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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1331741
審判番号 不服2016-8247  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-03 
確定日 2017-09-15 
事件の表示 特願2014-531863「動的かつ構成可能なユーザインターフェース」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月28日国際公開、WO2013/043430、平成26年11月27日国内公表、特表2014-531666、請求項の数(39)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2012年9月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年9月22日,米国 2012年1月6日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成27年8月11付けで拒絶理由通知がされ,平成27年11月11日に意見書と手続補正書が提出され,平成28年2月1日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,平成28年6月3日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに手続補正書が提出され,平成29年4月18日付けで拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由通知」という。)がされ,平成29年7月14日に意見書と手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成28年2月1日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記A?Fに記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 1?40
・引用文献等 A?F

<引用文献等一覧>
A.米国特許出願公開第2008/0162649号明細書
B.特開2011-128941号公報(周知技術を示す文献)
C.特開2008-15971号公報(周知技術を示す文献)
D.特開2005-266945号公報(周知技術を示す文献)
E.特開2011-100279号公報(新たに引用された文献;周知技術を示す文献)
F.湯浅顕人,毎日見るものだから自分だけのネット新聞にする! 情報収集に磨きをかける「マイポータル」の作り方,アスキー.PC,日本,株式会社アスキー,2006年4月1日,第9巻,第4号,第138?149ページ(新たに引用された文献;周知技術を示す文献)

第3 当審拒絶理由通知の概要
当審拒絶理由通知の概要は次のとおりである。

(進歩性)本件出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前日本国内または外国において頒布された下記1?2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 1?39
・引用文献等 1?2

