_(3)^(-)の場合、-SO_(3)^(-)がフッ素原子を有する炭素原子と直接結合する場合はない。
X^(+)は、オニウムカチオンである。)」を
「【化5】

(式(2)中、R^(1)は、水素原子又は1価の有機基である。
A^(-)は、-COO^(-)、-O^(-)又は-SO_(3)^(-)である。但し、A^(-)が、-SO_(3)^(-)の場合、-SO_(3)^(-)がフッ素原子を有する炭素原子と直接結合する場合はなく、かつR^(1)は、水素原子の一部若しくは全部が置換されていてもよい炭素数1?20のアルキル基である。
X^(+)は、オニウムカチオンである。)」とする補正。

2 本件補正の目的
(1)上記1(2)アの補正は、本件補正前の請求項7に係る発明を特定するために必要な事項である「[A]酸解離性基を有する構造単位を含む重合体」を、平成28年3月15日付け補正の却下の決定で引用された出願14(特願2010-146284号)及び出願17(特願2010-196052号)の明細書に記載の特定の重合体を除いたものに限定するものである。

(2)上記1(2)イの補正は、本件補正前の請求項7に係る発明を特定するために必要な事項である「感放射線性組成物」を、原査定の拒絶の理由で引用された出願7(特願2010-72840号)及び出願8(特願2010-67076号)、平成28年3月15日付け補正の却下の決定で引用された出願15(特願2009-144711号)、出願16(特願2009-232706号)及び出願17(特願2010-196052号)の明細書に記載の特定の感放射線性組成物を除いたものに限定するものである。

(3)上記1(2)ウの補正は、本件補正前の請求項7に係る発明を特定するために必要な事項である「[C]下記式(2)で表される化合物」の「式(2)」について、願書に最初に添付された明細書の【0099】の記載に基づいて、「R^(1)は、水素原子の一部若しくは全部が置換されていてもよい炭素数1?20のアルキル基である」と限定するものである。

(4)上記(1)ないし(3)からみて、本件補正後の請求項7は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。また、本件補正は、本件補正前の請求項7に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が補正の前後において同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そうすると、本件補正後の請求項7は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。また、本件補正は、本件補正前の請求項7に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が補正の前後において同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後の請求項7に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか。以下「独立特許要件」という。)について以下検討する。

3 先願
平成28年3月15日付け補正の却下の決定で出願13として引用され、本件の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前の優先日(平成22年7月8日)を有する特許出願であって、本件の出願後に出願公開がされた特願2011-145544号(特開2012-32807号公報)(出願日:平成23年6月30日、出願人:信越化学工業株式会社、発明者:畠山潤)(以下「先願」という。)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「先願明細書等」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。

(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、露光後、酸と熱によって脱保護反応を行い、特定の有機溶剤による現像によって未露光部分を溶解させ、露光部が溶解しないネガティブパターンを得るためのパターン形成方法に関する。
・・・略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
有機溶剤によるネガティブ現像を行うためには、溶解コントラストが高く、安全性が高い最適な現像液を開発することが要求される。
本発明は、かかる要求に応えたもので、有機溶剤によるネガティブトーン現像を行うための最適な現像液とレジスト組成物を組み合わせたパターン形成方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前述の有機溶剤現像液として、溶解コントラストの観点からは酢酸ブチルが好ましい。しかしながら酢酸ブチルの引火点は28℃と低いために、これをコーターデベロッパーで安全に使用するためには防爆装置が必要となり、装置のコストアップにつながる。引火点が40℃以上で酢酸ブチルと同等あるいはそれ以上の溶解コントラストを供することができる有機溶剤現像液が求められている。
【0021】
酢酸ブチルよりも炭素数が多い酢酸アミルでは引火点が45℃であり、安全性の観点から好ましいが、未露光部の溶解速度が低下する。酢酸ブチルと同じ炭素数の蟻酸アミルは同程度の溶解コントラストを得ることができるが引火点が25℃であり、酢酸ブチルより
も更に引火性が増す。エステル系溶剤で酢酸ブチルよりも炭素数が少ない溶剤では引火点が更に下がり、また溶解性が高すぎて現像後のレジストパターンの露光部分の残膜が低下する。
【0022】
また、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエチレングリコール、プロピレングリコールのヒドロキシ基置換体及び乳酸エチル、シクロヘキサノン等は単独でレジスト溶剤として用いられるぐらいに溶解性が高いために現像後のレジストパターンが残らない。アルコール系溶剤はトップコート用の溶剤に用いられるぐらいレジスト膜の溶解性が低く、現像後の未露光部のスペースパターンが溶解しない。
引火点が40℃以上で溶解コントラストが高い現像液の開発が望まれている。
【0023】
本発明者は、鋭意検討を行った結果、ベース樹脂として酸不安定基で置換されたカルボキシル基を有する繰り返し単位と、ラクトン環を有する繰り返し単位の両方を含有する(メタ)アクリレート共重合体を用いると共に、現像液として安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、蟻酸ベンジル、蟻酸フェニルエチル、3-フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル、酢酸2-フェニルエチルから選ばれる溶剤1種以上を40質量%以上含有する溶液を用いることにより、ネガティブトーンのパターンを安全性を持って形成でき、また特に溶解コントラストの高いパターン形成が可能で、微細なホールパターンを有利に形成し得ることを知見した。
・・・略・・・
【0029】
本発明のパターン形成方法に用いるフォトレジスト組成物のベースポリマーに用いられるラクトンを有する密着性基としては、単環構造のものを用いることができるが、酸拡散制御の観点からは有橋環式構造を有していることが好ましい。
【0030】
酸不安定基を有する(メタ)アクリレートと特定の有橋環式のラクトンを密着性基として有する(メタ)アクリレートの共重合体の繰り返し単位としては、下記一般式(1)中の繰り返し単位a及びbが示される。
【化1】

