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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04N
管理番号 1331652
審判番号 不服2016-14297  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-26 
確定日 2017-09-05 
事件の表示 特願2012-111853「写真撮影遊戯機、写真撮影遊戯方法及び制御プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月28日出願公開、特開2013-239919、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願の手続の概要は以下のとおりである。

平成24年 5月15日 特許出願
平成27年 5月 7日 手続補正
平成28年 1月 5日 拒絶理由(発送日)
平成28年 2月10日 意見書 手続補正
平成28年 3月 1日 拒絶理由(発送日)
平成28年 4月13日 意見書 手続補正
平成28年 7月 5日 拒絶査定(発送日)
平成28年 9月26日 審判請求 手続補正
平成28年10月20日 前置報告

第2.原査定の理由の概要
原査定の理由の概要は、以下のとおりである。

この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


・請求項1?5について
・引用文献1.特開2003-231321号公報
引用文献2.特開2011-244421号公報
引用文献3.特開2007-266922号公報
引用文献4.特開2006-053282号公報
引用文献5.特開2005-218034号公報

第3.審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正によって請求項1、4、5に「プレイヤに提供するおまけの写真画像として、前記背景画像が配置され、」という事項を追加する補正は、補正前の発明を特定する事項である「写真画像」について限定することにより、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、当初の明細書の段落【0073】?【0077】に記載されているから、新規事項を追加するものではないといえる。
そして、「第4.本願発明」から「第6.対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1-5に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4.本願発明
本願の請求項1-5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明5」という。)は、平成28年9月26日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載した事項により特定される発明であり、下記のとおりである。
なお、本願発明1の各構成の符号は、説明のために当審において付与したものであり、以下、構成(A)、構成(B)などと称する。

【請求項1】
(A)カメラを備えた写真撮影遊戯機であって、
(B)前記カメラを制御して被写体を撮影し、写真画像を生成する撮影制御手段を備え、
前記撮影制御手段は、
(C)前記カメラが撮影する被写体と当該被写体以外の領域とを含み前記被写体以外の領域にデフォルトの背景画像が配置された映像全体に対し、色調変換を含む特殊画像処理の加工を施して表示するライブ映像表示手段と、
(D)前記ライブ映像表示手段による表示後、プレイヤに提供するおまけの写真画像として、前記背景画像が配置され、前記特殊画像処理が施された写真画像を生成する写真画像生成手段と、
(A)を含む、写真撮影遊戯機。

【請求項2】
請求項1に記載の写真撮影遊戯機であって、
前記撮影制御手段は、さらに、特殊画像処理の選択ボタンを含む選択画面を表示する表示手段を含み、
前記ライブ映像表示手段は、前記選択画面においてプレイヤにより前記選択ボタンが選択された場合、前記選択ボタンに対応する特殊画像処理により、前記映像を加工して表示する、写真撮影遊技機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の写真撮影遊戯機であって、さらに、
背景画像の選択を受け付ける選択手段を備え、
前記写真画像生成手段は、前記特殊画像処理が施された写真画像と、前記特殊画像処理が施されていない写真画像であって、選択を受け付けた前記背景画像が合成された写真画像とを生成する、写真撮影遊戯機。
【請求項4】
カメラを備えた写真撮影遊戯機を用いた写真撮影遊戯方法であって、
前記カメラを制御して被写体を撮影し、写真画像を生成する撮影制御ステップを備え、
前記撮影制御ステップは、
前記カメラが撮影する被写体映像と当該被写体以外の領域とを含み前記被写体以外の領域にデフォルトの背景画像が配置された映像全体に対し、色調変換を含む特殊画像処理の加工を施して表示するライブ映像表示ステップと、
前記ライブ映像表示ステップにおける表示後、プレイヤに提供するおまけの写真画像として、前記背景画像が配置され、前記特殊画像処理が施された写真画像を生成する写真画像生成ステップと、
を含む、写真撮影遊戯方法。
【請求項5】
カメラを備えた写真撮影遊戯機に搭載されたコンピュータに、
前記カメラを制御して被写体を撮影し、写真画像を生成する撮影制御ステップを実行させ、
前記撮影制御ステップは、
前記カメラが撮影する被写体映像と当該被写体以外の領域とを含み前記被写体以外の領域にデフォルトの背景画像が配置された映像全体に対し、色調変換を含む特殊画像処理の加工を施して表示するライブ映像表示ステップと、
前記ライブ映像表示ステップにおける表示後、プレイヤに提供するおまけの写真画像として、前記背景画像が配置され、前記特殊画像処理が施された写真画像を生成する写真画像生成ステップと、
を含む、制御プログラム。