<引用文献等一覧>
1.特開2011-160145号公報
2.特開2011-66850号公報

第4 本願発明
本願請求項1-39に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明39」という。)は,平成29年7月14日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-39に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1-39は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
モバイルデバイスのユーザインターフェースを生成するための方法であって,
前記モバイルデバイスを介して,動的文脈依存情報キューを提示するためのグラフィカルユーザインターフェース(GUI)内の通知区域の選択に関する入力を前記モバイルデバイスのユーザから受信するステップと,
1つまたは複数の文脈関連変数を判断するステップと,
前記文脈関連変数の値の累積クラスタまたは時間重み付けされたクラスタを識別することによって,文脈を判断するステップと,
前記文脈と関連付けられた,情報キューのセットのサブセットを識別するステップと,
前記モバイルデバイスを介して,前記通知区域内の前記識別されたサブセットを前記ユーザに提示するステップであって,前記提示が,前記識別されたサブセットを提示するステップと,情報キューの前記セット内の他の情報キューを隠すステップとを含む,提示するステップと
を含み,
前記提示が前記受信されたユーザ入力と一致し,
前記識別されたサブセットの提示特性が前記文脈に基づいて変化し,
情報キューの前記セットが,モバイルデバイス上で実行可能なプログラムを提示し,情報キューの前記セットの各々が,前記プログラムのうちのそれぞれ1つと関連付けられたグラフィカルアイコンを含む,方法。
【請求項2】
情報キューの前記セットが前記文脈の警告を含む,請求項1に記載の方法。
【請求項3】
情報キューの前記セットが取引の警告を含む,請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記文脈が先に受信された文脈定義ユーザ入力に基づいて判断される,請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記先に受信された文脈定義ユーザ入力が,情報キューの前記セットの前記サブセットを表示するための1つまたは複数の条件を識別する,請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記1つまたは複数の条件が,1人または複数の特定の送信者から電子メールを受信することを含む,請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記入力が,前記識別されたサブセットを視覚的に提示するために,モバイルデバイス上の画面の動的部分の実際の境界または近似境界を描くことを含む,請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記入力が1つまたは複数のタッチスクリーンに描かれた境界を含む,請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記動的部分が,前記画面の全体に満たない部分をカバーする,前記モバイルデバイス上の前記画面の複数の領域を含む,請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記識別されたサブセットが,モバイルデバイス上の画面のシステム定義部分内に視覚的に提示される,請求項1に記載の方法。
【請求項11】
情報キューの前記セットの1つまたは複数の情報キューが複数の文脈と関連付けられる,請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記識別されたサブセットの全体が前記モバイルデバイスの画面上に同時に提示されないように,前記識別されたサブセットが少なくとの1つのスクロール機能を用いて提示される,請求項1に記載の方法。
【請求項13】
情報キューの前記セットの前記情報キューのうちの少なくともいくつかをランク付けするステップであって,前記識別されたサブセットの前記提示が前記ランク付けに少なくとも一部基づく,ランク付けするステップをさらに含む,請求項1に記載の方法。
【請求項14】
情報キューの前記のセットの前記識別されたサブセットの前記情報キューの各々の前記提示に関連する画面位置が,前記ランク付けするステップに少なくとも一部基づく,請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記入力が複数の画面区分化オプションの中からタッチスクリーン入力または手動入力の選択を含む,請求項1に記載の方法。
【請求項16】
情報キューの前記セット内の前記他の情報キューと関連付けられたグラフィカルアイコンの何らかの表示と比較して,前記サブセットと関連付けられたグラフィカルアイコンを優位に表示するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記サブセット内の情報キューが前記モバイルデバイスのディスプレイ画面上で前記ユーザに視覚的に提示され,前記他の情報キューが前記ディスプレイ画面上で前記ユーザに視覚的に提示されない,請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記サブセット内の情報キューがデスクトップ画面上または前記モバイルデバイスのホーム画面上で前記ユーザに視覚的に提示され,前記他の情報キューが前記デスクトップ画面上または前記ホーム画面上で前記ユーザに視覚的に提示されない,請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記サブセットが,前記文脈が判断されたことを示す情報キューを含む,請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記文脈が判断されたことを示す前記情報キューが,前記モバイルデバイスの音声および振動のうちの少なくとも1つを使用して,前記ユーザに提示される,請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記文脈が環境文脈である,請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記モバイルデバイスを介して,情報キューの静的文脈非依存性セットを前記ユーザに提示するステップをさらに含む,請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記モバイルデバイスがセルラー電話である,請求項1に記載の方法。