(式中、R^(1)、R^(3)は水素原子又はメチル基を示すが、互いに同一でも異なっていてもよい。R^(2)は酸不安定基である。X、Yは単結合又は-C(=O)-O-R^(9)-であり、R^(9)は炭素数1?10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基であり、該アルキレン基はエーテル基、エステル基、ラクトン環又はヒドロキシ基を有していてもよく、あるいはナフチレン基である。R^(4)、R^(6)、R^(7)、R^(8)は水素原子、又は炭素数1?6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、トリフルオロメチル基、又はシアノ基、R^(5)は水素原子、炭素数1?6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、カルボキシル基、フッ素原子等で置換された又は非置換の炭素数1?12のアルコキシカルボニル基、又はシアノ基であり、Zはメチレン基、酸素原子又は硫黄原子である。a、bは0<a<1.0、0<b<1.0、0<a+b≦1.0の範囲である。)
・・・略・・・
【0057】
特に、R^(2)で示される酸不安定基として、下記式(AL-12)-19に示されるエキソ体構造を有するものが好ましい。
【化14】

(式中、R^(69)は炭素数1?8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6?20の置換されていてもよいアリール基を示す。R^(70)?R^(75)及びR^(78)、R^(79)はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1?15のヘテロ原子を含んでもよいアルキル基等の1価炭化水素基を示し、R^(76)、R^(77)は水素原子を示す。あるいは、R^(70)とR^(71)、R^(72)とR^(74)、R^(72)とR^(75)、R^(73)とR^(75)、R^(73)とR^(79)、R^(74)とR^(78)、R^(76)とR^(77)、又はR^(77)とR^(78)は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環(特に脂環)を形成してもよく、その場合には環の形成に関与するものは炭素数1?15のヘテロ原子を含んでもよいアルキレン基等の2価炭化水素基を示す。またR^(70)とR^(79)、R^(76)とR^(79)、又はR^(72)とR^(74)は隣接する炭素に結合するもの同士で何も介さずに結合し、二重結合を形成してもよい。また、本式により、鏡像体も表す。)
【0058】
ここで、一般式(AL-12)-19に示すエキソ体構造を有する下記繰り返し単位
【化15】

を得るためのエステル体のモノマーとしては、特開2000-327633号公報に示されている。具体的には下記に示すものを挙げることができるが、これらに限定されることはない。なお、R^(1)は上記の通りである。
【0059】
【化16】・・・

・・・」

(2)「【実施例】
【0115】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例等に制限されるものではない。なお、重量平均分子量(Mw)はGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量を示す。
【0116】
[合成例]
レジスト組成物に用いる高分子化合物として、各々のモノマーを組み合わせてテトラヒドロフラン溶剤下で共重合反応を行い、メタノールに晶出し、更にヘキサンで洗浄を繰り返した後に単離、乾燥して、以下に示す組成の高分子化合物(ポリマー1?16及び比較ポリマー1,2)を得た。得られた高分子化合物の組成は1H-NMR、分子量及び分散度はゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより確認した。」
・・・略・・・
【0118】
レジストポリマー2
分子量(Mw)=8,300
分散度(Mw/Mn)=1.75
【化36】

・・・略・・・
【0135】
ポジ型レジスト組成物の調製
高分子化合物(レジストポリマー)を用いて、下記表1に示す組成で溶剤に対して住友スリーエム(株)製フッ素系界面活性剤FC-4430が100ppm溶解した溶液を0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過した溶液を調製した。
【0136】
下記表中の各組成は次の通りである。
酸発生剤:PAG1,2(下記構造式参照)
【化53】
・・・

撥水性ポリマー1
分子量(Mw)=9,100
分散度(Mw/Mn)=1.83
【化54】
・・・略・・・
【0138】
塩基性化合物:Quencher1?5(下記構造式参照)
【化56】・・・