第5.引用文献、引用発明等

1.引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(1)「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、ゲームセンター等に設置され、硬貨等の投入により使用者を撮影し、撮影画像をプリントする画像プリント作成装置、方法、プログラム、記録媒体、およびプリント媒体に関するものである。」

(2)「【0027】【発明の実施の形態】つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図1は、本発明の画像プリント作成装置の一実施の形態の構成を示す縦断面図である。
【0028】この実施の形態における画像プリント作成装置は、装置本体部1を有し、この装置本体部1を構成する本体ケース2の前方側には被写体Mを覆って背後にまで達するように突き出されたカバー部材3が配設され、このカバー部材3の先端部分に、撮影の際の背景となるカーテン4が吊設されている。そして、上記本体ケース2、カバー部材3、およびカーテン4で囲まれた空間が、被写体Mの撮影用ブースを形成している。また、上側のカバー部材3の天井部の二か所には被写体Mを照射するライト5が取り付けられている。
【0029】一方、本体ケース2の内部には、被写体Mを撮影する撮影手段としてのカメラ6、上記カメラ6から画像データおよび後述のタッチペン15で指示された操作信号を受信して画像合成等の処理を行なうコンピュータ装置7、このコンピュータ装置7から送信された画像データを受信して得られる画像をプリント媒体11に印刷するプリント手段としてのプリンタ9、さらには、図示しないコイン投入口から投入されたコインを検出してコンピュータ装置7に検出信号を送信するコイン検出部21がそれぞれ設けられている。」

(3)「【0041】また、コンピュータ装置7には、ペン入力画像処理部28とペン入力画像記憶部29とが設けられている。ペン入力画像処理部28は、ディスプレイ8の表示部16に表示される画像の所定領域に対してタッチペン15を操作することで手書き画像やスタンプ画像などの各種のペン入力画像が得られるように処理を行なう。また、ペン入力画像記憶部29は、ペン入力画像処理部28で処理して得られるペン入力画像(手書き画像やスタンプ画像)を記憶するものである。
【0042】さらに、上記コンピュータ装置7には、選択画像記憶部30、画像合成手段31、合成画像記憶部32、および画像変質手段33が設けられている。選択画像記憶部30には、使用者Mのタッチペン15による操作信号に応じて、撮影画像記憶部24に記憶されている撮影画像(ここではオリジナルの撮影画像および色調調整された画像の計12枚分)の内から必要枚数(ここでは4枚)が選択決定されたときには、その選択決定された枚数分の撮影画像が記憶されるようになっている。
【0043】また、画像合成手段31は、上記選択画像記憶部30に記憶されている撮影画像に対して、ペン入力画像記憶部29に記憶された文字や図形等の手書き画像等を合成するものである。また、合成画像記憶部32は、画像合成手段31で合成された各画像を記憶している。さらに、画像変質手段33は、タッチペン15による操作信号に応じて、合成画像記憶部32に記憶されている合成画像に対して、背景色を変更したり、タッチペンで指定した領域を同じくタッチペンで指定したカラーパレットの色彩で塗りつぶしたりするなど、主に色彩変更や画像嵌め込みなどによる画質変質処理を行なうものである。
【0044】さらにまた、コンピュータ装置7には、表示画像選択手段35や印刷制御部36が設けられている。表示画像選択手段35は、上記の各記憶部24,30,32の出力を選択してディスプレイ8の表示部16に表示すべき画像を選択するようになっている。また、印刷制御部36は、使用者Mによるタッチペン15の操作によって選択されたシートレイアウトになるようにプリンタ9による印刷を制御する。
【0045】次に、上記構成を備えた画像プリント作成装置の動作の一例について、図4のフローチャートを参照しながら説明する。ここで、図4において、「S」はステップを意味する。
【0046】まず、使用者Mが最初のコインを投入すると(S100)、カメラ6による被写体Mの撮像が開始され(S110)、カメラ6で撮影される画像がコンピュータ装置7内に取り込まれる。このとき、コンピュータ装置7の制御手段18は、表示画像選択手段35を制御して、この取り込まれた画像をディスプレイ8の表示部16に出力する。このため、表示部16には、撮像映像が動画としてリアルタイムで表示される。
【0047】ついで、使用者Mがディスプレイ8の表示画像を見ながら被写体Mとしての位置調整を完了した後に、タッチペン15を用いて画面の指示に従ってシャッタ操作の操作信号を入力すると(S120)、制御手段18は、図示しないスピーカ等により使用者Mに対してポーズをとるよう指示した後、所定時間が経過するたびに、カメラ6のシャッタ操作を制御する。そして、カメラ6で撮影された画像データが制御手段18を介して撮影画像記憶部24に格納される(S130)とともに、ディスプレイ8には、その際に撮影した画像が静止画像として表示される。
【0048】つぎに、制御手段18は、カウンタ22が規定の撮影枚数のカウント値に達しているか否かを判断し(S140)、規定枚数に達していなければステップ120に戻ってシャッタ操作による静止画像の取り込みを繰り返す。
【0049】ステップ140において、規定の撮影回数に達すると、制御手段18は、撮影画像記憶部24に記憶されている所定枚数のオリジナルの撮影画像のデータを色調調整手段25に出力して色調調整を行なう(S145)。」