【請求項24】
1つまたは複数の文脈関連変数を受信するステップをさらに含み,
前記文脈を前記判断するステップが,前記受信された1つまたは複数の文脈関連変数に基づいて,前記文脈を推論するステップを含む,請求項1に記載の方法。
【請求項25】
第2の文脈を判断するステップと,
前記第2の文脈と関連付けられた,前記情報キューの動的セットの第2のサブセットを識別するステップと,
前記モバイルデバイスを介して,前記動的セット内の他の情報キューの何らかの提示と比較して,前記第2のサブセットを優位に提示するステップと
をさらに含み,
前記提示が前記受信されたユーザ入力と一致し,
前記第2のサブセットが前記サブセットとは異なる請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記サブセットが,モバイルデバイス上で実行可能なプログラムを前記文脈と関連付けるユーザ入力に少なくとも一部基づいて識別される,請求項1に記載の方法。
【請求項27】
モバイルデバイス上で実行可能なプログラムとの前記ユーザの対話を監視するステップと,
前記ユーザの対話と文脈関連変数との間の相関関係を識別するステップと,
前記文脈関連変数の値を受信するステップと,
前記識別された相関関係と前記受信された値とに基づいて,前記文脈を推論するステップと をさらに含む,請求項1に記載の方法。
【請求項28】
モバイルデバイスのユーザインターフェースを生成するためのシステムであって,
動的文脈依存情報キューを提示するためのグラフィカルユーザインターフェース(GUI)内の通知区域の選択に関する入力を前記モバイルデバイスのユーザから受信することを行うように構成された入力構成要素と,
1つまたは複数の文脈関連変数を判断するように構成された文脈関連変数検出器と,
前記文脈関連変数の値の累積クラスタまたは時間重み付けされたクラスタを識別することによって,文脈を判断することを行うように構成された文脈検出器と,
前記判断された文脈を情報キューのセットのサブセットと関連付けることを行うように構成された関連付け装置と,
前記通知区域内に前記サブセットを提示し,情報キューの前記セット内の他の情報キューの提示を隠すユーザインターフェースを生成することを行うように構成されたユーザインターフェース生成器と
を含み,
前記サブセットの前記提示が前記受信されたユーザ入力と一致し,
前記サブセットの提示特性が前記文脈に基づいて変化し,
情報キューの前記セットが,モバイルデバイス上で実行可能なプログラムを提示し,情報キューの前記セットの各々が,前記プログラムのうちのそれぞれ1つと関連付けられたグラフィカルアイコンを含む,システム。
【請求項29】
前記ユーザインターフェース生成器が,前記動的文脈依存情報キューを表示するための,前記モバイルデバイスのディスプレイの部分を前記ユーザ入力に応じて定義するためのディスプレイ割当て装置を含む,請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記文脈検出器が,文脈と文脈関連変数との間の関連付けを動的に調整することを行うように構成された適応モデルを含む,請求項28に記載のシステム。
【請求項31】
前記関連付け装置が,文脈と前記情報キューの動的セットの一部との間の関連付けを少なくとも周期的に調整することを行うように構成された適応モデルを含む,請求項28に記載のシステム。
【請求項32】
モバイルデバイスのユーザインターフェースを生成するためのシステムであって,
動的文脈依存情報キューを提示するためのグラフィカルユーザインターフェース(GUI)内の通知区域の選択に関する入力を前記モバイルデバイスのユーザから受信することを行うように構成された入力デバイスと,
1つまたは複数の文脈関連変数を判断することと,
前記文脈関連変数の値の累積クラスタまたは時間重み付けされたクラスタを識別することによって,文脈を判断することと,
前記文脈と関連付けられた,情報キューのセットのサブセットを識別することと,
ユーザインターフェースを生成して,前記通知区域内の前記識別されたサブセットを前記ユーザに提示することであって,前記提示が,前記識別されたサブセットを提示し,情報キューの前記セット内の他の情報キューを隠すことを含む,提示することと
を行うためのコンピュータ実行可能命令を用いてプログラムされた,1つまたは複数のプロセッサと
を含み,
前記提示が前記受信されたユーザ入力と一致し,
前記識別されたサブセットの提示特性が前記文脈に基づいて変化し,
情報キューの前記セットが,モバイルデバイス上で実行可能なプログラムを提示し,情報キューの前記セットの各々が,前記プログラムのうちのそれぞれ1つと関連付けられたグラフィカルアイコンを含む,システム。
【請求項33】
前記モバイルデバイスが前記1つまたは複数のプロセッサを含む,請求項32に記載のシ
ステム。
【請求項34】
外部コンピュータが前記1つまたは複数のプロセッサのうちの1つを含み,前記外部コンピュータがワイヤレス接続を介して前記モバイルデバイスに結合された,請求項32に記載
のシステム。
【請求項35】
前記モバイルデバイスが,1つまたは複数の文脈関連変数を監視することを行うように構成された1つまたは複数のセンサをさらに含む,請求項32に記載のシステム。
【請求項36】
ユーザインターフェースを生成するためのシステムであって,
動的文脈依存情報キューを提示するためのグラフィカルユーザインターフェース(GUI)内の通知区域の選択に関する入力をモバイルデバイスのユーザから受信するための手段と,
1つまたは複数の文脈関連変数を判断する手段と,
前記文脈関連変数の値の累積クラスタまたは時間重み付けされたクラスタを識別することによって,文脈を判断するための手段と,
前記文脈に関連する,情報キューのセットのサブセットを識別するための手段と,
前記通知区域内に前記識別されたサブセットを提示し,情報キューの前記セット内の他の情報キューの提示を隠すための手段であって,前記提示が前記受信されたユーザ入力と一致し,前記識別されたサブセットの提示特性が前記文脈に基づいて変化する,提示するための手段と
を含み,
情報キューの前記セットが,モバイルデバイス上で実行可能なプログラムを提示し,情報キューの前記セットの各々が,前記プログラムのうちのそれぞれ1つと関連付けられたグラフィカルアイコンを含む,システム。
【請求項37】
前記文脈を前記判断するための手段が,クラスタリングアルゴリズムを使用するための手段を含む,請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
前記サブセットを識別するための前記手段が,ニューラルネットワークを使用するための手段を含む,請求項36に記載のシステム。
【請求項39】
入力を前記受信するための手段がタッチスクリーンを含む,請求項36に記載のシステム。」