・・・
有機溶剤:PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
CyH(シクロヘキサノン)」

(3)「【0143】
ArF露光パターニング評価(2)
下記表3に示す組成で調製したレジスト組成物を、シリコンウエハーに信越化学工業(株)製スピンオンカーボン膜ODL-50(カーボンの含有量が80質量%)を200nm、その上に珪素含有スピンオンハードマスクSHB-A940(珪素の含有量が43質量%)を35nmの膜厚で成膜したトライレイヤープロセス用の基板上にスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、レジスト膜の厚みを100nmにした。これをArFエキシマレーザー液浸スキャナー((株)ニコン製、NSR-610C、NA1.30、σ0.98/0.78、クロスポール開口20度、Azimuthally偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、ウエハー上寸法がピッチ90nm、ライン幅30nmの図16に示されるレイアウトの格子状マスク)を用いて露光量を変化させながら露光を行い、露光後、表4に示される温度で60秒間ベーク(PEB)し、現像ノズルから表4に示す現像液を3秒間30rpmで回転させながら吐出させ、その後、静止パドル現像を27秒間行い、ジイソアミルエーテルでリンス後、スピンドライし、100℃で20秒間ベークしてリンス溶剤を蒸発させた。
【0144】
溶剤現像のイメージ反転されたホールパターン50箇所の寸法を(株)日立ハイテクノロジーズ製TDSEM(S-9380)で測定し、3σの寸法バラツキを求めた。結果を表4に示す。
【0145】
【表3】

【0146】
【表4】



(4)表4(上記(3))の記載から、実施例2-27のArF露光パターニングにおいて、レジスト組成物としてレジスト2-15を用いていることが読み取れる。また、表3(上記(3))の記載からみて、レジスト2-15は、ポリマーとしてポリマー2、酸発生剤としてPAG2及び塩基性化合物としてQuencher4を含有していることが読み取れる。

(5)上記(1)ないし(4)からみて、先願明細書等には、実施例2-27として、以下の発明が記載されている。
「レジスト組成物を基板上にスピンコーティングし、レジスト膜の厚みを100nmにし、露光を行い、露光後、現像ノズルから現像液として安息香酸メチルを3秒間30rpmで回転させながら吐出させ、その後、静止パドル現像を27秒間行う、ArF露光パターニングをするために用いられる、レジスト組成物であって、
ポリマー2


酸発生剤


及び
塩基性化合物

を含有する、
レジスト組成物。」(以下「先願発明」という。)

(6)なお、上記(5)で先願発明として認定した事項は、先願の優先権主張の基礎となる特願2010-155682号(出願日:平成22年7月8日)の【0117】(レジストポリマー2)、【0130】(酸発生剤PAG2)、【0132】(塩基性化合物であるQuencher4)、【0137】(ArF露光パターニングの工程)、【0139】(レジスト2-15)及び【0140】(実施例2-27)にも記載されている。

4 対比
本願補正発明と先願発明とを対比する。
(1)先願発明の「ポリマー2」は、左端の構成単位が酸不安定基を有する(メタ)アクリレートを由来とするものであり、該酸不安定基は「酸解離性基」であることが技術常識である。また、先願発明の「ポリマー2」は、-SO_(2)-含有環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位を含むものではないから、「酸の作用により親水性が増大する酸分解性基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位と、-SO_(2)-含有環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位とを有する樹脂成分、及び酸の作用によりアルコール性水酸基を生じて親水性が増大する酸分解性基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位を有する樹脂成分」ではない。そうすると、先願発明の「ポリマー2」は、本願補正発明の「[A]酸解離性基を有する構造単位を含む重合体(但し、酸の作用により親水性が増大する酸分解性基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位と、-SO_(2)-含有環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位とを有する樹脂成分、及び酸の作用によりアルコール性水酸基を生じて親水性が増大する酸分解性基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位を有する樹脂成分を除く)」に相当する。

(2)先願発明の「酸発生剤」は、技術常識からみて、本願補正発明の「[B]感放射線性酸発生体」に相当することは明らかである。

(3)先願発明の「塩基性化合物」は、本願補正発明の式(2)で表される化合物の要件を満たす。そして、先願発明において、「塩基性化合物」と「酸発生剤」とを比較すると、露光により発生する酸が相対的に弱い化合物が前者であることは、技術的にみて明らかである。すなわち、先願発明において、「酸発生剤」は、アニオンについて「-CF_(2)SO_(3)^(-)」で表される構造を含むのに対し、「塩基性化合物」は、アニオンについて「-CH_(2)SO_(3)^(-)」で表される構造を含むものである。してみると、先願発明の「塩基性化合物」は、本願補正発明の式(2)で表される化合物における、「露光により発生する酸が、露光により[B]感放射線性酸発生体から発生する酸より相対的に弱い化合物」の要件を満たす。そして、「塩基性化合物」の「Quencher4」は、右方のアニオンが水素原子の一部若しくは全部が置換されていてもよい炭素数1?20のアルキル基と-SO_(3)^(-)とが結合されており、該-SO_(3)^(-)がフッ素原子を有する炭素原子と直接結合していないものであり、左方のカチオンがオニウムカチオンである。してみると、先願発明の「塩基性化合物」は、本願補正発明の「[C]下記式(2)で表される化合物であって、露光により発生する酸が、露光により[B]感放射線性酸発生体から発生する酸より相対的に弱い化合物(但し、重合体を除く。)」
「【化5】

(式(2)中、R^(1)は、水素原子又は1価の有機基である。
A^(-)は、-COO^(-)、-O^(-)又は-SO_(3)^(-)である。但し、A^(-)が、-SO_(3)^(-)の場合、-SO_(3)^(-)がフッ素原子を有する炭素原子と直接結合する場合はなく、かつR^(1)は、水素原子の一部若しくは全部が置換されていてもよい炭素数1?20のアルキル基である。
X^(+)は、オニウムカチオンである。)」に相当する。