(4)「【0052】続いて、制御手段18は、表示画像選択手段35を制御して撮影画像記憶部24の出力を選択するとともに、撮影画像記憶部24に記憶されている全ての画像(計12枚分)データを読み出すので、ディスプレイ8の表示部16には、たとえば図5に示すように、撮影画像記憶部24に記憶されている全ての撮影画像(計12枚分)Pが一覧で表示される(S150)。
【0053】図5において、左縦一列の4枚分の画像Pは、4回のシャッタ操作によりカメラ6で撮影されたオリジナルな撮影画像であり、中央縦一列の4枚分の画像Pは、色調調整手段25でオリジナルの撮影画像に基づいて色調がマリーン系に調整された後の撮影画像であり、さらに、右縦一列の4枚分の画像Pは色調調整手段25で色調がセピア系に調整された後の撮影画像となっている。
【0054】また、同じ画面上には、使用者Mに対し、これらの撮影画像Pの内からどの画像をペン入力対象の画像とするかの決定を促すメッセージ(たとえば『好きな写真を4枚選んでね!』などの文言)が表示されるとともに、一人でペン入力をするモード(以下、一人用ペン入力モードという)と、二人でペン入力をするモード(以下、二人用ペン入力モードという)とを選択するためのペン入力モード選択ボタン37a,37bが表示される。
【0055】そこで、使用者Mは、ディスプレイ8に表示されている撮影画像Pの内から、タッチペン15でペン入力画像の対象とする好みの複数枚(ここでは4枚分)の画像Pをタップして選択した後(S155)、続いてペン入力モード選択ボタン37a,37bのいずれか一方をタップして一人用ペン入力モード、あるいは二人用ペン入力モードを選択する(S160)。
【0056】制御手段18は、ペン入力モード選択ボタン37a,37bのいずれか一方がタップされると、これに応じて撮影画像記憶部24に記憶されている撮影画像の内から、ステップ155で選択された所定枚数分(ここでは4枚分)の撮影画像のみを選択画像記憶部30に転送して記憶し、続いて、選択画像記憶部30に記憶された全ての撮影画像(4枚分)のデータを読み出して表示画像選択手段35を介してディスプレイ8に出力する。」

(5)「【0070】また、背景ペンの入力ボタン42を操作し、続いて、カラーパレット選択ボタン46の内から塗りつぶしたい色を選択した後、図8に示したようなペン入力領域38上に表示されている合成画像について、背景となる領域A2をタッチペン15で指定すると、画像変質手段33は、合成画像記憶部32に記憶されている合成画像について、タッチペン15で指定された撮影画像Pの周りの背景部分の領域A2を切り抜いて、カラーパレットで選択された色彩をもつ背景を瞬時に嵌め込むクロマキー処理を行なう。なお、カラーパレットの代わりに、背景となる絵柄等を予め設定できる背景パレットを画面上に表示しておき、タッチペン15でその背景パレットの内の一つを選択すると、クロマキー処理により、合成画像の背景の領域A2に背景パレットで選択した背景の絵柄を嵌め込むようにすることも可能である。さらに、背景ペンの入力ボタン42を操作すると、青の部分を背景として認識して背景の絵柄を自動的に嵌め込む処理を行なってもよい。」