第5 引用例,引用発明等
1.引用例1について
平成29年4月18日付けの当審拒絶理由通知に引用された引用例1には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は重要箇所に対して当審が付与した。以下,同様。)。

ア 「【発明を実施するための形態】
【0012】
以下,図面を参照して,この発明の一実施形態について説明する。
図1は,この発明の一実施形態に係わる携帯端末装置の構成を示すブロック図である。以下の説明では,携帯端末装置の一例として,多機能型の携帯電話機,いわゆるスマートフォンを例に挙げて説明する。」

イ「【0021】
除外アイコンリストデータ50bは,レコメンド表示制御を行う場合に,この制御の除外対象となるアイコンのアイコンインデックスをリスト化した情報である。具体的には,アイコンインデックスに,低優先度を設定する場合には,極小(例えば,0以下)の総合評価値を対応付け,一方,高優先度を設定する場合には,極大の総合評価値(例えば,100)を対応づける。これにより,後の処理において,レコメンド表示制御を無視した低優先度あるいは高優先度で,アイコン表示エリア200に表示されることになる。
【0022】
使用履歴データ50cは,図3乃至図5に例示するように,各アイコンの利用(実行)履歴を記録するものであって,図3に示すように,アイコンインデックスに対応づけて利用時間帯を管理する利用時間帯管理テーブル,アイコンインデックスに対応づけて利用した曜日を管理する利用曜日管理テーブル,アイコンインデックスに対応づけて利用場所(緯度と経度)を管理する利用場所管理テーブルなどがある。そして,各アイコンインデックスには,表示順序の優先度算出の基礎となる評価値が対応づけられている。」

ウ 「【0037】
次に,上記構成の携帯端末装置の動作について説明する。以下の説明では特に,レコメンド表示制御の動作について説明する。図8は,レコメンド表示制御の動作を説明するためのフローチャートであって,図8(a)に示す第1処理と,図8(b)に示す第2処理が並行して行われる。」