(4)上記(1)ないし(3)からみて、先願発明の「レジスト組成物」は、酸の作用により分解してアルコール性ヒドロキシ基を生じる基を備えた繰り返し単位を含んだ樹脂、下記一般式(I)で表されるスルホン酸を発生する少なくとも1種の化合物、塩基性官能基を有する塩基性化合物又は架橋剤を含むレジスト組成物、若しくは、下記構造式(A)-20’で表される共重合体と、下記構造式(B)-2で表される化合物と、下記構造式(B)-3で表される化合物を含むレジスト組成物ではないから、本願補正発明の「(i)?(v)」のいずれにも該当しない。
してみると、先願発明の「レジスト組成物」は、本願補正発明の「下記(i)?(v)を除」いたものである。
「(i)酸の作用により分解してアルコール性ヒドロキシ基を生じる基を備えた繰り返し単位を含んだ樹脂と、活性光線又は放射線の作用によりpKa≧-1.5の酸を発生する化合物とを含有した感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
(ii)酸の作用により、極性が増大して有機溶剤を含む現像液に対する溶解性が減少する樹脂と、活性光線又は放射線の照射により下記一般式(I)で表されるスルホン酸を発生する少なくとも1種の化合物と、溶剤とを含有する化学増幅型レジスト組成物。
【化6】

(上記一般式(I)中、X_(1)、X_(2)は、それぞれ独立して、フッ素原子、又はフルオロアルキル基を表す。
R_(1)、R_(2)は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、又は、環状構造を有する基を表す。R_(1)とR_(2)は互いに結合して環を形成していてもよい。但し、R_(1)とR_(2)は同時に水素原子を表さない。
Lは、2価の連結基を表す。Lが複数存在する場合、複数のLは同じであっても異なっていてもよい。mは、0以上の整数を表す。)
(iii)酸の作用により、有機溶剤を含む現像液に対する溶解度が減少する樹脂、活性光線又は放射線の作用により酸を発生する化合物、及び活性光線又は放射線の作用により塩基性が低下する、塩基性官能基と活性光線若しくは放射線の作用により酸性官能基を発生する基とを有する塩基性化合物を含有するレジスト組成物。
(iv)実質的にアルカリ不溶性である樹脂、活性光線又は放射線の作用により酸を発生する化合物、架橋剤、及び溶剤を含有するレジスト組成物。
(v)下記構造式(A)-20’で表される共重合体と、下記構造式(B)-2で表される化合物と、下記構造式(B)-3で表される化合物とを含有するレジスト組成物。
【化7】



(5)先願発明の「レジスト組成物」、「基板」、「レジスト膜」、「露光」、「静止パドル現像」及び「ArF露光パターニング」は、それぞれ本願補正発明の「感放射線性組成物」、「基板」、「レジスト膜」、「露光」、「現像」及び「パターン形成」に相当する。

(6)先願発明は、「レジスト組成物」(本願補正発明の「感放射線性組成物」に相当。以下「」に続く()内の用語は対応する本願補正発明の用語を表す。)を「基板」(基板)上にスピンコーティングし、「レジスト膜」(レジスト膜)の厚みを100nmになるようにしているから、先願発明は、本願補正発明の「(1)感放射線性組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程」を含む。

(7)先願発明は、「レジスト膜」(レジスト膜)を形成後、「露光」を行っているから、本願補正発明の「(2)上記レジスト膜を露光する工程」を含む。

(8)先願発明は、「レジスト膜」(レジスト膜)を「露光」(露光)後、「静止パドル現像」(現像)を行っているから、本願補正発明の「(3)上記露光されたレジスト膜を現像する工程」を含む。

(9)先願発明は、「ArF露光パターニング」(パターン形成)をするのであるから、「ArF露光パターニング」の方法であり、「レジスト組成物」(レジスト組成物)は前記方法に用いられるものであることは明らかである。してみると、上記(5)ないし(8)からみて、先願発明は、本願補正発明の「(1)感放射線性組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程」「(2)上記レジスト膜を露光する工程」及び「(3)上記露光されたレジスト膜を現像する工程」「を含むパターン形成方法に用いられる感放射線性組成物」との構成を具備する。

(10)上記(1)ないし(9)からみて、本願補正発明と先願発明とは、
「(1)感放射線性組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程、
(2)上記レジスト膜を露光する工程、及び
(3)上記露光されたレジスト膜を現像する工程
を含むパターン形成方法に用いられる感放射線性組成物であって、
[A]酸解離性基を有する構造単位を含む重合体(但し、酸の作用により親水性が増大する酸分解性基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位と、-SO_(2)-含有環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位とを有する樹脂成分、及び酸の作用によりアルコール性水酸基を生じて親水性が増大する酸分解性基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位を有する樹脂成分を除く)、
[B]感放射線性酸発生体、及び
[C]下記式(2)で表される化合物であって、露光により発生する酸が、露光により[B]感放射線性酸発生体から発生する酸より相対的に弱い化合物(但し、重合体を除く。)
を含有する感放射線性組成物(但し、下記(i)?(v)を除く)。
【化5】