(6)「【0079】このようにして、画像変質手段33で変質された合成画像は、再び、合成画像記憶部32に記憶される。そして、上記の合成画像の作成、合成画像の変質処理、およびこれらの画像の記憶や表示は、タイマ23の計測時間があらかじめ設定された所定の入力可能時間(例えば90秒等)に達するまで続けられる(S185)。
【0080】時間経過により、タイマ23の計測時間が入力可能時間を過ぎると、印刷の際のシートレイアウトの選択が行なわれ(S190)、合成画像記憶部32に記憶された合成画像のデータが印刷制御部36を介してプリンタ9に送られ、印刷が開始される(S200)。そして、被写体Mの撮影画像Pとペン入力画像等が合成された合成画像が印刷されたプリント媒体11が本体ケース2の前面側の送出口12から送出される。」

2.引用発明
上記引用文献1に記載された発明について検討する。

(1)画像プリント作成装置について
引用文献1の画像プリント作成装置は、ゲームセンター等に設置され、硬貨等の投入により使用者を撮影し、撮影画像をプリント媒体にプリントする画像プリント作成装置であり、本体ケース2、カーテン4等で囲まれた空間が被写体Mの撮影用ブースを形成し、カメラ6、ディスプレイ8、タッチペン15及びコンピュータ装置7を備えている(記載事項(1)?(3)(6))。

(2)コンピュータ装置の制御手段について
引用文献1の画像プリント作成装置のコンピュータ装置7の制御手段18は、カメラ6を制御して被写体Mを撮影し、カメラ6で撮影した撮影画像に対して、表示画像選択手段35、色調調整手段25、画像合成手段31及び画像変質手段33等を制御して、使用者Mに提供される合成画像を生成する制御を行うものである(記載事項(3)?(5))。

(3)表示画像選択手段について
前記表示画像選択手段は、カメラ6で撮影した画像をディスプレイ8の表示部16に出力するため、表示部16に、撮像映像を動画としてリアルタイムで表示する。そして、カメラ6による撮像映像は、被写体と被写体以外の背景部分(カーテン2)の領域A2とを含む映像である。次いで、使用者が画面の指示に従ってシャッタ操作の操作信号を入力すると、カメラ6で撮影された画像データが制御手段18を介して撮影画像記憶部24に格納されるとともに、ディスプレイ8に撮影した画像が静止画像として表示される構成である(【0046】、【0047】、【0070】)。

(4)色調調整手段について
前記色調調整手段は、規定の撮影回数に達した後に、撮影画像記憶部24に記憶されている所定枚数のオリジナルの撮影画像のデータに対して色調調整(オリジナルの撮影画像に対してマリーン系(青味)あるいはセピア系(赤味)といった色調に調整された撮影画像を生成する)を行う構成である(【0049】、【0053】)。

(5)画像合成手段について
前記画像合成手段は、表示部16に表示された全ての撮影画像(前記オリジナルの撮影画像と前記色調調整された撮影画像)から使用者が選択した撮像画像に対して、ペン入力画像記憶部29に記憶された文字や図形等の手書き画像等を合成して合成画像を作成するものである(【0043】、【0054】、【0055】)。

(6)画像変質手段について
前記画像変質手段は、前記合成画像に対して、タッチペン15で指定された撮影画像の周りの背景部分の領域A2を切り抜いて、カラーパレットで選択された色彩をもつ背景を瞬時に嵌め込むクロマキー処理に加えて、合成画像の背景の領域A2に背景パレットで選択した背景の絵柄を嵌め込むようにすることも可能とした構成である(【0043】、【0070】)。

したがって、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
なお、引用発明の各構成の符号は、説明のために付与したものであり、以下、構成(a)、構成(b)などと称する。

(引用発明)
(a)ゲームセンター等に設置され、カメラ、ディスプレイ、タッチペン及びコンピュータ装置を備え、硬貨等の投入により使用者を撮影し、撮影画像をプリント媒体にプリントする画像プリント作成装置において、
(b)前記カメラを制御して被写体を撮影し、カメラで撮影されたオリジナルの撮影画像に基づいて印刷される合成画像を生成するコンピュータ装置の制御手段を備え、
前記制御手段は、
(c-1)前記カメラで撮影した被写体と被写体以外の背景部分の領域にカーテンの画像が配置された撮像映像を動画としてディスプレイにリアルタイムで表示し、使用者の指示に従ってカメラで撮影された撮像画像をオリジナルの撮影画像としてディスプレイに表示する表示画像選択手段と、
(c-2)前記表示画像選択手段による表示が規定の撮影回数に達した後、前記オリジナルの撮影画像に色調調整を行なう色調調整手段と、
(c-3)前記オリジナルの撮影画像と前記色調調整された撮影画像をディスプレイの表示部に表示する前記表示画像選択手段と、
(d-1)前記表示画像選択手段により使用者が選択した所定枚数分の撮影画像のみに対して、文字や図形等の手書き画像等を合成した合成画像を作成する画像合成手段と、
(d-2)前記合成画像の被写体以外の背景の領域に背景パレットで選択した背景の絵柄を嵌め込む処理を行い変質された合成画像を作成する画像変質手段と、
(a)を含む、画像プリント作成装置。