エ 「【0060】
次に,図9を参照して,ステップ8mの更新処理について説明する。
まず,ステップ9aにおいてレコメンド表示制御手段100aは,現在状況の情報を取得し,ステップ9bに移行する。すなわち,制御部100から現在時刻を示す時刻情報を取得し,またGPS受信部70から現在位置を示す位置情報を取得する。
【0061】
ステップ9bにおいてレコメンド表示制御手段100aは,使用履歴データ50cに含まれる各テーブルを参照して,ステップ9aで取得した現在状況(時刻情報および位置情報)に対応するすべてのインデックスとそれに対応づけられた評価値をセットにして検出し,ステップ9cに移行する。
【0062】
ステップ9cにおいてレコメンド表示制御手段100aは,ステップ9bで検出した評価値に対して,テーブル毎に異なる重み付けを行い,インデックス毎に加算して集計する。そしてこのインデックス毎の評価値の集計結果と,除外アイコンリストデータ50bに記録された総合評価値を,インデックス毎の総合評価値として,総合評価値データ50dに上書き記録して,ステップ9dに移行する。なお,重み付けは,ユーザが予め任意に設定できるようにしてもよく,また,異なるテーブルの評価値を同等に扱いたい場合には,同じ値を設定すればよい。
【0063】
ステップ9dにおいてレコメンド表示制御手段100aは,総合評価値データ50dに記録された情報を参照し,総合評価値の高い順に,各総合評価値およびそれに対応するインデックスの順序を並べ替えるソート処理を実施し,ステップ9eに移行する。
【0064】
ステップ9eにおいてレコメンド表示制御手段100aは,ステップ9dによって総合評価値の高い順にソートされた情報(各総合評価値およびそれに対応するインデックス)を,レコメンド表示順序データ50eに上書き記録して,当該処理を終了し,ステップ8oに移行する。
【0065】
次に,図10を参照して,ステップ8nのレコメンド表示処理について説明する。
まず,ステップ10aにおいてレコメンド表示制御手段100aは,レコメンド表示順序データ50eを読み出し,ステップ10bに移行する。
【0066】
ステップ10bにおいてレコメンド表示制御手段100aは,ステップ10aで読み出したレコメンド表示順序データ50eに基づいて,対応づけられた総合評価値が高いインデックスを,優先的にアイコン表示エリア200に表示し,ステップ10cに移行する。これにより,例えば図2に示すような順序で表示されていたアイコンが,図11に示すように,アイコン表示エリア200の左上から右に,そして下の列に順を追って表示される。
【0067】
すなわち,図11の例では,「メール」と表記されたアイコンが最も優先順位が高く,これに続き,「インターネット」,「ゲーム」,「カメラ」,「アドレス帳」,「辞書」,「電卓」…「株価」の順に,優先順位が下がって表示される。またこのうち,例えば「メール」が除外アイコンリストデータ50bにおいて,高優先度が設定され,極大な総合評価値が設定されていたとすると,その利用頻度とは無関係に,上位の位置にアイコンが表示されることになる。また反対に,極小な総合評価値が設定されていたとすると,次ページ以降の低優先順位の位置に,アイコン表示がなされる。
・・・(中略)・・・
【0072】
以上のように,上記構成の携帯端末装置では,ユーザが利用した機能の利用履歴を記憶し,この利用履歴に基づいて,機能を利用するためのアイコンの表示配列を制御するようにしている。したがって,上記構成の携帯端末装置によれば,ユーザの利用頻度に応じて,アイコンの表示配列が変化するので,ユーザにとって利便性が高い。
【0073】
また,上記構成の携帯端末装置では,上記利用履歴として,利用した時間帯,利用した曜日,利用した場所など複数の利用状況についてその頻度を示す評価値を記録しておき,現在の状況(時間帯,曜日,場所)に応じた評価値に基づいて,ユーザが利用する可能性の高い機能を推定して,アイコンの表示配列を制御するようにしている。
【0074】
このため,現在の状況と過去の利用履歴とに基づいて,アイコンの表示配列が制御されるので,ユーザにとって利便性が高い。また,複数の状況(時間帯,曜日,場所)を考慮して,ユーザが利用する可能性の高い機能を推定するので,一部の状況について,十分な利用履歴が集積されていなくても,他の状況を参照して推定が行えるので,利便性の低下を抑制できる。
【0075】
さらに,上記構成の携帯端末装置では,利用履歴として集積される複数の状況について,重み付けを行って総合評価値を求めて,これに基づいてユーザが利用する可能性の高い機能を推定するようにしている。このため,複数の状況について,重みを考慮した推定が行えるので,より高い精度でユーザの利便性を向上できる。」