(式(2)中、R^(1)は、水素原子又は1価の有機基である。
A^(-)は、-COO^(-)、-O^(-)又は-SO_(3)^(-)である。但し、A^(-)が、-SO_(3)^(-)の場合、-SO_(3)^(-)がフッ素原子を有する炭素原子と直接結合する場合はなく、かつR^(1)は、水素原子の一部若しくは全部が置換されていてもよい炭素数1?20のアルキル基である。
X^(+)は、オニウムカチオンである。)
(i)酸の作用により分解してアルコール性ヒドロキシ基を生じる基を備えた繰り返し単位を含んだ樹脂と、活性光線又は放射線の作用によりpKa≧-1.5の酸を発生する化合物とを含有した感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
(ii)酸の作用により、極性が増大して有機溶剤を含む現像液に対する溶解性が減少する樹脂と、活性光線又は放射線の照射により下記一般式(I)で表されるスルホン酸を発生する少なくとも1種の化合物と、溶剤とを含有する化学増幅型レジスト組成物。
【化6】

(上記一般式(I)中、X_(1)、X_(2)は、それぞれ独立して、フッ素原子、又はフルオロアルキル基を表す。
R_(1)、R_(2)は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、又は、環状構造を有する基を表す。R_(1)とR_(2)は互いに結合して環を形成していてもよい。但し、R_(1)とR_(2)は同時に水素原子を表さない。
Lは、2価の連結基を表す。Lが複数存在する場合、複数のLは同じであっても異なっていてもよい。mは、0以上の整数を表す。)
(iii)酸の作用により、有機溶剤を含む現像液に対する溶解度が減少する樹脂、活性光線又は放射線の作用により酸を発生する化合物、及び活性光線又は放射線の作用により塩基性が低下する、塩基性官能基と活性光線若しくは放射線の作用により酸性官能基を発生する基とを有する塩基性化合物を含有するレジスト組成物。
(iv)実質的にアルカリ不溶性である樹脂、活性光線又は放射線の作用により酸を発生する化合物、架橋剤、及び溶剤を含有するレジスト組成物。
(v)下記構造式(A)-20’で表される共重合体と、下記構造式(B)-2で表される化合物と、下記構造式(B)-3で表される化合物とを含有するレジスト組成物。
【化7】

」である点で一致し、相違するところはない。
したがって、本願補正発明は先願発明と同一の発明であり、本願補正発明は、先願明細書等に記載された発明である。
また、本件出願の発明者が先願の発明者と同一ではなく、また本件の出願の時において、本件の出願人が先願の出願人とも同一でもない。
以上のとおりであるから、本願補正発明は、当業者が先願明細書等に記載された発明であり、本願補正発明は、特許法第29条の2の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 小括
以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。
したがって、本件補正は、同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項7に係る発明は、平成27年4月21日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項7に記載された事項によって特定されるものであるところ、請求項7に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2〔理由〕1(1)に本件補正前の請求項7として記載したとおりのものである。

2 原査定の理由の概略
(新規性)この出願の平成27年4月21日付け手続補正書により補正された請求項1?3、5?7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。



引用文献6.特開2010-139996号公報

3 引用例
原査定の拒絶の理由に引用文献6として引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2010-139996号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。