3.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、その段落【0001】、【0054】-【0073】及び図3-6の記載からみて、当該引用文献2には、撮影前のライブビュー画像表示において、映像全体に対し色調変換処理を含むフィルタ処理を行うデジタルカメラ等の撮影機器に関する技術的事項が記載されていると認められる。

4.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、その段落【0060】、【0063】-【0072】の記載からみて、当該引用文献3には、画像シール作成装置において、ライブモニタに被写体以外の領域に選択した背景画像が合成されたライブ画像を表示する構成、及び、ライブ画像には色調を調整する処理などの所定の画像処理を行う構成に関する技術的事項が記載されていると認められる。

5.その他の文献について
また、拒絶査定において周知技術を示す文献として引用された引用文献4及び引用文献5には、写真撮影遊戯機において、デフォルトの背景画像の表示後に、所定の背景画像を選択する構成が記載されている。

第6.対比・判断

1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

(1-1)構成(A)と構成(a)との対比
引用発明の「画像プリント作成装置」は、ゲームセンター等に設置され、カメラ、ディスプレイ、タッチペン及びコンピュータ装置等を備え、硬貨等の投入により使用者を撮影し、撮影画像をプリントするものであるから、本願発明1の「写真撮影遊戯機」に相当する。
よって、引用発明の構成(a)は、本願発明1の構成(A)と一致する。

(1-2)構成(B)と構成(b)との対比
引用発明のプリントされる「合成画像」は、カメラで撮影された被写体の撮像画像を含むものであり、プリント媒体に印刷される画像であるから、本願発明1の「写真画像」に相当する。また、引用発明の「前記カメラを制御して被写体を撮影し、カメラで撮影されたオリジナルの撮影画像に基づいて印刷される合成画像を生成する」構成は、本願発明1の「前記カメラを制御して被写体を撮影し、写真画像を生成する」制御内容と一致する。
よって、引用発明の構成(b)は、本願発明1の構成(B)と一致する。

(1-3)構成(C)と構成(c-1)、(c-2)、(c-3)との対比

引用発明の構成(c-1)「表示画像選択手段」は、前記カメラで撮影した被写体と被写体以外の背景部分の領域とを含む撮像映像を動画としてディスプレイにリアルタイムで表示、即ち、ライブ表示するものといえるから、本願発明1の構成(C)「ライブ映像表示手段」とは、「前記カメラが撮影する被写体と当該被写体以外の領域を含む映像全体を表示する表示手段」である点で共通する。

しかしながら、当該表示手段が画像処理の加工を施す点について、本願発明1の構成(C)では、「前記カメラが撮影する被写体と当該被写体以外の領域とを含み前記被写体以外の領域にデフォルトの背景画像が配置された映像全体に対し、色調変換を含む特殊画像処理の加工を施して表示する」構成であるのに対し、
引用発明の構成(c-2)「色調調整手段」は、オリジナルの撮影画像である前記カメラで撮影した被写体と被写体以外の背景部分の領域とを含む撮像画像の全体に対して、色調調整を含む画像処理の加工を施すが、「前記カメラが撮影する被写体と当該被写体以外の領域とを含み前記被写体以外の領域にデフォルトの背景画像が配置された映像全体」に対して色調調整を含む画像処理の加工を施す構成ではない点で相違する。
さらに、この相違に伴い、引用発明の構成(c-3)「表示画像選択手段」は、色調調整を含む画像処理の加工を施した撮影画像を表示する構成であるが、画像処理の加工を施した映像をライブ映像表示する構成でない点で相違する。

よって、引用発明の構成(c-1)、(c-2)、(c-3)は、本願発明1の構成(C)と、「前記カメラが撮影する被写体と当該被写体以外の領域を含む映像全体を表示する表示手段」である点で共通するが、上記の相違を有している。