引用例1の上記記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると,引用例1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「携帯端末装置のレコメンド表示制御方法であって,
ステップ9aにおいてレコメンド表示制御手段100aは,現在状況の情報を取得し,すなわち,制御部100から現在時刻を示す時刻情報を取得し,またGPS受信部70から現在位置を示す位置情報を取得し,
ステップ9bにおいてレコメンド表示制御手段100aは,使用履歴データ50cに含まれる各テーブルを参照して,ステップ9aで取得した現在状況(時刻情報および位置情報)に対応するすべてのインデックスとそれに対応づけられた評価値をセットにして検出し,ここで,使用履歴データ50cは,各アイコンの利用(実行)履歴を記録するものであって,アイコンインデックスに対応づけて利用時間帯を管理する利用時間帯管理テーブル,アイコンインデックスに対応づけて利用した曜日を管理する利用曜日管理テーブル,アイコンインデックスに対応づけて利用場所(緯度と経度)を管理する利用場所管理テーブルなどがあり,各アイコンインデックスには,表示順序の優先度算出の基礎となる評価値が対応づけられているものであり,
ステップ9cにおいてレコメンド表示制御手段100aは,ステップ9bで検出した評価値に対して,テーブル毎に異なる重み付けを行い,インデックス毎に加算して集計し,そしてこのインデックス毎の評価値の集計結果と,除外アイコンリストデータ50bに記録された総合評価値を,インデックス毎の総合評価値として,総合評価値データ50dに上書き記録し,なお,重み付けは,ユーザが予め任意に設定できるようにしてもよく,また,異なるテーブルの評価値を同等に扱いたい場合には,同じ値を設定すればよく,ここで,除外アイコンリストデータ50bは,レコメンド表示制御を行う場合に,この制御の除外対象となるアイコンのアイコンインデックスをリスト化した情報であり,
ステップ9dにおいてレコメンド表示制御手段100aは,総合評価値データ50dに記録された情報を参照し,総合評価値の高い順に,各総合評価値およびそれに対応するインデックスの順序を並べ替えるソート処理を実施し,
ステップ9eにおいてレコメンド表示制御手段100aは,ステップ9dによって総合評価値の高い順にソートされた情報(各総合評価値およびそれに対応するインデックス)を,レコメンド表示順序データ50eに上書き記録し,
ステップ10aにおいてレコメンド表示制御手段100aは,レコメンド表示順序データ50eを読み出し,
ステップ10bにおいてレコメンド表示制御手段100aは,ステップ10aで読み出したレコメンド表示順序データ50eに基づいて,対応づけられた総合評価値が高いインデックスを,優先的にアイコン表示エリア200に表示し,これにより,アイコン表示エリア200の左上から右に,そして下の列に順を追って表示され,
以上のように,利用履歴に基づいて,機能を利用するためのアイコンの表示配列を制御するようにした,
方法。」

2.引用例2について
平成29年4月18日付けの当審拒絶理由通知に引用された引用例2には,図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,操作の起点となる画面(ホーム画面)を表示する際,ユーザの操作履歴に応じてホーム画面を表示することができる情報通信端末に関する。」

イ 「【0063】
このようにして情報通信端末1は,画面表示タイミング(情報通信端末1の起動時や画面非表示モードからの復帰時)で,最新のレコメンドエンジン出力を読み込み,レコメンドエンジン出力に基づいた最新のアプリ・ファイル,コンタクト情報付き電話発信・メール作成・ウェブブラウジング,ウェブサイト情報をアイコンとしてタッチスクリーン11の画面上に配置する。
【0064】
同時に,従来の使い勝手の維持に配慮し,ユーザにより予め設定されたアイコンを表示するためのユーザ設定エリア41,情報通信端末1が有する全ての機能に関連付けられた全機能表示画面へのリンクアイコン(全機能表示ボタン45)を設けつつ,レコメンド出力によるショートカット自動配置エリア(レコメンドエリア42,43,44)を設けた。
【0065】
また,実際の使い勝手を考慮し,レコメンドエリアは,レコメンドアプリ・ファイルエリア42,レコメンドウェブエリア43,レコメンドコンタクトエリア44のように,目的別に区切られている。これらの各エリアは,ウィジェットとして実現しても良い。また,各レコメンドエリアの配置はユーザにより設定可能とすると良い。各々のレコメンドエリアにおいて,ユーザが画面上を指でスクロールすることにより,推奨度が比較的低いショートカットボタンも表示されるようにすると良い。」