(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、IC等の半導体製造工程、液晶、サーマルヘッド等の回路基板の製造、さらにはその他のフォトファブリケーションのリソグラフィー工程に使用される、ネガ型現像用レジスト組成物及びこれを用いたパターン形成方法に関するものである。特に、波長が300nm以下の遠紫外線光を光源とするArF露光装置及び液浸式投影露光装置で露光するために好適な、ネガ型現像用レジスト組成物及びこれを用いたパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
KrFエキシマレーザー(248nm)用レジスト以降、光吸収による感度低下を補うためにレジストの画像形成方法として化学増幅という画像形成方法が用いられている。ポジ型の化学増幅の画像形成方法を例に挙げ説明すると、露光で露光部の酸発生剤が分解し酸を生成させ、露光後のベーク(PEB:Post Exposure Bake)でその発生酸を反応触媒として利用してアルカリ不溶の基をアルカリ可溶基に変化させ、アルカリ現像により露光部を除去する画像形成方法である。
【0003】
半導体素子の微細化に伴い露光光源の短波長化と投影レンズの高開口数(高NA)化が進み、現在では193nm波長を有するArFエキシマレーザーを光源とする露光機が開発されている。これらは一般によく知れている様に次式で表すことができる。
(解像力)=k_(1)・(λ/NA)
(焦点深度)=±k_(2)・λ/NA^(2)
ここでλは露光光源の波長、NAは投影レンズの開口数、k_(1)及びk_(2)はプロセスに関係する係数である。
【0004】
解像力を高める技術として、従来から投影レンズと試料の間に高屈折率の液体(以下、「液浸液」ともいう)で満たす、所謂、液浸法が提唱されている。
この「液浸の効果」はλ_(0)を露光光の空気中での波長とし、nを空気に対する液浸液の屈折率、θを光線の収束半角としNA_(0)=sinθとすると、液浸した場合、前述の解像力及び焦点深度は次式で表すことができる。
(解像力)=k_(1)・(λ_(0)/n)/NA_(0)
(焦点深度)=±k_(2)・(λ_(0)/n)/NA_(0)^(2)
すなわち、液浸の効果は波長が1/nの露光波長を使用するのと等価である。言い換えれば、同じNAの投影光学系の場合、液浸により、焦点深度をn倍にすることができる。これは、あらゆるパターン形状に対して有効であり、更に、現在検討されている位相シフト法、変形照明法などの超解像技術と組み合わせることが可能である。
【0005】
更に解像力を高める技術として、2重露光技術(DoubleExposureTechnogy)や2重パターニング技術(DoublePatterningTechnogy)が提唱されている。これは、前述の解像力の式において、k_(1)を小さくすることであり、解像力を高める技術として位置付けられている。
【0006】
従来、半導体素子等の電子デバイスのパターン形成は、形成したいパターンサイズを4-5倍に拡大したマスク又はレチクルのパターンを、縮小投影露光装置を用いて、ウェハ等の被露光物体に縮小転写していた。
ところが、寸法の微細化に伴い、従来の露光方式では、近接するパターンに照射された光が相互に干渉し光学コントラストが減じてしまう、という問題点が生じるので、これらの技術では、露光マスクのデザインを2つ以上に分割し、それぞれのマスクを独立に露光し、イメージを合成する、という工夫を行っている。これらの2重露光方式では、露光マスクのデザインを分割し、そのデザインを被露光物体(ウエハー)上、再度イメージの合成をする必要があり、レチクル上のパターンが、被露光物体上に忠実に再現するようにマスクのデザインの分割を工夫する必要がある。
これらの2重露光方式の効果を半導体素子の微細画像パターンの転写に検討した例が、特許文献1等にて紹介されている。
【0007】
しかしながら、従来のレジスト組成物を、単純に従来のレジストプロセスに適用しパターン形成を行うのでは、これらの2重露光方式においてはレジストの解像限界付近でパターン形成を行う必要があるため、十分な露光マージンや焦点深度が得られない、という点が問題になる。
【0008】
現在、g線、i線、KrF、ArF、EB、EUVリソグラフィー用の現像液としては、種々のものが提案されているが、2.38質量%TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)の水系アルカリ現像液が汎用的に用いられている。
しかしながら、性能が総合的に良好なパターンを形成することが望ましいのはもちろんであるが、そのために必要な、レジスト組成物、現像液、リンス液等の適切な組み合わせを見い出すことが極めて困難であるのが実情であり、改良が求められていた。特に、レジストの解像線幅が微細化するにつれて、ラインパターンのラインエッジラフネス性能の改良やパターン寸法の面内均一性の改良が求められていた。
【0009】
また、従来のレジスト組成物及び現像液の組み合わせでは、特定のレジスト組成物を、高極性のアルカリ現像液もしくは、低極性の有機溶剤を含む現像液と組み合わせ、パターンを形成するシステムを供しているにすぎない。即ち、図1に示すように、ポジ型システム(レジスト組成物とポジ型現像液の組み合わせ)においては、光学像の空間周波数のうち、光照射強度の強い領域を選択的に溶解・除去し、パターン形成を行う材料が提供されているにすぎない。反対に、ネガ型システム(レジスト組成物とネガ型現像液)の組み合わせにおいては、光照射強度の弱い領域を選択的に溶解・除去し、パターン形成を行う材料システムが提供されているにすぎない。
ここで、ポジ型現像液とは、図1に実線で表した所定の閾値以上の露光部を選択的に溶解・除去させる現像液であり、ネガ型現像液とは、該所定の閾値以下の露光部を選択的に溶解・除去させる現像液のことである。ポジ型現像液を用いた現像工程のことをポジ型現像(ポジ型現像工程ともいう)と呼び、ネガ型現像液を用いた現像工程のことをネガ型現像(ネガ型現像工程ともいう)と呼ぶ。
【0010】
一方、解像力を高める2重パターニング技術としての2重現像技術が特許文献2に記載されている。この例では、一般的な化学増幅の画像形成方法を利用しており、露光によってレジスト組成物中の樹脂の極性が、光強度の高い領域では高極性に、光強度の低い領域では低極性になることを利用して、特定のレジスト膜の高露光領域を高極性の現像液に溶解させポジ型現像を行い、低露光領域を低極性の現像液に溶解させてネガ型現像を行っている。具体的には、図2に示すように照射光1の露光量E2以上の領域をアルカリ水溶液をポジ型現像液として用いて溶解させ、露光量E1以下の領域を特定の有機溶剤をネガ型現像液として用いて溶解させている。これにより、図2に示すように、中間露光量(E2-E1)の領域が現像されずに残り、露光用マスク2の半ピッチを有するL/Sのパターン3をウェハ4上に形成している。
しかしながら、レジスト組成物とネガ型の現像液の最適な組み合わせを選択するのは非常に困難で、上述の例に於いては、ネガ型現像液を使用した際の現像性が悪化してしまうという問題があった。
さらに、2重現像により微細パターンを形成する際には、単にネガ型現像液あるいはポジ型現像液を単独で用いた際の解像力が良いだけでは不十分で、ネガ型現像液及びポジ型現像液のいずれに対しても、良好なパターン解像性を示すことが求められていた。
【0011】
上記の問題点を鑑み、2重現像技術において、活性光線又は放射線の照射により、ポジ型現像液に対する溶解度が増大し、ネガ型現像液に対する溶解度が減少するポジ型レジスト組成物を使用するパターン形成方法が特許文献3で提案されている。この技術によれば、高精度な微細パターンが安定的に得られるとされている。
しかしながら、線幅バラツキ(LWR)、露光ラチチュード(EL)及びフォーカス余裕度(DOF)に優れることにより、より高精度な微細パターンが安定的に得られることが求められている。
・・・略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記課題を解決し、高集積かつ高精度な電子デバイスを製造するための高精度な微細パターンをより安定的に形成するために、線幅バラツキ(LWR)、露光ラチチュード(EL)及びフォーカス余裕度(DOF)に優れるネガ型現像用レジスト組成物、及びこれを用いたパターン形成方法を提供することを目的としている。」