(1-4)構成(D)と構成(d-1)、(d-2)との対比
引用発明の構成(d-1)「画像合成手段」及び構成(d-2)「画像変質手段」は、カメラで撮影した被写体と当該被写体以外の領域を含む映像全体をディスプレイにリアルタイムで表示した後、使用者に提供する合成画像として、オリジナルの撮影画像か又はオリジナルの撮影画像と色調調整された撮影画像に手書き画像や背景の絵柄を合成した合成画像を作成するものであるから、本願発明1の構成(D)「写真画像生成手段」とは、「前記表示手段による表示後、プレイヤに提供する写真画像として、背景画像が配置され、特殊画像処理が施された写真画像を生成する画像生成手段」である点で共通する。

しかしながら、当該画像生成手段が生成する写真画像について、本願発明1の構成(D)では、「プレイヤに提供するおまけの写真画像」であるのに対して、引用発明の構成(d-1)及び構成(d-2)は、「画像合成手段」或いは「画像変質手段」が施す画像の合成或いは画像の変質の対象とする所定枚数の画像、即ち、おまけでない所定枚数分の画像である点で相違する。

よって、引用発明の構成(d-1)、(d-2)は、本願発明1の構成(D)と、「前記表示手段による表示後、プレイヤに提供する写真画像として、背景画像が配置され、特殊画像処理が施された写真画像を生成する画像生成手段」である点で共通するが、上記の相違を有している。

したがって、本願発明1と引用発明との一致点、相違点は、次のとおりである。

(一致点)
(A)カメラを備えた写真撮影遊戯機であって、
(B)前記カメラを制御して被写体を撮影し、写真画像を生成する制御手段を備え、
前記制御手段は、
(C)前記カメラが撮影する被写体と当該被写体以外の領域を含む映像全体を表示する表示手段と、
(D)前記表示手段による表示後、プレイヤに提供する写真画像として、背景画像が配置され、特殊画像処理が施された写真画像を生成する画像生成手段と、
(A)を含む、写真撮影遊戯機。

(相違点1)
表示手段について、本願発明1は、「前記カメラが撮影する被写体と当該被写体以外の領域とを含み前記被写体以外の領域にデフォルトの背景画像が配置された映像全体に対し、色調変換を含む特殊画像処理の加工を施して表示するライブ映像表示手段」であるのに対し、引用発明では、そのような構成でない点で相違する。

(相違点2)
画像生成手段について、本願発明1は、「おまけの写真画像として、写真画像を生成する写真画像生成手段」であるのに対し、引用発明では、そのような構成でない点で相違する。

(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討する。

引用文献1は、上記のとおり、構成(c-2)「色調調整手段」は、前記オリジナルの撮影画像に色調変換を含む特殊画像処理の加工を施す構成であるが、当該画像はカメラで撮影した後の画像であり、カメラで撮像された撮像動画ではない。
また、構成(d-2)「画像変質手段」は、前記合成画像の被写体以外の背景の領域に背景パレットで選択した背景の絵柄を嵌め込む処理を行い変質された合成画像を作成するが、当該処理を施す画像は、ディスプレイにリアルタイムで表示した後に使用者が選択した所定枚数分の画像であり、カメラで撮像された撮像動画ではない。
そして、引用文献1には、「カメラが撮影する被写体と当該被写体以外の領域とを含み前記被写体以外の領域にデフォルトの背景画像が配置された映像全体に対し、色調変換を含む特殊画像処理の加工を施して表示する」ライブ映像表示手段を備える旨の記載も示唆もなく、このような構成が自明の事項とも認められない。
また、引用文献2及び3にも、当該構成について記載も示唆もされていない。

また、引用文献4及び引用文献5に記載のように、写真撮影遊戯機において、デフォルトの背景画像の表示後に、所定の背景画像を選択する構成が周知技術であることを考慮しても、上記の点に変わりはない。
したがって、本願発明1は、引用発明、引用文献2、3に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2-5について
請求項2、3は、請求項1を引用するものであり、本願発明2、3も本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2、3に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
また、本願発明4は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明5は、本願発明1に対応するプログラムの発明であるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2、3に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7.原査定について

上記のように、本願発明1-5は、当業者であっても、引用発明、引用文献2、3に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
したがって、上記「第2.原査定の理由の概要」の理由によって、本願を拒絶することはできない。

第8.むすび

以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-08-21 
出願番号 特願2012-111853(P2012-111853)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 堀 洋介  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 鳥居 稔
小池 正彦
発明の名称 写真撮影遊戯機、写真撮影遊戯方法及び制御プログラム  
代理人 坂根 剛  
代理人 上羽 秀敏  
代理人 中西 健  

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