引用例2上記記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると,引用例2には,以下の技術的事項(以下,「引用例2記載の技術的事項」という。)が記載されていると認める。

「情報通信端末のホーム画面に,ユーザにより予め設定されたアイコンを表示するためのユーザ設定エリア41,レコメンドアプリ・ファイルエリア42,レコメンドウェブエリア43,レコメンドコンタクトエリア44を設け,各レコメンドエリアの配置をユーザにより設定可能とすること」

第6 当審の判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。
・本願発明1の「文脈」に関し,本願明細書の翻訳文には「場合によっては,文脈は事象検出文脈である。事象検出文脈は,たとえば,(たとえば,アイコンの選択,特定のキーをタイプすること,プログラムとの特定の対話,一定の期間にわたってデバイスを使用しないこと,タイプし続けること,文書を閲覧することなど)ユーザ活動,プログラムの開始,または(たとえば,プログラムによって検出される)トリガの検出を含むことが可能である。」(【0010】)と記載されていることから,引用発明の「各アイコンの利用」は本願発明1の「文脈」に相当し,また,引用発明の「現在状況(時刻情報および位置情報)に対応するすべてのインデックスとそれに対応づけられた評価値」は本願発明1の「文脈関連変数」に相当するといえる。
さらに,引用発明の「評価値」は,「利用時間帯管理テーブル」,「利用曜日管理テーブル」,「利用場所管理テーブル」という複数のテーブルに記録された「使用履歴データ」の集まりであるから,本願発明1の「文脈関連変数の値の累積クラスタまたは時間重み付けされたクラスタ」に相当するといえる。
・引用発明の「アイコン」は本願発明1の「情報キュー」に相当し,引用発明の「利用時間帯管理テーブル」,「利用曜日管理テーブル」,「利用場所管理テーブル」に記録されたアイコン(アイコンインデックス)は本願発明1の「文脈と関連付けられた,情報キューのセットのサブセット」といえる。
・引用発明において「総合評価値が高いインデックスを,優先的にアイコン表示エリア200に表示し,これにより,アイコン表示エリア200の左上から右に,そして下の列に順を追って表示」し「利用履歴に基づいて,機能を利用するためのアイコンの表示配列を制御する」ことは,本願発明1の「識別されたサブセットの提示特性が前記文脈に基づいて変化」することに相当する。
・引用発明の「携帯端末装置のレコメンド表示制御方法」は,後述する相違点を除き,本願発明1の「モバイルデバイスのユーザインターフェースを生成するための方法」に相当する。

そうすると,両発明は以下の点で一致し,また,相違する。

(一致点)
「モバイルデバイスのユーザインターフェースを生成するための方法であって,
1つまたは複数の文脈関連変数を判断するステップと,
前記文脈関連変数の値の累積クラスタまたは時間重み付けされたクラスタから,文脈を判断するステップと,
前記文脈と関連付けられた,情報キューのセットのサブセットを識別するステップと,
前記モバイルデバイスを介して,通知区域内の前記識別されたサブセットを前記ユーザに提示するステップと
を含み,
前記識別されたサブセットの提示特性が前記文脈に基づいて変化し,
情報キューの前記セットが,モバイルデバイス上で実行可能なプログラムを提示し,情報キューの前記セットの各々が,前記プログラムのうちのそれぞれ1つと関連付けられたグラフィカルアイコンを含む,方法。」