(2)「【0095】
好ましい酸分解性基を有する繰り返し単位の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0096】
【化15】・・・

・・・」

(3)「【実施例】
【0377】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
・・・略・・・
【0382】【化74】・・・

・・・略・・・
【0396】
合成例2(化合物(PAG-1)の合成)
化合物(PAG-1)は、特開2007-161707号公報の[0108]?[0110]に準じて合成した。
【0397】
化合物(PAG-2)?(PAG-6),(PAG-8)?(PAG-9)も同様の手法に準じて合成した。なお、化合物(PAG-7)は、CGI*1907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)を使用した。
【0398】
以下、化合物(PAG-1)?(PAG-9)の構造を示す。
【0399】
【化86】
・・・略・・・

・・・略・・・

・・・略・・・
【0400】
<レジスト組成物の調製>
下記表3及び表4に示す成分を表3及び表4に示す溶剤に溶解させ、固形分濃度4質量%の溶液を調製し、それぞれを0.03μmのポアサイズを有するポリエチレンフィルターでろ過してレジスト組成物Ar-1?Ar-74,Ar-1R及びAr-2Rを調製した。
【0401】
【表3】

【0402】
・・・略・・・
【0403】
表3及び表4における略号は、次の通りである。
【0404】
B-1?B-8:各々下記化合物を示す。
【0405】
【化87】・・・略・・・
【0406】
W-1: メガファックF176(大日本インキ化学工業(株)製)(フッ素系)
W-2: メガファックR08(大日本インキ化学工業(株)製)(フッ素及びシリコン系)
W-3: ポリシロキサンポリマーKP-341(信越化学工業(株)製)(シリコン系)
【0407】
A1: プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
A2: γ-ブチロラクトン
A3: シクロヘキサノン
B1: プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)
B2: 乳酸エチル
【0408】
調製したレジスト組成物を用い、下記の方法でレジストパターンを形成した。
【0409】
実施例1(1回露光→ネガ現像:略号E-B-N)
シリコンウエハー上に有機反射防止膜ARC29A(日産化学社製)を塗布し、205℃で、60秒間ベークを行い、膜厚86nmの反射防止膜を形成した。その上にレジスト組成物Ar-01を塗布し、115℃で、60秒間ベークを行い、膜厚100nmのレジスト膜を形成した。得られたウェハーをArFエキシマレーザースキャナー(NA0.75)を用い、露光マスク(ライン/スペース=1/1)を使用して、パターン露光を行った。その後105℃で、60秒間加熱した後、ネガ型現像液で30秒間現像(ネガ型現像)し、リンス液でリンスした後、4000rpmの回転数で30秒間ウェハーを回転させることにより、100nm(1:1)のラインアンドスペースのレジストパターンを得た。
【0410】
実施例2?74及び比較例1?2
表5及び表6に記載のレジスト及び条件を採用した以外は、実施例1の方法と同様にして、100nm(1:1)のラインアンドスペースのレジストパターンを得た。」

(4)「【0419】【表5】



(5)表5(上記(4))の記載から、実施例5のレジストパターンを得る際に、レジスト組成物Ar-05を用いていることが読み取れる。また、表3(上記(2))の記載からみて、レジスト組成物Ar-05は、樹脂として(5)、酸発生剤としてPAG-05及び併用酸発生剤としてPAG-08を含有していることが読み取れる。

(6)上記(1)ないし(5)からみて、引用例には、実施例5として次の発明が記載されている。
「シリコンウエハー上に有機反射防止膜ARC29A(日産化学社製)を塗布し、膜厚86nmの反射防止膜を形成し、その上にレジスト組成物Ar-05を塗布し、膜厚100nmのレジスト膜を形成し、パターン露光を行い、ネガ型現像液で現像し、レジストパターンを得るために用いられる、レジスト組成物であって、
前記Ar-05は、樹脂として下記(5)、酸発生剤として下記PAG-05及び併用酸発生剤として下記PAG-08を含有する、
レジスト組成物。

」(以下「引用発明」という。)

4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の樹脂である(5)の右方の繰り返し単位は、技術的にみて、酸解離性基を有する繰り返し単位である。そうすると、引用発明の「樹脂」である「(5)」は、酸解離性基を有する構造単位を含むといえるから、本願発明の「[A]酸解離性基を有する構造単位を含む重合体」に相当する。なお、引用例の【0095】及び【0096】(上記3(1))には、酸分解性基を有する繰り返し単位の例として式12が記載されており、(5)の繰り返し単位は、その式12の例の1つである。