(相違点1)
本願発明1が「前記モバイルデバイスを介して,動的文脈依存情報キューを提示するためのグラフィカルユーザインターフェース(GUI)内の通知区域の選択に関する入力を前記モバイルデバイスのユーザから受信するステップ」を含むのに対し,
引用発明はそのようなステップを含まない点。
(相違点2)
一致点の「文脈を判断するステップ」において,
本願発明1では「前記文脈関連変数の値の累積クラスタまたは時間重み付けされたクラスタ」を「識別することによって」「文脈を判断する」のに対し,
引用発明では「各アイコンの利用(実行)履歴」を示す「利用時間帯管理テーブル」,「利用曜日管理テーブル」,「利用場所管理テーブル」の「インデックス毎の評価値」は,「テーブル毎に異なる重み付けを行い,インデックス毎に加算して集計」され,「総合評価値」として「各アイコンの利用(実行)履歴」が実質的に判断される点。
(相違点3)
一致点の「前記モバイルデバイスを介して,通知区域内の前記識別されたサブセットを前記ユーザに提示するステップ」が,
本願発明1では「前記識別されたサブセットを提示するステップと,情報キューの前記セット内の他の情報キューを隠すステップとを含む,提示するステップ」であるのに対し,
引用発明では「レコメンド表示順序データ50eに基づいて,対応づけられた総合評価値が高いインデックスを,優先的にアイコン表示エリア200に表示」するのであって,「前記識別されたサブセットを提示するステップ」を含むものの,「情報キューの前記セット内の他の情報キューを隠すステップとを含む」ものではない点。
(相違点4)
本願発明1では「前記提示が前記受信されたユーザ入力と一致し」ているのに対し,
引用発明はそのような構成を有しない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み,まず(相違点2)について検討する。
引用発明において複数の評価値を重み付け加算するのは,引用例1に「一部の状況について,十分な利用履歴が集積されていなくても,他の状況を参照して推定が行えるので,利便性の低下を抑制できる。」(【0074】)と記載されていることから,利用履歴の集積を目的とするものと認められる。
これに対し,平成29年7月14日に提出した意見書において請求人が「重み付け加算は,ある特徴空間における特徴ベクトルの空間的な分類に基づいた文脈決定方法ではないため,本願のクラスタに基づいた文脈決定方法とは異なります。」と主張するように,本願発明1では複数の文脈関連変数をベクトルとして分類して文脈を判断するものであり,利用履歴の集積を目的として複数の評価値を重み付け加算した1つの総合評価値から文脈(アイコン利用履歴)を判断する引用発明の判断手法を,本願発明のように「文脈関連変数の値の累積クラスタまたは時間重み付けされたクラスタを識別する」判断手法に変更する動機付けは無い。
また,引用例2には上述の引用例2記載の技術的事項が記載されているが,本願発明1の上記判断手法を開示ないしは示唆するものではない。

したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明,引用例2記載の技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-39について
本願発明2-39も,本願発明1の「文脈関連変数の値の累積クラスタまたは時間重み付けされたクラスタを識別することによって,文脈を判断する」ことと同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,引用例2記載の術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第7 原査定についての判断
平成29年7月14日付けの補正により,補正後の請求項1-39は,「文脈関連変数の値の累積クラスタまたは時間重み付けされたクラスタを識別することによって,文脈を判断する」という技術的事項を有するものとなった。当該技術的事項は,原査定における引用例A-Fには記載されておらず,本願優先日前における周知技術でもないので,本願発明1-39は,当業者であっても,原査定における引用例A-Fに基づいて容易に発明できたものではない。したがって,原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり,原査定の理由によって,本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-09-01 
出願番号 特願2014-531863(P2014-531863)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 萩島 豪海江田 章裕上嶋 裕樹  
特許庁審判長 高瀬 勤
特許庁審判官 山澤 宏
新川 圭二
発明の名称 動的かつ構成可能なユーザインターフェース  
代理人 村山 靖彦  
代理人 黒田 晋平  

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