(2)引用発明の「酸発生剤」である「PAG-05」は、本願発明の式(2)で表される化合物の要件を満たす。そして、引用発明において、「酸発生剤」である「PAG-05」と「酸発生剤」と「併用酸発生剤」である「PAG-08」を比較すると、露光により発生する酸が相対的に弱い化合物が前者であることは、技術的にみて明らかである。すなわち、引用発明において、「併用酸発生剤」である「PAG-08」は、アニオンについて「-CF_(2)SO_(3)^(-)」で表される構造を含むのに対し、「酸発生剤」である「PAG-05」は、アニオンについて「-CF_(2)SO_(3)^(-)」で表される構造を含まないものである。そうすると、引用発明の「併用酸発生剤」である「PAG-08」は、本願発明の「[B]感放射線性酸発生体」に相当する。また、引用発明の「PAG-05」は、右方のアニオンが1価の有機基と-SO_(3)^(-)とが結合されており、該-SO_(3)^(-)がフッ素原子を有する炭素原子と直接結合していないものであり、左方のカチオンがオニウムカチオンである。
してみると、引用発明の「酸発生剤」である「PAG-05」は、本願発明の「[C]下記式(2)で表される化合物であって、露光により発生する酸が、露光により[B]感放射線性酸発生体から発生する酸より相対的に弱い化合物(但し、重合体を除く。)」
「【化3】

(式(2)中、R^(1)は、水素原子又は1価の有機基である。
A^(-)は、-COO^(-)、-O^(-)又は-SO_(3)^(-)である。但し、A^(-)が、-SO_(3)^(-)の場合、-SO_(3)^(-)がフッ素原子を有する炭素原子と直接結合する場合はない。
X^(+)は、オニウムカチオンである。)」に相当する。

(3)引用発明の「レジスト組成物」、「レジスト膜」、「露光」、「現像」及び「レジストパターン」は、それぞれ本願発明の「感放射線性組成物」、「レジスト膜」、「露光」、「現像」及び「パターン」に相当する。

(4)引用発明において、シリコンウエハー上に有機反射防止膜ARC29A(日産化学社製)を塗布し、膜厚86nmの反射防止膜を形成されたものは、その上に、「レジスト組成物」(本願発明の「感放射線性組成物」に相当。以下「」に続く()内の用語は対応する本願発明の用語を表す。)が塗布されるのであるから、本願発明の「基板」に相当することは明らかである。また、引用発明において、「レジスト組成物」(感放射線性組成物)が塗布された後、「レジスト膜」(レジスト膜)が形成されている。そうすると、引用発明は、本願発明の「(1)感放射線性組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程」を含む。

(5)引用発明は、「レジスト膜」(レジスト膜)を形成した後、パターン「露光」(露光)を行っているから、本願発明の「(2)上記レジスト膜を露光する工程」を含む。

(6)引用発明は、パターン「露光」(露光)を行った後、ネガ型現像液で「現像」(現像)しているのであるから、本願発明の「(3)上記露光されたレジスト膜を現像する工程」を含む。

(7)引用発明は、「レジストパターン」(パターン)を得るのであるから、「レジストパターン」を形成する方法であり、「レジスト組成物」(レジスト組成物)は前記方法に用いられるものであることは明らかである。してみると、上記(3)ないし(6)からみて、引用発明は、本願補正発明の「(1)感放射線性組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程」「(2)上記レジスト膜を露光する工程」及び「(3)上記露光されたレジスト膜を現像する工程」「を含むパターン形成方法に用いられる感放射線性組成物」との構成を具備する。

(8)上記(1)ないし(7)からみて、本願発明と引用発明とは、
「(1)感放射線性組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程、
(2)上記レジスト膜を露光する工程、及び
(3)上記露光されたレジスト膜を現像する工程
を含むパターン形成方法に用いられる感放射線性組成物であって、
[A]酸解離性基を有する構造単位を含む重合体、
[B]感放射線性酸発生体、及び
[C]下記式(2)で表される化合物であって、露光により発生する酸が、露光により[B]感放射線性酸発生体から発生する酸より相対的に弱い化合物(但し、重合体を除く。)
を含有する感放射線性組成物。
【化3】

(式(2)中、R^(1)は、水素原子又は1価の有機基である。
A^(-)は、-COO^(-)、-O^(-)又は-SO_(3)^(-)である。但し、A^(-)が、-SO_(3)^(-)の場合、-SO_(3)^(-)がフッ素原子を有する炭素原子と直接結合する場合はない。
X^(+)は、オニウムカチオンである。)」である点で一致し、相違するところはない。
したがって、本願発明は引用発明と同一の発明である。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-06-15 
結審通知日 2017-06-20 
審決日 2017-07-03 
出願番号 特願2012-539740(P2012-539740)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G03F)
P 1 8・ 113- Z (G03F)
P 1 8・ 161- Z (G03F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石附 直弥高橋 純平  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 鉄 豊郎
樋口 信宏
発明の名称 パターン形成方法及び感放射線性組成物  
代理人 天野 一規  
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